インド最大の教育オムニチャネル構築を目指しEdTech大手Byju’sが個別指導塾Aakashを約1102億円で買収

なぜByju’s(バイジュース)は2020年に10億ドル(約1102億円)以上の資金を調達し、さらに5億ドル(約551億円)の確保に向けてすでに少しずつ近づいているのか。今日、その答えが見えてきた。

Byju’sはインド時間4月5日、33年の歴史を持つ物理的な個別指導センターのチェーンであるAakash Educational Servicesを買収したと発表した。これは、インドのオンライン学習の最大手が、世界第2位のインターネット市場におけるリーダーとしての地位をさらに固め、オフラインでの成長を加速させるためだという。

関連記事:加速するオンライン学習サービス、インドのEdTech大手Byju’sが評価額1.6兆円で近く654億円調達か

現在評価額が130億ドル(約1兆4300億円)の同スタートアップは、この買収のために「10億ドル(約1102億円)近く」の現金と株式を支払った(現金約6億ドル/約661億3000万円、残りは株式)とのことで、これはEdtech分野では最大級の規模だと、事情に詳しい関係者3名がTechCrunchに語った(EYは、この取引について両社にアドバイスを行った。2021年1月に、両社が交渉中であることをBloombergが初めて報道した)。

Blackstoneが出資しているAakashは、一流の工科大学や医科大学への入学を目指す学生を対象に、全国で200以上の物理的な個別指導センターを所有・運営している。同社は25万人以上の高校生にサービスを提供している。

数十年の歴史を持つこの会社は近年、一部の製品をオンラインで利用できるようにしていたが、パンデミックの影響で学生の好みが変わってきたことから、6~7カ月前にAakashとByjuは買収の可能性を模索するようになったと、同社の幹部がTechCrunchの共同インタビューで語った(両社は、取引の財務的側面についてのコメントは控えた)。

Aakash Educationalのマネージングディレクター兼共同出資者であるAakash Chaudhry(アーカッシュ・チャウドリー)氏は、2社が手を組むことで「非常に充実した付加価値の高いサービスを学生に提供できる」と述べた。「Aakash Educationalの幹部は、買収後も同社に留まります」とも。

今回の買収により、両社はインドで最大の学生向けオムニチャネルを構築することができる、と同氏は続けた。「物理的な教室へのアクセスを希望する学生には、当社が対応しています。オンラインでコンテンツや学習にアクセスしたいと思っている学生には、Byju’sがサービスを提供してきました。我々はこれから一緒に、物理的なロケーションとテクノロジー、オンライン学習を活用して、他にはないものを学生に提供していきたいと思います」。

教育の未来はオフラインとオンラインが融合したものになるだろうと、同名のスタートアップの共同設立者兼CEOであるByju Raveendran(バイジュー・レヴィーンドラン)
氏はインタビューで語った。自身も教師の彼は(写真上)、それを理解しているのだろう。レヴィーンドラン氏はオンラインプラットフォームを立ち上げる前、スタジアムで何百人もの生徒に授業を行っていた人物だ。

Byju’sが提供する試験準備などのいくつかのサービスについては、オンラインのみのモデルはまだ数年先になるだろうと同氏は述べている。今回の契約は、ByjuとAakash Educationalのサービスをより小さな町や都市で展開することも目的としている。

2019年にAakashの株式37.5%を約1億8300万ドル(約201億7000万円)で取得した、Blackstoneのアジア買収共同責任者兼インドプライベートエクイティ責任者のAmit Dixit(アミット・ディクシット)氏はこう述べている。「オムニチャネルは、テスト対策と個別指導の勝利モデルとなっていくでしょう。インド有数の補習教育企業であるAakashとByju’sのパートナーシップに参加できることをうれしく思います」。

近年インドの教育スタートアップが受け取った資金(Blume Venturesがまとめた画像・データ)

大学・大学院への進学を目指す学生のための準備コースを提供するByju’sのユーザーベースは2020年から大幅に増加し、現在では8000万人以上のユーザーが利用しており、そのうち550万人が有料会員となっている。収益性の高いByju’sは、2020年、米国で1億ドル(約110億2000万円)以上の収益を上げたと、インドのベンチャーファンドBlume Venturesが先月開催したセッションで、(インドのスタートアップを支援している)GSV VenturesのマネージングパートナーであるDeborah Quazzo(デボラ・クアッゾ)氏が語った。

Lightspeed VenturesとNaspersが出資しているこのスタートアップは、近年、買収による無機的な成長も試みている。2019年には米国のOsmo(オズモ)を1億2000万ドル(約132億2000万円)で買収し、2020年には子供向けのコーディングプラットフォームWhiteHat Jr.を3億ドル(約330億6000万円)で買収している。レヴィーンドラン氏は、同社はさらに多くの企業を買収することを検討していると述べた。TechCrunchは先週、Byju’sがカリフォルニア州に本社を置くスタートアップEpic(エピック)を「3億ドル(約330億6000万円)を大幅に上回る額」で買収する交渉を行っていると報じた。

コンサルタント会社Convergence CatalystのチーフアナリストであるJayanth Kolla(ジャヤント・コラ)氏は、Aakashの買収によりByju’sはブランド認知度を高め、より多くの学生にリーチできるようになると述べている。「インドのような市場では、ウェブ上での有機的な急成長は、ある時点で停滞してしまいます」と彼は語った。

カテゴリー:EdTech
タグ:Byju’s買収インド

画像クレジット:Paul Yeung / Bloomberg / Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。