編集部記:Amit Pakaは、クリエイティブな写真ネットワークをiOSで提供するParableの共同ファウンダーである。以前彼は、StubHub-eBayによる買収されたFlokishを設立し、Paypalではモバイルペイメントのためのプロダクトを率いた。Microsoftで商品開発を行った経験も持つ。
最近Pinterestが二人だけで運営するスタートアップを買収したことがニュースになり、どういうことだろうと頭を悩ませた人もいると思う。しかし、これは当たり前の流れになりそうだ。KoseiやHike Labsの小規模なスタートアップの買収は、Pinterestのコンテンツの配信力を強化するために行われた。Pinterestのこの動きを、他の企業も取り入れるべきだ。
今までテック企業は、確立したプロダクトを持ち、収益が上がることを証明したスタートアップの買収しか行ってこなかった。そのようなスタートアップは何百人もの従業員と何億ドルもの資本金を抱えている。しかし、ここ数年で投資の関心はどんどん小さなチームに向けられるようになった。アクイハイヤ、つまり雇用目的とは違う流れが加速している。
Facebook、Google、Twitter、Apple、LinkedIn、更にeBayまでもが、この流れを作っている。息を吹き返したMicrosoftも、長いこと何億ドル規模の取引にしか関心がなかったものの、Liveloop、Sunrise、Accompliの買収でこの流れに乗ってきた。
ソフトウェアのプロダクトをリリースするコストは急速に下がったが、その間にもディストリビューションチャネルは増え続けている。Appleに特集されたParableアプリを例に取ってみても、このアプリは私ともう一人で構成されるたった二人のチームが数ヶ月の間に制作し、全世界の人に向けてローンチしたものだ。このようなことは10年前は不可能だった。企業は、自社のサービスを補強できるプロダクトを早い段階から評価するようになり、その結果、完全に準備が整っていないプロダクトでもそれを開発したチームを早めに獲得しようとする動きを見せている。
結果的に小規模なマイクロチームの買収が活発になり、これ以上ない面白い時代が到来しようとしている。私はこのような買収を「ブースター買収」と呼ぶ。実績が無かったとしても、既に確立されたプロダクトを補強(ブースト)する目的で、プロダクトとチームの買収を行うことからそう名づけた。
更に多くの企業がこの流れに加わるべきだろう。
プロダクト開発
プロダクトの開発は確かに簡単になったが、良いプロダクトを開発するのは難しい。それは大企業の中で新しいプロダクトを作る場合も同じだ。企業は実験を繰り返しても、市場に参入するのが遅かったり、その分野で成功するためのノウハウがなかったり、間違ったアイディアに大きな賭けをしてしまうことがある。例えばGoogle Waveを覚えているだろうか?
マイクロチームとそのプロダクトを自社のポートフォリオに加える場合はどうだろうか。そのチームはその分野の専門家であるし、実行力において社内で新しくプロダクトを作る場合より優れているだろう。ビジネスの面においても、そのようなチームを社内に迎えリソースを補充する方が理にかなっている。
多くの注目を集めたTwitterのPeriscopeとVineの買収もプロダクトがローンチされる前に行われた。Twitterのネットワークの基盤を得ることで、3人チームのVine、そして10人チームのPeriscopeのどちらも他の企業が試してきたアイディアでも成功を収めることができた。それと引き換えにTwitterは、クリエイティブな動画とライブストリーミングの大ヒットアプリを割安で手に入れることができたのだ。
才能ある人材の獲得
優秀な人材の奪い合いは、シリコンバレーを象徴するものだ。企業に必要な才能を持つ人材が、適切なタイミングで会社に参加した時、ビジネスが急加速することを誰もが知っている。例えば、eBayが私のスタートアップFlockishを買収してからまもなく、年間3000万ドルだったモバイルのチケット予約の事業は10倍になった。買収でマイクロチームの専門的な才能を最大限発揮することができる。彼らはプロダクトを開発する中で、その分野の専門的な知識を身につけてきた。新しい人を採用した場合と比べると、学習曲線の大部分を削減できることを意味する。彼らの経験値はプロダクティビティを何倍にもするだろう。この状態で、買収側が提供できるリソースと合わされば、どうなるかを考えてほしい。
InstagramはLumaの買収で、今にも芽吹きそうだったカメラスタビライザー技術を持つ3人のチームを手に入れることだった。このチームは、 Instagramの魅力を高めるのに欠かせないHyperlapseアプリの開発に必要不可欠だった。
コストはどうか
それなりの規模のスタートアップの買収となると、たいていシリーズB以降、4000万ドル以上の資金調達を行った企業になる。その時点での評価額を考えると、決して安くない買い物だ。規模が大きいほど、ビジネス面と統合面でのリスクが増える。
マイクロチームは、たいていシリーズB以前の規模で、1000万ドル以下の資金調達を行っている程度だ。シードラウンドのチームなら、調達した数百万ドルで運営している規模の所もあるだろう。小さなプロダクトを持つ小さなチームなら、統合するのも難しくない。更に企業戦略としてもマイクロチームの合理性を見出すことができる。競合他社が手に入れることや、将来的にそのスタートアップが競合になることを防ぐことができることを考えれば、バーゲン価格だ。
プロダクトが失敗して買収側に負担があったとしても、自社内で制作した場合とそう変わらないだろう。少なくとも、素晴らしいチームは手元に残る。
熱量の効用
最後に熱量を手にすることの利点を話したい。スタートアップを始めた最初の数人は、本物のリスクテイカーで、根本的に他の人と違う考え方をしている。どんな目標も達成できないことはないし、どんな困難も乗り越えられないことはないと考えている。このマインドは、冷めてしまった会社を定期的に活気づけるのに最も必要なものだ。
インスピレーションがもたらす健康的な衝撃は、買収側のチームのモラルとプロダクティビティを活発にする。Andy Rubinと彼の不屈のチームを忘れることはできない。Androidを作った8人のチームをGoogleは5000万ドルで買収した。AndyがDangerで培った「絶対無理なんて、絶対言わない」精神が、GoogleがほかのOEMに屈せず、今日のAndroidの立ち位置を作ることに貢献した。
一つだけ確かなことがある。買収対象のチームは更に小さくなるだろう。問題は、企業がどれだけ早くこの「ブースター企業」をM&A戦略に入れ、競合他社より先に、有望な取引を取り付けていく土壌を築けるかにかかっている。
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