Facebook Liteは新興国向けに最小限の機能を備えたAndroid用Facebookアプリ

fblite


インターネット接続の弱い場所でFacebookアプリを使用すると不快なほどロードが遅い。また、けちなデータプランしかないインド、アフリカ、東南アジア地域で利用すると法外な通信料が請求される。Facebookは必要最低限まで削ぎ落とした低解像度のAndroidアプリをローンチした。このアプリは、脆弱なインターネット環境や古い端末からでも利用でき、通常のスマートフォンアプリよりデータ通信も少ない。今日からアジア地域で利用でき、ラテンアメリカ、アフリカ、ヨーロッパ地域でも数週間内に利用できるようになる予定だ。

Facebook Liteは新興市場向けに設計され、次の10億人にFacebookのソーシャルネットワークへの搭乗を促すものだ。Facebook Liteには、動画の視聴や近くの友人を探す「Nearby Friends」機能といったデータ通信を多く必要とする機能は搭載されていない。ユーザーがそのような機能がないこと、そしてサムネイル画像が低解像度なのを許せるなら、世界中のどこからでも、素早くスムーズに、そして安価にFacebookを利用することができる。

Facebook Liteの簡単なデモ動画は以下から視聴できる。

地に足を付ける

最新鋭のスマートフォン、LTEネットワーク、無制限のデータプランがあるカルフォルニア州メンローパークでは、Facebookのアプリに問題点があるようには思わない。しかし、Facebookのユーザーが住む地域の全てがメンローパークのようではないし、ユーザー数20億人のマイルストーンを目指すFacebookにとって、リーチすべきユーザーがいる場所もそのような場所ではない。

「およそ1年前、現在のFacebookでの体験を更に改善しなければならないことに気が付きました。特に新興市場、それもインターネット接続が良くない地域向けにです」とFacebook LiteのプロダクトマネージャーであるVijay Shankarは、私の取材にそう答えた。Facebookは2つの並行する道を同時に進むことにしたと言う。一つは、既存のFacebookのフラグシップアプリを、より少ないデータで早くロードできるように最適化することだった。既に主要なAndroidアプリには適応され、軽くなっている

もう一つは、「新たなアイディアを検討しました。全く新しく新興国向けのアプリを構築するならどうするか?完全に作り直すならどうすれば良いか?」と考えることだったとShankarは説明した。

Facebook Lite

それらの地域での問題を想像するのではなく、Shankarは「多くの実地調査を行いました。アフリカ、インド、インドネシアにおいて多くの時間をかけて調査しました」と話した。チームは、これらの地域での問題を解決するには、3つの条件を満たさなければならないと考えた。

  1. どんなAndroid端末でも機能すること。:どんなストレージ容量、RAM、CPUの端末に関わらずということだ。
  2. 2Gのモバイル回線でもロードが早いこと。:地球上の4億人はそのモバイル回線しか利用できない。
  3. データ通信を極力抑えること。: ネットワークへのアクセスが問題なのではなく、データプランの法外な金額がインターネット利用の最大の障壁であるため。

未開の市場

Facebookは新興市場をもう何年も追い求めてきた。5年前、携帯キャリアの力を借り、テキストだけのFacebookアプリ、Facebook Zeroをローンチした。人々にインターネットの必要性を理解してもらうためのものだった。FacebookはSnaptuを買収し、新興市場のフィーチャーフォン向けのアプリの開発も行った。名称は後に、Facebook For Every Phoneと変更された。

Facebookの最近の取り組みは、50億人にインターネットを提供するための一大プロジェクトであるInternet.orgのローンチだ。通信会社とパートナーシップを結び、都市から離れた地域にもGoogleのProject Loonの風船のように、インターネットを空から届けるドローンを製作している。同時にデータ圧縮技術の開発にも力を入れている。

internet-org-app

Internet.orgのアプリもローンチし、キャリアの力も借り、制限のある「基本的なインターネットサービス」への無料アクセスを提供している。例えば、地域の医療や市民に関連する情報、ニュース、Wikipedia、FacebookとMessengerの機能だ。キャリアは、ユーザーにインターネットを無料で試してもらうことで、データプランの購入に結び付けたいと考えている。しかしInternet.orgが無料で使用できるサービスを選別し、限定していることはネットワーク中立性に反するとし、批判に晒されている

Facebookは全員に無料のインターネットアクセスを提供するようキャリアに強要することはできない。そこで、ユーザー自身が通信料をまかなえるよう、できるだけ低価格で利用できるようにする取り組みを進めた。Facebookは6ヶ月の検証を重ね、Facebook Liteの最初のバージョンを今年の1月からバングラディッシュ、ネパール、ナイジェリアを含む複数の国に提供を開始したことを、TechCrunchのライターであるDarrell Etheringtonが突き止めた。

Shankarによると、Google Play ストアで既に5万件近いレビューを受け、4.3の平均評価を獲得したが、多くのレビューは彼らの国に導入される時期について尋ねるものだったという。中にはどうしてもアプリを手に入れたい人もいて「彼らは、インターネットで創造性を発揮し、別の国で提供が開始されたアプリを手に入れている」とVPNを利用してGoogle Playを騙し、ダウンロードしている人もいることをほのめかした。

データ使用量を低減

今日からFacebook Liteは公式にグローバル展開を始める。サイズは1メガバイト以下で、遅い2G回線でも通信料を安価に抑えられ、数秒でダウンロードできるとShankarは言う。私もしばらくこのアプリを試してみたが、様々な要素をそぎ落としているにも関わらず、アプリは多機能で、動きが軽快なことに驚いた。

FBLiteNewsFeed

データ通信を抑えるためFacebookは、このアプリでは一切、高解像度の画像を最初から全部ロードしない仕組みにした。ニュースフィードの写真やリンクのプレビューのサムネイルは最初、多少粗く表示される。タップされた時だけ高解像度の写真がロードされるが、ユーザーが望まない限りFacebookはそのような大きなデータ通信を行わない。Facebook Liteに写真を投稿する場合、アプリは画像を圧縮し、バックグランドでデータを送信するため、画像データは小さく、ユーザーは処理が終わるのを待つ必要がない。

「サーバーとのやりとりが全て負担になります」とShankarは言う。よって「どの機能や体験をアプリで提供するかに気を配っています」と説明する。アプリには多少の広告もあるが、アプリダウンロード広告のような、Facebookのいくつかの代表的な広告フォーマットはFacebook Liteには表示されないという。広告主は、自社のクリエイティブを圧縮して低解像度で表示されることも好まないだろう。しかし、そうしなければユーザーはそれらがロードする時間を待たず、スクロールしていってしまう。

以前までFacebookはモバイル用のコードを複数バージョン用意する作業を減らすため、一つのHTML5のウェブサイトからiOSとAndroidアプリをラッパーとして製作しようとしていた。だが今は方向転換し、完全にフォークした低帯域幅の回線専用のコードベースを製作している。

Facebookはこのことについて熟考したが、何十億人のポテンシャルユーザーにリーチできると考えたら、多少の労力も報われるだろうと判断したとShankarはいう。「Facebookの主要な体験を提供するインターフェイスを複数追加するということは、今後何年にも渡り、それを継続して維持する必要があるということです」。Facebookはライトな気持ちで今回の新興国向けの取り組みを始めたのではないということだ。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。