日本のVCが予想する2016年のスタートアップ・トレンド(後編)

2015年にもさまざまなスタートアップ企業が登場したが、来年はどんな1年になるだろうか。TechCrunch Japanでは、2016年のテック業界とスタートアップのトレンドについて計19の国内VCとエンジェル投資家に意見を求めた。

回答いただいた質問は2つ。2015年のスタートアップシーンを象徴するキーワードは何ですか、というものと、2016年に盛り上がりが予想される分野やサービス、企業名など理由とともに教えてください、というものだ。では早速国内VCたちの意見に耳を傾けてみよう。

後編ではシリーズA以降など比較的投資額の大きいVCの意見を中心にまとめた。エンジェル投資やシード期の投資家の意見については、以下の記事前編を見てほしい。

日本のVCが予想する2016年のスタートアップ・トレンド(前編)

※各VCから回答を得ているとはいえ、投資担当者は通常カバー範囲が決まっている。だから各回答は必ずしもそのVCを代表する意見ではない。

ATOMICO

岩田真一氏(Patner)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、C2C、FinTech

2016年のトレンド:FinTechは法規制の緩和や業界の理解も進み、2016年はさらなる盛り上がりを見せると思われます。C2Cに関してはネットワークエフェクトの組込み方や、ユニークな売買体験、支払いの簡易化など各社独自の戦略を取り差別化が進むでしょう。またC2Cは比較的マーケット展開がしやすいため、スケールも楽しみです。シェアリングエコノミーは定義が広がり、細分化された命名がなされると思います。Bを活用したものとC同士のもの、などは本来別物ですが、これらを表わす言葉がありませんから、いずれ新しい呼び方が生まれてくるでしょう。広義ではクラウドソーシングもシェアリングエコノミーとして議論されることもありますが、そのような俯瞰した議論と並行して個別のビジネスモデル、スケーラビリティー、アップサイドなどについても議論が深まっていくことでしょう。

グリーベンチャーズ

堤達生氏(General Partner)
2015年のキーワード:動画サービス、FinTech

2016年のトレンド:2015年に急速な立ち上がりを見せたモバイル動画サービスの分野が、2016年以降、さらなる拡大・普及期に入ると思います。ユーザーのモバイルでの動画接触頻度・時間がより一層、増えることで、モバイルに適した形の動画コンテンツ、動画広告が新たに出てくると思います。注目しているサービスとしては、LINE LIVEですね。立ち上がりも順調に視聴者を伸ばしているようですし、テレビでは見られないコンテンツの形態をいろいろ模索している様子が窺えて、今後の展開が楽しみですね。このLINE LIVEを筆頭に、新たな動画プラットフォームプレイヤーの出現も注目ポイントの1つです。おそらく大手のインターネット企業の何社かも同様のプラットフォームを出してくると思いますので、より一層、良質なコンテンツの獲得合戦になると思います。

上記の流れを受けて、米国でも急成長中のNow Thisのような、Distributed Contents(分散型メディア)のプレイヤーも日本でこれから続々と出るのではないでしょうか。

もう1つの注目は、引き続き、FinTech領域になります。国全体の後押しがあることもあり、この領域へのリスクマネーの流入は来年も引き続き活発になると思います。ただ、時間のかかる領域でもあるので、各社も具体的なマイルストーンを示していかないと、現在の動きが一過性のもので終わってしまう可能性もあります。

最後にVRの領域は要注目ですね。まだ、それほど多くのプレイヤーがいるわけではなく、あったとしてもゲーム領域のプレイヤーが中心ですが、ハードの革新とともに、非ゲーム領域へのVRサービスが出始めると非常に面白いビジネスができるのではないかと考えています。

アイ・マーキュリーキャピタル

新和博氏(代表取締役社長)
2015年のキーワード:動画サービス、VR

2016年のトレンド:VR。以前、初めてOculusのデモを見たときに衝撃を受けた。2016年はプラットフォームやハードの環境が整い、コンテンツも急増しそうな雰囲気を感じる。ネット系上場企業の動向も要注目。ゲーム以外の分野での応用に関心がある。

サイバーエージェント・ベンチャーズ

田島聡一氏(CEO)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、動画サービス、C2C、FinTech

2016年のトレンド:

IoT:2014年に3Dプリンターの主要特許が切れたこともあり、今後SLS法を含めた3Dプリンターのコモディティ化が進むと思います。そんな中で期待しているのは、実需としてのオンデマンド型SCMソリューション、及びその周辺プレイヤー。ここの存在感が高くなってくると期待しています。弊社投資先:Kabuku

FinTech:権利移転がともなうさまざまな取引にブロックチェーンのストラクチャー導入検討が進むと思っており、ソフトウェアやAPIとしてブロックチェーン環境が提供できるソリューションの存在感が高くなると期待しています。弊社投資先:Orb

VR:すでにコロプラやGumiが力を入れているVRですが、プレイステーションVRの登場により、VRのマス層への浸透が大きく進むと思っており、それにともないゲーム会社はもちろん、周辺プレイヤーへの注目度が大きく高まると思います。

インバウンド需要の取り込み:インバウンド需要の高まり、特に中国からの来日客がまだ増加すると考えています。そういった意味では、旅行・飲食・エンタメなどのインバウンド需要を受け入れるO2Oが伸びると考えています。弊社投資先:Retty、Loco Partners

従来型産業のDisrupt:金融、不動産、医療などネットがあまり浸透していない従来型産業のDisruptが大きく進むと考えています。このあたりの分野は、実は中国や東南アジアの方が先行しているケースも多く、北米ではない海外事例はとても重要になってくると考えております。弊社投資先:プラネットテーブル

分散型メディアの拡大:あらゆるコンテンツのソーシャルメディアへの最適化によって、分散型メディアが成長すると考えており、ソーシャルコンテンツのネットワーク(集合体)が大きく育ち始めると思います。そういう意味では、コンテンツホルダーに対して、適切なソーシャル環境を提供するプラットフォームに注目しています。弊社投資先:リボルバー

NTTドコモ・ベンチャーズ

秋元信行氏(取締役副社長)
2015年のキーワード:IoT

2016年のトレンド:我々が2016年として注目している分野は、UAS(Unmanned Aircraft System)、いわゆるドローン分野と、IoT向けサイバーセキュリティー分野です。

UAS分野については、単に機器としてのドローンということではなく、無人飛行システム及びその運行に関わる機器、制御システム、データリンク、テレメトリー、通信、航行システムといった広い産業として理解しており、これまでの地上と管理された一部の航空システムが担っていた移動手段がさらに拡大し、かつコモディティー化する新しいフロンティアとして理解しています。これまで先行していた欧州に加え、米国においても規制緩和、技術革新、市場拡大が進み、数多く新規参入している民間企業群がNASA(アメリカ航空宇宙局)やFAA(連邦航空局)など国家機関と連動しながら管制システムの整備と商業実験を進めています。我が国においても、民間企業の進出や政治的にも特区指定などが急速に進展しています。商用利用の拡大にともない、管制インフラの整備や金融等産業派生商品などの事業拡大が創出されるものと考え、我々の本業である通信の観点からも大いに着目しているところです。

IoT向けサイバーセキュリティー分野については、今後否応なく進展するIoT化にともない、さまざまなデバイスがネットワークにつながるようになると、従来のPCやスマートフォンのように人々が能動的に利用していた情報機器だけでなく、人々がそれと気づかずに日々動いている生活基盤や各種機器に対するサイバーアタックが増加されることが予測され、当然にその対策が従来のものから質的にも量的にも大きく変容することが予想されます。当面は、自動車などの危険度が高く、数が多いエリアと、発電所やガス・水道といった人々の生活に重大な影響を及ぼすインフラ系から拡がっていくものと想像しており、このような対策技術の創出国として、欧米に加えて、イスラエルにも大いに注目しています。

GLOBIS CAPITAL PARTNERS & Co

今野穣氏(パートナー、COO)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、動画サービス、AI、C2C、FinTech

2016年のトレンド:PC時代から続く、主にエンターテイメント・コンテンツやコミュニケーション領域などのオンライン完結のサービス・プロダクトは、2013年~14年のスマートデバイスにおけるWebからアプリへの一定範囲でのコンバージョンを経て、ほぼプレイヤーとして出そろい、今後はますますリアル社会との接点、日常生活の中でのインターネットという領域にその主軸が移りつつあると認識しています。

そのような文脈において、5つの切り口で今後の注目領域を紹介します。

1.「6TECH」領域での産業進化
業種・セクター的な切り口でいえば、6つのセクターとテクノロジーの融合に注目しています。3TECHとしては良く、Fin-Tech、Edu(cation)-Tech、Healthcare-Techが挙げられることがあります。私はそれにCar-Tech、Home-Tech、Frontier-Techの、(2+1)TECHを加えて見ています。「Frontier」は、宇宙やドローンなどの新たな領域を意味していますが、基本的には既存の産業の進化系の領域なので、ユーザーの日常生活における「実需」をどう組み込めるかが大事だと思います。

2. オフライン領域も踏まえたユーザー参加
ユーザーとインターネットとの関わりという意味では、スマートデバイスの普及によって、ユーザーのインターネットとの接点が多様化・細分化されるとともに、スマートデバイスが予約や決済と言ったUXを通じてバーチャル世界からの「出島」になりつつあります。そのような状況下でCtoCやシェアリングエコノミーを実現するサービスが増加しています。この領域においてもリアル社会の実需をきちんとオンラインに載せることと、規制およびその緩和による事業機会をきちんと掴むことが重要と認識しています。

3. 技術動向としての新領域の可能性
技術的な動向という側面では、AI、VR、IoTなどが挙げられるかと思います。しかしながら私(弊社の投資ステージ)にとっては、この領域がメインストリームになるのは時間軸としてもう少し先になるような気もしています。AIに関してはビッグデータ解析からどう本質的に進化できるのか、VRとしてはスムースなUI/UX設計、IoTに関してはデータ取得後の後工程における提供価値など、「プロダクト→サービス→マネタイズ」と言った進化論をどのように設計するかが肝要に思います。

4. コンテンツ領域におけるリッチ化
冒頭にエンターテイメント・コンテンツやコミュニケーション領域においては、プレイヤーとして出そろった感があると書きましたが、大局的なトレンドとして「テキスト→写真」から動画へと進化していくのは、一定程度自明な流れとなるでしょう。ただし、広く動画と言っても、その領域に対する参入の仕方やファンクションの担い方は多様に存在するわけであり、かつ動画そのものは表現手法の1つに過ぎないので、ユーザーへの提供価値や、UI/UXをどう最適化するかが各領域での勝負の分かれ目になると認識しています。

5. シリアルアントレプレナーと「素人革命」による起業家の多様化
人材面では、「0→1」を生み出すことに長けている人材は、それ自体代替可能性が低いと意味で才能と言えます。さらにそれが複数回目であるシリアルアントレプレナーは、判断の精度の高さやチーム組成などの人脈力に加え、前回よりも大きなサービス・プロダクトというモチベーションも働き、成功確度が高いです。他方、CtoCなど「素人革命」を促すようなサービスにおいては、それを設計できる人材は、これまでの論理的なスペック論とは違ったユーザーと目線の近い起業家かもしれません。

6. スタートアップとしてのソーシング(発見・発掘)領域の優位性
スタートアップ業界の競争環境と言う意味においては、先輩上場ベンチャー企業も、インターネット完結で高いマネタイズ力と利益率を誇っていたゲームなどエンターテイメント領域からへシフトしている会社が増加しており、そのような資本力の高い企業もスタートアップのサービス開始後すぐに横一線の競合となりつつあります。そのような構図の中でスタートアップは、より泥臭く、よりローコストで、スピーディーに、新しい領域や、コミュニティー、資産、タレントを発見・発掘して行けるかどうかが大事だと思っています。

東京大学エッジキャピタル(UTEC)

山本哲也氏(取締役ジェネラルパートナー)
2015年のキーワード:ロボット、AI、IoT

2016年のトレンド:

1. VR/AR分野
米国での盛り上がりは報道の通り。Facebook、サムスン、ソニーなどのVR機器がマス展開開始。ベンチャーでは、Magic LeapやJauntVRや大型調達、2016年中の期待を煽る展開を想定。コンテンツの作成や、編集、配信、流通に関連した新たな技術・サービスの立ち上げが2016年に期待される。中でもコンテンツの共有が鍵に。UTEC山本の投資先では、3D写真のFyuseを展開するFyusionが関連投資先です。

2. IoT分野
日本でも経産省・総務省主導のIoT推進ラボが設置され、政府の取り組み強化。米国でもCESの1つの目玉になる感触。ただ分野の定義が広い分、幅広くベンチャーの参入を後押しするバズワード化している印象も。2016年は具体的なキラー・アプリケーションの模索を開始する年になると思います。技術先行の会社はアプリケーションを探して当面もがくことになるでしょう。UTEC山本の関連投資先では、Dragonfly Technoloy(商用及びスマートホーム向け無線センサーネットワーク開発)。アグリ分野もTPP関連で注目増です。UTEC投資先としてはベジタリア、ルートレック・ネットワークスがあります。

3. ロボット分野
2016年は、知能化された産業用ロボットが実際の製造・物流の現場に入り出す年になるでしょう。一部、ディープラーニング系のAI技術を産業用ロボットや、自動走行車関連に応用していく試みがプレス的には注目されるでしょうが、統計処理では機器制御の全てを解消できずに、話題先行にとどまるかと。その中で、モデル・ベースのシミュレーションを軸にロボットの知能化を実現しているUTEC山本の投資先、Mujinはより注目を集めるでしょう。ドローン分野の産業用分野への応用展開も2016年には日本でも動き出すのではと期待。

4. AI分野
ディープラーニングを軸にする人工知能は、猫も杓子も味付けのキーワードとして言及し盛り上がりつつ、混乱が増すかと。TensorFlowなどがオープンソース化されたことで、それらを用いたベンチャーなども出始めると思いますが、一部、データ解析や、曖昧さが許容される画像処理や認識などの分野で限定的な用途で現場での利用が多少されると思いますが、実際の効果を示せないケースが増えて2016年後半から幻滅期に入っていくかと思っております。UTEC山本のAI分野での個人的な関心はパーソナライゼージョン。

グローバル・ブレイン

百合本安彦氏(代表取締役社長)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、ロボット、AI、C2C、IoT

2016年のトレンド:マクロ的には、来年前半に相場調整がさにに入る可能性が高いと考えているが、投資姿勢は2015年同様積極的な姿勢を崩さず、下記8つの領域を中心に50億円~100億円を、すべてのステージのベンチャー企業にグローバルに投資をしていく。

まずは昨年も注目を集めたロボティクス領域。カメラやセンシングデバイスなどの低価格化や高性能化、AI技術の進歩を背景に、大きく成長すると予測している。中でも、Jiboのようなソーシャルロボットや、ライフロボティクスのような産業用コ・ロボットの分野が伸びると考えている。

2つ目はFinTech。米国ではブロックチェーンが注目され、AndreesenやVISAが投資や事業を加速化している。この波は日本にも上陸し、日本の大手金融機関の活動も活発化するのではないかと期待している。

3つ目は昨年に引き続き、アドテク分野に注目。本領域ではより一層の質の向上が求められており、シンガポールのNearやEyotaなどのAIを使ったアドテクの成長が予想される。

Eコマースの分野では、CtoCコマースがさらに成長すると予想する。メルカリ、クリーマ、ミンネ、BASEなど、ある程度プレーヤーが出そろっており、将来的には合従連衡の動きが進むと予想される。また、近い将来、ブロックチェーンを活用した取引形態に移っていき、より一層の活発化が予想される。

クラウド分野にも注目している。AWSなどのクラウドサービスとIoTの普及により、迅速にサービス開発・運用を行うDevOpsのニーズが高まっており、RightScaleやNagiosなどのDevOps向けツールを提供する企業が欧米で増えている。こういったサービスが今後、日本でも増えると考えられる。

6つ目は、IoTを使ったビッグデータ・プラットフォーム領域。単体としてのIoT製品は普及してきたが、今後は単体のモノとしてIoTではなく、August、BitfinderやArcstoneのようにIoT機器を複数繋いで、より幅広いサービスを提供する企業が増えてくると考えられる。

他にも、近年注目されているAI領域、ヘルスケア領域にも着目している。特に監視カメラなどの動画像認識技術を利用したサービス、カスタマーサポート支援などの言語処理技術を利用したサービスや、個人の行動変容を促し、健康リスクの低減を支援するサービスなどに注目している。

Draper Nexus Ventures

中垣徹二郎氏(Managing Director)
2015年のキーワード:FinTech、IoT、Marketing Automation

2016年のトレンド:BtoC市場が中心であった日本のスタートアップシーンにおいてBtoBの存在感が増す事になるだろう。この1年でもフロムスクラッチ、Freee、マネーフォワードなど企業向けクラウドサービスの会社の大型増資が話題になった。

この分野では、北米に遅れること久しいが、Venture Beatで取り上げられた2016年に上場予定企業の記事で挙げられた36社のうち8割がB向け企業、引き続き北米もB向け市場は熱い。Draper Nexusは、1号ファンドからB向けの企業向けの投資を中心に進めており、どの会社も業績は拡大。SaaSがいよいよ日本でも普及期に入る。SaaSの中でも、マーケティングオートメーションの分野は、競争が激化する。この分野に弊社も2社(イノーバ、フロムスクラッチ)に投資を実行しているが、イノーバはHub Spot、フロムスクラッチはMarketo、Pardot、Eloquaといった外資系のツールとの競合という形になっており、国内の増資のニュースだけでは見えない激しい競争が始まっている。SaaSの普及において導入支援・サポートの役割は重要であり、弊社投資先のtoBeマーケティングも、SaaSの導入・サポートの企業として、急成長が予想される。

AIも引き続き注目。AIを何に活かすのか、アプリケーションや市場をどのように掴むのかが重要なことは言うまではない。Draper Nexusの北米の投資先であるCylance社は、AIをセキュリティーソフトに活かしており、マルウェア対策ソフトとして急成長。日本でも、2016年はさらに興味深い会社が出てくると期待。

近年盛り上がりを示す事業会社のCVCやアクセラレーションプログラムが更に活発化するだろう。並行して大企業によるスタートアップの買収の件数が増加することも期待したい。

伊藤忠テクノロジーベンチャーズ

河野純一郎氏(パートナー)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、C2C

2016年のトレンド:2016年に盛り上がりを見せる分野は、FinTechです。会計や請求などのバックオフィス効率化、決済分野を中心に、すでに投資の活発化、市場への浸透が進んでいますが、「一部の人だけが享受している金融サービスの大衆化」というFinTechの本質という意味では、まだまだ開拓余地のある分野であると考えています。提携や出資、自社サービスの展開など、既存金融機関も危機意識を持つだけでなく実際の行動に転化してくることも予想されるため、プレイヤーも資金の出し手も含め群雄割拠の様相を呈しながら、市場発展を迎えていくのではないでしょうか。この分野で個人的に注視しているのは米国アトランタを拠点とする中小企業向け融資サービスを展開する「kabbage」です。

また、2016年に市場全体として盛り上がるかは分かりませんが、個人的に注目している分野は「農業」です。農業従事者の高齢化や広大な耕作放棄地の存在という構造的な課題、TPP参加や農地法改正に伴う参入緩和等々の市場の潮目の変化、ITとの親和性と改善可能性の高さ。難しい領域ではありますが、ベンチャーキャピタリストとして是非チャレンジしていきたい分野と考えています。

日本のVCが予想する2016年のスタートアップ・トレンド(前編)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。