日本の独立系VCのグローバル・ブレインが200億円規模となる「グローバルブレイン6号投資事業有限責任組合」を設立し、12月末でファンド組成のファーストクローズをして運用額150億円で投資を開始すると発表した。ファンド組成のセカンドクローズを2017年6月末としており、最終的には上限に設定した200億円規模で、2026年までの10年間で運用することになる。この12月にも投資を開始し、年間50億円程度をスタートアップ企業に投資していく。
グローバル・ブレインはEC、ゲーム、メディア、教育、クラウド、広告、IoT、Fintechなど多ジャンルで国内を中心に幅広く投資してきた日本の独立系VCだ。2001年に森トラストグループをLP出資者として20億円の1号ファンドを組成したのを皮切りに、ニフティ、SBI証券、KDDI、産業革新機構などを出資者として、これまで5つのファンド、累計355億円を運用してきた。
これまでレアジョブ、5Rocks、nanapi、Luxaなどで9つのIPO、26のM&Aのエグジットの実績がある。現在成長中のスタートアップ企業としては、ラクスル、メルカリ、Baseなどがポートフォリオにある。グローバル・ブレインはKDDIや三井不動産など大手企業と協力してCVC運営も行っている。
VCとしての特徴は名前通り活動がグローバルであることと、研究者や技術者としてのバックグラウンドを持つ投資家を内部に持つことだという。特に最近はロボティクスやAIといった研究開発やハードウェアに近い領域での取り組みの比重が増えている。
米国や韓国、東南アジア、イスラエルなどとのVCと協調投資によりグローバルなネットワークを構築しつつあるという。米国スタートアップ企業への投資では、トップティアの海外VCと協調投資を行い、グローバル・ブレインが日本や東南アジア市場の経験、知見を活かした形で戦略的に技術ベンチャーのグローバル展開を支援する枠組みができつつある、としている。
グローバル・ブレインのLP出資者としては、今回クールジャパン機構、JTB、三井住友銀行も戦略的LPとして参加。クールジャパン機構は50億円を出資している。ほかLP出資者としては住友林業、電通国際情報サービス、KODENホールディングス、KDDI(KDDI Open Innovation Fund)のほかに大学、海外機関投資家なども含まれるという。グローバル・ブレイン代表取締役社長の百合本安彦氏は都内で開催した自社イベントで「海外機関投資家から出資を受けたのは日本のVCとしては初めて」といい、「官」からの資金に加えて、大学、産業界からの出資により、産官学連携を進めやすい枠組みができたと話した。
日本の大手有力企業をLP出資者として持っていることで、スタートアップ企業の持つ技術シードを社会課題へ素早く適用していく狙い。特にグローバル・ブレインが強調するのは2020年の東京オリンピックで、観光やインバウンド産業の競争力強化を目指すとしている。
スタートアップ企業への投資に回る資金であるファンドの資金は近年増えつつある。2008年のリーマンショック以降に極端に落ち込んでいた国内VCのファンド組成額は250〜300億円と低調だったが、日本ベンチャーキャピタル協会の調査によれば、2016年上半期の組成額はすでに2500〜2600億円と、今年は3500億円に達する見込みだ。事業シナジーを見込んだ大手企業によるCVC設立やLP出資が、この流れの背後にあり、ファンド組成のニュースが続いている。