Alphabet傘下のスマートホームブランドNest、欧州4カ国へ販路を拡大

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AmazonAppleといった企業がスマートホーム用のアプリ、ハブ、デバイスの準備を進める中、Googleも同分野での取り組みの”温度”を上げている。Googleが数年前に32億ドルで買収したスマートホーム企業のNestは、現在ミュンヘンで行われているDLDで、新たに4ヶ国(ドイツ、オーストリア、イタリア、スペイン)で同社のサーモスタット、セキュリティカメラ、火災警報器の販売を開始すると発表した。

それぞれの税込小売価格は、Nest Learning Thermostat(サーモスタット)が249ユーロ、Nest Protect(煙・一酸化炭素を感知する火災警報器)が119ユーロ、Nest Cam Indoor(屋内用セキュリティカメラ)とNest Cam Outdoor(屋外用セキュリティカメラ)が199ユーロとなっている。本日からプレオーダーがはじまり、出荷時期は2月中旬になると同社は話す。

Nestは長らく販売地域の拡大を狙っていた。同社のスマートサーモスタットやセキュリティカメラ、火災報知器は既に約190ヶ国で使われているものの、これまで同社は7ヶ国でしか正式に販売・サポートを行っていなかったのだ(さらにこの7ヶ国への進出にも時間がかかっており、直近の進出先であるヨーロッパの数か国での販売開始は2014年9月のことだった)。

Nestでヨーロッパ担当ジェネラルマネージャーを務めるLionel Pailletは、販売地域拡大の遅れの原因は、Googleによる買収に関連した論争や疑惑のせいではなく、意図的なものだと説明する。

(この話には少し背景がある。AmazonのEchoに対抗して、GoogleはGoogle Homeというスマートホームハブの開発を自社で進めていたため、Googleの傘下に入ったNestの将来に関する議論が巻き起こっていたのだ。最近の話で言えば、ドイツの活動家がNestを標的として、Googleのプライバシーポリシーを非難する内容のなりすましサイトを公開していた。その後、Googleが法的措置をちらつかせたことで、同サイトは取り下げられた)

「事業のスケールに関する計画を立てるのに時間がかかったため、結果的にローンチのタイミングも遅くなってしまいました」とPailletはインタビューの中で語った。「全ての製品を一斉にさまざまな地域でローンチし、あとは運任せというやり方の企業とは違い、私たちは細かな戦略を練っていました。例えばイギリスとオランダへの進出も数年がかりでしたが、結果的に製品は飛ぶように売れ、世界中の何百万という世帯で使われており、前年比で50%の成長を記録しています。スマートホームはまだ新しいコンセプトのため、私たちは新しい市場へ進出する前にしっかりと基礎を作っておきたかったんです」

一方で今後の進出先に関するロードマップの詳細は不明で、アジアでの正式ローンチがいつになるかもわかっていない。

Nestの共同ファウンダーで製品部門のトップを務めるMatt Rogersは、スマートホームが一般に普及し一元化するまでには、まだ「3〜5年」かかるだろうと話していた。

今回発表された4ヶ国での販売開始までに、Nestがクリアしなければならなった課題のひとつが、プロダクトのローカライズだ。例えばドイツであれば、音声機能がきちんとドイツ語に対応しているかはもちろん、ハード面でも国の基準に則っているか確認が必要だった。Rogersによれば、同社は火災報知器に使われるネジをテストし、ドイツの家の天井によく使われる材質に合うように調整しなければならなかった。というのも、ドイツではこのような製品を壁に取り付けることが禁じられているのだ。

もともとNestで働いていたスタッフの一部は、昨年Googleに移って同社のIoTプラットフォームの開発にあたっているほか、共同ファウンダーのTony FadellもNestを去ってしまった。しかしPailletは、Nestを今後もビジネスとして成長させ続けていくと話す。さらに彼は、過去2年間で2万6000人ものディベロッパーがNestのAPIを利用しており、Nestを消滅させる計画もないと語った。「市況はNestブランドにとって良い状態にあると思います」と彼は話す。

ここでひとつ重要な点は、GoogleはNestのプロダクトを(Google HomeであれAmazonのEchoであれ)どんなホームハブにも接続できる機器として開発してきたということだ。この点に関しPailletは「消費者に選択肢を与えるのが狙いです」と話す。さらにRogersは、Nestが接続しているハブの中で最も人気があるのはAmazonのEchoだと付け加えた。現在のところEchoが圧倒的人気を誇っていることを考えると、これは当然の結果だといえる。

また、前回販売地域を拡大したときと同じように、今回もそれぞれの国におけるパートナー企業が発表された。ドイツとオーストリアでは、Nest Protect、Nest Cam Indoor、Nest Cam Outdoorの3製品がAmazon、Media Markt、Conrad経由で販売され、Nest Learning Thermostatも別途今年中の販売開始を予定している。

イタリアでは、Amazon、Media World、ePriceにて、Nest Learning Thermostat、Nest Cam Indoor、Nest Cam Outdoorのプレオーダーが開始される。

スペインでは、Amazon、Media Markt、El Corte Inglésにて、Nest Learning Thermostat、Nest Cam Indoor、Nest Cam Outdoorのプレオーダーが本日から開始される。

ほかにも取り付けサービスを提供するパートナー企業として、Baxi(スペイン)、Engie ItalyとWind Tre(イタリア)、Generali Group傘下のCosmosDirekt(ドイツ)の名前が挙げられた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

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TechCrunch Japan

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