マーケティングオートメーション(MA)ツールの導入支援を行うtoBeマーケティングは10月4日、複数のベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資により総額4億円を調達したことを明らかにした。今回のラウンドには既存投資家のDraper NexusとSalesforce Venturesに加え、新たに三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタルが参加している。
2015年6月設立のtoBeマーケティングは同年9月にDraper Nexusから3000万円、2016年6月にDraper NexusとSalesforce Venturesから2億円を調達しており、今回がそれに続くラウンドとなる。
2年間で蓄積したメソッドやナレッジを仕組み化、顧客は500社を突破
toBeマーケティングでは創業時から一貫してSalesforceの提供するMAツール「Pardot」とCRMツール「Sales Cloud」「Service Cloud」を組み合わせた導入支援、活用コンサルティングを提供してきた。
資金調達をするデジタルマーケティング関連のスタートアップといえば、MAツールを含め自社でプロダクトを開発している企業が多い。その中でtoBeマーケティングのように既存のツールを顧客に供給する“ベンダー”の存在は少々異質だ。
とはいえ市場の成長と相まって2016年6月には170社ほどだった顧客は現在500社を突破した。毎月継続的に顧客数を積み上げていて、来年度の目標は1000社。その先にはエグジットを見据える。
toBeマーケティングの特徴はオリジナルの導入支援・活用サポートに加え、MAツールを補完する一連のサービス「MAPlus(マプラス)」を提供していることだ。
たとえばPardotのビジター情報のIPアドレスを解析することで、企業名を特定する「ABMサポート」はその1つ。従来は1人のウェブ閲覧者にすぎなかったユーザーを企業単位で可視化することができれば、その後のマーケティングやセールスのやり方は大きく変わってくる。
単なるベンダーではなく「このような機能があればよりMAツールが便利になる」という補完的な機能を自社で開発し提供していることが、toBeマーケティングの強みだ。
加えて代表取締役CEOの小池智和氏の話では、サービス開始から2年ほどが経過しメソッドやナレッジが蓄積され、効果的な体制を構築できてきたことも成長の要因だという。
たとえば以前は属人的だったMA導入時のサポートも、現在はポイントを150個ほど定義しそれに沿って画一的に行っている。導入後にやるべきことはトレーニングメニューとして仕組み化。MAツールを実際に運用する際には「伴走活用支援」として顧客ごとにメニューを作るが、それでもいくつかのパターンに類型化されるため、基本的にはカフェテリアのように用意されたものから選択する形式だ。
そこに動画コンテンツやオンラインセミナーを用意し疑問点を解決できる環境を用意しサポートしつつ、個別の対応が必要な場合は時間単位で金額を設定し応じる、といったようにこの2年間でシステマチックな体制を作り込んできた。
MAPlusと伴走活用支援を強化し、導入支援実績1000社を目指す
今回小池氏の話で興味深かったのが、ここ1年ほどで「顧客のフェーズが変わってきた」という話だ。
「Google アナリティクスやグループウェアと同じように、ウェブサイトを持っていて何かをやる企業はMAを検討するフェーズになってきている。以前は啓蒙活動に近かったが、最近ではMAの導入は決めたけどどれにしようか迷っているという顧客に提案する機会が多い。MAに対する予算が確保されているというメリットがある一方で、複数のツールと常に比較されるという難しさもでてきた」(小池氏)
実際toBeマーケティングが支援する企業は大手製造業メーカーや、地方の中小企業などバラエティに富んでいて、一見MAツールと距離がありそうなイメージの企業も多い。「MAの認識が変わりチャンスが広がってきている状況」だからこそ、さらなる成長を目指し資金調達を実施した。
今回調達した資金を元に、toBeマーケティングではMAPlusの開発と伴走活用支援の体制を強化する。MAPlusについては「メールが開封されなかった場合に資料を郵送する」などMAツール上でとれる選択肢を増やすとともに、現在提供している機能を改善し使い勝手の向上を計る。
伴走活用支援の体制については、特に企業のMA活用を支援するカスタマーサクセス人材の採用、育成が今後の成長に直結するため重点的に強化するという。
「最近よく言われるのが、MAはやりたいけど運用できる人がいないということ。MA専属の人材をつけるほどではないが、運用をサポートできる人が欲しい企業は多く(ここがどれだけ充実するかで)成果が変わる。MAツール自体は他社のものでいいが、それを保管するツールや支援体制を提供することでより多くの企業をサポートしていきたい」(小池氏)