自律型攻撃ドローンによる果てしない復讐戦を避けよ

西側が中東を空爆した:デジャビュ以外のなにものでもない。20年前、米国はトーマホーク巡航ミサイルでスーダンとアフガニスタンを攻撃した。そして2日前、米国はシリアを攻撃した…やはりトマホーク巡航ミサイルで。各攻撃のメリット/デメリットはともあれ、この20年の間に小規模戦略戦攻撃のための技術が変化していなかったというのは、少々驚くべきことではないだろうか?

とは言うものの、次の10年で、戦略は大幅に変化するだろう。しかもおそらくそれは良い方向にではない。先週Kelsey Athertonがツイートしたこの鋭い1行に思いを馳せてみて欲しい:

戦争の未来は100ドルのクワッドコプター(四角形)たちを迎撃する100万ドルの灰色の三角形たちとなるだろう

もちろん、安価なドローンたちは、すでに戦場で小規模には用いられている:ISISが、ヒズボラが、ハマスが、そして麻薬カルテルたちがそれを利用している。そしてもちろん世界中の、従来の国家の軍隊によっても。しかしそれらは、人間の操縦するドローンであり、かつ短距離、しばしば場当たり的な方法で使用されている。興味深いが実際には戦略的に重要ではない。

その一方で、現在世界は人工知能とオートメーション技術のカンブリア大爆発の真っ最中である。たとえば、自動運転者の1人開発プロジェクトとして始まったスタートアップのComma.aiのことを考えてみて欲しい。あるいは驚くべきSkydioについて考えてみるのも良いだろう。この自律飛行ドローンは障害物を避けて飛行しながら、あなたの後をどこまでも追う。

…私たちがどこに向かっているかおわかりだろうか?現在は、強大な軍事力だけが数発の爆弾を遠くの敵に投げつけて、政治的論点を強調することができる。だが、大きなSkydiosの群れを想像してみてほしい。それらは指定されたGPSの位置、もしくは視覚的ランドマークをめがけて飛ぶ、もしくは特定のナンバープレートの車を追いかけるように再プログラミングされている。もちろん大量の爆発物を抱えてだ。

トマホーク1基の費用は187万ドルである。個人的には、ISIS、ヒズボラ、ハマス、そしてシナロア・カルテル(メキシコの犯罪組織)などの有能で裕福な非国家勢力…その他のあらゆる好ましからざる勢力が、自律飛行で対象を狙う攻撃型ドローンの群れを生み出す日は、それほど遠くないのではと思っている。そうしてその群れを目標となる場所へと送り込むのだ…1基のトマホークよりも遥かに少ない費用で。自律飛行と目標追跡のためのソフトウェア/AIモデルは、自動運転車のような完璧さを求められることはない。武力を誇示してパニックを起こしたいだけなら、50%の失敗率でも効果は十分以上だ。

国家やテロ勢力、麻薬カルテル、夢想的カルト集団などが、何千人もの人びとに犠牲を与え、数百万人に絶え間ない恐怖を与える能力を持つ多極化した世界で、果てしない相互テロの応酬を想像することは、ぞっとすることながら極めて容易である。強い復讐の炎に包まれた沢山の様々な勢力が、散発的に果てしない攻撃を加えてくる。それぞれの攻撃での犠牲者はせいぜい100人程度だとしても、攻撃を受ける側に底なしの恐怖と怒りを引き起こす。制御することの難しい怒りだ。ハッキングのように、自律ドローンによる攻撃は非常に防ぎにくい。

おそらくこれをSF的な妄言と笑うこともできるだろう。それにも一理ある。このようなことがまだ起こっていないことは事実だ、しかし商用ドローンの兵器への応用例は、はっきりとした警告のサインなのだ。ドローンの馬がまだ1匹もやってきていないのに、納屋のドアを固く閉ざそうとするのは、間違っているし馬鹿げた先走りだという意見には同意する。西側諸国が、研究の制限やハードウェアやソフトウェアのコントロールを考え始めるべきだと言いたいわけではもちろんない(まあ、たとえそれが上手く行ったとしても、それは結局は無意味だ、ドローンのハードウェアは安く、研究開発はグローバルに行われているからだ)。

しかし、もし自律飛行する攻撃型ドローンが、非対称戦略攻撃を可能にした場合には、それらにどのように対処すべきかについて考え始めることは、時期尚早ではない。そして、それが起こる前に、武力行為を最小限に抑えようと努力することも早すぎることはない。理想的には、大きな怒りを感じる度にミサイルを投げつけて解決しようとするのではなく、世界中で燃え盛る紛争の根本原因を解消するように務めることが大切なのだ。なぜなら、私たちが力で対抗しようとするなら、それほど遠くないある日、私たち自身の災厄となって跳ね返ってくるからだ。

(本記事の原題は “Mutual assured dronestruction” というものである。これは “Mutual assured destruction” (MAD:相互確証破壊、2つの核保有国が核戦争を起こせば確実に双方とも滅んでしまう状況)のもじりで、ドローン群による果てしないゲリラ的復讐戦に対する心配を表現したものである)

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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