語学力よりつながり重視、多様性をフラットに楽しめる英会話カフェ「LanCul」が5600万円を調達

LanCul代表取締役CEOの阪野思遠氏

語学スクールより気軽に英語での会話を楽しみたい。身に付けた英語を忘れないように話す機会を持ちたい。そうした人たちに向け、最近、都市部を中心に英会話カフェのサービスが増えている。その英会話カフェ事業を展開するLanCul(ランカル)は9月25日、日本ベンチャーキャピタル、DBS、StartPointを引受先とする、総額約5600万円の資金調達実施を発表した。

LanCulは2013年2月の創業。下北沢でカフェと英会話を組み合わせた、いわゆる「英会話カフェ」を開設し、運営してきた。現在は、10月1日にスタートする2店を含めると、都内17店のカフェ・バーでサービスを展開する。1店舗目の下北沢の直営店以外では既存のカフェ・バーと提携し、空席をシェアする形を取っている。

LanCulのサービスは大きく分けて、グループトークの「CONEECT」とマンツーマンレッスンの「FOCUS」の2つ。主要サービスのCONNECTでは、ユーザーは予約不要で全店舗を利用可能。自分が行きたいときに各店を訪れて、ブラウザ上のシステムからチェックインした後は、飲み物や食べ物をとりながら「メイト」と呼ばれる外国人スタッフと自由に英語での会話を楽しめる。メイトの顔ぶれや混雑状況をクラウドで確認して、訪れる店を選ぶことも可能だ。

料金体系はスポーツジムと似ていて、いつでも通い放題のプランで月額1万9800円、平日夕方のみ通い放題のプランが月額1万1980円、平日午後のみ、または土日祝日のみ通い放題のプランでは、それぞれ月額9800円(いずれも税抜価格)。このほかに月4回・月2回利用可能なプランと、単発で1時間だけ利用できるプランがある。

月額制の通い放題各プランでは、規定の日時の範囲内であれば、何回でも、何時間でも通うことができる。また逆に30分だけ顔を出す、といったライトな使い方も可能だ。LanCul代表取締役CEOの阪野思遠氏は「コミュニティとして濃い付き合いができるようなサービス・料金設計をした。週4〜5回通うというユーザーもかなりの割合でいる。友だちとお茶する感覚で利用してもらっている」と話す。

阪野氏は「ユーザーが他の国の人の考え、文化の多様性に触れることができ、利害関係なしで会話できる場として、サービスを提供している。LanCulのグループトークでは、日本人同士でも英語で会話するのだが、年齢や肩書きなどの上下関係なしでフラットに話ができる。そういう会話を楽しむことで元気になってもらい、ユーザーの生活に活力をもたらす、というのが、LanCulで本来やりたいこと」と語る。

情報番組や雑誌、ウェブメディアなどでも話題となる英会話カフェには、競合サービスも多い。阪野氏は「競合には、語学スクールを母体にした英会話カフェが多いが、LanCulは元々の目的、サービスのアプローチが違う」という。「LanCulが目指すのは、会話によって他の文化に触れ、生活が豊かになること。多様性を実感して、人と人とのつながりをつくるために会話ができるようにしよう、というサービスなので、英語の上達そのものを目的にはしていない」という阪野氏。また、スクール発の英会話カフェでは、利用料金は安いがスクールの受講へつなげることを目的とした、客寄せ的なものもあるという。

語学×外国人とのつながりということで言えば、「フラミンゴ」のようにカフェで講師と待ち合わせてレッスンを受けられるような、スキルマッチングの仕組みもある。こうしたサービスについては、阪野氏は「英会話スクールと同じで予約が必要であることと、マンツーマンレッスンなので自分に合う先生を探す手間がかかるということが難点」と話す。「予約なしでも行ける利便性、コミュニティの濃さによる安心感がLanCulの特長。僕は人とのつながりを作るにはコミュニティが一番と考えている。LanCulでは会員同士の会話でもケミストリーが生まれている。『誰かいるから顔を出す』といったコミュニティの濃さは、マンツーマンでは難しい。つながりを育むことができるのがLanCulの価値だ」(阪野氏)

こうした「つながり重視」の考え方の原点は、阪野氏の生い立ちに由来する。阪野氏は上海出身。10歳の時、母の再婚で日本へ来ることになった阪野氏は、まったく日本語が話せなかった。初めは日本語も、日本の文化も受け入れられなかった阪野氏。だが、当時経験した言葉の壁・文化の壁、味わった挫折が阪野氏を「オープンにした」という。

「カルチャーを受け入れて好きになること、知りたいと思う気持ちができたことで、友人もできるようになり、言葉もわかるようになった。オープンになることで、コミュニケーションの“良い循環”ができる」と阪野氏。その後、英語も同じように「好き」「知りたい」というところからスタートすることで、すんなり身に付いたと話す。「コミュニケーションの濃さ、モチベーションの高さが外国語を身に付けるには重要。文法から入る語学教育は面倒くさいし、行きたくない気持ちが生まれて合理的ではないと思う。なぜみんな、違うやり方を続けるのか」(阪野氏)

LanCulでは外国人スタッフの採用でも語学重視ではなく、会話を盛り上げるファシリテーション能力、ユーザーがハッピーになれるかどうかを重視しているという。ユーザー側も最初は「アメリカ英語が学びたい」「イギリス英語が話せる人がいい」など、英語ネイティブによる会話を求めるが、結局は「楽しくなければモチベーションが下がり、続かない」ということで、楽しく会話できるメイトの方が人が集まるそうだ。現在在籍するメイトの数は、フルタイム、パートタイム合わせて約70名。出身国は約30カ国にのぼる。

今回の資金調達は、LanCulにとってシードラウンドにあたる。採用および店舗展開を加速し、2020年末までに関東一円を中心に100店舗までの拡大を目指すという。また、全国展開や東アジアなど海外への進出も検討しているそうだ。

現在は英語での会話ニーズが高いため、英語にフォーカスしているLanCul。だが「さまざまな国の出身者が自分の国や、旅してきた国のカルチャーを自然と伝える形になっている」と阪野氏はいう。今後、多言語展開も視野に入れていると言い、同じモデルで別の言語のサービスも考えているとのことだった。

さらに、よりテクノロジーを活用し、ユーザーに個別最適化された利用環境を整えたいというLanCul。阪野氏は「関連データの蓄積により、データを活用した何らかのサービスの提供にも取り組みたい」と述べていた。

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TechCrunch Japan

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