Twitterは基本的に、投稿されたすべてのことを伝達しようとする仕組みになっている。あらゆることを伝えることにより、世界の動きをリアルタイムで伝えるものとして機能しているわけだ。
ただ、その性質が、むしろTwitterの利用拡大を阻害する要因ともなってしまっている。すなわち、多くの人をフォローすると、本当に気にしている人の情報が入りにくくなり、結局新しく誰かをフォローすることを躊躇うようになってしまう。
まず、Twitterを使い始めた時期のことを考えてみる。メジャーなメディアアカウントや、気になるセレブなどをフォローし始めるのが一般的だろう。もちろん友人、知人などもフォローすることになるだろう。そして相手の全てのアップデートが手元に届くようになる。完全にリアルタイムで情報は届き、気になる人々の「今」を共有することができるようになる。この段階では全ツイート数もそれほど多いわけではない。大事なツイートを見逃すということもない。
面白さを感じて、フォローする人を増やしたとしよう。世界が広がるように感じて、さらにもう少し増やしてみたとする。そうこうするうちに、ちょっとした知り合いや、職場の仲間を見つけて、こちらもやはりフォローすることになるに違いない。面白そうな人を探すのにも馴れてきて、興味ある分野のエキスパートなどもフォローするようになるだろう。リツイートなどがタイムラインに表示される機会も増えて、そのリツイート元などをフォローするようにもなる。@リプライを受けたり、あるいは自分をフォローしてくれる人も出てくる。とくに最初のうちは、そういう機会がある毎に相手をフォローバックしたりすることだろう。
この頃から徐々にタイムラインが混雑してくることになる。フォローした相手の中には、1日に何十回もツイートする人もいて、他の情報を埋もれさせてしまうことになる(TechCrunchアカウントもツイート数が多いことでは、なかなか他に負けていないだろうと思う)。Twitterは「ストリーム」であり、読む記事を順番に貯めこんでおくための「キュー」ではない。しかしそれでも全部を読みたいと考える人もいる。とくに読み返してみたときに、面白いジョークやリンク、あるいはたまにしかツイートしない親しい友人からの話が埋もれてしまっていることに気づいたときなど、全てを読んでおかねばならないという気持ちにさせられたりする。しかし、そういう圧力にさらされながらTwitterを使い続けるが、徐々にTwitterに疲れてしまったりすることがある。
ここがTwitterにとっての大問題なのだ。
利用者のキャパシティ問題
多くの情報が流れ去っていくことには徐々に慣れてくる。ただ、そういう状況が「楽しいもの」とは感じられなくもなってしまうのだ。詳しい人ならば、見逃したくない情報のみをまとめたリストを作成することで対応することになる。しかしたいていの人にとって、そうした操作はハードルの高いものだ。増やし過ぎたフォローリストをなんとかしたいと考え始めるのだが、何をどうすれば良いかわからないというのが一般的なケースだ。
Twitterからは「もっとフォローする人を増やしてみましょう」というレコメンドがやってくる。興味分野から繋がりがありそうだということでレコメンドしてくれることもあるし、あるいは広告関連のレコメンドもある。しかしアンフォローについてのレコメンドはしてくれないのが不親切に思うこともある。誰かをアンフォローしようとすると、何度かのクリック操作が必要になる。10アカウントをアンフォローしようと思えば、それはかなりの手間になってしまうのだ。そしてふと気づいたときにアンフォローしたくなっている数は10や20ではなくなっていることの方が多い。Follow Fridayなんてものも盛り上がらなくなっている。当然のことだ。フォロワーを増やせば、むしろTwitterがつまらなくなるという人も多いからだ。
楽しさがわからず、全く活用できずにやめてしまう人が多いのもTwitterの特徴だ
処理能力がいっぱいいっぱいになって、そしてTwitterにとって致命的となる行動が生まれる。すなわち、Twitterを見なくなったり、あるいはTwitterで新しい人をフォローしなくなったりするわけだ。
Twitterを見なくなるとはすなわち、Twitterの収益源たる広告を見なくなるということだ。Twitterの広告はクリックされてこそ売上げに繋がるのに、人々がTwitterを訪問しなくなれば全く売上げがあがらなくなってしまう。また、Twitterフィードを見なくなれば、誰かのツイートにリプライしたり、お気に入りに登録したり、リツイートすることもなくなってしまう。これはすなわちさらなるTwitterサイト上での不活性化に繋がってしまう。広告クリック数は減り、活発な交流は失われ、アクティブ利用者数も停滞することになってしまう。
また、各利用者がフォローする人を増やさなくなってしまうと、Twitterの魅力であるはずの、話題の拡散が発生しなくなってしまう。拡散しない話題をTwitterに投げたいと思う人は少なくなるだろう。煉瓦塀やブラックホールに向けて話し続けたいと思う人は少ないはずだ。Twitterは楽しいものだと思って使い始めた人も、だんだんと孤独に耐え切れなくなって使うのをやめてしまうこともある。
何がいったい楽しいのだろう。そう思いながらやめていった人のアカウントが大量に放置されているのも、Twitterのひとつの特徴となってしまっている。
やめていってしまった人々
Mike Isaacなどのレポートによると、Twitterには10億以上のアカウントが登録されているそうだが、実のところアクティブな利用者は(Twitterも認めているように)2億1800万程度しかいないのだ。これはすなわち、Twitterがマネタイズするための規模を確立できずに喘いでいることを示す数値であると言う人もいる。
さらに、FacebookからTwitterに流れた人も、結局Twitterの利用を止めたり、あるいは止めないまでもFacebookに主要な活動場所を戻しつつあるケースもみられる。Facebookの方が、人との繋がりを感じやすいというのも一因だろう。何かを投稿すると、実生活での親友たちがすぐに「いいね」をクリックしてくれる。あるいはTwitterのメンションよりもはるかに多くのコメントがやってくる。他の人と競いつつウケそうな話題を見つけてくる必要もない。実生活で友だちなので友だち登録をするという、シンプルなルールが心地よかったりもする。
Facebookはフィードの表示に手を加えていて、これはすなわち、利用者に多くの友だちやページをフォローしてもらおうという発想に基づいたものだ。投稿されたものを全て表示するのではなく、より多くの「いいね」やコメントを得たもののみを表示する仕組みを採用しているのだ。
リアルタイムのニュースを、可能な限り多く取得するという意味では、Twitterの方が優れていると言うこともできよう。ただ、どちらのフィードが面白いかと言えば、それはFacebookの方だと言う人の方が多いかもしれない。Facebookの狙いが常にうまく言っているというわけでもないが、面白い話題のみを表示しようとする試みは面白いものだ。もちろん、特定の利用者に関しては、全てのフィードを表示するというような設定も可能だ。また話題によって表示しないようにしたりする設定も利用者側で行うことができるようになっている。自分好みに設定するには、たくさんのクリックを行う必要があり、そういう意味ではまだまだ進化の余地はある。しかし利用者にとって便利な仕組みを用意しているのは良いことだと受け入れられているようだ。
フィードのフィルタリングを行わないということで、利用者の興味を失ってしまうというような事象を経験しているのはTwitterのみではない。たとえばInstagramも同様な問題を抱えているようだ。但しInstagramの場合は、まだまだサービスが始まってからの年月も浅く、利用者数も相対的に少ないと言える。また「いらない」ものであるとは言っても表示されるのはいずれも(それなりに)可愛い写真ばかりで、Twitterほどの問題は抱えていないと言えるのかもしれない。
いずれにせよ、利用者にストリームの表示設定権を渡すかどうかというのは、アプリケーションデザイン上での非常に重要な問題だ。但し、Twitterはフィードをそのまま利用者に提示するという方式で成長してきた。そういうスタイルを求めている利用者も多いわけだ。それであれば、フィード表示についてはそのままに、別の解決策を探すべきなのかもしれない。
フィード表示の「調整」について
「すべて流す」という方針を保ったまま、使いやすさを実現するにはどのようにすれば良いのだろうか。
Twitterは、本来の目的として「共通の趣味をもつ人すべてに繋がってもらいたい」ということがある。フォロー関係が広がっていけば広告表示機会も増えていくわけだ。しかし、だからこそ、逆にアンフォローしたいという人の目的にも柔軟に対応できる仕組みを用意しておくべきだと思うのだ。
現状では、とくにモバイル版からアンフォローするのが大変な作業になってしまう。
たとえばツイートの拡張表示画面には、発言者を簡単にアンフォローできるボタンを用意するくらいのことはしても良いだろう。さらに言うならば、Twitterは@リプライ、リツイート、お気に入り登録、ないしはツイートをクリックしたりプロフィールを見たりしたかどうかを管理しているはずだ。そうした情報を用いてサイドバーないしツイート表示の中で、むしろアンフォローをレコメンドするようなことをしても良いと思う。
アンフォローの仕組みを提供することで、Twitterは利用者に対して「見やすい」フィードを提供できるようになる。エンゲージメントの程度に基いて、フォローしている人のランク付けなどは簡単に行えるはずだ。その情報に使って、たくさんツイートしているけれどもランキングの低い人をアンフォローするような仕組みを導入しても良いのではなかろうか。もちろん、ランキングの高い人を簡単にリスト登録するようなツールを提供するという方法もある。Twitter利用者の75%が携帯端末からアクセスしていることを考えれば、こうしたツールはモバイル環境向けに提供されることが必要であることは言うまでもない。
Twitterがこうした問題解決のための手法を提供しないのであれば、不満を感じる利用者はTwitterから離れてしまう。そうなれば、新しく使い始める人も面白さを感じなくなってしまう。何かについてツイートし、その反応がすぐに戻ってくるというのは非常におもしろいことだ。世界と繋がっている感じを持たせてくれる。Twitterの今後は、そうした「親しい関係」をより広い世界の中で提供し続けることができるのかによっていると思われる。「公開企業」として成功するためには、広く世の中に対して魅力を訴えていくことが大切なことだろう。
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(翻訳:Maeda, H)