小売業界向けのデータ活用ソリューションを展開するFlow Solutionsは9月26日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額1.5億円を調達したことを明らかにした。投資家リストは以下の通りだ。
- DNX Ventures
- アコード・ベンチャーズ
- 博報堂 DY ベンチャーズ
- 楽天キャピタル
- Darwin Venture
Flow Solutionsは小売店舗が“データドリブンな意思決定”を行うのに必要となる基盤を開発するスタートアップだ。主要プロダクトの「InSight」ではカメラなどのIoT端末を通じて取得した来店客数や顧客属性、POSや店内の導線、レジ待ちなど店舗内の各種データを中心に、天気やスタッフのシフトなど付随する情報を含む様々なデータを統合し、ダッシュボード上で可視化する。
店舗の売上に直結する主要な指標をリアルタイムで常に把握できるのはもちろん、様々な角度からデータを収集することで従来は実現できていなかった観点からの深い店舗分析が可能。それにとどまらず客数や店内の混雑を予測した上で現場のスタッフに次のアクションを提案する機能を備えるほか、スタッフのデータ活用をサポートするeラーニングシステムなども提供している。
これまでFlow Solutionsのソリューションは59ブランド、800以上の店舗が導入。たとえば商品棚ごとのパフォーマンス分析を実施した上で店内の商品陳列が変更されるなど、同社のサービスを活用した実店舗での改善事例も多数生まれているという。
なおInSightに関しては店舗ごとの月額サブスクリプションモデル、IoTセンサーなどのハードウェアについても同様にHaaS(Hardware–as–a–Service)モデルの月額制だ。
Flow Solutionsによるとカナダや米国、欧州などではすでに7割程度の小売店で来店者分析や転換率の計測などデータに基づいた店舗分析が実施されているそう。一方で日本ではPOSに集積したデータ分析が主流になっていて、購買に至らなかった人に関するデータなど網羅的な店内データの収集や分析が進んでおらず、店員の勘や経験に依存している店舗も未だに多いようだ。
「顧客データの必要性を感じ、いち早く分析システムを導入した小売業者でも、データがバラバラであったり、顧客を洞察するまでに及んでおらず、従来は経験と勘に基づいた意思決定をせざるを得ない状況にあります。顧客のニーズが多様化し進化するのを感じながらも、今なお、ほとんどの小売業者が、顧客の好みや行動に対する推測、直感に基づいて意思決定を行っています」(代表取締役CEOのチャド・スチュワート氏)
上述した通りInSightではPOSや人員配置、キャンペーンなどこれまで散らばっていた各種データととももに、IoTセンサーから取得できる店内の行動情報を統合・分析し誰でも使えるようにするのが特徴。「店長からCEOまで、組織内のすべての人が、簡単に多数のデータソースを表示・実行できることも、お客様がFlowを選んでくださっている理由の1つ」だという。
今後はポイントサービスの分析機能やエクスポート機能の追加や、AIを用いた予測機能の拡充など引き続きプロダクトのアップデートに力を入れる計画。今回調達した資金を活用して組織体制を強化しながら、さらなる事業拡大を目指す。
「『小売データを実用的なものにする』という私たちの使命を一貫し、小売のデジタル化を強化するため、今後数か月に渡り素晴らしい新機能を提供していく所存です。予想よりも早くなりましたが、日本以外の小売業者やパートナーから注目が集まり始めています。 そして、日本の小売業者においても国外での成長機会を求めているため、言語や文化を超え管理できる『データ駆動型ツール』を使用し成長をサポートする態勢を整えていきたいと思っています」(スチュワート氏)