JAXA認定宇宙ベンチャー天地人、衛星画像から水道管の漏水可能性区域を判定する実証実験を開始

JAXA認定宇宙ベンチャー天地人、衛星画像から水道管の漏水可能性区域を判定する実証実験を開始

JAXA認定の宇宙ベンチャー企業であり、宇宙ビッグデータを活用して土地の価値を見出すスタートアップ天地人は、衛星画像を使って水道が漏水していると思われる箇所の推定を行う実証実験を開始する。これは、愛知県の豊田市上下水道局、漏水検査や地中探査事業を展開するフジ地中情報と共同で実施されるもので、豊田市全域を対象として、2022年2月1日から2023年3月下旬まで行われる。

この実証実験で天地人は、衛星画像をAIで高精度解析して水道管の漏水可能性区域を判定し、フジ地中情報が実施する路面音聴調査のデータをもとに、AIによる漏水可能性判定の分析と精度向上を行うことにしている。「最新の衛星データでどこまで漏水可能性区域を判定できるかを検証」すると天地人は話している。

同様の調査は、2021年8月、豊田市の一部地域を対象に行っているが、そのときの推定的中率は約3割だった(556の漏水可能性区域のうち154区域で漏水が判明)。このときは、判定区域の直径を200mとしていた。今回は、直径100m以内に狭め、的中率約6割を目指すという。

ネット印刷・集客支援などのラクスルがダンボール・梱包材専門通販ECサイトのダンボールワンを完全子会社化

ネット印刷・集客支援などのラクスルがダンボール・梱包材専門通販ECサイトのダンボールワンを完全子会社化

ネット印刷・集客支援プラットフォームなどを手がけるラクスルは2月1日、ダンボール・梱包材専門通販ECサイト「ダンボールワン」を運営するダンボールワンを同日付で完全子会社化したと発表した。

ラクスルは、同社事業の成長戦略として、オフィス・産業資材への印刷領域の拡張を推進しており、当該領域におけるサービスとの相乗効果を目的に、2020年12月にダンボールワンの株式を取得し関連会社化。2022年2月1日付で追加取得が完了し完全子会社化した。

ダンボールワンは、ダンボール・梱包材専門通販ECサイトとして業界最大規模のダンボール製造会社・梱包材メーカーのネットワークを活用した、低コストかつ小ロットの商品提供の仕組みを構築している。提携後、ラクスルのシェアリング・マーケティングノウハウの活用や両社の顧客基盤の拡大など、協業関係により互いにシナジー効果を創出してきたという。

そのような取り組みを通じて、ラクスルは、同社の事業拡大への期待とセグメントのさらなる成長の観点から、企業価値最大化に資すると判断し、株式を追加取得して完全子会社化することに合意した。今後は組織拡張、プラットフォーム力の活用、開発投資などを通して両社のシナジーを生かしさらなる成長につなげるとしている。

ラクスルグループは、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」という企業ビジョンのもと、印刷や物流、広告といったデジタル化が進んでいない伝統的な産業にインターネットを持ち込み、産業構造を変えることで、より良い世界にすることを目指している。現在では、ネット印刷・集客支援のプラットフォーム「ラクスル」をはじめ、物流プラットフォーム「ハコベル」、広告のプラットフォーム「ノバセル」を提供するノバセル、コーポレートITの「ジョーシス」のサービスを提供するジョーシスを運営している。

半導体産業は台湾にとって「切り札」にも「アキレス腱」にもなる

TechCrunch Global Affairs Projectは、テックセクターと世界の政治がますます関係を深めていっている様子を調査した。

2021年10月上旬の4日間にわたって、約150機の中国軍用機が台湾の領空を侵犯し、台湾と米国からの批判を招いた。このように台湾海峡で緊張が高まる中、台湾の祭英文総統は米国軍は台湾兵士と台湾国内で軍事演習を行っていると発表した。これに対し中国の外務省は、台湾の独立を支援すれば軍事衝突をもたらすだけだと警告した。10月末、米国国務長官Antony Blinken(アントニー・J・ブリンケン)氏が中国外相Wang Yi(王毅)と会見して、台湾地域での現状変更の動きを控えるよう要請したまさにその日に、さらに8機の中国軍用機(うち6機はJ-16戦闘機)が台湾の領空を侵犯した。

1979年、米国は、中華民国(台湾)が中国本土、つまり中華人民共和国の一部であることを承認した。このときから中台関係の変遷が始まり、現在の状態に至る。中国は長期にわたって台湾併合を望んでおり(中国は台湾をならずもの国家と考えている)、軍事侵攻によって強制併合する可能性を決して除外していないが、米国が台湾を軍事的に防衛するかどうかについて戦略的にあいまいな態度をとってきたため、台湾併合を阻止されてきた形になっている。そして近年、台湾が半導体産業で重要な役割を果たすようになってきたため、状況はさらに複雑化の度を増している。

世界の半導体産業における台湾の重要性

台北本拠の調査会社TrendForce(トレンドフォース)によると、台湾の半導体受託製造業者は、2020年時点で、世界のファウンドリ市場の63%のシェアを獲得しているという。詳細を見ると、世界最大の受託チップ製造業者Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC)だけで世界のファウンドリ市場の54%のシェアを確保している。さらに最近のデータによると、Fab 14B P7で停電が発生し製造がストップしたにもかかわらず、TSMCは依然として、2021年の第2四半期で世界のファウンドリ市場の約53%を占めている。

台湾のファウンドリ(TSMCを含む)はほとんどのチップを製造しているが、それに加えて、携帯電話から戦闘機まで、すべてのハイテク機器に内蔵されている世界最先端のチップも製造している。実際、TSMCは世界の最先端チップの92%を製造しており、台湾の半導体業界は間違いなく世界で最も重要視されている。

そして、当然、米国と中国の両国も台湾製の半導体に依存している。日経の記事によると、TSMCは、F-35ジェット戦闘機に使用されているコンピューターチップ、Xilinx(ザイリンクス)などの米国兵器サプライヤ向けの高性能チップ、DoD(国防総省)承認の軍用チップなども製造している。米軍が台湾製のチップにどの程度依存しているのかは不明だが、米国政府がTSMCに対して米国軍用チップの製造工場を米国本土に移転するよう圧力をかけていることからも台湾製チップの重要さの程度が窺える。

米国の各種産業も台湾製半導体に依存している。iPhone 12、MacBook Air、MacBook Proといった各種製品で使用されているAppleの5ナノプロセッサチップを提供しているのはTSMC一社のみだと考えられている。iPhone 13やiPad miniなどのAppleの最新ガジェット内蔵のA15 BionicチップもTSMC製だ。TSMCの顧客はもちろんAppleだけではない。Qualcomm(クアルコム)、NVIDIA(エヌビディア)、AMD、Intel(インテル)といった米国の大手企業もTSMCの顧客だ。

中国も外国製チップに依存しており、2020年現在、約3000億ドル(約34兆円)相当を輸入している。当然、台湾は最大の輸入元だ。中国は外国製チップへの依存度を縮小すべく努力を重ねているが、その需要を国内のみで賄えるようになるのはまだまだ先の話だ。中国の最先端半導体メーカーSemiconductor Manufacturing International Corporation(SMIC)の製造プロセスは、TSMCより数世代遅れている。SMICは現在7ナノ製造プロセスのテスト段階に入ったところだが、TSMCはすでに3ナノ製造プロセスまで進んでいる。

このため、中国の企業は台湾製チップに頼らざるを得ない。例えば中国の先進テック企業Huawei(ファーウェイ)は、2020年現在、TSMCの2番目の大手顧客であり、5ナノと7ナノのプロセッサの大半をTSMCに依存している考えられている。具体的な数字を挙げると、ファーウェイはTSMCの2021年の総収益の12%を占めている。

軍事衝突という形をとらない戦い

2022年前半に起こったことを見るだけで、半導体業界がいかに脆弱かが分かる。比較的落ち着いていた時期でも、停電の影響もあって、TSMCは世界シェアを1.6%失い、継続中の半導体不足に拍車をかけることになった。地政学的な要因による半導体生産量の低下ははるかに大きなものになるだろう。

最悪のシナリオはいうまでもなく、台湾海峡での軍事衝突だ。軍事衝突が起これば、半導体チップのサプライチェーンは完全に分断されてしまう。だが、他にも考えられるシナリオはある。台湾はよく分かっているが、中国に大量にチップを輸出することで、台湾の経済成長は促進されるものの、中国の技術発展も支援していることになる。台湾が、例えば米国との自由貿易協定に署名するなどして、中国への輸出依存度を減らすべく具体的な対策を講じるなら、中国への半導体チップの輸出を打ち切ってしまう可能性がある。

これは中国にとっては耐えられないシナリオだ。考えてみて欲しい。TSMCがトランプ政権の厳しい対中禁輸措置に応えてファーウェイからの新規注文を拒絶して以来、ファーウェイは5ナノ製造プロセスを使用したハイエンドのKirin 9000チップセットの製造を停止せざるを得なくなった。こうしてハイエンドチップが不足すると、ファーウェイはまもなく、5G対応のスマートフォンの製造を継続できなくなるだろう、とある社員はいう

台湾製のチップがまったく入ってこなくなると、中国のテック産業全体の継続的な成長に疑問が生じることになる。そうなると、中国は激怒するだけでなく、国内の安定も脅かされるため、中国政府に台湾武力侵攻の強い動機を与えることになるだろう。

逆に、米国に台湾製チップが入ってこなくなるシナリオも考えられる。「平和的な併合」のシナリオ(武力侵攻なしで台湾が中国に統合されるシナリオ)が実現すれば、台湾のファウンドリは中国政府の支配下に入ることになり、米国にとって戦略的な問題が生じる。中国政府はファウンドリに対してチップの輸出を禁止したり、輸出量を制限するよう要請できる。そうなると、米国は、米軍の最先端の軍事機器のモバイル化に必要なチップが手に入らなくなる。

TSMCが米国企業に対するチップの輸出を停止または制限すると、米国企業は現在のファーウェイのような状況に陥る可能性が高い(中国では「使用できるチップがない」という意味の「无芯可用」という新しいフレーズが登場している)。米国が台湾に侵攻して中国と台湾を再分割する可能性は低いものの、報復として制裁措置を課すなどの対抗手段を検討するかもしれない。そうなれば米中間の緊張がさらに高まることになる。

いうまでもなく、こうしたシナリオが現実化すればグローバルなサプライチェーンは分断され、全世界に深刻な状況を招くことになる。

台湾の半導体産業は国を守る盾か、それともアキレス腱か

台湾は間違いなく、半導体業界における支配的な地位と、それが米国と中国に対する影響力を与えている現在の状況を享受しているが、米中両国は現状に大いに不満を抱いており、両国とも自国に有利な状況になるようさまざまな手段を講じている。たとえば米国は、米国内にチップ製造工場を建設するようTSMCに要請している。一方中国は、TSMCから100人以上のベテラン技術者やマネージャーを引き抜いて、最先端のチップ製造を自国で行うという目標に向けて取り組みを強化している。

これは台湾の将来にとって決して好ましいことではない。台湾が海外での半導体生産量を増やすと、台湾に対する国際的な注目は弱まるかもしれない。が、同時に米国が台湾を軍事的に保護する動機も弱まってしまう。サプライチェーンが広域に分散するほど、中国が台湾を軍事力で併合するための主要な障害が軽減されることにもなる。台湾にとってこれは、難しいが、存続に関わる問題だ。

こうした不確実な要因はあるものの、台湾の地位は少なくとも短期的には安泰のようだ。米中両国の競争相手の製造プロセスはまだ数年は遅れている状態であるし、彼らが追いついてきたとしても、工場は稼働するまでに数年の計画と投資が必要になることはよく知られている。現状に何らかの変化がない限り、米中両国とも、少なくとも短期的には、台湾製チップなしでやっていけるとは考えられない。今確実に言えることは、米中両国は、対台湾戦略において、従来にも増して台湾の半導体産業の役割を考慮する必要があるということだ。

編集部注:本稿の執筆者Ciel Qi(シエル・チー)氏は、Rhodium Groupの中国プラクティスのリサーチアシスタントで、ジョージタウン大学のセキュリティ研究プログラム(テクノロジーとセキュリティ専攻)の修士課程に在籍している。また、ハーバード大学神学部で宗教、倫理、政治学の修士号を取得している。

画像クレジット:Evgeny Gromov / Getty Image

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(文:Ciel Qi、翻訳:Dragonfly)

テクノロジーへの取り締まりが、今後の米国・中国間の競争の運命を握る

TechCrunch Global Affairs Projectは、テックセクターと世界の政治がますます関係を深めていっている様子を調査した。

今、テクノロジー大手は苦境に立たされている。野心的なテクノロジー企業はかつて、中国で比較的独立して活動できる数少ない企業の1つだった。以前、Alibaba(アリババ)のJack Ma(ジャック・マー)氏やDidi(ディディ)のJean Liu(ジーン・リュー)氏のようなテックリーダーは、ダボス会議で主役級の存在感を放つ、中国イノベーションの世界的なシンボルとなっていた。しかし今は違う。

2020年マー氏が中国の規制当局を批判する発言をした後、Alibabaの記録的なIPOは延期され、また同氏は数カ月間、事実上「行方不明」となっていた。Tencent(テンセント)は反トラスト法違反で多額の罰金を科せられている。2020年以降、両社はそれぞれの企業価値の約20%を失い、その総額は3000億ドル(約35兆円)以上に達している。Didiの株価は中国のアプリストアからの削除命令を受けた後、40%も下落している。最近では中国の規制当局がEdTechやゲーム業界に新たな規制を課し、さらには暗号資産を全面的に禁止している。

米国テクノロジー業界の重鎮らは自由を手にしているようにも見えるが、実際は彼らや彼らのビジネスも政府の監視下に置かれている。Lina Khan(リナ・カーン)氏、Tim Wu(ティム・ウー)氏、Jonathan Kanter(ジョナサン・カンター)氏といった反トラスト法を擁護する有力者たちがいずれもバイデン政権で要職に就いており、また米国議会ではプライバシーや年齢制限など、テクノロジー企業を規制する新たな法案が検討されている。

北京でもワシントンでも(そして何年もテクノロジー企業と戦ってきたブリュッセルでも)「大手テクノロジー企業はあまりにも強力になりすぎて責任を取れなくなっている」というコンセンサスがますます明確になってきている。政府はイデオロギーの違いを超えて、公共の利益の名のもとに何らかのコントロールを行わなければならないと考えている。今、創業者、経営者、投資家にとって、政治的リスクがかつてないほど高まっているわけだ。

しかし、表面的には似たような取り締まりに見えても、両国の反トラスト法戦略の意味するところはこれ以上ないほど相違している。中国では、反トラスト法の取締りは与党である共産党の指揮棒に運命が委ねられている。しかし米国の反トラスト法のムーブメントは一様ではない。

米国がまだ始めたばかりのことに対して中国は断固たる行動を取っている。しかし、データプライバシーや子どものスクリーンタイムの制限を謳う中国政府の取り組みは、その真の目的である政治的・経済的な完全支配のための布石にすぎない。事実上独立した市民社会が存在しない中国では、テクノロジー産業は共産党以外に権力を持つことができる数少ない場所の1つとなっていた。しかしこれまで以上に抑圧的な習近平政権では、このような独立した力の源が受け入れられることはない(香港を参照)。党の方針に従わなければ中国国家の強大さに直面するぞというメッセージは明確である。

さらに、中国はパワーの拡大を目指している。中国はかねてより次世代技術の支配を目指しており「China Standards 2035」プロジェクトの一環として、5GやAI、再生可能エネルギー、先進製造業など、数多くの重要な産業や分野の標準化の設定を積極的に進めている。これを実現するための主要戦略として、中国は国際的な基準設定団体を水面化に支配しようと試みていたのだが、北京はこれらのテクノロジーを開発する企業をコントロールすることも同様に重要であると気づいたのである。Huawei(ファーウェイ)、Xiaomi(シャオミ)、TikTok(ティックトック)の3社は、欧米の政治家が懸念しているような積極的なスパイ活動は行っていないかもしれないが、彼らの利用が広がれば広まるほど、中国の規格が世界のデフォルトになっていくことになる。

関連記事:国際的な技術標準での優位性を狙う中国の次の計画

ジャック・マー氏の運命と中国の5GリーダーであるHuaweiの創業者一族の運命を対比してみるといい。Huaweiは中国のテクノロジーを世界の多くの国でデフォルトの5Gキットとすることに成功。これにより中国の技術的信頼性が高まり、いくらマー氏が共産党員でもこの功績の比較にはならない。Huaweiは当然北京との親密さを売りにしており、Huaweiを選ぶことは中国への信任投票の代名詞となっているが、その分のリスク存在する。米国は、Huaweiと中国の治安機関との関係を懸念して同社に対する反対運動を実施。その結果、Huaweiが米国の対イラン制裁に違反したとして、同社創業者の娘でCFOのMeng Wanzhou(孟晩舟)氏がカナダで逮捕されるに至ったのである。

しかし、忠誠心が報われないわけではない。北京は2人のカナダ人を逮捕し、彼らの拘留を利用して晩舟氏の釈放に向けた取引を成功させた。例えHuaweiが以前は北京に忠誠を誓っていなかったとしても、今は確実に誓っているだろう。中国の他のテクノロジー大手にとっての教訓になったのではないだろうか。

中国の弾圧により投資は冷え込み、人材は浪費され、恐らく中国の強力なテクノロジー部門を築いてきた起業家精神も失われたことだろう。しかし、権力を振るってテクノロジー企業を屈服させることには間違いなく成功している。

北京が国益のためにテクノロジー大手を弾圧する一方で、米国が自国のテクノロジー大手を取り締まっている理由は一体何なのだろうか?米国の独禁法取締官はテクノロジーパワーの肥大化を懸念しているかもしれないが、より競争力のある部門がどうあるべきかという戦略的ビジョンを持っているとは信じ難い。米国の大手テクノロジー企業はその規模が米国の競争力に不可欠であるという主張をすることがあるが、彼らも政府も、自分たちが「アメリカンパワー」の作用因子であるとは考えていない。実際、米国議会がテクノロジー企業と中国のどちらをより敵視しているのか、判断に迷うほどである。

反トラスト法を支持する人々は、Google(グーグル)やApple(アップル)といった企業を解体するか、少なくとも規制することで全体的な競争力が高まり、それが政治や米国のテクノロジー分野に広く利益をもたらすと信じている。AmazonからAWSを、 Facebook(フェイスブック)からInstagram(インスタグラム)を切り離すことで、消費者にはメリットがもたらされるかもしれないが、これがテクノロジーに関する米国の優位性を維持することにどうつながるだろうか?それはまったく不明である。

これまでの米国におけるハンズオフ型の資本主義システムは、オープンでフラット、民主的であり、世界の歴史上最高のイノベーターを生み出してきた。同産業は政府が支援する研究の恩恵を受けてきたが、政府との関係の「おかげ」ではなく、むしろ政府との関係があったにもかかわらず、成功を遂げることができたのだ。米国企業が世界的に信頼されているのは(ほぼ)そのためであり、政権の動向に左右されることなく、法の支配を遵守することが知られているからなのである。

テクノロジーにおける米国と中国間の競争は、この前提を根底に検証されなければならない。政府から独立して運営されている分散型かつ非協調的な産業が、超大国によって編成された一産業に対して優位性を維持できるのか?

筆者はそれでも米国の(そして同盟国の)イノベーションは、これまで通り成功し続けると楽観視している。開放性は創意工夫を生むのである。米国の研究とスタートアップはどの国にも劣っておらず、そして競争に適切に焦点を当てることで、発展が到来するのである。

しかしだからといって、少なくとも限定的な国家戦略がまったく不必要というわけではない。米国に中国のような産業政策が必要だと言っているわけではない。結局のところ、中国のトップダウンモデルは壮大な無駄を生み出し、それが何十年にもわたって中国経済を圧迫することになる可能性があるのだ。企業を強制的に壊してしまうような露骨なやり方では、かえって害になることが多いだろう。

その代わりに米国の議員たちは、反トラスト法に関するヨーロッパの見解に賛同しつつある今、大西洋をまたいだグローバルな競争基準の賢明なフレームワークを開発すべきだ。新設されたU.S.-EU Trade and Technology Council(米欧通商技術評議会)とQuad(日米豪印戦略対話)のテクノロジーワーキンググループが協力を促進し、フェアプレーを維持する善意の民主的テクノロジーブロックを作るための基礎を築くべきなのである。

商業的なアウトカムに影響を与えることなく、政府が支援を行うというこのような中間的な方法には前例がある(冷戦時代に生まれたシリコンバレーの例など)。米国のテクノロジー産業の起業家精神を阻害することなく、ガードレールを提供するためにはこの方法が最適だ。

議会や行政がテクノロジー競争をどう扱うかを検討する際、現在の弊害を是正するだけではなく、米国のテクノロジーそのものの未来を描くことを念頭に置くべきである。なんと言っても米国経済のリーダーシップがかかっているのだから。

編集部注:本稿の執筆者Scott Bade(スコット・ベイド)はTechCrunch Global Affairs Projectの特別シリーズエディターで、外交問題についての定期的な寄稿者。Mike Bloomberg(マイク・ブルームバーグ)の元スピーチライターで、「More Human:Designing a World Where People Come First」の共著者でもある。

画像クレジット:Anson_iStock / Getty Images

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(文:Scott Bade、翻訳:Dragonfly)

家庭用性感染症検査キットを提供しSTI検査の敷居を下げる米TBD Health

性に関する健康問題は以前ほどタブーではないが、だからといって、STI(Sexual Transmitted Infection、性感染症)の検査における問題がすべて解決したというわけではない。TBD Health(TBDヘルス)は「Vagina-Haver(女性器所有者)」のために、自宅で検査ができるようにするという新しいアプローチをとっている。同社は、自宅で5種の検査ができる「Check Yourself Out(チェック・ユアセルフ・アウト)」キットを提供しているが、最近、ラスベガスに対面式のクリニックを開設した。なぜ家庭でできる性のヘルスケアサービスが求められているのか、共同設立者の2人に話を聞いた。

米国疾病予防管理センター(CDC)によると、米国のSTI感染率はここ数年上昇を続けており、2021年に報告されたデータでは6年連続で過去最高を記録している。米国では5人に1人がSTIに罹患しており、そのうち半数は15~24歳の若者で、直接的な医療費として160億ドル(約1兆8200億円)がかかっている。あえていうなら、TBDは縮小するはずの市場を狙っているのだが、そうではない。

「当社は、検診にかかることが重要であることに気づいた。現在、検診を受ける人は以前よりも少なくなっている。これは新型コロナウイルス感染症の影響もあるが、人々は病院に行きたがらないし、連邦政府の多くの資金援助が問題をより複雑にしている。当社は、家庭用キットから始めて、人々の日常生活で実際に有効なSTI検査を提供するために設立された。他の医療関連企業とはまったく異なるアプローチをとったので、臨床的とは感じないし、賭けに出ているとも感じていない。本当に受診者の身になって行うような検診をしたいと考えていた。そして、2022年の初めに、6つの州で試験的にクリニックを開設した」とTBD Healthの共同設立者であるStephanie Estey(ステファニー・エスティ)氏は語る。

TBD Healthの家庭用検査サービスは、ワシントン州、アリゾナ州、ネバダ州、マサチューセッツ州、フロリダ州、コネチカット州で提供されており、さらに多くの州への展開を計画しているが、全50州をカバーするには規制上の課題がある。

「もし陽性と診断された場合、当社でほとんどすべての治療を行うことができる。当社の臨床医は、罹患者の個別のケアプランについて話し合うための時間を設ける。それは『ここに一般的なケアプランがあるので、かかりつけの病院に相談してください』というような無責任なものではない。例えば、抗生物質が必要な感染症の大半は、当社が処方箋を発行して治療を行うことができる」とエスティ氏は説明する。もちろん、臨床医を必要とするということは、その臨床医らが活動するすべての州に拠点が必要だということでもある。「当社は各州に医療チームを置いており、臨床医がすべての結果を確認し、検査機関の依頼に署名し、結果を分析したり、処方を行ったりする。現在は6つの州で展開しているが、2022年には急ピッチで拡大していく予定だ」と同氏はいう。

同社は、通常の医師が検査できるのと同じSTIをすべて検査できるとしているが、検体の採取には自己採取のプロトコルを採用している。自分で採取するものには、膣スワブ、尿サンプル、血液サンプルがある。特に血液サンプルについては、静脈穿刺を自分で行うのかと興味をそそられたが、指先から採血カードに少量の血液を落とすタイプのもので、それを医療チームが分析し、治療が必要かどうか判断できるとのことだ。

「当社では、乾燥血液スポットカードと呼ばれるものを使用している。これは基本的に、いくつかの円が描かれた紙であり、指にランセットを刺して血液を垂らして使う。糖尿病患者が日常的に行っている検査と同じものだ。このカードによって、HIVや梅毒など、血液を用いた主なSTIの検査はすべて行うことができる。実際これは、すばらしいツールだ。乳児の採血をするのは難しいため、乳児の検査を目的として開発されたものだと思う。また、輸送中も安定しているので、自宅での検査に適している」とエスティ氏は説明する。

ラスベガスにオープンしたTBD Healthの対面式クリニック。壁には家庭用検査ボックスが飾られている(画像クレジット:TBD Health)

TBD Healthは、従来のSTI検査プロトコルの精度を維持しているという。

「検査機関での検査には、感度と特異度という2つの主要な精度指標がある。その確認のため、当社は多くの検査機関を精査した。当社のパートナー検査機関の感度と特異度は基準を満たしており、これは必要な精度を確保していることを意味している。また、自宅でプライバシーを守りながら検査ができる」とエスティ氏は述べる。そして「遠隔医療により、当社の臨床ケアチームのサポートを受けることもできる」と同氏は付け加える。

TBDは、対面式のケアも行うために、ラスベガスにケアハブを開設した。これは、顧客のニーズをより深く把握できる環境を整え、そこから得た知見を他の事業のサービス向上につなげることを目的としている。

今のところ、同社は女性器所有者に焦点を当てている。それは、STIの問題だけでなく、不妊症の問題にも取り組んでいるためであり、可能な限り最高のサービスを提供するため、同社は対象を絞ることにした。

「当社は今、女性と女性器所有者のためのサービスに集中している。男性器所有者へのサービスが当社のロードマップのどこに位置するのかは、まだいえない。男性器所有者は、伝染の面で大きな要因となっていることは確かだ。しかし、女性にとっては、コストや不名誉だけでなく、多くの場合、生殖機能の問題でもある。STIは、米国における不妊症の原因のうち、予防可能なものの1番目に挙げられている」とエスティ氏は説明し、そして次のように続けた。「当社が重点分野を拡大する場合、そうした人々に適切なサービスを提供できる体制を整えたいと考えている。企業が間違ったことをする例は数多くある。女性のために何かを作ることは、ピンク色にすればいいというようなことではない。TBDは、女性器所有者をよく理解していて、どうすれば最適なサービスを提供できるかわかっている。だからこのサービスに深く関わることに興奮を覚えるのだと思う。当社が男性器所有者にサービスを提供する時には、女性器所有者に対して行ってきたことと同様に、思慮深く、真剣に、公正を保ちたいと考えている」。

画像クレジット:TBD Health

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

医薬品の低温輸送に適した「自己冷蔵型クラウドベースの配送箱」をEmberが発表、大手ヘルスケア物流企業と提携

Ember(エンバー)は2021年、最近のハードウェア分野で見られる最も魅力的な事業展開の1つを発表した。同社は保温機能を備えたスマートマグカップで知られているが、以前からコールドチェーン、特に医薬品の長距離輸送に注目したきた。最初は会話から始まったこのプロジェクトは、2021年2350万ドル(約27億円)の資金を調達して促進されることになった。そして今回、同社は新たな製品と、今後の展開を示すパートナーシップを発表した

新しい方向性の中心となる製品は「Ember Cube(エンバー・キューブ)」と名付けられたもので、同社はこれを「世界初の自己冷蔵型クラウドベースの配送箱」と呼んでいる。この技術は、重要な荷物を運ぶのに、いまだに段ボールや発泡スチロール、使い捨ての保冷剤などに頼っている時代遅れの輸送技術を更新するために開発された。その核となるのは、内容物を摂氏2~8度に保つように設計されたEmber独自の温度制御技術だ。

このEmber Cubeは、温度・湿度の情報とGPSの位置情報をクラウドで共有することで、輸送中の情報を追跡することができる。本体背面には「Return to Sender(送り主へ返却)」ボタンがあり、これを押すと本体のE Ink画面上に返品ラベルがポップアップ表示される。同社によると、このCubeは「数百回」の再利用が可能だという。

同社は今回、このEmber Cubeの公開と併せて、大手ヘルスケア物流企業であるCardinal Health(カーディナル・ヘルス)との提携も発表した。

Cardinal Healthスペシャリティソリューションズ部門のプレジデントであるHeidi Hunter(ハイディ・ハンター)氏は、今回の発表に関連したリリースの中で「Ember社とのパートナーシップは、リアルタイムの可視性を備え製品を完全な状態に保つ、新しい業界標準となる技術ソリューションを活用するとともに、廃棄物の削減にも変革をもたらします」と述べている。「Ember Cubeは、医薬品開発パイプラインにおける多くの細胞療法や遺伝子療法にとって、特に価値あるソリューションとなるでしょう。これらは温度に敏感で、価値が高く、リアルタイムに統合された追跡を必要とするからです」。

Cardinal社は、この2022年後半に発売予定の新デバイスを試験的に使用する最初の大手企業となる。

画像クレジット:Ember

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

LeapMind、エッジデバイス上でのリアルタイム動作と高画質を両立させた高精細AI画像処理モデル発表

LeapMind、エッジデバイス上でのリアルタイム動作と高画質を両立させた高精細AI画像処理モデル発表

ハードウェアとソフトウェアの両面で機械学習技術の開発を行うLeapMind(リープマインド)は1月31日、エッジデバイス上でリアルタイムで動作し、ノイズ除去によりスマートフォンレベルの高画質を実現したAI画像処理モデルを発表した。これまでエッジデバイスで挙げられてきた性能面と画質面の課題を同時に解決し、高性能・高画質・軽量化を実現するものとなった。

エッジデバイスでは、計算コストの高いAIによる画像処理は、リアルタイム動作が困難であるとされてきた。またAI画像処理においては、アナログ信号をデジタル化する際の精度を示す量子ビット数を小さくすると画質が低下するとされてきた。しかしLeapMindは、同社独自の「極小量子化」技術と、超低消費電力AI推論アクセラレータIP「Efficiera」(エフィシエラ)を組み合わせることで、動画カメラのリアルタイム動作を可能にし、「Pixel embedding」(ピクセル・エンベッディング)技術で高画質化を実現させた。

これにより、高価な高感度センサーや大型レンズを使わずとも、32bit浮動小数点モデルと同等の画質が得られるようになった。監視カメラや検査用カメラなど産業用カメラを高画質化できるため、物体認識や検査の精度が向上する。LeapMind取締役CTOの徳永拓之氏は、「低ビット量子化モデルによるAI画像処理技術の製品化は我々が調べる限りでは世界初です」と話す。

LeapMindはこのモデルの特徴を、Raw-to-rawによるノイズの低減と既存画像処理パイプラインへの影響の最小化、ディープラーニングベースのノイズ低減処理、センサー固有のノイズ再学習で最適化が行える学習済みモデルの提供、リアルタイム動作可能な軽量処理としている。

入力画像。左:ISO51200、1/800sec, F4.0で撮影。右:ISO102400、1/320sec、F8.0で撮影

入力画像。左:ISO51200、1/800sec, F4.0で撮影。右:ISO102400、1/320sec、F8.0で撮影

出力画像:32bit浮動小数点モデルの出力

出力画像:32bit浮動小数点モデルの出力

出力画像:LeapMindの極小量子化モデルの出力

出力画像:LeapMindの極小量子化モデルの出力

 

コラボレーション型データサイエンス用ノートブック開発のためにDeepnoteが23.1億円調達

Jupyter(ジュピター)互換のノートブックの上に、データサイエンスのためのプラットフォームを構築しているスタートアップのDeepnote(ディープノート)が、米国時間1月31日、2000万ドル(約23億1000万円)のシリーズAラウンドを実施したことを発表した。ラウンドを共同で主導したのはIndex VenturesとAccelだが両社は2020年のシードラウンドにも参加していた。今回のラウンドには、既存の投資家であるY CombinatorとCredo Venturesも参加している。

Deepnoteの共同創業者のJakub Jurovych(ヤコブ・ジュロビッチ)CEOが語ってくれたように、Deepnoteは数年前に設立されて以来、当初のビジョンにほぼ忠実であり続けている。

ジュロビッチはいう「起業したときに、私たちはデータサイエンスと機械学習のバックグラウンドを持っていました。そのときの私たちは、データサイエンスの分野で何かを変えて行く必要があると確信していました。というのも、ありとあらゆるツールを試していたのですが、何を試してもコラボレーションがうまくいかなかったからです」。

すでにJupyterノートブックに精通していた共同創業者のJan Matas(ジャン・マタス)CTOと、デザイン部門責任者のFilip Stollar(フィリップ・ストーラー)を含むチームは、この既存のツールへの、コラボレーションのためのより簡単な方法の導入に着手した。

画像クレジット:Deepnote

多くの点で、Deepnoteは共有型データサイエンスノートブックの業界標準になっている。現在、ByteDance(バイトダンス)、Discord(ディスコード)、Gusto(ガスト)などの企業が同社のプラットフォームを使用している。データサイエンス市場は急速に成長しているにもかかわらず、人材の確保が困難であるため、チームは同社のツールを学生に提供することにも力を入れている。現在、世界のトップ100大学のうち80大学が、少なくとも一部の授業でDeepnoteを使用している。

「学生や教師が感じている痛みは、他の組織で見られるものとほとんど同じです。同様のコラボレーションへの要求があるのです」とジュロビッチ氏はいう。1人の教授がこのツールを使って何百人もの学生に課題を配布できるように、企業ユーザーは自分のノートブックをトップ役員を含む社内の誰とでも共有できるようになるのだ。実際、ジュロビッチ氏は、ノートブックというフォーマットは、技術者と非技術者の間のギャップを埋めることができると考えている。そのため、Deepnoteはデータサイエンティストをターゲットにしているものの、チームの目標の1つは(Jupyter規格との完全な互換性を保ちながら)ノートブックを使用する際の参入障壁を下げることだ。

画像クレジット:Deepnote

ジュロビッチ氏は「2年前には、Pythonの書き方を知らなければ、ノートブックから何の価値も引き出すことができませんでした」という。「それが今では、チームの技術者である誰かからリンクを受け取れば、そのあと視覚化を微調整することはとても簡単なことなのです。コメントを残したり、フィードバックを行うためには、高い技術は必要ありません」。

Deepnoteには無料プランが用意されている。有料のProプランは12ドル/月/ユーザーからだが、学生や教師は無料で利用できる。

リモートファースト企業のDeepnoteは、今回の資金調達により、製品の開発とデータサイエンスコミュニティでの足場拡大を図る。ジュロビッチ氏は今後12カ月の間にチームの規模を2倍の約50人にすることを計画している。

画像クレジット:Deepnote

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

おいしくてハードワークにも最適な次ぎの健康食品を開発、提供するPurely Elizabeth

Purely Elizabeth創設者兼CEOエリザベス・スタイン氏(画像クレジット:Purely Elizabeth)

Purely Elizabethの創業者Elizabeth Stein(エリザベス・スタイン)氏はこれまでの12年のキャリアを歩んできたが、同社の次の段階に進むための計画からするとそのキャリアはまだ始まったばかりのものだ。

ホリスティック栄養学のカウンセラーとしてキャリアをスタートさせたスタイン氏は、当時はまだ現在ほど普及していなかったスーパーフード食材や薬としての食品について学んだ後、2009年に会社を設立した。

「多くの人を助ける製品の市場にチャンスがあると感じました」と彼女はいう。「口に入れるものは、私たちにとって最も重要なものの1つです」。

CEOのスタイン氏は、顧客と仕事をするうちに、グルテンフリーなどの特殊な食品のニーズを感じ、サイドプロジェクトとして始めたブルーベリーマフィンミックスがPurely Elizabethのきっかけとなって、グラノーラに移行する前の最初の製品となり、現在に至っている。

その後、パンケーキ / ワッフルミックスやオートミールも加わり、同社は朝食カテゴリーのトップブランドの1つとなった。製品は非遺伝子組み換えで、古代穀物、ココナッツシュガー、プロバイオティクス(善玉菌を多く含む食品)、MCTオイルなどの原材料を含んでいる。

世界の健康食品の市場は2020年に7331億ドル(約84兆2820億円)ともいわれ、2026年には1兆ドル(約114兆9660億円)に達するという。同社も、ますます混雑してきたこの市場の一員だ。この分野に投資を惹きつける要素は、消費者の関心だ。先に報じたスムージーのKenckoはシリーズAで1000万ドル(約11億5000万円)を調達し、栄養ドリンクのAthletic Greensは12億ドル(約1380億円)の評価額で1億1500万ドル(約132億2000万円)の資金調達を発表した。

スタイン氏によると、市場は彼女がPurely Elizabethを立ち上げたころと比べて大きく変化している。彼女がトレードショーなどに初めて出た2010年には、原料のチアシードやココナッツシュガー、ココナッツオイルなどについて小売企業にいちいち説明しなければならなかった。しかし現在では、消費者の意識と知識が変化、増えたことで、そのような原料は一般の食料品店でも販売されるようになった。健康に良いという知識のためだけでなく、実際においしいからだ。

過去5年間同社は前年比成長率55%を維持し、2021年には1案5000社の小売業者に卸している。彼女によると、2018年には8000店だった。

同社の最初の資金調達は2016年の300万ドル(約3億4000万円)だったが、今回はSEMCAPの食品栄養部門がリードする5000万ドル(約57億5000万円)のシリーズBを完了した。実はこの部門は、この投資でもって立ち上がった部門だ。参加した投資家はSwander Pace CapitalとSEMCAPのパートナーであるFresh Del Monte(フレッシュ・デルモンテ)だ。同社の総調達額は、5300万ドル(約60億9000万円)となった。

スタイン氏は今回の資金で、社員数を現在の30名から2022年内に40名に増やす予定だ。また新製品によるイノベーションにも取り組み、特に2022年はオートミールを使った新しいカテゴリーを開発するという。また、デジタルマーケティングによりブランドイメージの向上にも取り組む。

「すばらしい成長を重ねてきましたが、現在、私たちは曲がり角にいると思います。次の成長の段階を探さなければなりません。それを加速するためには資本とパートナーが必要で、ブランドをさらに進化させて、より多くの消費者にとって楽しい要素を追加し、今後の進化を達成し、次のレベルに進まなければならなりません」とスタイン氏はいう。

以前はGeneral Millsに在籍し、現在はSEMCAPの食品栄養部門のマネージングパートナーであるJohn Haugen(ジョン・ホーゲン)氏は、General Millsのベンチャー部門301 Inc.の創業者でマネージングディレクターだったときにPurely Elizabethの取締役になり、同社への最初の投資をリードした。

そのホーゲン氏によると、スタイン氏の見解と同じく、現在の消費者はハードワークのための食料を求めているが、これからは、まずさを我慢してまで良質な原料を選ぶようなことはしない、という。

「Elizabethには、この新しい最先端のトレンド合わせて、どのような他社製品よりもおいしい健康食品を市場に導入するためのノウハウがあります」とホーゲン氏はいう。

画像クレジット:Purely Elizabeth/Elizabeth Stein, Purely Elizabethの創業者でCEO

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ユーザーによる写真投稿数55万枚、美容医療の口コミ・予約アプリ「トリビュー」が10億円のシリーズB調達

ユーザーによる写真投稿数55万枚、美容医療の口コミ・予約アプリ「トリビュー」が10億円のシリーズB調達

美容医療の口コミ・予約アプリ「トリビュー」(Android版iOS版)を運営するトリビューは2月1日、シリーズBラウンドとして、総額10億円の調達を実施したと発表した。引受先は、リードインベスターの既存投資家ニッセイ・キャピタル、またKDDI Open Innovation Fund、W ventures、三菱UFJキャピタルなど。累計調達額は約15億円となった。

トリビューは、美容外科・美容⽪膚科・審美⻭科の分野から「⼝コミ検索」「施術検索」「クリニック検索」「オンライン相談・予約」がアプリ1つで完結できるサービス。

調達した資金により、トリビュー1つで情報収集から予約まで完結し、より良い美容医療の体験を拡げる美容医療の総合プラットフォームを目指す。また今後は、美容皮膚科領域へさらに注力し、男性向けにもサービスを展開。これまで以上にサービス開発、採用・組織体制の強化、マーケティングにも投資する。

2017年7月設立のトリビューは、同年10月にサービスを開始し、2018年11月にはアプリから直接美容クリニックに予約することが可能となった。また、2020年4月にはコロナウイルス感染拡大の影響により、オンラインで相談ができる「ホームカウンセリング」の提供を開始。住まいの場所や環境に捉われることなく、利用者の美容クリニック・施術選びをサポートしてきた。

現在では、累計65万ダウンロード、ユーザーによる写真投稿数55万枚(1口コミあたり平均20枚投稿)、口コミ掲載クリニック数1400件(国内クリニック数約3000院)、予約可能クリニック数556院(昨対比2倍)、トリビューからの施術数は2万件(昨対比約3倍)を突破したという。

【コラム】Web3の成功はセキュリティ対策の修正にかかっている

Web 1.0とWeb 2.0はともに、セキュリティモデルがアプリケーションアーキテクチャーともに変更され、まったく新しい経済の扉を開いた。Web 1.0では、Secure Socekts Layer(SSL、セキュリティ・ソケット・レイヤー)がNetscape(ネットスケープ)によっていち早く開発され、ユーザーのブラウザーとさまざまなサーバーとの間の堅牢なコミュニケーションを可能にした。Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)、Amazon(アマゾン)などのWeb 2.0の信頼できる仲介者と認証機関は、SSLの後継となるTransport Layer Security(TLS、トランスポート・レイヤー・セキュリティ)の実装を加速する中心的役割を果たした。

同じことがWeb3でも起きようとしている。これが、新しいWeb3セキュリティ会社への投資が2021年10倍以上増えて10億ドル(約1兆1500万円)を超えた主な理由だ。

Web3の成功は、さまざまなアプリケーションアーキテクチャーが生み出す新たなセキュリティ問題を解決するイノベーションにかかっている。Web3では、分散型アプリケーション(dApps)が、Web 2.0に存在する伝統的アプリケーションロジックやデータベースレイヤーに依存することなく作られている。代わりにブロックチェーン、ネットワークノード、スマートコントラクトなどのプロトコルがロジックと状態の管理に使われている。

ユーザーは今までと変わらずにフロントエンドをアクセスし、そこからノードにつながってデータの更新、たとえば新しいコンテンツの公開や商品の購入などを行う。この手順では、ユーザーが各自のプライベートキー(秘密鍵)を使って取引を承認する必要があり、通常秘密鍵はウォレットで管理される。これはユーザーのコントロールとプライバシーを保護することを目的としたモデルだ。ブロックチェーンを利用した取引は完全に公開されていて、誰もがアクセス可能でイミュータブル(改変不可能)だ。

どんなシステムでも同じだが、このデザインにはセキュリティとのトレードオフがある。ブロックチェーンでは、Web 2.0のように行為者が信頼されている必要がなく、セキュリティ問題に対応するための更新がより困難だ。ユーザーはアイデンティティに関する制御を自ら維持することができるが、アタックを受けたり、キーを悪用された時に助けてくれる仲介者は存在しない(Web 2.0プロバイダーは、盗まれた財産を復活させたりパスワードをリセットできる)。ウォレットも、Ethereum(イーサリアム)アドレスなどの重要情報を漏らす可能性がある。ソフトウェアである限り完璧にはなりえない。

こうしたトレードオフは、当然ながら重大なセキュリティ上の懸念を喚起しているが、それによってWeb3の機運が削がれるべきではなく、実際その可能性は低い。

改めてWeb 1.0、Web 2.0との類似点を見てみよう。SSL/TLSの初期バージョンには致命的な脆弱性があった。かつてのセキュリティツールはよくいって原始的であり、時間とともに堅牢になっていった。Web3のセキュリティ会社やプロジェクト、たとえばCertik(サーティック)、Forta(フォータ)、Slither(スリザー)、Securify(セキュリファイ)などは、Web 1.0やWeb 2.0アプリケーションのために当初開発されたコードスキャニングやアプリケーションセキュリティテスティングのツールに相当する。

しかし、Web 2.0では、セキュリティモデルの中心はレスポンスだった。Web3では、いったん実行された取引は変更不可能なので、その取引がそもそも実行されるべきかどうかを検証する機構が組み込まれている必要がある。言い換えると、セキュリティは予防に関して並外れて優秀でなければならない。
つまりこれは、Web3コミュニティは、系統的脆弱性に正確に対応し、暗号プリミティブからスマート・コントラクトの脆弱性まであらゆるものをターゲットにする新たな攻撃手段を阻止する方法を見つけなければならないことを意味している。現在、予防型Web3セキュリティモデルを推進するイニシアチブが少なくとも4つ、進行している。

脆弱性に関するデータの信頼できる情報源

Web3の既知の脆弱性や弱点に関する信頼できる情報源が必要だ。現在、National Vulnerability Database(NVD、脆弱性情報データベース)が脆弱性管理プログラムのために基本データを提供している。

Web3には、分散型の同等品が必要だ。現在は、不完全な情報がSWC Registry(SWCレジストリー)、Rekt(レクト)、Smart Contract Attack Vectors(スマート・コントラクト・ベクターズ)、DeFi Threat Matrix(ディーファイ・スレット・マトリクス)などさまざまな場所に散らばっている。Immunefi(イミュニファイ)などが実施しているバグバウンティプログラムは、新しい弱点を発見することを目的にしている。

セキュリティに関わる意思決定基準

重要なセキュリティデザインの選択や、Web3の個々の事象に関する意思決定モデルは今のところ知られていない。分散型というのは、誰も問題の責任をもたないという意味なので、ユーザーにとって予期せぬ大問題がおきることがある。最近のLog4j脆弱性のような事例は、セキュリティを分散型コミュニティに委ねる危険性の教訓だ。

関連記事:米FTC、Log4jの脆弱性を修正しない組織に対する法的措置を警告

自律分散型組織(DAO)やセキュリティ専門家Alchemy(アルケミー)やInfura(インフーラ)などのプロバイダーなどが、差し迫るセキュリティ問題にどのように協力して取り組むかを明確にしておく必要がある。大規模なセキュリティコミュニティが協力し、OpenSSF(オープンSSF)やいくつものCNCFアドバイザリーグループを結成してセキュリティ問題に取り組むプロセスを確立したという良い事例がある。

認証と署名

現在ほとんどのdAppは、最も著名なものを含め、APIのレスポンスに認証や署名を行っていない。これは、ユーザーのウォレットがこれらのアプリからデータを取得したとき、レスポンスが意図したアプリから来たものであり、データが何からの方法で改ざんされていないことを検証するまでに時間のずれが生じることを意味している。

アプリが基本的なセキュリティのベストプラクティスを実施していない世界では、アプリのセキュリティに対する姿勢と信頼性を確かめる仕事はユーザーに任されているが、それは事実上不可能だ。最低限、リスクをユーザーに知らせるもっとよい方法が必要だ。

シンプルでユーザーが制御可能なキー管理

暗号化キーは、Web3パラダイムの下でユーザーが取引を行う仕組みを支えるものだ。暗号化キーは、正しく管理することが困難であることでも悪名高い。ビジネス全体がキー管理を中心に作られている必要があり、今後もそれは変わらない。

秘密鍵の管理に関わる複雑さとリスクは、ユーザーが自己管理ウォレット(non-custodial wallet)よりもホスト型ウォレット(hosted wallet)を選びたがる主要な理由だ。しかし、ホスト型ウォレットの利用には2つのトレードオフがある。Coinbase(コインベース)のような新たな「intermediaries」(仲介者)を生み、Web3の完全分散型への方向性を阻害すること。そして、ユーザーがWeb3の提供するものすべてを利用する機会を奪うことだ。理想は、さらなるセキュリティイノベーションによって自己管理ウォレットの使いやすさとセキュリティの両方が改善されることだ。

最初の2つのイニシアチブは人間とプロセスが中心なのに対して、3番目と4番目のイニシアチブはテクノロジーの変化が必要であることは注目に値する。新しい技術と生まれつつあるプロセス、さらに膨大な数のユーザーを調整しなければならないことが、Web3セキュリティの解決を難しくしている。

一方で、最も勇気づけられる変化の1つは、Web3のセキュリティイノベーションが開かれた場で起きていることだ。これがどれほど創造的ソリューションにつながるかを決して過小評価してはならない。

編集部注:本稿の執筆者Wei Lien Dang(ウェイ・リエン・ダン)氏はセキュリティ、インフラストラクチャー・ソフトウェアおよび開発ツールへの投資で知られるUnusual Venturesのゼネラルパートナー。クラウドネイティブセキュリティ会社で後にRed Hatに買収された、StackRoxを共同設立した。

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

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(文:Wei Lien Dang、翻訳:Nob Takahashi / facebook

食品ロス削減のフードシェアリングTABETEが1.1億円のシリーズA調達、開発体制や新規店舗・新規ユーザー獲得を強化

食品ロス削減のフードシェアリングTABETEが1.1億円のシリーズA調達、開発体制や新規店舗・新規ユーザー獲得強化

食品ロス削減サービス「TABETE」(タべテ。iOS版Android版)運営のコークッキングは1月31日、シリーズAラウンドとして、第三者割当増資による総額1億1000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、KIBOW社会投資ファンド、SMBCベンチャーキャピタル、山口キャピタル、のとSDGsファンド。累計資金調達額は約3億8000万円となった。また、さらなる経営基盤強化として社外取締役にグロービスのマネージャー(グロービス経営大学院教員)の井上智映子氏が就任した。

調達した資金は、主に以下の用途にあてる。
・組織(開発体制・セールス体制・マーケティング体制)の強化
・食品ロス削減サービス「TABETE」のサービス改善
・食品ロス削減サービス「TABETE」の新規店舗・新規ユーザー獲得、既存ユーザーのエンゲージメント向上のためのセールス・マーケティング強化

TABETEは、パン屋をはじめとする中食・飲食店舗で、閉店までに売り切るのが難しく、まだおいしく安全に食べられるのに廃棄の危機に直面している食事と、レスキュー(購入)したい消費者を直接マッチングさせるというフードシェアリングサービス。これまで累計25万食のパンや洋菓子・弁当などの食品ロスを削減してきたという。また、現時点で登録店舗数は約2000店舗、登録者数は約49万人となっており、TABETEに出品された食品の2つに1つ(約50%)はレスキューされているそうだ。食品ロス削減のフードシェアリングTABETEが1.1億円のシリーズA調達、開発体制や新規店舗・新規ユーザー獲得強化

土木技術者・実務者のインフラ工事BIM・CIM導入を加速する工事計画用3D建設データ308製品が公開

土木技術者のインフラ工事BIM・CIM導入を加速する工事計画用3D建設データ308製品が公開

建材商社の野原ホールディングスは1月31日、一般社団法人Civilユーザ会(CUG)、BIMobject Japan(ビムオブジェクト・ジャパン)と共同で、BIMおよびCIMのための土木建築関連308製品の3D建設データを公開したと発表した。

BIM(ビルディング・インフォメーション・モデル)、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング・マネージメント)とは、どちらも建設関係の部材などを3Dモデル化して、関連する情報を付帯させる取り組みのこと。BIMは、建築部材の3Dモデルに付属情報のデータベースを連携させたもの。CIMは、BIMの発展型で、設計、施工、維持管理など、全ライフサイクルにわたる情報の管理と共有を可能にしたものだ。

国土交通省は、2012年から橋梁やダムの建設にBIMとCIMを導入し、「2023年までに小規模工事を除くすべての公共事業にBIM・CIMを原則適用」を決定している。野原ホールディングスは、「急務となっているCIMデータ活用には土木技術者が利用しやすい環境の創出が必要」と考え、BIMおよびCIMを推進するCUGとこの取り組みを開始した。今回公開された3D建設データは、CUGメンバーの技術者によって作成されたもので、実務重視の使いやすさが特徴だという。

建設機材の3Dモデルも公開

建設機材の3Dモデルも公開

そのデータは、BIMobject Japanが国内で運営する、建設資材や設備などのメーカー製品のBIMコンテンツやデータを提供するプラットフォーム「BIMobject」で入手できる。CUGのサイトを通じてに無料会員登録をすれば、インフラ工事に必要な構造物、建設機材、仮設材、安全施設など308製品がダウンロードできるようになるとのことだ。

NICTのホログラムプリント技術を応用、多人数がフォトリアルな画像を裸眼立体視できる透明ARディスプレイ開発

NICTのホログラムプリント技術を応用、多人数がフォトリアルな画像を裸眼立体視できる透明ARディスプレイ開発

透明ARディスプレイ(左)とモデル本人(右)

情報通信研究機構(NICT)は1月31日、ホログラフィックフィルム1枚と複数のプロジェクターのみで構成される簡便な透明ARディスプレイで、フォトリアルな顔の3D表示を実現させたと発表した。これはNICTのホログラムプリント技術を応用したシステムで、3Dメガネを使わず裸眼で3D画像を見ることができる。

NICTは、2016年にすでに透明スクリーンに3D画像を投影する技術を開発している。コンピューターで設計した光の波面をホログラムとして記録できるNICT独自のホログラムプリンター「HOPTEC」で光学スクリーンを製作し、大型のプロジェクターで映像を投影するというシステムだったが、今回はそれよりもずっと簡素な構造になった。

ホログラムプリント技術(HOPTEC)

ホログラムプリント技術(HOPTEC)。NICTが開発している、計算機合成ホログラムを光学的に再生し、再生された波面をホログラム記録材料に物体光としてタイリング記録するホログラム露光技術。HOPTECにより、デジタルに設計した光学機能をホログラフィック光学素子として透明なフィルムにプリントできる

透明AR(Augmented Reality)ディスプレイシステム

透明AR(Augmented Reality)ディスプレイシステム

透明ARディスプレイは、対角35cm、水平視野角60度、垂直視野角10度というもので、3Dメガネなどを用いることなく、多人数が裸眼で立体映像を見ることができる。投影は、安価な小型プロジェクターを30台を使って行われ、フルカラーでの表示が可能。投影される画像は、凸版印刷が所有する高精度の人体測定が可能な装置「ライトステージ」(南カリフォルニア大学開発)で作られた。

高精細な顔計測データから成る映像を透明ARディスプレイ上に3D表示した様子

高精細な顔計測データから成る映像を透明ARディスプレイ上に3D表示した様子

このNICTと凸版印刷の共同研究は、NICTが3D投影技術を、凸版印刷が人体の高精細な計測によって生み出されるデジタルコンテンツを提供するという形で今後も進められる。そもそも、「3Dコンテンツを使用した新しいコミュニケーションの可能性」を目指して行われてきた研究だが、デジタルツインや仮想キャラクターといった使い方だけでなく、「人体を3D表示させた手術トレーニングや手術支援」など、医療をはじめとする様々な分野での適用を進めてゆくという。さらに、3Dコンテンツの高精細化、システムの簡素化、柔軟性を高め、CAD、BIM、点群データなど各種3Dデータに対応させることにより、建設や教育分野にも貢献できる技術開発を目指すとしている。

植物肉スタートアップのDAIZが30億円のプレシリーズC調達、熊本・新工場による生産体制強化と国内外でさらに販路拡大

植物肉スタートアップのDAIZが総額30億円のプレシリーズC調達、熊本・新工場による生産体制強化と国内外でさらに販路拡大発芽大豆由来の植物肉(代替肉)「ミラクルミート」を開発・生産するDAIZは2月1日、プレシリーズCラウンドにおいて、第三者割当増資による総額30億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、日清食品ホールディングス、丸井グループ、三菱ケミカルホールディングス、長谷川香料、物語コーポレーション、東洋製罐グループホールディングスの事業会社6社と、インベストメントLab、三井住友海上キャピタル、グローバル・ブレインなどの金融投資家4社。累計資本調達額は60億5000万円となった。国内のフードテック・スタートアップとしては、最大級の資金調達額。また、植物肉市場の成長が著しい海外での事業展開を見据えており、現地生産拠点の確保のために2022年中に追加で数十億円規模のシリーズCラウンドの資金調達を計画している。

プレシリーズCラウンドで調達した資金は、ミラクルミートの生産体制の拡大と研究開発(R&D)の強化、グローバルでの事業展開、成長を支える人材採用などにあて、さらなる事業基盤の拡充を図る。生産体制の拡大として、2023年の稼働を目指して熊本県内に新工場を建設する計画が進行しており、現在の年間生産キャパシティ4000トンの5倍の年間2万規模になるという。

また、成長資金の獲得と提携企業との協業によりミラクルミートの商品開発や販路拡大、SDGs観点の差別化訴求などを推進する。

DAIZは、独自技術「落合式ハイプレッシャー法」をコア技術とした熊本発のフードテック領域のスタートアップ。DAIZが生み出した環境負荷が小さい次世代の植物肉ミラクルミートは、大手ハンバーガーチェーンや、大手スーパー各社、飲食店など50社を超える採用実績を持ち、味の素やニチレイフーズなどの大手食品メーカーとの共同開発も進めてきた。

大手企業と連携して日本の食品技術を結集させた「オールジャパン構想」のもと、さらに研究開発を重ねることで「ミラクルミート」の価値向上を図っているという。また、2021年5月には米国・ボストンにDAIZ初の海外子会社を設立し、欧米市場へ進出した。

サーバーレスのデータ基盤ツールで非構造化データセットを解決する独Tiloがプレシード調達

一般的に企業内で使用されるデータセットは、ほとんどの場合さまざまなソースから、さまざまな非構造化形式で提供されている。それらを結びつけることは、非常に大きな頭痛の種になり得る。しかしそれができれば、特に金融分野では、不正行為の検知やKYC/AMLチェックなど、さまざまなメリットがある。これは特に金融機関が直面する問題だが、新型コロナウイルスの接触者追跡調査や一般的なビジネスインテリジェンス分野でも役に立つ可能性がある。

現時点で使用されている主なプラットフォームは、Neo4j、Senzing、またはAWSのNeptuneなどだ。あるいは、企業はElasticsearch(エラスティックサーチ)を使って独自のソリューションを構築しようとしている。だが、解決すべき大きな問題であることに変わりはない。

大企業からスピンアウトして理論を検証してきたベルリンの新しいスタートアップが、この難しい問題を解決しようとしている。

Tiloのデータ基盤ツール「TiloRes」は、サーバーレスでありながら、ほぼリアルタイムで大規模なデータマッチングを可能にすることで、企業が異なるソースやフォーマットのデータポイントをマッチングさせるのに役立つとしている。

Tiloは今回、欧州のVCであるPeak Capitalが64万ユーロ(約8300万円)を出資してリードしたプレシードラウンドで、120万ユーロ(約1億5500万円)のプレシード資金を調達した。今回の資金調達には、ベルリンを拠点とするTiny VC(Philipp Moehring、フィリップ・モエリング氏)、First Momentum Ventures、Enduring Venturesの他、Algoliaの創業者やContentfulの元CMOなどのエンジェル投資家が参加している。

Peak Capitalの投資先には、グローバルオークションマーケットプレイスのCatawiki、ヘッドレスコンテンツ管理システムのGraphCMS、オムニチャネルコミュニケーションプラットフォームのTrengoなどがある。

Tilo は、KYC/AML用のアプリケーションに加えて、新型コロナの接触者追跡調査に携わるすべての組織に、同社のソリューションを無料で提供する予定だ。

2021年11月に設立されたTiloは、企業やスタートアップとともにパイロットプロジェクトを開始した。Tiloのビジネスモデルは、企業がTiloResで処理するデータ量に応じてライセンス料を徴収するというもの。サーバーレスであるため、使用量に応じてコストが変動し、サーバーベースのソリューションよりも安価に利用できる。

Gartner(ガートナー)によると、Tiloが挑戦する市場は大きく、650億ドル(約7兆4740億円)の規模があると言われている。

TiloのSteven Renwick(スティーブン・レンウィック)CEOはこう述べている。「当社の最大の強みは、データがどれだけ増えても、エンティティがどれだけ複雑になっても、データの検索、照合、評価(例:オンライン決済プロセスにおける不正行為のチェック)がほぼリアルタイムで行われることです。これは、ほぼ常にリアルタイムの応答速度が求められる現代のニーズにとって重要なことです」。

Tiloの創業チームであるCEOのレンウィック氏、CTOのHendrik Nehnes(ヘンドリック・ネネス)氏、CDOのStefan Berkner(ステファン・ベルクナー)氏は、以前はドイツの消費者信用調査機関であるRegis24の技術チームだった。しかし、Regis24は彼らのソリューションをスピンアウトさせ、このスタートアップに戦略的に出資することに合意した。

PeakのDACH地域(ドイツ・オーストリア・スイスのドイツ語圏)責任者であるMadeline Lawrence(マデリン・ローレンス)氏は次のようにコメントしている。「正直なところ、最初は Tiloが何を解決しようとしているのか分かりませんでした。そして、私たち自身がデータマッチングに苦労していることに気づきました。CRMの重複やスペルの違いが私たちの頭痛の種になっているとしたら、さらにリスクが高く、ニーズがリアルタイムで、問題となるデータの規模が桁違いに大きい場合の苦痛を想像してみてください」。

画像クレジット:Tilo Team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

Solanaウォレットアプリ「Phantom」に暗号資産VCのParadigmが約1382億円の評価額で出資

暗号資産エコシステムにおいて、ウォレットはおそらく最も重要なタッチポイントであり、取引所やスマートコントラクトへのゲートウェイとして機能する。このため、人気のウォレットアプリを開発しているスタートアップは、消費者の暗号資産への投資機会に最も近い場所に位置していると同時に、骨の折れるオンボーディングの課題や過酷な詐欺環境など、Web3の未解決の問題の多くに取り組む責任を負っている。

Phantom(ファントム)は、Solana(ソラナ)エコシステムの主要なウォレットアプリの1つで、投資家やデベロッパーが過去1年間で価値が爆発的に上昇したEthereum(イーサリアム)の競合製品に注目した結果、勢いを得た(この比較的新しいトークンも最近の暗号資産の暴落で大きな打撃を受け、変動が激しいことが判明しているが)。

サンフランシスコの暗号資産スタートアップである同社は、このSolanaへの注目を、Paradigm(パラダイム)がリードする12億ドル(約1382億円)の評価額の1億900万ドル(約125億5000万円)の資金調達ラウンドに変えた。このモンスターユニコーンラウンドは、Andreessen Horowitz(a16z、アンドリーセン・ホロウィッツ)がリードする900万ドル(約10億4000万円)のシリーズAをクローズしてから6カ月後のことだ。当時のアクティブユーザー数は4万人だったが、現在は210万人に達しており、CEOのBrandon Millman(ブランドン・ミルマン)氏は、週に10万人のユーザーをコンスタントに獲得していると述べている。

Phantomの次の大きな野望は、マルチチェーン化と、Solanaエコシステム以外の別のブロックチェーンのサポートをウォレットに追加することだ。同社はリソースをどこに集中させるかについては明らかにしていないが、ほとんどの暗号資産デベロッパーが注目しており、MetaMask(メタマスク)のような競合他社が大きく立ちはだかるEthereumのEVMスタックと互換性のあるブロックチェーンのサポートを追加しようとしていることだけは明らかにしている。

関連記事:暗号資産VC「Paradigm」が約2855億円の巨大ファンドを設立

マルチチェーンへの対応はビジネスチャンスの拡大を意味するが、同時に複数のエコシステムへの対応も必要となり、現在約20名の従業員を擁するPhantomにとっては課題となる。しかし、同社チームは新しい資金で規模を拡大する予定だ。

「エンドユーザーに最も近い存在である当社には、ユーザーを保護し、教育する責任があります。この2、3カ月の間に行った作業の多くは、ユーザーの安全性に関わる機能の開発でした」とミルマン氏はTechCrunchに語った。

同社はモバイルでのプレゼンスを拡大しており、資金調達のニュースと同時に、一般にiOSアプリのロールアウトを開始し、今後数カ月のうちにAndroidネイティブアプリをリリースすることを発表した。PhantomのサイトとChrome拡張機能に付随するこれらのアプリは、暗号スペースに新しい消費者の波を呼び込むための取り組みの一環だが、エコシステムの中には、Web3スペースが技術的知識が少ないプレイヤーの波に対応できるかどうかを疑問視する声も少なくない。

「あらゆる観点から見て、スペース全体が非常に早い段階にあると言えるでしょう。このすべてがどうなるか、誰にもわからないと思います」とミルマン氏は語る。「スタック全体にわたって、まだまだ、プロのユーザー向けになっています。一般的には『まだコンシューマー向けではない』と言われることが多い分野ですが、我々はそのギャップを埋めるチームになりたいと思っています」。

関連記事:暗号通貨スタートアップのPhantomがマルチチェーンウォレット拡大のためa16zから資金調達

画像クレジット:Phantom

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

米国35州・マイクロソフト・電子フロンティア財団がEpic支持を表明、アップル対Epic裁判はまだまだ続く

アップル対Epic裁判、米国35州・マイクロソフト・電子フロンティア財団がEpic支持を表明

CHRIS DELMAS/AFP via Getty Images

アップルとEpic Gamesが『フォートナイト』のアプリ内課金をめぐって揉めている訴訟はいったんは判決が下されました。が、両社とも判決を不服として控訴したため、法廷での戦いはまだまだ続く見通しです。

この訴訟については、米国35州の司法長官とマイクロソフト、そして電子フロンティア財団が、Epicを支持することを表明しました。各州の弁護士が控訴裁判所に提出した準備書面では「アップルによるApp Storeの管理は独占禁止法に違反しない」とする先の判決を覆すべきだと主張されています。

Epic Gamesがアップルに対して起こした「App Storeの管理が独占禁止法に違反する」ことを問う裁判では、アップルにはアプリ開発者がユーザーを独自の決済システムに誘導することを認めなければならないとの判決が下されました。

その一方でアップルが反訴した「問題は独禁法違反かどうかではなく、EpicがApp Store開発者としての契約に違反して独自の決済システムを使ったこと」に関してはアップルの主張が認められ、Epic側にはアップルが本来得るべきだった手数料の支払いが命じられています

これによりEpicは金銭的には敗北を喫した一方で、アップルに対して「12月9日までに開発者がアプリ内でユーザーを他の決済システムに誘導できるようにしなければならない」との判決が下されたことで、一定の勝利を勝ちえたはずでした。

アップルはこの命令に対して期日延期を要請し、一度は却下されたものの、12月には控訴裁判所が延期に合意したことで先送りに成功しています。つまりアップルとEpicとの控訴審が終わるまで、App Storeアプリ内に外部決済リンクを認めることは何年も先延ばしにされるかもしれないわけです。

さて今回、35の州政府が提出した準備書面では「アップルはiPhone向けのアプリ配信とアプリ内課金ソリューションを独占し続け、競争を抑圧し、年間ほぼ1兆ドル規模のスマートフォン業界で超競争的利益(競争の激しい市場で維持できる利益を超えた利益)を蓄積しています」と簡潔に書かれています。

またMSも準備書面を提出し、同社が隣接する市場で「競争を封じるためにiOSを支配する」ことを可能にすると主張。「アップルがオンラインサービスを持つ全ての企業とiPhoneユーザーの間に介入することが許されるなら、巨大なモバイル経済のほとんどはアップルの干渉と最終的な支配から逃れられられない」と述べられています。

MSは自社のクラウドゲーミングサービスをiPhone向けに展開する上で大きな制約を受けたこともあり、以前からアップルを遠回しに批判していました

アップルはEpicとの訴訟について「(先の)判決が控訴で肯定されることを楽観視している」として、勝利を確信しているとの趣旨をコメント。さらに我々は、App Storeは消費者のための安全で信頼できる市場であり、開発者のための絶好の機会であることを保証するために引き続き取り組んでいきます」と述べています。この声明は、米上院で審議されているアプリストア規制法案へのけん制も兼ねていると思われます。

しかしアプリ課金については、アップルに対して自社システム以外の決済方法を認めるようオランダや韓国ほか世界各国で圧力が高まりつつあります。そこに米国の35州も加わるとなれば、アップルもいつまでも現状を守り続けるのは厳しいかもしれません。

(Source:CNETFOSS PATENTEngadget日本版より転載)

ウォルマートがホームサービスの提供を拡大、Angiとの新たなパートナーシップ

Walmart(ウォルマート)はホームサービスを拡大している。同社は米国時間1月31日、Angi(アンジー、Angie’s List)との新たな提携を発表した。全米50州の約4000店舗でWalmartの顧客がサービスのプロを利用できるようにする。Walmartの顧客が店頭やオンラインで買い物をする際、床張りや塗装、フェンス設置、さらには家具の組み立てや大型テレビの取り付けといった細々とした作業など、150種の一般的なホームプロジェクトでAngiのプロを予約できるというものだ。

Walmartは2018年にHandy(ハンディ)と提携し、2000超の店舗で家庭内の設置・組み立てサービスを販売し始め、その後オンラインにも拡大してホームサービス市場への最初の一歩を踏み出した。これは、顧客が家具などのアイテム購入時に、新アイテムを自宅に設置するための設置作業の予約もすぐに入れられるというものだった。この動きは、ライバルのAmazon(アマゾン)が2015年に小売サイト上にホームサービス専用のハブを立ち上げてホームサービスに参入したことに続くものだった。

WalmartがHandyとの提携を発表した直後、同社はAngi Homeservicesに買収された。そして2021年、Handyの共同創業者であるOisin Hanrahan (オイシン・ハンラハン)氏が、統合会社のCEOに就任した。潜在的な市場を踏まえ、後に自らの契約を拡大し、どこかの時点でHandyのホームサービス全般を含めることで、Walmartはこの買収を利用することもできると予想されていた。

同社は1月31日、HandyではなくAngiがホームサービスのパートナーになると説明した。これにより、Walmartは自社の顧客と25万人を超えるAngiの専門家のネットワークとを結びつけることができるようになる。HandyのブランドがWalmartのウェブサイトで紹介されることはなくなる、とWalmartはTechCrunchに語った。代わりに、Angiのブランドだけが店舗とオンラインの両方で見られるようになる。これはまた、Angiが2021年にリブランドしたことによるものでもある。同社はその際、もはや「Angie’s List」が単なる「リスト」ではなく、顧客がサービスのプロやその他の住宅建設業者を調べて予約し、予定を組んで支払いもできるサイトとして、ブランド名が自社のサービスを正確に表現できないと判断した。

画像クレジット:Walmart

Handyとの提携と比較すると、WalmartとAngiの新しい契約では、提供するサービスの数が増えることと相関して、以前の統合よりもはるかに幅広いSKU数となる。Handyとの提携は主にテレビや家具の設置など、小規模なプロジェクトにおける家庭内での設置・組み立てサービスが中心で、テレビ設置が45ドル(約5200円)、家具の設置が79ドル(約9000円)〜だった。しかし、Angiとの提携ではさらに踏み込んでいて、塗装、床張り、フェンス設置などより複雑なサービスも新たに提供するようになった。Walmartによると、さらに複雑なサービスにも手を広げていく予定だという。

この提携の財務的な内容や収益への影響についてWalmartに尋ねたところ、同社は詳細を明らかにすることを却下した。例えば、同社のサイトを通じて予約されたAngiのサービスに対して、どれくらい仲介料を取る可能性があるかなどは明らかにしていない。ただし、WalmartはAngiのサービスを提供する最初の期間限定独占小売店となる。

画像クレジット:Walmart

顧客は、オンラインおよび店舗で対象商品と一緒にAngiのサービスを予約するか、2月中旬に公開されるWalmart.comのAngi専用ランディングページから予約できるようになる(URLはまだ最終決定されていないとのことだ)。購入後、Angiが予約の調整を行う。大規模なサービスについては、専任のプロジェクトアドバイザーが顧客にカスタムメイドの見積もりを提供し、プロフェッショナルを探し、プロジェクトが成功するよう作業を管理する。

AngiのCEO、Oisin Hanrahan(オイシン・ハンラハン)氏は、今回のサービス開始について次のように述べた。「当社初の小売との統合として、世界有数の小売企業であるWalmartと立ち上げることができ、これに勝る喜びはありません。パンデミックが始まって以来、家庭が注目され、全米の人々はこれまで以上に住まいの改良やメンテナンス、修理を行っており、そうしたプロジェクトを始めるのに必要なツールや材料を探すためにしばしばWalmartを利用しています。新しいスマートTVを設置してエンターテインメント空間を華やかにしたり、増えた家族のために子ども部屋にペンキを塗ったり、屋外スペースを改造してパティオを設けたりといったことは、今やWalmartの顧客がWalmartでのショッピング体験の一部として、Angiのプロの助けを借りてシームレスに行えるプロジェクトになっています」と述べた。

Walmartの小売サービス部門シニアディレクターであるDarryl Spinks(ダリル・スピンクス)氏は「Angiは経験豊富で高い評価を得ているプロを顧客に案内し、家庭内の作業を支援します。Angiの便利で簡単なサービスをお客様に提供することに胸躍らせています」と述べた。

画像クレジット:Nicholas Kamm/AFP / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

ハードウェア開発者のための「GitHub」を目指すコラボハブAllSpice

AllSpiceの創業者、カイル・デュモン氏とヴァレンティナ・ラトナー氏(画像クレジット:Harvard Innovation Labs)

AllSpice(オールスパイス)はハードウェア開発のためのコラボレーションハブだ。GitHub(ギットハブ)に触発され、DevOpsエコシステムを構築することを使命として、プライベートベータ版から登場した。

創業者のValentina Ratner(ヴァレンティナ・ラトナー)氏とKyle Dumont(カイル・デュモン)氏は、2019年にハーバード大学で出会い、2人とも工学修士とMBAの両方を取得した。2人は、物事を進めるのにPDFや電子メールに頼るという、ソフトウェア開発に比べて遅れているハードウェア業界でのそれぞれの仕事に対するフラストレーションで意気投合した。

「ソフトウェア業界は強力なコラボレーションと自動化を備えている優れた開発者ツールで一斉にスタートしているように感じていました」とデュモン氏はTechCrunchに語った。「私がヴァレンティナに会ったとき、私たちはどのようにこの業界を修正することができるか、市場の規模にどのような影響を与えることができるか、アイデアを出し始めました」。

未だに手作業で行われているタスクが多く、エンジニアは書類作成やスプレッドシートにかなりの時間を費やしているため、エンジニアがハードウェア製品の設計や構築に大半の時間を割けるようにすることが、AllSpiceの背景にある考え方だとラトナー氏は話した。

AllSpiceのデザインレビュー機能(画像クレジット:AllSpice)

リモートワークや近年のチップ不足を背景に、AllSpiceや他の企業は「ハードウェアのためのGitHub」が必要だと考えている。リモートでほとんど何でも作ることを可能にするコラボレーションツールを作っているWikifactory(ウィキファクトリー)は、2020年末に300万ドル(約3億5000万円)の資金調達を発表した。2021年10月に1200万ドル(約13億8000万円)を調達したFlux(フラックス)は、ブラウザベースのハードウェア設計ツールを開発中だ。

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AllSpiceのツールで、エンジニアリング専門の人は自分のプロジェクトを管理し、チーム内の関係者と共同作業ができるようになる、とデュモン氏は話す。AllSpiceは、GitHub、GitLab(ギットラボ)、Bitbucket(ビットバケット)などのツールと互換性があり、ハードウェアチームが修正、レビュー、リリースを1カ所で管理するための一種のホームベースとして機能する。

AllSpiceは2020年にプレシードラウンドを調達した。そして、Bowery CapitalとRoot Venturesが共同でリードし、Flybridgeとエンジェル投資家が参加した320万ドル(約3億7000万円)のシードラウンドをこのほどクローズした。累計調達額は380万ドル(約4億4000万円)となった。

2021年は、数百の企業向けユーザーコメント、30以上のプロジェクト、数百のプロジェクトリポジトリが作成され「信じられないような採用」があったとラトナー氏は述べた。この勢いを維持するために、新しい資本は継続的なインテグレーションとデリバリーのためのエンジニアリングとマーケティングの新規雇用に投入される予定だ。

「私たちは、開発者主導のアプローチをとっています。これは、ソフトウェア業界ではしばらく前からしっかりと確立されていることですが、ハードウェア業界では、まだかなり営業が強いのです。業界に追いついていない販売手法もあるため、私たちはまずエンジニアに役立つ製品を提供することを心がけています」。

AllSpiceはツールに依存しない。幅広い企業にアピールできるよう、統合のための別のCADツールをもたらし、そしてより多くのものがデジタルで非同期であることから、環境の変化にハードウェアチームが迅速に対応できるようにする、というのがAllSpiceの計画だとラトナー氏とデュモン氏は話す。

一方、Bowery CapitalのゼネラルパートナーであるLoren Straub(ローレン・ストラアブ)氏は、AllSpiceを紹介されたとき、同社は製品主導の成長アプローチに注目していたと述べた。ストラアブ氏が最もよく目にしたものは、サプライチェーン、製造、オートメーションと関係があり、ハードウェアも含まれていた。

ストラアブ氏は、創業者たちがソフトウェアとハードウェアのエンジニアリングの経験を持ち、ハードウェア開発がいかに困難で時代に遅れを取っているかを目の当たりにし、それを経験していたことに魅力を感じたという。

「事前調査を進めていくなかで、今まで見たこともないようなフラストレーションが溜まっているのを目にしました。人々は、そのエクスペリエンスがいかにクリエイティブな体験であるかを聞いて、いくつかのソフトウェアツールに自分達のワークフローを無理やり取り込もうとしたが、うまくいかなかった、とさえ言っていました」と付け加えた。「ヴァレンティーナとカイルは、ハードウェアのために適切なツールが作られれば、どれだけ良くなるかを深く理解していたのです」。

「VCになる前、私は10年以上ハードウェアエンジニアリングに携わっていました」と、Root Venturesのパートナー、Chrissy Meyer(クリッシー・メイヤー)氏は電子メールで述べた。「Appleのような大企業がスタートアップと共通していたのは、スクリーンショットを使ってデザインレビューをまだ行っていたことです。ハードウェアエンジニアがGitHubやJIRAのようなソフトウェアツールを寄せ集めるのを見たことがありますが、それらのツールはコードのために作られたもので、CADのためのものではありません。ヴァレンティーナとカイルに初めて会ったとき、私はすぐさま興奮しました。というのも、あったらいいなと私がいつも思っていたツール を彼らが説明してくれたからです」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi