乙武洋匡氏とイタリアン・レストラン入店拒否から見る『著名人がネットで晒しあげる』という行為についての雑感

今話題の、乙武洋匡氏が銀座のイタリアン・レストランで入店をお断りされてしまった件について、個人的に感じた事をつらつらと書いてみました。一部偏った意見や考え方が見られるかも知れませんが、ご容赦頂ければ幸いです。

また、この記事は乙武氏とレストラン側の対応の是非についてを本題としているものではありません。

乙武氏は弁解の余地無く『晒しあげ』を行った

乙武氏、レストラン側とお互いに色々と意見が出てきており、それに関して私も色々と感想を持っていますがここでは一旦置いておきます。それよりも興味深かったのは、乙武氏がレストランの実名を上げてTwitter上で『晒しあげ』をしてしまった事です。

乙武氏とレストラン、どちらの言っている事が本当であろうと何であろうと、要は乙武氏のした事は「無茶苦茶頭にきたから、レストラン晒しあげたる!」って事に他ならないと思うんですよね。
個人的には今回の件で乙武氏の株は下がり、レストランは今後の対応次第で株が上がるのではと思うのですが、乙武氏のやった事自体は実行するか否かは別にしてとてもよく理解できます。重ねて言いますが、実行するかは別として、非常に自然な感情の流れだと思います。

今回の件での『発言力』という観点

今回の件で多く目にする意見が、「フォロワーが60万人も居る乙武氏」が店の実名を出した事を問題視しているものです。
ここから乙武氏とレストランは全く関係ない話になるのですが、この『影響力』や『発言力』というものが非常に簡単に手に入るようになったな…という内容が今回の本題です。

例えば、今回乙武氏が利用したTwitterですが、何十万とはいかなくとも数万人程度のフォロワーと繋がっている人は珍しくない時代です。それも芸能人ではなく、ただの個人で…です。
フォロワーの数がそのまま発言力になるかというと別の話になりますが、大雑把に言ってしまえば数万人の人にメッセージを発信できる人は少なくないと考えて差し支えないのではないでしょうか。

拡散力 × 人数 = 発言力

『発言力』というと数値化しにくいですが、「何人にメッセージを発信できるか?」と「それがどの程度拡散しやすいか?」という要素が大きい気がします。

少し前の話ですが、家入一真氏と若野桂氏のギャラ未払い問題がネット上で取り沙汰されていましたよね。
私はフリーで仕事をしているので、ギャラの件で少しだけ話し合いが必要になる事も、正直全くない訳ではないです。勿論、それをブログで公表するような事はしませんが、万が一私がブログで社名入りで公表したとしましょう。

2013年5月現在、このブログのPVが約50,000前後になるので、雑に言えば一ヶ月かければ5万回はその事実を世間にアピールする事が可能な訳です。アドビ祭りの時は一日で12,000以上のアクセスがあったので、運良く拡散されればあっという間でしょう。

これが例えば大手ブログなら

そこで考えました。フリーランサーやブロガーと呼ばれる人達で、月に100万PVを超えるようなサイトやブログを持っている人って結構居るよな…と。

瞬間的に60万人の人に発言できる乙武氏とは異なりますが、時間をかける事で何百万人もの人に情報を発信する事が出来る立場の人というのは、案外少なくないものです。
芸能人のブログが定期的に『炎上』したり、どこぞの社長が暴言や失言をブログに載せて話題になったりと、枚挙に暇がありません。しかも、それを簡単に次の人へ拡散する事が出来る環境が整っているインターネットでは、何も乙武氏のような著名人でなくとも結構簡単に『晒しあげ』が出来てしまうと思うんですよね。

勿論、多くの人はその『発言力』を自分の好きな事や、自分の作品を見てもらう事に費やしている訳ですが、この「やろうと思えば出来る」という点が非常に興味深いなと思った訳です。

つまり、どういう事かと言うと…

もっと気をつけて生きようと思いました

「小学生か!」って突っ込まれそうな纏め方ですが、今回私が思ったのは結局のところ「色々気を付けよう」という事です。乙武氏とレストランの問題は二人の問題で、二人で話し合うなり二度と関わらないなりすれば良い話で、特別興味は無いし外野がやいやい言う話では無いと思っています。

そんな事より仕事の話しようぜ!です。

仕事をする上で、『評判』というのは致命傷になりかねません。特にフリーランサーは弱小この上無い。
私は仕事をする相手の事や、企業の財務状況や評判は必ず調べられる限りは調べた上で、契約を交わすか否かを判断します。逆に考えて、私と仕事をしようか検討して下さっている企業がネット上で私の名前を検索して、「納期を守らない」とか「仕事の質が低い」と出てきたら普通に考えてお終いです。

フリーランサー側としても、「あの会社はギャラを踏み倒す」とか「無理難題を安価でやらせようとする」という情報が出てくれば契約は避けますし、そういう情報は表沙汰にならないだけで結構共有されいるのが実情です。要はそれを晒しあげるか否か、です。

今回の騒動についてコメントを出して炎上しても嫌なのですが、私個人としては確実に乙武氏の株は下がりました。下がりましたが、乙武氏がそれを承知の上で晒しあげを行ったのであれば、まあそれはそれで良いのではないか…というのが感想です。

障害者とか健常者とか、客と店とか、そういう事以前にみんなそれぞれ出来る事が違います。パワーが違うと言っても良いかもしれません。
体の丈夫な人は人よりスポーツが出来る、お金のある人は人より贅沢が出来る、発言力のある人は人を動かす事が出来る、料理が出来る人は人を幸せにする事が出来る。乙武氏もレストランも、お互いが出来る最大限でお互いを攻撃したという事ではないかと思うんですよね。

そういう事を理解した上で行動する

つまり、良い事でも悪い事でも、誰かに対して何かをする時、それがどういう反応を生むのかをもっと留意するべきだなーと改めて思ったんです。

あり得ない事ですが、すごーく面倒になってしまって私が納期を破ってしまおうかな…と一瞬でも思ったとします。あり得ない事ですが。
そして、それが世間に公表されないとすれば、それは単純に「運が良かった」のであり、やろうと思えば「こいつは納期を破る」という事実を公表できてしまうという事だ…という現実を改めて認識させられました。

先ほど引き合いに出した、家入氏と若野氏のギャラ未払いトラブルに関しても、この騒動を目にした後で家入氏と仕事をしようと思う人は確実に減るでしょう。若野氏に関しても、読み手によっては仕事が減るでしょう。

乙武氏とイタリアン・レストランの件は、そういう事が起こりえるという事実を十分に認識した上で生きて行こう、と改めて考える切っ掛けになりました。

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