この2足歩行ロボットは頭がドローンでできている

2足ロボットを作るのは難しい。常に絶妙なバランスを保っている必要があり、驚くべき技をこなすATLASのようなロボットでさえ、時には転んでその電子の頭を強打してしまう。しかし、もしその頭がクワッドコプターならどうだろう?

東京大学で作られた意欲的ロボット、Aerial-Bipedはまさにそれだ。ロボットは完全な二本足ではないが、真に2本足で歩くための面倒な問題を回避しつつ、2足歩行ロボットのように行動する。歩く真似をしながら実際には歩かない操り人形の足を想像するとよいかもしれない。

目標は、2足歩行のように見せながら動的な移動能力をもつ、新しいビジュアル体験をあたえるロボットを作ることだ。このロボットはフラミンゴのような非常に細い足を使いながらも、移動能力を損なうことなく歩くことができる。このアプローチによって、専門知識がなくても二足ロボットの歩行を演出できるようになる。しかも、通常の二足歩行ロボットよりずっと安価に作れる、と研究チームはIEEEに語った。

このロボットは、 Balluという、浮遊する頭部とヒョロ長い足をもつ異様な外見の風船ロボットに似ている。もっともらしい歩き方は機械学習を通じて会得し、その結果実際には飛行システムでありながら、リアルな歩き方の印象を与えている。気の利いた小さなプロジェクトだが、巨大な2足歩行ロボットが倒れてくると危険なテーマパークのような環境で面白い使い方ができそうだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Amazon Echoをハックして盗聴できることをセキュリティ研究者たちが発見

DefConでハッカーたちが、スマートスピーカーの新たなセキュリティ問題を公表した。このセキュリティカンファレンスでスピーチしたTencentのWu HuiYuとQian WenxiangはBreaking Smart Speakers: We are Listening to You(スマートスピーカーを破る: あなたを盗聴できる)と題するプレゼンを行い、彼らがAmazonのEchoスピーカーをハックして、それにスパイ役をやらせた方法を説明した。

このハックは、まずAmazon Echoのハンダ付けされている部品を交換するなどして、それを改造する。そしてハックの被害者となる正常なEchoは、改造Echoと同じネットワーク(同じLAN上)に接続していなければならない。

この設定で改造Echoは盗聴者になり、他のEchoスピーカーからの音声をリレーする。他のスピーカーたちは、何かを‘送信’をしてるわけではない。

この方法はとても難しいが、Amazonの人気増大中のスマートスピーカーを悪用するための第一歩だ。

研究者たちは、プレゼンの前にそのエクスプロイトをAmazonに通知した。そしてWired誌によると、Amazonはすでにパッチをプッシュしたそうだ。

しかしそれでもそのプレゼンテーションは、悪質なファームウェアを搭載した一台のEchoが、同じネットワークに接続している一群のスピーカーを変えてしまうことを示している。たとえばホテルの各室にEchoがある場合など、危ないだろう。

Wiredは、Echoのネットワーキング機能がハックを可能にした仕組みを説明している:

手術をされたEchoをターゲットデバイスと同じWi-Fiネットワークに接続できたら、ハッカーはAmazonのスピーカーのソフトウェアのWhole Home Audio Daemon呼ばれる部位を利用できる。同じネットワーク上のEchoは、この部位を使って互いにコミュニケートする。このデーモンに脆弱性があることをハッカーは発見し、それを、ハックしたEchoから悪用して、ターゲットのスピーカーの完全なコントロールを取得した。たとえばそのEchoに勝手な音を出させたり、もっと困るのは、オーディオを黙って録音したり、遠くのスパイに送ったりできる。

AmazonはWiredに、“セキュリティフィックスによるアップデートが自動的に行われたので顧客は自分のデバイスに何もする必要がない。この問題は、犯人がデバイスに物理的にアクセスできて、デバイスのハードウェアを変える能力を持っていることを必要とする”、と述べている。

ただしハックを実行するために犯人がアクセスできなければならないのは、犯人自身のEchoのみである。

Amazonは、その音声デバイスが顧客をモニタしているという懸念を一蹴したが、今年のDefConでハッカーたちは、それができることを証明した。

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コンテンツリコメンデーションネットワークのRevcontentはPoynter Instituteを利用して個々の記事の真偽を判定

‘世界でもっとも急成長しているコンテンツ・リコメンデーション・ネットワーク’を名乗るRevcontentのCEO John Lempによると、同社は、虚偽の、あるいは人を惑わすような記事がたまたま同社のネットワークに載っても、それらからは一銭も収益を上げていない、という。

それを口だけで終わらせないために同社は、Poynter InstituteのInternational Fact Checking Networkが提供する事実チェック(fact-checking)を利用している。International Fact Checkingの二つの互いに独立のファクトチェッカーが、Revcontentネットワークがリコメンドしているある記事を虚偽と判定したら、その記事を指すウィジェットは削除され、記事に対する支払いはいっさい行われない(虚偽と判定される前に稼いだ額も含めて)。

ある意味でRevcontentのフェイクニュースや誤報との戦い方は、大手のソーシャルメディアのやり方に似ているようにも聞こえる。LempもTwitterと同様に、同社は真実の審判員ではありえない、と言い、またFacebookのように、センセーショナルで人を惑わす記事の投稿に伴う金銭的動機を取り去ることが重要、と強調する。

しかしLempによると、コンテンツリコメンデーションの存在意義は、パブリッシャーの個々のプラットホームへの依存を減らすところにある。そんな彼によると、巨大インターネット企業は“粗悪なネガティブPR”に反応してコンテンツを“恣意的に”取り下げている。それと対照的にRevcontentは完全に透明なやり方を採り、フェイクニュースの金銭的報酬は取り去るが人為的に誰かを黙らせることはしない。〔金銭的報酬のないサイトには載らなくなる。〕

Lempは過去に取り下げた記事を具体的に挙げないが、しかし最近の大事件はなんといってもInfowarsだ。今では誰も彼もが、Alex Jonesの極右的で世間に陰謀説を広めるサイトを締め付けている。そして最近の2週間では、関連のアカウントやコンテンツがかなり削除された。

Infowarsの一件はまた、個々の記事ベースでフェイクニュースと有効に戦うことの難しさを示唆した。それに対して、一貫して粗悪なコンテンツをポストしているパブリッシャーを切り離すことは、楽なのだ。

この問題についてLempは、Revcontentにはパブリッシャーをそのネットワークから完全に削除するオプションもあるが、それはあくまでも“最後の手段だ”、と言った。

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Googleの次期Pixel 3の噂が出揃ってきた

Note 9が正式発表になり全貌が明らかになった今、次の主要スマートフォンモデルを語るときだ。GoogleのPixel 3の噂はSamsungの発表前ほどには流れてきていない —— しかしまだ時間はある。GoogleのフラグシップAndroid端末の最新機種は、10月になるまで正式公開されないのだから。

それでも、先週の開封儀式の様子など、いくつか信頼できそうな情報が出てきているので、デバイスの内容はかなりよく見えてきている。

まず目につくのはかなり目立つトップノッチ(切り欠き)だ。Googleが今回ノッチを受け入れたことは驚きではない。Samsung以外の事実上全フラグシップ機でブームになっていることに加えて、GoogleはAndroid Pieをノッチフレンドリーにするという策にでた。

世間を二分するデザイン決定をGoogleが採用することは予想がついていた。それでも、今日のノッチ擁護の基準からみても、この切り欠きは大きい。Essentialが最初の端末で採用して以来、ノッチはどんどん大きくなっているように思える。

トレンドの追求といえば、GoogleはPixel 2でヘッドホンジャックを廃止した。1年前にはAppleの決定をあざ笑っていたのだが。外観から察するにGoogleは移行を容易にするべくUSB-Cヘッドホンを同梱してドングルを不要にしている(たたし、箱の中にはドングルも見える)。もちろん、充電しながら音楽を聴くためには何か方法を考える必要がある。

デザイン志向は同社のPixel Budsとよく似ていて、位置を安定させるためのループもある。これをヒモ付きPixel Budsと呼ぶのは行き過ぎだろうが、
ワイヤレスイヤホンの生ぬるい普及状態から同社がなんらかのヒントを得たようではある。

一方、Google Pixel XLは今回本当に大きくなりそうだ。新しい6.4インチのNote 9も、報じられている6.7インチディスプレイと比べればなんでもない。もちろんSamsungには、大型ディスプレイを比較的小さな筐体に収める長年にわたる製品デザインの強みがある。実際に端末を手にとって見るまで、実際にどう扱いにくいかは判断できない。

その他の詳細情報としては、Snapdragonの採用があげられる。今やフラグシップ機にとって必須要件といえる。XLは3430 mAhバッテリー搭載との噂もある。これは、画面サイズが大きくなったにもかかわらず、昨年のモデルからはダウングレードになる。

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iOS 12のベータ7はバグとクラッシュの報告で中断、再開時期は未定

ベータのソフトウェアには、リスクがつきものだ。そのため企業は通常、それをユーザーのメインのデバイスにインストールすることを勧めない。でも、あえて危険を好むタイプの人びとにとっては、iOS 12の最新ベータが厄介な問題を提示する。

このモバイルオペレーティングシステムの次期バージョンの、7度目のベータに関しては、バグによるパフォーマンスの劣化やフリーズ、クラッシュなどの報告が広まっている。そこで一部の評論家などは、このベータをインストールせずにスキップすることを勧めている。

それは、かなり快調と思われたこの前のビルドに比べると著しい変化だ。問題の報告があまりに多いので、Appleはネットワークからのアップデートを引っ込めたようだ。それはこのベータが始まってからまだ24時間も経っていない時点でだ。すでにこのiOSはベータも終わりに近いと言われていたし、一般公開は(おそらく新しいハードウェアと共に)来月と予想されていただけに、今回の事態は意外だ。

今、ベータ7の再開時期について、Appleに問い合わせている。

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SEERは人間のようにアイコンタクトできる――日本のアーティスト、ロボットで目の表情を精緻に再現

われわれはすでにロボットが蹴られたり邪魔されたりするのをみて見て気持ちをかき乱されてきた。たとえそのロボットがいかにロボット的な外観であってもやはりかわいそうだと思ってしまうのだから、ロボットの表情が人間そっくりでアイコンタクトを続ける能力があったらもっと厄介な事態になるだろう。ましてロボットをいじめるとそれに応じた表情をするのであればなおさらだ。そうは言ってもこれがわれわれが選んだ未来なのだから止むえない。

SEERは感情表現シミューレーション・ロボット(Simulative Emotional Expression Robot)の頭文字で、 今年初めにバンクーバーで開催されたSIGGRAPHで発表された。このヒューマノイド・タイプの小さな頭部の製作者は日本のアーティスト、藤堂高行(Takayuki Todo)氏で、 直近の人間とアイコンタクトをとり、その人物の表情を真似することができる。

それだけ聞くとさほど革命的には聞こえないかもしれないが、高いレベルで実行するための仕組みは非常に複雑だ。SEERにはまだ多少の不具合はあるものの、これに成功している。

現在SEERロボットには2つのモードがある。イミテーション・モードとアイコンタクト・モードだ。どちらも近くの(あるいは内蔵の)カメラの情報を利用し、人間をトラッキングし、表情をリアルタイムで認識する。

イミテーション・モードでは対象となる人間の頭部の位置、眼球とまぶたの動きを認識してSEER側で再現する。実装はまだ完全ではなく、ときおりフリーズしたりランダムに振動したりする。これは表情データからのノイズ除去がまだ完全でないためだという。しかし動作がうまく行ったときは人間に近い。もちろん本物の人間の表情はもっとバリエーションが豊富だが、SEERの比較的単純で小さい頭部には異常にリアルな眼球が装備されており、その動きはいわゆる「不気味の谷」に深く分け入り、谷を向こう側にほとんど抜け出すほどのインパクトがある。

アイコンタクト・モードではロボットは当初まず能動的に動く。そして付近にいる人間の目を認識するとアイコンタクトを継続する。これも不思議な感覚をもたらすが、ある種のロボットの場合のような不気味さは少ない。ロボットの顔の造形が貧弱だとできの悪いSFXを見せられているような気分になるが、SEERには突然深いエンパシーを抱かせるほどのリアルさがある。

こうした効果が生まれる原因としては、感情としてとしてはニュートラルで子供っぽい顔となるようデリケートに造形されていることが大きいだろう。また目がきわめてリアルに再現されている点も重要だ。もしAmazon Echoにこの目があったら、Echoが言ったことをすべて覚えていると容易に実感できるだろう。やがてEchoに悩みを打ち明けるようになるかもしれない。

今のところSEERは実験的なアート・プロジェクトだ。しかしこれを可能にしているテクノロジーは近い将来、各種のスマートアシスタントに組み込まれるに違いない。
その結果がどんな善悪をもたらすのかは今後われわれ自身が発見することになるのだろう。

〔日本版〕SEERロボットは東京大学生産技術研究所の山中俊治研究室で6月に開催された「Parametric Move 動きをうごかす展」でもデモされている。下のビデオは藤堂氏の以前のロボット作品、GAZEROID「ろぼりん」。



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滑川海彦@Facebook Google+

スマートスピーカーの販売額は来年末までに50%アップする――NPDがアメリカ市場のデータを発表

2014年の後半にEchoをリリースしたときにはAmazon自身もこうなるとは予想していなかったかもしれない。 AIを利用したスピーカーは次世代家電に必須のプラットフォームを作ることになりそうだ。

スマートスピーカーはAIを消費者レベルに浸透させ、さまざまな製品がWiFiなどを経由して協調作動するコネクテッド・ホームの世界へのドアを大きく開いた。

消費動向調査の有力企業、NPDが発表したレポートによれば、スマートスピーカーの売れ行きにはまったくかげりが見えないという。 これらのデバイスの販売額は2016-2017年と2018-2019年を比較して50%の成長を示すと推定されている。スマートスピーカーのカテゴリーには来年末までに16億ドルの売上があるものと期待されている。

AmazonがベストセラーになったDot、スクリーン付のSpotやShowを追加するつれ、Echoシリーズはこの4年間に 急速に売れ行きを伸ばしてきた。一方、GoogleもHomeシリーズでぴったりAmazonの背後につけている。最近LG、Lenovo、JBLが発表したスマートディスプレイはGoogleのホームアシスタントが組み込まれている。

Appleもこの分野に参入し、HomePodを発表した。これによりプレミアム版のスマートスピーカーというジャンルも成立した。Googleもハイエンド製品、Home Maxで続いた。Samsungが近くリリースするGalaxy Home(三脚にHomePodを載せたように見える)もこのジャンルの製品だろう。

こうした大企業はすべてスマートスピーカーがスマートホーム製品の普及に道を開くことになるのを期待しているのは疑いない。NPDの調査によれば、アメリカの消費者の19%は1年以内になんらかのスマートホーム製品を購入する予定があるという。

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滑川海彦@Facebook Google+

米、政府内でのHuaweiやZTEの機器使用を新国防法で禁止

米政府では今後、HuaweiやZTEを含む中国テック企業の特定のコンポーネントやサービスの使用が禁止される。トランプ大統領が今日、国防権限法の一環として法案に署名した。新法は2年以内に施行される。

新法は“あらゆるシステムの、重要であるものもしくは不可欠のコンポーネント”を含み、ユーザデータを経由したり閲覧したりするテックも含まれる。この新法はHuaweiやZTEの商品を徹底的に排除するものではないが、政府職員や政府とビジネスをしたいと考える契約業者は対象企業の最新テクノロジーを放棄する必要に迫られる。

国防権限法ではまた、今回の新法により機器を新しくする必要に迫られる企業に予算も割り当てる。

先月、ZTEは北朝鮮とイランへの輸出禁止に違反したとして米商務省と制裁のやりとりがあった。この制裁では、ZTEは米国のサプライヤーとの取引が禁止され、これにより経営は深刻な危機に陥った。この件は米国と中国との貿易戦争の主な論点となっていた。

米国の両党議員は制裁の見直しに反対し、ZTEを安全保障上の脅威とみなしているが、先月、共和党の上院議員はZTEに制裁を再び科すことを諦めている。これにより、国防権限法においてさほど厳しくない措置につながっている。

この件に関し、TechCrunchHuaweiとZTEにコメントを求めている。

HuaweiとZTEは、2012年の議会報告書以来、米国にとっては特に目立った脅威と位置付けられている。しかし今回の新法にはHytera CommunicationsやHangzhou Hikvision Digital Technology、Dahua Technologyといったビデオ監視や情報通信機器の中国企業も含まれている。

イメージクレジット: LLUIS GENE / Staff / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

Chromebookが一般採用の増加を目指してWindows 10とデュアルブートになる?

Chrome OSはこれまでの数年間でずいぶん成長した。しかしまだ、多くの人が自分のデスクトップに載せたいと思うほどの、本格的なオペレーティングシステムではない。しかしある報道によると、Googleはこの状況をなんとかしたいらしい。そのためにまず、Windows 10とのデュアルブートを可能にする、というのだ。

XDA-Developersによると、Googleは今、Chromebookの旗艦機とも言えるPixelbookにMicrosoftのハードウェア証明を取らせるべく、積極的に努力している。その“alt OS mode”(代替OSモード)と呼ばれるプロジェクトはコードネームが“Campfire”で、そう遠くない未来にPixelbookに実装される、と言われている。その後は、もっとさまざまなChromebookがそれをサポートする。

どのデバイスが、Microsoftのかつては遍在的だったオペレーティングシステムをサポートするのか、それはまず、システムのスペックに依存する。MicrosoftはローエンドのシステムでもWindowsが動くよう努力してきたが、しかし今のうんと安いChromebookには、ChromeOSとWindows 10の両方を動かせるほどのストレージの余裕はない。ということは、選ばれるのはWindows 10Sか?

その点、Pixelbookはハイエンド機だから、Windows 10がそれに載るのは魅力的だ。Chromebookのハイエンド機でAndroidアプリも動く、とは言っても、まだソフトウェア的には十分ではない。最近、中国への旅でPixelbookを持参したが、優れたノートブックなのに、ソフトウェアの限界で幻滅を感じることがあった。

これらすべてのローンチは、次のPixel 3の発表イベントで行われる、という説がある。最近はリークの数も増えているから、何かでっかいことをGoogleは計画しているのかもしれない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

スウェーデンの避妊アプリNatural CyclesをFDAが承認、ただし完璧な避妊方法は存在しない

妊娠したくないの? FDAが認可した、そのためのアプリがあるのよ。FDAが今日(米国時間8/13)、スウェーデンのアプリNatural Cyclesに、避妊方法の一つとしてアメリカで売ってもよい、という許可を与えた

Natural Cyclesは一部のヨーロッパの国では妊娠を防ぐ方法のひとつとしてすでに使われている。でも、いわゆる‘デジタル避妊法’がアメリカで認可になるのは、これが初めてだ。

このアプリは、ユーザーの女性が提供するデータ、たとえば、体温や毎月の生理の周期などをアルゴリズムが利用する。そして各月のいちばん受胎しやすい日(何日から何日まで)を計算する。女性はその日にはセックスをしないようにするか、または避妊具を使用する。

生理の周期を調べて受胎しやすい日にちを判断する避妊方法は、かなり前から使われている。でもNatural Cyclesはこの古くからある方法に科学のひと味を加えて、アルゴリズムを改良した。そして15000名あまりの女性テスターたちの評価により、“ふつうの使い方”では6%のエラーレート、“完璧な使い方”では1.8%のエラーレートを達成した。

“完璧な使い方”とは、アプリが示唆する受胎危険日には防具を使わないセックスを絶対にしない、という使い方だが、それでも100人中1年に2人近くは妊娠する。つまりアプリが示唆する‘受胎危険日以外の日’は、‘絶対に100%妊娠しない日’ではない。でも、そのほかの避妊方法にも、それぐらいのエラーレートはある。たとえばCenters for Disease Control(CDC)によれば、コンドームのエラーレートは18%だ。

このアプリのメーカーはアメリカのFDAに効用を説得することには成功したが、しかしスウェーデンでは少なくとも一つの病院が、国のMedical Products Agency(MPA)と共に調査を開始した。同病院の記録では、Natural Cyclesを使っていた女性のうち37名が、望まざる妊娠をしているからだ。

FDAのCenter for Devices and Radiological Health(健康機器・器具および放射線医学部局)で女性の健康を担当しているAD Terri Cornelisonはこう言う: “消費者はますますデジタルの健康テクノロジーを使って自分のための健康情報を得ている。この新しいアプリはよく注意して正しく使えば有効な避妊方法を提供できる”。

ただしそんな彼女も、アプリのアルゴリズムにもそのほかの避妊方法にもエラーレートがあることを認める。そして、“完璧な避妊方法は存在しないことを、女性は知るべきだ。だからこのデバイスを正しく使っても計画せざる妊娠が結果することが、依然としてありうる”、と語る。

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アップル京都店は8月25日朝10時オープン。京都生まれゲーム特集も

eng-logo-2015アップルが新宿に続く新たな直営店、Apple 京都を正式に発表しました。場所は京都市下京区 四条高倉の京都ゼロゲート1F。オープンは8月25日の午前10時。

アップルは京都の碁盤目を「アイデアと想像力が格子のように交わるところ」として、クリエイティビティの都たる京都に新たなインスピレーションを届ける店舗になるとうたいます。

アップル京都の正式発表にあわせて、App Store や iTunes では京都発コンテンツの特集も組まれています。

App Store の Today は「京都生まれのゲームたち」。京都・ゲームと聞いて誰もが連想する任天堂の Super Mario Run、どうぶつの森 ポケットキャンプ、ファイアーエムブレム ヒーローズに加えて、Hit-Point 京都開発室で作られた「ねこあつめ」や、京都にあるQ-Games の Eden Obscura も。

さらに iTunes Store では、京都ゆかりの作品を集めた「京都コレクション」も公開。映画のトップはよりによって「るろうに剣心 京都大火編」。

映画・ブック・ミュージックそれぞれ約25作品が選ばれています。なんとブックは6冊が無料!(著者は後白河天皇・藤原定家・菱川師宣・清少納言・紫式部など)

Apple 新宿の開店前、アップルが年内の新直営店オープンを予告していた画像はこちら。

アップル、新宿に続く2店舗を謎のロゴで予告。新ストアはどこになる?

Engadget 日本版からの転載。

FirefoxやFacebookなどがインターネットの新しいセキュリティプロトコルTLS 1.3をすでにサポート

先週の金曜日(米国時間8/10)に、Internet Engineering Task Force(IETF)はTLS 1.3をリリースした。これはWebのセキュリティプロトコルTLS 1.2のメジャーアップデートで、HTTPS接続による暗号化を扱うレイヤなど多くのセキュリティ機能がこのプロトコルで定義されている。

今回のアップデートで、セキュリティが向上するとともにスピードもやや上がる。それはブラウザーとサーバーがセキュリティの設定を折衝するときに必要とされるラウンドトリップの回数を減らしたからだ。そしてMozillaの今日(米国時間8/13)の発表によると、Firefoxは現バージョンがすでにTLSの新しい規格をサポートしている。Chromeも、バージョン65から(初期のドラフトにより)新しいプロトコルをサポートしている。

TLS 1.3は策定にかなりの年月を要し、前バージョンのローンチから10年かかっている。TLS 1.2に問題があることは広く知られていたが、それらは主に実装のレベルの問題で、しかも遍在的だったためにハッカーの餌食となり、また悪名高い脆弱性バグHeartbleedのような傷口を広げた。しかしそれだけではなく、TLS 1.2のアルゴリズムの一部も、攻撃が成功されてしまった。

そこで当然ながらTLS 1.3は、現代的な暗号化方法へのアクセスにフォーカスしている(Cloudflareの連中がその技術的詳細を書いている)。

これはユーザーにとってはWebがより安全になることであり、また暗号化の方法に関するブラウザーとサーバーの折衝がはやくなるぶん、Webアクセスもややはやくなる。

TLS 1.3をすでにサポートしているFacebookは、トラフィックの半分近くが新しいプロトコルでサーブされている、という。GoogleやCloudflareも、サポート済みだ。

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この陽気なロボットは、自閉症児のセラピーに一役買う

LuxAIが作ったQTrobotという名の小さなロボットが、セラピストや両親と自閉症の子供たちとの橋渡しになるかもしれない。液晶画面の顔とロボティックアームを備えたロボットは、人との触れ合いを恐れる子供たちにとって居心地の良いセラピー環境を作ることができる。

プロジェクトの主体はルクセンブルグ大学のスピンオフ、LuxAIだ。彼らは今月末にRO-MAN 2018で成果を発表する。

「このロボットは、人間セラピストとロボットと子供の間に三角形のつながりを生むことができる」と共同ファウンダーのAida NazarikhorramがIEEEに伝えた。「子供は教師やセラピストとすぐに打ち解け、ロボットについて質問したりその行動に関するフィードバックをくれる」。

ロボットは自閉症児の不安を緩和し、「ハンドフラッピング」など多くの行動がロボットの存在によって減少したところを研究者らは観察している。

ロボットはアプリやタブレットよりも良い結果を生む、という点も興味深い。ロボットが具現的であることから、子供の注意を引き、iPadとアプリの組み合わせと比べて学習効果が高いと研究者らは考えている。言い換えると、子供達はタブレットで遊び、ロボットとは勉強する。

ロボットは完全自立で容易にプログラムが可能。一回の充電で数時間動作可能で3DカメラとCPUを内蔵している。

ロボットはセラピーの中心になるのではなく、セラピストと患者の接触を補助する役割を担う。これは優れた(かつ気の利いた)小さなテクノロジーが生んだ優れた研究成果であることは間違いない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Nvidiaの新しいハイエンド、TuringアーキテクチャはリアルタイムのレイトレーシングとAIを合体

このところ、Nvidiaの新しいアーキテクチャTuringに関するリークは、サンタクララにある同社の本社が震源だったようだ。それを当然と思わせるかのように同社は、今日のSiggraphのキーノートで、この新しいアーキテクチャと、Quadro系列の一員となる、プロ用ワークステーションのグラフィクスカード3種のローンチを発表した。

NvidiaによるとTuringアーキテクチャは、“2006年のCUDA GPU以来のもっとも偉大な飛躍”だ。相当な大言壮語だが、意外と真実をついているのかもしれない。これらの新しいQuadro RTxチップは、同社の新製品RT Coresをフィーチャーする最初のチップであり、ここで“RT”はレイトレーシングを意味する。それは、光がシーン中のオブジェクトと対話/干渉するときの径路を追跡するレンダリング方法だ。この技術の歴史は、とても長い(AmigaのPOV-Rayをおぼえておられるだろうか)。従来からこの技術はきわめて計算集約的だったが、物をリアルに見せる点では優れていた。最近では高速GPUが並列処理で一度にたくさんの計算をできるようになったため、Microsoftが最近、DirectXにレイトレーシングのサポートを加えるなど、新たな脚光を浴びている。

NvidiaのCEO Jensen Huangはこう語る: “ハイブリッドレンダリングがわれわれの業界を変え、そのすばらしい技術の可能性が、美しいデザインとリッチなエンターテインメントと、充実した対話性で、私たちの生活を豊かにするだろう。リアルタイムのレイトレーシング*の到来は長年、われわれの業界の見果てぬ夢だったのだ”。〔*: レイトレーシングのリアルタイム化。〕

この新しいRTコアはレイトレーシングをNvidiaの従来のPascalアーキテクチャに比べて最大25倍高速化し、Nvidiaが主張する最大描画速度は毎秒10 GigaRaysだ(下表)。

Turingアーキテクチャによる三つの新しいQuadro GPUは、当然ながら同社のAI専用ユニットTensor Coresと4608基のCUDAコアを搭載し、最大毎秒16兆の浮動小数点数演算と、それと並列に毎秒16兆の整数演算を行なう。そのチップは作業用メモリとしてGDDR6メモリを搭載し、NvidiaのNVLink技術によりメモリ容量を96GB 100GB/sまで増強している。

AIの部分は、いまどき当然であるだけでなく、重要な意味もある。Nvidiaが今日ローンチしたNGXは、AIをグラフィクスのパイプラインに持ち込むための新しいプラットホームだ。同社はこう説明する: “NGXの技術は、たとえば、標準的なカメラフィードから超スローなスローモーションの動画を作りだすなど、これまでは10万ドル以上もする専用カメラにしかできなかったことをする”。また映画の制作現場は、この技術を使って容易にワイヤを消したり、正しいバックグラウンドで欠けているピクセルを補ったりできるそうだ。

ソフトウェアに関しては、Nvidiaは今日、同社のMaterial Definition Language(MDL)をオープンソースにする、と発表した。

今すでにTuringアーキテクチャのサポートを表明している企業は、Adobe(Dimension CC), Pixar, Siemens, Black Magic, Weta Digital, Epic Games, Autodeskなどだ。

もちろんこれだけのパワーには、お金もかかる。新しいQuadro RTX系列は16GBの2300ドルが最低価格で、24GBでは6300ドルになる。倍の48GBなら、約1万ドルだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

台湾のFunNowはローカル向けクイック予約サービス――シリーズAで500万ドルを調達、アジアと日本の都市に展開中

最近の旅行ビジネスでは、AribnbやTripAdvisorなどの有力サービスが直前でも簡単にさまざまな予約を可能にするインスタント・ブッキングに参入しつつある。これは特にアジアで、香港のKlookなどのスタートアップが大成功を収めていることに刺激された面が大きいだろう。しかしインスタント・ブッキング・アプリがこう増えてはもうニッチは残っていないのではないか? 

実はFunNowはそう考えて方向を転換した。旅行者をターゲットにするのではなく、このサービスはローカルを対象とする。つまり都市の居住者に新しいアクティビティを楽しんでもらうのが目的だ。今日(米国時間8/13)、台北を本拠とするFunNowはシリーズAのラウンドで500万ドルの資金調達を行ったことを発表した。ラウンドのリーダーはAlibaba Entrepreneur Fundで、CDIB、 Darwin Venture、Accuvestが加わっている。資金は東南アジアと日本に事業を拡大するために用いられる。

FunNowは2015年に創立された後、昨年6月のエンジェル・ラウンドを含めてこれまでに650万ドルを調達したことになる。登録メンバーは50万人、3000社のベンダーが毎日2万種類以上のアクティビティーを提供しているという。共同ファウンダー、CEOのT.K. Chenは海外展開について「現在、香港、東京、大阪、沖縄、クアラルンプール、バンコクに注力している」と述べた。

今回のシリーズAで注目すべき点はAlibabaの存在だ。 Tencentが支援するライバル、Meituan-Dianpingが香港で株式上場を準備している中で、Alibabaの参加はFunNowのO2O能力(オンラインでオフラインサービスの予約、支払いを行う)を大きく強化したといえる。

Alibaba Entrepreneurs Fundは非営利法人で、将来Alibabaのエコシステムに貢献する可能性のあるスタートアップの育成を目的としている。Alibabaの各種O2Oアプリは中国でMeituan-Dianpingからできるかぎりシェアを奪うことを狙っている。ChenはFunNowとの協力はこの面でもシナジーを生むとしている。【略】

いかにAlibabaの参加があるにせよ、 FunNowが多数のインスタント予約アプリとどのように競争していく戦略なのかは誰もが興味を持つところだろう。この市場ではKlook、KKdayなどが有力だが、他にもVoyagin、GetYourGuide、Culture Trip、Peek、それにAirbnb自身のExperiences機能などが存在する。

Chenによれば、FunNowが現在もっとも力を入れているカテゴリーは直近のホテル等の予約だという。台北では一夜ないし数時間のホテル、温泉への滞在を提供している。マッサージその他の温泉における伝統的サービスやレストラン、バー、さらには音楽フェスティバルなどの予約もカバーするという。

Chenによれば、ツーリストというよりむしろローカル住民に楽しい時間を提供するという戦略はFunNowのユーザー・エンゲージメントを大きく高めており、毎月の粗収入の70%はリピート・ユーザーからのものだという。30%は最初に利用したユーザーだが、その60%は30日以内に戻ってきてさらに利用している。FunNowでは2018年の売上を1600万ドルに届くと予測しているが、これは2017年の3倍に上る。

FunNowのユーザーの平均年齢は若く、25歳から35歳が多い。「われわれはUberに似ている。ターゲットはレストラン、温泉、マッサージ、ホテル、イベントなど身近で楽しい活動を予約したいと考えている人々だ。われわれは消費者のその場の思いつきを重視している。われわれが仲介する予約の大部分が15分から」1時間後のものだ。データでいえば、FunNowの予約の80%は1時間以内のものだ」とChenは述べた。

FunNowではプラットフォームをローカル・ユーザー向けに最適化している。特許を取得したアルゴリズムによって予約をマーチャント・データベースのエントリーとリアルタイムで同期させ、オーバーブッキング、ダブルブッキングを防いでいるという。Chenによれば、ユーザーは自身の地理的所在地によって現在利用できるエントリーを閲覧できる。情報は0.1秒以内にリアルタイムでアップデートされるので、ユーザーはエントリーをクリックした後ですでにすでに誰かが予約していたという事態を防げるという。FunNowではサービスを提供するベンダーを事前に審査し、プラットフォームに加えた後も星印が3.5以下になるとリストから削除する。

将来KlookやKKdayといったインスタント予約アプリがターゲットをツーリストから地元居住者に拡大してくればライバルとなり得る。しかしChenは「こうしたスタートアップは拡大しつつあるツーリスト市場における半日から1日以上のツアーをターゲットにするはずだ」と考えている。

Chenは「こうしたスタートアップがローカル住民をターゲットすることになれば、マーチャントとなるホテルやレストランをひとつずつシステムに加えていかねばならないだろう。またそのシステムもマーチャントにとって使いやすくエラーの起きにくいものである必要がある。しかしマーチャントがひとたびわれわれのシステムを利用すれば、別のシステムを導入することは考えにくい。オーバーブッキングを避けるためには相互の調整を図る必要があるからだ」という。

「こうした点は先に動いたFunNowに大きな優位性があるが、われわれはテクノロジーをさらに改良していく。レストランなどはたとえ1分差であっても先着の客に席を提供してしまい、オーバーブッキングという結果をもたらす可能性がある。これは何として避けねばならない」とChenは語った。

〔日本版〕FunNowのサイトは日本語ページも用意している。日本でのサービスは今のところホテル予約がメインのようだが、台北のページでは食事、温泉、マッサージなどジャンルが多い。

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滑川海彦@Facebook Google+

農産物を長持ちさせるApeel Sciencesはフードロス問題に一役買う

自動運転車ロボティックパーソナルアシスタントがありふれたものになりつつある時代にあって、持続可能な食物供給や流通といった基本的需要を満たす必然性は過去のものと考えているかもしれない。しかし実際はそうではない。

国連食糧農業機関(FAO)によると、毎年、食糧用に栽培された食物の3分の1にあたる13億トンが失われたり廃棄されたりしている。米国のような工業化された国々では、結果として毎年6800億ドルの経済損失となっている。冷却システムのような標準インフラが整っていない国々でも同様に3100億ドルの損失となっている。

毎年何十億トンもの食糧が廃棄されているが、その大多数を占めるのが必須かつ栄養も豊富な果物や野菜、根菜類(ジャガイモやニンジンなど)で、毎年45%が廃棄されている。

フードロスの要因はいくつかあるが、米国においては“賞味期限”や“販売期限”がしっかり規則化されず、結果として気まぐれな消費者がまだ食べらるものを廃棄するようなことになっている。また、十分に工業化されていないような国々では冷蔵・冷凍の物流が十分でなかったり、あるいはそもそも存在していなかったりする。

こうした問題の要因は食品が簡単に腐ってしまうということにあり、これは陳列棚に置く期間と直に関わってくる。だからこそ、Apeel Sciences はこの分野に参入した。

カリフォルニア拠点のこのスタートアップは、農産物の鮮度を保ち、腐敗を遅らせる植物由来の物質を使って食品ロス問題に取り組んでいる。この物質では農産物に第二の皮をつくることになるのだが、使うにはApeelの保存パウダーを水で溶いて、それを生産物にスプレーするだけだ。

創立者でCEOのJames RogersがApeel Sciencesの設立をひらめいたとき、彼はカリフォルニア大学サンタバーバラ校で材料工学での博士号を取得しようとしていた。錆という、すでに科学の力で解決された問題を分析することで食品腐敗の解決策を見いだすことができると確信した。

「食品をダメにする要因は水分の減少と酸化だ」。RogersはTechCrunchに対しこう説明した。「この事実は、カーネギーメロン大学で冶金研究者として鉄について研究していたころのことを思い出させる」。鉄もまた腐敗しやすい。というのも、鉄は錆びるからだ。大気中の酸素に反応しやすく、それゆえに用途に制限がある。しかし冶金学者が鉄の表面を物理的に守るためにほんの少しの酸化バリアを施した。それがステンレススチールだ。

Rogersは、同様の手法で農産物の腐敗を遅らせることができないだろうか考えるようになった、と話す。

「新鮮な農産品の表面に薄いバリアをつくることで腐敗を遅らせ、これにより食糧飢饉に対応できないだろうか」。

Apeelは、ビル・ゲイツ、メリンダ・ゲイツ夫妻の基金から10万ドルの支援を得て2012年に正式に設立された。保冷インフラが整っていない発展途上国での収穫後の農産物のフードロスを削減するのが目的だった。この問題に取り組むために、Apeelはケニアやウガンダといった国の農家が、保冷することなしに鮮度を維持したまま農産物を消費者に届けられるよう、セルフまたはハイブリッドの物流システムを構築した。

Apeelにとってはアフリカや南アジアが基盤だが、その一方で米国の農家ともパートナーシップを結び始めた。今年の5月と6月には、初めてApeelを活用した農産物のアボカドが米国小売のCostcoとHarps Food Storeの店頭に並んだ。

Apeelの農産物は遺伝子組み換えではないため(その代わり植物由来)、店頭で商品に特別な表示をする必要はなが、Rogersによると、Apeel農産物の入れ物にはそうしたことを表示しているという。

「我々はDNAレベルで操作をしているわけでもなく、遺伝子組み換えを行なっているわけでもない。しかし、消費者に対して真摯でありたいし、消費者にそのラベルに気づいてほしい。というのも、消費者がそのラベルに気づくことで、購入する農産物が高品質で長持ちし、廃棄することが少なくなるものであることを認識してもらえるからだ」。

Apeelによると、Harps Food StoreにApeelのアボカドが並ぶようになってから、Harps Food Storeのアボカド分野の利ざやは65%増加し、売上も10%アップした。

こうした成功例を経て、ApeelはViking Global Investorsが主導し、Andreessen HorowitzやUpfront Ventures、S2G Venturesが参加したラウンドで7000万ドルを調達した、と7月に発表した。

RogersはTechCrunchに対し、調達したこの資金をフードロス撲滅のための新たな手法の開発や研究に使う、と明らかにしている。モモやウメ、アンズといった核果類やアスパラガスに使用するスプレイもその中に入っていて、これまで同様に自然由来のものを模索する。「フードロスを解決するためにどんな物質を使えばいいのか特定し、そうした物質をどう抽出して人の役に立つようなものにするのかということを、自然のエコシステムから学ぶというのが我々の使命だ」と語っている。

イメージクレジット: Apeel Sciences

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(翻訳:Mizoguchi)

イーロン・マスク、Tesla非公開化の資金はサウジの政府系ファンドと発表

昨日の記事で、Teslaの非公開化にあたってイーロン・マスクがサウジの政府系ファンドの資金を使える可能性は十分あると私は推測した。今日(米国時間8/13)、マスクは声明を発表し、Teslaの非公開化に関してサウジアラビアの政府系ファンド、PIF(Public Investment Fund)と2年近く前から話し合いを続けてきたと明らかにした。

実際、提案してきたのはサウジ側だったようだ。マスクは「Teslaの非公開化に関して(PIFから)複数回の接触があった」と述べている。

マスクによれば、Teslaに関してサウジのPIFと最初に会談したのは2017年初頭で、PIFが「脱石油を図る必要を感じた」ことがその原因だったという。その後1年でさらに数回の会談を重ねた。「サウジの政府系ファンドは(Teslaの非公開化に必要な)資金を十分持っている」とマスクは述べている。前回の記事で指摘したとおり、PIFの資金は2兆ドルに近づいている。

PIFが株式市場でTesla株の5%を買ったとき、PIFはマスクとさらに話し合いを求めてきた。マスクによれば、この会談は今年の7月31日に行われ、マスクは「もっと早くPIFと協力して非公開化に取り組むべきだった」と述べたという。このときPIFの責任者はTeslaの非公開化にあたって「資金協力の意思を強く表明した」ということだ。

マスクは「サウジ政府系ファンドの協力が疑いなく得られることとなり、あとは実行あるのみとなった」と述べた。マスクが8月7日のツイートで「資金は確保してある」と書いたのはこれを指していたという。

マスクによれば「(PIFとの)契約はほぼ完了しており、ロジスティクスを含めた若干の詳細を詰めるだけだ」という。

もちろんこの声明は多少割引して聞く必要がある。 SEC(証券取引委員会)はTeslaの非公開化に関するツイートについてマスクに質問をしたみられている。質問は必ずしも正式な調査の開始を意味しないが、万一、非公開化の意図をツイートで公開したことがなんらかの違反に問われることになれば、数億ドルの罰金から刑事訴追までの可能性が考えらえる。

この声明を「面子を保つための虚勢だ」とする声も一部にありそうだが、そうではないだろうと思っている。私自身、この地域のビジネス文化には直接の経験があるが、それからしてもPIFがTeslaの非公開化にあたってマスクと協力していくことは間違いはずだ。【マスクの声明は原文参照】

画像:Chris Saucedo/Getty Images for SXSW / Getty Images

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滑川海彦@Facebook Google+

サウジアラビア支援によるTeslaの非公開化は、それほど現実離れしたアイデアではない

8月7日にElon Musk がTeslaの非公開化を示唆する 発言を(もちろんTwitterで)したことで、ビジネス・IT界は騒然となった。そのために必要な資金は通常720億ドルにのぼる。その後も「ホワイトナイトは現れず、Teslaの株価は急落した。

しかし今日(米国時間8/12)、Bloombergが報じた新たなニュースが憶測を煽り立てた。

記事の情報筋によるとサウジアラビアの政府系投資ファンド(Public Investment Fund/PIF)はすでにTeslaの主要出資者になるべく交渉を行なっており、それはMuskのツイートより前に始まっていたという。

発覚のタイミングは重要だ。なぜならPIFはすでに資金を積み重ねており(時価20億ドル)これはTeslaの最近の最近の時価総額の5%にわずかに足りない金額だ。

世界最大の原油生産者が世界で最も象徴的な電気自動車会社の一部を所有することで石油のリスクを分散することは容易に想像できる。Bloombergの情報筋が言っているのもまさにそこだ。

TeslaはSoftBankとも交渉していると言われているが、PIFはSoftBankの主要投資家であり、PIFがTeslaと接触していると推測される理由でもある。

こうした噂を一層興味深くくしているのは、サウジアラビア政府がPIFを大々的に強化して2兆ドルにする計画があることだ。

そしてPIFの主たる目的はテクノロジーにある。なぜか?サウジアラビアは国家の石油依存の経済の多様化に力を入れており、そのための資金とテクノロジー資産を必要としている。

政策の担い手は ムハンマド・ビン・サルマン皇太子で、国王継承者として国民からMBSと呼ばれている。

昨年継承者に指名されて以来、皇太子は極めて行動的で、宗教警察の力を制限し、女性ドライバーの禁止撤廃を始め数々の文化的改革を実施してきた。彼は同国のテクノロジー政策も推進しており、先週にはスティーブ・ウォズニアックを「テック・アンバサダー」に指名した

彼は、経済多様化のための壮大な国家計画で医療、教育、インフラストラクチャ〜などのサービス機関を開発するSaudi Vision 2030の責任者でもある。

そして、サウジアラビアとエジプトの国境近くに計画されているメガシティー、Neomはニューヨークの33倍の規模となり、ドバイが小村のように見える。これを支えるのはサウジアラビアのPIF及び国際投資家による5000億ドルの資金だ。

業界の象徴である「わずか」720億ドルのTesla、テクノロジーに熱心な皇太子、2兆ドル目標の政府系ファンドという一連の状況を考え合わせれば、Teslaを非公開にする資金の存在を示唆するMuskの発言も、必ずしも夢物語ではなくなる。

画像クレジット:Ahmed Kutty/Gulf News

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SIMハイジャック犯、仮想通貨アカウントから数十万ドルを強奪。2要素認証を悪用?

eng-logo-2015米フロリダ州の警察当局が、SIMハイジャックにより複数の州での犯行に関与した人物を逮捕したことが報じられています。

被疑者の部屋からは、7つの州で7人の被害者を出したSIMカードが発見されたとのこと。身元の偽装や、仮想通貨アカウントから数十万ドルが盗まれるなど、被害額の大きさや犯行の手口が伝えられました。

SIMハイジャックとはSIMカードの乗っ取りのこと。まず犯罪者はSIMカードを紛失したと通信キャリアに届け出て、自分のSIMカードに電話番号を転送してもらうか、新たなSIMカードを発行してもらうよう手続きします。

これが成功すると、新たなSIMカードのみが有効となり、被害者は事実上SIMを失うという仕組みです。特に高度なツールを使うわけではなく、「被害者のフリをして騙す」詐欺の手口と変りません。そうした手軽さのためか、アメリカでは被害者の増加が報じられていました。

裁判所の記録によると、ミシガン州在住の被疑者の母親が、息子がAT&Tの従業員になりすましていると知って警察に通報したとのこと。捜査当局は被疑者の部屋とPCを捜索し、複数のSIMカードや携帯電話とともに名前や電話番号のリストを見つけたと述べられています。

被疑者および少なくとも8人もの犯行グループは、時には通信キャリア会社の従業員と共謀して、偽のSIM交換請求を成功させ、犯行に使う携帯電話に番号を移し替えたとか。つまり、SIMハイジャックで最もハードルが高い「被害者の身元を偽る」を、キャリア側の人間を巻き込むことでクリアしたようです。

これにより、電話番号と紐付けられた仮想通貨アカウントから数十万ドルを盗み出したとのこと。警察は盗んだ仮想通貨のうち10万ドル以上が資金洗浄されたと発表していますが、被疑者はその件については無罪を主張しています。

仮想通貨やSNSなど、セキュリティ確保のために携帯電話による2要素認証を利用するサービスは増えていますが、それが逆用されてパスワードが盗まれたり、アカウントが乗っ取られる可能性が高くなっています。

SIMハイジャックによりInstagramやAmazon、Netflixなどのアカウントが奪われたという事件も、すでに珍しくなくなっています。本格的な対策が取られるまでは、手元の携帯に不審なメッセージがないか注意し、あった場合は迅速に対応するしかなさそうです。

Engadget 日本版からの転載。

Facebook、米国フォロワーの多いページのセキュリティーを強化

本日(米国時間8/12)Facebookは、多数の米国人フォロワーをもつFacebookページの安全を強化し,偽アカウントや乗っ取ったアカウントを使ってページを運営することを困難にする新しい規制を実施する。米国に多くのフォロワーをもつ人々を皮切りに、一部のFacebookページではPage Publising Authorization(ページ発行承認)プロセスの通過が必要になっている。Page管理者は自分のアカウントのセキュリティーを確保し、位置情報の検証も行わなければならない。

手続きは数分で終わるとFacebookは言っている。この承認が必要なページの管理者は、ニュースフィードのトップに通知が表示されプロセスを開始するよう誘導される。

承認プロセスを拒否すると、ページに投稿できなくなるとFacebookは言っている。規制は今月から適用が開始される。

ページ管理者がクリックしていくと、なぜこれか行なわれていて、どんなステップがあるのかを説明するメッセージが表示される。アカウントの安全を確立するために、Facebookはページ管理者に二要素認証の利用を要求する。こうすることで第三者に乗っ取られる可能性が小さくなり、これはページ管理者に限らず全Facebookユーザーがとるべき最善の行動でもある。

さらにページ管理者は自分の位置情報も検証する必要がある。これに基づいてページの主要所属国が設定され、6月に導入された新しいページ情報タブに表示される

Facebookは、そのページを管理している人たちの属する国を一覧表示し、それぞれの国から管理者が何人参加しているかも表示する。

また、ページ履歴にはそのページが他のページと統合された時期も表示される。

同社によると、新しいポリシーはまず米国内ユーザーの多いページに適用され、Instagramでも近く同様の規定が実施される。Instagramでは、フォロワー数の多いアカウントに関して、より詳細な情報を見られるようにする。

「目的は、組織や個人が自らの素性や行動内容を偽ってアカウントを作るのを防ぐこと」とFacebookの発表リリースに書かれている。「今回の変更は、Facebookページの信憑性と透明性を高めるための継続的取り組みの一環である」。

今回の変更は、中間選挙に向けてロシアが選挙妨害に関与している可能性をFacebookが発見したことを受けたものだ。同社はこの発見に基づき、Facebookページ8件、Facebookアカウント17件、およびInstagram アカウント7件を削除した。

多数の米国人ユーザーと繋がっているFacebookページの安全性と管理状態の透明性を高める今回のポリシー変更は、Facebookにできる行動として良い第一歩と言える。それでも、民主主義を破壊し、分裂をうながそうと企む連中は、いずれこうした規制の抜け穴を見つけるのだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook