Alexaのスキルにスキル内購入を書ける、デベロッパーに収入の道ひらける

【抄訳】
Amazonが今日(米国時間5/3)、Alexaのスキルを作っているデベロッパーが、そのスキルの中にスキル内購入を実装できるようにした。またそのために、スキルのためのAmazon Pay、Amazon Pay for Skillsを立ち上げた。これからはデベロッパーが、AmazonのEchoスピーカーのようなAlexa対応デバイスの音声アプリケーションから、収入を得ることができる。たとえばそれがゲームなら新しい武器を売ることができるし、無料の音声アプリの中に有料コンテンツのお買い上げお誘いを置くことができる。

この機能は2017年11月に発表されたが、これまではJeopardy!など、一部のアプリやゲームのデベロッパーだけが利用できていた。

音声アプリケーション(Amazon語で“スキル”)にスキル内購入が加わったら、お客はそこで売られているものを購入し、音声で支払うことができる。金額などの決済情報は、すでにそのユーザーのAmazonアカウントに結びついている。

有料にするコンテンツやその価格はデベロッパーが決められるが、購入の実際の処理はAmazonが扱う。またセルフサービスツールを使ってデベロッパーはスキル内購入を管理し、その売り方を最適化できる。ただしAmazonは、Prime会員向けには何らかの特典(値引き、特別コンテンツなど)を提供するよう、デベロッパーに要請している。なお売上に対するAmazonとデベロッパーの取り分は、30:70である。

【中略】

デベロッパーが売上を得る方法は、スキル内購入だけではない。

たとえばブランドやお店などは、イベントのチケットや花の配達など、さまざまな商品やサービスを、Amazon Pay for Alexa Skillsを利用して売ることができる。Amazon Payは既存のCRMと注文管理機能を統合しているので、お店は物やサービスを売るプロセスの中で販売管理ができる。その機能も、今日から一般公開される。

また、スキル内で何かを売るのではなく、人気の高いデベロッパーへの直接の報酬提供方式としてDeveloper Rewards(デベロッパー報酬)というプログラムもある。これは、スキルのデベロッパーのエコシステムを育てることが目的だ。

スキルのエコシステムと言えば、今日の発表ではAlexaのスキルの総数は40000、12月の25000から大きく増えている。

しかしこのエコシステムはロングテールがとても長くて、ユーザーのいない、またはほとんどいないスキルも多い。音声アプリの開発を体験してみるためにだけ作った、というものもある。音声デバイスの使われ方に関する調査によると、音声アシスタントでいちばん多く使われているのは、ニュースと情報、スマートホームのコントロール、タイマーのセット、リマインダーなどだ。多くは、音声アプリでなくてもよいものだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

DatadogのコンテナマップはKubernetesアプリケーションの内部〜各コンテナの可視性を提供

コンテナへ移行する企業が増えている中で、個々のコンテナと、それがアプリケーションに与えているインパクトをモニタすることが、課題になっている。それがとくに難しいのは、コンテナがきわめて短時間だけ存在する短命な実体だからだ。モニタリングとアナリティクスの専門企業Datadogは今日(米国時間5/3)、この問題を解決するための視覚化ツール、コンテナマップを発表した。

Datadogのプロマネ担当VP Ilan Rabinovitchはこう語る: “コンテナマップはユーザーのシステムにあるすべてのコンテナを見せる。顧客はすべてのコンテナを、どんなときでも見られて、それらをタグに基づいてグループ化し、その中で起きていることを詳しく知ることができる”。

同社はタグとメタデータを利用してコンテナの各部とそれらのお互いの関係、そしてそれらを支えるインフラストラクチャを識別する。そのツールはコンテナを、Datadogのそのほかのエンティティとまったく同じようにモニタする。

同社のブログ記事は、こう書いている:

“ホストマップが個々のインスタンスに対してするように、コンテナマップはメタデータを使ってコンテナを容易にグループ化し、フィルタし、点検できる。メタデータは、サービス、可利用性ゾーン、ロール、パーティション、そのほかのユーザーが望む特質など、何でもよい”。

問題が見つかったとき、Datadog自身が顧客企業のシステムにライト(write)アクセスして問題を修復することはしないが、その企業はWebhookや、あるいはAmazon Lambdaのファンクションのようなサーバーレスのトリガを使って、何らかのアクションを呼び出すことができる。

  1. container-inspect

  2. container-list

  3. dashboard

同社は、すべてのコンテナが正常に動作していることを監視するサードパーティにすぎない。“コンテナに対してやるべきことは、もっぱらKubernetesを信用している。でも異状が起きたら、何が起きたのかを知らなければならないが、それはKubernetesにできることではない”、とRabinovitchは語る。この新しいマップの機能は、コンテナシステムの内部に対する、その欠けていた可視性を提供し、ユーザーは個々のコンテナの内部を詳細に調べて、問題の原因を特定できる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Xiaomiが正式に香港市場にIPO申請、公開価格は推定100億ドルか

かねてより噂のあったXiaomiのIPO(株式公開)だが、この中国の巨大スマホメーカーはようやく正式に香港証券取引所にIPOを申請した

申請書類のドラフト初版には上場に伴う財務諸表といった詳細は記載していないものの、地元メディアSouth China Morning Postは「設立8年のこの会社は公開価格100億ドル、時価総額にして1000億ドルを狙っている」と報じている。これは、今年最大のIPOとなるばかりでなく、アリババが2014年にニューヨーク証券取引所に上場した時以来の規模となる。時価総額に基づくと、Xiaomiは上場により中国で3番目に大きなテック企業となる。

Xiaomiは同業他社と異なり、少ない利ざやでスマートフォンやスマートデバイスを販売し、その代わりサービスや利用料などで利益を出している。スマホ販売にとどまらず、自ら小売やオンライン支払い、ストリーミングなどの事業を展開している。CEOのLei Jun氏が言うところの「トライアスロン」戦略では、ハードウェア部門で5%という最大の純利益を達成して以来、さらに成長するためにサービス部門に最も注力している。

Xiaomiは上場申請書類に、中国では1億9000万人超がXiaomi独自開発のMIUIバージョンAndroid携帯を使用している、としたためている。これは、MIUIデバイスが何台出回ってしるのかを知る良い洞察だ。一方で、Xiaomiはこれまでスマートウォッチやフィットネス用バンド、スマート体重計など接続デバイスを1億台以上販売している。Xiaomiは、同社のユーザーが1日に4.5時間スマホを利用し、顧客140万人が5台以上の接続デバイスを使用している、と述べている。

分析会社IDCによると、Xiaomiはスマホ出荷台数で見ると世界第4位で、販売台数がこのところ低迷している中国マーケットで健闘している数少ない企業の一つだ。

Xiaomiの財政状況はまったく驚くべきものだ。

2017年には1146億人民元(約180億ドル)の売上を記録した。2016年の684億人民元、2015年の668億人民元から大幅なアップだ。

一方でXiaomiは2017年に投資家への優先株式発行(540億人民元)で439億人民元(約69億ドル)の損失を計上したが、成長路線はゆるぎない。営業利益は122億人民元(19億2000万ドル)と、前年の3倍超となっている。

売り上げの70%がスマホで、20%超がスマートデバイス、残りがサービス関連となっている。

中国というと、多くの人が収入を上げるマーケットととらえている向きがあるが、Xiaomiは中国マーケット頼りではなくなってきつつある。2017年の売上では中国マーケットが72%を占めたが、2015年は94%、2016年は87%だった。Xiaomiにとって、いま中国以外で最も成功しているマーケットはなんといってもインドだ。シェアでいえば、Xiaomiはインドでナンバーワン、他のエリアではまだ不安定な状況だ。

興味深いことに、Xiaomiはこれまで米国スマホ市場への進出について言及したことがない。しかしながら、IPOで得る資金の30%は東南アジや欧州、ロシア、そして“その他地域”での市場開拓にあてるとしている。近年、Xiaomiは世界74カ国で販売していて、そこにはアクセサリーなどスマホ関連商品を販売している米国も含まれている。

IPOで調達する資金の別の30%は研究開発や製品開発にあて、またさらに別の30%はモノのインターネットやスマート製品エコシステムに、そして残り10%は運転資金にあてる。

Xiaomiは、同社の主要投資家がどれくらいの割合で株式を保有しているのか正確な数字は明らかにしていないが、CEOのLei Jun氏が最大の株式保有者の一人だとされている。Jun氏が同社株式の75%超を保有しているとのレポートもあり、今回のIPOによりJun氏は中国で最も裕福な中国人の一人となりそうだ。

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(翻訳:Mizoguchi)

GoogleのAdvanced Protection ProgramでAppleのiOSアプリが利用可能に

昨年10月、Googleは高度なセキュリティー保護サービス、Advanced Protection Programを提供開始した。Gmail、Google Calendar、Google Drive等のサービスに保存したデータを最高水準で保護することを保証するしくみだ。このプログラムを利用するユーザーは、2段階認証のためにセキュリティーキーを利用しなければならないことに加え、Googleデータをアクセスするためには、Google自身のウェブまたはモバイルアプリを使う必要があった。


このたびGoogleはこの最後の制約を少々緩和して、Appleのメール、カレンダー、及び連絡先のiOSネイティブアプリからも利用できるようにした。Advanced Protection Programを利用しているユーザーは、これらのアプリにもアクセスを許可できるようになった。

「われわれのゴールは、オンライン攻撃を受けるリスクのあるユーザーが誰でもAdvanced Protection Programに参加できるようにすること」とGoogleでこのサービスのプロダクトマネージャーを務めるDario Saliceが言う。「本日われわれは、iOSユーザーのプログラム参加を容易にした。今後も世界中のユーザーにとって使いやすいプログラムになるよう努力を続ける」

プログラムの目的は従来通り、高度な攻撃の被害者になりやすいジャーナリスト、活動家、政治家、ビジネスリーダー等の人々を守ることにある。Appleの純正アプリに対応することで、同サービスがいっそう多くの人たちにとって魅力的になるだろう。要するに、なぜか誰もがGoogle製モバイルアプリを気に入っているわけではない、ということだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

デスクトップのChromeはユーザーの閲覧行動から学んで自動再生ビデオを無音にする

Webで最大に疎(うと)ましいものといえば、大音量の自動再生ビデオだ。Chromeやそのほかのブラウザーはここ数年、こいつと戦ってきたが、対策の多くはユーザーのアクションを必要とした。そこでChromeは、モバイルへの導入に続いてデスクトップでも、自動再生をブロックするサイトをブラウザー自身が判断できる機能を実装した。それは、ユーザーのそれまでの行動〔や設定〕から、嫌われてるサイトを見抜くのだ。

Googleによると、自動再生のほとんどが6秒以内に、停止されたり、無音にされたり、あるいはタブを閉じられたりしている。タブを閉じるのは6秒よりもっと早いと思うが、Googleとしては、“聴きたい/視たい意思”を確認するために6秒待った、ということだろう。

今後Googleは、ユーザーの閲覧行動から学習して、無音にしたいサイトを知る。GoogleにログインしていないユーザーやChromeを使い始めたばかりのユーザーの場合は、上述の6秒テストで判明した迷惑サイト上位1000を、自動的に無音にする。

Googleによると、このシステムはユーザーによって訓練されると、迷惑な自動再生サイトの約半数をブロックする。でも、完全なシステムは存在しないから、判定を間違えることもある。そんなときは手作業で無音を解消しなければならない。

モバイルでは、やり方がやや違う。ユーザーがホーム画面に載せていたサイトは、そのまま受け入れる。お気に入りのサイトをホーム画面に登録している人は、そんなに多くないと思うけど、だとするとモバイル上では自動再生の完全禁止になってしまう〔閲覧履歴によるパーソナルな判定をしないから〕。

なお、この機能はオーディオに対してのみである。Chromeによって無音化された自動再生ビデオは、ユーザーがそのページや動画を消さないかぎり、再生を続ける。それに、ユーザーがそのサイトのどこかをタップしたりクリックしたりすると自動再生がまた動き出す。この水漏れ穴は、ぜひふさいでほしいね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

今すぐTwitterのパスワードを変えよう

またその時がやってきたーーパスワード変更の時だ。木曜日(米国時間5/3)Twitterは、バグのためにユーザーパスワードが隠蔽されていない形式で保存されていたことを公表した。通常、パスワードのような機密データは様々な文字と数字を使ったハッシュ形式で保存され、パスワード文字列そのものは保護されている。今回Twitterは、内部ログにパスワードをハッシュなしの平文形式で保存していたものと思われる。

Twitterは、これまでのところシステム内のパスワード情報が漏洩したり、ハッカーによってアクセスされた形跡はないとしているが、未知のリスクはあり得る。同社はユーザーに対して予防措置としてパスワードの変更を推奨している。

Twitterの説明は以下の通り

われわれは、bcryptという関数を使ったハッシングと呼ばれる処理によってパスワードを隠蔽している。実際のパスワードは無意味な数字と文字の列に変換されてTwitterシステムに保存されている。この方法によって、システムはパスワードを表に出すことなく個人認証を行うことができる。これは業界標準のやり方である。

このほどバグのためにハッシング処理の完了前にパスワードが内部ログに書き込まれた。われわれはこのエラーを自ら発見し、パスワードを削除するとともに、このようなバグが再発しないよう対策を検討している。

本誌はTwitterに連絡をとり、バグの詳しい情報および、発生理由の詳細を求めている。

アップデート:Twitterは本事象の技術的詳細の提供を拒んだが、パスワードが発見される可能性は極めて低く、内部調査の結果侵入あるいは不正利用を示す兆候がないことを強調した。

これだけの規模の企業が、このように基本的なセキュリティーの失敗を犯すことは珍しいが、これはユーザーがパスワード管理を見直す新たな理由でもある。たとえ使用しているプラットフォームに間違いがあったときでも、自分のアカウントを安全に保つために、今こそ二要素認証LastPass1Password などのパスワード・マネージャーを導入するときだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Wear OS(元Android Wear)のGoogle Assistant機能がI/Oを前にして充実

今年のI/O(Googleの開発者大会)はまだ一週間先だが、すでにGoogleは、ちょろちょろとニュースを小出しにしている。それは来週のビッグイベントへの呼び水か、それとも、当日のわずか二つのキーノートには盛りきれないものが多いからか。いずれにしても今日(米国時間5/3)は、Android OSのウェアラブル用バージョンWear OS(旧名Android Wear)のアップデートが発表された。

来週Wear OSがどんな扱いをされるのか、それまはだ未知数だが、今回はそのAssistantアプリが本格的に更新された。スマートウォッチとアシスタントアプリは、まるで当然のような組み合わせだ。SiriはApple Watchの人気を押し上げたし、それに音声アシスタントならウェアラブルの小さな画面が気にならない。

Googleは昨年、独自のAssistantをAndroid Wearに導入し、その後何度も重要なアップデートをしている。中でもとくに良いのは、状況に応じて追加質問をしてくれるスマートサジェッションだ。たとえば天気予報を尋ねると、そのほかの日も知りたいか、と言ってくる。

Assistantの手首用バージョンでは、音声による答をインターネットに接続されたヘッドフォンでも聞ける。来週展開されるこのアップデートでは、ウェアラブル上でActions*が使えるようになり、サードパーティ製の機能を楽しめる。たとえば自分の手首から、LGのスマートオーブンを余熱できたりするだろう。〔*: Actions, Amazon AlexaのスキルやApple Siriのコマンドに相当。〕

ささやかなアップデートだが、GoogleがI/Oの前からWear OSを気にかけている様子は微笑(ほほえ)ましい。ウェアラブルへの関心はApple以外では鎮静しているから、このオペレーティングシステムも伸び悩んでいる。来週Googleが、この分野でも斬新な何かを見せてくれることを、期待したい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Telegramの史上最大、17億ドルのICOが大混乱――初期投資家が大量に利食い売り

Telegramの新規暗号通貨売出しは新たな非集権的インターネットのプラットフォーム構築の資金となると期待されていた。しかし現実としては精緻に組み立てられた企業の資金調達市場に大混乱をもたらす結果となっている。Telegramの初期の投資家が利食いを狙って大量のトークン売却に出ているからだ。

今週、Wall Street Journalが報じたところによればTelegramは最近ICOの一般向け販売をキャンセルした。同社がこれに先立って特定投資家向けのトークン販売で17億ドル相当の資金調達(SEC提出書類)に成功したことはTechCrunchも報道している。 しかしこの問題が起きたのはそれより以前からだった。

TelegramはTON(Telegram Open Network)と呼ばれるブロックチェーン・テクノロジーを利用したプラットフォームとこれを利用するためのメッセージ・アプリを提供している。Telegramのビジョンは、各種支払だけでなく、ファイル保存、検閲を受けないブラウジング、その他各種の非集権的アプリのプラットフォームとなることだ。この3月、Telegramはメッセージ・アプリの1日当たりアクティブユーザーが間もなく2億人になると発表していた。当初のホワイトペーパーによれば、Telegramは招待オンリーの特定投資家と一般投資家、双方へのトークン売出しで12億ドル相当の資金を調達することを計画していた。

Telegramは調達額目標を17億ドルにアップし、その後一般投資家への売出しをキャンセルした。これは同社がTONネットワークを構築するために必要な資金をすでに確保したことを意味すると同時に、SEC〔米証券取引委員会〕がスタートさせた公衆から資金を調達するICOに関する調査を避ける意味合いだと考えられている。

この結果、一般投資家はGramと呼ばれるTelegramのトークンを直接購入することができず、トークンが取引所に現れるのを待つことになったが、Gramの取引所における売買が開始されるスケジュールは現在不明だ。しかしTelegramのメッセージ・アプリが大成功を収めていること、また初期投資家は大幅な割引価格でトークンを購入できたため、トークンを取引所外で売買するセカンダリーマーケットが出現した。これにより一部の投資家はすでに大金を手にしている。

TechCrunchが取材したある情報源によれば、初期投資家向けトランシュではトークンあたり価格は0.37ドルだったという。それが現在では1.30ドルでの売りを狙っている。実現すれば、公開取引が開始される前にすでに3.5倍の値上がり益を手にできる。これ以外にもさまざまな価格で同種の取引が行われてきたとTechCrunchでは考えている。簡単に大きな値ざやが稼げるところから新たな仲介者も現れた。売り手と買い手をマッチングさせ、取引が成立すれば手数料を得るブローカー業者だ。

ここに挙げたのは同種の非公式取引の一例にすぎない。Gramに対する需要が旺盛なためトークンを所有する初期投資家は現金化の機会を得た。また一般向け売出しがキャンセルされため、この傾向にはますます拍車がかかった。初期投資家は大幅な割引価格でGramを購入できたのできわめて容易に大きな利益を手にすることができるわけだ。

TechCrunchが取材した別の情報源によれば、Telegramはこうした非公式なトークンの売買が行われていることを認識しているものの、なんら法規に違反しているわけではない――ICOは公的規制を受けていない――ため、打つ手はないのだという。Telegramがこうした巨額の資金移動をコントロールできていないという事実はICOプロセスに強い懸念を抱かせる。【略】

TelegramのICOはこれまでで最大の暗号通貨売出しによる資金調達だ。2位のFilecoinの2億5000万ドルのICOをはるかに引き離している。しかしICOとして模範的なものとなったとは到底いえそうにない。

トークンの無秩序な売買に加えて、このICO自体の不透明性が当初から強く批判されていた。 Pantera Capitalの Charles Noyesは、TelegramのICOを「オポチュニスト的」と述べ、ホワイトペーパーについて「簡単に言えば、こうなれば良いという希望的観測のリストだ。クラッシュと炎上を避けられたらこうなるはずという筋書きを述べたもの」だと批判した。MIT Technology Reviewの記事は「大胆だがアイディアに乏しい」とした。またこの文書中のテクノロジー面の理論付けは他のプロジェクトからリサイクルされたものだという批判も出ていた。

しかも現在Telegramにとっての難題はICO関係だけではない。ロシア政府は強引な検閲によりTelegramのメッセージ・アプリを無効化しようと試みている。Telegramに対する取締りを逃れるために利用されていたIPアドレスでロシア政府よってブロックされた数は1900万に上ると推定されている。この大規模なもぐら叩きの巻き添えを受けてTwitch、Slack、Soundcloud、Viber、Spotify、Fifa、Nintendoなどのサービスにも被害が出ている。

TechCrunchはTelegramのCEO、Pavel Durovにコメントを求めたが本記事執筆時点では回答がない。

情報開示:執筆者のJon Russellは少額の暗号通貨を所有している。

画像:Carl Court / Getty Images

〔日本版〕フランス政府は政府職員がTelegram利用することを禁止し独自アプリに移行させることを準備中。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ロボットサッカーの現状はこんな具合

基本的にスポーツは苦手だ。だから、というわけでもないのだが、ロボットがサッカーをプレイする未来を待望していたりする。というわけで、SPL(Standard Platform League)のGerman Openファイナルをご案内したい。対戦しているのはNao-Team HTWKとNao Devilsだ。人間がプレイする必要のないスポーツというのは、私のような人間にとっては「輝かしい未来」に思えるのだがどうだろうか。

プレイしているのは、ソフトバンクがStandard Platformリーグ用に開発したNaoだ。Naoはフィールドを走り回り(人間が走るのとは様子が違うけれど)、豪快なシュートを放ち(これも人間のシュートとはちょっと違う)、倒れたときにはもちろん自分で立ち上がってプレイに復帰する。試合の様子は見慣れたサッカーとは異なるものかもしれない。しかしシュートを決めようとボールを追いかけるロボットにはつい胸が熱くなってしまう。

人が手を(足を)煩わせることなく、サッカーが楽しめるというのは素晴らしいことだと思う。

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(翻訳:Maeda, H

機械学習研究者2000人が、Natureの新しい有料論文誌への投稿を拒否

世界一流の科学論文誌であるNatureは、Machine Intelligence(機械知能)の出版物を発行する計画を発表したが、研究者らは喜んでいない。この分野はオープン・アクセスの論文誌がうまく回っている ーー 何十年もの間誰もが避けようとしてきた有料アクセスモデルに今更かきまわされたくない。2000人以上の研究者が、投稿しないと宣言する書類に署名した。

今、学術出版業界は騒動の渦中にある。オープンアクセスの学術誌とその支持者たちは、Science、Natureといった名だたる守旧派や、Elsevier、Springerなどの有料サイトと戦っている。一方でSci-Hubなどのサイトは、有料雑誌のデータを解放するサービスを(もちろん違法に)提供し、今やなくてはならない存在となっている。

以下の声明文は、オレゴン州立大学名誉教授で、International Machine Learning Society(国際機械学習協会)の創立者・代表であるTom Dietterichから送られてきた。

「機械学習分野は無料でアクセス自由な研究環境の先端を走ってきた。将来の機械学習にとってクローズドなアクセスや著者手数料のかかる出版物の出番はない。この新しい雑誌を機械学習コミュニティーの記録保管場所として認めることは、後戻りだと私は信じている」

声明は同コミュニティーが過去にも有料論文誌に反対したことや、現在の主要論文誌が対価を請求していないという事実を挙げた。「以下のリストに載っている研究者は、この新しい雑誌に、投稿も査読も編集もしないことを宣言する」

現在世界中から2300件近い署名が集まっている。学生、教授、研究員、建築家、技術者らの名前が満載だ。Google、Intel,Amazon、Microsoft、IBMなど世界有数企業を代表する人たちの名前もある。

機械学習が本質的に有料アクセスと相容れないわけではない、とDiettrichがメールで言った。むしろ、注目されるようになったのがごく最近だったために、無料でオープンアクセスの雑誌が初めからより良い選択肢だったと言うべきだろう。

「われわれの研究コミュニティーは幸いにも無料かつオープンアクセスの学術出版への期待を確立することができたが、他の多くの科学、数学の分野も同じ方向に進んでいる」と彼は書いた。

Natureがこのようなやり方で関心を示したことはこの分野が有望であることを意味しているのかと尋ねたところ、「これはNature Publishing Grouptがこの比較的新しい研究分野が金になると信じしていることの兆候だ」と教授は答えた。

どうやら決意は広く支持されているようだ。「私の印象では、主要な大学や企業のほとんどから優秀な人たちが参加している」と彼は締めくくった。

それでもNatureは強い影響力を生かして論文を集めるかもしれないが、この分野のかなりの人数の研究者から無視されることになりそうだ。読者の中に賛同する人がいれば、リストに名前を追加されたい。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

GoogleはGoogle Assistantのアプリケーション開発振興のためスタートアップを育てる投資育成事業を開始

Google Assistantのエコシステムをどうしても育てたいGoogleは、ついにそのために自腹を切ることになった。今日(米国時間5/2)の同社の発表によると、Assistantのアプリケーションを作る初期段階のスタートアップに、資金やそのほかのリソースを提供していく新しい事業をこれから立ち上げるようだ。

新製品に関してそのエコシステムを育てたい企業が、こんな事業を発表することはよくある。しかしGoogle Assistantの場合はすでにかなりの数のサービスが開発されているにもかかわらず、同社は“このクリエティビティをもっと鼓舞するために”、新しい事業を立ち上げるのだ、という。

Googleの、検索とGoogle Assistant担当VP Nick Foxも、こう言う: “Google Assistantでは、デベロッパーやデバイスのメーカーやコンテンツでのパートナーたちが新しいユーザー体験を作っていけるための、オープンなエコシステムの育成に力点を置きたい。Google Assistantに関してはすでにデベロッパーたちの多くのクリエティビティが見受けられるが、それをさらに促進するために、初期段階のスタートアップのための新たな投資事業を始める”。

投資だけでなくGoogleは、彼らスタートアップにメンターシップ(個人指導)や、技術者、プロダクトマネージャー、デザイナーなどからのアドバイスを提供する。そしてこの事業の対象になったスタートアップは新しい機能やツールにいち早くアクセスでき、またGoogle Cloud Platformとプロモーションの支援にもアクセスできる。これはまさに、アクセラレーターないしインキュベーターと呼びたいような事業だが、Googleはそう呼んでいない。

Foxによると、投資額に上限はない。“ふさわしいと思われる額を投資して、デジタルアシスタントのアプリケーション(ハードウェアもありうる)開発という、この新しい分野でスタートアップが成功できるように努めていく。しかも資金を提供するだけでなく、これらのスタートアップと積極的にパートナーして、彼らのプロダクトが市場で成功するよう、わが社の強みも生かしていく”。

この事業の対象となる最初のスタートアップGoMomentは、ホテルのためのコンシエルジュサービス、そしてEdwinは英語の個人教授、BotSocietyPulse Labsはデベロッパーツールだ。

これらのスタートアップは、Googleのねらいをよく表しているようだ。Foxによると、Googleが求めているスタートアップは、“旅行やゲームなど、Assistantをおもしろく活用できそうな特定業種をエンドユーザーとする”デベロッパーたちだ。Googleは一部のパートナーシップについてはその関わりをより深めると同時に、一方多くの場合は単純に、Assistantのような技術に関心のあるスタートアップを求めているのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Elon MuskがTeslaのライドシェアネットワークについて語った

本日(米国時間5月2日)行われたTeslaの2018年第1四半期業績報告会で、TeslaのCEOであるElon Muskが、同社が計画する自動運転車によるライドシェアネットワーク(ridesharing network)について、いくつかの点を明らかにした。簡単に言えば、技術的な観点からはTeslaは来年末には準備が整うと、Muskが語ったということだ。しかしTeskaが、いつ実際にネットワークを立ち上げるかは、まだ明確ではない。

とはいえ実際には、規制と完全自動運転に関わる議論を行わなければならない。すなわち、人間の介入を必要としないレベル4またはレベル5の自動運転である。

報告会では、Muskは人びとが自分の車を共有し、それらをLyftあるいはUber、またはLyft/Uber-Airbnbの組み合わせのようなものに提供する世界について説明した。そこでは「自分の所有する車を100%活用することができる」とMuskは語った。そしてオーナーが必要としていないときには、誰でもその車を活用することができるということを指摘した。

「こういうことが実現することは明らかです」とMuskは語った。

しかし、それを実現するためには、Teslaは自動運転の課題を解決しなければならないと彼は語った。テスラは、ライドシェアネットワークを管理するためのソフトウェアプラットフォームも必要としている。Muskによれば、テスラが現在生産している車には完全な自律性があるが、処理能力やその他のものに関連するコンピュータの更新をいくつか加える必要があるという。

「最終的には数百万台の自動運転電気自動車を所有するという目標を考えると、私たちは本当に有利なボジションにいると思う」とMuskは語る。

3月にはアナリストのGene Munsterが、Teslaが2023年までにライドシェア群の運用を開始する可能性は50%以上だと語った。Munsterによれば、これによりテスラの収益は20億ドルから60億ドルへと増加する可能性があるという。

以下に挙げるのは報告会で語られたその他のトピックである:

  • Teslaは2020年初頭にモデルYの生産を開始する予定。Muskはこれを「製造革命」になるだろうと述べている。
  • Teslaは自動運転の安全統計を四半期ごとに公開する。
  • Teslaは、4月にIntelへ去った自動運転担当副社長のJim Kellerを、呼び戻すつもりはない。

関連記事:Tesla earnings show record revenues with record losses

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(翻訳:sako)

画像クレジット:Sullivan/Getty Images

Soft Robotics、事業拡大のために2000万ドルを調達

今週Soft Roboticsは、Scale Venture Partners、Calibrate Ventures、Honeywell Ventures、そしてTekfen Venturesならびに、既存の投資家であるロボット大手のABBから2000万ドルの資金調達を行ったことを発表した。今回の調達は2015年後半に行われた500万ドルのシリーズAに続くものである。

投資家たちの関心はかなり明確だ。ものを拾い上げて置くことは、現時点における工業ロボット技術の必須課題であり、同社のソフトな空気充填式の手が、この課題に対して斬新なアプローチを提供している。同社のロボットグリッパーを構成するゴム素材は、より柔軟な構造を可能とするため、最小の事前プログラムと組み込み視認システムで、様々な物体を拾い上げることを可能とする。

これまでに、Soft社は主に食品産業を中心に導入が進んでいる。青果物やピザ生地などのデリケートな製品を扱う工場が対象だ。またPeeps(マシュマロキャンディ)を生産するJust Born Quality Confectionsによっても採用された。

Soft Roboticsによれば、新しいラウンドは、同社を食品ならびに飲料カテゴリーへとさらに発展させ、小売ならびに物流業界にもより大きな存在感を示すことを助けるということだ。HoneywellとYamahaの投資部門の関与は、それらの会社自身の倉庫部門からの関心を表しているのかもしれない。適切な空気圧が加えられることで、システムはより固い物体を拾い上げるために十分な強度を発揮する。

倉庫での作業効率は、Amazonのような企業からの要請によって、近年ますます厳し基準が求められるようになっている、このことは、多くのロボット企業を、ベルトコンベヤーへの商品の上げ下ろしなどの、高速で繰り返しの多い作業への取り組みへと向かわせた。先月下旬、Soft社は、箱から商品を取り出し、整頓して、小売注文を揃えることのできる、人間による監視がほとんど不要なAI駆動倉庫システムを発表した。

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(翻訳:sako)

クラウドホスティングのDigitalOceanもついにコンテナプラットホームを提供

誰もが気軽に使えるクラウドホスティングサービスDigitalOceanが、そのメニューにコンテナサービスを載せた。同社は今でも、安価な仮想プライベートサーバーのホスティングサービスとしていちばんよく知られているが、同社自身はそのうち、クラウドコンピューティングの世界でメジャーになるつもりだ。ホスティングは、そのプランの最初の部分にすぎない。たとえば同社のストレージサービスSpacesは、同社の夢が本気であることを示す一例だ。

しかし今や、コンテナを避けて通れない世の中になっているので、同社が今日(米国時間5/2)、Kubernetesベースのコンテナサービスを立ち上げたのも、もはや意外ではないだろう。

このサービスはまだ初期のプレビュー段階で、ここからサインアップできるが、一般公開は今年の終わりごろだ。

DigitalOceanのプロダクト担当VP Shiven Ramjiはこう述べている: “私たちはいつも、デベロッパーのためのシンプルなソリューションに専心してきた。その最初のプロダクトが、クラウドサーバーDropletsだった。今度のプロダクトも、その例外ではない。デベロッパーは自分のアプリケーションを完成させることに専念でき、複数のアプリケーションにまたがるスケーラビリティの高い安全なクラスターを作って動かすことに伴う、複雑な作業は免除されるのだ”。

そのサービスはDigitalOcean Kubernetesと名付けられ、それによりデベロッパーは、自分のコンテナワークロードをDigitalOceanのプラットホームでデプロイし管理できる。大手のクラウドコンピューティングプロバイダーのほとんどすべてが提供している競合製品と同様に、DigitalOceanのプロダクトも、Kubernetesを動かすことに伴う複雑性の大部分を、抽象化してデベロッパーからは見えなくする。しかし必要ならユーザーは、KubernetesのAPIにフルアクセスして、独自の隔離されたKubernetesクラスターを作れる。

このサービスは同社の既存のサービス、ストレージやファイヤーウォールツールなどを統合している。デベロッパーは自分のコンテナを、DigitalOceanの標準のノードで動かすか、あるいはより強力で計算能力の高いノードで動かすかを、選択できる。また“teams”という機能で、アクセスコントロールができる。さらに、こういうサービスの通例として、通常のパフォーマンスアナリティクスやロギングの機能もある。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

高校生が作成した”SmartLens”アプリは、汎用ビジュアル検索への第一歩だ

数年前、私はカメラを向けるとそれが何かを教えてくれるようなアプリを熱望していた。結局その問題は、皆が期待していたものよりもはるかに困難だったが、そのことは高校生Michael Royzenのやる気を削ぐものではなかった。彼のアプリであるSmartLensは、何かを見て、それが何かを特定し、さらに詳細を知りたいという問題を解決しようとするものだ。正直なところそれは完璧な成功とは言えないが、ポケットの中に忍ばせておくことに抵抗はない。

Royzenが私に連絡してきたのは少し前のことだったが、私は興味深いと(実は正直疑わしいと)思っていた。GoogleやAppleのような企業もずっと失敗してきた(少くとも良い製品はリリースできていない)課題解決を、空き時間を使って作業している高校生ができるものだろうか。私は彼と喫茶店で会い、実際に動作するアプリを見て、嬉しい驚きと、ちょっとした困惑を感じた。

このアイデアは単純だ:携帯電話のカメラを何かに向けると、何千万枚ものイメージを使って訓練され、巨大だが高度に最適化された分類エージェントを利用して、アプリがその対象を識別しようとする。WikipediaとAmazonに接続することで、アプリが識別したものに関して、より詳細に知ったり購入したりすることができる。

それは1万7000以上の物体を認識する。多くの種類の果物や花、ランドマーク、道具などなど。アプリはリンゴと(少々変わった見かけの)マンゴーの区別や、バナナとプランテーンを区別すること、そしてサイドメニューとして注文したピスタチオの識別には少々苦労した。その後、私自身が行ったテストでは、近隣の植物を特定するのにとても便利であることがわかった:ツルニチニチソウ、アネモネ、カタバミなどなど、どれも迷うこと無く識別したのだ。

驚くべきことに、これらは全てオフラインで行われているのだ。画像をモバイル回線やWi-Fiを通してどこかのサーバーに送信して、解析しているわけではない。すべてがデバイス上で、1〜2秒以内に完了する。Royzenは、さまざまな情報源から自分自身の画像データベースを構築し、AWS EC2の計算時間を何日も使って複数の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練した。

さらに、アイテム上のテキストを読んでAmazonデータベースを照会することによって、さらに多くの商品を認識することができる。それは、書籍、薬のボトル、その他のパッケージ商品を、ほぼ即座に識別し、それらを購入するためのリンクを提示する。オンライン時にはWikipediaリンクもポップアップするが、かなりの量の基本的な説明がデバイスにダウンロード済である。

注意点として、SmartLensのダウンロードサイズは500メガバイトを超えていることを指摘しておかなければならない。Royzenのモデルは巨大である。なぜなら、携帯電話上にすべての認識データとオフラインコンテンツを保持しなければならないからだ。これはFire Phone(RIP)上のAmazon自身による認識エンジンや、Google Goggles(RIP)、あるいはGoogle Photosのスキャン機能(SmartLensが0.5秒で認識できる対象に対して役に立たなかった)などとは、相当異なるアプローチを採用している。

「デスクトップクラスのプロセッサを搭載したここ数世代のスマートフォンと、それらのプロセッサ(とGPU)を利用できるネイティブマシンラーニングAPIの登場によって、ハードウェアは驚異的な高速のビジュアル検索エンジンとなりました」とRoyzenは電子メールに書いてきた。しかし、同様のことをすることが当然期待される大企業たちはどこもそうしたプロダクトを作成していない。それは何故だろう?

アプリケーションのサイズとプロセッサへの負荷は確かに問題の1つである。しかしエッジならびにオンデバイス処理は、こうしたことが最終的に目指している場所である。Royzenは、それに対して早めのスタートを切っただけなのだ。難しい点が2つある:収益化することは難しく、検索の質も十分には高くないということだ。

現時点では、SmartLensはスマートではあるものの、間違いがないとは言えない。対象が何であるかの正解にたどり着く直前には、(しばしば起きることだが)爆笑ものの間違いを答える。

それは私が持っていた本を「白い鯨」だと識別したが、それは書籍「白鯨」ではなかった。また、それがクジラ形の文鎮だと言ったものは、園芸用のコテだった。多くのアイテムでは、より高い確信度の推測に到達する前に、「人間」もしくは「プロダクトデザイン」という推測がチラついた。ひとかたまりの花の集まりが、4から5種類の植物として認識される…その中にはもちろん「人間」も混ざっている。私のモニターは「コンピューターディスプレイ」、「液晶ディスプレイ」、「コンピューターモニター」、「コンピューター」、「コンピュータースクリーン」、「ディスプレイ装置」などとして認識された。ゲームコントローラはすべて「コントロール」だ。スパチュラは木製のスプーン(まあ近いかな)だったが、不可解なサブタイトル「ブービー賞」が添えられていた。何だって?!

こうしたレベルの性能(そして楽しくはあるものの、奇妙な振る舞い)は、GoogleやAppleがリリースするスタンドアロン製品では許容されないだろう。Google Lensは遅くて出来の悪い代物だが、便利で役立つアプリの中の、オプション機能に過ぎない。もし花を人間として識別するビジュアル検索アプリを出したなら、企業はいつまでもそのことを言われ続けるだろう。

そしてもう一つの課題は収益化の側面である。理論的には、友人が持っている本の表紙を認識して即座に注文することは可能だが、そのことは、写真を撮って後で検索することや、最初の数単語をGoogleやAmazonに入力すれば用が足ることに比べて、それほど便利だとは言えない。

その一方で、ユーザー側にも迷いがある。それが識別できるのは何か?それが識別できないのは何か?何を識別すれば良いのか?それは犬の品種や店舗などの多くのものを識別することを意図しているが、例えば、友人が持っているクールなBluetoothスピーカーや機械式時計、あるいは地元のギャラリーに飾られた絵の作者などを識別はしない(とはいえ、いくつかの絵は認識される)。それを使っているうちに、私は花の識別のような、うまくいくことが証明されたタスクだけに使うようになっていったように思う。しかしそれ以外の不確実で上手く行かないものに関しては、フラストレーションが溜まるだけなので、試してみる気にはなれなかった。

それでも近い将来に、SmartLensのようなものが存在しないと考えることは、馬鹿げていると思う。数年のうちには、私たちがそれを当然のものとして扱うようになることは、あきらかだ。また、それらはオンデバイスで行われ、解析のために画像を何処かのサーバーへとアップロードする必要はないだろう。

Royzenのアプリ自身は課題を抱えているものの、多くの状況で非常にうまく動作するし、明白な有用性がある。ここでのアイデアは、道の向こうのレストランに携帯電話を向けたなら、2秒でYelpのレビューが見られるといったものだ、マップを開く必要もなく、住所や名前を入力する必要もない。こうしたことは既存の検索パラダイムの自然な延長線上にあるものである。

「ビジュアル検索はまだニッチですが、私の目標は、あるアプリケーションが身の回りの全てのものに関する有益な情報を教えてくれるようになったら、どのように感じるかを皆に伝えることなのです ―― それも今すぐに」とRoyzenは書いている。「しかし、大企業が最終的には競合製品を発売することは必然です。私の戦略は、最初の普遍的なビジュアル検索アプリとして市場に出て、先行者であり続けられるように(あるいは買収されるように)できるだけ多くのユーザーを集めることです」。

しかし、私の最大の不満は、アプリの機能そのものではなく、Royzenがそれをマネタイズする際に決定したやり方である。ユーザーはアプリを無料でダウンロードすることができるが、立ち上げるとすぐに、月額2ドル(日本だと月額200円)のサブスクリプションを促されるのだ(まだアプリがちゃんと働くかどうかも見ていないのに)。もしアプリが何をして、何をしないのかを既に知っているのでなければ、そのダイアログを見た瞬間に考える間もなく削除することだろう。そして仮にそれを支払うことにしたとしても、それを永遠に払い続けることはない。

アプリを有効にするための1回限りの手数料を徴収することがおそらく妥当だろう、また紹介コードの提供という選択肢は常に存在している。しかし商品のテストさえしていないユーザーから月額家賃を徴収しようというのは、成功の見込みがない。私はRoyzenに懸念を伝えた。私は彼が再考してくれる事を願っている。(訳注:5月2日現在、サブスクリプション登録は必要なままだが最初の30日間は無料となっている。この期間中に解約すれば料金は発生しない)。

既に撮影した画像をスキャンできるようにしたり、検索に利用した画像を保存できるようにするのも良いだろう。確信度インジケータのようなUIの改善や、それがまだ識別中であることを知らせる何らかのフィードバックもあると良いだろう、少くとも理論的にはそうした機能が考えられる。

なんだかんだと言ってはみたが、私はRoyzenの努力には感銘を受けている。一歩退いて眺めてみれば、高校生であるということは置いておくとしても、このように洗練されたコンピュータービジョンタスクを実行可能なアプリを、1人でまとめ上げたというのは驚異的なことだ。これは、10年前のGoogleのような、大きくて遊び心のある会社から出てくることが期待できるような(やり過ぎ)野心的アプリケーションの一種である。これは今のところ普通のツールというよりは、好奇心先行のものかもしれないが、最初のテキストベースの検索エンジンも似たようなものだった。

SmartLensは現在App Storeから入手可能だ ―― お試しあれ。

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(翻訳:Sako)

Snapchat、第一四半期のユーザー数の伸びは過去最低—株価は15%ダウン

Snapchatの2018年第一四半期(1〜3月期)決算はまったく芳しいものではなかった。デザインの試行錯誤やFacebookとの競争を展開する中で、前四半期からの復活はならなかったようだ。1日あたりの平均利用者数は1億9100万人に達し、前期の1億8700万人より増えたものの、成長率は2.13%に落ち込んだ。これは、2017年第四四半期の5.05%、最悪だった同年第三四半期の2.9%に比べても、最も低い成長率だ。一株当たりの損失は0.17ドルで、収益は2億3070万ドルだった。市場は一株当たり損失を0.16ドル、収益を2億4450万ドルと予測していた。

前四半期に北米マーケットでユーザー数を100万人増やして急激に成長したのは、どうやらまぐれだったようだ。実際は見かけ以上に厳しい状況にある。CEOのEvan Spiegel氏が前もってしたためていた意見では、「四半期の平均利用者数は1億9100万人だった。3月の平均ユーザー数は低かったが、第四四半期の平均は上回っている」としている。Snapchatの利用者数が落ち込んでいるというのは、投資家の心理を冷やすものだ。

Snapchatのクローン的存在であるInstagram Storiesの1日平均利用者数は3億人、WhatsApp Statusは4億5000万人。Snapchatが抱える問題は大きなものになりつつある。市場はSnapchatのユーザー数の成長が弱かったことを嫌忌し、Snapの株価は時間外取引で12ドルと15%も下げた。

一方で、Snapの損失額は前四半期の3億5000万ドルから3億8570万ドルへと膨らんだ。経費削減のために一時解雇したのはまさにこの損失額をなんとかしようとしたものだったが、これはあまりにも遅く、また対策としても不十分なものだった。COOのImran Khan氏は「前年同期比の収入成長率を考えるとき、第二四半期での成長率は第一四半期のものより落ち込むことが予想される」としている。これも投資家の心理を悪化させている要因だ。

今回の決算発表の中で数少ない明るい話題の一つが、事業所やクリエイター向けのSnap Proの展開だ。これは有名人や事業所のためのものだ。Khan氏は「このSnap Proではプロフィールの管理やコンテンツの作成・公開、反応の分析が簡単になる。結果として広告獲得につながる」としている。しかしこのSnap Proは展開してまだ日が浅い。

Snapはまた、北米におけるユーザー1人あたりの平均収入で前代未聞の減少にも直面した。第四四半期というのはクリスマスなどの休暇時期を抱えるため、通常は第一四半期に比べ書き入れ時だ。しかしSnapの北米でのASRPU(1契約あたりの売上値)は、第四四半期の2.75ドルから2.1ドルへとあまりに大きく落ち込んだ。第三四半期の2.17ドルからも減少している。これは第一四半期で広告閲覧減少による収入の確保が厳しくなっているという深刻な問題を意味している。

Spiegel氏は「デザインの変更によりユーザーを戸惑わせることになってしまい、また広告主にも懸念を抱かせることになり、これが今四半期の収入では向かい風となってしまった」と認めている。だからこそ、Snapchatは、StoriesをDiscoverページの中に押し込むといった大きなデザイン変更を展開している。しかし、残念ながらこの変更はオリジナルより良くないようだ。私が思うに、Snapに必要なのは日付順にメッセージを並べたり、表示されている友達に関連するStoriesを表示したりするタブであり、Discoverセクションにプロ向けコンテンツをもってくることなどだろう。

Snapchatは第一四半期、アプリのデザインを徹底的に見直す一方で、FacebookがCambridge Analyticaスキャンダルに見舞われている間に収益を上げようとした。当初のApp storeのレビューはかなりネガティブなものだったが、初インストール数とApp storeでのランクは上昇した。セレブのSnapchat離れや一部での使用減はデザイン変更に踏み切らせ、その変更には古いバージョンへの回帰もあったようだ

Snapは先日、カメラ付きサングラスSpectaclesの2代目をリリースした。これが収入につながるかは、次の四半期で明らかになる。問題は、120人超の一時解雇による悪影響が今後出るかどうかだろう。

Spiegel氏は、クリエイターを他のユーザーと分けることで、クリエイターにとってSnapchatがコンテンツを展開するのにお気に入りの場所となるよう、閲覧環境を整えることができるとしている。しかし、クリエイターのDiscoverページを改善したとしても、InstagramやWhatsAppに対抗するのは難しい。CFOのDrew Volero氏は「Snapの収益をトントンにもっていきたいが、いつ達成できるかは描けていない」としている。四半期で収入を3億8500万ドル増やすのは、ユーザー数が激増でもしない限りかなり難しい。ましてや、一時解雇で社員も減っているという現状がある。

年初に書いたように、欧米の若者の間でSnapchatは人気があることを考えると、Snapchatが一晩でなくなるとは考えにくい。しかし、Snapchatがなくなることは現実味を増していて、この業界を牛耳ることなく世界に影響を与えたサービスだった、ということになりかねない。

正直、Snapの経営はかなり厳しい状況にある。成長率は今までで一番低く、ユーザーあたりの収入は減少し、会社の存続をゆらがしかねないほど損失は膨れている。仮にユーザーが徐々に新デザインに馴染むとしても、その時までにInstagramやWhatsAppがSnapの世界展開のチャンスの多くを吸い取ってしまうだろう。また、本格的なARメガネはまだ先の話ということでSpectaclesが売れたとしても、Snapが社の存亡危機を回避できるかはまったく予断を許さない。

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(翻訳:Mizoguchi)

Facebookのオープンソースの囲碁ボットはプロの棋士に勝つ

碁(囲碁)は機械学習の研究者の必須科目だ。GoogleのDeepMindはそのアルゴリズムを魅せつけて有名になり、そしてFacebookも最近、碁ボットを自分で作っていることを発表した。同社のデベロッパーカンファレンスF8で今日(米国時間5/2)行われたそのELF OpenGoボットの発表では、30名の人間棋士との計14試合に全勝し、プロの資格を獲得した、と宣言された。

FacebookのCTO Mike Schroepferはこう述べた: “DeepMindにいるお友だちの偉業には敬服するけど、でも、まだ答えられていない疑問があるのではないだろうか? これらのツールは、ほかにどんなことに利用できるのか?”。Facebookが今日のブログ記事で言っているのは、DeepMindのモデル本体は不透明な包装紙に包まれたままだ、ということ。対照的にFacebookは、そのボットをオープンソースにした

“これを再現可能にしてしかも世界中のAI研究者が利用できるようにするために、われわれはオープンソースの碁ボットを作り、ELF OpenGoと名付けた。これなら、DeepMindのAlphaGoが答えなかった重要な疑問にも十分、答えることができるだろう”、とチームは主張している。

チームが関心を持っているのは、碁だけではない。FacebookのAI研究グループは、StarCraftボットも作って、あのゲームの混沌とした世界にプレーヤーが対応できるようにした。これも、オープンソースにする予定だ。Facebookはまだ、訓練量が十分ならどんなゲームでも学習できるボットをローンチできるところまでは行ってないが、でもチームはそれに向かって相当前進していることは確かだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

WhatsApp Storiesのユーザー、4.5億人――音声通話、ビデオ会議機能も追加、独走体制へ

メッセージ・アプリのパイオニア、Snapchatは当初、国際市場を無視していた。その結果、今や WhatsAppが世界での成長のチャンスを独り占めにしている。今日(米国時間5/1)のF8デベロッパー・カンファレンスで発表された数字によれば、WhatsAppのSnapchat StoriesのクローンのDAU(1日当たりアクティブ・ユーザー)は今や4億5000万人に達している。

Snapの低調な第1四半期決算にともなう電話記者会見で発表された数字によればSnapchatのDAUは1億9100万人に過ぎない。昨年11月のFacebookの発表ではWhatsApp Status、Instagram Storiesのユーザーは合計3億ということだった。

WhatsAppにスタンプが登場

グループビデオもWhatsAppにやって来る

成功に安住することなく、 WhatsAppはスタンプ機能とグループ・ビデオ通話機能を追加したことを発表した。シンプルなチャットツールがこれによってさらに魅力を増すだろう。

ユーザーはWhatsAppのビデオ通話、音声通話をすでに毎日20億分も使っている。しかしここ数ヶ月内に分割画面で参加者が表示される4人までのグループビデオ通話が可能になる。参加可能な人数は将来4人よりさらに増やされるかもしれない。またWhatsAppのテキスト・チャットではスタンプが利用できるようになり会話がビジュアルになる。Facebook Messenger同様、サードパーティーのステッカーも使えるのでデベロッパーはチャットを賑やかにするイラスト多数を準備しているという。

ビジネス面でもWhatsAppは前進中だ。新しいWhatsApp For Businessアプリをすでに300万社が利用している。現在は無料アプリだが、今後は航空会社、銀行、モバイルキャリヤなどの大企業向けにボーナス機能を備えた有料版が提供される予定だ。利用者はアプリ内で物品、サービスの販売とカスタマーサポートができる。すでに企業からの強い関心を集めているため、これがリリースされればFacebookはまたしても着実な収入源を得ることになるだろう。

FacebookとInstagramが大統領選への干渉疑惑に揺れる中、WhatsAppはF8での明るい話題となった。WhatsApp事業部の責任者、Mubarik Imamは「無給でも働きたい会社があるとすればそれはWhatsAppだ」と語った。スキャンダルの渦中にあるFacebookはなんであれポジティブなPRを強く必要としている。WhatsAppがそれになるかもしれない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Google MapsがそのAPIの構成と課金方式を抜本的に変えて単純化、月200ドルぶんまで無料

GoogleがGoogle Maps APIを大きくアップデートし、それに伴い名称をGoogle Maps Platformに変えた。

これはこのAPIプラットホームの近年で最大の変化のひとつで、Google Mapsのデベロッパーからの利用を大幅に単純化するとともに、APIの課金方法も変わった。そして6月11日からは、デベロッパーは有効なAPIキーと、Google Cloud Platformの有料ユーザーとしてのアカウントが必要になる。

まず、これまで18に分かれていたMaps APIが三つのプロダクト、Maps, Routes, およびPlacesに統一される。ただし、既存のコードはそのまま無変更で動く。

また課金体系は、これまでのStandardとPremiumという二つのプランに代わり、単一の料金プランになる。サポートはこれまでPremiumプランのみだったが、これからは全域的に無料で提供される。無料プランはないが、月額200ドル相当ぶん*までの利用は無料となる。また、企業顧客向けには特注プランがある。〔*: 上のリンク先に200ドルでどれだけのことができるか、例がいくつか示されている。〕

特定業界向けのMapsソリューションも、既存のものを継続し、今後新たなものをローンチしていく。たとえば今年初めには、Mapsのデータを利用して現実世界を舞台とするゲームを作るゲームデベロッパーのためのプログラムを立ち上げた。そして今日は、アセットトラッキング*とライドシェアリングのための同様のソリューションを発表した。Lyftのアプリは昨年から、このライドシェアリングプロダクトを使っている。〔*: アセットトラッキングサービスの。〕

今日の発表声明は、こう書いている: “われわれのアセットトラッキング提供物は、車両などの資産(アセット, assets)の位置をリアルタイムで追跡し、車両を複雑な行路へルートすることによって企業の効率を改善する。今後はわれわれがインサイトと専門的能力を提供できるようなほかの分野にも、新たなソリューションを導入していきたい”。すなわちGoogle Mapsは今後、そのビジネス利用〜企業利用の本格化多様化に力を入れるようだ。

しかしGoogle Mapsとしてはこれは、正しい方向性だろう。Google Maps APIのアクセスは往々にして、問題を生じてきた。とくに無料利用のレベルを変えたときには、騒動が起きた。今日の変化により、これからはデベロッパーコミュニティからそのようなリアクションが起きることもないだろう。デベロッパーの仕事を、今後長期にわたって楽にしてくれる、と思われるからだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Facebook、VRディスプレイを大幅アップグレードへ――Oculus Half Domeをデモ

ここ数年VRヘッドセットのハード面の進歩は停滞ぎみだった。 なるほど精細度が少しアップした、視線トラッキング機能が追加された、新しいコントローラーが発表された、などはあったが、全体としてみるとVRの進歩はソフトの分野で起きていた。この中で、FacebookはVRヘッドセットのハード面を根本的に改革しようとしているようだ。F8 2018デベロッパー・カンファレンスの2日目でFacebookは新しいVRヘッドセットをデモした。

社内でHalf Domeと呼ばれているOculusの新ヘッドセットでは、まず装着した際の視野が大きく拡大された。またVarifocalと呼ばれる高度なテクノロジーにより、ユーザーが見ている対象に合わせて映像の焦点を変えることができるようになった。

平均的な成人の水平視野角は200度程度とされているが、デモされたプロトタイプの視野角は従来の100度から140度に拡大された。これにより装着者は視野の周辺までヘッドセットで見ることができるようになり自然さが大きくアップする。重要なのは視野の拡大にあたって従来のフォームファクターを維持できたことだ。つまりHalf Domeのサイズは現行のRift製品と変わらない。これは「レンズ・テクノロジーの絶えざる進歩」によって可能になったという。ただし製品のサイズをこれ以上小型化するにあたってはデイスプレイに画期的な進歩を必要とするようだ。

現在市場に出ているVRヘッドセットは単一の焦点面しか表示できない。つまりユーザーは複数の焦点距離を利用できない。VRで文字を読もうとしたり、何かをはっきり見ようとしたりするなら、その対象はユーザーから2メートルの距離に置かれねばならない。これはVRの普及にあたって大きなハードルとなってきた。謎のスタートアップ、Magic Leapでは新しいディスプレイ・テクノロジーによりこの問題を解決したと主張しているが、そのテクノロジーを利用した消費者向け製品が製造できるのかなどの詳細は不明だ。

Oculusによれば可変焦点距離の表示を実現するために、プロトタイプのヘッドセット内でディスプレイを物理的に前後に移動させているという。簡単にいえば、カメラのオートフォーカスと同じ仕組みだが、多くのカメラのように作動音を立てたり振動を感じせたりしないという。

Oculusはこれ以外にディスプレイ分野での研究をいくつも紹介したが、このVarifocalテクノロジーは研究の成果がサイズや重量を増やさないままで製品に組み込まれる日が近いことを感じさせた。OculusはHalf Domeプロトタイプの紹介に力を入れていたが、これが製品化されればハイエンドのVRヘッドセットの基準は一変するに違いない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+