Tesla株、ゴールドマンサックスの目標価格180ドルで7%安

株式市場でTeslaに注目している人は、同社に注目しているアナリストたちの間で、楽観 vs 悲観の戦いが起きていることを知っているに違いない。

Goldman SachsやBank of Ameriaといった主要投資銀行のアナリストは、株式の将来目標価格について合意しないのが普通だが、ある銘柄が上がるか下がるかで完全に意見が分かれるのはかなり稀だ。

それが今まさにTeslaで起きている。Teslaの予測を公開しているアナリスト24人のうち、8人が買い、8人が売りと言っている。そして8人が中立 ―― 市場全体と同じように動く ―― と言っている。

具体的には、最低目標価格はCowenの155ドルで、最高が Berenbergの464ドルだ。

目標価格の平均は281.79ドルで、今日(米国時間7/5)7%下がったあと安定した327.09ドルよりもさらに低い。

ではなぜ今日株価は下がったのか? いくつか理由がある。

昨日、Teslaは2017年Q2に2万2000台の自動車を出荷したと発表した。これは2016年通年の出荷台数7万6000台を抜くペースではあるものの、予測を下回っており、Teslaはその理由を「100 kWhバッテリーの著しい生産量不足」のためと説明した。

そして今日の午前、Goldman Sachsは目標価格を190ドルから180ドルに下げた。現行のModes SとModel Xの需要が停滞しており、Teslaの今後の生産目標の達成に問題があるという懸念からだ。

もちろんTeslaの今の主な焦点は今月末の出荷が予定されている低価格のModel 3だ。8月の生産予定はわずか100台だが、Elon Muskは、12月までには月間2万台、2018年中には50万台生産すると言っている。

アナリストの間でこれほど相違がある本当の理由は、人々がTeslaを見る目には2種類あるからだ。一つはTeslaを従来の自動車会社とする見方だ ―― そしてその業界標準で価値をつけるなら、明らかな過大評価だ。

他の人々はTeslaを、自動運転とバッテリー製造技術に根ざしたテクノロジーとエネルギーの会社と見ており、この場合今のTeslaは成長の可能性から見てほんの何分の一の規模でしかない。

どちらの理論を買うにせよ、TeslaがModel 3の生産能力を高め、量産体制に入れることを証明しようとする今後数か月が興味深いものになることには誰もが同意するだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

MITが開発した三次元のチップデザインは強力なエッジコンピューティングの未来を開くか

MITの研究者たちが、カーボンナノチューブと抵抗変化型メモリ(resistive random-access memory, RRAM)を併用する三次元チップ製造法により、複雑な三次元アーキテクチャ〔多層構造〕をサポートする結合型ナノ電子プロセッサーデザイン*(combined nanoelectronic processor design)を開発した。従来のシリコンを使ったチップ製造法では、二次元の構造しか作れなかった。〔*: 結合とは、コンピューティングとメモリが一体化している…三次元構造…という意味。〕

この三次元構造が可能なのは、カーボンナノチューブの回路とRRAMのメモリ部位が、摂氏200度以下の温度で作れるからだ。二次元のシリコントランジスタの製造に必要な1000度に比べると、きわめて低い。低温だと、多層構造を隣接する他の層にダメージを加えずに作れる。

この三次元モデルの利点は、小さなプロセッサーに高速な処理能力と処理の対象となる大量のデータを一体化できることにある。それは、従来ならデータセンターやプロセッサーファームへの行ったり来たり(ラウンドトリップ)を必要とするほどのデータおよび処理量だ。科学者たちや製品の設計者たちは最近ますます、‘エッジにおける’高度なデータ処理を追究している。エッジとは、たとえばセンサー群がそこにある超ローカル、という意味だ。そんなところでデータをラウンドトリップしていたら、その旅程そのものがリスクになりかねない。またアプリケーションによっては、たとえば自動運転車などでは、そんな旅路は不可能である。

この設計は、一つのチップの上にプロセッサーのロジック部位とメモリ部位が結合している点でもユニークだ。しかも、カーボンナノチューブのロジック成分とRRAMの成分は、今日のシリコンやDRAMに比べてエネルギー効率が良い。カーボンナノチューブはセンサーとしても動作するから、最上位層をセンサーにして、処理とストレージを担当する下の層へデータを供給してもよい。

MITが引用しているあるエキスパートによれば、これは、コンピューターのパワーのムーアの法則に従った指数関数的なスケールアップの継続に代わる、まったく新しい解になりうる。しかも従来的なチップ製造法は、そろそろその物理的な限界に近づきつつある。まだきわめて初期的な段階だが、将来の研究開発にとって、有望な方向性であることは確かだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

SpaceX、2週間で3度目の衛星打ち上げに成功――大型静止衛星のためブースターは使い捨て

SpaceXのFalcon 9の打ち上げは今日(米国時間7/5)も成功した。ケネディー宇宙センターのLC-39A発射台から打ち上げられたFalcon 9は2週間で3基目となった。6月23日と6月25日のミッションも完全な成功を収めている。

今回のペイロード、Intelsat 35eはボーイングがIntelsatのために製作した大型の静止衛星でブロードバンド接続とビデオ配信のために高速のスループットを実現している。カリブ海、ヨーロッパとアフリカの一部がカバー予定地域となる。

SpaceXは当初、日曜に打ち上げを予定していたが軽微な技術的理由で中止された。【略】月曜の打ち上げもエンジン点火の10秒前に中止された。原因はロケットのセンサーの読み出し値がデータベースの設定値と異なっていたためだが、その後ロケットにはまったく不具合がなかったことが確認された。

今日の打ち上げではブースターの回収は行われなかった。 衛星が5.9トンと巨大であり、静止軌道への投入が必要なためFalcon 9の打ち上げ能力の最大限に近かったためだ。そのため着陸脚や姿勢制御用のグリッドフィンなどは装着されていない。

SpaceXはこの月曜日、Dragon補給船の回収に成功している。6月上旬に打ち上げられ、Dragonは国際宇宙ステーションに物資を補給した後、.太平上に無事着水した。

打ち上げから30分後にIntelsat 35e衛星は静止遷移軌道に投入され、Falcon 9は任務を完了した。SpaceXは一段と成功の記録を伸ばしつつある。

〔日本版〕打ち上げの模様はこちらで中継録画を見ることができる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

NvidiaとBaiduが、クラウド、自動運転、リサーチ、そしてスマートホームにまたがる包括的なAI協業提携を行った

本日(米国時間7月5日)BaiduとNvidiaは、人工知能についての包括的な協業提携を行ったことを発表した。適用分野はクラウドコンピューティング、自動運転、教育と研究、および民生機器を介した家庭内での利用にまたがる。これはNvidiaにとって、急成長する人工知能ビジネスの中で、これまでで最も包括的なパートナーシップであり、今後数年にわたりNvidiaのGPU事業を大きく拡大する可能性がある。

今回のパートナーシップには、Baidu CloudでNvidiaのVolta GPUを使用する契約や、複数の中国の自動車メーカーと提携して自動運転車を市場に投入しようとしているBaiduの取り組みに対して、Drive PXを適用することなどが含まれている(今朝発表されたBaiduの自動運転車向けApolloプログラムとその野望、詳細はこちらから )。さらに、BaiduとNvidiaは、Baiduが開発した、Nvidia Volta用オープンソース深層学習フレームワークであるPaddlePaddleの最適化に向けて協力を行なう。そしてその成果は広く研究者や研究機関などに提供される予定だ。

消費者サイドに目を向けると、Baiduは今年初めにハードウェアをアップグレードしたAndroid TVベースのセットトップ・ストリーミングボックスであるNvidia Shield TVに、DuerOSを追加する予定だ。DuerOSは、SiriやGoogle Assistantに似た仮想アシスタントで、以前スマートホームスピーカーやデバイス向けに発表されていたものだ。Shield TVは今後のアップデートによって、Google Assistantのサポートを受ける予定だ。Nvidiaはまた、最終的に家庭内に展開可能なスマートホームマイクを提供して、DuerOSでも動作可能な機能を提供する。

これはNvidiaにとって大きな勝利であり、現代のAIコンピューティングにおける最も重要なパートナーシップの1つが出現する可能性がある。両者はこれまでも協業してきたものの、今回の提携はAIの将来の成長が見込まれる潜在的な分野すべてにパートナーシップの幅を広げるものだ。

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(翻訳:Sako)

Obama Foundationがデジタルの市民社会という未踏の課題/問題にクラウドソーシングで挑戦を開始

Obama Foundation(オバマ財団)が、その初めての公式声明の中で、デジタル世界の市民権ないし市民性という概念を吟味検討するよう呼びかけている。

デジタル世界への参加と、そこで良き市民であることは、オバマ政権の重要なテーマだった。そしてそれは、世界市民として一私人となった今も、中心的な関心であるようだ。

今年の初めにシカゴ大学で行った講演で、まだ大統領だった彼はこのテーマに触れた:

“今は、誰もが、すでに自分たちと同意している人びとの話だけを聞く、という状況がある”。

人びとはソーシャルメディアと、インターネットのグローバルな伝達力を利用して、“自分たち自身の現実を強調し、健全な議論を通じて共通の基盤を見つけソリューションを実際に前進させていくための、共通の現実を無視している”、と元大統領は述べた。

そして今回、彼の団体は、私たちのデジタル世界における行いを正していくための、会話を始めよう、と呼びかけている。

以下は、当団体のCDO(chief digital officer) Glenn Otis BrownがMediumに投稿した記事の一部だ:

目の前に大きなチャレンジがあり、その解は自明でない。では、どこから話を始めようか? 最初のステップは、問題を同定しそれらについて話すことだろう。オープンに、一緒に、この同じチャネルを使って。しかしそれは、前向きに、そして配慮を伴って使わなければ、最初から機能不全に陥ってしまう。

簡単な自問自答から、考えをスタートしてみよう。答を私たちのサイトにポストしてもよいし、ご自分のお考えをソーシャルメディア上の#DigitalCitizenでシェアしてもよい。あるいは独自のコンテンツを作って、それをみんなと共有しよう。それらに対応してこの記事も今後徐々にアップデートし、広げていきたい。もちろん、あなたご自身の質問を投稿してもよい。

  1. あなたの世界では誰がデジタル市民のモデルか? それはなぜか?
  2. あなたのオンライン生活で、どんな習慣を変えたいか? ほかの人たちに勧めたいやり方は何か? “デジタルの健康”を改善するために、簡単にできることは何か?
  3. 誰あるいはどの団体が、思想や個性など、あなたが重視するものの違いを受け入れるという意味で、デジタル市民の好例と言えるか?

では最初の一歩として、最初の質問へのぼくの答を言おう。ネット上の市民の好例とぼくが考える人物は、Zeynep Tufeckiだ。Zeynepは、難しい技術的な問題を一般の人に分かりやすく説明する名人だ。彼女は自分の個人的な体験と職業的な体験をベースに、社会的な問題に答えようとしている。とくに重視するのが、セキュリティと民主主義とテクノロジーが交わる部分の話題だ。ただし個人的な感情などは持ち込まない。彼女は学者だが、実践の経験も豊富だ。そしてとても感情的な話題のときでも、ユーモアと謙虚さを忘れない。

あなたのお答えは、私たちのサイト宛でもよいし、お好きなソーシャルチャネル上でもよい。あなたのお声を、ここに加えてほしい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Virgin Galactic、動力飛行テストを再開――2018年には商用宇宙旅行開始を目指す

Virgin Galacticが宇宙往還機の動力飛行のテストを再開する。2014年に副操縦士のMichael Alsburyが死亡した悲劇的事故以来SpaceShipTwoのの動力飛行は中断されていた。テストの再開はVirgin Galacticのファウンダー、リチャード・ブランソンがBloombergのインタビューの内容を共有したことで確認された。

現在実施中の滑空飛行の結果が集約された後は、3週間に1回のペースで動力飛行が行われる予定だ。テストは徐々に高度を上げ、今年11月か12月には宇宙との境界となる高度まで飛行するという。すべて順調に運べば、2018年半ばにブランソン自身が最初の乗客となって最初の宇宙飛行を行う。ブランソンは最終的にはこの機体で有料商用宇宙旅行を実現させようとしている。

2014年の事故以来、沈黙していたVirgin Galacticだが、今回初めて具体的な商用宇宙旅行計画が明らかにされた。ブランソンはBloombergに対し、計画の遅延とジェフ・ベゾスのBlue Originやイーロン・マスクのSpaceXなど民間宇宙企業の躍進にもかかわらず、「(ライバルがいくらあろうと)十分な数の宇宙旅行機を製作することはできない」と需要が旺盛であることを強調した。

Virgin Groupは現在Virgin Orbitとよばれる衛星打ち上げとロジスティクスを行う会社を所有している。同社は最近VSS Unityと呼ばれる機体の滑空実験を行い、成功させている。今後動力飛行の実験に移り、最終的にはこの機体から小型衛星の打ち上げを成功させたい考えた。

〔日本版〕Virgin Orbitの機体は専用のボーイング747、Gosmic Girlに背負われて成層圏に上がり、動力飛行して衛星を放出、軌道に乗せることが目的。SpaceShip IIは弾道軌道の有人商用宇宙飛行が目的で、双胴タイプのジェト機に吊り下げられ、上空で分離する。下は事故前にVirgin Galacticが公開したビデオ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Lyft、1日当たり乗車回数100万回を達成

Lyftは1日当たりの乗車回数100万回を達成した。現在同サービスは米国でのみ利用できる。Uberは全世界での乗車100万回を2014年12月に発表した。2016年7月、Uberは1日平均550万乗車を記録、先週には累計乗車50億回に達した。

つまり1日当たり100万回はLyftにとっては快挙だが、Uberが日々達成している乗車回数には遠く及ばない。もちろん、ここ半年あまりUberを取り巻いている騒動によってそれが変わる可能性がある。

さらにLyftは、乗車回数が48カ月連続上昇中で、年間推定乗車回数3.5億回に達するペースだと話した。

「この重要な成長の節目は、世界最高の輸送手段によって人々の生活を改善するという、われわれの何年にもわたる飽くなき努力の結果だ」とLyftの共同ファウンダー、John Zimmerが本誌宛ての声明で語った。「毎日、Lyftを選ぶドライバーや乗客が増えているのは、われわれがあらゆる行動の中でホスピタリティーとサービスを心がけているからだ。サービスレベルで対等になった今、Lyftの経験が決定的な差別化要因になるはずだ」。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

チャレンジャーバンクの波が法人にも――仏Qontoが1130万ドルを調達

フランス発のスタートアップQontoが、既存株主のValar VenturesAlven Capitalから新たに1130万ドル(1000万ユーロ)を調達した。現在彼らは法人向けサービスも提供しており、ウェブサイトからフランスの法人口座を簡単に開設することができるようになっている。

Qontoの目標はN26の法人版のような存在になることだ。リテールバンキングはここ数年間そこまで大きな変化を見せていないが、ビジネスバンキングの状況はさらに悪く、昔からほとんど何も変わっていない。手数料は高く、何をするにも時間がかかってしまう。

同社のサービスはデスクトップ版とモバイル版の両方が準備されており、ユーザーは口座への送金・入金を含め全てを管理することができる。利用料はフランス銀行口座(IBANも付与される)にMasterCardが1枚付いて月額9ユーロだ。

もしも新しいカードが必要であれば、1枚あたり月額5ユーロ、さらにバーチャルカードであれば月額2ユーロで発行できる。ユーザーの管理も一括で行えるため、新しい営業担当者を雇った際には、新しいカードの発行を依頼するだけでよく、モバイル端末やパソコンからその明細を確認できる。

さらにモバイルアプリには、カードのブロックや解除、暗証番号の変更、カードが使われたときにリアルタイムで通知を送る機能が搭載されているほか、限度額の変更や会計会社との明細共有も簡単に行える。

レシートをアップロードして対応する経費に紐付ける機能などもこれから導入される予定のため、会計会社や経理担当者は大助かりだろう。他通貨での送金プロセスも今後簡素化されるようだ。

今後Qontoの口座はStripe、PayPal、GoCardlesといったサードパーティーのフィンテックサービスとも接続される予定で、ユーザーはさまざまなプラットフォームの支払情報を一括管理できるようになる。

Qontoはバックエンドの処理をパートナー企業のTreezorにアウトソースしており、彼らがユーザーのお金を実際に動かしている。また、当座預金口座の開設やデビットカードの発行もTreezorが行っており、Qontoはユーザーエクスペリエンスや顧客との関係維持など、フロントサイドの業務を担当している。

細かな違いはありながらも、フランスのiBanFirst やアメリカのSeed、イギリスのTideなども似たようなサービスを提供しており、Tideは昨日1400万ドルを調達したと発表したばかりだ。市場の細分化が進んでいるように見える一方で、このような大型資金調達のニュースを聞くということは、法人向け金融サービスに大きなチャンスが眠っているということなのだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

仮想通貨急騰の背景に中国と日本の影――動き始めた政府と大手企業

【編集部注】執筆者のHugh Harsonoは元金融アナリストのアメリカ陸軍将校。

仮想通貨の価格がここ最近急上昇しており、特に過去数か月間はその傾向が市場全体に見られた。

主要通貨のビットコイン、リップル、イーサリアムは全て値上がりし、ビットコインは2588ドルの高値をつけたほか、リップルとイーサリアムの時価総額はそれぞれ100億ドル、200億ドル前後まで上昇した。

日本と中国は仮想通貨の需要・供給量が桁違いに多く、この価格上昇にも大きく関係している。

出金規制で揺れる中国

ハードウェアと電気料金の安さから、中国はマイニングのメッカとなった。BTCCをはじめとする取引所が運営する巨大なマイニングプールの力もあり、ビットコインネットワークの合計ハッシュレート(採掘速度)の60%は中国によるものだ。

しかし、今年はじめの中国当局による取り締まりの結果、投資家は各取引所から資金を引き出せなくなってしまった。中国は世界でも有数のビットコイン取引量を誇っているため、この影響は市場全体にまで及んだ。

先月には引き出しに関する規制緩和の話が浮上し、中国の経済紙CaixinはOKcoinHuobiBTCCで出金が再開される可能性があると報じていた。この報道を受けて、中国の消費者の間には仮想通貨に対する安心感が再度広がり、価格上昇に繋がった。

中国の穴を埋める日本

中国で仮想通貨の流動性が下がったことにより、日本のビットコイン市場は大きな盛り上がりを見せ、需要が膨れ上がった。

それまでビットコインの取引量全体における日本の割合は1%前後だったにもかかわらず、最近ではこの数字が6%近くまで伸び、日によっては全体取引の約55%が日本で行われていることもある。中国での規制を背景に日本での取引量が増加したことで、グローバル仮想通貨市場も勢いづいた。

Distributed ledger technology , bitcoin icon with hexagonal symbol blue background , cryptocurrencies or bitcoin concept , flare light , 3D illustration

規制対策としての仮想通貨

人民元が中国政府によって厳しく管理されているのも、空前の価格上昇と関係している。中国政府は中国元の価値を完全にコントロールしており、以前から必要に応じて通貨の切り下げを行い国際的な競争力を保ってきた。

しかし、中国で個人資産が増加するうちに、代替資産としての仮想通貨の側面に注目が集まり始めた。つまり、仮想通貨はアクセスがしやすい上にボラティリティが低く、安定性も増してきたと中国の人々は考えており、その結果が価格に反映されているのだ。

一方日本では、日本銀行の量的緩和政策による金利低下(さらにはマイナス金利)も仮想通貨の価格高騰に繋がったと考えられている。

もともと量的緩和は経済成長を促すための政策だったが、日本円の価値は大きく下がり、投資家も日本円への投資を控えるようになった。出口の見えないこの金融政策を背景に、仮想通貨は代替資産として注目を集め、価格が上昇したのだ。

現地の投資家も予想がつかない政府の介入を危惧し、仮想通貨に逃げ道を見出している。

大手機関による仮想通貨の受け入れ

関係機関が仮想通貨を受け入れ始めたということも、価格上昇と大きく関係している。中国の杭州市で最近行われたGlobal Blockchain Financial Summitには、北京大学をはじめとする大学や金融機関などが大きな興味を寄せていた。なお、北京大学は現在イーサリアム研究所を発足しようとしており、そこでは同通貨のプロトコルの改善やアプリケーションへの応用に関する研究が行われる予定だ。

中国人民銀行(PBoC)の下部組織で、金融システムの電子化をミッションとしているRoyal Chinese Mintは、積極的にブロックチェーン技術の採用を提唱しており、予算と人員を一部を割いて人民元の電子化にまで取り組んでいる。

日本でも大手機関が仮想通貨を決済手段として認め始めており、日本全体での利用に耐えうるか調査が行われている。民間レベルで言えば、日本最大の取引所であるbitFlyerには、三大メガバンクの三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行が出資している。

消費者/小売レベルでいえば、ビックカメラがbitFlyerとパートナーシップを結び、一部店頭での決済手段としてビットコインの導入を決めた。さらにリクルートホールディングス傘下のリクルートライフスタイルも、コインチェックと呼ばれる取引所と共同で、モバイルペイメントサービスをローンチすると発表した。このように大手企業での採用が進むことで、仮想通貨は日常的な決済手段としてだんだん日本国民にも受け入れられつつあるようだ。

上記のような中国と日本の大手機関による仮想通貨の受け入れも、仮想通貨全体の価格上昇につながっている。

政府による仮想通貨の受け入れ

中国政府が仮想通貨の規制に乗り出したことで、数か月前にはビットコインの価格が1000ドル前後まで落ち込んでしまった。

しかし、PBoCによる規制の動きは、決済手段としての同テクノロジーの力を物語っているとも言える。さらに中国政府は独自の電子通貨さえ作ろうとしているのだ。

ビットコインの出金規制緩和の可能性に関する発表以外にも、PBoCは最近ブロックチェーンを利用した独自の仮想通貨の実験を終えた。この実験には中国初のオンラインバンクであるWeBankのほかにも、中国銀行や中国工商銀行など大手金融機関が参加していた。

日本政府も今年の4月1日からビットコインを正式な決済手段として認め、入札手続きへの仮想通貨導入に向けて動き出した。

さらに日本は中国に先駆けて取引所の登録制度を導入し、仮想通貨を金融庁の監視下におくことを決定した。bitFlyerをはじめとする大手取引所は既に申請済みのようで、制度面が整備されたことを受け、今後さらに日本国内外の仮想通貨取引が加速することになるかもしれない。

また、新しい資金決済法のもとでは仮想通貨に消費税が適用されないため、ビットコインの投資対象としての魅力がさらに増すことになる。

中国では独自通貨の開発が進められ、日本ではビットコインが正式な決済手段として管理されるようになるなど、両国で仮想通貨が受け入れられはじめたことで、市場は今後さらに盛り上がっていくだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

機械学習のDeepMind、国際展開を開始――最初の海外オフィスはカナダのアルバータ州エドモントンに

Alphabetの人工知能企業、DeepMindは本拠であるイギリスから海外への展開を開始した。最初の海外オフィスはカナダのアルバータ州エドモントンに置かれる。アルバータ支社はアルバータ大学と緊密に連携して調査・研究に当たる。

リーダーはアルバータ大の研究者、Rich Sutton、Michael Bowling、Patrick Pilarskiらとなる。最近、カナダでは人工知能開発に力を入れており、大学人が教育、研究を続けながら民間企業のプロジェクトにも貢献できる道が開かれつつある。これはその一例といえるだろう。

Sutton、Bowling、Pilarskiに加えてAdam Whiteも非常勤教授としてアルバータに戻りチームに参加する。またノーリミットのテキサス・ホールデムで人間のプロ・ポーカー・プレイヤーを破ったことで話題になったAIシステム、DeepStackの共同研究者6人もメンバーとなるという。

アルバータ大学との取り決めにはDeepMindが研究資金の提供を続けることが含まれる。Googleカナダのコミュニケーション担当ディレクターAaron Brindleは「この提携の目的は世界的にトップレベルの研究者をもっと大勢アルバータに引きつけることにある。これによって〔アルバータ大学の所在する〕エドモントンをテクノロジーのハブにしたい」と述べた。

DeepMindのアルバータ・チームのリーダー3人はいずれも「成功した方法を繰り返し、失敗した方法を避ける」という人間の学習方式をコンピューターにシミュレーションさせる方法を研究している。Sutton教授はまたDeepMindが2014年にGoogleに買収される前にの会社の最初のアドバイザーとなっている。アルバータ大学のメンバーは世界チャンピオンを破ったAI碁のAlphaGoやAtariのゲームを学んでプレイするAIシステムの開発にも参加していた。

画像: DeepMind

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Rokokoから低価格モーションキャプチャースーツ――バレリーナがTCスタジオでデモ

新しいスタートアップ、Rokokoはゲーム制作者やインディーの映像作家のために手頃な価格で入手できる高品質なモーションキャプチャー・スーツを開発した。

ハリウッドやテレビ局のスタジオではグリーンバックの前でスポットマークを付けた専用スーツを着た俳優やスタントマンがさまざまな動作を撮影されている場面を見たことがあるだろう。RokokoのSmartsuit Proはこれらとほとんど同様の精度で、かつインディー映像作家にも入手可能なモーションキャプチャー・スーツを提供する。予定価格は2500ドルだ。

Rokotoの製品は見たところニンジャのコスチュームのようだ。19個のジャイロセンサーを内臓しており、着用者の動作を記録する。このスーツには専用のソフトウェアがバンドルされているが、取得されたデータはUnity、Blender、Mayaなどポピュラーなアニメーション・プラットフォームにエクスポート可能だ。

ファウンダーのJakob Balslevは8年の経験をもつベテラン映像作家でもある。Rokotoは最初の予約分、300着の出荷を開始したところだという。Baslevによれば、スター・ウォーズの撮影にも関わっているプロを含め、多くのビッグネームが購入しているという。

Baslevはサンフランシスコ・バレエのプリンシパルの一人、Fran Chungと共にTechCrunchのスタジオを訪問してデモを披露してくれた。Chungの驚くべきバレエの動作がどのようにアニメーションに変換されるか上のビデオをご覧いただきたい。このスーツの能力がよくわかると思う。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ボルボ、電気自動車およびハイブリッドへの完全移行をアナウンス

ボルボがこれまでの歴史に区切りをつけることとなった。ガソリンのみで動作する従来型エンジンに別れを告げることにしたらしいのだ。2019年からは、全車種を電気自動車(EV)ないしハイブリッドにするそうだ。従来型エンジンを使わないようにするとアナウンスした自動車メーカーは、今回のボルボが最初となる。

ガソリン燃焼エンジンが消えていくのは、歴史の必然ではあるのかもしれない。電気自動車やハイブリッドの原価は下がり、さらに性能も大幅に伸びてきているからだ。各社ともに、新しい技術に対応するために多大な投資を行なっているところでもある。しかし今回の、2年以内に完全移行するというのは驚きであり、すくなくともボルボの考えとしては、新時代は私たちの想定よりもはやくやってくるようだ。

ボルボは、2025年までに電気自動車およびハイブリッド車を100万台売り上げるという目標を掲げてきていた。19年から全車種を新時代エンジンに変更するのであれば、当然にその数値も現実味をおびてくる。また、2019年から2021年にかけては、ポールスターのものを含めて5種類の電気自動車およびハイブリッド車を送り出すとしてもいる。ポールスターとはボルボの高級車ブランドであり、2車種をポールスターからリリースすることで、Teslaとの競合として育てていく心づもりでもあるようだ。

車に対する環境規制が強化される流れの中で、電気自動車の費用対効果は間違いなく向上している。国際市場でも排ガス規制などが強化される中、ボルボの親会社である吉利汽車(Geely)がある中国でも、電気自動車へのニーズが高まりつつある。そうした規制面の話だけではなく、パーツの低価格化も進んでおり、バッテリーのコンパクト化および大容量化も急速に進んでいる。

ハイブリッド車も生産するとはいえ、一気に電気自動車にシフトしようとするボルボの動きは、将来マーケットでのリーダー的ポジションを狙ってのものだろう。他のメーカーも新時代へのシフトについて口にしてはいる。しかしボルボは口先だけの「検討」ではなく、実際的で大胆な変革を実現しようとしているわけだ。

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(翻訳:Maeda, H

アメリカへ向かう旅客のラップトップ持ち込み禁止がEtihad、Emirates、Turkishの三社で解除

アメリカ政府は、多くの論争を招いていた航空機へのラップトップ持ち込み禁止を、三つの主要エアラインに対して解除した。

解除が即刻有効になるのは、Etihad AirwaysEmirates Airline、そしてTurkish Airlinesだ。これらの中東からアメリカへの便では、ラップトップやタブレット、eリーダーなどの電子機器の持ち込みが許される。残る6社(Royal Jordanian, EgyptAir, Turkish Airlines, Saudia, Kuwait Airways, Royal Air Maroc, Qatar Airways, Emirates, Ethiad Airways)は、禁止が持続する。

国土安全保障省は、3月に禁令を公布した。禁令は中東の10の空港からアメリカへ向かうすべてのフライトに適用され、それには重要な空路ハブであるドバイ、アブダビ、ドーハ*(カタール)も含まれる。〔*: 原文ではDoharとなっているが、間違いであろう。〕

今日のデジタル時代においてそのような禁令は先例がなく、国の安全を強化するための策である、として正当化された。

お役人たちからの、具体的な脅威に関する説明はなかったが、諜報活動の結果として、一部のテロリスト組織が消費者電子製品に爆発物を隠してひそかに旅客機内に持ち込むおそれがあるための決定、とされた。

これら政府高官たちによると、2016年2月の、ジブチからモガジシオに向かうDaallo航空159便の墜落は、この種のデバイスによるもの、とされた。今日の禁令を1年以上前に起きた事件で説明するのは、ちょいと厳しいのではないかな。

実際には、この禁令は実施が困難だった(中東からアメリカまでのフライトに乗ったことのあるぼくが言うのだから間違いない!)。 空港における通常のチェックインと違って、それは形式化されていないので、行列でむやみに時間を浪費した。荷物のチェックが通常のチェック以外に繰り返され、見つかった電子機器はひとつひとつ箱に入れられた。

同様の禁令がヨーロッパからアメリカへ向かう便にも適用されるという噂もあったが、実現はしなかった。今回一応、数社で解除されたのだから、適用範囲が今後広がることはないだろう。でも2017年のアメリカ政府の現状を見るかぎり、何が起きても不思議ではない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

イベント管理・チケット販売のPeatix、ユーザー数210万人超・流通総額110億円に成長

Peatix」は、ウェブやアプリでイベントやコミュニティの運営・管理から、チケット販売・集客まで行えるサービスだ。Peatixを運営するPeatix Japanは7月5日、Orinoco Peatixからの社名変更を発表するとともに、ユーザー数の推移や流通総額、海外市場への展開状況を公開した。

Peatixは2011年5月に、前身となるOrinocoが日本国内でスタートしたサービス。2011年12月にグローバル展開を目的に本社を米カリフォルニア州に移して米国法人を設立、それに伴って日本法人をOrinoco Peatixとして日本での事業を継続してきた。

Peatixは、2013年のシリーズAラウンドで300万ドルを調達し、米国法人をニューヨークに移転してサービス開発・グローバル展開を進めたほか、同年7月からシンガポールでも正式にサービスを開始。また、2014年8月にはマレーシア法人を設立している。2015年3月にはシリーズBラウンドで、デジタルガレージを筆頭に総額500万ドルの調達を行っている。

現在、海外では27カ国でサービスを展開しており、流通総額に占める海外の比率は30%。日本国内で開催されるイベントでのインバウンド利用もあるという。

2011年のサービス開始以来、これまでに20万件以上のイベントで利用されてきたPeatixは、2017年7月現在、イベント主催者数が5万5000人を超え、参加者を含むユーザー数は210万人を超えたという。また、これまでのイベント総動員数は370万人超、流通総額は110億円となっている。

Peatixはもともと、勉強会など同好の士が集まるコミュニティを管理する機能を中心に、小規模イベントをターゲットとしたサービスとしてスタートしているが、野外ロックフェスティバル「RISING SUN ROCK FESTIVAL」のチケット販売など、大規模イベントでの採用も増やしている。

また、昨今問題となっているチケットの高額転売にも対応し、2016年12月にはチケットの公式再販機能をリリース。再販チケット価格の上限を主催者が設定したり、定価以上での再販チケット取引の利益を主催者と再販者とで分配できる仕組みをオプションで追加している。

Fintech企業向けにマーケットデータをAPIで提供、米Xigniteが日経グループと組んで日本上陸

ロボアドバイザーやネット証券企業にとって、基礎データとなるマーケットデータはどこにあるか? 例えば、特定企業の株価は今いくらか? 為替は? 金利は? 実はこれはとてもむずかしい問題で、ほかのインターネットの情報のように、パブリックにアクセスできるもの、かつAPIベースで取れるものというのはほぼ存在していない。東京証券取引所やニューヨーク証券取引所とダイレクトに繋いで使用料を払い、そこと「繋ぎ込み」を作ることになる。

2003年に創業した米Xigniteは、まさに、こうした問題に直面したFintechスタートアップの草分け的な存在だ。Xigniteは各国のマーケットからデータを正規に持ってきてアグリゲートし、これをAPIベースで使いやすく提供しているスタートアップ企業だ。

来日中のXignite創業者でCEOのStephane Dubois氏にぼくが聞いた話では、もともと2003年の創業時には資産運用の会社を作る予定だったそうだ。ところがマーケットデータを探してみたらYahoo Financeくらいしかデータがなく、仕方なくスクレイピングしていた。プロトタイプを持ってVC周りをするなかで、APIベースでのマーケットデータ提供のニーズに気づき、当初の創業理由からピボットした形だという。Xigniteは今や累計36億ドルの資金調達をし、年間1.5兆回のAPIリクエストをさばくFintech企業向けサービスに成長している。利用顧客は欧米を中心に1100社数で、モバイル証券のRobinhoodやロボアドバイザーのWealthfrontやBettermentのほか、Charles Schwabなど老舗金融機関も含まれるという。提供中のマーケットデータは40カ国となっている。

XigniteのDubois氏によれば、異なるマーケットのシステム的な繋ぎ込みの煩雑さをなくせるのが価値という。ネットでデファクトスタンダードとなったREST+JSON形式のAPIを使うことができ、リアルタイムにデータをモバイル端末上のアプリから直接引っ張るようなコードが書ける。エンドユーザー向けに情報提供をしているFintech企業であっても、マーケットデータを取得して自社サーバ(クラウド)に保持する形を取る必要はなく、ウェブアプリのフロントエンドやモバイルアプリからXigniteのデータを直接取得する形にすることで、システムの開発や運用を簡素化できる利点がある。各国証券市場の技術仕様が標準化されておらず、そこのアグリゲートを行う水平分業を行っているのがXigniteと言えそうだ。

そんなXigniteは今日、日本経済新聞社グループで金融情報サービスを提供しているQUICKと共同サービス「QUICK Xignite APIs」の提供を開始した。国内外の株式や投信、為替、金利など、投資や資産運用向けFintechサービスに必要となるマーケットデータをAPIベースで利用できるようになるという。日本やアジアをはじめ世界のリアルタイム金融情報、ヒストリカル情報を提供する。ちなみに、Xigniteはクラウドベースなので、いわゆる高頻度取引には使えないが、ある程度の遅延があるデータ、ほぼリアルタイムのデータなど複数のAPIが用意されていて料金体系が異なるそうだ。なお、QUICKは2016年2月にXigniteへの出資を発表している

ルネサス出身者が設立した不揮発メモリーベンチャーのフローディアが16億円を調達

不揮発メモリーのIPライセンス事業を展開するフローディアは7月5日、シリーズBラウンドで合計9社の投資家から16億円を調達したと発表した。投資家リストは以下の通り:

ルネサスエレクトロニクス出身のエンジニアが設立したフローディアの特徴は、そのビジネスモデルにある。

同社は、メモリ製造に必要な工程や回路をIP(回路情報や製法)としてライセンス提供するビジネスモデルを展開している。つまり、顧客からの要求スペックに応じた最適なメモリの開発設計を行う一方で、その先にある製造は自社で行なわず、製造に必要な情報をライセンスとして売り出すモデルだ。

フローディアと同様に知的財産をもとにしたビジネスモデルを展開するのが、2016年9月にソフトバンクが約3.3兆円をかけて買収したAMRで、このようなモデルは資本効率が極めて高いとされている。参考として紹介すると、ARMが発表した最新の決算報告によれば、その営業利益率は48%となっている。

不揮発メモリー開発に強み

フローディアが得意とするのは、電源供給を行なわない状態でも書き込まれたデータが消えない不揮発性メモリー(参考)の開発だ。また、同社は追加コストを抑えながら不揮発性メモリーを他の演算用半導体と同じチップに埋め込む技術をもち、これにより低コスト化と省スペースを実現している。

さらに、ゲートと基盤のあいだに高電圧をかけて不揮発メモリー化させる”FNトンネル方式”を利用したフローディアのメモリーは、セル1個あたりの消費電力が従来の10〜100万分の1程度に抑えられているそうだ。

このような省スペース、省電力という特徴から、フローディアが開発する組込型不揮発性メモリーはIoTデバイスや車載用部品などへの利用に適しているという。

本ラウンドに参加した産業革新機構の代表である勝又幹英氏は、「フローディアが開発・提供する組込型不揮発性メモリは、省電力・省スペース・低コスト化の要求を確実に実現することにより、車載アプリケーションへの対応に加え、従来の組込型不揮発性メモリの適用領域を大きく超える可能性を持っている」と語る。

2011年創業のフローディアは、2015年6月に産業革新機構などから8億円を調達している。同社によれば、「これまでの開発成果を事業に拡大すること」が今回のラウンドを実施した目的だ。

モバイルウォレットのCurve:どのカードに請求するかを「時間を遡って」あとから変更できるようになった

モバイルウォレット兼all-in-card-in-one(全てのカードを一箇所に)アプリであるCurveは、支払いに使用したカードを、遡って切り替えることができる素敵な新機能の展開を始めた。

大胆にも「Financial Time Travel(金融タイムトラベル)」と呼ばれている、当初ユーザーたちの要求で始まり現在パテント出願中のこのオプションは、特定の買い物に対して、ユーザーがCurveに関連付けている銀行やクレジットカードの中からどれを使うかを、最大2週間以内なら変更できるというものだ。

たとえば、あなたの経費勘定のクレジットカードではなく、あなたの個人口座のデビットカードに誤って仕事の昼食を請求をした場合、単純に「時間を遡って」Curveが請求の取り消しや払い戻しを行い、正しいカードに請求し直してくれる。

なぜこれが重要で、本当に必要なものなのかを理解するために、Curveの中核サービスを要約しよう。このモバイルウォレットでは、デビットカードとクレジットカードを、MasterCardと提携したCurveカードと共にアプリにリンクすることができる。Curveアプリを使用すると、オフラインまたはオンラインで行う支払いのためにCurveカードを他のカードの代理として振る舞わせることが可能になる。つまり物理的に持ち歩くカードはCurveカード一枚で済むということだ。

しかし、問題は、Curveで何かの支払いを行なったものの、どのカードが現在請求先に設定されていたかを忘れていた場合だ。あるいは更に悪いことに、携帯電話の受信状態が悪い地域にいるために、購入前にCurveアプリを使って請求先カードを切り替えることができない場合もある。今回登場した新しい機能は、両方のケースを緩和するものだ。

もしあなたがこれまでに、Curveの共同創業者でCEOのShachar Bialickと時間を過ごしたことがあるならば、特に驚きはないかもしれないが(何しろ彼は1時間のうちに話が遥かに進み、常に3歩先を考えているのだ)、実はこの先には更に大きなビジョンが控えているのだ。「時間を戻り」遡及的に支払い元を変更する能力は、将来的には異なるクレジットカード提供者をお勧めするチャンスをもたらすのだ。

例えば、Curveは、ユーザーが高額商品(例えば新しいテレビ)を購入しようとする際に、クレジットカード枠が足りないことを検知して、他の低金利の「事前承認済み」ローンに切り替えることが可能だ。これは銀行や他のクレジットソースとの提携することで可能になる。

この先提供される予定のCurveの機能”Curve Connect”とうまく連携して、アプリは他のフィンテックもしくはデジタルファイナンスサービスとの接続を始めることになる。これはCurveのロードマップ上に載せられたフィンテック集約戦略(fintech convergence strategy)を実現するものだ。長期的には、Curveはお金に関する管理を一手に引き受けるプラットフォームになりたいと考えている。本質的には、ユーザーがコントロールを手にして、自由にパートナシップを結べるように、金融サービスを再バンドルしようということだ。

一方、Curveは最近、5万人を超える加入契約を締結したことを発表した。また、Curveアプリによって5千万ポンドの支払いが処理されていることも発表されたが、月間アクティブユーザー数は公開されていない。スタートアップのシリーズAは数週間以内に公開される筈だ。同社には既に、Seedcamp、送金スタートアップTranferWiseを共同創業したTaavet Hinrikus、Challenger Bank TandemのRicky Knoxといった多数の著名投資家が名を連ねている。

こうしたものが好きな人のために、最後にCurveのファンシーなプロモーションビデオを紹介しておこう:

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(翻訳:Sako)

AI活用で企業は儲かる、2035年までに各業界で平均38%の増収――アクセンチュアのAIレポート

AIは人間から仕事を奪うのか?それはどうなるかまだ分からないが、アクセンチュアの調べによると、少なくとも企業はAIを活用することで、2035年までに16業界で平均38%の増収が見込めるという。

本日、アクセンチュア・リサーチは、フロンティア・エコノミクスと共同でAIが経済に与える潜在的なインパクトについてレポートをリリースした(全文レポートは英語)。

このレポートでは先進国12ヶ国における16の業界を分析している。AIの活用が進まなかった場合を「ベースラインシナリオ」、AIが市場に浸透して経済成長をもたらした場合を「AIシナリオ」としてモデリングし、各業界にAIがもたらす経済的な影響をGVA(粗付加価値)を指標に算出している。

2035年時点の年間GVA成長率を、ベースラインシナリオとAIシナリオで比較

 

アクセンチュアによると、GVA成長率が最も高い業界は、情報通信(4.8%増加)、製造(4.4%)、金融サービス(4.3%)だ。16業界で伸び率が最も低いと予想される教育業界でも1090億ドル(約12兆4000億円)、社会福祉業界で2160億ドル(約24兆5000億円)のGVAの増加が見込まれている。全業界を加重平均すると、2035年までに経済成長率を平均1.7%向上できる可能性があるという。

ベースラインシナリオと比較した場合の、2035年時点におけるAIシナリオの利益配当金の増加率

 

レポートにはAIを活用する企業の収益のインパクトも掲載している。グラフを見ると全業界で増収が見込まれているのが分かる。卸売・小売業では、AIが人間の労働力を補うことで生産性が高まり、59%の増収が可能となるという。また、製造業では、機械にAIを搭載することで誤作動やダウンタイムが減りることで利益率が高まり、39%の増収が可能になると予測している。

AIは少なくとも3つの要素により経済成長をもたらす、とアクセンチュア・リサーチのマネジング・ディレクターを務めるMark Purdy氏はレポート(英語版)で指摘している。

「1つは、AIは新たな仮想の労働力を創造することができるためです。私たちはこれを「知的なオートメーション」と呼んでいます。2つ目は、AIは既存の労働力や物的資本のスキルや能力を補完したり、高めたりすることができます。3つ目は、これまでに登場したテクノロジー同様、AIは経済にイノベーションをもたらすことです」

Microsoftは全世界の営業“数千名”をレイオフへ、クラウドへますます注力

Microsoftは、営業再編成の動きとして、全世界で数千人の社員をレイオフする構えだ。

この計画的縮小について詳しい筋の情報によると、このアメリカの企業がレイオフするのは、世界全体で“数千人”だ。このリストラには、大企業担当部隊と中小企業担当を合一するなど、組織再編も含まれる。正式な発表は来週だそうだ。

Microsoftは、コメントを拒否した。

今週(6/25-7/1)初めにPuget Sound Business JournalBloomberg、そしてThe Seattle Timesの三紙が、Microsoftの世界全体の営業チームにおいて、クラウドサービスがますます強調されるに至り、その関連で大規模なレイオフがある、と報じた。とくにBloombergは、余剰人員は“長年営業部隊においてもっとも多かった”、と言っている。

再編は昨年の、トップ交代の結果でもあるようだ。長年勤めたKevin Turner COOが8月に去り、代わって役員のJudson AlthoffとJean-Philippe CourtoisがMicrosoftの営業とマーケティング部門を引き継いだ。とくにAlthoffは、それまでの営業のやり方をおおっぴらに批判していたし、彼はあくまでもAzureに注力しようとしていた。

ともかく、これまでの経緯を見れば、変わってもよい頃合いだ。Microsoftの会計年度はふつう7月に終わるが、最近の数年間はそれが人員削減を発表するタイミングでもあった。

昨年同社は、2850名のカットを発表し、Seattle Timesによれば内900が営業だった。そしてその2か月前(2016/05)には、同社のスマートフォン事業関連のスタッフ1850名を整理する、と言っていた。その前の2015/07月には、7800名の雇用カットとNokia買収の76億ドルの簿価切下げを行った。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

AI分野以外では、企業は研究よりも開発に重点を置いている

もしAIの世界のニュースを追い続けてきていたならば、企業は純粋な研究から撤退するどころか、倍賭けしようとしているという誤った印象を受けているるかも知れない。しかし現場の事情はもっと複雑だ、ハイテク企業はR&Dのうち、D(開発)の部分により多くの資金を使い、変化をもたらす研究に関しては、資金に乏しい大学に依存している。

デューク大学Fuquaビジネススクールの、新しいデータ視覚化プロジェクトであるGolden Goose Project(金のガチョウプロジェクト)は、企業内そして広範な生態系の両方で、どのように研究が適用されているかを定量化するデータだけではなく、パテントと研究成果の統計も用いることで、このパラダイムシフトを強調しようとしている。

例えば、IBMの特許件数は継続的に増加しているが、従業員の名前を連ねた論文の数は1992年をピークに減少を続けている。

しかし、こうしたすべてのデータは企業内研究の減少を示しているものの、決して企業が革新的ではなくなって来ているということを示している訳ではない。そうではなく、研究の展開を促進するための新しいパイプラインが開かれているのだ。

スタートアップは、研究を商用化し、それを既存の企業へと持ち込むためのエンジンとしての役割がますます高まっている。総合的にみれば、スタートアップは研究そのものにはほとんど貢献していないが、新興技術を魅力的にするための大切な役割を果たしている。

残念なことに、革新を支える大学のバックボーンは、政治的関心事に包囲されているように見える。研究は連邦政府から大きな助成を受けている。ゲイツ財団やチャン・ザッカーバーグ・イニシアチブのような個人の慈善団体は、この空白を埋める手助けをしてくれるが、そうしたグループにもできることには限界がある。

影響が少ない幸運な研究分野は、人工知能だ。GoogleによるDeep Mindの5億ドルでの買収のような、研究グループの巨額買収は、内部的なAI研究をより多く行いたいという業界全体の要望を表している。この渇望は、企業の収益部門から、研究グループを可能な限り引き離して欲しいという研究者たちの希望を、企業に配慮させることを余儀なくしている。

「誰もがAIを扱う能力を持つ必要があります」と、研究を推進するデューク大学教授のAshish Aroraはインタビューで私に語った。「大学はAI研究者を十分に輩出していないので、企業は社内に投資しなければなりません」。

しかしこうした研究は、Facebook、Microsoft、Googleなどの企業がAIで大きな進歩を遂げるのを助けているが、企業革新に普遍的に適用できる公式ではない。経営者たちは、しばしば研究と開発の間に明確な線を引くために苦労しており、長い目で見れば独立した価値ある研究を貫くのは困難だ。

Golden Goose Projectの主な欠点の1つは、1980年から2006年の間に収集されたデータのみを考慮に入れていることだ。その時期、何千億ドルもの市場価値が創出されたが、現在への適用性は限定されている。

国立科学財団(NSF)は、このデータ視覚化プロジェクトを支援する上で重要な役割を果たした。Aroraは、助成金を用いて研究を継続し、できるだけ早く足りない年を埋めたいと語った。

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(翻訳:Sako)