モバイル向けに痩身の機械学習/ディープラーニングモデルを作るTensorFlow LiteがGoogle I/Oで発表

今日(米国時間5/17)のGoogle I/OでAndroidの将来について話す中で、エンジニアリング担当VP Dave Burkeは、モバイル向けに最適化されたTensorFlow、TensorFlow Liteを発表した。デベロッパーはこのライブラリを使って、Androidスマートフォンで動く痩身のディープラーニングモデルを作れる。

Googleはこのところますます多くの、Android上で動くAIを使ったサービスを展開しているから、それ専用の小さくて速いモデルを作れるフレームワークを使うのも当然だ。このAPIも年内にはオープンソースでリリースされる予定だ。

昨年はFacebookが、Caffe2Goを発表した。それもやはり、同社のディープラーニングフレームワークCaffeのモバイル用バージョンで、モバイルデバイスに合ったモデルを作れることがねらいだ。Facebookはこれを使ってリアルタイムの写真整形ツールStyle Transferを作り、それはまた、今後のプロダクトやサービスの基盤にもなるものだ。

ただし、モデルを作るための教育訓練は、あまりにも計算集約的な処理なのでスマートフォン上でやるのはまだ無理だ。いや、訓練済みのモデルですら、従来のものはモバイルには重すぎた。でもモデルがデバイス上で使えれば、状況によってはクラウドとインターネットがまったく要らなくなる。スマートフォン上のディープラーニングのパフォーマンスが、より安定するだろう。

TensorFlow Liteは、AIとモバイルデバイスの結合というGoogleのビジョンをさらに前進させる。そしてその次の段階としては、TensorFlow Liteが活躍する場を増やすための、さまざまな専用ハードウェアの開発ではないだろうか。



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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Disrupt NYの最優秀スタートアップはRecordGram―モバイルで音楽の制作からビジネスまでカバー

ニューヨークで開催されたTechCrunch DisruptのStartup Battlefieldではスタートアップ各社の間で激しい競争が繰り広げられた。参加チームは5万ドルの賞金とDisruptカップを目指してベンチャーキャピタリストやテクノロジー専門家などの審査員グループの前でプレゼンを行った。

数時間に及ぶ討議の末、ColliderDomusoNuCypherRecordGramSunrise Health の5チームをTechCrunch編集部は ファイナリストとして選定した。

ファイナリストは最優秀賞を決定するため再度デモを行った。この際の審査員はStuart Ellman(RRE Ventures)、 Ann Lamont(Oak Investment Partners)、 Susan Lyne(BBG Ventures)、 Matthew Panzarino(TechCrunch編集長)、Deven Parekh(Insight Venture Partners)、Reshma Saujani (Girls Who Code)の6名だった。

なお、サンフランシスコで開催されるStartup Battlefield at Disrupt SFの受付が開始された。こちらから応募できる

ではDisrupt NY 2017のStartup Battlefieldの勝者を発表しよう。

最優秀賞: RecordGram

RecordGramはモバイルをサポートする音楽スタジオだ。野心的な若いアーティストはここで楽曲を制作し、レーベルと契約することができる。グラミー賞を受賞したことがある音楽プロデューサー、Winston “DJ Blackout” Thomasも共同ファウンダーだ。CEOのErik Mendelsonはラジオ番組、デジタル音楽のベテラン、Shawn Mimsはヒップヒップのアーティストで“This is Why I’m Hot”がよく知られた曲だ。

RecordGramについてのTechCrunch記事.

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次点:Collider

ColliderのフラグシップモデルはOrchidという3Dプリンターだ。現在まだプロトタイプの少量生産の段階だが、インジェクション・モールドと同程度の強度、精度を持つ金属部品を製造する。コンパクトで安全でありコストパフォーマンスも高いという。工場ではない一般オフィスや研究所でも使用できる。

TechCrunch記事

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

建設現場向けチャットアプリ「stacc」、作業員のスマホ率7割超えで建設業に転機

SlackやChatWorkなどビジネス向けのチャットサービスが広まりつつあるが、業界ごとにチャットに求めるニーズは違うようだ。本日MCデータプラスは、建設現場用のチャットアプリ「stacc(スタック)」を正式ローンチした。これはMCデータプラスが以前より提供している建設業向けの労務安全書類の管理システム「グリーンサイト」と連動する。

少しMCデータプラスについて説明したい。MCデータプラスは三菱商事の社内ベンチャーのうちの1つで、2015年7月にスピンアウトした。彼らの主力サービスは建設業向けのASPだ。

「グリーンサイト」はそのうちの一つで、建設業向けに労務安全書類を管理するためのものだ。建設現場での安全管理のため、請負業者は作業員の免許や資格を書類にまとめ、元請業者に提出する必要がある。グリーンサイトはそうした必要書類の作成、届け出をインターネット上で一括管理できるようにした。今では、大手ゼネコンをはじめ全国20万社、100万人以上の作業員の情報の登録があるという。全国で建設業に関わる人口はおよそ400万人なので、25%以上の人が登録している計算という。

ただ、労務安全書類の管理はIT化できたが、実際の建設現場ではまだまだ口頭や電話、紙での連絡が多く行われているとstaccの責任者を務める原和也氏は言う。staccはそうした現場でのコミュニケーションの課題を解消することを意図している。

staccの特徴はグリーンサイトと連携していてチャットルームを自動で作成できる点と原氏は説明する。グリーンサイトにはどの人がどの現場に入って、どのような作業を行うかの情報が登録されている。そのデータを元にstaccでは現場ごとに職場全体のルーム、企業別や編成別ルーム、職長だけのルームなど、必要なルームを自動作成するという。

グリーンサイトのユーザーIDがある人はstaccに新規登録する必要はなく、同じIDでログインしてチャットを利用できるそうだ。

LINEなどのチャットアプリで十分と思うかもしれないが、それらは建設現場で利用するには適していなかったと原氏は説明する。現場では他の請負業者とコミュニケーションを取ることも多く、1日に複数の現場にいく作業員もいる。そうすると、現場ごとのチャットルームを作ってメンバーを招待するだけでも手間だった。

また、チャットの中で図面などの機密情報に言及することも多い。そのため、セキュリティー面で通常のチャットアプリより安心して使えるものを作る必要があった。staccはグリーンサイトと連携することで、関係する人だけが簡単にチャットルームを使えるようにするという。

原氏はMCデータプラスがスピンアウトした2015年7月と同じタイミングでジョインした。MCデータプラスに入社する前は、起業してコーヒーのサブスクリプションECの立ち上げなどを行ってきたそうだ。

建設業はIT化が進んでいない印象だが、それは少しづつ変わってきていると原氏は言う。「最近になって職人の7割近くがスマホを持つようになりました。ようやく、こうしたアプリで建設業でのIT化が進められる状態になりました」。

グリーンサイトやstaccでは、今後他社サービスとも連携していきたいと原氏は話す。建設業には関わる業者も多く、ニーズも多岐にわたる。それを自社だけで賄うのは難しく、他社と連携することで業界全体の生産性を高められるようにしたいと原氏は話している。

予約システムが店舗の売上増にも貢献、クービックが新たに3億円を調達

クービックはサロンや習い事のネット予約サイトCoubic(クービック)と当日でもサロン予約ができるPopcorn(ポップコーン)を手がけるスタートアップだ。クービックは本日、総額3億円の調達を発表した。引受先はグロービス・キャピタル・パートナーズ、DCMベンチャーズだ。また、GCPの高宮慎一氏がクービックの取締役に就任することも同時に発表している。

クービックの特徴は、特別なウェブの知識がなくとも自社のウェブサイトやブログに簡単にネット予約システムを設置できる点だ。他にも予約時に決済を行う事前決済機能やエンドユーザーにリマインダーやキャンペーン情報を配信する機能なども備えている。

2014年4月のローンチ以降、登録事業者数は4万を超えたとクービックの代表取締役を務める倉岡寛氏は説明する。電話やメールでの予約対応の手間を削減できる他、売上の増加にも役立っている点がビジネスオーナーに評価されていると倉岡氏は言う。「アンケートを行った結果、ビジネスオーナーの70%が売上が上がったと回答しました」。

クービックは2013年10月に創業している。2014年4月にはDCMとグリーベンチャーズから総額5000万円を調達した。2015年3月にはDCM、グリーベンチャーズ、個人投資家から総額3億1000万円を調達している。今回の調達を合わせると、累計調達額は6億6000万円ほどになる計算だ。クービックは2015年に開催したTechCrunch Tokyo 2015、スタートアップバトルのファイナリストでもある。

今回調達した資金は、プロダクト開発とマーケティングに充てる予定と倉岡氏は話す。

クービックは現状ビジネス向けにネット予約システムを提供しているが、最終的に目指しているのはユーザーとビジネスをつなぐプラットフォームだという。倉岡氏がそもそも創業したのも、飲食店などで電話しないと予約できないのに不満を感じ、予約の体験を改善したかったからなのだそうだ。「極端ですが、ネット予約でないのなら予約したくないと思っています」。どのような形にするかは具体的には決まっていないが、サービスのグロースと並行して、そのビジョンの実現に取り組んでいくと倉岡氏は話している。

Googleが本日のGoogle I/Oで発表したこと総まとめ

本日よりGoogleは開発者向けカンファレンスGoogle I/Oを開催している。Androidやその他のプラットフォームで、彼らが想像している未来を知ることができるだろう。

今年もGoogleはたくさんのことを発表した。それらを全てこのページにまとめたのでお見逃しなく。

20億!

カンファレンスの冒頭、Sundar Pichaiが登壇して、いくつか数字を発表した。Google Driveの月間アクティブ・ユーザーは8億人となった。Google Photosのアクティブ・ユーザーは5億人で、毎日12億の写真をアップロードされている。

圧巻なのは、Android端末を使っている人は現在20億人に到達したことだ。

全てのプロダクトにAIを搭載

人工知能は今回のカンファレンスの大きなテーマだった。Googleは全ての提供プロダクトに人工知能を搭載する予定だ。

まずは Google Lensから始める。この新たなテクノロジーでユーザーのスマホはより賢くなる。カメラを何かに向けると、Google Lensはユーザーが何を見ているか特定できるようになる。

Google.ai

Googleは自分たちのプロダクトを強化したいと考えているのではない。Googleは本日Google.aiという取り組みをローンチし、AIコミュニティーのために彼らの研究結果、ツールを公開していくと発表した。

第2世代のTensorプロセッサ

Googleは機械学習用にTensorプロセッサを開発している。これを読んでいるあなた自身がこのチップを使うことにはならないかもしれないが、同社はすでにこの第2世代が完成したと発表した。
Googleはこの第2世代のTPUは最大180テラフロップスのパフォーマンスを発揮できるという。

より自然な会話

Google Assistantは当初Pixel端末で提供していたが、現在は1億のAndroid端末にも展開している。
Google Assistantはより自然な会話ができるようになり、新機能も追加する。例えば、クエリを声に出さずにタイプすることができるようになる。人が多い場所で使える便利な機能だ。

 

iPhoneユーザーに朗報

Siriじゃ満足できない?Googleは本日からGoogle AssistantをiPhoneでもローンチ する。AndroidでもiOS端末でも同じ機能が使えるようになる。1つ問題なのは、iOS端末ではこれをSiriの代わりにデフォルトの音声アシスタントに設定することはできないことだ。

さらにGoogle Assistant

Google AssistantのSDKがあるということは、どんな端末からもGoogle Assistantからでもアクセスできるということだ。Googleはサード・パーティー向けの機能を拡張し、ユーザーが端末から送金したり、連携したスマートホーム端末を起動させたりすることができるようになる。

また、Google Assistantは近々、他の言語にも対応する予定だという。

Google Home バージョン2

Google Homeバージョン2にふさわしい機能アップデートがあった。Google Homeは事前に先を予測して、ユーザーがHomeを起動しなくても通知する機能を搭載した。Google Homeの方からユーザーに何か伝えたい時に通知するものだ。例えば、通勤時間の少し前に交通渋滞が発生している、といった内容を教えてくれるようになる。

Amazon Echoのように、Google Homeでも通話ができるようになった。また、端末をBluetoothのスピーカーとしても使うことができ、複数の音楽サービスにも対応した。この端末を使ってだサービスをローンチすると、Chromecast経由でスマホやテレビに表示させることができる。

Google Photos

Google Photosにも新機能が追加された。顔認識でアルバムの共有を提案する。また、サービス上でフォトブックを印刷できるようになった。

テレビにも360度動画

YouTubeのテレビアプリも360動画に対応した。こうした動画を視聴するのにテレビが最適なデバイスかはさておき、あると良いかもね。

Android O、名前はまだない

正直なところ、みんなAndroidのニュースを待っていたと思う。GoogleはAndroid Oの正式名はまだ発表していないものの、ベータ版は公開している。

Picture in Picture(他のアプリを開いていても小さな動画画面から動画視聴やビデオ通話を続けられる機能)、オートフィル機能、通知ドット(アプリアイコン上に通知を表示)といった機能や最適化が施されている。

Android最適化

次のAndroid端末ではよりブートが早く、より充電が持ち、よりセキュアになる。時には新機能でなく、端末がスムーズに動くことを改めて保証するような最適化も大事だ。

さよなら、Java!

開発者に朗報だ。これからは、プログラミング言語Kotlinでアプリ開発ができるようになった。

次の20億ユーザー獲得に向けて

Androidはとても洗練されてきたため、Googleはありえないほど安い端末でも動くようにモバイルOSを分割した。 Android Goの利用対象となる発展途上国だ。

 

新Tango

Googleは、Tangoプロジェクトもアップデートしている。これは大量のセンサーを搭載しているため、Tangoがあればショッピングモールや美術館といった建物の中でも自分の位置がわかるようになる。Googleはこの位置情報技術をVPSと名付けた。

最後に

Googleは検索エンジンの会社なので、Google for Jobsで仕事探しができるようにしたのは理にかなっているだろう。ちょっと怖い感じもするけど、Googeは仕事を含め、私たちの生活の違う領域で存在菅を高めたいようだ。

 

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

Google、Androidの月間アクティブユーザーは20億人、Googleフォトは5億人

カリフォルニア州マウンテンビューで行われたGoogle I/Oカンファレンスで、CEO Sundar PichaiはAndroidプラットフォームの月間アクティブユーザーが今週20億人を越えたと発表し、世界でもっとも多く利用されているモバイルオペレーティングシステムの座を堅持した。

同社が前回数字を発表した2015年9月以来、4億人近いユーザーが新たに加わった。ちなみにAppleは、昨年1月に10億台のデバイスでiOSが動いていると発表した。

Pichaiは、同社のGoogleフォトも急成長していることを詳しく話した。Googleはこの写真サービスを定期的に改善しており、トラフィックも増え続けている。月間アクティブユーザーは5億人以上で、毎日12億枚の写真がアップロードされている。

今日のカンファレンスでは多くの数値がビリオン[10億]単位で語られている。現在Googleには月間アクティブユーザー10億人以上のサービスが7種類ある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook rel=”noopener noreferrer”)

Google、Androidの月間アクティブユーザーは20億人、Googleフォトは5億人

カリフォルニア州マウンテンビューで行われたGoogle I/Oカンファレンスで、CEO Sundar PichaiはAndroidプラットフォームの月間アクティブユーザーが今週20億人を越えたと発表し、世界でもっとも多く利用されているモバイルオペレーティングシステムの座を堅持した。

同社が前回数字を発表した2015年9月以来、4億人近いユーザーが新たに加わった。ちなみにAppleは、昨年1月に10億台のデバイスでiOSが動いていると発表した。

Pichaiは、同社のGoogleフォトも急成長していることを詳しく話した。Googleはこの写真サービスを定期的に改善しており、トラフィックも増え続けている。月間アクティブユーザーは5億人以上で、毎日12億枚の写真がアップロードされている。

今日のカンファレンスでは多くの数値がビリオン[10億]単位で語られている。現在Googleには月間アクティブユーザー10億人以上のサービスが7種類ある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook rel=”noopener noreferrer”)

Google、KotlinをAndroidアプリ開発言語に選定―I/O会場から大喝采

今日(米国時間5/17)のGoogle I/OでKotlinがサポートされることが明らかになった。Kotlinは静的型付けされたプログラミング言語でJava仮想マシンで作動する。GoogleはAndroidアプリ開発にあたってKotlinを第一級言語の一つに選定した。

Kotlinの主要スポンサーはIntelliJなどのツールで知られるJetBrainsだ。KotlinはJavaと100%互換で、すでにGoogle自身のAndroidアプリ開発の主要言語となっている(もちろんC++も利用されている)。

Googleによれば、今後(JetBrainsと協力して)Kotlinの開発環境を提供していくという。JetBrainsは2012年にKotlinをオープンソース化していたが、1.0がローンチされたのは1年前だった。Google自身のAndroid StudioがJetBrainのIntelliJ Java IDEをベースにしているのは重要な点だ。次世代Android Studio (3.0)はデフォールトでKotlinをサポートすることになる。

KotlinはJava互換なので、 これまでもAndroidアプリを書くことができたが、今後GoogleはKotlinをプログラミング言語として全面的にプッシュするようだ。Kotlinには現在Javaでサポートsれていない機能が多数含まれている

GoogleはキーノートでKotlinのサポートは「追加であり、既存のJavaや C++のサポートを置き換えるものではない」と念を押している。

今日のGoogle I/OのキーノートでKotlinのサポートの発表は聴衆から最大の喝采を受けたことは注目すべきだろう。


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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

公募価格に関する誤解――IPO直後の株価急騰は気にするな

【編集部注】Alex WilhelmはCrunchbase Newsの編集長で、VCに関するTechCrunchのポッドキャストEquityの共同司会者でもある。

業績発表を受け、ネット業界を先導するふたつの企業の株価が動いた。その2社とはSnapとTwilioだ。

両社はさまざまな点で違っている。Twilioは消費者にリーチするためのバックエンドツールとして、数々の有名企業に愛されている。一方Snapは、最近モバイルハードウェアにも手を出しはじめたソーシャル企業だ。しかし、2017年Q1はどちらにとっても厳しい結果に終わった。

2016年に上場したTwilioは業績面では予想を上回りながらも、思わしくない通期見通しを受け、同社の株価は業績発表の翌日までに25%近く下がった

一方、2017年IPO組のリーダーであるSnapは、売上・利益・アクティブユーザー数の全てで目標に到達できず株価が急落。一晩で何十億ドルもが消え去り、同社の株価は公募価格とほぼ同じくらいの水準に戻った。

ここからこの記事の本題である、IPO後の株価の急騰、そしてどの企業が公募価格の設定を誤って本来調達できたはずの資金を取り逃してしまったのかという話につながってくる。

株価急騰とその他の幻想

企業が上場する際、初日の株価の伸びしろを残しつつも調達金額を最大化するため、公募価格は(一般的には)できるだけ高く設定される。

これを基に考えると、IPO周りの数々の現象に納得がいく。企業はできるだけ多くの資金を調達しようと、市場で株主がリターンをあげられるだけの余白を残しつつも可能な限り高い公募価格を設定し、初日の株価急騰を狙う。そして目論見通り株価が上がれば、メディアや投資家から好意的な反応が返ってくるといった具合だ。

どのくらいの株価上昇を狙うかはケースバイケースだが、市場の反応を正確に予測するのは不可能だ。例えば、上場後にピッタリ10%株価が上がるように公募価格を設定することはできない。

そしてここからが難しいところだ。もしも、ある企業の株式に対する需要の大きさと価格感度の低さがその企業や引受人の予測を超えていた場合、何が起きるだろう? この場合、当該企業は公募価格を”低め”に設定する可能性が高いので、株価の上がり幅も想定より大きくなりがちだ。もちろん、逆に上場直後に株価が急落するケースもある。

(実際に、今年上場直後に株価が急落した企業が存在する)

いずれにせよ、企業が上場して物事が順調に進んでいけば、その企業が「本来調達できたはずの資金を取り逃してしまった」という内容のニュースを目にすることになる。実際に公募価格が低すぎると思われる場合もあるが、そう判断するには時期尚早というケースがほとんどだ。

つまり、企業の株価はIPO後に急騰することが多いが、上昇分はスーパーボウルにおけるファルコンズのリードよりも早く消えてなくなってしまう可能性がある。そのため、「本来調達できたはずの……」という話はナンセンスな議論である共に、公募価格の設定ミスの証拠とされているIPO直後の株価上昇こそが誤った情報を発信してしまっているのだ。

最近の例

実際の株価を追って見てみよう。

そうすると、Snapは多くの人が思っているよりも、かなり上手く公募価格を設定できていたのではないか気づく。

Snapの株式は、公募価格が17ドルで初値が24ドル、そして最高値が29.44ドルだった。この数字だけ見ると、本来Snapはもっと多くの資金をIPO時に調達できたはずだと感じられる。合計2億株を売ったSnapが公募価格を少しでも上げていれば、彼らの口座残高は増えていたはずだ。

24ドル(もしくは29.44ドル)という株価を見ると、Snapはとんでもない計算間違いをしたように見える。しかし、初めての業績発表を受け、現地時間5月11日のSnapの株価は最低で17.59ドルまで下がり、結局18.05ドルで取引を終えた。

もしもSnapが、公募価格を実際よりも1ドル高い18ドルに設定していたとすれば、上場後の株価が一時的に公募価格を下回っていたことになる。もしも公募価格が19ドルだったならば、損失幅はさらに広がっていただろうし、初値で売り出していればSnapの状況はさらに悪化していた。それ以上はすぐに推測できるだろう。

現在Snapの株式は、公募価格よりも数ドル高い価格で売買されており、株価の伸び率は20%ちょっとということになる。先述の状況を考えると、これは株価設定ミスとは到底言えない(さらに昨年ようやく粗利が黒字になった企業に値段をつけることの難しさも勘案してほしい。これはほぼ不可能なことだ)。

もうひとつの例であるTwilioの株式は、上場初日で公募価格より92%も高い28.79ドルの終値をつけた。その後も上昇を続けた同社の株価は最高で60ドルに達し、その後30ドル台に急落した。さらに最新の業績発表の後、株価は20ドル台前半〜半ばへと下降。Twilioはそもそも公募価格を予想より高く設定していたにもかかわらず、IPO直後はそれよりもさらに高い価格をつけることができたのではないか、という憶測が広がった。しかしその後継続して株価が下がったことで、その憶測が間違っていたとわかり、IPO時の株価と比較すると、現在のTwilioの株価の方が急騰時の株価よりも実態に即しているように映る。

さらにこれに対し、現在24ドルの株価がついているのだから、公募価格は少なくとも15ドルより高くした方がよかったのではと反論することもできるが、この1年でさらに成長したTwilioの現在の株価と公募価格をそこまで細かく比較することにあまり意味はない。

上記の2社の例から分かる通り、IPO後に株価が急騰したからといって、公募価格が誤っていたと判断するのは時期尚早なことが多い。その一方で、両社の現状の株価がまだ公募価格を上回っていることを考えると、本当に公募価格が間違っていなかったと言い切れるのだろうか?

これはもっともな問いなので、もう少し歴史をさかのぼって考えてみたい。

昔々の話

GoProのIPOは大成功だった。株価は初日だけで24ドルの公募価格から30%も上昇し、その後は報道の通り、連日数十%の上昇が続き、すぐに公募価格の倍に到達した。これが2014年7月の出来事だ。

その後2014年中にGoProの株価は98ドルまで上昇を続ける。なんという価格設定ミスだと思っている人もいるかもしれないが、2015年11月には「GoProの株価が公募価格を下回る」という見出しが紙面を飾ることになる。その日、GoProは23.15ドルの終値をつけた。現在の株価が8.62ドルの同社が、24ドルの公募価格をつけられたのは、今となってはラッキーだったように感じられる。

GoPro以外にも、EtsyやMobileIron、Fitbitをはじめとする企業が、IPO直後の株価急騰とその後に続く急落を経験している。

この話が現在の(アクティブな)IPOサイクルに対する警告になることを祈っている。冷静さを失わずに、自分たちが必要としている資金に対する調達額の大きさへもっと注意を払うようにしてほしい。最新の評価額と同等もしくはそれ以上の時価総額がつくのであれば、それ以外のことは気にしなくても良いのだ。

実際に業績が下がってしまった場合はまた別の話になってくるが。

フィンテック系ユニコーン企業TransferWiseが設立6年で黒字化

黒字化を果たしたユニコーン企業ほど珍しいものがあるだろうか? ロンドンを拠点に送金サービスを提供しているTransferWiseは、設立から6年が経過し、遂にこの度”利益を生み出している”状態に到達したと発表した。なお、以前TechCrunchでも報じた通り同社の評価額は11億ドルにのぼると言われている

具体的な数字を見てみると、月々の売上額は800万ポンドに達すると彼らは語っており、ランレートは1億ポンドに到達する勢いだ。また昨年には前年比で150%成長しており、今年の成長幅も同じくらいになると言われている。さらに月々の送金総額は10億ポンドにのぼり、ユーザーはTransferWiseを使うことで、1日あたり150万ポンドの為替手数料を節約できていると同社は話す。

参考までに、TransferWiseの2016年3月期の通期売上は2780万ポンドで、税引前損失が1740万ポンドだった。2017年3月期の業績はまだ発表されていないが、本日の黒字化のニュースを考えると、2016年3月期に比べて税引前損失額はかなり減っていることが予想される。

また、同社はこれまでに合計1億1700万ドル(約9100万ポンド)を調達してきた。主な投資家としては、Andreessen Horowitz、Peter ThielのValar Ventures、Sir Richard Branson、そして最近株主に加わったBaillie Giffordが挙げられる。

「設立からたった6年で損益分岐点に達したということが、私たちのビジネスを支える基盤の強さを物語っています」とTransferWiseの共同ファウンダーでCEOを務めるTaavet Hinrikusは声明の中で語った。「しかし黒字化はスタートに過ぎません。私たちがこれまでに築いてきたユニークなプラットフォームを使って、今後新時代の金融サービスを顧客に提供していくのが楽しみです」

“新時代の金融サービス”というのは気になるポイントだ。というのも、私は彼らがTransferWiseブランドのもと、現状の外国送金サービスを超えて新たな機能やサービスを開発していくと考えているからだ。

電話での取材中、Hinrikusは新しいサービスの詳細には触れなかったが、突っ込んで聞いてみたところ、追加の資金や規制対応が必要になる銀行ライセンス取得の「予定はない」と語った。つまり、しばらくの間TransferWiseがチャレンジャーバンク化することはないということだ。

とは言いつつも、もしも彼らにその気があれば、すぐにでも導入できそうなサービスはいくつかある。まずPayPal傘下のVenmoやBarclays Pingitのサービスのように、同じ国に住むユーザー間でのP2Pペイメントであれば、TransferWiseのインフラを持ってすれば簡単に実現できるだろう。また、海外でも使える為替手数料の安いデビットカードを同社が既に提供していないのも不思議だ。

もしも彼らがデビットカードの発行をはじめるのであれば、RevolutやHinrikus自身も投資しているカード統合アプリCurveをはじめとする、MasterCardの安い為替手数料を利用したサービスと直接競合することになる。

しかしHinrikusに言わせれば、100万人強のユーザーを抱え、信頼度の高い強固なブランドを築き上げてきたTransferWiseの方が、現状のサービスと近い位置(もしくはギリギリのライン上)にある新しいサービスを提供する上で有利なポジションにいる、ということなのだろう。確かに同社は設立当初から、TransferWiseブランドと素晴らしいプロダクトの確立にたっぷりと時間をお金をかけてきた。

競争が激化する中、外国為替はコモディティ化しつつあるとも言える。そこで私は、Hinrikusに過去6年間のTransferWiseの成功にとって、ブランドとプロダクトのどちらが大切だったかを尋ねてみた。すると彼は「それは究極の質問ですね」と答え、いつも通り一旦話を止めて言葉を選びながら「実際にはプロダクトがブランドをつくると考えています。素晴らしいプロダクトがブランド化しない状況の方が考えづらいですからね」と語った。

この点に関連し、彼はイギリスの海外送金市場におけるTransferWiseのシェアは10%程度だと語っており、確かに未だ4大銀行が同市場の約80%を占めているという話もある。しかし見方を変えれば、海外送金という分野ではTransferWiseが大手銀行の半分のシェアを握っているとも言え、既存のプレイヤーがこの状況に気付かないわけがない

「周りを見ると本当にたくさんのフィンテック企業が存在しますが、そのほとんどは従来の銀行を介して自分たちのプロダクトを販売しています」とHinrikusは付け加える。「フィンテック業界では、グローバルに活躍するような企業が今後数社しか出てこないだろうと私は考えており、TransferWiseはそのうちのひとつになれると思っています」

余談だが、先日HinrikusがTechCrunch宛に送った初めてのピッチメールのコピーをツイートしていた。6年以上前のこのメールが、フィンテックユニコーン企業の最初のメディア露出と売上に繋がったのだ。その後彼らが大きく成長し、現在では700人強の従業員を抱え、遂に黒字化を果たしたというのは感慨深いものだ。

Steve O’Hear(@sohear)
テック系メディアの記者の中で、恐らく一番初めにTransferWiseに関する記事を書いた私ですが、その記事が彼らにとって初となる1000ポンドの送金に繋がったという話を聞きました。

Taavet Hinrikus (@taavet)
@sohearあなたが最初の記者でしたし、いつもそのことをありがたく思っています。添付画像のメールがその証拠です。CC@andruspurde

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Google I/O: Lensは「たこ焼き」の看板をリアルタイム翻訳―スマートフォンのカメラが賢くなる

今日(米国時間5/17)、Google本社に隣接するショアラインアンフィシアター野外劇場で開幕した Google I/Oデベロッパー・カンファレンスのキーノートで、CEOのスンダー・ピチャイはGoogle Lensという新しいテクノロジーを発表した。

これはGoogleのコンピューター・ビジョンと人工知能を統合し、スマートフォンのカメラからダイレクトに有益な情報を得ることができるシステムだ。Googleの説明によれば、スマートフォンのカメラは単に目に見える情報を撮影するだけでなく、写された対象を理解してユーザーが適切な行動を取るために役立つ情報を提供する。

Googleはユーザーが花を撮影しようとしてカメラを向けるとLensが即座に花の種類を教えてくれるところなどをデモした。

ピチャイはLensは日常のタスクでも役立つ例も挙げた。たとえばスマートフォンでルーターのラベルを撮影するだけで簡単にWiFiに接続できる。 Google LensはルーターのIDとパスワードを読み取り、タップするだけで自動的にそのWiFiに接続するアイコンを表示してくれる。

その次の例では 通りがかりの店舗を撮影すると、Google Lensが店名を読み取り、ウェブを検索して各種のビジネス情報をカード形式で表示する。

このテクノロジーはスマートフォンのカメラを撮影だけでなくモニタに写った対象に関する情報を得ることができるツールに変える。

Pichaiの説明の後、 Scott HuffmanはGoogle Homeのデモ中でGoogle Assistantに組み込まれたLensの能力を示した。Assistantアプリに追加された新しいボタンをタップするとLensを起動し、Assistantを通じてLensと会話し、写真の内容を尋ねることができる。

Scott HuffmanがカメラをStone Foxesのコンサートのポスターに向けるとGoogle Assistantはチケット・セールスを含めてコンサートに関する情報を表示した。Huffmanがオンラインでチケットを購入し「これをカレンダーに追加」と命じるとその通りにスケジュールが設定された。

LensとAssistantの統合は翻訳にも威力

Huffmanがカメラを〔「たこ焼き 6個 130円」という〕日本語の看板に向けて「これは何?」と尋ねるとGoogle Assistantは即座に正しく英語に翻訳した。

 

ピチャイはまたGoogleのアルゴリズムが写真の質を改善することができることも示した。たとえば金網越しに子供の野球試合のシーンを撮影したような場合だ。Googleの人工知能は目障りな金網を自動的に取り除いてくれる。また暗い場所で撮影した場合、Googleはピクセルノイズやブレを補正し、写真を見やすくしてくれる。

GoogleはI/OカンファレンスではLensがいつ一般公開されるか日時は明らかにしなかった。しかし「すぐに」手に入るようになるという。


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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

タスク管理のTodoist、Googleカレンダーとの双方向同期機能を実現

タスク管理にTodoistを便利に使っている人も多いことだろう。ただ、カレンダーと同期できないことを不満とする声も大きかった。そうした不満の時期を経て、ついにGoogleカレンダーと同期できるようになった。これまでは明日の予定とタスクの双方を確認したければ、カレンダーとTodoistの双方をチェックする必要があった。しかし双方向の同期機能を実現したことで、よけいな面倒をかける必要がなくなったのだ。

Todoistの設定から、Googleカレンダーと同期する設定にする(訳者注:ウェブアプリケーション側での設定が必要なようです)と、期日の指定されたタスクはカレンダー上に表示されるようになる。タスクに時間の設定も行えば、カレンダー上にイベントとして表示されるようになる。繰り返しのタスクの場合は、複数のイベントがカレンダー上に作成される。

Googleカレンダー側でタスクデータを編集したり予定日を変更したりした場合には、自動的にTodoist側にも反映される。カレンダー上でタスクを一覧しながら、タスクの変更をしたりするようなことも簡単に行えるようになったわけだ。共有プロジェクトを公開して、関係者に情報更新をしてもらうようなこともやりやすくなったわけだ。

たくさんのタスクを作成している場合には、カレンダーがごちゃごちゃして見づらくなってしまうということもあるかもしれない。そうした場合には、特定のプロジェクトについてのみ同期を行うということもできる。

個人的には、カレンダー上にToDoタスクを表示するのは好きではない。しかし同じ画面で予定などとタスクを一覧したいと考える人も多いようだ。Googleカレンダーを使っているならば、かんたんにタスクと予定の一元管理ができるようになったわけだ。

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(翻訳:Maeda, H

Google I/O 2017のキーノートをライブで見よう/聴こう

これからのアップデートは、カリフォルニア州マウンテンビューのShoreline Amphitheater(海辺の円形劇場)からのライブでやる。そこはGoogle本社の敷地から石を投げたぐらいの距離にあり、同社の2017年デベロッパーカンファレンスI/Oが行われる。5月17日太平洋時間午前10時(東部時間午後1時)〔日本時間18日午前2時〕のキーノートからイベントは始まり、プロダクトとソフトウェアのニュースが山のようにあるはずだ。

そのショウのライブのアップデートには、写真や重要な発表も含まれる。そのために現地時間午前2時の今から現場に缶詰になっているのが、本誌のDarrell Etherington, Greg Kumparak, Frederic Lardinois, Lucas Matneyらライブブログの面々だ。このページのURLをブックマークして、ぜひご覧くだされ:

https://techcrunch.com/2017/05/17/google-io-2017-keynote-live-blog/

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Lisnrの音声データ通信テクノロジーは、QRコードやNFCなどの代替を狙う

スタートアップのLisnrが狙っているのは、データを音声に載せて送る新しいテクノロジーで、NFCやQRコードを置き換えることだ。その通信プロトコルはSmat Toneという名前である。同社が発明したテクノロジーは、POSトランザクション、チケット発行と認証、オフラインメッセージ、デバイス間接続などの様々な用途に利用することが可能だ。

Lisnrのアイデアは、共同創業者兼CEOのRodney Williamsによるものだ。彼自身はエンジニアではないが、Lockheed MartinやProcter & Gamble、その他の企業での経験が彼に技術の大切さを教え、特許と知的財産の価値を教えた。彼は現行の技術に対する更によいアイデアを思い付き、より良い応用のチャンスを見出した。

「私たちは先進的なテクノロジーと体験を、古いプロトコルの上に構築してきたのです」とWilliamsは説明する。「テクノロジーの限界の中で、プロダクトやサービスを構築することに、本当に不満を感じていました。より優れた通信チャネルを作ることができたら、最高の消費者体験を引き出せるのに、と考えたのです」。

スタートアップは2012年にシンシナティでWilliamsによって創業された。共同創業者に名前を連ねたのは連続起業家のChris Ostoichと、ソフトウェアアーキテクトのJosh Glickだ。この2人はStartup Busピッチの後Williamsに出会った。しかし実際に同社がその技術を発明できたのは2014年になってからのことだ、Williamsはその功績の一部が最初の従業員であるWilliam Knauerによるものであることを認めている。

それに加えて、Lisnrは現在音声データ通信の専門家である、Andrew Singer博士をテクニカルアドバイザーとして迎えている。

テクノロジーは、スピーカーによる放送を用いてSmart Toneをマイクを備えたデバイスへ送る。受け手のデバイスはSmart Toneを復調しその内容を取り出す。そのコンテンツは、メッセージ、画像、URLなどの、どのようなデータでも含むことができる。しばしば受信デバイスも、Smart Tomeを元の放送装置にも送り返し、双方向通信を行なうことも可能になっている。

Smart Toneは、プリアンブル、ヘッダー、ペイロードの3つのパートで構成されている。プリアンブルは、 受信側デバイスに対して復号化を待つSmart Toneが存在していることを知らせるものだ。

Lisnrはその通信に、約18.7kHzから19.2kHzの可聴周波数範囲を使用している。これは98%の人たちには聴こえない(聞こえる人たちには、この音はホワイトノイズのように聞こえる)。

波形データのデコードには、hflatというプログラムが使われる。Lisnrはサーバーコールを行わず、データはローカルでデコードされる。

音声でデータを転送するというアイデア自体は全く新しいものではない。AppleのAirDropに対抗するGoogleのNearbyも、音声を用いている。またChirpと呼ばれる別の会社も、音声データ通信に取り組んでいる。

しかし、Williamsによれば、Lisnrはもっとも近い競合他社に対しても、5〜10倍のスループットを達成していると主張する。例えばGoogle Nearbyは66bps(ビット/秒)だが、Lisnrは300bpsを商業的に展開している。また、ベータ版の顧客の中には1000から3000bpsを達成しているものもいる。

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しかし、音声データ通信技術は、動作するためにはインターネット接続は不要だという利点があるものの、スピーカーから出る音声をマイクロフォンが「聴く」必要があるため、限られた範囲での利用しかできない。このためLisnrのSmart Toneは、Bluetooth、NFC、QRコードスキャニングのようなものに取って代わる、近接通信プロトコルであると言うことができる。

とはいえ、既に多くの実用的な実装が存在している。ベータ期間中常に、様々な場所の100から200社の企業が、Lisnrのテクノロジーを試用している。参加しているのは、発券会社、航空会社、運送会社、劇場、小売業者、銀行、モバイルウォレットプロバイダ、不動産会社、セキュリティ会社など、さまざまな業界の企業にわたっている。

Jaguar/Land Roverは、スマートフォンで人間を識別することによって、個人の設定で車をパーソナライズするプロトコルを採用した。Lisnrはすでに、世界最大の発券会社を顧客として迎え入れていて、既に利用が開始された場所もある。

例えば発券アプリケーションでは、入口でイベント参加者の電話のQRコードを読み取る代わりに、モバイルアプリ、電子メールまたはリンク経由でこの技術を提供することができる。

名前を挙げることのできる顧客としては、MovieTickets.com、チップセット会社DSPG、そしてIntelの多くのパートナーが含まれている。何年もの検証を経て、Lisnrは現在3000万台のデバイスにインストールされる勢いだとWilliamsは語った。

利用企業は1デバイスあたりの利用料を1年ごとにLisnrに支払うビジネスモデルとなっていて、加えてデータ1伝送ごと、もしくは1認証ごとに僅かな料金を支払う。SDKまたはAPIを介してテクノロジーを利用することもできる。

本日(米国時間5月16日)のDisruptで、チームはSmart Toneを商用目的のために公開した。

Lisnrは、Intel Capital、Jump Capital、Rubicon VC、Progress Ventures、Serra Ventures、Mercury Fund、R/GA、CourtsideVC、TechStars、CincyTechなどから現在迄に1400万ドルを調達している。

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(翻訳:Sako)

AmazonがAlexaに通知機能を導入、邪魔な人はoffに設定できる

AmazonはAlexaに通知機能を加えようとしている。それによりAlexaのスキルが、情報が可利用になったら求めなくてもそれを提供できるようになる。これまでは、何をやるにしても人間の質問等が最初にまず必要だった。スキルとデバイスに通知を加える能力は、Amazonのソフトウェアとハードウェア両方の開発キットからも使えるが、ただし最初は選ばれた少数のパートナーのスキルと、Amazon.comのショッピングのアップデートのみだ。

その選ばれたパートナーとは、AccuWeather, The Washington Post, Just Eat, Life360などだ。デベロッパープレビューがもうすぐ提供されるので、そのほかのデベロッパーも自作のスキルへの通知の実装をテストできる。そしてAPIが一般供用されたら、すぐに消費者向けにその通知スキルを提供できるだろう。

通知は、チャイムの音、またはEcho, Echo Dot, Echo Showの上部LEDリングのグリーンの点滅で行われる。通知を受け取ったユーザーがAlexaに声をかけると、その情報が分かる。通知を受けとりたくない時間帯には、そのためのDo Not Disturbの設定もできる。

AlexaとEchoに通知が加わるというニュースは、最初、昨年の秋にThe Informationが報じた。この機能がついにやって来たことはたいへん有意義だ。最近のEcho Showの発表にも見られるように、AmazonはAlexaの出花人気を最大限、利用したいのだ。何かやるなら、今の内!

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Appleがストアでの教育コースを拡充、ウェブサイトもオープンして予約受付中

先月Appleは、Appleストアでの教育セッションを拡充する計画を発表したが、今やデバイスや製品の利用方法に関するより深いトレーニングを提供し始めている。またアーティストを招いてそのApple製品の活用法を語って貰い、顧客たちを撮影やスケッチのためのセッションに誘い出そうとしたりすることなどを通して、コミュニティの活性化も狙っている。今日(米国時間5月9日)の午後、このプログラムは、顧客たちが受講可能なコースを探し予約を行なうことが可能な、“Today at Apple”という専用のウェブサイトとしても公開された。

今週開始したこのプログラムには、世界中のAppleストアで開催される1日あたり4000ものセッションが含まれている。

Appleは長年にわたりストア内クラスを提供してきたが、今回のコースラインナップの拡大は、アート、デザイン、音楽、そして写真などの題材に力を入れることで、クリエイティブコミュニティーのより多くのメンバーと若いユーザーをストアに引きつけようとするものだ。またこれによりAppleは競合相手との差別化を行なうこともできる、つまりAppleは単なるデバイスとソフトウェアメーカーではなく、人びとが自分の興味のある事柄を追求したり、ローカルなクリエイティブコミュニティに参加しているという意識を感じることのできる実在の場所でもあるということだ。

またストアでは新しい”Kids Hour”セッションで、子供向けのプログラムも充実させている。親たちは子供たちを、例えばGarageBandによる音楽制作、iMovieによる映画制作、あるいはSpheroロボットで遊ぶことを通した、コーディングの基礎の学習などに連れてくることが可能だ。

一部の大規模マーケットでは、現地のアーティスト、ミュージシャン、写真家たちによって教えられるセッションも用意されている。場合によっては、アーティストたちがAppleの技術の使い方を説明するだけではなく、セッション限定のパフォーマンスで参加者を楽しませることも行われる。

新しい”Today at Apple”ウェブサイトによれば、米国内でのラインナップに挙げられているのは以下のようなセッションだ。特別パフォーマンスとしては、サンフランシスコではLil Buck、Charlie Puth、そしてLeon Bridgesが、ブルックリンとニューヨークのソーホーのそれぞれではChristopher MartinとEstelleがフィーチャーされている。またブルックリンではSteve Lacyの音楽教室が開催される。アートと写真に関連したセッションとしては、Tyler HansenとThe Selby(サンフランシスコ)、Timothy MulcareとBuff Monster(ブルックリン)、そしてCody GuilfoyleとJeremyville(ソーホー) が予定されている。

ロンドン、パリ、ベルリン、ドバイ、東京などの世界の都市でも、同様のセッションが開催される予定だ。この先のプログラムでは、Appleはより多くのアーティストとミュージシャンを招待する予定だ。その分野での新鋭もいれば、より有名な人たちも登場することだろう。

さらに5月20日からは、全世界の495箇所のApple Storeで、Photo WalksとKids Hourセッションの両者が提供される。小規模なマーケットでのPhoto Walksの中には地元の写真家によって行われるものもあるが、それ以外はAppleのスタッフによってリードが行われる。希望者は、目的のストアの個別スケジュールをチェックすれば、地元で何が提供されるのかを知ることができる。

拡張されたラインナップの焦点は、人びとがAppleデバイスを使ってもっと多くのことをできるようにすることではあるが、同社は引き続き新しいAppleユーザーたちにデバイスとソフトウェアの基本と機能を習得させる「基礎」クラスも提供している。また視覚や聴覚に問題のあるユーザーや、身体障碍を持つユーザーたちに、Apple製品がどのように役立つのかを教えるクラスも提供している。

他にも、ビデオの編集、写真の最適化、iWorkの使用など、特定の作業を行う方法について焦点を合わせるセッションも提供される。そして、ビジネス顧客向けに、個別の要望を叶える「ハウツー」クラスもある。

それ以外のラインナップとしては、Studio Hours(特定のプロジェクトに関する助けを得ることができる)、スケッチウォーク、Techer Tuesdays、Pro Series(上級クラス)、ライブアート、フォト&ミュージックラボ、Field Trip(教師主導の学生ツアー)、Apple Camp(子供向け)、そして2人のインフルエンサーが創作プロセスに関する話題を提供するPerspectivesなどがある。

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(翻訳:Sako)

古地図やイラストの情報をGPSと連動する「Stroly」開発元が総額1.4億円を資金調達

地図と情報というと、商圏分析によるマーケティングや防災など、ちょっと堅めの活用方法を思いつきがちだけれども、IngressやポケモンGO、あるいはブラタモリの人気を見れば分かるように、もともと地図や位置情報って、それだけでも“楽しい”ものだと思う。2月にα版がローンチされた「Stroly(ストローリー)」は、イラストマップや古地図とGPSとを連動させて、地図の裏側にある“楽しさ”を垣間見ることができるサービスだ。

Strolyを開発したのは京都発のスタートアップ、ストローリー。同社は5月17日、大和企業投資、京銀リース・キャピタル、フューチャーベンチャーキャピタル、中信ベンチャーキャピタルの各社が運営する各ファンドを引受先とした総額約1.4億円の第三者割当増資の実施を発表した。今回の資金調達はシリーズAラウンドにあたり、ストローリーにとっては、初めての外部からの調達となる。

街歩きが楽しくなる地図のプラットフォームStroly

Strolyについては、2月のローンチ時の記事に詳しいが、ここで簡単に説明しておくと、縮尺や方位、位置情報が正確でない古地図やイラストマップでも、緯度・経度情報と照らし合わせて連動させ、現在地や地図上のポイントを表示することができるプラットフォームだ。スマホ上で表示させれば、江戸時代の地図を表示させながら街をぶらぶら歩く、なんてこともできる。

上野の森の錦絵にStrolyで位置情報をプロットしたもの

Stroly公開の前には、50くらいの自治体を顧客とした受託開発による、古地図と連動した地図の提供が多かった。しかし、案件ごとに個別にアプリを開発していてユーザーが横断的に利用できるものがなかったため、さまざまな機能を網羅したプラットフォームとしてStrolyを開発したという。

Strolyは企業や自治体向けでは、主にブランディングツールとして利用され、地図好きの商店主が参加する商店街や、街の文化保存会などで、街おこしに利用されるケースも多いそうだ。2月のリリースからこれまでに、京阪電車の1日乗り放題チケットの特典イラストマップや、上野文化の杜のイラストマップ古地図(江戸切絵図)錦絵に対応させたもの、神田祭の現代の巡行路明治初年の巡行路などが提供されている。

神田祭の巡行路(左が現代、右が明治初年のもの。明治の地図は皇居を上方向として書かれているため、北が右手になっている)

Strolyでは、自作のイラストマップを取り込んで正確な地図の位置情報と対応させ、オリジナル地図として表示することも可能だ。屋外の情報であれば、イラストでも古地図でも地図さえあれば(その地図のライセンスに問題がなければ)、どこでもGPS情報とマッピングでき、地図を多数持つ地図好きの有志とのコラボレーションによる、さまざまな地図の取り込みも進めているという。

地図を通して多様な世界の見方ができるプラットフォームへ

ストローリーは2005年に国際電気通信基礎技術研究所の社内ベンチャーとして始まり、2016年にMBOを経て、独立した。今回の調達資金は企業・自治体などのビジネス利用の促進と、開発のための人材確保に投資するとしている。開発では、Strolyに投稿された地図の利用状況をユーザーが見られる機能の将来的な実装や、ロックフェスティバルなどの大規模イベント会場での利用にも耐えるインフラ整備なども検討しているそうだ。また海外への進出もにらみ、多様な価値観を持つ、いろいろな国籍の人材を採用するとして、既に2名のフランス人を社員に迎えたという。

ストローリー代表取締役社長の高橋真知氏は、Strolyの目指す世界について「地図を通して、世界の多様な見え方をシェアできるプラットフォームにしていきたい」と話す。

地図とは元来、恣意的な位置情報を平面に表現したものだ。今や、戦時中には手に入れることもできなかった“正確な”地図が提供され、地図アプリで現在地まで分かるようになったが、地図の後ろに隠れたストーリーは簡単には見えてこない。Ingressのキャッチフレーズ「The world around you is not what it seems.(あなたの周りの世界は見たままのものとは限らない)」ではないけれども、“正しい”地図が必ずしも、その土地が持つ全ての顔を見せてくれるものとは限らない。

高橋氏は「そこに住んでいる人はその土地をどう見ているのか、過去の人はどう見ていたのか、未来にはどうなっていくのか。そういった情報はGoogle Mapだけでは意外と見えてこない。地図を通して街の新しい発見ができて、地域とのコミュニケーションにつながるようなサービスを提供したい」と言う。

「最終的には世界中から地図が投稿できるようにして『地図を投稿する文化』を創りたい。YouTubeがローンチした当初はみんな『誰が動画をアップロードするんだろう?』と思っていたはずだけれども、今では誰もが簡単に動画を投稿して、観光PRなどでも使われている。そんな感じで地図についても、みんなが緯度・経度の情報が付いたものをどんどん投稿するようになればいい。地図がトップダウンで提供されるものから、ボトムアップで共有されるものになればいいと思う」(高橋氏)

Googleのグローバル分散データベースCloud Spannerが一般供用を開始、MicrosoftのCosmos DBに対抗か

Googleのグローバルな分散リレーショナル・データベースCloud Spannerが、4か月という比較的短いベータを終えて、今日(米国時間5/16)から一般供用される。

このサービスの立ち上げ時のGoogleの位置づけは、既存の関係データベースが手狭になってきた企業のための代替製品、だった。GoogleのDeepti Srivastavaは、こう言っていた: “トランザクションデータベース(transactional database, 日常のトランザクション用のデータベース)のスケールで悩むようになったら、シャーディング(sharded database)かNoSQLにソリューションを求めようとするだろう。しかしこの二つのどっちかを選ぶとなると、今度はトレードオフに悩む。そんなときは、Spannerが最適解だ。それはユーザーが使い慣れているシステムでもある〔リレーショナル・データベース〕。われわれは、ユーザーがトレードオフでなるべく悩まないようにしたい”。

今回一般供用になって、Googleが約束する可用性は99.999%、そして強力な整合性(コンシステンシー)だ。今日のGoogleのブログ記事では、こう述べられている: “ソフトウェアとハードウェアを組み合わせたソリューションとして、Googleのグローバルなネットワーク全域にわたるアトミックなクロックとGPS受信機能を提供する。Cloud Spannerはさらに、完全に管理されたクラウドデータベースなので、精度と信頼性と性能も高い”。

Cloud Spannerの今回の一般供用は、MicrosoftがCosmos DBサービスを発表してから一週間足らずで行われたことになる。Cosmos DBはグローバル+分散という点でCloud Spannerに似ているが、整合性のモデルが多様だ。後者は99.999%のアップタイムだけだが、Microsoftはスループットやレイテンシーと共にコンシステンシーを保証している〔サポートするデータモデルもリレーションだけではない〕。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

新たなユニコーン誕生――メッセージングアプリのSymphonyが6300万ドル調達

世界最大級の投資銀行15社が出資者として名を連ね、現在までに20万人の課金ユーザーを獲得しているメッセージング・アプリのSymphonyが新たな資金調達を完了したことが分かった。同社が今回調達した金額は6300万ドルだ。そして、内情に詳しい情報提供者により、Symphonyのバリュエーションが10億ドルを超えたことも明らかとなった―これで、TechCrunchが2016年12月に報じた内容が正しかったことが証明されたことになる。

今回の資金調達ラウンドには、新たにフランスの投資銀行であるBNP Paribasも参加しており、彼らは今後Symphonyの取締役会に参加することになる。Symphonyによれば、既存投資家の大半もまた今回の資金調達ラウンドに参加しているという。それにはGoogle、Lakestar、Natixis、Societe Generale、UBS、Merus Capitalなどの企業が含まれており、Bank of America、BlackRock、Citibank、Deutsche Bank、Goldman Sachs、HSBC、JP Morganなど世界最大級の投資銀行も名を連ねている。Symphonyの累計調達金額は2億2900万ドルだ。

TechCrunchで2016年12月に前回の資金調達を報じた際、私たちは同社のバリュエーションについても触れていたが、それと同時に、Symphonyがシンガポールを中心とするアジア諸国の企業から200万ドル程度の資金を調達しようとしていることも伝えていた。

しかし、Symphonyのスポークスパーソンはこの件に関するコメントを控えている。また、彼らは今回の調達ラウンドが前回のものの延長線上にあるのか、もしくは新しいラウンドなのかも明らかにしていない。

「私たちに興味を示す投資家は大勢おり、彼らとの対話は常に行っています」とスポークスパーソンは話し、「私たちはすでに十分な資金を調達したと考えています」と加えた。また、BNP Paribasは「戦略的パートナーであり、それが私たちが彼らと手を組むことを決めた理由の1つでもある」とも話している。

BNP Paribasのグローバルマーケット部門長であるOlivier Osty氏は、「デジタルトランスフォーメーションはBNP Paribasのグローバルマーケット戦略の中核であり、私たちにとって、フィンテック(企業)と手を組むことはその重要なプロセスの一部です。Symphonyのような、エキサイテイングかつイノベーティブな企業とのパートナーシップにより、私たちは顧客に格別なサービスを提供することができます」と語る。

Symphonyは主に金融業界をターゲットとしたセキュアなメッセージングサービスを提供している。ユーザーとなる企業は、同アプリを利用して社内の従業員とコミュニケーションをとれるだけでなく、同じセキュアなフレームワークを利用して社外の人々ともメッセージのやり取りをすることが可能だ。SymphonyをSlackと同類のサービスとして考えることもできるだろう。しかし、Symphonyが他のメッセージング・サービスと異なるのは、同社が金融企業に特有の安全性に関するニーズに対応したプラットフォームを構築してきたという点だろう。

Symphonyの競合には他社が提供するメッセージング・アプリだけでなく、これまでに金融企業が利用してきたその他のコミュニケーション・サービスも含まれる。その1つがBloombergのターミナルで、これにはSymphonyよりもはるかに高いコストがかかる(ターミナル1台につき、年額2万5000ドル程度)。一方、Symphonyの利用料金はユーザー1人につき月額15ドルだ(これがSymphonyが「ブルームバーグキラー」と呼ばれる所以でもある)。

Symphonyはフリーミアムモデルを採用しているが、無料ユーザーの数は明らかにしておらず、「数千人単位」であると述べるに留めている。

他のメッセージング・アプリと同じく、Symphonyには基本的なメッセージング機能に加えて多種多様な機能を備えている。その例が、音声/ビデオ通話、そしてDow Jones、Selerity、Chart IQ、S&P、Fintech Studiosなどが提供する拡張機能のマーケットプレイスだ。

彼らの戦略は今のところ上手くいっているようだ:彼らはこれまでに160の金融企業を顧客として獲得しており、今回調達した資金によって他の業種にも拡大していく構えだ。次にSymphonyが狙うのは、金融業界と同じくメッセージングサービスに安全性を求める法律関連や会計業界。また、これらの業種と同じように厳しいプライバシールールを敷くヘルスケア業界もターゲットとして捉えている。

「プラットフォームを世界中に拡大していくにあたり、今回の調達ラウンドに参加した投資家からのサポートに非常に感謝しています」と語るのは、Symphony創業者兼CEOのDavid Gurlé氏だ。「Symphonyのコミュニティが広がるにつれ、私たちは顧客により大きな価値を与えることができており、今回の資金調達はそれを象徴するものです。Symphonyの効率性は、統合されたコラボーレーション・プラットフォームと合理化されたワークフローによってもたらされており、顧客がレガシーツールを廃してSymphonyを中核ツールとして利用したいと願っているという事実がそれを裏付けています」。

[原文]

(翻訳:木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

ニューヨークの新進スタートアップ5社がDisrupt NY, Startup Battlefieldの決勝に残った

2日間で20社がステージに立った本誌TechCrunch主催Disrupt NYのStartup Battlefieldでは、さまざまなプロダクトがプレゼンテーションされ、審査員たちの質問を浴びた。

そして選ばれたのが、明日(米国時間5/17)決勝を戦う5つのスタートアップだ。その5社とは:

Collider

Colliderの3DプリンターOrchidは、射出成形製品のような高品質の金属製品を作り出す。まだプロトタイプ機の段階だが、安全かつ安価なのでオフィスや研究室などでも使える。

Domuso

Domusoは貸家貸室の条件に柔軟性を持たせ、同時にオーナーや管理会社が家賃を効率的に集められるようにする。同社は家賃支払いの処理を高速化し、一時的滞納者にはローンの便宜を提供する。

NuCypher

NuCypherは、企業がクラウド上のビッグデータを安全に利用/分析できるための暗号化レイヤ(layer, 層)を提供する。「ビッグデータのための防弾チョッキ」が同社のキャッチフレーズだ。

RecordGram

RecordGramはミュージシャンが曲を作って登録する、スマートフォン上の録音スタジオアプリだ。グラミー賞を取った音楽プロデューサーWinston “DJ Blackout” Thomasとラジオやデジタル音楽のベテランErik Mendelson、そして“This is Why I’m Hot”がヒットしたヒップホップのShawn Mimsらが協同ファウンダーだ。

Sunrise

Sunrise Healthは、より良いメンタルヘルスを目指す介護つきのグループチャットで、匿名性による開放性、専門家セラピストのガイド、いじめなどの緊急事態をAIが監視、といった特長や機能を持つ。今ベータバージョンのこのグループチャットによるセラピーアプリは、患者たちが無料で利用できる。施設などには、有料のSaaSとして提供される。


決勝は明日(米国時間5/17)の東部時間午前11時に始まる。もちろん、ライブでストリーミングする。そして今や、Disrupt SFの出場者を受け付けている。



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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))