アイルランドのベッティング界ベテランが米国でラグビーに賭けNFT対応ファンタジースポーツ取引所を設立

アイルランドのベッティング界のベテラン、Paddy Power(パディー・パワー)氏が設立したファンタジースポーツ取引所が、グローバルな展開を目指し、NFT対応のライブトレーディングをラグビーファンに提供開始する。

American Sports Exchange(ASX Sports、アメリカン・スポーツ・エクスチェンジ)は、ニュージーランドのデジタルメディア企業であるRugbyPassと契約を結び、同社のデータを利用して、ASXが運営するラグビー試合の仮想株式市場にファンが参加できるようにした。

ASX Sportsは2021年5月に立ち上げられ、11月初めにApple(アップル)およびAndroidアプリストアで同社の取引所を公開した。この取引所では、ユーザーがeスポーツやファンタジースポーツ選手の仮想株式を売買することができ、選手のパフォーマンスやファンの需要に応じて、その価格がリアルタイムに反映される。Six Nations Rugby Championship(シックス・ネイションズ、6カ国対抗)に先駆けて、2022年初頭にASXの取引所でバーチャルラグビーゲームが開始される予定であると、パワー氏はTechCrunchのインタビューで述べている。

RugbyPassは、1千万人以上の視聴者にリーチするという。米国市場への進出を明確に掲げているASX Sportsにとって、欧州、オーストラリア、アジアで人気のあるラグビーは意外な選択のように思える。

しかし、ダブリンからマイアミに本社を移したばかりの同社は、スポーツ分析会社Gembaによると、880万人の熱心なラグビーファンがいるアメリカで、ラグビーの人気が高まっていることに賭けている。

「NFTは非常にエキサイティングなバズワードで、米国がその中心となっています。米国は次世代ファンタジー(スポーツ)の本拠地であり、それは事実上、当社がしようとしていることです。だからこそ、マイアミに拠点を置き、そのおかげで多くのチャンスを得ているのです」とパワー氏は語る。

ASX取引所のユーザーは、特定の選手の株式を購入・保有することができるが、NFTのオーナーとなるのは、スポーツチーム自身とそのスポンサーだ。ASXでのバーチャルチームのオーナーシップに関するパートナーシップ契約の細部については、各チームが個別に交渉することになるとパワー氏は述べている。

パワー氏は以前、彼の父親にあたるDavid Power(デビッド・パワー)氏の会社であるPaddy Power Betfair(パディ・パワー・ベットフェア)でマーケティングを担当していた。Paddy Power Betfairは2019年にFlutter Entertainment(フラッター・エンターテインメント)としてリブランドし、米国のスポーツベッティング最大手であるFanDuel(ファンデュエル)の株式の過半数を取得した。ASXは、米国の多くの州、特にニューヨークのような大きな市場がスポーツベッティングを合法化しようと動いていることから、NFLやNBAなどのリーグと提携するパートナーとして自社を位置付けたいと考えている。

ASXは、Disney(ディズニー)、Caesars(シーザーズ)、Fox Sports(Foxスポーツ)などの既存企業とのパートナーシップを獲得するために、急速に資金を調達しているが、その背景には、規制緩和がある。ASXは、5月のローンチに先立ち、クラウドファンディングで250万ユーロ(約3億2000万円)の資金を調達し、その資金で約30名の開発者チームを雇用した。

パワー氏によると、同社は2022年初めにシリーズAラウンドの調達を予定しており、現在、米国の一流スポーツフランチャイズやリーグとの交渉を進めているとのこと。

ASXは先週、初の公開ゲームを開催した。これは、イングランドのプレミアリーグのLiverpool(リヴァプール)対Arsenal(アーセナル)戦をバーチャルに再現したものだ。

「何千人ものプレイヤーが参加し、プレイ中に取引が行われるなど、非常に高いエンゲージメントを得ることができました。喜ばしいことです」とパワー氏は語った。

画像クレジット:under a CC BY-SA 2.0 license.

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Aya Nakazato)

日々のプロセスを自動化、開発者が重要なタスクに集中できるようにするツールのRaycastが約16.9億円調達

開発者向け生産性向上ツールのRaycast(レイキャスト)は、Accel(アクセル)とCootue(クーチュ)を中心としたシリーズAで1500万ドル(約16億9100万円)の資金を調達した。また、このラウンドには、エンジェル投資家として、Hopin(ホピン)のCEO兼創業者であるJohnny Boufarhat(ジョニー・ブファルハット)氏、Stripe(ストライプ)の製品責任者であるJeff Weinstein(ジェフ・ワインスタイン)氏、GitHub(ギットハブ)の元CTOであるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏、Checkout.com(チェックアウト・ドットコム)のCTOであるOtt Kaukver(オット・カウクバー)氏などが参加した。

Raycastは、元Facebook(フェイスブック)のソフトウェアエンジニアであるThomas Paul Mann(トーマス・ポール・マン)氏とPetr Nikolaev(ペトル・ニコラエフ)氏によって2020年に設立された。彼らは、異なるSaaSツール間で開発者が継続的にコンテキストスイッチを行うことで日々失われる時間を取り戻す方法を模索していた。

「私たちが会社を始めたのは、コンピューターとの向き合い方を改善したいと思ったからです。私たち自身も開発者として、ほとんど価値を提供しない忙しい作業に多くの時間を費やしていることに気づきました。むしろもっと重要な仕事に時間を費やしたいと思ったんです。これがRaycastの前提であり、仕事を早く終わらせるためのツールを提供します」RaycastのCEOであるトーマス・ポール・マンは、TechCrunchのインタビューに答えている。

Raycastは、コマンドラインにインスパイアされたインターフェースにより、開発者が情報を見つけ、更新することを容易にすることを目的としている。このプラットフォームは、日々のプロセスやタスクの自動化を可能にし、開発者が重要なタスクに集中できるようにする。このデスクトップソフトウェアは「Superhuman」や「Command E」などの同業他社を参考にしており、ユーザーはキーボードショートカットを使ってすばやくデータを引き出し、修正することができる。ユーザーは、Jiraでの課題の作成や再修正、GitHubでのプルリクエストのマージ、ドキュメントの検索などを簡単に行うことができる。基本的に、Apple(アップル)のSpotlight検索の開発者向けバージョンであり、ソフトウェアエンジニアが開発作業以外のすべての部分を単一のツールを使って操作できるようにすることを目的としている。

Raycastの成長に関して、わずか12カ月で、2020年10月に130人だったデイリーアクティブユーザーを現在までに1万1000人以上に増やし、その間に2000万以上のアクションがプラットフォーム上で実行されたと述べている。チームは現在12名のメンバーで構成されており、年内にはさらに多くの人材が入社する予定だ。

また、Raycastは、エクステンションAPIとストアをパブリックベータ版として公開し、開発者がカスタムエクステンションを構築し、チームやコミュニティで共有できるようにした。同社によると、このベータ版では、1カ月間にコミュニティが100以上のエクステンションを構築し、Figma、GitHub、Chrome、Notion、YouTube、Twitterなどのサービスにも接続しているという。Raycastは現在、エクステンションAPIとストアを公開し、世界中の開発者に開放している。

画像クレジット:Raycast

マン氏は、今回の資金調達について、Raycastは開発者の生産性向上分野のリーダーになりたいと語っている。「それが、今回の資金調達の目的です。今回の資金調達は、チームの規模をさらに拡大するために使用します。私たちは、このプラットフォームを誰もが利用できるようにして、誰もが望むツールを構築できるようにしたいと考えているんです」と述べている。

Raycastは今回の資金調達を利用して、開発者やツールのコミュニティの構築に注力し、プラットフォームの成長を加速させるとともに、チームレベルでのRaycastの導入も計画している。同社は今後も個人の開発者に重点を置いていくが、生産性向上のためのツールやワークフローを他の人と簡単に共有できるようにすることにも可能性を見出している。米国時間11月30日より、企業は早期アクセスプログラムに登録して、チーム向けの新機能を利用できるようになる。ユーザーは、チームのニーズに合わせてカスタムエクステンションやリンクを構築・配布できる、独自の社内ストアを作成することができるようになる。

「チームはエクステンションを構築し、それをチームメンバーと個人的に共有することができます。カスタムセットアップで生産性を向上させる社内ツールがあれば、チームメンバーも恩恵を受けることができるよう、それをチームメンバー内に共有することができます。これにより、チームとしての生産性を維持し、普段抱えている忙しい業務に費やす時間を節約することができます」とマン氏は語る。

RaycastのシリーズA資金は、2020年10月に行われた270万ドル(約3億円)のシードラウンドに続くものだ。今回のラウンドは、Accelがリードし、YC、Jeff Morris Jr.(ジェフ・モリスJr.)氏のChapter One(チャプター・ワン)ファンド、さらにエンジェル投資家のCharlie Cheever(チャーリー・チーバー)氏、Calvin French-Owen(カルヴィン・フレンチ・オウエン)氏、Manik Gupta(マニック・グプタ)氏が参加した。

AccelのパートナーであるAndrei Brasoveanu(アンドレイ・ブラソヴェアヌ)氏は「Raycastへのシード投資を担当して以来、Raycastが開発者コミュニティで成長し、牽引していることに感銘を受けてきました。これは、Raycastが開発者にとって不可欠なツールになる可能性を秘めているという当初の確信を裏付けるものであり、APIやストアの立ち上げやチームへの拡大によって、チームがさらに前進することに期待しています。我々は、トーマス氏とペトル氏の野心的な冒険を引き続きサポートできることをうれしく思います」と述べている。

画像クレジット:Raycast

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(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

AWS、4つのクラウドベースのアナリティクスサービスがサーバーレス化

re:Inventカンファレンスにおいて、AWSは米国時間11月30日、同社の4つのクラウドベースのアナリティクスサービス「Amazon Redshift」「Amazon EMR」「Amazon MSK」「Amazon Kinesis」をサーバーレスとオンデマンドサービスで利用できると発表した。AWSのCEO、Adam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏のキーノートによれば、それはAWSの顧客の要望だったという。これらの新サービスは本日から、公開プレビューで利用できる。

セリプスキー氏の主張によると、AWSと競合する企業の一部は、1つのデータベースで何でもできると主張するが、正しくはワークロードの性質によって正しいデータベースを選ぶべきである。そして、アナリティクスのサービスについても、同じことがいえる。ただし顧客はまたこれらのサービスの利用にともなう、インフラストラクチャの(構成などの)違いに煩わされたくない。クラスターの管理を自分でやらなくてもよくなったように、ユーザーは自分が使うリソースだけにお金を払いたい。たとえばRedshiftでは、データウェアハウスを使っているときだけ払いたい、アイドル状態に対して払う必要はないだろう。

「Amazon Redshift Serverlessは、開始するのに適したコンピュートリソースを自動的にプロビジョニングします。より多くの同時接続ユーザーや新しいワークロードによって需要が進化すると、データウェアハウスはシームレスかつ自動的にスケールして変化に対応します。オプションでデータウェアハウスの基本サイズを指定することで、コストやアプリケーション固有のSLAをさらにコントロールすることができます」とAWSのDanilo Poccia(ダニロ・ポッチャ)氏は、本日の発表で述べている。

同様に、データのストリーミングを扱うAWSのサービスであるKinesisは、今では完全な管理をともなうオンデマンドモードを提供している。これの新しいキャパシティモードでは、データのトラフィックに応じて自動的にスケールする。

本日の発表は、AWSが市場の声に応えていることの明らかな証拠だ。サーバーレスのアナリティクスは、すでに多くの競合他者や資金力のあるスタートアップが提供している。

画像クレジット:Ron Miller

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

AWSがノーコードのMLサービス「Amazon SageMaker Canvas」を発表

AWSは米国時間11月30日、新しい機械学習(ML)サービス「Amazon SageMaker Canvas」を発表した。新サービスは既存の機械学習サービスとは異なり、高度な技術を持つデータサイエンティストやエンジニアではなく、企業内のあらゆるエンジニアやビジネスユーザーをターゲットオーディエンスにしている。SageMaker Canvasは、ポイント&クリックインタフェースを使って、誰でも機械学習の予測モデルを構築できることを約束している。

この謳い文句に聞き覚えがあるとすれば、それはAzureなどが同様のツールを提供しているからかもしれないが、それでもAWSには、多くの企業がすでにすべてのデータをAWSに保存しているという利点があるかもしれない。

画像クレジット:Amazon

「SageMaker Canvasは、Amazon SageMakerと同じ技術を活用し、データを自動的にクリーンアップして結合し、何百ものモデルを内部的に作成し、最もパフォーマンスの高いモデルを選択して、新しい個別予測またはバッチ予測を生成します」とAWSのAlex Casalboni(アレックス・カザルボーニ)氏は今回の発表で書いている。「二値分類、多クラス分類、数値回帰、時系列予測など、複数の問題タイプをサポートしています。これらの問題タイプにより、コードを1行も書かずに、不正行為の検知、解約の削減、在庫の最適化などのビジネスクリティカルなユースケースに対応することができます」とも。

当然のことながらこのサービスは、AWSのフルマネージド機械学習サービスであるSageMakerに支えられている。

ここでの基本的なアイデアは、ベーシックなCSVファイルに至るまで、ユーザーはあらゆるデータセットを使用することができ、そのデータセットのどの列をCanvasが予測すべきかをユーザーが決めるということだ。しかし、従来のMLツールに比べてはるかに簡単なユーザーエクスペリエンスではあるが、ドラッグ&ドロップとまではいかないのが現状だ。結局のところ、AWSだからだ。全体としては、最新のノーコードアプリケーションというよりも、AWSコンソールでの作業に近いものとなっている。

画像クレジット:Ron Miller

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

フォーミュラEが「地球上で最も効率的なレースカー」となる第3世代のマシンを発表

電動フォーミュラカーによるレースシリーズを展開しているFormula E(フォーミュラE)が、地球上で最も効率的なレースカーを発表した。各チームはこの新しい第3世代(Gen3)のマシンを2022-23年シーズンで使用することになっており、2022年春に納車された後、テストを開始できるようになる予定だ。

Gen3は、第2世代のマシンよりも軽量・小型化されているだけでなく、レースで使用するエネルギーの少なくとも40%は回生ブレーキによって生成されると、フォーミュラEと国際自動車連盟(FIA)は述べている。そのため、Gen3は、リアに油圧ブレーキを持たない初のフォーミュラカーとなる。

また、Gen3は車体の前後両方にパワートレインを搭載した初のフォーミュラカーでもある。フロントに250kW、リアに350kWのパワートレインを搭載しており、合計でGen2の2倍以上に相当する600kWの回生能力を備える。

さらに、電気モーターは最大で350kW(470bhp)の出力を発揮し、最高速度は320km/hに達する。フォーミュラEとFIAによれば、そのパワーウェイトレシオは、同等の最高出力を発生する内燃機関の2倍の効率になるという。

画像クレジット:Formula E

Gen3は持続可能性を念頭に置いて設計されたマシンだ。ネット・ゼロ・カーボンとなり、壊れた炭素繊維製部品はすべてリサイクルされる。タイヤには26%の持続可能素材が使用されている。

「第3世代のマシンを設計するにあたり、私たちは高性能、効率性、持続可能性が妥協せずに共存できると実証することを目指しました」と、フォーミュラEのJamie Reigle(ジェイミー・ライグル)CEOは、声明の中で述べている。「FIAと協力して、私たちは世界で最も効率的で持続可能な高性能レーシングカーを開発しました。Gen3は、これまでで最も速く、軽く、パワフルで、効率的なレーシングカーです」。

フォーミュラEは、まだGen3のデザインを完全に披露しているわけではない。いくつかのティーザー画像が公開されただけだ。しかし、数カ月後には各チームがテスト走行を開始する予定であるため、我々がこのマシンの全貌を目にする日もそれほど先のことではないはずだ。

編集部注:この記事はEngadgetに掲載されている。本稿を執筆したKris Holtは、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Formula E

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(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

AWS第3のカスタムチップ「Trn1」は機械学習モデルのトレーニングを高速化

顧客のワークロードのパフォーマンスを上げるためにカスタムチップに頼る企業が増えているが、Amazonもその例外ではない。同社は2019年に、機械学習の推論学習を高速化するためにInferentiaチップを導入した。その後、同社は2020年に機械学習のモデルの学習専用である第2のTrainiumチップをローンチした。そして本日、AWSはこれまでの流れの続きとして、最新の機械学習チップ「Trn1」を発表した。

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AWSがカスタム推論チップのInferentiaを発表
AWSが機械学習トレーニング用の新カスタムチップTrainiumを発表

初めてAWS re:Inventのキーノートを担当するAdam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏は米国時間11月30日、最新のチップに関する発表を行った。

「Trainiumからパワーをもらっている新しいチップ、Trm1を発表できることに、私はワクワクしています。Trm1はクラウドでディープラーニングモデルをトレーニングするための最高のコストパフォーマンスと、EC2での最速のパフォーマンスを提供してくれるでしょう」とセリプスキー氏は語った。

続けて「Trn1はEC2のインスタンスとしては初めて、最大で毎秒800ギガバイトの帯域を提供します。そのため、大規模なマルチノード分散型トレーニングのユースケースには絶対に最適です」という。これは画像認識、自然言語処理、不正検知、予測などのユースケースに有効なはずだとのことだ。

さらに、これらのチップをネットワーク化して「ウルトラクラスター」とすることで、より強力なパフォーマンスを発揮することができる。

「これらを一緒にネットワーク化して、何万もの訓練アクセラレーターがペタバイト規模のネットワーキングへ相互接続した状態を、私たちは『ウルトラクラスター』と呼んでいます。そうしたウルトラクラスターの訓練を、強力な機械学習スーパーコンピューターが行い、パラメータが何兆個もあるような複雑な深層学習のモデルでも快速で訓練できます」とセリプスキー氏はいう。

セリプスキー氏によると、同社はSAPなどと協力して、この新しい処理能力の利用を追究していく計画だとのことだ。

画像クレジット:Ron Miller

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

AWSがKubernetesクラスタを自動的にスケーリングするオープンソースツール「Karpenter」を公開

米国時間11月30日、Amazonはラスベガスで開催されている同社の顧客向けカンファレンスAWS re:Inventで、オープンソースの新しいKubernetesクラスタスケーリングツールであるKarpenter(カーペンター)を発表した。

クラウドコンピューティングの利点の1つは、必要なリソース要求に合わせて自動的にスケーリングできること、と少なくとも理論的にはいわれている。しかし現実には、Kubernetesクラスタの管理担当者は、サービス停止を防ぐために適切な量のリソースがあるかどうを注意深く監視していなければならない。

Karpenterは、そのクラウドコンピューティングの理想を現実にするために開発された。その利点について、AWSのChanny Yun(チャニー・ユン、尹 錫璨)氏は、新機能を紹介するブログを書いている。

「Karpenterは、変化するアプリケーション負荷に応じて適切なサイズのコンピュートリソースを割り当てることで、お客様のアプリケーション利用率とクラスタ効率を改善します。Karpenterは、アプリケーションのニーズを満たすリソースをジャスト・イン・タイムで計算する機能を提供しており、近々クラスタのコンピュートリソースを自動的に最適化してコスト削減、性能改善ができるようになります」とユン氏は述べている。

Karpenterは、Kubernetesの負荷を分析し、リソース制限のために開始できないポッドが必要としているリソースを特定する。次に、クラウドプロバイダーに情報を送り、それに基づいてコンピュートを追加あるいは削除してもらう。

ここで重要なのは、オープンソースツールであるため、KarpenterはAWSクラウドリソースに特化して作られているのではなく、あらゆるクラウドプロバイダーに対して内在するKubernetesクラスタに関する情報を送るのに使えることだ。Karpenterは、Kubernetesの負荷を判定するために、KubernetesのパッケージマネージャーであるHelm(ヘルム)を利用している。Karpenterが対象のプロバイダーでコンピュートリソースを自動的に設定するための許可も必要になる。

Karpenterは、Apache 2.0ライセンスの下で提供されるオープンソースツールで、すでに利用可能だ。

画像クレジット:Ron Miller / TechCrunch

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(文:Ron Miller、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ブレット・テイラー氏がSalesforceの共同CEOに昇格

Marc Benioff(マーク・ベニオフ)氏はJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏と同じように取締役会会長に就任し第一線から退く準備ができているのではないかという憶測が以前からあった。そして噂では、Bret Taylor(ブレット・テイラー)氏が昇進するのではないかと言われていたが、ベニオフ氏はまだその準備ができていなかったようだ。テイラー氏は米国時間11月30日、Salesforce(セールスフォース)の共同CEOに昇格した。

社長兼最高執行責任者(COO)だったテイラー氏は、ベニオフ氏の直属ではなく、副会長兼共同CEOとしてベニオフ氏と一緒に働くことになった。2019年に157億ドル(約1兆7810億円)で買収したTableau(タブロー)や、2020年末にテイラー氏が陣頭指揮を執って277億ドル(約3兆1420億円)で買収したSlack(スラック)のような大型買収により近年大きく事業を拡大してきたSalesforceにとって、今回のテイラー氏の昇格は今後の運営に適した方法だとベニオフ氏は考えている。

カバーすべき領域はたくさんあり、1人ですべてを担うのはおそらく困難な仕事なのだろう。「私たちは新しい世界にいて、Salesforceは顧客にとってかつてないほど重要で戦略的な存在になっています。ブレットと私は、信頼、カスタマーサクセス、イノベーション、すべての人への平等という共通の価値観を大切にしながら、ともにSalesforceを次の章へと導いていきます」とベニオフ氏は(当たり障りのない)声明を発表した。

さすがのテイラー氏も、ベニオフ氏と並んで食物連鎖の頂点に立つ機会を得たことに感謝しているようだ。「22年前に彼が共同設立した会社を率いるために、彼とパートナーを組むことは非常に名誉なことです。Salesforceの社員、開拓者、顧客、そして会社と世界をより良い場所にするためにサポートしてくださるすべての関係者に感謝しています」とテイラー氏は声明で述べた。

Salesforceが共同CEOの手法を取るのは、今回が初めてではない。以前、Keith Block(キース・ブロック)氏が2018年からその役割を担い、2020年に退任した。

初期のソーシャルネットワークであるFriendFeed(フレンドフィード)でCEOを務めていたこともあるテイラー氏は、2009年から2012年までFacebook(フェイスブック)でCTOを務めていた。同氏は、Salesforceが2016年にQuip(クイップ)を7億5000万ドル(約850億円)で買収した際にSalesforceに加わった。そして他の長年の幹部を飛び越して、すぐに昇進した。2019年には社長兼COOに昇進し、今日までベニオフ氏のすぐ下に付けていた。

11月30日にTwitter(ツイッター)の独立取締役会長にも就任したテイラー氏にとっては、なかなかの1週間のようだ。

画像クレジット:Salesforce

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

AWS、モノや環境のデジタルツインが簡単に作れる新サービス「IoT TwinMaker」を発表

米国時間11月30日、AWSのre:Inventカンファレンスにおいて同社はAWS IoT TwinMakerを発表した。この新サービスを使うと、現実世界のシステムのデジタルツインの作成と利用が容易にできるようになる。

デジタルツインとは、例えば建物、工場、生産ライン、設備などを仮想的に表現したもので、実世界のデータを定期的に更新することで、表現したシステムの動作を模倣するものだ。

この新サービスにより、ユーザーはビデオフィードやアプリケーションなどのソースからデータを接続することで、単一のリポジトリにデータを移動させることなく、デジタルツインを作成することができると同社はいう。

「次のAWSサービスの内蔵データコネクタを使用できます。機器や時系列のセンサーデータ用のAWS IoT SiteWise、ビデオデータ用のAmazon Kinesis Video Streams、ビジュアルリソース(例えばCADファイル)やビジネスアプリケーションからのデータの保存用のAmazon Simple Storage Service(S3)です。また、AWS IoT TwinMakerは、他のデータソース(SnowflakeやSiemens MindSphereなど)と併用する独自のデータコネクタを作成するためのフレームワークも提供しています」と、AWSは新サービスに関するブログ記事で説明している。

同社は、デジタルツイングラフが作成されると、ユーザーは物理的環境のコンテキストでデータを可視化したいと考える可能性が高いと指摘している。これに対応するため、AWS IoT TwinMakerは、ユーザーの物理システムの仮想表現と接続されたデータソースの関係を組み合わせたデジタルツイングラフを作成する。これにより、ユーザーは実世界の環境を正確にモデル化することができる。また、ユーザーは既存の3Dモデルをインポートして、工場などの物理的空間の3Dシーンをアレンジすることができる。そこから、接続された機械学習サービスからのインサイトとともに、インタラクティブなビデオやセンサーデータのオーバーレイを追加することもできる。

AWSは、このサービスには、Grafana Labsが提供するオープンなダッシュボードおよび可視化プラットフォームのマネージドサービスである「Amazon Managed Grafana」のプラグインが付属していると指摘する。

AWS IoT TwinMakerは、バージニア州北部、オレゴン州、アイルランド、シンガポールでプレビュー版が提供されており、今後、他のAWSリージョンでも提供される予定だ。

画像クレジット:AWS

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

AWSがより早いメインフレームの移行とモダナイゼーションのための新ソリューションを発表

米国時間11月30日朝に開催されたAmazon(アマゾン)のカンファレンス「AWS re:Invent」で、同社はメインフレームの移行とモダナイゼーションのための、シンプルな名称の新プラットフォーム「AWS Mainframe Modernization」を発表した。

同社のユーザーは本日から、メインフレームから移行するために、いくつかの異なる方法を取ることができる。それは「リフト&シフト」アプローチでアプリケーションをほぼそのまま持ってくるか、リファクタリングを行ってクラウド上でアプリケーションをマイクロサービスとして分解するかだ。しかし、どちらの方法もそう簡単ではなく、アプリケーションのソースコードの複雑さを評価し、他のシステムとの依存関係を理解し、コードを変換またはリコンパイルし、さらにすべてが動作するかどうかをテストしなければならないため、プロセスが完了するまでに数カ月から数年かかることもある。

「これは非常に面倒な作業であり、多くの要素が絡み合っています」とAWSのCEOであるAdam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏は会見で述べた。「また、AWSパートナーが移行を支援してくれるとはいえ、長い時間がかかることもあります」と付け加えた。

新しいソリューションの「AWS Mainframe Modernization」では、その代わりにAWS上でメインフレームアプリケーションの移行、モダナイゼーション、作動をより迅速に行うことができる。同社は、一連の開発、テスト、展開ツールとメインフレーム互換のランタイム環境を用いて、メインフレームのワークロードをクラウドに移行するのにかかる時間を最大で3分の2に短縮できる、としている。また、このソリューションでは、顧客がメインフレームアプリケーションの準備状況を評価・分析した上で、再プラットフォーム化とリファクタリングのどちらの方法を取るかを選択し、計画を立てることができる。

再プラットフォーム化したい場合、Mainframe Modernizationソリューションは、コードを変換するためのコンパイラと、変換中に機能が失われていないことを確認するためのテストサービスを提供する。アプリケーションのリファクタリングや分解をしたい場合、例えばコンポーネントをEC2やコンテナ、Lambdaで実行できる場合は、Mainframe Modernizationソリューションを使用して、COBOLコードを自動的にJavaに変換することができる。Migration Hubでは、複数のAWSパートナーやソリューションにわたる移行の進捗状況を1カ所で追跡することができる。

Amazonはこのシステムを、セキュリティと高可用性、スケーラビリティ、弾力性を提供する、機敏でコスト効率の高い(オンデマンドの従量制リソースによる)管理されたサービスだとアピールしている。


画像クレジット:Ron Miller

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

クアルコムが4nmプロセス採用のスマホ向け最新SoC「Snapdragon 8 Gen1」を正式発表

クアルコムが4nmプロセス採用のスマホ向け最新SoC「Snapdragon 8 Gen1」を正式発表

クアルコムはSnapdragon Tech Summit 2021の1日目に、4nmプロセス採用のスマートフォン向け最新SoC「Snapdragon 8 Gen1」を発表しました。

「Snapdragon 8 Gen1」は、Snapdragon 888の後継となるハイエンドSoCで、今回から名称をリブランディング。ソニー・シャープ・シャオミ・OPPOなど各社から搭載端末が登場予定で、最初の商用端末は2021年内に登場します。

まず、デジタル運転免許証やデジタル自動車鍵の実用化に向けたGoogle主導のセキュリティ新規格「Android Ready SE Alliance」に世界で初めて対応します。

性能面では、新しいAdreno GPUの搭載によって、Snapdragon 888比でグラフィックレンダリング性能が30%向上。一方で消費電力は25%削減しています。

ゲーミングも強化しています。モバイル向けSoCとして初めて、視覚損失を抑えつつフレームレートを可変とするVariable Rate Shading Proに対応。また、Snapdragon 888比で同じ消費電力で2倍のフレームを生成できるなど、電力効率も高めています。

イメージング性能も強化しており、18bit ISP(画像処理プロセッサ)の内蔵によって、Snapdragon 888の約4000倍となる、毎秒32億画素の画像を撮影できる処理性能を誇ります。モバイル初となる8K HDR動画撮影に対応し、10億色を超える階調のHDR10+撮影にも対応します。

AI性能もSnapdragon 888比で強化しています。第7世代AIエンジンは共有メモリ容量とテンソルアクセラレーターの処理速度がそれぞれ2倍に向上し、トータルで4倍の性能向上をうたっています。

AIを活かした機能としては、Leica Leitz Lookフィルターを搭載し、カメラ撮影時にLeicaのボケ効果を再現可能。Hugging Face社の自然言語処理により、よりインテリジェントなパーソナルアシスタント機能も提供できるといいます。また、Sonde Health社との協業により、端末上のAIによって健康状態を見極めることを目的に、ユーザーの音声パターンを分析するモデルも高速化しています。

通信面では、第4世代目の5Gモデル「Snapdragon X65」の搭載により、下り10Gbps・上り3.5Gbpsの5G通信に対応します。最大3.6GbpsのWi-Fi 6 / 6E通信にも対応します。また、SoC内のSecure Processing Unit内においてSoC統合型のSIM「iSIM」をサポートします。

オーディオ面では、Bluetooth 5.2とCD品質ロスレスワイヤレスオーディオを提供するaptX LosslessをサポートするSnapdragon Soundに対応します。

Google Cloudと提携も発表

クアルコムはこのほか、AI分野でGoogle Cloudとの提携も発表。Google CloudのVertex AI Neural Architecture Search(NAS)を、スマートフォンやPC、オートモーティブ、IoT向けSnapdragonプロセッサに組み込みます。

Vertex AI Neural Architecture SearchはまずSnapdragon 8 Gen 1に搭載し、その後幅広いクアルコムの製品に組み込みます。また、Vertex AI Neural Architecture Searchは開発者が利用可能なQualcomm Neural Processing SDKに統合されます。

Engadget日本版より転載)

アマゾンが数日でプライベートモバイルネットワークの設置・拡張できるAWS Private 5Gのプレビュー版公開

米国時間11月30日午前、Amazon(アマゾン)のAWS re:Inventカンファレンスで、同社はAWS Private 5G(AWSプライベート5G)のプレビューを発表した。ユーザーが独自のプライベートネットワークを容易に展開、管理するサービスだ。新機能の狙いは、現在多くの企業が直面している5Gの活用という課題に対応することだ。AWSのCEOであるAdam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏は、AWS Private 5Gを使えば、プライベートモバイルネットワークの設置と拡張が数カ月ではなく数日でできるようになる、と語った。

「モバイル・テクノロジーの利点を、長い計画サイクルや複雑な統合、高額の初期費用といった障壁なく享受することができます」とセリプスキー氏が基調講演で述べた。「ネットワークをどこに作りたいのか、ネットワーク容量をどうしたいのかを当社に知らせていただければ、必要なハードウェアとソフトウェアにSIMカードをお送りします」。

画像クレジット:AWS

セリプスキー氏は、AWS Private 5Gがネットワークの設定、展開を自動的に行い、デバイスの追加やネットワークトラフィックの増加に合わせて、容量をオンデマンドで拡張できることを説明した。初期費用やデバイス当たりのコストはかからず、顧客は要求したネットワーク容量とスループットに対してのみ料金を支払う。

「多くのお客様が、さまざまな制約に対応するために独自のプライベート5Gネットワーク構築を望んでいますが、プライベートモバイルネットワークの展開には、多くの時間と費用、予測されるピーク容量に合わせたネットワーク設計が必要になり、複数ベンダーのソフトウェアとハードウェアのコンポーネントを購入、統合しなくてはなりません。また、お客様自身でネットワークを構築できたとしても、現在のプライベートモバイルネットワーキングの価格モデルでは接続デバイスごとに課金されるため、数千台のデバイスを利用するケースでは価格的に利用が困難です」と新サービスを紹介するブログで会社は述べた。

Amazonは、AWS Private 5Gは展開を簡易化することで、顧客が独自の4G/LTEあるいは5Gのネットワークを迅速に展開し、接続デバイス数を容易に増減できること、使い慣れたオンデマンドクラウドの価格モデルを利用できることなどを説明している。

AWS Private 5Gのプレビュー版は米国で公開される。利用するためには、ここで申し込みができる。

画像クレジット:AWS

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ネクイノがNTTコミュニケーションズおよびアーク・イノベーションとフェムテック事業で提携、2022年度内に新事業を展開

ネクイノがNTTコミュニケーションズおよびアーク・イノベーションとフェムテック事業で提携、2022年度内に新事業を展開

インターネットを用いた婦人科遠隔医療サービス「スマルナ」(Android版iOS版)を展開するネクイノは11月29日、NTTコミュニケーションズ、システム開発やコンサルティングを行うアーク・イノベーションと共同で、ヘルスケア業界向けプラットフォームを活用し、婦人科向けの高付加価値な事業展開を行うための業務提携を締結したことを発表した。「スマルナ」の利用者データを活用したフェムテック事業の拡大を検討する。

婦人科では定期検診を受ける人が少なく、女性特有の健康問題が顕著化しているという。そこでは、医療データに基づいた、個人に合わせた治療プランや予防医療が必要となるが、個人情報を含む医療データは病院間での提供が難しく、十分に活用されていない。そこでこの3社は、スマルナで取得したデータを安全に利活用することで、婦人科領域の新たな高付加価値サービスの提供を目指すことにした。

具体的には、ネクイノが利用者の同意の上で収集した問診データやオンライン診療データ、提携クリニックの治療データなどをNTTコミュニケーションズのヘルスケア業界向けプラットフォーム「Smart Data Platform for Healthcare」に蓄積し、加工・分析を行い、データの管理や匿名化などで個人情報を安全に活用し、高付加価値な事業モデルにつなげるとしている。Smart Data Platform for Healthcareでは、データの安全な保管や、本人同意の取得管理、匿名加工や秘密計算などにより、機微な個人情報の安心・安全な活用を推進する。

事業モデルの例としては、データの統計情報化による新しい保険商品の開発が挙げられている。医療関連の記録を基に、リスクの細分化や個人に合わせた商品設計が可能になるという。また、スマルナを通して医師から受診勧奨や健康アドバイスを行うことで、罹患リスクを低減し保険料の適正化が図れるとのことだ。

この提携では、3社は次のように役割分担をする。ネクイノはスマルナで取得したデータの活用、高付加価値なヘルスケアサービスの検討と提供。NTTコミュニケーションズはSmart Data Platform for Healthcareの提供。アーク・イノベーションは3社共同の事業モデルの構築と実装支援。それらを通じて、2022年度内に婦人科向け保険サービスなどの新たな事業を展開するとしている。

NASA、2030年までに国際宇宙ステーションを民間に置き換える意図を詳述

NASAのOffice of Audits(内部監査室)は、国際宇宙ステーション(ISS)が退役した後、ISSを1つまたは複数の商業宇宙ステーションに置き換えるというNASAの取り組みについて、詳細な報告書を作成した。ISSの運用終了は2024年に予定されているにもかかわらず、すべて2030年まで延長されることを示している。つまりそれが、軌道上で人間が滞在するための科学施設を民間企業に引き継ぐことができる時期であると、NASAでは想定しているようだ。

今回の監査では、基本的に現在のISSの維持・運用コストを詳細に説明するとともに、人間が長期間宇宙に滞在するための実験場となる研究施設や、月面における恒久的な駐留の確立や火星探査を含む深宇宙探査の鍵となる技術を開発・実証するための施設が、今後も必要不可欠であると考えている理由を説明している。

結論として、NASAは2028年までに商業宇宙ステーションの運用を開始し、予想されるISSの退役・離脱の前に2年間のオーバーラップ期間を設けたいと考えている。しかし、このスケジュールには明らかなリスクがある。NASAによれば、それは「市場の需要が限られていること、資金が不足していること、コスト見積もりが信頼できないこと、まだ要求条件が進化し続けていること」などだ。

一方、良いニュースも報告されている。それは最近、多くの企業が軌道上の商業ステーションの開発に興味を持っているようだということだ。Nanoracks(ナノラックス)とその親会社であるVoyager Space(ボイジャー・スペース)、そしてLockheed Martin(ロッキード・マーチン)のパートナーシップは、2027年までに商業宇宙ステーションを製造し、運用開始することを目指している。Blue Origin(ブルーオリジン)はSierra Space(シエラ・スペース)とBoeing(ボーイング)とともに、遅くとも2030年までにOrbital Reef(オービタル・リーフ)と名付けられたステーションを打ち上げたいと望んでいる。Axiom Space(アクシオム・スペース)では、退役前のISSに取り付けるモジュールを打ち上げ、それを2028年までにISSから分離させ、独自のステーションとして自力で軌道に乗せるという計画をすでに進めている

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NASA Office of Auditsによる報告書の全文は以下で読むことができる。

画像クレジット:Axiom Space

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ツイッターが安全ポリシーを拡大、本人承諾なしの人物画像投稿を禁止

Twitter(ツイッター)は米国時間11月30日午前、private information safety policy(個人情報に関するポリシー)を改訂し、個人のプライベートな画像や動画を本人の承諾なくシェアすることを禁止した。すでに同プラットフォームは、ユーザーが他人の個人情報を許可なくシェアすることを禁止している。住所や位置情報、個人を特定する文書、非公開の連絡先、財務情報、医療情報などだ。しかし今回の改訂によって、反ハラスメントや反ドキシング(doxxing、他人の個人情報をインターネット上にさらす行為)に関わるポリシーがさらに厳格化された。

これは、投稿前に写真やビデオに写っている人全員の承認を得ることを要求するものではない。しかし、写っている人がメディアの削除を要求した場合、Twitterは削除する。

「描写されている個人あるいは正式な代理人から、自分のプライベートな画像また動画がシェアされることを承諾していないという通知があれば、当社はそれを削除します」とTwitterがブログに書いた。「このポリシーは著名人や公人が写っているツイート・テキストをともなうメディアで、公共の利益のため、あるいは公的発言に価値を付加するものには適用されません」。

しかし、著名人のケースについてTwitterは、嫌がらせを目的としたコンテンツは、攻撃的な行為および相手の意に反するヌード画像を禁止する現行ポリシーに沿って削除する場合があることを明確にした。また同社は、著名人に関するコンテンツを削除するかどうかを判断する際、その情報がすでにテレビ、新聞など他の公開メディアに掲載されているかどうかを評価すると語った。

それでも、多くのTwitterユーザーがこの新ポリシーへの懸念をプラットフォーム上で表明している。例えばフットボールの試合で観衆の写真を投稿するとき、全員の承諾を得なくてはならないのではないか、このポリシーはユーザーを沈黙されるために使われるのではないかと、などを心配している。このため、懸念にこたえるべく、後に専用アカウントのTwitter Safetyが発表のスレッドにコメントを追加した。

「この意味をわかりやすく説明します」と同アカウントは書いた。「このポリシー改訂は、メディアの乱用による嫌がらせ、恫喝、個人情報の暴露など、女性、活動家、反対意見の人々、少数コミュニティのメンバーなどを不当に傷つける行為を抑制するものです」。

Twitterはさらに、大規模イベントに参加している人々を写した画像やビデオはポリシーに反しないことを説明した。もし、画像に写った人物、あるいはその人物の正式な代理人からの報告を受けた場合、Twitterは投稿を削除する決断を下す前に、そのツイートが「公的発言に価値を付加しているか」どうかを検討する。それでも、批判する人々は、どのコンテンツが価値を付加しているか、Twitterがどうやって判断するかについて懸念を示している。

「文脈が重要です。当社の現行の情報ポリシーには、ニュース価値の高いイベントや公共の利益になる発言に関する妥協のない報道を可能にするために、多くの例外が示されています」と同社は言った。

ちなみに、昨日インターネットを見なかった人のために書いておくと、Jack(ジャック・ドーシー氏)はTwitterのCEOを退任した。ただし、今回のポリシー改訂が彼の離脱と関係しているという痕跡はない。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nob Takahashi / facebook

AWS CloudWatchにユーザーモニタリングとA/Bテスト機能追加

2009年に導入されたAmazon CloudWatchは、AWSの顧客が自分のクラウドの利用状況や、それに対する支出をモニタできるツールだ。ラスベガスで行われているクラウドの顧客のためのAWS re:Inventカンファレンスで同社は、このプロダクトの2つの強化機能を発表した。

Amazonは、CloudWatchが提供するデータのタイプを徐々に増やしてきた。そして米国時間11月29日、ユーザーのモニタリングを追加された。そのReal User Monitoring(RUM)機能でAWSの顧客は、いつデプロイの問題が起きるのかを理解し、顧客が実際にそれを感じる前に修正行為を行なう。

AmazonのJeff Bar(ジェフ・バー)氏はブログで次のように述べている。「Amazon CloudWatchのRUMは、この体験を見つけて理解し改善するためのインサイトを与えるメトリクスを、あなたが集めるのを助けます。自分のアプリケーションを登録し、JavaScriptのコード片を各ページのヘッダーに加えてデプロイするだけです」。

これは驚異的なイノベーションとは言い難く、AppDynamicsやNew Relicなどが何年も前からやっていたことだ。しかし、Amazonの提供物の多くに倣ってこれらもAWSの内部の顧客にフルコースの体験を提供し、特にこのようなモニタリングは、ユーザーのAWSアプリケーションがおかしくなりそうなときに、そのことを教える。

もう1つの新機能は、CloudWatch Evidentlyと呼ばれる新しい体験ツールで、デベロッパーがこの機能のフラグを立てると、AWS上で構築中のアプリケーションの中でA/Bテストができるようになる。ユーザー全員にアプリケーションのアップデートを一斉に提供するのではなく、一部のユーザーを対象にしてアップデートをテストし、ユーザーがこの新しいアプローチやデザインを選ぶと何か問題が起きないか、むしろデベロッパーは前もって知りたいだろう。

新しい機能を経験する人びとの数を制限するためには、コード中のフラグを立て、この機能のためのパラメータをセットする。しかもこの機能では、実験のもう1つの形式としてA/Bテストができる。これもやはりごく一部のユーザーに対してアプリケーションの機能をテストし、どの機能やデザインが気に入られたかを知ることができる。

これらのどれも新しいものではない。Split.ioなどはいろいろな機能フラグを管理できたし、またOptimizelyなどは、A/Bテストの高機能バージョンを開発した。

CloudWatch EvidentlyはすでにAmazonの9つのクラウドリージョンで。従量制の課金により利用できる。CloudWatch RUMは、集めるイベント10万件につき1ドル(約113円)で、10のリージョンで利用できる。

画像クレジット:SOPA Images/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

愛犬のためのカスタムフレッシュフードPETOKOTO FOODSなど提供のPETOKOTOが約5億円のシリーズA調達

愛犬のためのカスタムフレッシュフードPETOKOTO FOODSなど提供のPETOKOTOが約5億円のシリーズA調達

ペットウェルネスブランド「PETOKOTO」を提供するPETOKOTOは12月1日、融資および第三者割当増資による総額約5億円の資金調達を発表した。引受先は、ベガコーポレーション、楽天グループ(楽天キャピタル)、ABCドリームベンチャーズ、DGベンチャーズ、Headline、15th Rock Ventures、既存株主のニッセイキャピタル、西川順氏、鈴木修氏。総調達額は約10億円となった。また、長期的なペットライフプラットフォーム構築に向け、住宅家具領域でベガコーポレーションと、トラベル領域・保険領域で楽天と業務資本提携を締結した。愛犬のためのカスタムフレッシュフードPETOKOTO FOODSなど提供のPETOKOTOが約5億円のシリーズA調達

調達した資金は、同社ミッションである「人が動物と共に生きる社会」の実現に向けて、プロダクト開発や顧客基盤・ユーザー基盤拡大に向けた営業・マーケティング、それらを支える優秀な人材の獲得などに使用する予定。経営および事業基盤をさらに強化することで、中長期的な成長を加速させる。

PETOKOTOは、「人が動物と共に生きる社会をつくる」というミッションの実現に向けて、2016年5月より専門家によるペットライフメディア「PETOKOTO」、同年12月より保護犬猫マッチングサイト「OMUSUBI」、2020年2月より愛犬のためのカスタムフレッシュフード「PETOKOTO FOODS」を提供。PETOKOTO FOODSにおいては、売上は前年比700%増加で成長しており、累計販売食数は500万食、会員数は1万人を超えたという。愛犬のためのカスタムフレッシュフードPETOKOTO FOODSなど提供のPETOKOTOが約5億円のシリーズA調達愛犬のためのカスタムフレッシュフードPETOKOTO FOODSなど提供のPETOKOTOが約5億円のシリーズA調達

今後同社は、家族品質のサービスを提供することでペットと暮らす体験を向上しペットライフのQOLを最大化するとともに、OMUSUBIを通じて殺処分問題をはじめ流通市場の課題解決を進めることで、ハード面・ソフト面でのペットライフの課題解決に取り組む。オンライン、オフラインでの接点の強化を進めるとともに、D2Cモデルを通じて取得した行動データから最良のプロダクト・サービスをパーソナライズに提案するペットライフのコンシェルジュプラットフォームの構築を進める。愛犬のためのカスタムフレッシュフードPETOKOTO FOODSなど提供のPETOKOTOが約5億円のシリーズA調達

米国でのサイバーウィークのオンライン支出は1.4%減の3.8兆円、早めに始まったセールが影響

米国の消費者がサプライチェーン不足を意識して早い時期に買い物したため、ホリデーショッピングシーズンの幕開けとなる、感謝祭からサイバーマンデーにかけてのサイバーウィークでは、eコマースの売上がわずかに減少した可能性がある。2020年のサイバーウィークの米消費者の消費額は344億ドル(約3兆8910億円)で、前年比20.7%増だった。しかし、AdobeのDigital Economy Indexのデータによると、2021年のオンライン消費は同1.4%減の339億ドル(約3兆8350億円)だった。

Adobeの分析は、米国のeコマースサイトへの1兆回を超える訪問データから得られたもので、18の製品カテゴリーにまたがる1億個の個別SKUを網羅しており、ホリデーショッピングの傾向を包括的に把握することができる。

分析で、ブラックフライデーから売上が減少していることが明らかになった。2021年のブラックフライデーのオンライン売上高は89億ドル(約1兆60億円)で、過去最高だった2020年の90億3000万ドル(約1兆210億円)から1.3%減少し、史上初の前年割れとなった。サイバーマンデーの売上高も前年比1.4%減の107億ドル(約1兆2100億円)で、2020年の108億ドル(約1兆2210億円)に1億ドル(約110億円)及ばなかった。一方、サンクスギビングデーのオンライン売上高は51億ドル(約5770億円)で横ばいだった。

これらの減少額は比較的小さいものだが、ホリデーショッピングの売上高が年々増加するという通常の傾向に逆行している。2020年の報道によると、パンデミックの影響で数年加速したとされるこの業界にとって、これはパンデミックの長期にわたる影響(現在ではサプライチェーンの不足も含む)が、消費者の心理にどのように作用したかを示す顕著な例となっている。Adobeによると、2021年は品不足を心配して、消費者がより早く買い物をした可能性があるという。

これを裏づけるデータがあるようだ。11月(11月1日〜11月29日)の消費者の消費額は1098億ドル(約12兆4155億円)で、2020年に比べて11.9%の大幅増となった。11月のうち22日がオンラインでの消費額が30億ドル(約3390億円)を超えたことを意味する、とAdobeは指摘している。これは新記録で、2020年に同じマイルストーンを達成したのがわずか9日だった。さらに、消費者は10月も買い物をした可能性があると同社は指摘している。

Adobe Digital InsightsのディレクターTaylor Schreiner(テイラー・シュライナー)氏は、サイバーウィークの調査結果について次のように述べている。「10月に早いセールがあり、消費者はサイバーマンデーやブラックフライデーといった大きな買い物デーをずっと待っていませんでした。サプライチェーンの問題や商品の在庫状況に対する懸念の高まりがさらに拍車をかけました。10月と11月のeコマース支出が分散され、オンラインショッピングの記録を更新するシーズンになりそうです」。

言い換えれば、2021年の売上は必ずしも全体的に減少するわけではなく、以前ほど集中しないということだ。実際、パンデミックの影響でオンラインショッピングが習慣化され、消費者は例年のようにブラックフライデーやサイバーマンデーの大規模なセールを待つのではなく、通常の活動と並行してホリデーシーズンの買い物をするようになったのかもしれない。

今回の減少にもかかわらず、年末商戦のピーク時には、例年とほぼ同じような状況が見られた。サイバーマンデーの買い物客は、おもちゃ(売上は2021年9月のシーズン前水準の約11倍)、ギフトカード(7倍)、書籍(7倍)、ビデオゲーム(6倍)、ベビー・幼児用品(6倍)など通常のカテゴリーで、2021年9月の売上と比較してより多く購入した。また、電子レンジや小型キッチン用品などの電化製品の売上もそれぞれ9.6倍、7.1倍となり、このカテゴリーの増加率は5.6倍となった。

加えて、2021年はスマートフォンによる売上も増加しており、例えばサイバーマンデーのスマートフォンによる売上は前年比8.4%増だった。しかし、これは実際には軌道修正を意味している。パンデミック前は、スマートフォンでの売上がオンライン売上の50%超を占めると予想されていた。しかし現在、自宅で仕事をしている消費者は、以前ほどスマホから買い物をする必要がないのだろう、とAdobeは指摘している。

買い物のパターンは異なるようだが、ホリデーシーズン全体では新記録を更新するとAdobeは見込んでいる。11月1日から12月31日までの期間、消費支出額は前年同期比10%増の2070億ドル(約23兆4000億円)に達すると同社は予測している。

画像クレジット:John Lamb / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

東南アジアの多通貨ネオバンクYouTripが約34億円調達、法人カードも発行

多通貨取引のコスト削減と効率化に特化した、シンガポールを拠点とするオンライン銀行のYouTrip(ユートリップ)は現地時間11月30日、シリーズAで3000万ドル(約34億円)を調達したと発表した。

同社創業者でCEOのCaecilia Chu(カエシリア・チュー)氏によると、今回のラウンドは、アジアの著名なファミリーオフィスがリードしたもので、このファミリーオフィスは匿名を希望しているが、前ラウンドにも参加している。

今回のシリーズAにより、YouTripの資金調達総額は6000万ドル(約67億円)を超えた。同社によると、これまでに全世界で8億ドル(約902億円)超のカード利用を処理し、取引数は約2000万件、アプリのダウンロードは150万回を超えている。

チュー氏はTechCrunchに対し、YouTripが資金調達に踏み切ったのは「変曲点」に達しているからだと述べた。

「東南アジアがパンデミックから脱却し、シンガポールがワクチン接種率で先頭に立っていることから、消費者の間では、旅行に対する大きな需要の高まりと、消費者心理の回復が見られました。eコマースへの支出は確実に増加しており、旅行に関しては、シンガポールのワクチン接種済みトラベルレーンが始まって以来、1日の取引額が少なくとも2〜3倍に増加しています」。

YouTripはこうした追い風を楽観視しているが、旅行の回復については現実的なアプローチをとっている。中期的には、個人消費と、YouBizと呼ばれる複数通貨対応の法人カードを含む新しいB2Bビジネスに最も期待しているとチューは述べた。

YouTrip共同創業者でCEOのカエシリア・チュー氏

2022年、YouTripは地理的拡大にも注力する計画だ。現在、シンガポールとタイで事業を展開している同社は、フィリピンとマレーシアに進出するためにVisa(ビザ)と提携した。さらにチュー氏は、インドネシアとベトナムでのサービス開始に向けて、パートナーと話し合いを進めていると付け加えた。

TechCrunchが2019年にYouTripを取り上げたとき、コアな顧客層の1つは海外旅行者だった。そして新型コロナに見舞われ、同社は非常に迅速に適応しなければならなかった。

YouTrip Perksのような新機能を追加し、LazadaやShopeeといった業者と協力して最大15%のキャッシュバックを提供するパートナーシップチームを立ち上げた。「パンデミックの間、人々はオンラインで多くのものを購入していただけでなく、健康への意識も高まっていたため、スポーツ用品や健康補助食品の購入が増えました」とチュー氏は話す。「私たちは、ユーザーにとって最も関連性の高い業者をターゲットにして提携を促進してきました」。

同社によると、現在、取引額はパンデミック前のレベルに戻っている。YouTripは、消費者の支出や旅行の増加にともない、さらなる牽引力を期待しており、2022年初めに消費者向けアプリのブランドイメージを一新し、新たな決済機能を導入する予定だ。

また、法人向けカードであるYouBizも2022年初めに導入する予定だ。チュー氏は、同社がB2B分野に参入した理由の1つとして、フィンテックサービスを導入する中小企業が増えていることを挙げる。

「私たちは、パンデミックに強い企業になることがどれほど重要かを知っています」と同氏は付け加えた。「国境がいつ再開されるかと毎日ニュースを読むのはやめようと心に誓いました。私たちは、新しい旅行対策に関わらず乗り越え、成功させ続けます」。

同社はまた、中小企業におけるパラダイムシフトを目の当たりにした。

「彼らはフィンテック商品や新しい銀行商品に対して、よりオープンマインドになっています」とチュー氏は指摘する。「当社に関連して言えば、在宅勤務やハイブリッドモデルの普及により、企業の分散化が進んでいます。給与支払い、ベンダーへの支払い、さらには売上の受け取りや消費者への請求までもが世界中に広がっており、外貨のニーズは確実に高まっています。ですので、この市場に参入するには最適な時期だと感じています」。

YouBizの提供が始まれば、YouTripは、AspireSpenmoVolopayなど、法人カードを提供したり、中小企業分野に焦点を当てたりしているVCが支援する東南アジアのフィンテック企業数社の仲間入りをすることになる。しかしチュー氏は、中小企業向けのサービスは消費者向けのサービスに比べて巨大であるだけでなく「サービスが十分に行き届いていないため、大きなチャンスがある」と話す。

特にYouTripは、従業員数1人から1000人までの企業にフォーカスする計画だ。このセグメントを選んだ理由は、YouBizが従来の銀行口座の代わりになるものではないからだ。YouBizは、中小企業の外貨取引にかかる費用を削減することを主な付加価値としている。また、出張の再開を見据えて、経費管理ツールの導入も予定している。

「中小企業の部門では、1人勝ちにはならないと感じています。しかし、競争の話に戻ると、私たちはこの分野に注意深く参入しています。当社には、際立った2つの優位点があります。1つは、テックインフラとライセンスインフラをエンド・ツー・エンドで所有している唯一のネオバンクであることです」。

YouTripは「消費者向け決済サービスではマージンが非常に小さいため、最高のコストと価値を提供するためには、製品のロードマップを含めて、バリューチェーンを完全にコントロールできるレベルまで最適化する必要がある」として、自社の技術スタックに多くの投資を行った。

YouTripの2つ目の強みは、すでに強いブランド認知があることだ。「ビジネスオーナーと話をしていると、多くの人が自分の買い物のためにすでにYouTripを利用しています」とチュー氏はいう。この実績は、YouTripが中小企業に売り込む際に役立っており、チュー氏によれば、B2Bサービス開始に向けてすでに1000件の申し込みがあるという。

画像クレジット:YouTrip

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

銀行口座を持たないインドネシアの労働者向けサービスGajiGesaが約7.4億円調達、給料日前に給料を引き出せるEWAに注力

GajiGesaの給料日アクセス機能のユーザーフロー

インドネシアの労働者向けサービスに特化したフィンテック企業であるGajiGesa(ガジゲサ)は、プレシリーズAで660万ドル(約7億4500万円)の資金を調達したことを発表した。このラウンドは、MassMutual Ventures(マスミューチュアル・ベンチャーズ)がリードし、January Capital(ジャニュアリー・キャピタル)、欧州のEWA(給与サイクルの終了前に未払い賃金の一部を利用することができる金融サービス)会社のWagestream(ウェイジストリーム)(EWAはGajiGesaの主要機能)、Bunda Group(ブンダ・グループ)、Smile Group(スマイル・グループ)、Oliver Jung(オリバー・ジョン)氏、Patrick Walujo(パトリック・ワルジョ)氏を含むNorthstar Group(ノーススター・グループ)のパートナー、Nipun Mehra(ニップン・メーラ)氏(UlaのCEO)、Noah Pepper(ノア・ペッパー)氏(StripeのAPAC責任者)が参加した。戻ってきた投資家には、defy.vc(ディファイ.vc)、Quest Ventures(クエスト・ベンチャーズ)、GK Plug and Play(GK プラグ&プレイ)、Next Billion Ventures(ネクスト・ビリオン・ベンチャーズ)などがある。

GajiGesaの詳細については、250万ドル(約2億8200万円)のシードラウンドを実施した2月のTechCrunchによる同社のプロフィールを確認して欲しい。

アグラワル氏とマリノフスカ氏は、プレスリリースの中で、GajiGesaのチームは過去6カ月間で2倍の50人以上になったと述べている。このスタートアップは、今回の資金調達を、製品開発、インドネシアでの事業拡大、東南アジアの新市場への参入に充てる予定だ。

同社は、銀行口座を持たない労働者を対象としており、毎月の給料を待たずにすぐに給料を引き出すことができる「アーンド・ウェッジ・アクセス(EWA)」に注力している。

GajiGesaは現在、工場、プランテーション、製造業、小売業、レストラン、病院、テック企業など、さまざまな分野の120社以上の企業と取引している。同社は、顧客企業を対象とした調査によると、従業員の80%以上がEWA機能を利用したことで非正規の貸金業者の利用をやめるようになり、40%が請求書の支払いやデータリチャージなど、同社プラットフォーム上の他の金融サービスを利用しているとしている。

同社は「GajiTim(ガジティム)」と呼ばれる雇用者向けアプリを提供しており、これは東南アジアで「最初で最大の統合型従業員管理ソリューション」であると主張している。つまり、雇用主は、パートタイムやフルタイムの従業員、ギグワーカーなど、幅広い労働力の管理業務を行うことができるということだ。同社によると、GajiTimには現在20万人以上のユーザーがいるという。

今回の投資について、MassMutual VenturesのマネージングディレクターであるAnvesh Ramineni(アンヴェシュ・ラミネニ)氏は「(GajiGesaの)統合プラットフォームは、顧客中心の製品設計と世界クラスの技術インフラを組み合わせたもので、慢性的にサービスが行き届いていない市場に力を与え、東南アジアの何百万人もの人々の経済的回復力を高めるために、独自の地位を確立しています」と述べている。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Akihito Mizukoshi)