Facebookのエンタープライズ向けSNS「Workplace」が正式リリース

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Facebook at Workという仮の名がつけられたクローズド・ベータ版の公開から20カ月がたった今日、(先週の記事で予測した通り)Facebookがエンタープライズ向けソーシャルネットワーキング・サービスのWorkplaceをついに正式リリースした。

Workplaceに与えられたのは新しい名前だけではない。Workplaceは新しいタイプの料金モデルをもつ。月間アクティブユーザー数をベースにしたFacebookスタイルの料金設定だ。また、無料で提供される試作品段階だったにも関わらず、1000社以上の顧客を獲得したWorkplaceには大きな野心も込められている(1年前の顧客数は100社だった)。

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デスクトップ版とモバイル版のアプリが提供され、ニュースフィードやFacebookグループなどの機能も備えたWorkplaceを利用することで、社員同士はもちろん、社外の人々ともつながることが可能だ。Chatと呼ばれるダイレクトメッセ―ジ機能、ライブ配信機能、リアクションボタン、翻訳機能、ビデオ・音声通話機能を備えたWorkplaceが正式にローンチしたことで、これから誰でもこのサービスを利用できるようになった。「誰でも」という言葉こそ、この文のなかで最も重要な言葉だ。

Workplaceの狙いは、大衆を取り込むこと、そして他社が提供している同様のサービスとの違いをつくることである。企業向けメッセージング・ソフトウェアの典型的なユーザー、つまり「知識労働者」と呼ばれるようなホワイトカラーやデスクワーカー以外の人々を取り込もうとしているのだ。

これまでの典型的なユーザー層に加えて、Workplaceは店頭の販売員、機械のメンテナンス担当者、外回りの営業員なども取り込もうとしている。プライベートではFacebookを利用してはいるが、これまで企業内のデジタルなコミュニケーションに参加する機会のなかった人々だ。

「Facebook流のエンタープライズ向けソフトウェアをつくりたい」

Workplaceが誕生するはるか以前から、マーケットには数多くの企業向けソフトウェアが存在し、顧客の心をつかんで素晴らしい実績を残してきた。企業向けのコミュニケーション・ツールという分野では、SlackYammer、SalesforceのChatterHipchatJiveなどが主な競合サービスとなるだろう。

上記のサービスほど有名ではないものの、デスクワーカー以外の人々に特化したメッセージング・アプリもすでに多く存在する。Zinc(以前はCotapと呼ばれていた)、Beekeeperなどがその例だ。

なぜこのタイミングなのだろうか?その点について、WorkplaceのディレクターであるJulien Codorniouは「WorkplaceはFacebookとはまったく別に開発する必要がありました。さらに、SaaSのベンダーとなるためにはテストを重ね、さまざまな認可を得なければなりませんでした」と、Workplaceの開発拠点であるロンドンで行われたインタビューのなかで語っている。製品開発は現在も進行中だ。WorkplaceがUS/EU Privacy Shiledに加入したのはつい先週のことだと彼は言う。

Workplaceが従来のSaaSユーザーとは違った種類の企業をターゲットとしていることも理由の1つだ。「とても保守的な業界や政府機関などでも利用されることを確かめたいと考えていました」と彼は語る。「考えうるすべての地理的条件や業種でのテストを行いました。もっとも保守的な業種に関しては特にです。それにより今では、彼らから利用されるための準備は整ったと感じています。」

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Workplaceは史上初のサービスというわけではないが、その独自の特徴でユーザーを惹きつけようとしている。

その一つが料金モデルだ。エンタープライズ向けソフトウェアを展開する企業は、何種類かある標準的な料金モデルを採用している例がほとんどだ。その標準的な料金モデルには、ソフトウェアを利用する社員の数で利用料金が決まるモデル、ソフトウェアで利用できる機能数を基にした料金モデル、そして基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については料金を課金するというフリーミアム・モデルなどがある。

Facebookはこれらの従来モデルをすべて窓から放り投げ、彼ら自身のやり方で料金モデルを構築した。

すべてのユーザーに同じ機能を提供する一方で、アクティブ・ユーザー数によって料金が変わる仕組みだ。ここでいうアクティブ・ユーザーとは、少なくとも月に1度はWorkplaceを利用しているユーザーのことだ。アクティブ・ユーザーが1000人以下の企業では、ユーザー1人につき3ドルの料金が発生する。同じように、1001人以上かつ1万人以下の場合では2ドル、それ以上は1ドルとなる。

(比較のため、Slackの料金モデルを例に挙げよう。Slackのスタンダード・プランではアクティブ・ユーザー1人につき月額8ドルの料金が発生し、上位プランのSlack Plusでは15ドルとなる。年間契約すると料金は安くなる。大企業向けのエンタープライズ・プランの詳細はまだ明らかになっていない)

低価格で、かつ月間ユーザー数に基づいた料金モデルを採用した理由はいくつかある。なによりもまず、この料金モデルを採用することで料金の透明性を高めることができた。

しかし理由はそれだけではなく、この料金モデルを採用することでサービスの信頼性を高めることにもつながる。料金は実際に使った分だけしかかからない。また、Facebookでの広告と同じように、魅力のあるサービスを提供してはじめてFacebookに収益がもたらされる仕組みなのだ。

「Facebook流のエンタープライズ向けソフトウェアをつくりたかったのです」とCodorniouは語る。

この料金モデルに関するもう一つの興味深い特徴は、公開されている数字が限定されていることだ。Facebookが現時点での総アクティブ・ユーザー数を公開することはないだろう。しかし、同社がより規模の大きな企業や組織体に狙いを定めていることは明らかだ。

初期段階からWorkplaceのユーザーとなった企業として、3万6000人の従業員を抱えるTelenor、10万人のRoyal Bank of Scotlandなどがある。そして今日、Danone(従業員10万人)、Starbucks(23万8000人)、そしてBooking.com(1万3000人)などの企業がユーザーに加わったことを新たに発表した。

これらの企業に加え、Royal National Institute for the Blind、Oxfam、Goverment Technology Agency of Singaporeなどの組織や政府機関などもWorkplaceのユーザーだ。

Workplaceは有料のサービスだ。しかし、このサービスから大量の収益を得ることが彼らの目標ではないようだ。少なくとも初めのうちは。Codorniouによれば、Workplaceの目標はサービスの普及率を高めることであるという。

「InstagramやMessengerのようにWorkplaceを成長させていきます」と彼は言う。「マネタイズについて考える前に、まず最初の1年は成長させることを考えていきたいと思います。成長ついて考えるだけで頭がいっぱいなのです」。

Facebookと同じ要領で使えるというWorkplaceの特徴によって、他のサービスからユーザーを完全に乗り換えさせるとまではいかなくとも、試しに使ってみようという気にさせることはできるかもしれない。

Facebookというメインサービスの月間アクティブ・ユーザー数が17億人を超えた今、企業で働く人々の大半がFacebookをすでに使っているか、またはFacebookを知っていると言うだろう。

これが意味するのは、大半のユーザーがWorkplaceの見た目や使い方にすぐに慣れることができるということだ。それがクローズド・ベータ版で高いエンゲージメント率を達成した要因でもある。クローズド・ベータには1000社もの企業が参加し、すでに10万ものユーザー・グループが存在しているのだ。

「Workdayとのサービス統合よりも、使い勝手を向上させることの方がより重要」

過去にFacebook at Workを取り上げた記事でも述べたように、Workplaceはすでに浸透しているFacebookのデザインと同じような見た目をもっている。

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Workplaceにもニュースフィードがある。同僚や、頻繁にやりとりする他社の従業員を誘ってFacebookグループをつくることもできる。「Chat」と呼ばれるMessengerと同じようなメッセージング機能も備わっている。

ライブ配信や、グループでビデオ・音声通話をすることもできる。リアクションボタンを使ってさまざまな感情を表現することもできるし、自動でポストを翻訳してくれる機能もある。

それに加え、すでに他社のサービスを利用している大企業を取り込むための策として、正式リリース時点ですでに数社のサービスとの統合が完了している。ログイン機能や本人認証機能のOkta, OneLogin、Pingや、ストレージのBox、インテグレーターのDeloitteやSada Systemsなどの企業だ。

しかし、Workplaceで利用できる統合サービスの数は決して多いとは言えない。何百ものアプリがショートカットキーやコマンドで利用できるSlack流のやり方とは大きく異なっている。

Codorniouによれば、これは意図して狙ったものだという。

「サービスの使いやすさや、受け入れられやすい料金体系について顧客と話しあってきました」と彼は話す。「従業員が10万人いるなかで、その多くがコンピュータやデスクを持っていないというDanoneのCEOとの会話で分かったのは、WorkdayやQuipと統合されているということではなく、使い勝手の良さやエンゲージメントの方がより重要だということです」。

(この事について、興味深い補足情報:今のところ、他社がWorkplaceの販売会社として契約を結んだり、Workpalceとサービスの統合をする際、Facebookはそれらの企業に対し、事前にWorkplaceに登録して実際にサービスを使うことを求めているとCordorniouが教えてくれた。「使ってもない商品を売ることができるとは思いません」と彼は言う)

私が思うに、Slack流のサードパーティとの統合や、Messengerにも搭載されたチャットボットなどの要素が、今後すぐにWorkplaceにも取り入れられる可能性は高い。それは来年の春に開催されるFacebook F8コンフェレンスで明らかとなるだろう。

ひとまず今言えるのは、Workplaceがマーケットに与えた影響はとても大きいということだ。十数億の人々によるデジタル・コミュニケーションのデファクトスタンダードとなったのがFacebookである。そして今、彼らはエンタープライズの世界でも同じことを成し遂げようとしているのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Facebookがグループへの広告配信テストを開始、新たな収益源となるか

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Facebookの収益拡大に向けた次の一手は、グループ機能を利用している10億人のユーザーに対する広告配信だ。これでFacebookはニュースフィードを広告で溢れさせなくてすむ。”We’re testing ads in Groups(グループ内での広告テストを行っています)”という通知を見たユーザーからの連絡を受け、TechCrunchが確認したところ、Facebookはオーストラリア・カナダ・アイルランド・ニュージーランドを対象として、モバイル・デスクトップ版のグループ機能内で広告配信のトライアルを行っていると認めた。

「この度Facebookグループ利用者への広告配信テストを開始しました。ユーザーの反応を精査してから、今後どうするかについての決定が下される予定です」とFacebookはTechCrunchに語った。グループ内で表示される広告は、ニュースフィード上のものと同じスタイルになるようだ。掲載される広告は、グループのトピックや通常の個人情報に基いたターゲティングをもとにして決まる。

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Facebookは、2017年の半ばにはニュースフィードの広告数が上限に達すると見込んでおり、近年右肩上がりの収益増加率を支えるための新たな収益源を必要としている。本日ローンチされた、ユーザー数に応じて料金が変わる企業向けSNSのFacebook Workplaceからの収益や、Instagramの広告上限数の拡大によって、複数のサービスでその負担を分散できるかもしれない。ほかにもFacebookは、ライブ配信の途中に表示される広告や、Messenger経由で広告を配信するスポンサードメッセージのテストも行っている。

groups-heroしかし収益を拡大するための最も簡単な方法は、単にこれまでのような広告を掲載するチャンネルを増やすことなのかもしれない。その方法を取る上で、グループ機能は最適の対象となるだろう。

グループはFacebookにはじめから搭載されている機能のひとつで、もともとは、人権保護から音をたてて枯れ葉を踏みしめる喜びまで、ユーザーがあるアイディアや信念を支持しているということを表すためだけのものだった。その後グループ機能は2010年に改良され、ユーザーがただグループに加わるだけでなく、他のユーザーと交流もできるようなフォーラムへと姿を変えた。

2014年までにグループ機能の利用者数は5億人に達し、スタンドアローンのアプリも配信されはじめた。以降も、ユーザー間でモノを売買するグループやその他のコミュニティのおかげで、ユーザー数がさらにその倍に増加した。家族や友人で構成されるグループのほかにも、くだらないミームを共有するためのグループや同じ趣味を持つ人たちの集い、抗議活動や専門的な議論を行う場としてのグループなど、この機能はFacebookに欠かせないものとなった。

そして、各グループのテーマがここまで多岐に渡っているからこそ、グループ広告には価値があるのだ。Facebookが各グループを正確にカテゴリー別けする方法をみつけ、広告のターゲティング精度を上げることができれば、関連度合いが高く収益率の良い広告を、さまざまな興味をもったターゲットユーザーのもとへ配信することができる。

マンチェスター・ユナイテッドのページを「いいね!」しているという情報は、マンチェスター・ユナイテッドの熱狂的なファンのグループページをよく訪れているという情報に比べて、広告のターゲットを絞るためのシグナルとしては弱い。後者の方が、スポーツグッズを購入する可能性が高いということを正確に表すことができる。そのためFacebookは、ひねった名前が付けられたグループや、さまざまな内容の話が飛び交っているグループのトピックを正確に掴むための方法を考え出さなければならない。

groups-buy_sell-12また、毎月4億5000万人ものユーザーが売買グループを利用しており、ちょうどFacebookは彼らのための専用マーケットプレイスをローンチしたところだ。このような売買グループも広告主にとっては有力なターゲットとなるだろう。例えば、テレビやパソコンの売買が行われているグループをチェックしているユーザーに対しては、電機ブランドの広告を表示することができるのだ。もちろんユーザーが機嫌を損ねてサービスを使わなくなってしまわないように、Facebookは表示する広告の数には気をつけなければいけない。

Facebookグループは、公になっているニュースフィードと、閉じられたプライベートメッセージの中間点として機能することでユーザー数を伸ばしてきた。そして誕生から10年以上が経ち、ようやくこの機能がFacebookの利益に貢献するときがきた。念のためハッキリ書くと、Facebookはサービスのマネタイズにとんでもなく長い期間をかけることをいとわないのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Just Eatが350万ポンドをPOS関連システム統合サービスのFlypayへ投資

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オンライン食品デリバリー界の雄Just Eatが、イギリスのスタートアップFlypayへの投資を行った。Flypayは、チェーンレストランやパブが、用途に応じて使い分けている個々のシステムを統合するためのプラットフォームを運営している。350万ポンド規模となった今回のラウンドは、先日英メディアTimeOutがリードインベスターとなって700万ポンドを調達したラウンドAの延長とされている。

”戦略的提携”とも言われているJust Eatによる投資の結果、同社はFlypayが運営するFlytプラットフォームにおける、最新のパートナーテック企業となった。このプラットフォーム上では、予約やロイヤルティープログラムからデリバリーやレビュー管理まで、レストラン・パブ・バーが普段利用しているさまざまなシステムを統合することができる。

Flypayは当初、”ウェイターフリー”で会計ができるようなテーブル会計アプリの開発に注力しており、その後、オーダー・受け取りやテーブルでのオーダー、カウンターでの支払、ロイヤルティープログラムといった機能をそこに追加していった。

しかし、その頃から同社は、飲食業界で使われている個々のシステムと競合するのではなく、それらをまとめるようなプラットフォームを開発した方がサービスの価値が高まるのでは、と考えるようになった。

「私たちが新たに提供する、飲食店の運営会社向けのFlytプラットフォームを使えば、電子取引周りのシステム環境を大幅に簡素化できます。顧客やオーダーの管理を全て独自のアプリに統合することもできれば、私たちのプラットフォームを経由して、情報集積アプリやメッセージ・ボイスコマース、その他最新の技術を利用した他のプラットフォームへ各システムを接続することもできます」とFlypayのファウンダー兼CEO Tom Weaverは語る。

さらに彼は、「私たちの顧客は、さまざまな街に店舗を構えているカジュアルダイニングやパブブランドです。現在はWahaca・GBK・Jamie’s Italian・Fuller’s・Chilangoやその他多くのブランドにサービスを提供しており、最近イギリスでもっとも人気のレストランブランドとも契約を結んだところです。もう少しで情報が公開される予定で、その会社とは今までにないようなお店を作ろうとしています」と付け加える。

この点についてJust EatとFlypayは、今後ブランドを問わず全てのカジュアルダイニングの運営会社に対して”デジタルエクスペリエンス”を提供するために協業していくと話している。このコラボレーションを通して、Flypayはレストランやバーが既に持っているアプリに、Flyt経由でデリバリー機能を追加するサービスを開始予定だ。しかし、まだこれは始まりに過ぎない。

両社はさらに、実店舗での情報とJust Eatの顧客データーベースを紐付け、レストランやパブ、バーの運営会社が”デリバリーシステムを採用・有効活用”しやすくなるような施策を打ち出していく予定だ。

Just Eat CEOのDavid Buttressは声明の中で「Flypayへの投資によって、注文・支払・カスタマーサービス・デリバリー機能などを備えた、飲食サービス利用者のための、シームレスなシステムの開発を私たちは続けることができます。そうすれば、レストラン側はJust Eatを利用してデリバリサービスを提供できるようになりますし、カジュアルダイニングチェーンに対する私たちのサービスの訴求力も高まります。Flytプラットフォームは、カジュアルダイニング界のデジタルな部分を大きく変える力を秘めており、私たちはその可能性を信じています」と語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Samsung、Galaxy Note 7の生産を完全に終了

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Samsungは同社のGalaxy Note 7の生産、販売を完全に終了した。オリジナルモデルのバッテリー発火事故の発生を受けてリコールを実施し、バッテリーを対策部品と交換したにもかかわらず、新しいバッテリーを原因とするとみられる事故が続き、消費者の間に不安が広がっていた。

ニュースは最初にWall Street Journalで報じられ、Samsungの広報担当者がNote 7の生産中止の事実を確認した。われわれの取材に対して広報担当者は「SamsungがGalaxy Note 7の生産を恒久的に停止したという報道は事実だ」と述べた。

同社は生産中止に関してこれ以上何も明らかにしていないが、韓国当局に対して生産の中止を報告する文書中で「消費者の安全」を理由に挙げている。

昨日(米国時間10/10)、Samsungはキャリヤと販売店に対しNote 7の販売を停止するよう要請し、すでに販売された分については交換を受け付けることを発表している。Note 7の所有者は全額の返金ないし他のSamsungスマートフォンへの交換を受けることができる。また2回のリコールに対する「迷惑料」として25ドル分のギフト券を得られる。

最初のリコールは250万台前後のNote 7を対象として9月の上旬に行われた。同社はその後、Note 7の製造を一時中止していることを認めた。【略】

Galaxyブランドが傷付いたことを別にしてしても今回のバッテリーの発火、爆発によりSamsungが受けた打撃は軽くない。ReutersはNote 7の生産終了はSamsungに最大170億ドルの損害をもたらすとアナリストは推計していると報じた。

今日、Samsungの株価も8%下落した。2008年10月以來の大きな下落だ。同社の時価総額から190億ドルが消えたことになる

アップデート: SamsungはTechCrunchに対して以下の声明を送ってきた。

消費者の安全を考慮し、われわれはGalaxy Note7の販売と交換を中止し、これに伴って生産も中止することを決定した。

〔日本版〕上に引用されたツイートは「Samsungは次に生産するスマートフォンをなんと命名するだろう?」というジョーク。Galaxy Not FireやGalaxy Iceなどが提案されている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

デジタルコミックのスタートアップMadefireが初のVRアプリを提供

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デジタルコミックのスタートアップMadefireは、数日前にその最新の資金調達ラウンドの発表を行った。共同創業者兼CEOのBen Wolstenholmeは、同社が仮想ならびに拡張現実へ参入する準備が整ったと話した。彼はその約束の早期実現の期待に応えて、SamsungのOculus-powered Gear VRプラトフォーム向けのプレビューアプリをNew York Comic Conの会場で発表し、デモを行った。

以前Wolstenholmeは私に、コミック読書体験内にとどまりながらも「ネイティブデジタル体験」を与えるものの創出に挑戦していると語った。デモから判断する限り、新しいVR体験とともにその構想はまだ生きている – 音楽、サウンド効果、そしてアニメーションが加わっているが、それでも基本的にはコミックを読んでいる感覚なのである。

Wolstenholmeは、MadefireのVRに対するアプローチを、読書体験に3つ目の次元を追加するものとして説明してくれた。それ自体は3Dコミックではないのだが、読者として、コミックパネルの前に浮かんでいるような感覚を受けるだろう。

彼はそれを、劇場や洞窟壁画と交互に比較した、どちらのメタファーを好むとしても、今まで以上の没入体験を与えてくれるだろう。私もそれを試してみたが、あたかも作品と同じ空間にいるように感じた、タブレットやスマートフォンのスクリーンで読んでいる時に比べて、遥かに大きく圧倒的に感じることができた(コミックが360度のシーンを含むことができるのも役に立つだろう)。

Madefireのオーサリングツールは、クリエイターたちが作品の3次元的側面を比較的単純にカスタマイズし制御できるようにしてくれる筈だ、とWolstenholmeは語った。しかし同社はそのコミックライブラリ全体も自動的にアップグレードしている最中だ:「クリスマスまでには全部を揃えたいと思います」。

一方、デモアプリが現在含んでいるのは、一握りのタイトルである、例えばDCのInjustice: Year OneとMadefireオリジナルのMono: he Old Curiosity Shop (WolstenholmeとLiam Sharp作)などだ。

またこのニュースに関してコミック作家のDave Gibbonsと議論するチャンスがあった。彼はここ2、3年Madefireと一緒に作品作りをしている。彼は新しいVRサポートを含むMadefireフォーマットを賞賛していた、なぜならそれは作家に、作品の読書体験に対するより多くのコントロールを与えてくれるからだ。

「Madefireはスイートスポットを見つけました – 単なる仕掛けではなく、物語が重要なのです」とGibbonsは語った。「(オーサリング)ツールは誰でも使えます、なので自分自身の作品を生み出すことに何の障害もありません。私には素晴らしいことだと思えます」。

WatchmenThe Secret Service(映画KingsmanThe Secret Serviceの原作)の共作者として、Gibbonsはコミックのストーリーとキャラクタが他のメディアに入り込んでいくのを見ている。彼はコミックが「ごく最近は、コミックが映画に向けてのプロトタイプあるいはプレゼンテーション用ツールとして使われるようになっています」と語った。Madefireの新しいフオーマットを使えば、コミックはこれからも様々なものの跳躍台の役割を果たし、一方書き手や描き手が新しいテクノロジーや、読者を引きつけ続けるための新しい方法を、探求することを可能にするだろう。

「これまで、もうすべての見るべきものは見たよう気がして満足していました、なので、このように新鮮で新しく、そして役に立つものを見ることはエキサイティングなのです」とGibbonsは付け加えた。

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(翻訳:Sako)

Samsungが‘アート’を自称するArtPC Pulseは奇妙なデザインだからやっぱりアートかな

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ぼくがSamsungなら、PR部門が火消しに奔走している(比喩的な火と本物の火の両方だ!)今だからこそ、人びとの関心をがっちり捉えるビッグな新製品を出したい、と切に願うだろうね。でも、これは違う。こいつは、いつの間にか黙ってネットの店頭に並んだだけで、新製品発売を盛り上げる音も映像もプレスリリースも何もない。名前も、そんなそっけない態度にマッチしている。

DP700C6A-X01US ArtPC ArtPC Pulse Premium Desktop(短く言うとArtPC Pulse)は、円筒形のコンパクトなPCで、ひょっとしたらMac Proと対決する気か? そうかもしれない。高さが10.7インチだから、いまどき‘ちいさい’とは呼べない。またHPの奇妙な小型PC Pavilion Waveのように、布をまとってファッションを気取ってるのでもない。

ひとつだけ後者と共通しているのは、その体積の一部をスピーカーに捧げていることだ。HPはBang & Olufsenだが、こちらはHarman Kardonだ。その360度スピーカーが上部にあり、その下にちょっとしたアンビエントライティング(環境光)がある。正面にはUSB-CやHDMIなどのポート類盛りだくさん。内部はIntel Core i5プロセッサー、256GB SSD、RAM 8GB。

今は予約販売中で、お値段は1200ドル、上に挙げたニ機種の中間だ。発売は今月の末、ということだ。

出典: PC World

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Greylockが15番目のファンドを組成、新たに10億ドルをスタートアップに投資する

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Greylock Partnersは、新たに10億ドルをスタートアップに投資する。この息の長いベンチャーキャピタルは15番目のファンドを発表した。彼らは累計35億ドルを管理していることになる。

約50年の投資経験があり、Greylockは法人向けITとコンシューマー向けインターネットカテゴリーを牽引する企業に投資してきた。その中にはLinkedIn、Dropbox、Facebook、Airbnbが含まれる。彼らのリミテッドパートナーは、過去の成功事例と同じように、Greylockが次に大成するスタートアップを見つけることを期待している。

「割と一貫した戦略をとってきました」とGreylockのパートナーであるJosh ElmanはTechCrunchに話す。彼らのチームは常に「人々の暮らしを良くするプロダクト」を探してきたという。

Greylockはシードラウンドからレイターステージまで、どのタイミングでも投資することができるが、たいていの場合、その中間で投資を行ってきた。14個のファンドの95%以上の投資案件はシリーズAかBでの投資で、15番目のファンドでもこのアプローチを変えるつもりはないという。

探しているのは、「30人から1000人」に倍増しようと転換期にあるスタートアップとElmanはいう。Greylockは「小規模な若い会社から本当に大きく成長し、スケールが得られる」ような拡大しているチームに投資するという。Greylockは最近、注目を集めるGoFundMemusical.lyに投資した。

また、法人やコンシューマー向けビジネス以外にもGreylockは、メッセージング、仮想現実、機会学習、ロボティクスといった新興分野にも目を向ける計画だという。ElmanはAmazon Echoのようなボットや音声関連のプロダクトには特に期待しているという。

しかし、最も良いスタートアップに投資しようと同じように考える投資会社が多いと、その中で目立つのは難しくなる。Greylockの投資チームにはLinkedInの共同ファウンダーReid HoffmanやMozillaの前CEOであるJohn Lillyがいる。Greylockは彼らの業績と経験が他社との差別化になることを期待している。

他の最も優秀なベンチャー投資企業と同じように、Greylockも社内に人材パートナーグループを持っていて、このグループはスタートアップのチーム作りを助けている。 Jeff MarkowitzとDan Portilloが率いるGreylockの人材グループは、プロダクト、デザイン、開発で経験のある採用候補者やCXOクラスの役員に適した人材を探す。

「Greylockは会社と本当にパートナーシップを結ぶというアプローチを取ります。採用、プロダクト計画、戦略面を含めてです」とNextdoorの共同ファウンダーであるSarah Learyは言う。Learyは、Greylockでアソシエイトとして勤めた経験があり、Greylockは「私たちと同じ起業家として、同じような状況を経験したことがあるパートナーを多く抱える数少ない投資会社のうちの1つ」と話す。

170のIPOと120の「有益」な買収があり、Greylockの投資案件のいくつもが身を結んだ。近年のエグジットにはApptioPure StorageQuipTellApartがある。

しかし、どのベンチャーキャピタル同様、いくつかの投資がうまくいかないことも勘案し、多様性のある投資先ポートフォリオを築くことが成功の鍵だ。Greylockが投資した中で報われなかったものの中にはDigg、Cuil、ArsDigitaなどがある。

困難に直面した時、Greylockはスタートアップが助けを求めることができる存在になりたいと考えている。「どんな時も、1日の中でいつでも、連絡できる相手になりたいと考えています」とElmanはいう。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website

ドローン米も商品化、ドローンで田畑をセンシングするドローン・ジャパン

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ドローン・ジャパンは、米をはじめ田畑で農作物を生産する農家を支援するサービス「DJアグリサービス」を発表した(プレスリリース)。ドローンを活用して田畑の精密なリモートセンシングを実施、データ解析して生育状況を精緻に把握できるようにし、農家を支援する。ドローンによる精密かつ大量のデータ収集と、学術的なバックグラウンドを持つデータ解析により、例えば田畑に投入する肥料や農薬を減らしつつ生産性を高めることを狙っている。

価格は栽培期間ごとに1ヘクタールあたり4500円から(初期投資なし、ドローンの運用からデータ化解析まで含む)。2017年4月よりサービスを開始する。

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発表会から。左端がドローン・ジャパン代表取締役社長の勝俣喜一朗氏、右端が取締役会長の春原久徳氏。農業分野のデータ解析の専門家、ドローンの専門家、生産農家が集う異色の発表会となった。

同社のサービスを構成する要素は多岐にわたる。発表会ではドローンの専門家、農業分野のデータ解析の専門家、生産農家らが登場し、情報量が非常に多い内容となった。同社のサービスの重要な点を要約すると次のようになる。

  • 米MicaSense社のマルチスペクトルセンサーを搭載したドローンによるリモートセンシングサービスを実施する
  • ドローンの自律航行のためのソフトウェアArduPilotを開発するジャパン・ドローンズ社(Randy Mackay代表、今回の発表主体ドローン・ジャパンとは別企業)と協力する。例えばレーザーで測距するLiDARを搭載したドローンにより、高度が位置により変わる棚田に追従して高度を一定に保ちつつ飛行できるようにする。
  • ドローンのオペレータの集団「DJキャラバン隊」を組織し、データ収集にあたる。
  • ドローン運用管理では日立システムズのドローン運用統合管理サービスを活用する。
  • データ解析では、東京大学農学生命科学研究科の監修による「DJメソッド田畑数値比較システム」を開発、活用する。
  • 1〜2年後をメドに、水田の水温のデータを収集するため、水面を航行するドローンAigamo Droneを投入予定。
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同社のサービスの構成要素を示したスライド。複数分野のパートナーと手を組んだ。

パックご飯「ドローン米」を商品化

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ドローンを活用して栽培した米で作ったパックご飯「ドローン米」。海外へ輸出していく考え。

同社は農家支援のサービスを提供するだけでなく、生産した米の流通、特に海外輸出に目を向けている。その第一弾として、パックご飯「ドローン米」を商品化し、2017年3月より海外に販売する。すでに3件の農家が同社のDJアグリサービスの開発に協力しており、その水田からは2016年産の米が収穫されている。このドローンで栽培した米を使ったパックご飯が「ドローン米」だ。

「日本には海外の米が入ってこない代わり、海外に米をほとんど輸出していない。米をそのまま輸出すると関税が非常に高いが、加工品は別だ。パックご飯なら炊きたての風味が保たれる」(ドローン・ジャパン代表取締役社長の勝俣喜一朗氏)。

「日本のお米は年間800万トン作られているが、海外輸出は4000トン。しかし世界市場は2500万トンある。市場シェアでは0.04%。これを100倍にはできるんじゃないか」と勝俣氏は話す。

同社の第1号投資家が、エンジェル投資家の千葉功太郎氏である。千葉氏は自らもドローンを「よく飛ばしている」といい、今回はドローン市場の中核にある農業分野に目を付けた形だ。千葉氏は「世界で見ると、小麦やトウモロコシの栽培にドローンを活用する事例はあるが、米に特化してセンシングしたところが新しい。農家が抱える問題を解決し、中国を含むアジアに展開していける」と期待を話した。ちなみに、先日千葉氏がシードラウンド資金調達に参加したインフォステラ関連記事)は、人工衛星によるリモートセンシング需要をにらんだ人工衛星の市場を想定した企業の一社という位置づけとなる。

ディズニーが愉快な1本足跳躍ロボットをお披露目

ピッツバーグにあるDisney Researchの研究者たちは、1本足で飛び跳ねるロボットを作った。現段階では転倒せずに19回跳ねることができる。

Zachary Batts、Joohyung Kim、そしてKatsu Yamaneによるこのプロジェクトは、当初コンピューターシミュレーションとして開始され、ついにハードウェアとして実現された。研究者たちは彼らのシステムを、Marc Raibertのホッピングコントローラを使い、並列線形伸縮アクチュエーター(linear elastic actuator in paralle:またの名をLEAP)で制御している。現在それは転倒せずに、約7秒間ジャンプすることができる。

研究者たちは、一本足ロボットが、より複雑な運動のための最高のテストベッドであることを発見した。「足のあるロボットは有用です、特に有利なのは、水平ではない土地でも行動することができることで、見物客を複雑な動きで楽しませることも可能です(例えば色々な足取りで)」と彼らは書いている。「一本足のロボットは、足のあるシステムとしては最も単純なトポロジーで、跳ねるという足取りに限定されています。一本足跳躍ロボットは、運動制御アルゴリズムに対する最も簡単なテストベッドを提供してくれるだけではなく、安全で堅牢な地表移動を実現するためには高速で、力の要るアクチュエーションを必要とし、多足システムよりも大きな機械的ストレスにアクチュエーターは耐えなければなりません。こうした理由から、一本足跳躍ロボットは、足を使った移動に使用されるアクチュエーターのための理想的なベンチマークを提供します」。

私にはこいつは海賊Q-Bertのように見える、個人的にはこの1本足のロボット君主を歓迎したい。

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(翻訳:Sako)

3DプリントやVRのための3Dデザインを簡易化大衆化したいVectaryがシードで$2.5Mを獲得しニューヨークへ引っ越し

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3Dプリンターが気軽に買えるお値段になり、ユーザー人口が大きくなったことによって、新しい起業機会が出現している。それは、シンプルな3Dデザインツールだ。またVRが普及の端緒についたことも、そんなツールのニーズを拡大している。そこでもやはり、オブジェクトや環境を3Dでデザインしなければならない。

3Dプリントのネット上の大きなコミュニティとしてThingiverseがあるが、そこには3Dのモデルを作る機能はない。Autodeskの123dはプロのユーザーが対象だが、同社には子ども向けの無料のアプリケーションBlenderもある。しかしそれは、プラットホームとそのユーザーコミュニティではない。だからここには、コミュニティと3Dモデリングツールを合わせたプラットホームでもって、より広いオーディエンスを獲得できそうな機会がある。

Vectaryがねらっているのが、まさにそれだ。シンプルで使いやすいと同時に、プロが短時間でデザインできるために必要とする機能も揃っている。そして、デザインの共有や議論、カスタム化などのベースとなるコミュニティ機能も。

今回同社はシードラウンドで250万ドルを調達した。ラウンドをリードしたのは、ベルリンのBlueYard Capitalだ。シード前の段階でも投資をしたブラティスラヴァのNeulogy Venturesと、数名のエンジェル投資家も参加した。

CEOで協同ファウンダーのMichal Koorはこう語る: “工業デザインの仕事をしながら、デザインをもっと効果的にやりたいと考えていた。そこで余暇時間には、デザインをパラメータで制御できるツールを開発していた。たとえばスライダーをちょっと動かすだけで形状を変えたり、またそれに対する対話的なフィードバックが得られるようなやつだ。さらにその後、この方式にコミュニティが組み合わされば、誰もが容易に3Dモデリングを始められるようになる、と悟った”。そこで、もう一人の協同ファウンダーPavol Sovisとともに、Vectaryを立ち上げた。

Vectaryは、ブラウザー上で使えるWebアプリケーションである。いちいちゼロからデザインしなくても、コミュニティのページへ行って既存のモデルをカスタマイズすれば、たいがいのデザインは作れる。3Dモデリングという仕事が、これで一挙に易しくなり早くなる。今なら誰でも、ベータユーザーとして登録できる。

今はブラティスラヴァ在籍だが、今回得られた資金により、本社をニューヨークに移す予定だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

縫製マッチングプラットフォーム「nutte」、総額1億円の資金調達

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縫製に特化したクラウドソーシングサービス「nutte(ヌッテ)」を運営するステイト・オブ・マインドは、10月11日、総額1億円の第三者割当増資を完了したことを発表した。引受先はアクセルマーク、みずほキャピタル株式会社が運営するファンド、静岡キャピタルが運営するファンド、ガイアックスグループが運営するシェアリングエコノミーファンド、ほか個人投資家で、うち、みずほキャピタルとガイアックスは2015年11月に続き、2度目の第三者割当増資となる。

nutteは1点から縫製職人に依頼できる、日本初の縫製マッチングプラットフォーム。縫製を依頼したいユーザーと、登録した縫製職人をマッチングし、ファッションブランドの小ロット生産、アイドル衣装、着物リメイク、ペットアイテム作成など、企業から個人までさまざまな縫製の依頼を職人につないでいる。

元々縫製職人だったステイト・オブ・マインド代表取締役の伊藤悠平氏が、「小ロット注文と縫製職人を直接つなぐことで、職人が適切な所得を得られるように支援したい」という考えから、2015年2月にスタートしたnutteは、サービスリリースから約1年7カ月の2016年9月12日時点で会員登録数が1万人を突破。直近1年では約730%増加と大きく成長を遂げた。現在では、洋服など天然素材の染め替え、染め直しの「and Colors」や縫製資材のECサイト「糸柄市(いとがらいち)」といった、縫製に付随するサービスも展開を始めている。

2016年中には利用者数3万人、累計取引件数5000件、流通額2億円を目指すnutte。今回の資金調達で、開発体制やサポートなどの増強を図るとともに、資材ECや染めサービスなどの付随する事業についても開発体制を強化し、「縫製職人の活躍の場を増やす」という企業理念を実現すべく活動するという。

Ankerが車載ヘッドアップディスプレイRoavを間もなく出荷、Navdyのクローンらしい

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Navdyよ心せよ。Ankerがやってくる。この中国の消費者向け電子ブランドは、間もなく車載ヘッドアップディスプレイをリリースしようとしている。そのデザインと機能はNavdyによく似ているようだ。

そのプロダクトはRoavという名前である、そしてNavdyと同じように、デバイスはユーザーの電話から情報を取り出し、運転者の前に位置する透明なスクリーンの上に表示を行うようだ。商品画像には、ナビゲーション、メディア再生情報、車の速度、そして発信者IDが示されている。Roavは台座に固定された台座の上に載せられている ‐ これもNavdyと同じだ。

幾つかの画像以外は、この情報について知られていることは多くない。私たちは、詳細を求めてAnkerに問い合わせを行ったが、同社はまだ回答を返してきていない。Goroav.com製品のTwitterアカウントは9月末に作られている。Facebookページの開設は10月初旬に行われたようだ。

製品サイトによると、Roavは11月の出荷が予定されている。現在Navdyは、テストユーザーにその製品を出荷している。Navdyデバイスの一般的な入手可能性については、まだ発表されていない。

Doug Simpsonは2013年にNavdyを設立し、これまでに3回の資金調達ラウンドを通じて2680万ドルを調達している。同プロダクトは2014年にKickstarterに登場し、速やかに100万ドルを超える事前受注を手にした。もともと同製品は、2015年に出荷される予定だったが、それは実現しなかった。2016年7月に同社は、限られたユーザーに対して、ベータプログラムを通じて、事前受注分の一部を出荷し始めた。

3年前に発表されていたにも関わらず、Navdyはこれまで深刻な模倣製品(copy-cats)には直面していなかった。AnkerのプロダクトはNavdyのものを逐一なぞったもののように見える。そしてもし、Ankerの他の製品のことを思うなら、Roavもまともな品質を持っているに違いない。

元Googleのエンジニアによって、2011年にスタートしたAnkerは、Amazonのトップエレクトロニクスブランドだ。ポータブルバッテリーやスピーカーをサイト上で検索してみれば、Ankerのプロダクトが検索結果の上位を占めることになる。この中国企業は、安価なバッテリー、携帯電話ケース、キーボードとマウスを売り、そしてオフィスと家庭向けの新しいブランドEufyの名の下にランプやオイルディフューザー、そしてロボット掃除機まで手がけている。個人的には、Ankerの製品は手頃で信頼性が高いことは知っている。

私たちは、AnkerとNavdyにコメントを求めた。

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(翻訳:Sako)

PowerPointによるプレゼンに投票、Q&Aなどリアルタイムの対話的機能を加えるGlisserが$1Mのシード資金を獲得

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退屈になりがちなプレゼンテーションを、Q&Aやリアルタイムの投票などの対話的アクションで活性化するGlisserが、シード資金として100万ドルを獲得した。そのWeb上のサービスは、プレゼンのオーディエンスがスライドをソーシャルメディアに保存共有できるなど、そのほかの活性化機能もサポートしている。

Glisserのシードに参加した投資家は、Downing VenturesとLondon Co-Investment Fund、および匿名のエンジェル数名だ。得られた資金により、このロンドンのスタートアップは、ニューヨークにオフィスを持ちアメリカに進出したい、と考えている。

GlisserがこのWebサービスを立ち上げたのは2015年で、今ではAmex, Visa, Bloomberg, UBS, 政府の省庁など、およそ100の顧客を抱える。また、個人ユーザーのプレゼンターもおよそ1万名いる。

同社はこの夏、Microsoftの著名なプレゼンテーションソフトPowerPointとの統合化機能を加えて、MicrosoftのLondon Accelerator事業に参加した。今日(米国時間10/10)一般公開されたそのPowerPointアドインにより、PowerPointを使ってプレゼンしている人たちも、対話的な機能を活用できる。

“これにより、プレゼンターやイベントの主催者は、PowerPointでプレゼンをしながら、新しいコンテンツをアップロードすることもできる”、と同社は言っている。

Glisserの機能を統合したPowerPointのユーザーは、投票やライブのQ&A、オーディエンスのデバイスへのスライドの共有、オーディエンスのアナリティクスやフィードバックといった対話的機能を利用できる。

ユーザーであるプレゼンターは自分のスライドをGlisserのクラウドへアップロードし、そのプレゼンのURLをもらう。そしてプレゼンターとプレゼン参加者の両方が、そのURLを開いて対話的活動を行う。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Duolingoのチャットボットは会話を上達させてくれそうだ―当面iOSアプリのみ

多くのスタートアップがチャットボットの可能性に興奮している。語学学習サイトのDuolingoも最近、外国語の練習に役立つユニークなチャットボットをリリースした。

このチャットボットは フランス語、スペイン語、ドイツ語でのテキスト会話に対応しており、さまざまなトピックに応じて異なるキャラクターが与えられている。もちろん相手を本物の人間と間違えるユーザーはいないだろうが、ネイティブ・スピーカーとチャットで会話するのに非常に近い体験をすることができる。チャットの途中で困った場合は“help my reply”というヘルプ・ボタンを押すとどのように会話を続けたらいいかヒントが表示される。

上のビデオで短時間だがテストしてみた(現在この機能はiOSのみ)。スペイン語版をやってみたが、これはまあなんというかそこそこ話せるからだ。当然かもしれないが、ユーザーはチャットボットを利用するためにはDuolingoのレッスンの最初の部分をクリアしている必要がある。私はDuolingoのユーザーではなかったので妹のアカウントを借りた(サンキュー、Laura!)。

派手な色で描かれたキャラクターや、それぞれ特定のテーマから離れようとしないところなど、いかんにも語学の教科書風だが、会話の技能を高めるのに役立つのは間違いない。実際、外国語をこうして使ったのはずいぶん久しぶりだった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

強力なDDos攻撃アプリケーションMiraiがGitHub上でオープンソース化、逮捕回避のための煙幕か

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KrebsOnSecurityやそのほかのWebサーバーに大きなダメージを与えたボットネットのMiraiは、セキュリティの脆弱なIoTデバイスを利用して、大規模なDoS攻撃を仕掛ける。しかしその作者はこのほど、それのソースコードをGithub上に公開したらしい。

Cで書かれたその短いコードは、IPカメラなどインターネットに接続されたデバイスの上で実行される。rootのパスワードを試行によって探り当て、デバイスに侵入、事前に決めてあったターゲットにトラフィックを送る。試行するパスワードが書かれているコードは、このファイルにある。

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ハッカーはこのボットネットを使って、620GbpsのDDoSをKrebsOnSecurityへ送った。そこはBrian Krebsのセキュリティに関するブログとして、かねてから人気のサイトだ。そのボットネットは強力ではあるものの、当のIoTデバイスをリブートすれば止まる。また、デバイス側のシステムアップデートにより、被害機は徐々に減っているようだ。コードをHackforumsにポストしたハッカーのAnna-senpaiはこう述べている、“Miraiでは、telnetからだけで最大380k(38万)のボットを取り出していた。でもKrebsをDDoSしてからは、徐々にISPたちがそれらを掃除するようになった。今では最大は300k程度で、しかも減りつつある”。

Krebsはハッカーたちの逮捕を求めており、今回のコード公開は利他的動機によるものではない、と見ている。

彼曰く: “Anna-senpaiがMiraiのソースコードを公開した理由はよく分からないが、利他的な行為ではありえないだろう。悪質なソフトを開発している連中は、警察や警備会社などに居場所を突き止められそうになったら、ソースコードをばらまいて煙幕を張る。公開して誰でもダウンロードできるようにすると、コードの持ち主が即犯人、とは言えなくなるからね”。

そのコードは今Githubにあり、どうやら本物のようだ。ぼくはコンパイルしていないが、ファイルにはおもしろい情報がいろいろある。教材としての利用価値は、十分にあるだろう。もちろん、悪い連中にとっても、利用価値は十分あるけどね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

クラウドベースのレコーディングプラットフォームSoundtrapがシリーズAで600万ドルを調達

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Soundtrapはクラウドベースの音楽や音声のレコーディングプラットフォームで、今回シリーズAで600万ドルを調達した。北欧のVC、Industrifondenがリード投資家となり、既存の投資家に加え、新規の投資家もこのラウンドに参加している。Spotifyの前CFOとCOOを務めたPeter Sterkyも参加した。Sountrapはこれまでに累計850万ドルを調達したことになる。

Soundtrapは、ユーザー同士がコラボしたり、マルチプラットフォームで使えるAppleのGarageBandのようなサービスと言えば比較しやすいだろう。Soundtrapは音楽やポッドキャスト用の音声などを録音することができ、独自の音源ソフトウェアとMIDIシーケンサーを持つサービスだ。

SoundtrapはiOS、Android、Chromebook、Mac、Windows(特に後者の3つのSoundtrapのバージョンは、技術的に見事なブラウザベースのサービスだ)で、クロスデバイスに対応している。これによりソフトウェアの強みが最大限発揮される。

全ての作業はクラウドに保存されるため、前回保存したところから、別のデバイスで作業を再開することが可能だ。そして、他のユーザーとオンラインで協力する機能もある。

SoundtrapのCEOで共同ファウンダーのPer Emanuelssonは、このような仕組みにしたことに対し、Soundtrapは単に使いやすいものを開発したのではなく、人と一緒に音楽を作った方が断然楽しいということを知ってもらうためのツールというアイデアから開発したためと話す。

Chromebook対応に伴い、Soundtrapは教師と生徒の間でも広まっている。これは当初、Emanuelssonと彼のチームを驚かせるものだった。だがこのスウェーデンのスタートアップは、今年の初めには教育業界を主要なターゲット市場に位置付け、Soundtrapの教育用ライセンスも設置した。

また、SoundtrapはGoogle for Educationの公式パートナーである。このGoogleのプログラムは、学校をターゲットとし、浸透率も高まっている。結果的に、週に200校が新たにSoundtrapを教室で使うツールキットに追加しているという。

今回の調達ラウンドには他にも、スウェーデンのプロデューサーで作曲家のAndreas Carlsson、TruecallerのファウンダーAlan MamediとNami Zarringhalam、TruecallerやPreziのアーリーインベスターMagnus Bergman、Nordic CapitalのKristoffer MelinderとJoakim KarlssonとUlf Rosberg、レコードレーベル、出版社でマネジメント会社のAristotracksのCEOで共同ファウンダーのLinus AndreenやLars Bergströmも参加している。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

産業用ロボットが人間に取って代わるのは良いことだ

Rotherham, UK

【編集部注】執筆者のMatthew Rendallは、Clearpath Roboticsの産業部門・OTTO MotorsのCEO。

間違った人の話を聞くと、北米の製造業は絶望的な状況にあると感じることだろう。

アメリカとカナダの仕事が、過去50年の間に海外へと流出していることに疑いはない。2000年から2010年の間だけで560万もの仕事が消え去った

しかし興味深いことに、外国へとアウトソースされた仕事はそのうち13%にしか満たないのだ。失われた仕事の大部分にあたる残りの85%については、”生産性の向上”、つまり機械が人間を代替したことがその原因となっている。

多くに人にとって、このシナリオは事態がさらに深刻であることを物語っている。中国やメキシコは「アメリカ・カナダ人の仕事を奪っている」かもしれないが、少なくともその担い手は別の人間だ。一方ロボットには、製造業のような分野の仕事をこの世から消し去ってしまう恐れがあると言われている。“How to Keep Your Job When Robots Take Over.(ロボットから自分の仕事を守る方法。)” “Is a robot about to take your job?(ロボットが私たちの仕事を奪おうとしているのか?)” “What Governments Can Do When Robots Take Our Jobs.(ロボットが人間の仕事を奪う中、政府に何ができるか。)” など、人々の恐怖心を利用しようとする動きも多く見られ、もう怖気づかされるのはたくさんだ。

しかし実情は少し違っている。過去20年間でアメリカのインフレ調整済み製造業生産高は40%も増加しており、アメリカ国内の工場が生み出す付加価値も過去最高の2.4兆ドルに達している。つまり仕事の数が減る一方で、製造業の生産高は増えているのだ。製造業に従事する人の教育・給与水準は上がり、彼らは作業員の生産性を向上させるテクノロジーを含め、価値ある製品を生み出している。

実際のところ、主に労働者の高齢化を背景に製造業では200万人もの労働者が不足している。彼らの平均年齢は45歳で、これはアメリカの非農業部門雇用者の中央値よりも2.5歳ほど高いほか、若い世代の同業界への関心も低い。

これまでもテクノロジーが存在する限り、技術の進歩を文字通り破壊するラッダイトのような人たちが存在していた

この数値からは違った結論が導き出される。ロボットは私たちの仕事を奪っているのではなく、私たちの仕事をより良いものにしているのだ。

ロボットを利用すれば安全性は向上するし、パフォーマンスも安定する。海外の労働力を搾取するより道徳的にも優れている。さらにロボットは驚くほど費用対効果が高く、投入資金を12ヶ月以内に回収できることもよくある。つまり、常にコスト削減の方法を模索し、進化のスピードが遅いことに悩まされている製造業にとって、ロボットはゲームチェンジャーだと言えるだろう。

さらにその後に続くコスト削減が連鎖反応を起こし、人がやりたがるような仕事がもっと北米にとどまることになる。そして製造業界は、イノベーションを生み出すことに資金や人員を集中できるようになるのだ。その結果、より良い教育を受け、高度な技術をもった労働者を必要とし、同時に彼らを生み出すような新しい仕事が誕生するだろう。短期的には仕事が減るだろうが、長期的に見るとロボットは労働者・社会の両方に利益をもたらす。

これは何も根拠のない非現実的な見解ではない。歴史的にも、テクノロジーの転換期には一定のパターンが見て取れる。前世紀のあいだに車の作り手は人間からロボットへと代わっていった。その結果、車の生産台数が増加し、車一台当たりの労働者数も以前よりむしろ増えたのだ。労働者は、危険な作業を行う代わりにプログラミングを担当してロボットに大変な仕事を任せ、彼らの給与は以前より増加した。これまでもテクノロジーが存在する限り、技術の進歩を文字通り破壊するラッダイトのような人たちが存在していたが、冷静に周りを見れば、生産性は向上し、生活の質はこれまでにないほど高まっている。

経済的にもこの理論は証明されている。産業革命のように、自動化技術への重点的な投資が行われる時期と、一国のGDPが増加する時期の間には強い相関関係が確認されており、さらにGDPの増加は生活の質の向上と強い関係がある。生活の質の向上とは、ケガの少ない安全な労働環境から、より高度な仕事をこなすことで得られる個人の満足度の向上までを意味しており、それがさらなる好循環を生み出すことになる。高度な仕事をすることで人々の収入が増え、高度な教育も賄えるようになり、その結果より高度な技術をもった労働者が生み出され、彼らがその時間と資金を使って経済をさらに加速させていくのだ。

最近のWashington Postの記事にこの流れが上手く説明されている。「(これこそ)生産性を向上させ、市場経済を豊かにする原動力だ。農業の生産性が向上したことで多くの農家が市街地へと移住し、彼らは市街地で工業経済を支える労働力となった。さらなる生産性の向上のおかげで、最終的に私たちは医療サービスや教育、そして政府を賄えるようになった」私たちは今まさしく同じサイクルの中にいるのだ。

ここでもう一度北米の製造業の現状に立ち戻ってみよう。恐怖心を利用しようとする動きや大げさなメディアの存在、人々のまっとうな不安、むなしく響く政治家の暴言にも関わらず、ロボットは製造業をより良い方向へ導こうとしている。ロボットはこれまでのテクノロジーのように、人の仕事を奪うとされる批判の対象でしかなく、ロボットが奪おうとしている仕事はそもそも人間がする必要がないのだ。

実際には、ロボットのおかげでより多くの(そしてより良い)仕事が母国にとどまり、国内産業が発展し、ミクロ・マクロ両方のレベルで私たちの生活の質が高まっていくだろう。自動化が進み、効率・安全・生産性が向上することで、北米の製造業はただ生き残るだけでなく、私たちのイノベーションや想像力のパワーを世界に見せつけることになるだろう。

結局、ロボットが私たちの仕事を奪っていくのか、と聞かれればそうかもしれない。しかしその代わりに、私たちや私たちの子ども、そして孫たちは、もっと意味があって高収入の仕事につく可能性が高くなるだろう。私の目には、これはまっとうなトレードオフのように映る。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Samsung、事故続出のNote 7の生産を「調整中」と認める

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これはGalaxy Note 7の生産が停止されたという昨日のわれわれの報道をほぼ完全に認めたというに近い。今朝SamsungはTechCrunchに対して慎重に語句を選んで次のように述べた。

品質管理と安全性の確保をさらに推し進めるため、われわれはGalaxy Note7の生産スケジュールに一時的な調整を加えている。

Samsungは「停止(halt)」とか「一時中止(suspend)」という語句を使うことを避けているが、言っていることはわれわれが報じた内容とほぼ同じだ。この記事にはパーツのサプライヤーの幹部の証言内容も含まれている。この1月以上Samsungの新しいフラグシップ・デバイスは広報上の悪夢に覆われてきたが、ここにきて同社は対策のための大きな決定を行ったことを確認した。

この決定は対策部品に交換したはずのGalaxy Note 7に再び事故が起きたことを伝える多数の報道を受けて行われたものだ。乗客が持っていたGalaxy Noteから煙が出たためサウスウェスト航空のフライトはゲートに引き返して乗客を避難させる必要があった。いくつかのメディアはAT&T、T-Mobile、Verizonが問題のプロダクトの取扱を中止したというSamsungにとって大打撃となるニュースを伝えた。

その後Samsungはこれらキャリヤによるデバイスの取扱中止に関して声明を発表した、Samsungは取扱中止が事実であると認めると同時に事故件数が低くいものであるという印象を与える努力をしている。

Samsungは声明で次のように述べた。「われわれのパートナーであるキャリヤは損害が引き起こされたという報道を受けてGalaxy Note7の販売を中止し、交換を受け付けることにした。われわれはパートナーの決定を尊重する。われわれは当局、第三者の専門家と緊密に協力しており、調査が完了して明らかになった事実については公開していく。 記事の数は少ないとはいえ、われわれはどんな報道も真剣に受け取っていることを顧客に知ってもらいたい。もし製品に安全性に関する問題が存在するようであれば、SamsungはCPSC(消費者製品安全委員会)が認めた手順に従って直ちに問題の解決に当たる。」

アメリカの消費者製品安全委員会はこの問題を最初から注視しておろ、、先月中旬、公式にGalaxy Note 7のリコールを決定した(Samsung自身もこれに先立ってリコールを決めている)。同委員会は最近の事故調査にも深く関わっている。事故の発生場所は数州にまたがっているがまだリコールは宣言されていない。

続報があることは間違いない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

アララ、ブロックチェーン技術mijinの電子マネー分野への適用を表明、実証実験の成果を受けて

プリペイドカード/ポイントカードpoint+plus(ポイントプラス)」のサービスを運営するアララは、テックビューロが提供するプライベートブロックチェーン技術mijinを評価する実証実験を実施し、その結果を見て同社の実システムへの採用する方針を固めた。「1年以内に、世の中に出す新サービスにブロックチェーンを使っていく」と同社の代表取締役 Group CEOの岩井陽介氏は話している。なお、アララは2016年4月、テックビューロへ出資した会社の1社として名前が挙がっていた(関連記事)。point+plusにmijinを適用するプランはその時点で発表されていたものだ。

実証実験の結果、mijinを使い毎分3000取引(平均50取引/秒に相当)の取引を安全に実施できることを確認した。また、1取引あたりのコストを現行システムの30%程度まで削減できると見込んでいる。同社の報告書では「多対1で大量トランザクション(取引)が発生する当社point+plusのようなシステムにも(mijinを)十分適用が可能であるとの結論に達した」と記している。

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実証実験で用いたブロックチェーンのネットワーク。AWS上の4ノートにブロックチェーンをホストする。地理的に分散させたノードを使った実験も行っている。

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実証実験で構築したアプリケーションの概念図。

同社は、プリペイドカード/ポイントカードのpoint+plusをスーパーマーケットや外食チェーンなどに展開している。point+plusを活用したサービスには、例えば日本サブウェイの電子マネー付きポイントカード「SUB CLUB CARD」がある。このようなサービスの情報インフラとしてブロックチェーンを適用可能かどうか評価するため、電子マネー分野のユースケースを想定したアプリケーションをmijin上に構築し、性能、可用性、取引の整合性に注目した実証実験を実施した。実証実験の結果は報告書として公開する。

電子マネー系サービスへのブロックチェーン適用を表明

ブロックチェーンの実証実験は金融機関を中心に各所で進められているが、今回の取り組みは2つの点で注目したい。1点目は、比較的詳細な報告書が開示されること。2点目は、世の中に出すサービスでのブロックチェーン技術の適用を進める考えを明らかにしていることだ。ブロックチェーンの実証実験は日本企業でも多数多数行われているが、実システムへの適用を決めたことを表明している企業はまだ多くない。

同社の岩井CEOは「電子マネー事業を手がけているので、以前から仮想通貨には興味を持っていた。知れば知るほどビットコインは凄い。その仮想通貨を支えるブロックチェーンの有用性を我々のサービスにも取り込めばメリットがあると考えた」と語る。

同社が特に解決したかった課題の一つが可用性だ。「サーバーでアクシデントがあるとサービスが停止してしまう。例えばスーパーマーケットのレジで人が並んでいる状況でサーバーが落ちて決済できない状況が生じると、現場は大混乱をきたす。2重、3重の対策を取ってはいるが、より強固で安全性が高いシステムを作る技術としてブロックチェーンに期待している」(岩井氏)。

可用性とコストの両立、それにセキュリティの高さも魅力だった。「従来の情報システムのディザスタリカバリは高価につく。地理的に分散したノードに配置したブロックチェーンの場合、トランザクション処理系についてはディザスタリカバリが不要となる。それにマルチシグネチャ、複数の人が承認しないと取引を確定できない仕組みも、セキュリティ向上のために魅力的だった。内部犯行でも改ざんが困難となる」(執行役員 技術本部 本部長 開発部 部長の鳥居茂樹氏)。

実証実験では、mijinの機能であるMosaicを用いて仮想通貨トークン「アララコイン」を用意し、スマートフォン上のウォレットアプリにより社内電子マネーとして活用するユースケースを想定した。10万ユーザー、1024部門の組織を想定し、過去の取引の蓄積データとして560万取引の規模の環境を用意した。ブロックチェーンをホストする4ノードのうち2ノードを定期的にリブートして整合性に問題が出ないかを調べた。またAWSの東京とシンガポールの各リージョンにノードを分散し、地理的に離れたノード間通信のレイテンシが挙動に影響するかどうかにも注目して実験を行っている。

アプリケーションは内製

実証実験のアプリケーションはアララが内製していることは要注目といえる。「mijinの環境構築は(提供会社の)テックビューロに支援してもらい、それ以外はアララで用意した。mijinのアプリケーション開発に必要なNEM Core APIを使ってアプリケーションを構築した」(鳥居氏)。同社の報告書では、処理時間が極端に長かったAPI処理を発見して改善する一種のトラブルシューティングを実施したことも記している。ブロックチェーン上のアプリケーション開発ができるエンジニアの数はまだ少ない中、ブロックチェーン上のアプリケーションを自社開発する能力を育てつつあると見ることもできる。

「ゼロ承認」でmijinを使う場合の整合性を調べた

実証実験では整合性を重視している。その背景として、ノードの障害からの復旧、地理的に離れたノードの扱いがあるが、実はもうひとつ大事な話がある。同社はmijinをゼロ承認で使うやり方で問題が出ないかも調べたのだ。

このゼロ承認については少々の説明が必要となる。mijinや他の多くのブロックチェーン(ビットコインを含む)では「取引が確定するか否か」は厳密にいうと時間と共に0に収束していく確率値となる(この点を否定的に捉えて「ファイナリティがない」と表現する場合もある。なおORB1やHyperLedgerのようにファイナリティを重視する仕組みを取り入れたブロックチェーン技術も存在する)。そこでブロックチェーン上の取引では、ある一定数のブロックが生成されたことを確認した上で取引が確定したものとみなす慣習となっている。

だが、「一定数のブロックの生成を確認してから取引を承認する」やり方では、取引の実行から確定までに時間がかかりすぎる。だが、アララのサービスであるポイントカード/プリペイドカードのサービスでは、取引は瞬時に完結させることが求められる。「電子マネー分野では取引は瞬時に完結しないといけない」(岩井氏)。

そこで、今回の実証実験ではブロックチェーン上の承認を待たずに取引を確定させる「ゼロ承認」で取引を確定させる仕組みとした。厳密さを重視する考え方からは、このような仕組みにすると二重支払いのような不整合が発生する可能性をゼロにできないが、実証実験の結果では不整合は発生しなかったとしている。

なお、ブロックチェーン上の取引をゼロ承認で使う例は他にもある。例えばレジュプレスが展開するビットコイン決済システムのcoincheck paymentでは、ビットコインのパブリックブロックチェーンの上でゼロ承認で取引を確定させている。

今回アララが実施した実証実験は、いわばmijinのスペックが公称通りかどうかを確認した内容といえる。それだけでなく、アララがブロックチェーン上のアプリケーションの構築運用の経験を積む側面もある。ブロックチェーン技術への評価が定まっていない段階で、同社が実システムへの適用を目指して手を動かす経験を積んだことには敬意を表したい。

7月設立の慶大初のVC「KII」の投資1号は、AI開発の「カラフル・ボード」

慶應イノベーション・イニシアティブ」(KII)の山岸広太郎CEO(左)と、カラフル・ボード創業者の渡辺祐樹CEO(右)

慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)の山岸広太郎CEO(左)と、カラフル・ボード創業者の渡辺祐樹CEO(右)

kii-logoここ1、2年、大学発の技術系ベンチャーファンドが次々と立ち上がっている。すでに3号ファンドとなっている東京大学エッジキャピタル(UTEC)の145億円や京都大学イノベーションキャピタルの160億円など100億円を超えるファンドも少なくない。Beyond Next Venturesのような独立系VCや、ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタルなど事業会社によるCVCのファンドを含めると、2013年以降の大学発研究開発系のベンチャー資金は総額で約1300億円となっている。旧帝大だけでなく、2016年に入ってからは東工大や東京理科大もそれぞれ40億円規模のファンドを設立している。

慶應大学発の「慶應イノベーション・イニシアティブ」(KII)も、そうしたファンドの1つ。45億円のファンド規模で7月1日に設立されたばかり。1社あたり2億円程度、最大5億円ほどを開発に時間のかかることもある研究開発系のスタートアップ企業20社ほどに投資していく計画だ。KIIは元グリー副社長の山岸広太郎氏がCEOを務める、ということで、ちょっと関係者は驚いたかもしれない。山岸氏は日経BP編集記者、CNET Japanの初代編集長を経て、グリーを共同創業。グリーの副社長として10年間事業部門を統括してきた人物だ。

そのKIIの投資案件第1号となったのは、TechCrunch Japanでも以前に紹介したことのあるAI系スタートアップのカラフル・ボードだ。カラフル・ボードは10月11日、KIIに対する第三者割当増資により5000万円の資金調達を実施したことを発表した。カラフル・ボードは2011年の創業。2015年5月にACAをリード投資家とする1.4億円の資金調達などと合わせて、これまでに合計約3億円を調達したことになる。

カラフル・ボードを創業した渡辺祐樹CEOは、2005年に慶應義塾大学理工学部を卒業。フォーバル、IBMビジネスコンサルティング(現:日本IBM内のコンサルティングサービス部門)などでの戦略コンサルタントを経て起業している。学部在籍時には人工知能を研究していたが、研究者になることよりも技術で世の中に役に立つものを作り出したいとの思いからカラフル・ボードを創業していて、そういう意味ではKIIの投資1号案件にはピッタリという印象だ。

KIIの山岸CEOによれば、これまで慶應大学が直接出資したベンチャー企業は全部で13社。そのうち3社、ブイキューブ、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ、サンバイオが上場しているほか、ハイテク素材のスパイバーなども注目株となっている。

大学発ベンチャー、あるいは研究開発系ベンチャーというと、医療・介護、バイオ、素材、ロボティクス、製薬などの分野が思い浮かぶ。一方、カラフル・ボードはファッションや食(味覚の定量化)へのAIの適用を進めているので、相対的には資金需要が小さい分野に思える。山岸CEOによれば、KIIの狙いは「慶應大学の研究成果を社会実装していく」こと。カラフル・ボードが持つAI技術そのものだけでなく科学研究で使われるようなセンサーデータや生体情報のセンシングデータなど、慶應大学でつながる複数の研究を融合させるような応用にも期待している、ということだ。KIIの投資領域は、IT融合領域(IoT、ビッグデータ、AI、ロボティクス、ドローンなど)、デジタルヘルス(医療・介護)、バイオインフォマティクス、(ITxバイオ)、再生医療など慶應大学が強いジャンルで、社会的インパクトの大きい分野だという。

カラフル・ボードはAIによるファッションアイテムのリコメンドアプリ「SENSY」からスタートして、ワインや日本酒の個々人の嗜好の分析と提案というB2B2Cモデルで技術適用の実証実験を進めてきた。三菱食品や伊勢丹と協力し、売り場でAIを使った未完診断を実施。試飲後に購買につながる「CVR」を向上させつつあるそうだ。顧客の味覚データの可視化して、これを売上データと重ねることで、これまでできていなかった商品ジャンルごとの売場面積の最適化や販促施策などが打てるようになる、という。カラフル・ボードのチームは現在研究者3人、エンジニア7人を含む14人。今後研究者やエンジニアを増やしていくという。