SamsungのスマートテレビがSmartThingsを統合化、テレビがホームオートメーションのハブになる

iot-tv_us-outlet

SamsungとSmartThingsの提携で、テレビから家の中のいろんなものをコントロールできるようになる。

今やインターネットに接続されたデバイスが世の中に氾濫している。標準的なセキュリティシステムもあれば、“電脳照明”があり、やかんまでネットに接続されている。でも現状ではまだ、これらの“電脳XXX”を一箇所でコントロールできる共通の統一言語がない。製品ごとに、機種ごとに、それぞれ専用の制御インタフェイスを使わざるをえない。そんな現状の中でSmartThingsは、ホームオートメーションないしホームインテリジェンスのインタフェイスの統一化・共通化を目指している。最初はまずAmazon Echoとパートナーし、そして次はSamsungのスマートテレビ(Smart TV)が、そのSmartThingsをサポートする。

今回のパートナーシップにより、2016年製以降のSamsung SUHD TVから、今およそ200あまりあるSmartThings対応デバイスをコントロールできる。

この統合により、SmartThingsのアプリケーションには両社が共同開発したテレビ用のインタフェイスが存在することになり、テレビ画面上のそのインタフェイスから、部屋の明かりのon/off、ホームシアターのコントロール、屋外に設置したセキュリティカメラからの信号の受信や表示、などなどができるようになる。

IoTの今の最大の問題は、完成度の高い製品種類が少ないことではない。インタフェイス言語が統一されていないから、いろんなIoT製品〜ホームオートメーション製品を買うたびに、別々のコントロールアプリを使うことだ。一つ二つなら我慢できるが、五つ十となると、もう人間の手にも頭にも負えない。またSmartThingsのような統一言語でも、家の中の対応機種のコントロールは一箇所から簡単にできることが望ましい。たとえばAmazon Echoから、あるいはスマートテレビから…。

Amazon EchoがSmartThingsを統合したことによって、さまざまなデバイスを音声でコントロールできるようになったが、でもテレビは依然としてアメリカの家庭の中心的な存在だから、スマートテレビとの統合によってホームオートメーション/ホームインテリジェンスのコントロールはなお一層便利になるだろう。

[原文へ]。
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

新年のプレゼントに本物のホバーボードはいかが? ―ただし超巨大で予価2万ドル

2015-12-30-arcaboard

平均的で正常な人間がホバーボードの試作品に乗ってみたいと思うかどうかは疑わしいが、インターネットにはぜひとも乗ってみたいと考える変人が大勢いるらしい。そういう人々を惹きつけてきたのは本物に見紛うほどよくできた製品から、違う種類(かつ危険な)のデバイスに恥ずかしげもな誤解を招く名前をつけた製品までさまざまだ。しかしArcaという会社がウェブサイトで本物のホバーボードの予約を募っている。

ArcaBoardはかなり巨大だ。怠惰の極致といえそうな大人一人を空中に浮揚させる動力とメカニズムを収容するためにはやはりこの大きさが必要だったようだ。それだけに機能については広告に偽りなく作動するものと期待したい。

このガジェットにはビデオに見られるように、35基の強力な電動ダクテッドファンが組み込まれている。トータルの推力は430ポンド(195kg)だという。ArcaBoardには自動安定化ソフトが組み込まれており、専用のスマートフォン・アプリが用意される。ユーザーはこのアプリでホバーボードを操縦する。アプリをオフにして体重移動で進路をコントロールすることも可能だという。

Arca Space Corporationはルーマニアの企業で、同国政府や欧州宇宙機関のために成層圏まで上昇する気球やロケットなど航空宇宙関係のデバイスを各種供給してきた。GizMagによれば、同社はこの経験を生かしてドローンその他の飛行デバイスを手がけてきたという。つまりArcaのエンジニアはプロであり、飛行マニアだということだ。

そのためか、この製品の仕様は人を驚かせるようなものではない。 能力は控え目で、最高速度は時速12.5マイル(20km/h)に過ぎず、バッテリー駆動時間は体重の軽いユーザーで6分、240lbs(108kg)以上のユーザーの場合、3分以下となる。

とはいえ、Arcaではこのボードはコンクリート、水面、砂を含むどんな地形でも1フィート(30cm)程度の高度を飛行できることを保証している。

ArcaBoardはかなり分厚く、初期の大型フラットテレビくらいのサイズだ。運ぶには大人が2人必要だ。明るい方に目を向けるとバッテリーの充電には35分しかかからない。

ArcaBoardはインターネットで大評判になっているが、誰かがこのデバイスをテストしたという確実な記事はまだ発見できないことを付け加えておこう。それでもぜひ一番乗りで所有したいのであれば予約はこちらからできる。予価は1万9900ドルだ。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

合衆国のクリスマス商戦ではApple製品と“ファブレット”が勝者、上位ブランド盛衰のドラマも

4905364961

Flurryが今日(米国時間12/28)の午後発表したレポートによると、今年のホリデイシーズンは例年になく、“ファブレット”を購入する消費者が多かった。この大型画面のデバイスは”phone”(電話機、携帯電話)と”tablet”(タブレット)を混ぜあわせた新語、“phablet”(ファブレット)という名前で呼ばれている。今年のクリスマス前の週に新しく起動されたデバイスの27%がそのファブレットで、シェアは昨年から倍増し、2013年のわずか4%からは大飛躍だ。中でもAppleの現在のファブレットiPhone 6s Plusが、この飛躍に大きく貢献している。同じ週の、新たに起動されたすべてのAppleデバイスの12%が、この機種だった。

この年末レポートはFlurryの分析部門が作成し、同社がさまざまなデバイスに関して調べた78万のアプリに基づいている。ホリデイシーズンには新しい携帯やタブレットを入手する消費者が多いから、このスナップショット的なデータから、機種タイプ別の人気を推し量ることができる。また各メーカーの、市場シェアの盛衰も分かる〔下図については後述〕。

ChristmasCharts_THREE

今年Flurryが明らかにしたもっと大きなトレンドは、“小型スマホ/携帯の死”だ。2015年の消費者は初めて、画面の小さなデバイスを見捨てて、ファブレットを選んでいるようだ。Blackberryに代表されるような3.5インチ以下という画面の機種は、Flurryによるとほぼ絶滅した。来年はチャートに登場することもないだろう、と同社は予想している。

〔下図…空色=大型タブレット、青色=小型タブレット、グリーン=ファブレット、、紫色=中型機、オレンジ色=小型機〕

2014年に発売されたAppleのファブレットは、下図のように、中型機と小型タブレット(iPad miniなど)からもシェアを奪っているが、スライドの第二図でお分かりのように、Android国ではファブレットのシェアがさらに大きい。

  1. christmascharts_one.png

  2. christmascharts_two.png

 

今年初めて、ファブレットはすべてのAndroid機の中で半分以上を占めた。それはアジアを中心とする市場でSamsung Galaxy Noteなどの人気が高いためだ。Samsung製品のシェアは2014年の17.7%から2015年は19.8%に上がった。それは主に、新製品Galaxy Grand Prime, Core Prime, S6などのおかげだ。

Appleは依然としてトップだが、そのシェア49.1%は昨年の51.3%に比べてやや下がった。Flurryによると、新製品iPad Proはシェア拡大に貢献しなかった、という。すなわち画面サイズ8.5インチ以上の大型タブレットは、1%にも達しなかった。

MicrosoftのNokiaは、今年のシェアが昨年の5.8%から2%へと落ち込んだ。また、Sonyも、もはや上位5社に含まれていない。代わってXiaomiが初めてチャート入りし、クリスマスの週のシェア1.5%を稼いだ。Flurryによると、中国には大きなクリスマス商機というものがないにもかかわらず、Xiaomiが伸びたことは注目に値する、という。

さて、新しいデバイスを起動したら、次にやることはアプリケーションのインストールだ。したがって12月にはアプリのダウンロードも急増する。そのことに付随する別のトレンドとして、App StoreのトップであるフィットネスアプリFitbitの、ホリデイシーズンにおける大売れなどが挙げられる。下図はアプリのインストール数の、12月21日までとクリスマスとの比較だ(前者を1.0とする指数比較)。

ChristmasCharts_FOUR

ご覧のように、12月のふつうの日と比べると、クリスマスはアプリのインストール数がその2.2倍に達している。

[原文へ]。
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

eブック隆盛のいまどき、古書店に投資価値があるだろうか…コミュニティのたまり場として

shutterstock_118914448

Washington Post紙の、休日の心温まる記事によると、ベビーブーム世代の高齢化や、デジタル化の逆風、その風をよけるためのコミュニティの場所へのニーズ、そんないろんな要因から、最近は古本屋さんが復興しているそうだ。

そのキモは? (個人経営の)本屋さんはなにしろ、良い場所だからだ。

“町に本屋がなくなったので、本を買える場所がない、という声を多く聞いた”。Gottwalsはそう語る。“博物館(美術館)や劇場と同じで、本屋は地域の文化の核なんだ。人が、行きたいな、と思う場所なんだ。だから、それは、今どき、良い投資なのさ”。

書店というものを理想化しすぎているきらいはあるが、コーヒーショップやレクリエーションセンターと違って、古本屋にはコミュニティの核としての独特の味がある。最近は地域の集会などから読書会が姿を消し、本を取り上げるサークルも少ない。休日の古書店めぐりには宝探しのような楽しみがあったけど、本を買うだけなら今ではKindleの方が簡単ではやい。印刷された本として生き残るのは、子どもの絵本と稀覯本ぐらいかもしれない。印刷された本は、ビニル製のレコードと一緒に、過去の遺物になろうとしている。ごく一部の、特殊な本をのぞいては。

そんな時代だからこそ、古本屋さんは貴重だ。LPレコードも、古いビデオゲームやゲーム機も、いまだに一定の需要があり、ノスタルジーという価値観がある。それと同じ意味で、古書店にも一定の投資価値があるのではないか。一概に、だめだよとは言い切れない感触があるね。

[原文へ]。
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

寒い冬の日は、暖房の効いた自分の部屋でルーマニアの山奥の湖の釣りを体験しよう

吹け、汝、冬の風よ、強風で漁のできぬ人の子はさらに過酷なり。極寒の地では魚がその場で凍ってしまい、帰路では溶けて魚肉が崩れ栄養価を失う。でも、そんなところでどうしても魚を獲りたかったらどうしたらいいか? 答はRobofisherだ。

このサービスは、中欧の凍結しない湖に設置してある魚釣器具を時間貸しする。中欧のライブビデオサービスはどれもそうだが、人間ユーザは、ロボットが生き物と対話するところをライブで見て、擬似的なスリルを味わい、それに対してお金を払う。このRobofisherでは、ロボットが釣り糸を垂れ、魚を捕獲し、その小さな魚を後日のために湖に戻す。すべては画面上でライブで起き、抵抗する魚が釣り糸を引くスリルを楽しむ(上のビデオではユーザは、湖から300マイル離れた場所の家の中でインターネットにアクセスしている)。

ルーマニアのAlexei Popusoiが作ったこのサービスは、障害者には20%割引、そして釣り竿とリールを10分間10ドルで使わせる。少々お高いようだが、半分以上のユーザが10分以内に1匹釣り上げるそうだ。ビールと自慢話パーティーは含まれていない。

まじめなサービスのようでいて、実際には笑えてしまうところが、おもしろい。自分の家のパソコンから、遠くの湖で釣りができる、というアイデアも巧妙だ。ちょっと、頭がおかしくなりそうだけど。でも、水と魚を見るだけのために、10分間10ドル払う人が、どれぐらいいるだろうか。ま、人の好みは人さまざまだけどね。

[原文へ]。
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

クリスマスの前の週でAmazonのPrimeの会員が300万増えたそうだ(クリスマスの週については不明)

shutterstock_282673373

Amazonのプレスリリースは、具体的な情報がないことで有名だ。今年の感謝祭のときもそうだった。しかしそれでもたまには、同社は数字を発表することがある。それによると、今年のクリスマスの前の週にはPrimeの会員が300万名あまり増えたそうだ。

でも、例によって、同社の発表を鵜呑みにしてはいけない。

AmazonがGeekwireに対して確認しているところによると、この数字は実際に会費を払ったユーザと試行期ユーザの両方を含む。だから、その後の推移によって確定した正規会員数は、もっと少ないかもしれない。とくにApple Musicのように、トライアルから入ることの多いサービスでは、それが顕著だろう。

また、同社が発表した数字は12月の第三週、つまりクリスマスの前の週のものだ。だから、比較すべきふだんの週の数字がないと、どれぐらい盛況だったのか分からない。もちろん、クリスマスの当日近くになると、“送料無料”や“お急ぎ便”などを使えるPrimeのユーザが増えたと思うけど。

なお、昨年のAmazonの発表では、いわゆる“ホリデイシーズン”の全期間で、Primeの会員は1000万名増えたそうだ。

もうひとつ、例によってAmazonは、Prime会員の総数を公表していないから、増加率も分からない。“記録破りのホリデイシーズンだった”、と言ってるだけだ。

“Amazon Primeの会員は成長を続けており、今では全世界で数千万人の会員がいる”、と同社は述べている。

でももちろん、300万という数字は、このサービスの人気の一端を覗かせている。

99ドルの年会費を払ったPrimeの会員には、一部商品の送料無料などの特典があり、一部のビデオを無料で見られる。

ビデオではAmazonのライバルとなるNetflixは、世界60か国に6900万の顧客がいる。Amazon Prime Videoは、合衆国とイギリス、オーストラリア、ドイツ、そして(最近加わった)日本だけだ。本体のPrimeサービスは、もっと多くの国で提供されている。

ホリデイシーズンに関するAmazonのそのほかの発表は、例によって隔靴掻痒だ:

  • 今年のホリデイシーズンではAppleの顧客の70%近くがモバイルデバイスを使って買い物をした — 昨年は60%弱だったが、Amazonを訪れた人と、モバイルで実際に何かを買った人との内訳は分からない
  • Prime Videoで最高の視聴率を稼いだのはThe Man in the High Castleで昨年比4.5倍、ホリデイシーズンにおけるPrime Videoの総視聴時間は昨年比で倍増した
  • Amazon Devices(Kindleなど)は、昨年のホリデイシーズンの記録的な売上の、さらに倍を達成した
  • 今年のホリデイシーズンでPrimeの送料無料で発送された品目は2億を超えている
  • クリスマスイブのPrimeの繁忙も今年が最高だった
  • Amazonは今年のホリデイシーズンで185か国へ発送した

[原文へ]。
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

フィンテックは金融ビジネスの根本的改革者になれるか?

NEW YORK, NY - DECEMBER 21:  People walk along Wall Street on December 21, 2015 in New York City.  The Dow Jones industrial average was up over 100 points in morning trading following Friday's huge drop as the price of oil continued its yearly fall.  (Photo by Spencer Platt/Getty Images)

Lawrence Uebel はAlliance Dataで信用リスクの分析を行っている.

『マネー・ボール』の著者、マイケル・ルイスの新しいノンフィクションは 『マネー・ショート 華麗なる大逆転』としてブラッド・ピットらによって先ごろ映画化された。

あるレビューはこの映画から、2008年の金融危機に際して「家賃をきちんと払っているにもかかわらず、家主が債務の支払いを滞らせているというだけの理由で借家人たちが家から路上に叩き出されているl.というセリフを引用していた。

このエピソードはわれわれの金融システムがいかに不完全であり、かつ根本的に不公正であるかを印象的に描き出している。

なぜわれわれはこうしたシステムを必要としているのだろう? アメリカ人は銀行家のやり口を弁護士のやり口と同様によく知っており、毛嫌いしている。だが必要になれば彼らに頼るしかない。

ベストセラー、Other People’s Moneyの中で経済学者のジョン・ケイは「金融とは貸し手と借り手を適切に組み合わせ、貯蓄は投資として有効に活用されねばならないという社会の根本的な要請によって存在する」と書いている。つまり個人の資産を生涯にわたって管理可能とすると同時に、資産の運用に必然的に伴うリスクを軽減し、支払いのシステムとしては売買や賃金、報酬の支払いを容易にする。

金融ビジネスのこうした側面は一般消費者、会社経営者のよく知るところであり、そのメリットもまた明白だ。

しかし金融ビジネス全体にとってはこうした有用な活動は極めて小さい部分をなすに過ぎない。全体としてみると、ジョン・ケイが書いているように、「金融機関は、想像力の限界を試すかのように、相互に取引する」ことを本業とするにようになる。

金融ビジネスのこの部分がウォールストリートにカジノ賭博のイメージを重ねさせる主要な原因だ。ウォールストリートのプレイヤーたちの突拍子もない行動はマイケル・ルイスの別のノンフィクション、『フラッシュ・ボーイズ-10億分の1秒の男たち』〔文藝春秋〕に詳しく描写されている。トレーダーたちはある種の取引においては処理時間を極小化することでリスクなしに巨額の利益を手にできる。

フィンテックは自らをその鏡像のような存在に転化させるべきときが来ている

CDO〔collateralized debt obligation、債務担保証券〕がビザンチン宮廷風の陰謀として描かれ、悪名を高めたのは2008年の金融危機で決定的な役割を果たしたからだ。金融ビジネス関係者―われわれが老後の資産を預けるほど日頃頼りにしているその人々―が、かくも強い毒を含んだ仕組みを考えだし、その毒が存分に発揮されるような運用をしたという事実にはぞっとさせられるものがある。

ただし明敏な観察者なら、一般の人々にメリットをもたらす金融活動と有毒な金融活動ははっきり区別できるというだろう。金というものは、要するに、なんらかの価値に関する情報であり、誰がコントロールしているのかが重要だ。鳴り物入りの大騒ぎを別にして金融ビジネスのその側面を考察するなら、日常生活に不可欠の活動も含めて、情報テクノロジーとの親和性が極めて高いことが容易に見てとれるだろう。

しかし現在の金融ビジネスが非効率であり不公正な結果をもたらすことがあるからといって、それらが情報テクノロジーが改善すべき点だと考えるなら大きな間違いを犯すことになる。金融ビジネスで破壊的改革が求められているのは単なるアルゴリズムではない。金融ビジネスは以前から数学に強かった。それどころか数学者に最高給を支払ってきたのは金融ビジネスだった。金融機関の情報インフラもまた最大級の規模だ(ただし、新システムへの置き換えを深刻に必要としている)。

金融セクターがもっとも必要としているイノベーションは一般ユーザーの「どういう方法かは分からないが自分はカモにされている」という感覚をなんかしなければならないという点だ。なぜならこの感情がよって来るところは金融機関がリスクを分散する手法(その中にはもちろんビジネスとして不可欠な正当なものも多く含まれる)にあるからだ。この手法たるや、やむを得ない面もあるとはいえ、通常きわめて複雑怪奇なものになりがちだ。しかし複雑怪奇さは金融サービスに不可欠の要素などではない。この不必要な複雑怪奇さが、真面目に家賃を払っている人々を家から追い出し、路頭に迷わせるような不公正の原因をなしている。われわれはこうした不公正さを必要としていない。

フィンテックと呼ばれる高度な金融情報テクノロジーはまだ誕生したばかりのセクターだ。しかしフィンテックはそれ自身を軸として自らをその鏡像のような存在に転化させるべきときが来ている〔訳注〕。フィンテックに流れ込む資金は巨大だ。企業は自らがそうありたいと望むビジネスの本質とそれによってどんな根本的な便益が提供されるのかをはっきり決めねばならない。すでにそれらを決めた企業が現れているが、それがフィンテックの本質に合致しているかは別問題だ。

たとえばSindeoだ。このシリコンバレーのスタートアップは当局による規制のゆるい金融セクターで資金の貸し手となろうとする企業ならではの驚くべき感情を公言している。同社は「われわれわれは『やればできる』精神の産物だ。やってみて、うまくいくようなら、それから合法化を考えればいい」と述べている。多くのフィンテック企業が矢継ぎ早に発表する商品を観察すると、その多くは債務と証券を複雑な方法でバンドルしたもので、あまりにもサブプライム危機の原因となった住宅抵当証券に似ているという多くの専門家の観察はおそらく正しいだろう。

こういったアプローチはどれも金融の根本的な改革につながるもではない。こうした人々は2008年に馬脚を現した住宅抵当証券の強引なセールスマンと同じ種族であって、違いといえばウェブサイトが当時より優れていることぐらいだ。

規制当局はすでにフィンテックに重大な関心を寄せている.

経済学者のジョン・ケイはフィンテックに参入しようとする人々に良いアドバイスを与えている。「信用力の弱い証券と返済能力に疑念のある借り手の組み合わせは単にそういうものに過ぎない。それを改善できる錬金術などは存在しない」。金融セクターにどれほど新しいテクノロジーが導入されようと、昔も今も将来も、金融の実体は決して変わりはしない。

それとは逆に、Earnestのようなビジネスも現れている。 Earnestも債務の証券化を目的としているが、健全なビジネスプランに基いて、テクノロジーによってそれを論理的に進化させる方法を論じている。債務の買い取りや返済を障害のより少ない体験にしようというのがその目的だ。

もちろんEarnestなどのスタートアップの活動はまだメディアの記事の中が主だ。長期的に維持可能なビジネスプランであるかどうかの保証はない。それでもメディアがスタートアップの文化を正しく伝えているなら、Sideoのような企業ではなく、Earnestのような企業が結局は金融ビジネスに必要な根本的変革をもたらすものだと期待したい。

規制当局はすでにフィンテックに重大な関心を寄せている。当局の専門家はアルゴリズムから実際の取引行為まですべてを精査中だ。本質的に不健全なビジネスがこの精査に耐えて生き延びる可能性はごく少ない。そして長期的にみるなら、そういう商品の買い手も生き延びることはできないだろう。

ただリスクはフィンテックの外からもやって来る。 最近のフィンテック企業と大手銀行の提携やストレートな買収のラッシュはフィンテックのファウンダーの多数を富豪にするという別のリスクを顕在化させた。こうしたファウンダーたちはきわめて満足のいくトレンドと考えるだろう(そして当然ながらそれを責めることはできないが)。しかしフィンテックが銀行に吸収されることは、あれほど非難の対象となった銀行による不愉快な取引慣行にフィンテックが組み込まれる可能性が高まることを意味する。

フィンテック・スタートアップにとって、まさにこの点が最大のリスクだ。フィンテックが金融ビジネスの既存のツールにとって変わることなく、それに同化してしまえば、何のイノベーションにもならない。われわれ一般人の立場からすれば、フィンテック関係者が巨額の小切手を受け取るとき、一瞬でも立ち止まって、社会の利益に思いを馳せ、自分たちが会社を興したそもそもの目的がこれであったかどうかを反省する瞬間を持つよう切に期待するものだ。

画像: Spencer Platt/Getty Images

〔日本版〕原文は something of a reflection pointとなっている。原文コメント欄ではinflexion pointのタイプミスだろうという意見と、このままでよいという意見が対立している。inflexion pointは数学用語で変曲点(3次曲線などが増加から減少、あるいは減少から増加に転じる点)だが、relfexion pointであれば鏡像的対称の軸となる点を意味する。ここでは原文のまま訳した。

[原文へ] 

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

日本のVCが予想する2016年のスタートアップ・トレンド(後編)

2015年にもさまざまなスタートアップ企業が登場したが、来年はどんな1年になるだろうか。TechCrunch Japanでは、2016年のテック業界とスタートアップのトレンドについて計19の国内VCとエンジェル投資家に意見を求めた。

回答いただいた質問は2つ。2015年のスタートアップシーンを象徴するキーワードは何ですか、というものと、2016年に盛り上がりが予想される分野やサービス、企業名など理由とともに教えてください、というものだ。では早速国内VCたちの意見に耳を傾けてみよう。

後編ではシリーズA以降など比較的投資額の大きいVCの意見を中心にまとめた。エンジェル投資やシード期の投資家の意見については、以下の記事前編を見てほしい。

日本のVCが予想する2016年のスタートアップ・トレンド(前編)

※各VCから回答を得ているとはいえ、投資担当者は通常カバー範囲が決まっている。だから各回答は必ずしもそのVCを代表する意見ではない。

ATOMICO

岩田真一氏(Patner)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、C2C、FinTech

2016年のトレンド:FinTechは法規制の緩和や業界の理解も進み、2016年はさらなる盛り上がりを見せると思われます。C2Cに関してはネットワークエフェクトの組込み方や、ユニークな売買体験、支払いの簡易化など各社独自の戦略を取り差別化が進むでしょう。またC2Cは比較的マーケット展開がしやすいため、スケールも楽しみです。シェアリングエコノミーは定義が広がり、細分化された命名がなされると思います。Bを活用したものとC同士のもの、などは本来別物ですが、これらを表わす言葉がありませんから、いずれ新しい呼び方が生まれてくるでしょう。広義ではクラウドソーシングもシェアリングエコノミーとして議論されることもありますが、そのような俯瞰した議論と並行して個別のビジネスモデル、スケーラビリティー、アップサイドなどについても議論が深まっていくことでしょう。

グリーベンチャーズ

堤達生氏(General Partner)
2015年のキーワード:動画サービス、FinTech

2016年のトレンド:2015年に急速な立ち上がりを見せたモバイル動画サービスの分野が、2016年以降、さらなる拡大・普及期に入ると思います。ユーザーのモバイルでの動画接触頻度・時間がより一層、増えることで、モバイルに適した形の動画コンテンツ、動画広告が新たに出てくると思います。注目しているサービスとしては、LINE LIVEですね。立ち上がりも順調に視聴者を伸ばしているようですし、テレビでは見られないコンテンツの形態をいろいろ模索している様子が窺えて、今後の展開が楽しみですね。このLINE LIVEを筆頭に、新たな動画プラットフォームプレイヤーの出現も注目ポイントの1つです。おそらく大手のインターネット企業の何社かも同様のプラットフォームを出してくると思いますので、より一層、良質なコンテンツの獲得合戦になると思います。

上記の流れを受けて、米国でも急成長中のNow Thisのような、Distributed Contents(分散型メディア)のプレイヤーも日本でこれから続々と出るのではないでしょうか。

もう1つの注目は、引き続き、FinTech領域になります。国全体の後押しがあることもあり、この領域へのリスクマネーの流入は来年も引き続き活発になると思います。ただ、時間のかかる領域でもあるので、各社も具体的なマイルストーンを示していかないと、現在の動きが一過性のもので終わってしまう可能性もあります。

最後にVRの領域は要注目ですね。まだ、それほど多くのプレイヤーがいるわけではなく、あったとしてもゲーム領域のプレイヤーが中心ですが、ハードの革新とともに、非ゲーム領域へのVRサービスが出始めると非常に面白いビジネスができるのではないかと考えています。

アイ・マーキュリーキャピタル

新和博氏(代表取締役社長)
2015年のキーワード:動画サービス、VR

2016年のトレンド:VR。以前、初めてOculusのデモを見たときに衝撃を受けた。2016年はプラットフォームやハードの環境が整い、コンテンツも急増しそうな雰囲気を感じる。ネット系上場企業の動向も要注目。ゲーム以外の分野での応用に関心がある。

サイバーエージェント・ベンチャーズ

田島聡一氏(CEO)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、動画サービス、C2C、FinTech

2016年のトレンド:

IoT:2014年に3Dプリンターの主要特許が切れたこともあり、今後SLS法を含めた3Dプリンターのコモディティ化が進むと思います。そんな中で期待しているのは、実需としてのオンデマンド型SCMソリューション、及びその周辺プレイヤー。ここの存在感が高くなってくると期待しています。弊社投資先:Kabuku

FinTech:権利移転がともなうさまざまな取引にブロックチェーンのストラクチャー導入検討が進むと思っており、ソフトウェアやAPIとしてブロックチェーン環境が提供できるソリューションの存在感が高くなると期待しています。弊社投資先:Orb

VR:すでにコロプラやGumiが力を入れているVRですが、プレイステーションVRの登場により、VRのマス層への浸透が大きく進むと思っており、それにともないゲーム会社はもちろん、周辺プレイヤーへの注目度が大きく高まると思います。

インバウンド需要の取り込み:インバウンド需要の高まり、特に中国からの来日客がまだ増加すると考えています。そういった意味では、旅行・飲食・エンタメなどのインバウンド需要を受け入れるO2Oが伸びると考えています。弊社投資先:Retty、Loco Partners

従来型産業のDisrupt:金融、不動産、医療などネットがあまり浸透していない従来型産業のDisruptが大きく進むと考えています。このあたりの分野は、実は中国や東南アジアの方が先行しているケースも多く、北米ではない海外事例はとても重要になってくると考えております。弊社投資先:プラネットテーブル

分散型メディアの拡大:あらゆるコンテンツのソーシャルメディアへの最適化によって、分散型メディアが成長すると考えており、ソーシャルコンテンツのネットワーク(集合体)が大きく育ち始めると思います。そういう意味では、コンテンツホルダーに対して、適切なソーシャル環境を提供するプラットフォームに注目しています。弊社投資先:リボルバー

NTTドコモ・ベンチャーズ

秋元信行氏(取締役副社長)
2015年のキーワード:IoT

2016年のトレンド:我々が2016年として注目している分野は、UAS(Unmanned Aircraft System)、いわゆるドローン分野と、IoT向けサイバーセキュリティー分野です。

UAS分野については、単に機器としてのドローンということではなく、無人飛行システム及びその運行に関わる機器、制御システム、データリンク、テレメトリー、通信、航行システムといった広い産業として理解しており、これまでの地上と管理された一部の航空システムが担っていた移動手段がさらに拡大し、かつコモディティー化する新しいフロンティアとして理解しています。これまで先行していた欧州に加え、米国においても規制緩和、技術革新、市場拡大が進み、数多く新規参入している民間企業群がNASA(アメリカ航空宇宙局)やFAA(連邦航空局)など国家機関と連動しながら管制システムの整備と商業実験を進めています。我が国においても、民間企業の進出や政治的にも特区指定などが急速に進展しています。商用利用の拡大にともない、管制インフラの整備や金融等産業派生商品などの事業拡大が創出されるものと考え、我々の本業である通信の観点からも大いに着目しているところです。

IoT向けサイバーセキュリティー分野については、今後否応なく進展するIoT化にともない、さまざまなデバイスがネットワークにつながるようになると、従来のPCやスマートフォンのように人々が能動的に利用していた情報機器だけでなく、人々がそれと気づかずに日々動いている生活基盤や各種機器に対するサイバーアタックが増加されることが予測され、当然にその対策が従来のものから質的にも量的にも大きく変容することが予想されます。当面は、自動車などの危険度が高く、数が多いエリアと、発電所やガス・水道といった人々の生活に重大な影響を及ぼすインフラ系から拡がっていくものと想像しており、このような対策技術の創出国として、欧米に加えて、イスラエルにも大いに注目しています。

GLOBIS CAPITAL PARTNERS & Co

今野穣氏(パートナー、COO)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、動画サービス、AI、C2C、FinTech

2016年のトレンド:PC時代から続く、主にエンターテイメント・コンテンツやコミュニケーション領域などのオンライン完結のサービス・プロダクトは、2013年~14年のスマートデバイスにおけるWebからアプリへの一定範囲でのコンバージョンを経て、ほぼプレイヤーとして出そろい、今後はますますリアル社会との接点、日常生活の中でのインターネットという領域にその主軸が移りつつあると認識しています。

そのような文脈において、5つの切り口で今後の注目領域を紹介します。

1.「6TECH」領域での産業進化
業種・セクター的な切り口でいえば、6つのセクターとテクノロジーの融合に注目しています。3TECHとしては良く、Fin-Tech、Edu(cation)-Tech、Healthcare-Techが挙げられることがあります。私はそれにCar-Tech、Home-Tech、Frontier-Techの、(2+1)TECHを加えて見ています。「Frontier」は、宇宙やドローンなどの新たな領域を意味していますが、基本的には既存の産業の進化系の領域なので、ユーザーの日常生活における「実需」をどう組み込めるかが大事だと思います。

2. オフライン領域も踏まえたユーザー参加
ユーザーとインターネットとの関わりという意味では、スマートデバイスの普及によって、ユーザーのインターネットとの接点が多様化・細分化されるとともに、スマートデバイスが予約や決済と言ったUXを通じてバーチャル世界からの「出島」になりつつあります。そのような状況下でCtoCやシェアリングエコノミーを実現するサービスが増加しています。この領域においてもリアル社会の実需をきちんとオンラインに載せることと、規制およびその緩和による事業機会をきちんと掴むことが重要と認識しています。

3. 技術動向としての新領域の可能性
技術的な動向という側面では、AI、VR、IoTなどが挙げられるかと思います。しかしながら私(弊社の投資ステージ)にとっては、この領域がメインストリームになるのは時間軸としてもう少し先になるような気もしています。AIに関してはビッグデータ解析からどう本質的に進化できるのか、VRとしてはスムースなUI/UX設計、IoTに関してはデータ取得後の後工程における提供価値など、「プロダクト→サービス→マネタイズ」と言った進化論をどのように設計するかが肝要に思います。

4. コンテンツ領域におけるリッチ化
冒頭にエンターテイメント・コンテンツやコミュニケーション領域においては、プレイヤーとして出そろった感があると書きましたが、大局的なトレンドとして「テキスト→写真」から動画へと進化していくのは、一定程度自明な流れとなるでしょう。ただし、広く動画と言っても、その領域に対する参入の仕方やファンクションの担い方は多様に存在するわけであり、かつ動画そのものは表現手法の1つに過ぎないので、ユーザーへの提供価値や、UI/UXをどう最適化するかが各領域での勝負の分かれ目になると認識しています。

5. シリアルアントレプレナーと「素人革命」による起業家の多様化
人材面では、「0→1」を生み出すことに長けている人材は、それ自体代替可能性が低いと意味で才能と言えます。さらにそれが複数回目であるシリアルアントレプレナーは、判断の精度の高さやチーム組成などの人脈力に加え、前回よりも大きなサービス・プロダクトというモチベーションも働き、成功確度が高いです。他方、CtoCなど「素人革命」を促すようなサービスにおいては、それを設計できる人材は、これまでの論理的なスペック論とは違ったユーザーと目線の近い起業家かもしれません。

6. スタートアップとしてのソーシング(発見・発掘)領域の優位性
スタートアップ業界の競争環境と言う意味においては、先輩上場ベンチャー企業も、インターネット完結で高いマネタイズ力と利益率を誇っていたゲームなどエンターテイメント領域からへシフトしている会社が増加しており、そのような資本力の高い企業もスタートアップのサービス開始後すぐに横一線の競合となりつつあります。そのような構図の中でスタートアップは、より泥臭く、よりローコストで、スピーディーに、新しい領域や、コミュニティー、資産、タレントを発見・発掘して行けるかどうかが大事だと思っています。

東京大学エッジキャピタル(UTEC)

山本哲也氏(取締役ジェネラルパートナー)
2015年のキーワード:ロボット、AI、IoT

2016年のトレンド:

1. VR/AR分野
米国での盛り上がりは報道の通り。Facebook、サムスン、ソニーなどのVR機器がマス展開開始。ベンチャーでは、Magic LeapやJauntVRや大型調達、2016年中の期待を煽る展開を想定。コンテンツの作成や、編集、配信、流通に関連した新たな技術・サービスの立ち上げが2016年に期待される。中でもコンテンツの共有が鍵に。UTEC山本の投資先では、3D写真のFyuseを展開するFyusionが関連投資先です。

2. IoT分野
日本でも経産省・総務省主導のIoT推進ラボが設置され、政府の取り組み強化。米国でもCESの1つの目玉になる感触。ただ分野の定義が広い分、幅広くベンチャーの参入を後押しするバズワード化している印象も。2016年は具体的なキラー・アプリケーションの模索を開始する年になると思います。技術先行の会社はアプリケーションを探して当面もがくことになるでしょう。UTEC山本の関連投資先では、Dragonfly Technoloy(商用及びスマートホーム向け無線センサーネットワーク開発)。アグリ分野もTPP関連で注目増です。UTEC投資先としてはベジタリア、ルートレック・ネットワークスがあります。

3. ロボット分野
2016年は、知能化された産業用ロボットが実際の製造・物流の現場に入り出す年になるでしょう。一部、ディープラーニング系のAI技術を産業用ロボットや、自動走行車関連に応用していく試みがプレス的には注目されるでしょうが、統計処理では機器制御の全てを解消できずに、話題先行にとどまるかと。その中で、モデル・ベースのシミュレーションを軸にロボットの知能化を実現しているUTEC山本の投資先、Mujinはより注目を集めるでしょう。ドローン分野の産業用分野への応用展開も2016年には日本でも動き出すのではと期待。

4. AI分野
ディープラーニングを軸にする人工知能は、猫も杓子も味付けのキーワードとして言及し盛り上がりつつ、混乱が増すかと。TensorFlowなどがオープンソース化されたことで、それらを用いたベンチャーなども出始めると思いますが、一部、データ解析や、曖昧さが許容される画像処理や認識などの分野で限定的な用途で現場での利用が多少されると思いますが、実際の効果を示せないケースが増えて2016年後半から幻滅期に入っていくかと思っております。UTEC山本のAI分野での個人的な関心はパーソナライゼージョン。

グローバル・ブレイン

百合本安彦氏(代表取締役社長)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、ロボット、AI、C2C、IoT

2016年のトレンド:マクロ的には、来年前半に相場調整がさにに入る可能性が高いと考えているが、投資姿勢は2015年同様積極的な姿勢を崩さず、下記8つの領域を中心に50億円~100億円を、すべてのステージのベンチャー企業にグローバルに投資をしていく。

まずは昨年も注目を集めたロボティクス領域。カメラやセンシングデバイスなどの低価格化や高性能化、AI技術の進歩を背景に、大きく成長すると予測している。中でも、Jiboのようなソーシャルロボットや、ライフロボティクスのような産業用コ・ロボットの分野が伸びると考えている。

2つ目はFinTech。米国ではブロックチェーンが注目され、AndreesenやVISAが投資や事業を加速化している。この波は日本にも上陸し、日本の大手金融機関の活動も活発化するのではないかと期待している。

3つ目は昨年に引き続き、アドテク分野に注目。本領域ではより一層の質の向上が求められており、シンガポールのNearやEyotaなどのAIを使ったアドテクの成長が予想される。

Eコマースの分野では、CtoCコマースがさらに成長すると予想する。メルカリ、クリーマ、ミンネ、BASEなど、ある程度プレーヤーが出そろっており、将来的には合従連衡の動きが進むと予想される。また、近い将来、ブロックチェーンを活用した取引形態に移っていき、より一層の活発化が予想される。

クラウド分野にも注目している。AWSなどのクラウドサービスとIoTの普及により、迅速にサービス開発・運用を行うDevOpsのニーズが高まっており、RightScaleやNagiosなどのDevOps向けツールを提供する企業が欧米で増えている。こういったサービスが今後、日本でも増えると考えられる。

6つ目は、IoTを使ったビッグデータ・プラットフォーム領域。単体としてのIoT製品は普及してきたが、今後は単体のモノとしてIoTではなく、August、BitfinderやArcstoneのようにIoT機器を複数繋いで、より幅広いサービスを提供する企業が増えてくると考えられる。

他にも、近年注目されているAI領域、ヘルスケア領域にも着目している。特に監視カメラなどの動画像認識技術を利用したサービス、カスタマーサポート支援などの言語処理技術を利用したサービスや、個人の行動変容を促し、健康リスクの低減を支援するサービスなどに注目している。

Draper Nexus Ventures

中垣徹二郎氏(Managing Director)
2015年のキーワード:FinTech、IoT、Marketing Automation

2016年のトレンド:BtoC市場が中心であった日本のスタートアップシーンにおいてBtoBの存在感が増す事になるだろう。この1年でもフロムスクラッチ、Freee、マネーフォワードなど企業向けクラウドサービスの会社の大型増資が話題になった。

この分野では、北米に遅れること久しいが、Venture Beatで取り上げられた2016年に上場予定企業の記事で挙げられた36社のうち8割がB向け企業、引き続き北米もB向け市場は熱い。Draper Nexusは、1号ファンドからB向けの企業向けの投資を中心に進めており、どの会社も業績は拡大。SaaSがいよいよ日本でも普及期に入る。SaaSの中でも、マーケティングオートメーションの分野は、競争が激化する。この分野に弊社も2社(イノーバ、フロムスクラッチ)に投資を実行しているが、イノーバはHub Spot、フロムスクラッチはMarketo、Pardot、Eloquaといった外資系のツールとの競合という形になっており、国内の増資のニュースだけでは見えない激しい競争が始まっている。SaaSの普及において導入支援・サポートの役割は重要であり、弊社投資先のtoBeマーケティングも、SaaSの導入・サポートの企業として、急成長が予想される。

AIも引き続き注目。AIを何に活かすのか、アプリケーションや市場をどのように掴むのかが重要なことは言うまではない。Draper Nexusの北米の投資先であるCylance社は、AIをセキュリティーソフトに活かしており、マルウェア対策ソフトとして急成長。日本でも、2016年はさらに興味深い会社が出てくると期待。

近年盛り上がりを示す事業会社のCVCやアクセラレーションプログラムが更に活発化するだろう。並行して大企業によるスタートアップの買収の件数が増加することも期待したい。

伊藤忠テクノロジーベンチャーズ

河野純一郎氏(パートナー)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、C2C

2016年のトレンド:2016年に盛り上がりを見せる分野は、FinTechです。会計や請求などのバックオフィス効率化、決済分野を中心に、すでに投資の活発化、市場への浸透が進んでいますが、「一部の人だけが享受している金融サービスの大衆化」というFinTechの本質という意味では、まだまだ開拓余地のある分野であると考えています。提携や出資、自社サービスの展開など、既存金融機関も危機意識を持つだけでなく実際の行動に転化してくることも予想されるため、プレイヤーも資金の出し手も含め群雄割拠の様相を呈しながら、市場発展を迎えていくのではないでしょうか。この分野で個人的に注視しているのは米国アトランタを拠点とする中小企業向け融資サービスを展開する「kabbage」です。

また、2016年に市場全体として盛り上がるかは分かりませんが、個人的に注目している分野は「農業」です。農業従事者の高齢化や広大な耕作放棄地の存在という構造的な課題、TPP参加や農地法改正に伴う参入緩和等々の市場の潮目の変化、ITとの親和性と改善可能性の高さ。難しい領域ではありますが、ベンチャーキャピタリストとして是非チャレンジしていきたい分野と考えています。

日本のVCが予想する2016年のスタートアップ・トレンド(前編)

日本のVCが予想する2016年のスタートアップ・トレンド(前編)

2015年にもさまざまなスタートアップ企業が登場したが、来年はどんな1年になるだろうか。TechCrunch Japanでは、2016年のテック業界とスタートアップのトレンドについて、VCとエンジェル投資家にアンケートを実施。計19人から回答を得た。

回答いただいた質問は2つ。「2015年のスタートアップシーンを象徴するキーワードは何ですか(選択式、自由回答可)」というものと「2016年に盛り上がりが予想される分野やサービス、企業名など理由とともに教えてください(自由回答)」というものだ。では早速国内VCたちの意見に耳を傾けてみよう。

前編では、インキュベーターやシード、シリーズAでの投資を行うVCを中心に紹介する。シリーズA以降など比較的投資額の大きいVCの意見については、以下の記事後編を見てほしい。

日本のVCが予想する2016年のスタートアップ・トレンド(後編)

※各VCから回答を得ているとはいえ、投資担当者は通常カバー範囲が決まっている。だから各回答は必ずしもそのVCを代表する意見ではない。

サムライインキュベート

榊原健太郎(代表取締役CEO)
2015年のキーワード:AI、FinTech、VR

2016年のトレンド:ITを活用した遠隔医療サービスが伸びると予想します。医療の業界においては、地方における医師・看護師の確保、医療費の削減、予防医療への取組み等、様々な課題に直面しており、厚生労働省より平成27年8月10日に「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」という通知が発表されました。

英会話スクールにおいて、スカイプ英会話でディスラプトが起きたように、医療業界にもMEDI-TECHによるディスラプトが起きると思っております。

コーチ・ユナイテッド

有安伸宏(代表取締役社長)
2015年のキーワード:FinTech

2016年のトレンド:“動画の消費スタイルの変化”が面白いと思っています。例えば、musical.lyのタテ動画を数秒間単位でスワイプすることに慣れてしまうと、YouTubeをはじめとしたテレビのメタファーを引きずっている動画サービスが非常に古臭く感じられます。ユーザーの時間の使い方が全くの別物であり、全く異なるユーザー体験なので、「動画」と呼ばない方がいいくらい。Facebookがプロフィールに動画をアップロードできるようにしたように、様々なサイトが動画に侵食されていくと思います。「◯◯のスマホ動画版」の、◯◯の中に、大手サービスの名前を入れてみるだけでも、色々なチャンスがあることに気づきます。

そして、たった今、大企業の中の偉い人へ、上記の文章をチャットで送りつけて「何かコメントある?」と聞いてみたところ、次のような声をもらいました。

「タテ動画やりたいんだよね。社内の動画ツールが縦対応してないんだけど、いい加減やれよーという話をしてる。そういう、技術的負債みたいのが残り続けてるのが悔しい。あんなの体験してみれば、すぐわかるのに。友だちから送られてくる写真だって大半が縦なんだもの。スマホ最適化されてるコンテンツに囲まれてるはずなのに、作る側に一歩回るとなぜか忘れてしまう。」

そう。気づいていることと、事業を立ち上げられることとは大違い。ということで、スタートアップの皆さん、チャンスですよ!(この領域についてフリーディスカッションしたいので、お気軽に連絡ください!)※編集部注:今回有安氏は個人投資家としての視点で回答頂いている

iSGインベストメントワークス

五嶋一人(代表取締役 マネージング・ディレクター)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、AI、FinTech、IoT

2016年のトレンド:「スマートフォン+追加デバイス」「インターネット+追加デバイス」による非言語サービス(特にヘルスケア領域とエンターテイメント領域)、銀行の三大機能(為替・決済・与信)を代替する狭義のFintech、インターネットを活用してリアルの生活や仕事をより豊かに、より便利にする「インターネット+α」のサービスの3点。

なお「2015年のキーワード」はポジティブな意味だけではなく、ネガティブなバズワード的な意味を含みます。「ユニコーン」もそうですが、メディアが“伝え易さ”を重視して多用するのはよいとしても、バズワードによる安易なカテゴライズは事業・サービスの本質とは全く無関係であり、起業家や我々プロフェッショナルの投資家は、このようなバズワードに左右されることなく、個別の事業・サービスの本質を見極め、成長させていく力がより求められるようになるのではないでしょうか。

Genuine Startups

伊藤健吾(Managing Director)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、FinTech、IoT

2016年のトレンド:スマホアプリ、特にコンシューマーインターネット領域におけるゴールドラッシュとも言える時代は終焉に近づいていると思います。これからは「産業×IT・インターネット」による新しいイノベーションがどんどん出てくる時代に変わってきています。

これはスマホを中心とするスマートデバイスの登場、LTEなどモバイル通信のスピードアップ、クラウドによるコンピューティング等のリソースの低廉化といったこれまでの技術革新の結果が、本格的にこれまで適用されていなかった産業分野に使われることによって起こるトレンドです。2016年はその中でも適用しやすい領域としてエンタープライズソリューションが盛り上がると思います。過去3年間のシリコンバレーの投資領域でも投資金額・件数で多いのがAccounting/Finance、HR Tech、BI、CRMといったところで、その流れは日本にも来ると思います。

TLM

木暮圭佑(General Partners)
2015年のキーワード:動画サービス、FinTech、IoT

2016年のトレンド:2015年後半に土壌が育ったな、と思うのはFintechとVRではないでしょうか。前者は参入障壁が大きいとはいえ、法律面も含めてクリアになってきたので、2016年には新しく出てくる会社が多いかなと思っています。後者に関してはメガベンチャーがこぞって支援するアクセレーションを立ち上げているので、そこを利用したベンチャーが生まれ、日の目を見るのは2016年かなと思っております。

またBtoBのサービス——特にニッチで、あまりインターネットやテクノロジーが普及していなかった分野のサービスが増えるのではないかと思っています。米国などでもPlanGridのように工事現場にテクノロジーを持ち込むようなサービスは伸びていますし、識者によるFacebookのグループなどでの議論を見ていても、比較的BtoBに目が向いているという感じもしています。もちろん営業力勝負になる領域ではありますが。

個人的に興味を持っているのはAIです。テクノロジードリブンではありますが、「AIの信用性」というものがある程度形成されれば、人を置き換えるような事業が生まれてもいいかなと思っています。海外ではすでに弁護士をリプレイスできると豪語するサービスがProduct Huntに掲載されていて話題になりました。

また、結局のところトレンドとして使われるかどうかよりもユーザーが使うかどうかがすべてと思っています。競合が少なく新規性があるのでユーザーに使われる可能性があり、それを狙う人が多いのでトレンドになります。個人的には、トレンドに入らなくてもユーザーに使われるものを見つけられる会社を応援することができればいいなと思っています。

Mistletoe

山口冬樹(チーフ・インベストメント・オフィサー)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、IoT

2016年のトレンド:2015年は「IoT」という言葉が根付いた年となったが、IoTスタートアップの多くはハードウェアがネットにつながった段階にとどまっている。2016年はハードウェアに限らず、コア技術ベースのスタートアップが躍進するのではないかと期待している。

日本でも大手企業OBエンジニアや博士号ホルダーが起業したスタートアップが大学発ベンチャーを含め増えてきている。シリコンバレーでは機械学習や画像解析といったコア技術を生かしたスタートアップがすでに台頭しているが、日本ではそうした分野に加え、得意とするモノづくり・ハードウェア、材料、再生医療等のバイオテックなどの技術を生かした、潜在的に質の高いスタートアップが増えてきている。

IoTでも、フィンランドのEnevoのように、今後はセンシングとビッグデータ解析を組み合わせ、付加価値の高いフィードバックを提供するIoTスタートアップが、BtoBや、BtoCではヘルスケア領域等から数多く出てくるのではないかと期待している。

具体的には、大手自動車メーカー出身のエンジニアが開発する小型EVのFOMM、パーソナルモビリティのcocoa motors.、自動車・ドローンなどの自動運転技術への適用が期待できる高精度GPSシステムのマゼランシステムズジャパン、ExaScaler等ビッグデータ解析やAIの進化に対応するためのスパコン・サーバーの処理・ストレージ能力を飛躍的に増大させる技術、等の発展を期待したい。

一方で、こうしたコア技術ベースのスタートアップは、従来のスタートアップに比べサービス・製品を作るまでより多額の資金が必要な傾向にあり、また顧客不在の技術志向に陥らないための経営知見や事業開発力が求められるため、インキュベーターや投資家の幅広い支援が不可欠であり、当社もスタートアップと二人三脚で事業発展に注力していきたいと思っている。

アーキタイプ

中嶋淳(代表取締役)
2015年のキーワード:AI

2016年のトレンド:(1)経理・人事・労務といった企業内業務におけるAI・SaaSモデル、(2)大箱化する既存エンタープライズ向けサービスに対抗するSMB向けサービス(ちきゅう)、(3)FinTech全般、特にAI活用モデル(AlpacaDB

DGインキュベーション

林口哲也(マネージング・ディレクター)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、FinTech、IoT

2016年のトレンド:DGインキュベーションでは日本・アメリカ・東南アジアと3つの地域で投資を行っており、「インターネット分野」という大枠はあるものの、日本においてはそれ以上あえて注力分野を絞り過ぎないようにしているため、あくまで案件毎に投資検討・実行をしています。ですが、その中でも期待しているのは「IoT」と「エンタープライズ向けクラウド」の2つの分野です。

IoTは、その定義が難しい面もありますが、アプリケーション先が豊富に見込め、2016年あたりからより普及が進むのではないかと考えています。弊社ではO2Oのプロダクトやビーコンを用いたプロダクト、センサーネットワークのソリューションなど日米で複数の投資先があります。実際に日米の投資先同士が事業連携を行ったり、日本の大手企業との共同プロジェクトを先日発表した投資先もあり、IoT分野の今後の伸びが非常に楽しみです。

エンタープライズ向けクラウドについては、例えば米国では、「クラウドとは何か」「その信頼性は」といったことを論ずるフェーズはとうの昔に過ぎ去っており、「クラウドのプロダクトを使っていかに顧客に付加価値を提供するのか」が議論の主題となっています。しかし日本はまだ米国に追いついていないのが現状ではないでしょうか。

またニーズがあるにも関わらず、日本でこの分野に取り組んでいるスタートアップの社数はまだまだ少なく、需給ギャップ=チャンスも大きいと考えています。コンシューマー向けプロダクトのような華やかさは決してないですが、渋いながらも堅調で着実な伸びが見込めるとも言えます。2016年はこういった分野には、積極的に投資を行っていきたいと考えています。

プライマルキャピタル

佐々木浩史(代表パートナー)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、動画サービス、ロボット、AI、C2C、FinTech、IoT

2016年のトレンド:盛り上がるの定義を“事業が形になる”とした場合、以下のような分野が挙げます。
・ロボット/IoT分野:ハードウェアをソフトウェア的に開発する環境も整いつつあり、プレイヤーが増えることが考えられます。スマホの次のUIとしてのロボット、自動車で実践されているようなセンサー×データのサービスへの応用が、ヘルスケア分野やマーケティング分野等でも活用されていくと思います。
・動画分野:この数年間の投資が形になっていく1年と思います。
・スマホコマース:CtoCアプリを中心により活性化していくものと思います。難しいと言われているバーティカルメディア×コマース等も立ち上がってくるのではないでしょうか。
・BtoBソリューション:特定業界の既存商習慣をテクノロジーで変えていく、問題解決していくようなスタートアップが増えるのではないでしょうか。インターネット技術がコモディティ化した昨今、非IT業界からの起業が加速するものと思います。また、これまでにたまっているデータ×AIによる作業効率化等も進むと思います。

投資環境の変化を鑑みるに、トレンドやバズワードに流されることのない本質的な事業開発、やみくもな投資ではなく収益を意識した事業開発が、これまで以上に重要になってくると思います。

そのためにはグローバルで先行事例を研究し、特に失敗事例を分析することが必要になるでしょう。それを踏まえた上で自分が事業を展開する領域・業界の特性を見極め、勝ち筋を見つけたらポイントを絞って早く参入することが重要ではないでしょうか。また、バリューの高騰も落ち着くのではないでしょうか。さらに優先株やCB/CEがもっと活用も含めて、資金調達の手段も多様化すると考えられます。

日本のVCが予想する2016年のスタートアップ・トレンド(後編)

HR Technology Conferenceに見る人材領域イノベーションと日米温度差

編集部注:この原稿は鈴木仁志氏による寄稿である。鈴木氏は人事・採用のコンサルティング・アウトソーシングのレジェンダ・グループのシンガポール法人の代表取締役社長を務めていて、シンガポールを拠点にクラウド採用管理システム「ACCUUM」(アキューム)をシンガポールと日本向けに提供している。

世界最大級のHR Techイベントである『http://www.hrtechconference.com/』が10月にラスベガスで開催された。イベントのレポートと合わせて、日本と欧米におけるHR Techの比較をしていきたい。

読者のみなさんはHR Techと聞いて何を思い浮かべるだろうか? SAPやOracleのような大企業向けの人事管理システム、もしくはリクナビのような求人サイトだろうか。AdTechやFinTechと比べるとぼんやりとしたイメージを持っている人が多いかもしれない。HR Techが日本より高い認知度を得ているアメリカと比べると、日本での認知度はこれからだろう。このレポートでは、今回のイベントを通じて見られた、HR領域でもますます高まっているデータサイエンティストのニーズや、HR Techで社員エンゲージメントを高めていこうとする試みなど、人事担当者だけでなくスタートアップの経営者なども注目すべきトレンドについて紹介したい。

今年で18回目を数える一大イベント

このHR Technology Conferenceも、1998年から始まって、今年で18回目を数えた。2015年10月18日〜21日の4日間にわたって開催されたが、プレイベントデーとして開催される初日と、午前中のみの開催となる最終日を考慮すると、実質的には2.5日間のイベントとなっている。フルカンファレンスパスが20万円以上、展示会のみの入場でも5万円必要であるにも関わらず、今年も5000名以上がラスベガスに集結し、60以上のセミナーと300以上のブースが展開されていた。

言語や入場料の違いや、来場者の大半が飛行機で来るラスベガスと、オフィスから1時間以内で行ける東京会場という開催地の違いなどがあるため単純な数字の比較はできないが、アメリカではHR Technology Conferenceは非常に大きなイベントだ。ラスベガス開催の翌週10月27日〜28日にはフランスのパリで4000名近くが来場した『http://www.hrtechcongress.com/』という別のイベントが開催され、そのどちらかへの参加を選択した来場者や出展企業が多くいたであろうことを考えればなおさらだ。

2
*1,3: 主催者発表。
*2: HR Expoは、セキュリティや防災など他5つのExpoと同時開催されており、HR Expo単体での来場者数は発表されていないため、HR Expo出展企業数を全体数で割った19%という比率をもとに、主催者発表の来場数から算出。

今年の HR Technology Conference を通じて、筆者が感じたトレンドをいくつか挙げてみたい。

高まるHRデータサイエンティストの必要性

セミナーでは、人事管理、採用、教育・人材開発、福利厚生など人事に関する様々な領域における事例紹介やトレンドの分析などが発表されるが、今年のセミナーや出展ベンダーとの会話や打ち出し方から感じられたのは、今後高まっていくであろうHRデータサイエンティストの必要性だ。以前書いた通り、人事・採用においてデータドリブンなアプローチは日本よりアメリカの方が進んでいるといってよいが、そのうえでなおも進化を続けるアメリカにおいて、今、”Real-time data”と”Reliable data”という2つのキーワードが飛び交っている。

一つ目の”Real-time data”とは、文字通りHRデータにもっと即時性を求める課題意識だ。人事における社員・候補者分析をベースにして回すPDCAサイクルは、例えばマーケティングにおける顧客分析などと比べてリアルタイム性に欠ける、というわけである。これには、テクノロジーの問題だけでなく、社内における優先順位が相対的に低くなっていたために、人的リソースが十分に割かれていなかった問題もあると指摘されている。例えば採用において採用単価やチャネル分析が完了する頃にはそのポジションの採用が終わっていたり、業績評価結果が人事から部門に渡るのは数ヶ月後なんてこともあったりする。リーディング企業はこのPDCAサイクルを回すためのHRシステムアナリスト やHRデータサイエンティストなどを人事部門においており、このトレンドは今後も加速していくと見られている。

二つ目の”Reliable data”(Good dataかBad dataと表現されることもある)は、データに対する信頼性を問う論点だ。つまり、どれだけ信頼できるデータなのか?分析に足るデータなのか?という議論である。例えば、給与などの定量的な情報は、データとしての信頼性が高いのに対して、評価などの定性的な情報はデータとしての信頼性が低くなる傾向がある。この、従来当然のこととして片づけられていた事実に光が当てられようとしているわけだが、それこそ、人事業域でのデータ分析においてデータドリブンなアプローチを模索してきたアメリカを中心とした先駆者たちだからこそ辿り着いた課題感だといえる。具体的に定性データの信頼性を高めていく手法についてはまだ明確なテクノロジーがあるというわけではないようだが、心理学や社会学の見地からいかにデータの仮説・検証を進めるか、社員からの自己申告などでいかに定性データを効果的に取得するか、などといったテーマが研究されており、ここでもHRデータサイエンティストの活躍が期待されている。

エンゲージメント向上への挑戦

もうひとつのトレンドとして、”エンゲージメント”を挙げておきたい。社員エンゲージメントというのは、人事にとって特に新しい概念ではないが、今年はセッションでもこのエンゲージメントがこれからの人事の課題としてあらためて注目されており、エンゲージメント領域でのHR Techも盛り上がってきている。社員エンゲージメントとは、「帰属意識」や「会社愛」などの意味で使われることもあるが、本質的には『組織や仲間と目的を共有することによるコミットメント』という方が近い。Gallupの調査によると、エンゲージメントの高い社員は、比例してパフォーマンスが高くなると証明されているにも関わらず、アメリカ全体でエンゲージメントが高い社員は全体の三分の一以下に留まっているという。ちなみに日本はどうかというと、2013年のGallupの調査では7%とアメリカを大幅に下回る数字が出ている。調査会社により数字の違いはあるものの、Aon Hewittの調査でもダントツで世界最低水準となっている。

この社員エンゲージメントを図る指標の一つが社員エクスペリエンスだ。ここでいう社員エクスペリエンスとは、人事・採用システムのUI/UX改善により、エンドユーザーである社員の人事・採用システムに対する満足度を上げる、といった表面的な話ではなく、HR Techを活用して会社が社員に対して価値を提供することにより、社員の会社での幅広い体験と満足度をいかに高めていけるか、といった論点を意味している。

3
*この図は人事的視点に合わせて作成しており、マズローの5段階欲求の一般的な解釈と異なる場合があります。

マズローの法則で低階層の“生存欲求”や“安全欲求”(図の下から1つ目・2つ目)は、人事制度においては基本給、社会保障、基本的な福利厚生と言われている。後述するヘルスケアや福利厚生でこうした低階層を強化しながらも、併せて中高階層の“所属欲求”や“承認欲求”(図の下から3つ目・4つ目)を満たしていくことが、社員エンゲージメントを高める上で重要となってくる。

HR Techによってエンゲージメントを高める施策は入社前から始まる。例えば、WantedlyのOpen API提供開始も、「なぜその仕事をやるのか」、「どんな価値観を持った人達と働くのか」といった価値観によるマッチングという中高層寄りのコンセプトをHR Techを通じて普及させていくだろう。採用プロセスを経て、内定から入社までの間には、新人社員研修などを意味する”Onboarding”というプロダクト、もしくは機能を使って内定者のエンゲージメントを入社前から高めることもできる。Onboardingというと、先日開催されたTechCrunch Tokyo 2015のスタートアップバトルで優勝したSmartHRのように、内定者と人事のどちらにとっても煩わしい労務関連の手続きを自動化する機能も含まれるが、ここで意味するのは、内定者に対して入社前からチームメンバーやプロダクトの情報を閲覧できる環境を提供することを通じて、所属欲求(図の下から3つ目)を高めることでエンゲージメントを向上させ、入社前の内定辞退率を下げたり、入社後により早く会社に馴染み戦力化したりすることを狙うような機能の話だ。人事ソフトウェア・人事アウトソーシング大手のADPは昨年2014年のHR Technology Conferenceのデモで、アップグレードしたOnboarding機能により内定者エンゲージメントをより高めることを強く訴えていたのだが、そのADPやZenefitsを追いかける立場にあり、今年6月にシリーズCで$45M(約55億円)を調達し、給与・労務システムで勢いのあるNamelyが自社ブースでのデモにおいてもエンゲージメントを強調するなど、差別化要因として機能強化している。

デモセッションでエンゲージメントの重要性を強調したHR Cloudは、Onboardingと合わせて、入社後の施策として”Employee Recognition”機能をアピールした。これは「社員同士の感謝の気持ちを伝え合う」ことを通じて組織の目的意識や価値観を明確に共有してエンゲージメントを高めるアプリで、承認欲求(図の下から4つ目)を満たす。大規模HRシステムには組み込まれていることが多い機能だが、HR Cloudのように規模的に1レイヤー下のHRシステムが機能強化していることや、KudosAchieversなどがスタンドアローンのアプリとして数億〜数十億円の調達をしていることも、この領域が注目されている証左であるといえる。

エンゲージメントを語る際に外せないのがヘルスケアだ。もちろん、ヘルスケアは人事にとっては常に重要な領域だが、社員の健康はエンゲージメントを高めるとGallupも指摘する通り、ここ数年は単純に”社員に健康でいてもらいたい”という会社の想いだけでなく、このエンゲージメントという視点から、今まで以上に注目されている。日本でも最近CHO(チーフ・ヘルスケア・オフィサー)やCWO(チーフ・ウェルネス・オフィサー)をおく会社が見られるようになった。今回のHR Technology Conferenceでは、スマートウォッチ・リストバンドのFitbitが、定価1万円以上するスマートリストバンド端末Fitbit Flexを、来場者である人事関係者に対して1500個も無料配布しており、会社の所在地をもとに来場者を4つのエリアに分類し歩数を競う『HR Tech Fitbit Challenge』を開催してみせながら、社内でこのような活動を行うことにより社員の健康を促進していくことの重要性を訴えていた。

エンゲージメントから話は逸れるが、ヘルスケアはコスト面においても大きな意味を持つ。社員が病気をすることによって会社が負う年間コストは、アメリカの労働人口全体で約73兆円 (5889億ドル)というIBIの調査*もある。このレポートでは、33%にあたる約24兆円(1995億ドル)が生産性の低下による費用とされている。この調査がアメリカの労働人口としている約1億3300万人で計算すると、一人当たり22万円(1800ドル)となり、テクノロジーで改善できる余地の大きな領域と考えられている。
*Integrated Benefits Institute FCE reports参照

4

日系企業の存在感から学ぶこと

視点を変え、この世界最大規模のHR Tech イベントにおける日系企業の存在感はどうだったかを振り返ってみたい。注目すべきはリクルートグループとワークスアプリケーションズだろう。

リクルートグループは、リクルートやRGFという名前でスポンサーや出店をしていたわけではないため、会場でロゴなどを目にすることはなかったが、買収したIndeed以外にもコードチャレンジ/エンジニア採用ツールのHackerrankやビデオ面接のWePowなどへの出資を通じて知られていた。そのためか、参加者と話していると“Recruit”という名前は知っているものの、投資会社と思っている人も多かったようだ。実は人事・人材やマーケティングの領域で1.5兆円の事業会社なのだと教えると、一様に驚いていたのが印象的だった。

日系企業で唯一スポンサーとなり大きなブースを出展していたのはワークスアプリケーションズだ。ERPシステム『HUE』の海外版『AI Works』の発表をこのHR Tech Conference開催の10月20日に合わせてくるなど、気合いの入った展開だった。売上高365億円のワークスアプリケーションズは、日本では総合的なERPプロバイダー大手としてSAPなどと競合するが、アメリカ市場では同2兆円超の独SAPの競合というよりは、2005年に創業され人事・経理システムで約975億円(7億8790万ドル)を売り上げるWorkdayなどと比較されている印象だ。デモルームでのプレゼンでは分散型処理によるレスポンス時間などがアピールされていたが、これに対する参加者の反応は残念ながら期待通りではなかったようだ。より高い付加価値の提供により社員の総合的な体験を向上させるという前述の社員エンゲージメントの論点よりも、ソフトウェアのユーザビリティアピールに聞こえてしまっていたからかもしれない。これは、『AI Works』(もしくはHUE)の機能やコンセプトが悪いというわけではなく、今後アメリカ市場の特徴やトレンドに合わせたアピール方法やローカライゼーション(もしくはアップグレード)が必要となってくるということなのだろう。

これらのケースからもわかるように、HR Tech領域、特にアメリカ市場においては、欧米企業が日系企業に先行している印象が否めない。しかし、過去を振り返ると一概にそうとも言えない 。Monster.com(当時Monster Board)がローンチしたのは1994年と、リクナビ(当時Recruit Book on the Net)がローンチした1996年より2年早いだけだった。人事管理システムの領域では、Workdayの2005年創業に対して、ワークスアプリケーションズは1996年と9年も早くに人事システムの提供を開始している。しかしながら、近年Job AggregationやPeople Aggregationのサービスに目を向けると、Indeedのローンチが2005年に対してビズリーチのスタンバイは2015年であったり、EnteloTalentBinのローンチが2011年に対してアトラエのTalentBaseが2015年であったりと遅れが目立ち始めている。国の文化や慣習も、サービスのコンセプトや機能も異なるため、単純な比較をすべきではないかもしれないが、例えば管理システムとしての人事システムを志向してきた日本と、データ分析・改善に価値を置いてきたアメリカとの違いがこの差を生んだ可能性はある。一方、逆に日本のビジネスモデルや機能が海外で受け入れられるケースもあり、例えば(日系企業という呼び方は相応しくないかもしれないが)福山太郎氏によるAnyPerkは、日本型ベネフィット・サービスモデルを逆にアメリカで普及させているビジネスモデルの輸出型といえるし、私たちが提供する採用管理システムACCUUMも、候補者ソーシング機能などでは数十億円を調達しているアメリカなどのプレイヤーに遅れをとるが、よりユーザー目線での管理機能などでオリジナリティを出すことにより、日本だけでなくシンガポールのユーザーにも評価されている。前述のOnboarding機能も、日本では内定者マイページとして日本の新卒採用では一般的であり、当社が提供する人事システムEHRにも米国大手ベンダーよりも先に搭載されていた機能とコンセプトは近い。マーケットの特性や成熟度を見極めていければ、日本発で海外に通用するHR Techは間違いなく存在する。

HR Techでチャンスをどうつかむか?

会場の一部ではスタートアップのブースが並ぶ一角もあった。Y Combinator 2015年夏卒業生で、実際の業務で想定されるシチュエーションをバーチャルに作り出し、シミュレーションにより採用判断をサポートするInterviewedを含む30社が出展していた。ユーザーとして利用を検討するもよし、パートナーとしてシステム連携を検討するもよし、これらの萌芽を研究して、アイデアを自社のプロダクトに生かすのもありだろう。

少しネガティブな表現もしたが、既述した通り、先日開催されたTechCrunch Tokyo 2015のスタートアップバトルでは、労務手続きを自動化するSmartHRが優勝するなど、日本のHR Techも盛り上がりを見せている。HR Techユーザー側となる企業人事も、提供側のHR Techベンダーも学ぶことが多いHR Tech Conference。来年は、ここにより多くの日系企業の出展と日本人参加者が見られることを期待したい。

2015年もありがとうございました。- 今年の総まとめ

2015 年もいよいよ終わりが近づいてきました。皆さまにとって、2015 年はどのような一年だったでしょうか。今年最後の投稿となる今回は、Google 検索に関する今年の出来事を振り返り、2015 年を皆さまとともにおさらいしていきたいと思います。

モバイル関連の記事が注目を集める

まずは、ウェブマスター向け公式ブログに投稿されれた記事のうち、今年一年アクセスの多かった記事をランキングでご紹介します。

  1. 検索結果をもっとモバイル フレンドリーに
  2. 検索ユーザーがモバイル フレンドリー ページを見つけやすくするために
  3. "Google Search Console" - ウェブマスター ツールが新しくなりました
  4. Google がお勧めするスマートフォンに最適化されたウェブサイトの構築方法
  5. モバイル フレンドリー アップデートを開始します
  6. Google の検索結果からコンテンツを削除するには
  7. HTTPS ページが優先的にインデックスに登録されるようになります
  8. 誘導ページについて、品質に関するガイドラインを更新しました
  9. Google のインデックスからコンテンツを削除する方法
  10. 4 月 21 日のモバイル フレンドリー アップデートについてのよくある質問

上記ランキングの中には、Search Console のように今年初めて登場した言葉も見受けられますが、一年を通して最も人気を博したトピックは "モバイル" でした。上位 10 件中 5 件もの記事がモバイル関連となるなど、ますます読者の皆さまのモバイルに対する関心の高まりを感じます。

App Indexing

2013 年の発表、そして 2014 年の一般公開以降、App Indexing は 多くのウェブマスターやアプリ デベロッパーの皆さんに利用され、Google 検索はより多くの モバイル アプリ内コンテンツをインデックスすることが可能になりました。今年は、ランキング要素の一つとして使用されることが発表され、検索結果でアプリ コンテンツがより簡単に見つかるよう変更が行われました。Google サーチ クオリティ チームでは、

など、App Indexing に関してより良い体験を提供できる体制を整えました。

Google Search Console

一方、Google 検索に関心を寄せるのはウェブマスターだけではなくなったと考えた私たちは、今年 5 月、ウェブマスター ツールを Google Search Console として一新し、アプリ開発者向けの機能を提供するなど、様々なタイプの人たちに向けたサービスの提供を開始しました。もちろん、従来からある機能の改善も継続的に行っています。Search Console はこれからも検索に関心を寄せるすべての人にとっての包括的な情報源となることを目指していきます。Search Console に関する記事を読み直したい方は、Search Console ラベルより検索いただけますので、ぜひご活用ください。

セキュリティ

モバイルなどの話題が盛り上がる一方で、Google はユーザーやウェブマスターの安全性も決して忘れません。昨年に引き続き今年も #Nohacked キャンペーンを開催し、ハッキングを防止するための様々な方法を紹介しました。また、検索結果に表示されるサイトの不正なハッキングに取り組むことを目的に、一連のアルゴリズムの変更も行いました。さらに、セーフ ブラウジングによるユーザー保護の取り組みを紹介したり、HTTPS URL を優先的にインデックスしていくことを発表するなど、ユーザーがより安全にウェブ ブラウジングを行えるための情報提供と環境の改善に力を注ぎました。

皆さんとともに

そしてもちろん、今年もウェブマスターをはじめとする多くの方と出会えたことを私たちは大変嬉しく思います。今年はハングアウトを活用したウェブマスター オフィスアワーのみならず、東京をはじめ、岡山や大阪、金沢といった地域で行われるイベントにも参加し、参加者の皆さんと直接的な意見交換を行いました。また、米国本社では 2 年に一度の TC summit が開催され、ヘルプ フォーラムでユーザー サポートに日々大きな貢献をいただいている世界中のトップレベル ユーザーの方々と、貴重な意見交換や議論を行うことが出来ました。

以上、今年も様々な取り組みが行われましたが、これらは、ヘルプ フォーラムや Google + コミュニティ、ハングアウトなど、様々な場所で皆さんにご参加いただいたり、フィードバックをご提供いただいたおかげです。どうもありがとうございました。Google サーチ クオリティ チームでは、2016 年も皆さんのお役に立つ情報を提供できるよう、継続的に取り組みを行っていきたいと思います。

それでは皆さん、良いお年を!

クラウド会計のfreeeがFinTechファンドなどから10億円を調達、年間の調達額は45億円に

freee代表取締役の佐々木大輔氏

クラウド会計ソフト「freee」をはじめ、クラウド給与計算ソフト、会社設立支援ツールなどを提供するfreeeは12月28日、SBIホールディングス傘下のSBIインベストメントが運用する「FinTechファンド」などを引受先とした合計10億円の第三者割り当てを実施したことをあきらかにした。同社の2015年の資金調達額は8月の調達とあわせて45億円。同社の発表によると、未上場企業においては年内で最大の額になるという。

freee代表取締役の佐々木大輔氏

freee代表取締役の佐々木大輔氏

クラウド会計ソフトのfreeeはこれまで40万件以上の事業所が利用。12月には三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行など11の銀行との協業も発表している。これはfreeeのユーザーである中小企業や個人事業主の会計データを、ユーザーに許諾を得た銀行が閲覧できるようになるというもの。今後銀行側では、会計データを与信にした融資など、新たな金融サービスを企画・検討していくという。

またfreeeは12月16日にメディア向けの説明会を開催しているが、その際には、現状のfreeeはまだサービスの第1段階であると説明。今後は、会計事務所向けに、経営判断のためのレポーティング機能や分析機能、マーケティング機能などを提供していく。

その説明会の際に同社が強調していたのが、「10年後になくなる職業として公認会計士が挙げられているが、そうはならない」ということ。

多くの職業が今後コンピューターで置き換えられるとした2013年のオックスフォード大学のレポートでは、人工知能の発展により10年後には会計士の仕事がなくなるとも言われている。だが今後、企業のリアルタイムな経営パートナーになっていくことで、「なくなる職業」にはならないというのがfreeeの主張だ。freeeをはじめとする会計ソフトは、毎月ではなく、リアルタイムにレポートを閲覧できる。このリアルタイムな数字をもとに、素早い経営判断を支援していくことが求められているのだと。前述の機能強化は、この方針に沿ったもの。具体的なスケジュールは未定だが、2016年中にも順次新機能が提供される見込みだ。

freeeの今後のプロダクト開発について

freeeの今後のプロダクト開発について

人工知能分野の投資環境、最前線を分析

shutterstock_228897490

編集部記Nathan BenaichはCrunch Networkのコントリビューターである。Nathan Benaichは、Playfair Capitalのパートナーを務めている。

現在、人工知能は最も胸の踊る、革新をもたらす技術の1つであると言える。私はPlayfair Capitalのベンチャー投資家でAIのコミュニティーを構築するための投資に注力している。その立場からすると、今の時代は投資家がAI分野の企業を助けるのに最適な時期だと言える。それには3つの理由がある。

1つは、世界の人口の40%はオンラインにいて、20億台以上のスマートフォンが使用され、毎日の利用頻度も増加している(KPCBの調査より)。それにより、AIを構築する素材となるユーザーの行動、興味関心、知識、つながりやこれまで存在しなかったありとあらゆる細かなアクティビティのデータ資産が集まるようになった。

2つ目は、コンピューター演算やストレージのコストが大幅に下がったことだ。反対にプロセッサーの処理容量は増え続け、AIアプリケーションは手頃な価格で構築することが可能となった。

3つ目は、最近のAIの学習システム、アーキテクチャ、ソフトウェアのインフラストラクチャの設計が大幅に改善されていることだ。これらは将来におけるインベーションを加速することを保証するだろう。私たちはまだ明日がどのような形でどのように感じるか、そしてそれがどれほどのことかを完全には理解できていない

また、AIを軸としたプロダクトはすでに市場に解き放たれ、検索エンジン、レコメンドシステム(例えば、Eコマースや音楽サービスにあるようなレコメンド機能)、アド配信と金融商品の取引のパフォーマンスの改善に役立っていることに注目すべきだ。

AIに投資するリソースのある企業は、他の企業が後を辿る道を切り拓いている。他の競合他社が同じ場にいないことのリスクも負っている。それにより、コミュニティーはより深くAIを理解し、多岐にわたる複雑なタスクを担う学習システムを構築するための機能的なツールを手にすることができるようになった。

AI技術を何に使うか?

多様なことに応用できる強力な技術を持って、AI企業は各社、それぞれの方法で市場に参入している。ここには6つの道とそのルートを選んだ会社を何社か挙げた。

  • 市場には多くの企業があり、彼らのウェブやオンプレミスに保存したオープンデータを活用することができるようになった。これらのデータをつなげることで、複雑な課題の全体像を捉えられるようにする。そこから新しい洞察を得て、未来予測に役立てている。(例:DueDil*、Premise 、Enigma
  • チームの専門分野を活かして、特定分野において高頻度で発生する重要な課題を、AI技術を使って、人では管理しきれない部分を補う。(例:オンライン詐欺探知のSift ScienceRavelin*
  • これまでのAIフレームワークをプロダクトにしたり、新規のAIフレームワークを様々な商業的な課題の解決のために提供する。例えば、特徴選択、ハイパーパラメーター最適化、データ処理、アルゴリズム、モデル学習、デプロイメントなどのフレームワーク。(例:H2O.aiSeldon*、SigOpt
  • 知識労働者が行っているもので繰り返し発生する作業、構造化されているが、人的ミスの余地があり、時間のかかる作業を日常的な状況判断を行い自動化する。(例:Gluru, x.aiSwiftKey
  • ロボットや自立して動くエージェントが物理世界で物事を感知、学習、意思決定する力を与える。(例:TeslaMatternetSkyCatch
  • 長期の視点に立ち、学界が担うような分野での研究開発(R&D)に注力する。学界の予算は厳しく、発展しずらいため、その分野に進出するリスクを取る。(例:DNN ResearchDeepMind 、Vicarious)。

これについての議論は別の記事でもまとめられている。つまり重要なことは、大手データ所有者(Google、Microsoft、Intel、IBM)による技術のオープンソース化と多様な企業がAI技術を安価に提供し始めているということでこれらの技術的なハードルが急速に下がっていることを意味する。AIの発展に向けて進むには、専有データへのアクセスやデータ構築、経験豊富な人材の獲得、そして魅力的なプロダクト開発が必要だ。

AI企業や投資家が懸念する課題は?

AI企業と投資家は、AI分野に足を踏み入れる際に注意を払う業務上、商業上、財務上の課題がある。考慮すべき重要なポイントは以下の通りだ。

業務上の課題

  • 長くかかる研究開発と短期のマネタイズのバランスをどのように取るか?解放されるライブラリやフレームワークの数は増えているが、それでもプロダクトのパフォーマンスを十分なものにするためには最初に多額の開発費用を投じる必要がある。ユーザーは、人が行った場合に得られる結果をAIのパフォーマンスのベンチマークとすることが多いだろう。まずAI開発は人と競うのだ。
  • 人材が足りない。スキルと経験をバランス良く持っている人は少ない。どこで人材を確保し、その人材を離さないようにするにはどうすべきか?
  • 開発、プロダクトリサーチ、デザインのバランスを最初の段階から検討する。プロダクトの美しさとエクスペリエンスを後から考えるということは、豚に口紅を塗るようなものだ。豚であることは変えることはできない。
  • AIシステムを便利に使うには、ほとんどの場合データが必要だ。データが大量にない場合、初期段階のシステムはどのようにブートストラップすべきか?

商業上の課題

  • AIプロダクトはまだ比較的市場にとって新しいものだ。そのため購入者は技術者でない場合が多いだろう。(あるいは、開発者側が制作しているプロダクトの肝を理解するための専門知識が足りないかもしれない。)販売するプロダクトを初めて購入しようと思っている人かもしれない。販売サイクルにおける全てのステップとハードルを細かく検討する必要があるだろう。
  • どのようにプロダクトを提供するか?SaaSなのか、APIなのか、オープンソースなのか?
  • プロダクトには有料のコンサルティングや初期セットアップ、あるいはサポートサービスを付けるべきか?
  • クライアントのデータから深く学習し、他のユーザーのためにそれを活用できるか?

財務上の課題

  • どのような投資家が、そのビジネスを高く評価する立ち位置にあるだろうか?
  • 投資可能と判断される成果の段階はどこだろうか?最小限の機能を備えたプロダクト、出版物、ユーザーのオープンソースコミュニティー、あるいは定期的な収入源の確保だろうか?
  • コアとなるプロダクト開発に注力すべきか、クライアントに寄り添いカスタマイズに応対すべきか?
  • 価値あるマイルストーンに届く前に新たな資金調達をしなくてもすむよう、予め余裕ある資金調達を計画する。

開発ループの中にユーザー入れる

AIがベースのプロダクトにユーザーが参加することで、プロダクトの価値は高まる。それには2つの理由がある。1つは、機械の認知はまだ人間の認知には及ばないからだ。ソフトウェアの弱点を補うには、ユーザーの助けが必要となる。もう1つは、ソフトウェアの購入者やユーザーには限りなく多様な選択肢があることに関連する。そのため乗り換えも頻繁に起きる。(アプリの平均の90日内リテンション率は35%だ。)

プロダクトを使うことをユーザーの習慣にするハイパーパラメーター最適化も役立つ)には、プロダクトが提供すると示した価値をすぐにユーザーが感じられるようにすることが重要だ。以下のプロダクトは、開発ループにユーザーを入れることでパフォーマンスが改善することを証明した。

  • 検索:Googleは予測入力を言葉の意味の違いや検索用語の意図を理解することに役立てている。
  • 画像認識Google TranslateMapillary道路標識検知では、ユーザーが内容を修正することができる。
  • 翻訳Unbabelのコミュニティーの翻訳者は、機械の翻訳結果を修正することができる。
  • EメールのスパムフィルターGoogleはここでも大活躍だ。

機械学習が導き出した結果がどのように得られたかを説明することで、さらにユーザーを巻き込むことができると私は考えている。例えば、IBM Watsonは、患者に腫瘍の診断を示す際、関連する内容も合わせて提示している。そうすることでユーザーの満足度も向上し、システムを長期的に利用することやそれに投資することを促す信頼関係を作る助けとなる。理解できなものを信頼するのは一般的に難しいことなのだ。

近年のAIへの投資環境は?

この話と最近の投資環境と照らし合わせるため、まず世界におけるVC市場がどうなっているかを見てみようと思う。2015年のQ1からQ3では472億ドルの投資が行われ、ここ20年間の内17年間の年間の投資額を上回った(NVCAより)。

来年には550億ドルを超えることが予想される。AI市場にはおよそ900社がビジネス・インテリジェンス、金融やセキュリティーといった分野の問題解決に取り組んでいる。2014年Q4には、功績があって名高い高等教育機関から誕生したAI企業が多くあった。VicariousScaled InferenceMetaMindSentient Technologiesなどだ。

2015年1月1日から2015年12月1日まで、AI企業(ビジネスの説明に人工知能、機械学習、コンピュータービジョン、NLP、データサイエンス、ニューラルネットワーク、ディープラーニングといった単語を含む会社という定義)におよそ300の投資が行われた(CB Insights)。

イギリス企業のRavelin*、SignalGluru* らはシードラウンドを調達した。投資としては20億ドルが行われたが、コンシューマー向けローンとビジネス向けローンを提供する企業に投資が集中した。例えば、Avant(デットファイナンスと融資で3億3900万ドルを調達)、ZestFinance(デットファイナンスで1億5000万ドルを調達)、LiftForward(2億5000万ドルの融資)、Argon Credit(7500万ドルの融資)などで、デットファイナンスと融資が調達の大部分を占めた。重要なことに投資案件の80%は投資額が500万ドル以下であり、投資額のおよそ90%がアメリカ企業に向かった。資金調達ラウンドの75%もアメリカで行われた。

AI企業の資金調達とエグジット規模はまだ小さい。

エグジットに関しては33件のM&Aと1件のIPOがあった。その内6つの案件はヨーロッパの企業であり、1つがアジア、そして他は全てアメリカ企業の案件だった。最も大きな案件は、TellApartをTwitterが買収(買収額5億3200万ドル、調達額1700万ドル)、ElasticaをBlue Coat Systemsが買収(買収額2億8000万ドル、調達額4500万ドル)、SupersonicAdsをIronSourceが買収(買収額1億5000万ドル、調達額2100万ドル)だった。これらは投資額の数倍という固いリターンを産んだ。他の案件の多くは人材採用が目的だったようだ。買収時のチーム人数の中央値は7人だった。

しかし、AI分野への投資は、2015年のVC投資の合計5%を占めた。2013年の2%より高くなったが、他のアドテク、モバイル、BIソフトウェアには遠く及ばない。
AI企業の資金調達とエグジット規模はまだ小さく、ラウンドも取引額も低いということだ。そして、ほとんどの案件がアメリカに集中している。AI企業はアメリカ市場で訴求することが必要だと言える。

AIで取り組むべき課題

ヘルスケア

私はいくつかの夏を大学で過ごし、3年間を大学院で身体の中のがんの広がりに関連する遺伝子要素について研究した。そこで学んだことがある。治療法を確立するのはとても難しく、高額で時間がかかり、規則も厳しい。また多くは病を一時的に抑えるようなソリューションだ。

私は日々の心理状態やライフスタイルの細かな変化を長期的にモニタリングすることで、将来の健康状態を向上することができると考えている。将来的にほぼリアルタイムで健康状態を素早く検知し、健康状態を向上させながら、患者の長期に渡る治療コストを抑えることができるだろう。
現在のデジタルにつながったライフスタイルを考えてみてほしい。私たちが毎日使っているデバイスは、私たちの動き、生体情報、運動、睡眠、さらに生殖における健康をトラックすることができる。私たちがインターネットに接続していない時間はオンラインにいる時間より少なく、クラウドに様々なデータタイプを保管することに抵抗感も少なくなっていると私は考えている。(例えば、サードパーティーからアクセスする方法や、コンセントを得る方法についてだ。)ニュース媒体は同じストーリを別の角度から伝えるだろう。しかし、私たちがウェブを使って、そこから得られる恩恵を受けていることには変わりない。

集団レベルでは、これまで存在しなかったデータセットを活用するチャンスが生まれる。これらのデータにより、どのような個体の特徴や環境で病が発生し、進行するかについての洞察を得ることができるだろう。これは非常に大きなことだ。

AIを軸としたプロダクトはすでに市場に解き放たれている。

現代の治療モデルでは、患者は身体に異変を感じてから病院を訪れる。医者は何種類もの検査を行って初めて診断ができる。これらのテストは一定の段階(通常は末期の状態)を検出することができるが、その時点ではすでに病を治療する術は限られてしまう。(がんの場合は。)

では、将来はどうなるだろうか。身体に負担をかけない方法で継続的に心理状態やライフスタイルのモニタリングが可能となるだろう。そうすれば、初期の病や進行具合、患者に表れる症状、多様な治療法への患者の反応を調べることができる。ここに人工知能を用いる余地が多く残されている。人工知能を駆使したセンサー、信号処理、異常検出、多変量分類、細胞間の影響のディープラーニングなどだ。

いくつかの企業はこれらの問題に取り組んでいる。

  • Sano: センサーとソフトウェアを使って、血中のバイオマーカーを継続的にモニタリングする。
  • Enlitic/MetaMind/Zebra Medical: 医療判断をサポートする画像解析システム。(MRIやCT)
  • Deep Genomics/Atomwise: 遺伝子が健康状態や病にどのような影響があるかを学習、モデリング、予測する。また、新しい病状にどのような医薬品が効果があるかを提案する。
  • Flatiron Health: 患者と病院が、研究から得た腫瘍のデータを処理するための共通テクノロジーインフラ。
  • Google針なしで採血できる発明の特許を申請。これはウェアラブル・サンプリング・デバイス誕生に向け、小さな前進だ。

データのアクセスに関してはイギリスの方がやや有利なようだ。例えば、U.K. Biobank (50万の特許記録)、Genomics England (10万のゲノム解読が進んだ)、HipSci (幹細胞) 、NHS care.dataプログラムが、この分野を牽引し、公衆衛生や治療研究のためにデータを集約したレポジトリを構築している。

法人のオートメーション
今後、ビジネスが自立して運営することが可能になるのか?知識労働をAIで自動化することにより、人件費が2020年までに9兆ドル削減できるという(BAML)。また、ロボットによる作業の効率化で合計1兆9000億ドルが浮くという試算があることを考えると、将来的にいくつかの反復的なビジネスの中核機能を自動化する会社が出てくるのではないかと思う。

CRM、マーケティング、請求や支払い、物流、ウェブ開発、カスタマーインタラクション、金融、採用、BI分野ですぐに利用できるSaaSツールを思い浮かべてほしい。そして、ZapierTray.ioといったアプリケーション同士をつなげたり、ビジネスの工程をプログラムすることができるツールがある。これらは、意思決定のために状況に関するデータを活用することで、さらに応用の幅が広がるだろう。

最終的に、eBayのあり方を変えることができるかもしれない。つまり、商品の仕入れ、価格設定、商品の掲載、翻訳、レコメンド機能、決済処理、カスタマーとのやりとり、梱包、配送準備に出荷まで全て自動化できるかもしれない。実現するのはまだ先の話ではあるが。

人工知能は最も胸の踊る、革新をもたらす技術の1つであると言える。

人工知能が私たちの個人的な人生、そして仕事において多大な価値を生むことになると私は前向きに考えている。価値が生まれるに足る投資が行われていないことをみると、この分野におけるVCのリスク許容度は低いのだろう。大学内でも取り組みが少ないことを考えると、長期に渡るイノベーションを起こすためには、AI企業へのより多くのサポートが必要だ。VCは、ロケットのごとく急成長する企業に投資するために誕生したのだから。

テクノロジーへのアクセスは時間を経るとコモディティ化することを覚えておかなければならない。そのためプロダクトのユースケース、ユーザー、そしてどのような体験をどのように届けるか、そしてそれがどのように評価されるかを理解することが重要となる。提供するプロダクトを他の競合が簡単に真似することがないよう、持続可能な優位性を構築する戦略が必要となる。

この戦略の要素は、もしかしたらAIに関連するものでも、技術的なものでもないかもしれない。(ユーザーエクスペリエンスの部分など)。核となる基本に改めてフォーカスが当てられるだろう。コンシューマーやビジネスにとって意味が大きいが、まだ解決していない、あるいはこれまでの解決法が乏しい課題に注力することだ。

また、アメリカ市場への訴求が必要だ。アメリカはAIの価値に早くに気付き、世界でも多くの開発が行われているからだ。ヨーロッパにもAI分野を急成長させるチャンスがあるが、それでも全世界の業界内で何がうまくいって、何がうまくいっていないかを注視していおくことは必要だろう。

*Playfairの投資企業

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

Alibaba、上海のレストランの宅配スタートアップ、Ele.meに12億5000万ドル出資か

2015-12-27-alibaba

Alibabaグループは上海の料理宅配サービス、Ele.meに12億5000万ドルを出資する方向だと中国のニュースサイト Caixin〔財新〕が報じている〔URLは中国語記事〕。この投資が行われればAlibabaはこのスタートアップの株式の27.7%を握り、最大の株主となる。

われわれの Crunchbaseによると、Ele.meはこれまでに10億9000万ドルのベンチャー資金を調達している。投資家のリストにAlibabaのライバルであるTencentとJD.comが含まれている点が注目だ。Ele.meが実施した最大の資金調達は今年8月に発表された6億3000万ドルに上るシリーズFラウンドだった。

TechCrunchはAlibabaとEle.meにコメントを求めている。

この投資が実施されればAlibabaのO2O戦略は大幅に強化されるはずだ。 O2Oというのはオンラン・トゥー・オフライン、ないしオンラン・トゥー・オンラインの頭文字で、eコマースのプレイヤーはオンラインで金を使う顧客にオフラインでも金を使わせようと努力している。逆に、というか、同時に、普段は実店舗で買い物をしている顧客をオンライン消費に引き込む努力でもある。

Alibabaの他のO2O分野での投資には中国最大のモバイル支払サービス、Alipay、eコマース・チェーン、Suning〔蘇寧電器〕、タクシー配車アプリのDidi Kuaidi〔快的打车〕などがある。

画像: aaron tam/Getty Images

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

クリスマス・ショッピングのテクノロジーと消費者行動の変化を考える

2015-12-26-shopping

長年にわたってアメリカ的生活の不可欠な一部とみなされてきたクリスマス休暇のショッピングも最近大きく変わった。

1947年に公開された映画、『34丁目の奇跡』〔日本語版:メイシーズ・デパートを舞台にしたドラマ。その後何度もリメイクされている〕に代表される巨大デパートでのショッピングは今や少し風変わりで決定的に前世紀の遺物である習慣とみなされるようになった。

ブラック・フライデーにステーションワゴンに家族全員が乗り込んで最寄りのショッピング・モールに向かうというアメリカ的行動も不便であり時代遅れだとして今や風前の灯火だ。

クリスマスを控えた季節には、ますます多くの消費者が夜遅くパジャマ姿で半分寝ぼけたままノートパソコンやスマートフォンに向かい、われわれの時代のサンタクロースであるAmazonプライムの画面に向かって願い事をするようになっている。

消費者行動が時代と共に変わるのは珍しいことではない。しかし盛大なバッカス祭り的なわれわれの年末ショッピングの変化は、多分に消費者側に原因を持つ内発的なものだ。各種の統計もこの見方を支持する。不動産仲介業者は年間売上の5分の1がクリスマス休暇の時期に集中することに気づいている。2015年の年末のショッピングはアメリカで過去最高となる6300億ドルに達するものと推測されている。この額はアメリカの全軍事予算ないしスイスやサウジアラビアのGDPに匹敵する。レゴブロックやデジタルテレビでこれだけの売上があるというのは驚くべきことだ。

しかし、特に注目すべきなのは2015年には年末休暇の売上のほぼ15%、 1050億ドルがオンライン上で生じると推計されたことだろう。これは対前年比でも大幅なアップになものとみられる。 最近得られた実際の統計数値はこの予測さえ控え目に過ぎるのではないかと思わせる。
2015年の感謝祭からブラック・フライデーサイバー・マンデーにかけてのオンライン売上は記録破りの750億ドルを記録した。同期間中に ブリック・アンド・モーターの実店舗での販売額jが5から10%下落したことはトレンドがどちらに向かっているかをはっきり物語る。

単独で見れば、古き良きショッピングの伝統が薄れていくことに反感を覚えるのは簡単だわれわれオンライン消費者は年ごとに新しいアイテムをますます簡単に、かつ無考えに購入するようになっている。

買い物といえば中心街のデパートに出かけるものだった過去を懐かしむのもいいが、ワンクリックでフルフィルメント・センターから欲しいものが届く現在のインフラの効率性を否定するのは困難だ。こうしたオンライン消費はコミュニティー行動の不可欠な一部となって休暇時のショッピングをも律している。

消費者行動は効率性のより高い方向を目指して変化を続ける

ネットワーク・テクノロジーが発達した現代社会では、進歩もトレンドのフラグメンテーションも速度が極めて速い。すべてはめまぐるしく動く。 消費者行動は効率性のより高い方向を目指して変化を続ける。だがテクノロジーは効率性とは別の要素ももたらしてわれわれの生活のバランスを取る。

ネットワークの発達により、クリスマス休暇のような短い期間でまずこのコミュニティー的共同体を形成することが可能となった。感謝祭を機に生まれたチャリティー運動、Giving Tuesday〔感謝の火曜日〕は 最近のすばらしい例だ。アメリカ人の5人に1人(つまり6000万人)がサイバー・マンデーやブラック・フライデーを知っているといわれるが、こうした言葉が生まれたのは非常に新しい。2012年にニューヨーク市の名門チャリティー団体、92nd Street Y.が使い始めたのがきっかけだ。

われわれを勇気付ける別の例として、各種の専門分野において消費者行動の環境に与える悪影響を、季節を問わず、最小限に止めようとする新たなマーケットプレイスの登場がある。

ローカル・コミュニティー同士を結びつけ新たなサービスを産み出すネットワーク・テクノロジーの発達も共同消費経済の優れた例として見逃せない。こうした努力によって売上がコミュニティー内に還流し、地元のアーティストや個人を潤し、オンライン経済をさらに拡大することになる。人々を結びつけるこうしたトレンドはわれわれのポケットに収まっているスマートフォンを主たる推進力とするものだ。スマートフォンは権力者が生活を遠隔操作するための道具となるという一部の人々の予言はだいぶ違った形で実現されている。

ここでて述べてきたようなレンドは私の子供たちがティーンエージャーになり、さらに大人になる頃にはまったく普通のこととして忘れ去られているのかもしれいない。それどころか、子供たちは父親の世代が、深夜パジャマ姿で目を赤くしてノートパソコンを広げ、プレゼントを買おうとしきりにクリックを繰り返していた時代をジョークのタネにするのかもしれない。いずれにせよ、私はこのトレンドがさらに進んでいくことを信じている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

今年インパクトが大きかった女性ファウンダ18名を厳選

先週(12/13-19)、社内の雑談で、2015年のテクノロジ産業に大きな影響を与えた女性ファウンダが話題になった。そしてそれはたちまち、とても長くて込み入った話になってしまった。

この記事では、私の心に浮かんだ女性ファウンダを数名取り上げてみよう。これらは、とうてい、完全なリストとは言えないので、ご意見のある方は、あなたが推薦される方を教えていただきたい。この記事でノミネートされる資格は、どなたにもある。〔この記事(原文)へのコメントが載ってるページは、ここです(大きな写真を見たい人も!)。〕


Alexandra Depledge

7月にAlex Depledgeは、Hassle.comを、同社の直接のコンペティタだったHelplingに3200万ドルで売った(ほとんど株式で)。HelplingにはRocket Internetが投資している。

彼女のそのイギリスの企業は、ホームクリーニングサービスのマーケットプレースで、Depledgeは友だちのJules Colemanと一緒に創業し、Accel PartnersやVentechなどから680万ドルを調達した。

Depledgeにとって、悪くないイグジットだ。彼女はAccentureで6年間経営コンサルタントを務め、それから2012年にHassle.comで起業家の世界に飛び込み、ロンドンでもっとも著名な女性起業家の一人になった。

Minnie Ingersoll

2年前にMinnie Ingersollは、Googleで同僚だったGeorge Arison、Christian Ohler、Morgan Knutson、VC出身のJoel Washingtonらと共にShiftを創業した。

HBSとStanfordを出て、サーフィンが大好きで、Googleに11年もいたIngersollにとって、それは思い切った転身だった。でもVCたちは、彼女らが作ろうとしていた中古車のマーケットプレースに、大きな将来性を見ていた。

サンフランシスコに本社のあるShiftは、これまでに7380万ドルの資金を調達した。それには、9月にGoldman Sachsのリードで行われた5000万ドルのラウンドも含まれる。

Tracy Young

Tracy Youngは建設工事の管理を専攻し、4年あまりをゼネコンで過ごした。彼女はそこで、青写真というものがとても高価な技術であることを知った。しかも、ちょっとした間違いが見つかるたびに作り直すし、そういう手直しの頻度も高かった。

彼女こそ、建設工事用の青写真アプリPlanGridを起業するのに、うってつけの人物だった。今4歳の企業だが、好調なようだ。本社はサンフランシスコだが、これまでに世界中の建設プロジェクト30万件を手がけ、3000万枚の青写真を管理した。

投資家たちはこれまで同社に、6000万ドルをつぎ込んだ。それには、先月完了したシリーズBの4000万ドルが含まれる。

Melody McCloskey

それまでMelody McCloskeyは、短命に終わったTVチャネルCurrentTVで、オンラインコンテンツのマネージャを務めていた。そして2011年に、自分の会社StyleSeatをサンフランシスコに作り、それを、繁栄を続けている美容健康市場の強力なプレーヤーに育て上げた。

同社のサービスは独立の(個人の)美容のプロを助けて、顧客とのスケジュール調整や、彼らの経営管理を代行する。今年の夏現在で、15000都市32万名のプロたちが、同社のユーザだ。

これまでVCたちは同社に、およそ4000万ドルの資金を注ぎ込んでいる。代表格はFosun Kinzon Capital、Lightspeed Venture Partners、Cowboy Ventures、Slow Ventures、それにUberのCEO Travis Kalanickもだ。

Katelyn Gleason

Katelyn GleasonはEligibleの協同ファウンダでCEO、同社は保険会社が、患者に対して行われた診療処置のカバレッジや適格性を知るためのAPIを提供している(一件ごとに課金が発生)。

ブルックリンで生まれY CombinatorとRock Healthで育った同社は、これまでの4年間で多くの投資家たちの注目を集めてきた。昨年秋には、シリコンバレーの最良の投資家たちからシリーズAで巨額の資金を獲得したようだ(詳細は非公開)。

Robin Chase

2000年にRobin Chaseらが創業したカーシェアリングサービスZipcarは、その後上場し、2013年に5億ドルでAvis Budget Groupが買収した

しかしChaseは、満ち足りたリタイヤ生活を送ることもなく、今度はVeniamの協同ファウンダとして同社の常勤会長になった。今年3歳の同社は、都市の路線バスなどさまざまな交通機関をWi-Fiのホットスポットに変身させ、Wi-Fiの供用域を全都市圏に拡大する。

この意欲的な挑戦の将来が楽しみだが、カリフォルニア州マウンテンビューに本社を置く同社は1年前に、シリーズAで490万ドルを、True VenturesやUnion Square Venturesなど、最良のアーリーステージVCたちから調達した。

Angie Nwandu

Angie Nwanduを知らない人も多いと思うが、彼女の、生まれたてながら急成長しているメディア企業The Shade Roomには、今多くの投資家たちが注目している。

2014年の3月に自分の個人的なInstagramアカウントからスタートした25歳のNwanduは、黒人のセレブたちのゴシップサイトとして人気になり、小さなスタッフながら、彼女の自由奔放なアイデアによる展開で、古い体制的なコンペティタたちを打ち負かした。

マスコミが大きく取り上げたことも、役に立った。たとえばNew York Times Magazineは4月に、Shade Roomを “InstagramのTMZ”と呼んだ。そしてBuzzfeedは、ゴシップサイトの中ではNwanduが”どこよりも早い“、と激賞した。上の写真は、BuzzfeedのYsa Perezが撮ったものだ。

Payal Kadakia

Payal Kadakiaは最初、ニューヨークのフィットネスサービスのための、ユーザ登録が簡単にできるアプリで起業した。アイデアは悪くなかったが、でも結果はぱっとしなかった。Kadakiaと協同ファウンダのMary Bigginsはこれに懲りずに、別のアイデアでClassPassというアプリを作った。作ってからすでに2年半になるが、毎月の定額料金でいろんなフィットネススタジオやジムなど、どこへでも行ける、というアイデアは大ヒットした。

今では合衆国の30の都市に展開し、資金はすでに8500万ドルも調達している同社は、次のプランとして海外進出を考えている。

Maran Nelson

ClassPassのKadakiaと同じく、最初のアイデア(製品開発のためのA/Bテスト)がコケたMaran Nelsonは、幼なじみのMichael Akilianと共に、すぐに次のアイデアClara Labsに取り組んだ。そしてそれは、毎日のように過密スケジュールを抱えているビジネスマンたちに歓迎された。

YC出身のClara Labsは、月額49ドルで使える仮想パーソナルアシスタントで、メールの会話を読み取ってアポイントをスケジューリングする。このアプリの背後では、機械学習のアルゴリズムが動いている。メールをコンスタントに読むというアイデアは、シンプルだけどすばらしい。本誌の編集部でも、すべてのアポイントをタイミング良く思い出して遵守することが、誰にとっても頭痛のタネなのだ。

Adi Tatarko

Adi Tatarkoが、夫と共にHouzz –住宅改造のプラットホーム–を作ったのは、自分たちの家をアップデートしようとした6年あまり前だった。

同社は今では各月のユニークビジター数が3500万、そして登録しているプロフェッショナル(建築家、室内装飾家、工務店など)は80万名/社いるという。

これだけの規模だから、Houzzの前回の資金調達ラウンドのときの評価額が23億ドルと噂されたのも不思議ではない。それは昨年、Sequoia Capitalがリードしたラウンドだ。

Christina Lomasney

Christina Lomasneyは、シアトルのModumetalの協同ファウンダでCEOだ。8年前に創業された同社は、ナノ積層合金というものを開発している。それは錆によって腐食しない素材なので、将来は金属に変わって軍用の装甲や、あるいは自動車にすら使われる、と期待されている。

Founders Fundが多大なる関心を示し、8月のシリーズA 3350万ドルのラウンドをリードした。

なお、Lomasneyは、ロシアで核技術の研究を許された最初のアメリカ人物理学者の一人だ。

Danielle WeisbergとCarly Zakin

Danielle WeisbergとCarly Zakinの二人は、若い女性に人気がある日刊のオンラインニューズレターTheSkimmのCEOだ。その日の重要ニュースの分かりやすい説明が載っていることが、特徴だ。

私は個人的に好きだが、Oprahもだ。この大物セレブの推奨が、大きな弾みになっただろう。

二人とも以前はNBC Newsの副プロデューサーで、今では起業家として投資家受けも良い。同社はニューヨークに生まれて3歳になるが、これまでRRE VenturesやHomebrew、Greycroft Partnersなどから780万ドルを調達している。

Piraye Yurttas Beim

Piraye Yurttas BeimはCelmatixのCEOだ。この、創業6年になるニューヨークの企業は、妊娠する確率の高い日と低い日を患者や医師に教える。

Beimと協同ファウンダのLaura Towart Bandakは二人ともPh.Dで、ニューヨーク市トライベカのBandakのリビングルームが最初のオフィスだった、という。データと予測分析を利用して、体外受精の成功率を高めることをねらった。今日では同社は、合衆国全域の大手不妊治療機関と提携し、VCからの投資も受けている。

この低空飛行の企業は、SECへの申告によると、今年少なくとも550万ドルを調達している。また、過去には、プライベート・エクイティ企業Topspin Partnersなどからおよそ800万ドルを調達した。

Valerie Wagoner

Stanfordで二つの学位を取ったValerie Wagonerは、音声によるモバイルソーシャルアプリSayNowやeBayなどシリコンバレーの数社を転々とし、それから彼女がまだ20代半ばだった2008年にベイエリアを去り、以前マイクロファイナンスについて研究したことのあるインドへ移り住んだ。

その後Wagonerはバンガロールでマーケティング企業ZipDialの協同ファウンダになったが、そこはTwitterが今年買収し、Twitterの初めてのインドにおける買収になった。買収価額は、噂では3000万〜4000万ドルと言われている。また同社は、500 StartupsやJungle Ventures、Mumbai Angels、Times Internetなどから資金を調達している(金額は非公表)。

Tan Hooi Ling

Tan Hooi Lingのような秀才エンジニアは、単なる技術職でない道に進むことが多い。たとえば彼女はMcKinsey & Co.ではビジネスアナリスト、Saleforce.comではシニアディレクターだった。しかし2011年にHarvard Business Schoolで勉強していたときは、クラスメイトのAnthony Tanと一緒に同校のスタートアップコンペに出場し、そこから彼らの企業GrabTaxi(地元マレーシアではMyTeksi)が生まれた。

しかし、そこからが激しい。顧客とタクシー運転手をスマホで直接結びつけるGrabTaxiは、マレーシアで2012年にローンチしてから東南アジアの一大勢力にのし上がり、Uberにとって大きな脅威になった。

投資も殺到した。今年の8月にはなんとシリーズEで3億5000万ドルを調達し、これまでの調達総額は少なくとも6億8000万ドルにはなる。

Maria Ressa

Maria RessaはCNNの編集局のチーフで、東南アジアのテロ専門の事件記者でもあった。

4年前に彼女は独立し、Rapplerを創業した。評価の高いソーシャルニュースネットワークで、従来からのジャーナリズムにソーシャルメディアとクラウドソーシングとビッグデータを結びつけた。

今では編集局がフィリピンと、インドネシアのジャカルタ、二箇所にある。

Danielle Morrill

Danielle MorrillはMattermarkの協同ファウンダでCEOだ。サンフランシスコのデータベース企業で、主にスタートアップや非上場企業のデータを集めている。

競争の激しい分野だが、彼女の企業はMorrillの頑張りで、ファウンダや投資家たちからまっさきに利用されるデータソースになっている。Twitterでの発言量やフォロワー数が多いだけでなく、無料の‘日刊メール’を購読すると、ファウンダや投資家にとって意味のある、彼女自身が編集した情報を読むことができる。

VCたちも、今では彼女のことをよく知っている。まだ創業から3年だが、Data Collective やAndreessen Horowitzらからおよそ1000万ドルを調達している。

[原文へ]。
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

準備は大丈夫?ペンギンアップデート3.0の順位回復事例から見るペンギン対策

年内最後のテーマは、年明け以降に更新が延期されたペンギンアップデートについてです。
詳細のタイミングについては語られていませんが、年明け最初の大きなSEOの話題はペンギンアップデートの更新になる可能性も高いと思われます。
今年のうちに心の準備ができるように、振り返りとしてこの話題に触れておきます。

次回ペンギンアップデートの更新が年明け以降に延期

2015年内に更新されると言われていた次回のペンギンアップデートが年明け以降に延期になったと話題になりました。

ペンギンアップデートは、スパム行為や、ウェブマスター向けガイドラインに著しく違反しているWebページに対して検索結果の順位を下げるとされています。過去のペンギンアップデートでは、特にSEOだけを目的とした意味のないリンクを多く集めて順位を向上させているサイトの順位が変動するなど大きな影響がありました。

参考:ペンギンアップデートとは

次回からペンギンアップデートはリアルタイム更新

また、次回の更新からはアルゴリズムに大幅に変更があり、これまでのペンギンアップデートは手動による不定期な更新でしたが、今後リアルタイムの更新になるとされています。リアルタイム更新になることで、ペンギンアップデートの影響を受けたとしても、これまでのように長く間隔を待たずに順位が回復できる可能性があります。

そこで今回はペンギンアップデートの更新を目前に、2014年10月に更新された前回のペンギンアップデート3.0で、事前に対策を打っていて大幅に順位が好転したサイトの事例を紹介します。

特定のキーワードでの順位が伸び悩んでいたり、過去に順位が変動してから長い間キーワードの順位が回復してこないなどの課題をお持ちであれば、リアルタイム更新になる前にペンギンアップデートに備えて今のうちに自社のリンクを見なおした方が良いかもしれません。

ご紹介するクライアント様の背景

今回ご紹介するのは、医療従事者向けの求人ポータルサイトです。2000年代の初頭から求人サービスを運営されており、多数の求人情報をサイト内に掲載しており、医療関係の協業会社も多く信頼も厚いサイトです。

このサイトは、2013年にGoogleから部分一致のペナルティをうけていましたが、過去に委託していたSEO会社が設置していた外部リンクを削除・否認して再審査リクエストを送り、無事ペナルティを解除しました。

しかし、ペナルティ解除以降も なかなかキーワードの順位は戻りませんでした。そのため引き続きGoogleSearchConsole(当時はウェブマスターツール)以外にも ahrefs や majesticSEO といったサードパーティ製のツールを利用して外部リンクを調査し、削除や否認などの対策を行いましたが、キーワードの順位は回復しませんでした。

2014年のペンギンアップデート(ペンギン3.0)を待つ際に行なった施策

引き続き外部リンクの削除・否認は行ってましたが、ペナルティは解除されたもののなかなか順位が戻ってこなかったので、ペンギンアップデートやGoolgeから特定のキーワードにフィルタがかかっているなどの影響が推測されました。

そこで、当時もペンギンアップデートの更新が来るとアナウンスがあったので、それに備えることにしました。それまで使用していたドメインについている外部リンクからの影響を受け継がない形で移管を行い、新サイトでは人工リンクに頼らないサイト運営をご提案しました。ペンギンアップデートまでに行なった施策を紹介します。

ドメインの移管

下記の図のように旧ドメインから新ドメインへのリダイレクトはハブページを経由して301リダイレクトおこないました。

ハブページにrobots.txtを用いてクローラーはブロックし、一方でブックマークなどをしてサイトを既に知っているユーザーには旧サイトのURLでもハブページを通して新サイトにリダイレクトされるようにしました。

こうすることで、過去の被リンクの効果を引き継ぐこと無く、ユーザーを新サイトに転送することが可能になります。

 

20151225_画像1ドメイン移管

関連サイト(協業サイト)からのリンク取得

同じ会社が運営している関連サイトや求人を出している医療機関・協業先などから積極的にリンクをもらえるように働きかけ、関連リンクを集めました。

下記はahrefsを用いた当時のドメイン移管後の外部リンク数の数値です。

20151225_画像2

?”自然リンク” の獲得のための特集コンテンツ作成

ナチュラルリンクを獲得出来るように求人情報だけではなく、定期的に特集コラムなどリンクを集められるような記事コンテンツを増やしました。

上記の施策を行い、ペンギンアップデートに備えていたところ、実際に2014年10月17~18日にペンギンアップデート(3.0)が更新されました。

ペンギンアップデート3.0 (2014年10月17~18日)の影響

ペンギンアップデート3.0が更新されから計測していたキーワードでゆっくりと順位が変化してきました。実際にどのように順位が変化をしたかをご紹介します。

都道府県を掛け合わせたキーワードの順位推移

まず「◯◯求人 × 都道府県名」のような都道府県名をかけわせたキーワードの順位が上昇しました。下の図は2014年の10月から2015年4月までの都道府県掛け合わせのキーワードの順位分布の推移です。

20151225_画像4

それまでグレーで示されている100位圏外であったキーワードが青色の50位以内や緑色の20位以内にランクインしてきたことがわかります。

具体的には、下記のような都道府県の掛け合わせキーワードの順位がじっくりと回復していきました。

20151225_画像4都道府県KW推移

※2014年10月~2015年8月の都道府県掛け合わせキーワードの検索順位

対策キーワードのランキング分布

その他にも”雇用形態”や”求人条件”などを掛け合わせたロングテールでのキーワード群でも徐々に順位が好転し、計測していた約1500のキーワードでの順位全体的に上昇してきました。

下の図は、計測していたキーワードの順位の分布の比較です。

20151225_画像3

※2014年10月時点と2014年7月時点の計測キーワードのランキング分布比較

20151225_画像5

※2014年9月から2015年3月までの計測キーワードのランキング分布

図からもわかるようにペンギンアップデート以後、10位以内のキーワードの割合が増えています。

メインキーワードの順位

ロングテールのキーワード群が除々に回復してくるのに伴い、最終的には「〇〇 求人」のようなメインキーワードでも順位が回復してきました。

20151225_画像7メインキーワード推移

※2014年10月から2015年7月までのメインキーワードのランキング分布

オーガニックの流入

オーガニックの流入も順位の上昇によって旧ドメインとも比較して増加しました。
具体的には、2014年11月から2015年6月までの半年間のセッション数が、前年比で46,470 から 62,680 と約1.2倍増加し、ペンギンアップデート3.0が更新した2014年10月から半年経過した2015年6月のオーガニックからのセション数は昨年比で1.5倍まで増加しました。

20151225_画像8 検索流入推移

※ペンギンアップデート後の自然検索トラフィックのセッション数の推移

人工被リンクの削除とナチュラルリンク獲得によって、ペンギンアップデート更新以降で評価が改善

このような結果から判断できるのは、このクライアント様では、

  • 過去に設置したスパム判定される危険のある外部リンクからの影響を極力排除したこと
  • 関連する企業からのリンクや、特集コンテンツなどを通して”ナチュラル”リンクを集めたこと

が、ペンギンアップデートが更新された際にGoogleからの評価向上につながったのではないかと考えられます。

まとめ

今回は2014年10月のペンギンアップデート3.0の更新の前後で順位が回復した事例を紹介しました。
今回紹介したクライアント様のように特定のキーワードでの順位が伸び悩んでいたり、過去に順位が変動してから長い間回復してこない方などは、もしかしたらサイトに現在ついている外部リンクが影響している可能性も考えられます。

もちろん、ペンギンアップデート以外にもGoogleのアルゴリズムは数多く存在するため、順位が好転しない理由はペンギンアップデートによるものではないかもしれません。

しかし、多くの場合、人工リンクによる施策は功を奏さなくなってきています。順位が低く、人工リンク対策を行っているという方は、このタイミングを期に対策方針を変更するということも検討すべきでしょう。

準備は大丈夫?ペンギンアップデート3.0の順位回復事例から見るペンギン対策ナイル株式会社 - SEO HACKSで公開された投稿です。

準備は大丈夫?ペンギンアップデート3.0の順位回復事例から見るペンギン対策

年内最後のテーマは、年明け以降に更新が延期されたペンギンアップデートについてです。 詳細のタイミングについては語られていませんが、年明け最初の大きなSEOの話題はペンギンアップデートの更新になる可能性も高いと思われます。 […]

Oculusのファウンダー、Palmer Luckey:「市場への一番乗りは難しい」

18535445099_90c720a5d7_k

クリスマスの前日、Oculusのファウンダー、Palmer LuckeyはTwitterで、来年Q1のいつかやってくる消費者版Riftについて話し、みんなの気分を盛り上げた。

この製品については山ほどの疑問があり、Oculusが実際にどうやってRiftを流通させるかというのもその一つだ。同社のファウンダーはチームの当初の使命を支援し続けており、Facebook傘下となってからは特に力が入っている。人々の期待を操作することは困難だが、Luckeyはか「市場一番乗りは難しい」と話し、かなり巧みに操っているようだ。

[以前言ったことの繰り返しになるが、VRは、誰もが買えるようになる前に、誰もが欲しがる物になるだろう。]
[将来の進歩や大量生産によって、いずれVRは全員のものになるだろうが、第一世代は主としてアーリーアダプターのものだ]

[OculusがVR革命をリードしたのと同じように、この現実把握でリードすることは偶然ではない ― 市場への一番乗りは困難なのだ]

Oculus Riftの価格を明かすことなく、LuckeyはFacebookが「パートナー」として助けてくれることによって、1500ドル以上という現在デベロッパーキットを持っていない人々を仰天させるような価格を避け、初期の利益をあまり心配しなくてもよくなったことを明確にほのめかしている。価格は〈かなり〉の金額になるだろうし、もっと重要なのは、一つのチームを〈かなり〉信頼する必要があることだ。果たしてその価値はあるのか?それは、20億ドルの質問だ。

[今すぐハードウェアで利益を上げる必要のある会社ならずっと高い価格になっていただろう ― 1000ドル+と考えてほしい。強欲ではない、現実だ。

最後のツイートは、Riftが1000ドルを切ることをほぼ示唆しており、それは既にVRに入り込んでいる人々や、もっと知識を得てこのメディアのチャンスに賭けようという人々にとっての「スイートスポット」と考えられている価格だ。もちろん、それでも高い。

2016年がバーチャルチアリティーにとって飛躍の年であることを疑う余地はないが、重要なのは、みんなが試す前に葬ってしまわないこと…それは無料以上のどんな価格でも常に難しい。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

あなたのことが大切だから、Uberでもシートベルトを締めよう

seatbelt-rainbow1

フォースフィールドは現実ではない、少なくともまだ。車は危険だ。だから、UberやLyftやタクシーに乗っている時も、自分で運転している時も、シートベルトを締めるべきだ。

最近何人かの友達が、乗っていたUberに他の車が衝突した。幸い、みんなシートベルトをつけていて、大きな怪我はなかった。しかし、もし締めていなければ、もしベルトを締めるほんの数秒をかけていなければ、もっと悪いことが起きていたかもしれない。だから私は、そういう悲劇が誰にも起こって欲しくないのでこの記事を書いている。

UberLove-300x276どういうわけか、プロの運転手に運ばれている時にはシートベルトを締めない人が多い。おそらく、あれだけ長くハンドルを握っている人なら事故を避けられると信じしているのだろう。

しかし、実際そんなことはない。愚か者や酔っぱらいや歩きスマホをしている人間は常にいる。どれほどの運転技術も、赤信号をフルスピードで走ってくる者から、あなたを守ることはできない。

ある意味で、現代のアプリベースの自動車サービスはかなり安全だ。GPSや運転手の正確な身元がわかることで責任が生じ、悪事が抑止される可能性がある。

しかしそれと同時に、オンデマンド運転サービスのドライバーは、不慣れな道路を走ることが頻繁にある。ドライバーアプリが次の乗客についてビープ音を鳴らしたり、カーナビを使おうとして気を散らされることもあるだろう。そして、中には運転そのものに慣れていないドライバーもいるかもしれない。

だから、乗車したらまずベルトを締めよう。カーブで振りまわされなくなってむしろ快適に感じることに気付くだろう。彼女に寄り添いたいって?どちらかがが真ん中の席でベルトを締めればいい。

CDC[疾病対策センター]は、シートベルトは事故による重傷の可能性を半分に減らすと言っている。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook