GoogleマップがApple Watchにやってきた

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今日(米国時間9/29)Googleのプレスイベントで数々の新製品と改訂が発表され、新しいスマートフォンNexus 2機種、Chromecastデバイス2機種、Androidタブレット等が登場したが、直前までベールに隠されていたのが、iOSプラットフォームにやってきた注目のアプリケーション、GoogleマップのApple Watchアプリだ。

iTunes App StoreのGoogleマップiOSアプリのアップデートを通じて、Googleは同社の人気マップアプリ(Appleファンでさえ優先的に使っている)のApple Watch版を静かに公開した。

新しいWatchアプリは、スマートフォン版Googleマップの簡易版であり、はるかに高機能でリッチなスマホ版のコンパニオンアプリとして動作する。

Watchアプリでは、「自宅」や「職場」等の保存済み場所への経路をボタン1つで見ることができる。また、iPhoneで経路を指定するとすぐに同期してApple Watchで使えるようになる。

Screen Shot 2015-09-29 at 5.03.35 PMiPhoneで使える移動手段すべてに対応し、車、徒歩、自転車、および公共交通が利用できる。

また、最近使った経路は「自宅」および「職場」ボタン下のリストに保存されていく(これはiPhoneを取り出すことなく使える機能の一つ)。

しかし、Appleの内蔵マップアプリとは異なり、Googleのアプリは経路を教えてくれるだけで、実際のフルカラー地図が見られないのは残念だ。代わりにブルーの矢印が、進行方向を距離と次の曲がり角と共に英語[日本語]で知らせる。

それでも注目すべきアプリであることに変わりはない。なぜならそれはGoogleの詳細で正確なマップ機能をApple Watchにもたらさすだけでなく、Googleが競合スマートウォッチ向けに作ったわずか2つ目のアプリだからだ。

最初のアプリ、「Googleニュースと天気」は比較的飾り気のないアプリで、どちらかというとGoogleがApple Watchとその関連機能を実験するためであり、Apple Watchオーナーにとって役立つものを作ろうとしたわけではないように思えた。Googleマップは、少々未完成な感は残るものの、明らかにもっと魅力的だ。

Apple Watch版Googleマップの公開は、GoogleがAppleのプラットフォームを真剣に考え始めた兆候だ。それは今後他のGoogleアプリもApple Watchに載る可能性があることを意味している ― (願わくば)GmailやHangout等のトップアプリが。

アップデートされたiOS版GoogleマップはiTunesで公開中

Apple Watchサポートに加えて、アップデート版では移動手段毎の到着予定時刻の比較、企業への電話、場所のリストから道順を見る、通知センター用nearby transitウィジェット等の機能が追加されている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

YouTubeがショッピング広告をスタート

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YouTubeがショッピング向きになる。同社は今日(米国時間9/29)新しい広告ユニット、ショッピング広告を発表した。

Google傘下のビデオサイトはこの数ヵ月間この方向へ動いており、関連コンテンツ(商品を含む)のカードや、広告主が商品データをカードにできるショッピング向けTrueViewを導入した。

「どちらも広告主がショッピング向けビデオを作るための優れた機能だが、ショッピング広告はこの機能をYouTubeの全ビデオで使えるようにするものだ」と同社は言う。

重要なのは、Googleが広告主にはYouTubeで商品を宣伝して消費者がビデオから直接購入できるようにしてほしいと、本気で考えていることだ。

つまり、ユーザーがYouTubeで何かを見ていると、画面の右上隅に情報アイコンが出てくる。アイコンをクリックすると関連カードが表示されその中の商品広告をクリックすると店のウェブサイトに飛ぶ。

これは最近発表されたPurchases On Google[Googleで買う]とは別物で、そちらはモバイル広告主が消費者をGoogleホストの商品ページに転送する。

Googleによると、しくみはGoogle検索のショッピング広告と同様にオークションモデルで、コンテキストと視聴者に応じたターゲティング(広告は自分あるいは今見ているビデオと何らかの関係があるかもしれない)が行われ、広告主はウェブサイトまで到達したクリックにのみ料金を支払う。
YouTubeは、商品ビデオ(レビューやチュートリアル)の視聴はこの一年間で40%成長したと言っている。この種の広告はそれらのビデオを収益化する自然な方法だ。Googleはアドバタイジング週間中にこれを発表したが、テストが始まるのは今秋からだと言っている。

詳細はAdWordsブログで読める

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

新しいNexus 6Pがぐらつかない理由

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Googleは今日(米国時間9/29)Nexus 6Pを正式に発表した。やや低調だったNexus 6の後継機種だ。Huaweiと協同で設計された。今日のイベント後に本誌はNexus 6Pの設計責任者で工業デザインマネージャーのJeff Hoeferに話を聞く機会を得た。Hoeferは2月にGoogleに入社する前、9年近くAppleにいた。

nexus-8「これは進化だ」と彼は言った。「われわれがやったのは、[Nexus 6]で何が起き、その前の年にNexus 5で何が起きたかを調べることだった。5シリーズでしたことは進化的な変化だった。6ではもう少し特徴的な、市場で他と大きく異なることをやりたかった。

Hoeferは新機種のメタルボディーが特に自慢だ。「非常に彫りが深い。こんな削り出しアルミニウムの携帯電話は見たことがない。これを作るのはとても難しい。われわれはメーカーを強く押して良い仕事をしてもらった」

実に無駄のない自然なデザイン。

— Nexus 6Pのデザイナー、Jeff Hoefer

しかしこの端末で最も特徴的なのは、裏面のわずかに飛び出した黒い帯だ。ここにカメラとフラッシュとレーザーセンサーが配置されている。

「私にとってこの黒い帯は、デジタル世界を電話に持ち込む入口。何か神秘的なものが欲しかった」と彼は言う。「ここにはサファイアレンズのような本当のカメラレンズがないことに注目してほしい。これは非常にユニークなガラス工細工だ」。

彼はこの帯のおかげで端末がテーブル上でぐらつかないことも指摘した。「出っぱりは作りたくなかった。これは平らに置ける」。Nexus 6はぐらついて回転した。「アルミボディーは穴が少ない方がいい。実に無駄のない自然なデザインだ」。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

新しいChromecastをちょいと触ってみた

今日の(米国時間9/29)Googleのあわただしい発表の中には、二種類のChromecastのデビューもあった。ひとつは本来のChromecast、もうひとつはスピーカーシステムに接続して音だけを聴くバージョンだ。本誌TechCrunchは、この二つに触る機会があったので、上のビデオをご覧いただこう。

下図のように、従来からあるHDMIバージョンは、短いケーブルが付いたのでテレビに接続しやすい。また、新たに出たオーディオバージョンは、下図の右端だ。

Chromecast Family with Audio

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

あのエドワード・スノーデンが「@Snowden」のTwitterアカウントを開設

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読者の方々には、この2年間ほどエドワード・スノーデン(Edward Snowden)関連のニュースを追いかけてきた人も多いことだろう。これからはスノーデンの追っかけが、多少はらくになるかもしれない。スノーデン自身のTwitterアカウントができたのだ。

フォローしてもフォローバックは期待しない方がいいと思う。現在のところスノーデンは、ただアメリカ国家安全保障局(NSA)のみをフォローしている。

かつて政府職員であったスノーデンは、まず最初に以下のようなツイートを投稿している。

現在ロシアに滞在するスノーデンは、これまで通り監視社会に対する注意喚起を行おうとしているのだろう。スノーデンはアメリカの諜報機関の活動についての政府秘密文書をマスコミにリークして、亡命生活を余儀なくされている。これまでもカンファレンスに参加したりインタビューには応じてきていたが、Twitterにアカウントを設けることで、政府の監視行動についてよりダイレクトで影響力のある発言を行うことができるようになる。

スノーデンのアカウントはTwitterが本人であると確認している。プロフィールには「政府のために働いていたが、今は公衆のために働いている。@FreedomOfThePressのディレクター」と記されている。

The Interceptの記事によれば、スノーデンはこのTwitterアカウントを個人で運営しているのだとのこと。最近行った宇宙物理学者のNeil deGrasse Tysonとのインタビューの中でも、スノーデンはTwitterにアカウントを開設する可能性について語っていた。

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(翻訳:Maeda, H

人気のNexus 5後継機のNexus 5Xが登場。カメラ性能も向上して価格は379ドルより

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噂通り、GoogleはNexus 5の後継となるスマートフォンを発表した。ちなみにNexus 5はNexusシリーズの中でもっとも人気のあるシリーズだ。

新たに発表されたLG製のNexus 5Xは5.2インチディスプレイを搭載し、Qualcomm Snapdragon 808プロセッサーで動作する。RAMは2GBで画面は1080pの解像度となっている。画面サイズは大きくなったが、解像度は変わっていないということになる。バッテリー容量は2700mAhだ。

価格の方は16GBモデルが379ドルで、32GBモデルが429ドルとなっている。本日からPlay Storeでのプレオーダーが開始となる。尚、Play Storeで利用できる50ドル分のクレジットもついているそうだ。

また、Apple Careと似た仕組みも投入されることとなった。59ドルで保証期間を延長して、事故による破損などの保証を1年間延長して受けることができるようになっている。

OSは上にも記したとおりAndroidの最新版(Marshmallow)で、アメリカのキャリアについてはすべて対応するようだ。

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ところで従来のNexus 5については、カメラがその最大の弱点となっていた。新しいNexus 5Xは背面側に12.3メガピクセルのカメラを搭載(旧版は8メガピクセルだった)し、フロント側には5メガピクセルのカメラを搭載している。またカメラアプリケーションの性能も向上しているようだ。これにより良い写真が撮れるようになっていると思いたいところではあるが、これまでNexusのカメラには何度も裏切られてきた。実際に試してみるまでは、カメラについての評価は先送りしておきたい。

なお、新しいカメラではスローモーションビデオも撮影できるようになっているらしい。

さらに、これも噂されていたが、背面には指紋スキャナーも搭載されている。Android Marshmallowは、指紋スキャンをサポートする最初のシステムとなる。それで、これまでと同様に、Nexusシリーズにて最新機能をサポートすることとしたわけだ。

充電にはUSB-Cのコネクターを用いる。USB-Cはデータの通信速度がはやいのが特徴だが、より大きな電力を供給することもできるようになっている。すなわち充電にかかる時間を短縮することができるわけだ。

USB-Cの企画策定にはGoogleも参加しており、Chromebook Pixelでも採用している。AppleもUSB-Cを採用している。但し今のところAppleは、スマートフォンではなく小型のMacbookでのみUSB-Cを採用している。

Neuxs 5Xにはまだいろいろな新機能が搭載されていると思われる。また新たな情報が入れば改めてお伝えしたい。

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(翻訳:Maeda, H

Google、Nexus 6Pを発表。高性能カメラを搭載して価格は499ドルから

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昨年11月、TechCrunchでもNexus 6の記事を掲載した。その際にGreg Kumparakは「美しいのかもしれないが、でかくて扱いにくいシロモノ」(A Big, Beautiful, Cubersome Beast)と評していた。このNexus 6から、Androidファン以外からも「二度見」されるデバイスとなった。

そしてこのたび、Nexus 6の後継機となるNexus 6Pが登場してきた。プレオーダーの受付も開始されている(訳注:日本ではまだのようです)。まずはスペックのみお伝えしておこう。

  • Android Marshmallow搭載
  • Snapdragon 810 v2.1プロセッサー
  • 6.27インチWQHDディスプレイ
  • 12.3メガピクセル背面カメラ
  • 8メガピクセル前面カメラ
  • 3450mAhバッテリー
  • 前面デュアルスピーカー搭載

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メモリーは32GB、63GB、および128GBのものが用意されている。カラーもAluminum、Frost、Graphiteが用意されている。

新しい情報が入り次第、また詳細をお伝えしたい。

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(翻訳:Maeda, H

Skype、Android Wearスマートウォッチ(およびSkype Moji)対応版をリリース

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Microsoftは自社プロダクトのクロスプラットフォーム化に次々と取り組んでいる。そしてこの度、Skype for Android Wearスマートウォッチリリースした。アプリケーションはSkype 6.4 for Androidで、これがAndroid Wearにも対応しているのだ。インストールすることで、Moto 360、Huawei Watch、LG Watch Urbane、あるいはASUS ZenWatchなどのAndroid WearデバイスにてSkypeの通知を受け取ったり、あるいはメッセージを読むことができるようになるとのことだ。

Apple Watch版と同様に、デバイスに話しかけて、その音声をテキスト化して返信したり、あるいは事前に用意した返答メッセージを選択することで返信することもできる。
また画面上を指でなぞることで、絵文字を使った返信を行うこともできる。もちろんかかってきた通話を受け付けるかどうかを画面上で指示することもできる。

ただし、通話を受け取る操作を行った場合は、通話自体はスマートフォン側のSkype、マイク、ヘッドフォンないしはBluetoothスピーカーなどを用いて行うことになる。通話中にミュートしたり、通話を切ったり中断したり、あるいは他の通話に切り替えたりする操作はスマートウォッチ側からも行えるようになっている。

Skypeの今回のアップデートは、Android Wearに対応することが主目的だ。ただ、スマートウォッチ関連以外にも、最近アナウンスされたSkype Mojiにも対応するようになった。これはSkypeのオリジナル絵文字で、映画やテレビドラマのクリップなどを送ることができる。

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(翻訳:Maeda, H

【詳報】ソラコムがベールを脱いだ、月額300円からのIoT向けMVNOサービスの狙いとは?

ソラコムがステルスで取り組んでいた新規プラットフォーム事業の詳細を明らかにした。ソラコムは、元AWSのエバンジェリスト玉川憲氏が2015年3月にAWSを退職して設立したスタートアップ企業で、創業直後に7億円というシードラウンドとしては大型の資金調達が注目を集めた。TechCrunch Japanは発表直前にソラコムに話を聞いてきたので詳しくお伝えしたい。

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提供を開始したSIMカードを手にするソラコム創業者で代表の玉川憲氏

ソラコムが取り組むのは、IoT向けの格安MVNOサービス「SORACOM Air」だ。これだけ書くと、何だまたもう1つ別のSIMカード提供会社か登場したのかと思うかもしれないが、2つの点で注目だ。

1つは、利用用途によっては月額利用料が300円で済むという衝撃的な安さ。これだけでもIoTや業務用スマホ・タブレットの全く新しい市場を切り開く可能性がある。

さらにもう1点、ソラコムの新プラットフォームが注目すべき理由は、基地局だけ既存キャリアのシステムを流用していて、残りをソフトウェアで実装している点だ。通信キャリアはもちろん、従来のMVNO事業者は、パケット交換、帯域制御、顧客管理、課金など、キャリア向けの専用機器を利用していた。ソラコムでは、この部分をAWSのクラウド上に展開したソフトウェアで置き換えてしまった。

これは単に運用コストの削減に繋がるだけでなく、高い柔軟性とスケーラビリティーを確保できるということだ。例えば、SIMカードを搭載したデバイス、もしくはそのデバイスを管理するサービス側からソラコムのAPIを叩いて通信速度をダイナミックに変更できたりする。これは、ちょうどAmazon EC2でインスタンスをソフトウェア的に切り替えるような話だ。暗号化通信もクラウドの豊富なコンピューティングリソースを使うことでソフトウェア的に簡単に実現できてしまう。AWSでサーバーがプログラマブルになったように、ソラコムは通信サービスをプログラマブルにしてしまうということだ。

IoTで未解決だった「通信とセキュリティー」問題を解決する

ソラコムの狙いと、今後のビジネスモデルの話は、創業者である玉川憲氏の経歴に重ねて説明すると分かりやすいかもしれない。

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WatchPad

玉川氏は東京大学大学院機械情報工学科修士卒で、日本IBMの基礎研究所でキャリアをスタートしている。2000年ごろ、IBMで「WatchPad」と名付けられた今で言うスマートウォッチを作っていたそうだ。製品化には至らなかったものの、Linux搭載で腕に巻きつけられる超小型コンピューターとして当事非常に大きな注目を集めた。

「2000年にIBMの基礎研でWatchPadを作っていたのですが、その頃からIoTの課題って変わってないなと思っています。1つはバッテリーが持たないこと。10年かかって2倍にもなっていませんよね。10年で100倍速くなっているコンピューターとは違います。もう1つはネット接続。近距離無線は進化しているものの、まだまだネット接続が難しいのが現状です」

「もう1つ未解決なのはセキュリティーです。デバイスで暗号化をすると小型化や低コスト化ができません」

ソラコムでは、通信とセキュリティーについての回答を用意したという。

近距離通信としてはBluetoothが普及しているし、家庭内のWPANとしてZ-WaveやThread、Weave、ZigBeeなどの規格もある。しかし、これらはスマホやハブといったアップストリームにぶら下がった端末までの接続のためのもので、ネット接続ではない。一方、Wi-Fiは小型デバイスにとっては難しい。玉川氏によれば、これまでモバイル通信は、おもにヒト向け。「IoT向けのモバイル通信を作りたい」と考えて立ち上げたのがソラコムだという。

従来のMVNOと違って専用機材ではなく、クラウド上に各機能を実装

モバイル向け通信に参入するといっても、「全国に設置した基地局だけで1兆円ぐらいのアセット。パケット交換や帯域制御、顧客管理、課金といった部分で数千億円規模の投資。さらにISPも入れて、この3つをやって初めて通信キャリアなわけですが、われわれは、そうはなれません」という。

「一方、MVNOといえば、楽天やイオン、DMMが参入しています。これは(1契約あたり)2000円で仕入れて2500円で売るというビジネスで、ブランドや販売網があればできますが、これもわれわれにはできないし、テクノロジーのビジネスでもありません。われわれがやるのは基地局だけをレイヤー2接続の契約で利用して、残りはクラウドネイティブで提供するというモデルです」

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従来のMVNOの接続では、キャリアが持つ基地局からパケットが飛んでくるゲートウェイに続けて、MVNO事業者が利用者認証や課金管理、利用者ごとのポリシー適用のための機材などをそれぞれ用意する必要があった。ここはエリクソンなど専用ベンダーが提供するハードウェアの世界。ここの機能群をAWSのクラウド上にソフトウェアで実装したのがSORACOM Airで、クラウドの特徴であるスケーラビリティーの高さがメリットだ。玉川氏は「人口の10倍とか100倍のデバイスが繋がってきても対応できるような、IoTに特化したバーチャルキャリア」と、そのポテンシャルを説明する。

スケーラビリティーは上限のほうだけなく、小さい単位から即利用できるという点にも当てはまる。例えばデバイスとサービスを統合したソリューションを展開する企業が通信部分が足りていないようなケース。

「従来のMVNOだとSIMカード2000枚以上、500万円以上からと言われたような話が、SORACOM Airなら1枚から利用できる。誰でも通信キャリアになれるというモデルで、自在に値付けしてビジネスができます」

クラウド上に実装された通信管理機能には、AWSクラウドと同様にWebコンソールからでも、APIからでも操作可能で、複数SIMを一括操作するようなことができる。各端末からでもサービス側からでもAPIを通して、各SIMの通信状態の監視や休止・再開、速度変更といったことができる。

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SORACOM AirのSIMカードは20枚で1万1600円(1枚580円)など。月額基本料金は300円で、32kpbsだと1MBあたり上り0.2円、512kbpsで1MBが0.24円。上り・下りで料金が違ったり、夜間割引も適用されるなど明朗会計だ。料金設定はAmazon EC2のインスタンスサイズを選ぶようなイメージだ。将来的にはニーズに応じて料金を変動させる「スポットインスタンス」のようなことも、アイデアとしては検討しているそうだ。以下がSORACOM Airの価格表。s1.minimumとかs1.fastとか、何だか見慣れた命名規則だ。

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SORACOM Beamで暗号化やルーティングなど高度な処理をクラウドにオフロード

IoTで未解決だった問題として、玉川氏はセキュリティーを挙げていた。これについてはクラウドで潤沢なリソースを使った「SORACOM Beam」というサービスで解決可能だという。SORACOM Beamはデバイスとサービスを繋ぐ通信経路を暗号化したり、ルーティングするサービスだ。

セキュアな通信を行うには暗号化が必要だが、小型デバイスに暗号化処理をやらせるのは重たい。ただ、もともとキャリアのパケット網はゲートウェイ部分まではセキュアなので、ソラコムにパケットが入ってきてインターネット側のシステム(サーバー)へと繋ぐ部分を暗号化すれば良いだけだ。そこで、

・HTTP→HTTPS
・MQTT→MQTTS
・TCP→SSL

という変換をソラコムのクラウド上で行うことで、重たく面倒な処理はデバイスではなくクラウドで済ませることができる。実際、車いす開発のWHILLは、バッテリーをできるだけ使わずにセキュアに見守りシステムを作ることを検討していて、こういうケースだと「TCP→SORACOM Beam→HTTP」とすることで、デバイス側の負荷をオフロードできるのだという。タイムスタンプやSIMのIDもソラコム側で分かるし、カスタムヘッダを付けてHTTPSで送ることもできる。そして、これがまた重要だと思うのだけど、こうした設定はすべて、デバイスの設定に触れることなくAPIで変更ができる。出荷したIoTデバイスに触れることなく、サービス改善や新規サービス開発が可能ということだ。

ソラコムでは今回、デバイスやソリューション、インテグレーションのサービスを提供するパートナープログラム(Soracom Partner Space)を発表している。現時点では、以下のような企業がテストしているそうだ。

・内田洋行:IoT百葉箱
・リクルートライフスタイル:無料POSレジアプリ「Airレジ」にSORACOM Air搭載、イベント会場で1カ月だけ臨時店舗運営
・フォトシンス:スマートロックのAkerunで応用、カギを開けるときには低速、ファームウェアのアップロード時には転送速度をアップ
・フレームワークス:物流システムにおける動態管理システム。トラックにスマホを搭載してGPSデータだけを利用。業務時間のみの小容量の通信
・キヤノン:事務機器でSORACOM Airの実証実験
・東急ハンズ:業務システムのバックアップ回線として利用
・Global Mobility Service:フィリピンでクルマにSORACOM Airを搭載。割賦未払いの利用者のクルマを遠隔地から停止

いろいろな実験的取り組みがベータ期間中にも出てきているが、ソラコムの新サービスは、Amazon S3が出てきたときと似ているかもしれない。S3のリリース初期には開発者だけではなく、個人利用で使ってしまうパワーユーザー層にもアピールしたものだ。SORACOM Airも1枚880円からAmazonで購入できるので、何かのアプリが出てきて個人ユーザーが使うような事例も出てきそうだ。

Amazon同様に継続的な値下げ努力とイノベーションで競合に勝つ

ステルス期間は別として、ローンチしてしまえばアイデアは自明だし、ソフトウェアの話なので誰でも実装できるのではないだろうか。競合が出てきたときに、ソラコムではどうやって戦っていくのだろうか。

「ソラコムは、モバイルとクラウドが融合した初めての形と思っています。単純な通信ではなく、暗号化したり、認証したりという付加価値があます。新機能や新サービスも開発していきます。まだ2つ3つは温めているアイデアがありますし、実際にお客さんと話している中でニーズが見えてくる面もあります」

「これはAWSが出てきたときと似てるなと思っています。AWSはクラウドです。当事は、うちもクラウドですといってプライベートクラウドみたいなのが、たくさん出てきましたよね。でも、その多くはあくまでもサーバー仮想化の話であって、AWSがやっているようなクラウドネイティブではありませんでした。ハードウェアを仮想化して、物理サーバー上に仮想マシンを複数設置しましたという程度にすぎなくて。もちろん仮想化は仮想化で価値はあるんですけど、瞬時に使えて、いつでもやめられて、いくらでもスケールできるというクラウドとは違いますよね」

「もしソラコムが取り組む市場が良い市場だとしたら、今後は競合がたくさん入ってくるはずです。でも正しいアプローチでやれる企業は少ないと思うんです。いつでも始められて、いつでも利用をやめられて、APIが備わっていて、自動化ができてという。そういうことを質実剛健にやっていけるような企業は少ない」

「われわれも運用コストに少しだけ利益をのせて回していくのですが、Amazonみたいな薄利多売モデルで、どんどん価格を下げていきます。Amazonにいた私からすると当たり前のことですけど、ふつうはそうじゃありません。多くの企業は大きな利益を取っていくので、同じアプローチを取る会社が多いとは思っていません」

「かつてAWSがでてきて、その結果、InstagramやDropbox、Pinterest、Airbnb、Uberといったサービスが出てきたみたいに、ソラコムのようなプラットフォームによって、きっと面白いIoTが出てくるんじゃないかなと思います」

Appleが古色蒼然たるプライバシーポリシーを撃破、プライバシーサイトを拡張して新装

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ハードウェア製品やネット上のサービスのプライバシーポリシーに関心を持つ人は、3年前なら少数派だった。しかし政府による、通信や私信の大量盗聴盗視行為がばれてからは、各製品やサービスのプライバシーポリシー注記が、ときにはそれを載せた企業の足かせともなった。

それ以後は、プライバシーがテク企業のメインのスローガンの一つとなり、中でもAppleはとくに声高だった。同社は、ユーザのデータはユーザがオーナーであるという律儀な姿勢を全地球サイズで誇示した。それは往々にして、私企業的というよりも公共的な姿勢だった。それが、今日も続いている。

しかし、今日のニュースはこれだ: Appleはプライバシーサイトをアップデートし、iOS 9と、OS Xの最新バージョンに関する新しい情報を載せた。サイトには新しい部分が加わり、そこにはAppleがユーザに提供している多様なサービスと機能に関する情報が載っている。

そのページではプロダクトや機能におけるプライバシーを取り上げ、それらはたとえばiOS 9のNewsアプリや、iOSとデベロッパがユーザをアプリ内の特定の情報や機能に連れて行くためのネイティブのディープリンクユーティリティ、新機能であるSpotlightの検索候補などだ。たとえばNewsアプリは、そのほかの個人識別情報と同じく匿名化される。また、Proactive Assistantはデータをクラウドでなくデバイス上で処理する。それは本誌の記事で前に述べたように、難しい設計課題だ。

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健康とフィットネスのデータはデバイス上に隔離され、暗号鍵はユーザのパスワード(パスコード)から生成される。こうやって暗号を個人化すると、ほかの人、たとえばAppleでさえ、データを読むことが困難になる。この、ユーザのパスコードをベースとする暗号鍵方式は今ではAppleの全製品で使われている。今の業界のお気に入りの話題である、閲覧履歴が広告に利用されることを防ぐコンテンツブロッカーも、ここで言及されている。

またApple Mapsの場合は、ユーザが旅行に関してMapsにクェリすると、ジェネリックなデバイスIDが生成され、それを使って情報が取り出される。ユーザのApple IDは使われない。旅行の半ばには別のランダムなIDが作られ、後半はそれが使われる。また旅行データを切り詰めるから、旅の出発点や目的地に関する情報は保存されない。そのデータは2年保存されてMapsの改良に利用され、その後削除される。

またiOS 9.0の60ページあまりのセキュリティ白書は、そのモバイルOSをセキュアにするためにAppleが使っているさまざまなテクニックを、詳細に説明している。前からある白書(ホワイトペーパー)のアップデート版だが、iOSの新しい機能についても述べている。Appleの暗号化の方式も詳細に説明され、無資格者のキーチェーンアクセスを防ぐ方法や、アプリのセキュリティ確保の方法を述べている。同社の開発ツールXcodeの不良な無許可複製品でコンパイルされたアプリケーションの最近の大失態が、まだ記憶に新しいから、これらのセキュリティ関連情報を読むと思わず胸が痛くなる。

しかしセキュリティの専門家のためには良いドキュメントだが、ふつうの人にはどうか?

セキュリティポリシーの打破

プライバシーは誰もが気にすべきだが、いろんな調査が示すところによると、まったく何も知らない人や、知ろうとしても難しくてよく分からない、という人がほとんどだ。

Appleも含め、企業のプライバシーポリシーは弁護士が書くことが多く、ふつうの人が読んで分かる文を書ける人…ブログライターなど…はそれを担当しない。それはプライバシー問題が裁判沙汰になったときに、法律文書の方が役に立つからであり、また、プライバシーポリシーを平文で書いたらたぶんひどい文章になるからだ。

Appleは今日の、プライバシーページの拡張で、わかりやすい言葉を使い、多くのデータを援用している。そういう意味ではAppleは、プライバシーポリシーに関する上記の古めかしい伝統を打破している。政府の情報リクエストに関する説明(94%が盗難iPhoneに関するもの、警察による個人情報リクエストはわずか6%)も、またiMessage、Apple Pay、Health、HomeKitなどの消費者アプリにおけるユーザ情報保護の説明も、どちらも確信に満ちた説明態度だ。

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もちろん、これだけ親切なドキュメントがあればAppleはユーザのプライバシーに関する質問に答えなくてもよい、という意味ではない。テク企業の多くが営利企業だから、われわれ消費者やジャーナリストは、Appleと言えども健全な疑いの目は持つべきだ。でもこのプライバシーサイトが昨年ローンチしたときの書簡でCEOのTim Cookは、サイトのアップデートや拡張は定常的に行う、と言っている。そして、言ったとおりになった。

それらのページは、iPhoneを売り込もうとするページとルックスが似ている。Appleの哲学を説明している箇所があり、またAppleのプライバシーやセキュリティ関連機能のアドバンテージをユーザに売り込もうとする部分もある。政府の情報リクエストに関する説明と、プライバシーポリシー本体は、それぞれ独立の区画になっている。

‘manage your privacy’(プライバシーを管理する)の部分は、セキュリティを向上するために何をすべきか、何のためにそれをするのかを、明快に説明している。

企業がユーザにプライバシーに関する情報を提供しようとするとき、これからは木で鼻をくくったようなプライバシーポリシー本文を提示してこと足れりとするのではなく、Appleのこのプライバシーサイト/プライバシーページを参考にすべきだ。法律や技術の専門語だらけのページはまったくない。逆に、小ぎれいに単純化しすぎた、誠実にものごとを伝えようとしない、気取ったページもない。ユーザに情報を提供し、ユーザを教育するための、誠実なサイトだ。Appleは、どのプロダクトもそうだ、と言っている。

Appleはこれまでずっと、プライバシーをセールスツールとして利用する陣営の最前線にいた。最後尾には、いたくないのだ。フルに暗号化を採用したスマートフォン、セキュアな会話と会話の削除が可能なメッセージングアプリ、自分の情報やコンテンツが勝手に、うかつに、他人に知られないため万全を尽くす、各種サービスの設計と実装、…。こう見てくると、今や死人同然となっているプライバシーポリシーの、今回のラジカルな模様替えも、いかにもAppleらしく理にかなっている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

セキュリティやプライバシーはプログラマの仕事(責任)ではなく開発系のデフォルト機能になるべき

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【抄訳】
ビッグデータやクラウド、それにますます増えつつある複数のサービス間の相互接続の時代に、セキュリティを確立しプライバシーを保護するためには、ソフトウェアの開発のされ方に構造的な変化が導入されることが必要だ。

MITで博士号を取った研究者(MIT研究助手)Jean YangLinkedIn)は、そう考えている。彼女が自作したプログラミング言語Jeevesは、その主張を実現するために、正しいプライバシーポリシーを正しく強制するという開発負荷を言語自身が担い、プログラマの肩の荷を軽くしている。

“言語など開発基盤の構造がプライバシー/セキュリティの強制機能を持っていれば、プログラマがいちいちチェックやフィルタを書いたり、書き忘れたり、書き方が正しくなかった、などなどの負担と責任がなくなる。プログラマがやることは、最初の、正しいポリシー設定だけになる。これにより、プログラマがミスを犯したり犯さなかったりといった、表層的な問題が解消する”、と彼女は語る。

今月末にラスベガスで行われるカンファレンスPrivacy.Security.Risk.で講演をするYangはこう語る: “学部のころは毎年、こればかり考えていた。人びとはプログラムが正しくないことを気にするけど、プログラマは別に、正しくないプログラムを書こうと思って書いてはいない。だから問題をプログラマに転嫁するのは、正しい方向性ではない”。

Yangも認めるように、最近ではプログラマの瑕疵というより、レガシーコードが抱えるソフトウェアの古い設計に、プライバシーやセキュリティの問題の根因がある、という見方に変わりつつある。

2013年にはNSAの内部通告者Edward Snowdenが政府の諜報機関による監視行為を暴露し、ネット上のプライバシーに関する関心が一気に盛り上がった。Snowdenの暴露により、多くの消費者向けサービスがエンドツーエンドの暗号化を採用するのようになった。そういう消費者サービスも監視の対象になっていた、と分かってからは、そういう商用サービスにおけるユーザ保護が政治の課題にもなってきた。

しかしそれでも今だに、データの盗難は毎週のようにニュースになる。人も企業もアプリケーションも、ネットの上ではますます相互接続性を増してくるが、今のソフトウェアとシステムはそんな時代に合っていないのではないか、という印象がいよいよ鮮明になる。あらゆる面でもっと良い方法を考えなければならないが、Yangの主張では、それには、プログラムの作り方をその構造のレベルで再考する、ということが含まれる。

“今のプログラミングのやり方は、1970年代のやり方から変わっていない。そのころも今も、ソフトウェアは小さなレシピの集合、小さな手続き/ 手順の集合と見なされる。その一つ一つは10〜20行ぐらいだろう。そんなものを大量に使って、弾道の計算など重要なコンピューティングをやっていた。当時はまだ、機密データの保護、という問題はなかった。個々のプログラムはとても小さく、また機密データを扱わなかった。それが1970年代だ”、と彼女は語る。

…お互いについて知る機会のない複数のプログラムが、同じ物理マシンを共有している。そこにはきわめて興味深い、…おそらく恐ろしい…、プライバシーとセキュリティの問題が暗黙裡にある。

“今では、プログラムは巨大だ。ソフトウェアの大きなエコシステムが、いくつもある。プログラムは簡単に、数百万行に肥大する。そのコードのサイズは、70年代にはコンピュータのメモリに収まらなかったほどのサイズだ。つまり書いたプログラムが大きいだけでなく、実動コードも大きい。今や、大量の人間がプログラミングに携わっている。それまでは、一つのプロジェクトを担当するのはひとにぎりのプログラマで、プロジェクトの全貌が彼らの頭の中に十分収まる。そのプロジェクトをめぐるお互いの会話も容易だ。しかし今では、クラウドや仮想マシンを使って、それらの上にコードを置く。お互いについて知る機会のない複数のプログラムが、同じ物理マシンを共有している。そこにはきわめて興味深い、…おそらく恐ろしい…、プライバシーとセキュリティの問題が暗黙裡にある”。

Yangの主張では、さまざまな特色の豊富なデータを大量に集めているFacebookのようなデータリポジトリは、プライバシーにとって、まるで火薬庫のように危険で恐ろしい。Facebookやそのユーザが、ユーザの情報を今後どのように切り刻むのか、それがまったく不明だから。

たとえば、と彼女は言う、ユーザの情報はFacebookのプロフィールの上に時系列で表示されるだけでなく、いわゆるグラフ検索機能(Graph Search feature)によっていろんな方法で検索される。ユーザは、自分のデータが将来どのように見られ共有されることになるのか、知ることもコントロールすることもできない。

“彼らはあらゆるものを持っている。数百万行のコード、プログラマの大群、そしてコードのさまざまな箇所で、機密データが利用される。しかしプログラマは、あらゆる箇所で、“ここでは一体どんなポリシーを強制されるのか”と、問うことしかできない。答はない。

“Facebookに関して人びとは、‘プライバシーのポリシーに一貫性がない。しかも頻繁に変わる’と不平を言うが、自分の情報をプロフィールの上では保護できても、グラフ検索など、そのほかの間接的な方法で情報が見られることに関しては、打つ手がない”。

Yangによると、今でもプライバシーのポリシーを正しく強制し、問題を緩衝する手段はある。たとえばそれは、ライブラリ関数の呼び出しにポリシーを埋め込むのだ。でもそうなるとプログラマは、どういう場合にはどの関数を呼び出す、ということをおぼえて正しく実行しなければならない。プライバシー保護がプログラマの負担・責任になる、という問題は変わらない。

クラウドの時代に機密データを正しく保護するためには、大きな構造的ソリューションが絶対的に必要、とYangは信じているが、ただし、そういうソリューションの採用やそれらへの移行が、プログラマにとって大きな負担になるようでは、どんなに良いソリューションでも正しく普及しない、と彼女は言う。

もっと、‘それとなく’的なソリューションが必要、と彼女は言う。つまりプログラマは従来どおりにコードを書いているが、そのコードの“ボンネットの下”では、ちゃあんとプライバシーとセキュリティの強制が行われている、そんなソリューションだ。例えば暗号化が必要な場面では、プログラマが暗号化をとくに気にしなくても(暗号化のためのコードを書かなくても)データの暗号化が行われる。また、ある箇所ではシステムを保護的な手続きで保護して“まずいことの発生を防ぐ”。最初から、データの健康と安全のための措置が、言語やライブラリに焼きこまれている。…。

“こういう、一見何も変わっていないけどシステム全体に浸透しているソリューション、それで行くべきだ”、と彼女は付言する。

この夏、YangとPhDの同級生Frank WangはMITで、Cybersecurity Factoryと名づけたアクセラレータのパイロット事業を開始した。目的は、Yangらのような学生起業家がセキュリティに関する深い技術的ソリューションを身につけて、上述の構造的問題に取り組んでいくことだ。このパイロット事業はHighland Capital Partnersが出資し、最初の二つのチーム、AikicryptとOblivilockには、どちらも複数のPhDが参加している。来年はこの事業を拡大して、もっと広い範囲から、計五つぐらいのチームを育てたい、という。

またこのアクセラレータでは、アイデアの技術的実装以外に、セキュリティ事前埋め込みタイプの開発系の、普及活動(対投資家、対デベロッパ、対企業、など)も起業家の事業領域とされる。

【中略】

Yangによると、Y CombinatorのSam Altmanも最近は、セキュリティの分野に注目している。たとえばこの夏のツイートで彼は、次の二年間でセキュリティ関連のスタートアップを“数ダース”育てたい、と言っている。システムやデータの保護とプライバシー保護は、Yangたち学究ばかりでなく、投資家の投資ターゲットとしても着目され始めているのだ。

【後略】

 

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

NASAが火星の地表に液状の水を発見

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NASAが開いた火星に関するプレスカンファレンスで、「特定の状況下において」火星に液体の水を発見したと発表した。

「火星はこれまで私たちが考えていたような乾いた不毛の惑星ではありませんでした」とオンラインでストリーム配信した今日のプレスカンファレンスで伝えた。

これまで火星にH2Oは氷の状態で存在していることは知られていたが、火星の大気層が薄いため、液体の水は存在しないだろうと研究者は考えていた。今回の研究では、分光器の技術を使用し、火星の地表から発見した暗い色の水脈(NASAがRecurring Slope Lineae、あるいはRSLと呼ぶ)の化学成分を分析した。この物質は、地表温度の変動により変化することが知られていて、この物質が水ではないかという仮説へとつながった。

先週後半、NASAはこれまでの赤い惑星の探索から得られた「重大な科学的な発見」と銘打ち発表の予定を出した。NASAは、宇宙探索に対する民衆の関心を維持するというソーシャルメディア上のミッションも継続して続けているようだ。

NASAは2012年8月、火星にCuriosity探査車を着陸させた。この探査車は今でも探索を続けている。NASAは2012年の終盤にミッション期間を2年としたが、その期間を延長している。2004年に火星の地表に着陸したOpportunityも探索を続けている。現在、マラソンバレーと呼ばれる地域の地表を調査している。

Curiosityのミッションでは、火星の土壌から過塩素酸カルシウムを検出し、メタンガスの噴出も発見した。またCuriosityは、液体が流れていたと思われる河川の跡を走行し、火星の岩を砕いたところ粘土を掘り起こした。これも、かつてこの惑星に水のある環境が存在したことを示唆するものだ。

探査車はその他にも放射線レベルを測定し、人間がこの惑星で過ごすことができる時間を算出するのに用いられている。

今日NASAの科学者は、火星の土に過塩素酸塩があることで、火星の地表にある液体の水の安定性が高まると伝えた。つまり過塩素酸塩があることで、水が惑星の温度が下がって凍ったり、薄い大気層により蒸発したりせずに液体の状態をより長く留めることができるという。これはさらに火星の水は純水ではなく、ブライン水(塩を含む)ということを示している。

この水で生命が発達できるかについて、まだこの段階では「明確ではない」とNASAは付け加えた。しかし液状の水があることは、生命の探索にとって強力な材料になる。

「地球を見ると、水は生命にとって必要不可欠なものだという印象を私は受けます。この発見はとてもエキサイティングです。地球以外に生命は存在するのかという質問に私たちはまだ答えられていません。水を発見することは重要な要素です。それが見つかったことで、火星の徹底的に調査するのに適した場所を見つけた可能性が高まったと言えるでしょう」とNASAの惑星科学のディレクターを務めるJim Greenは言う。

RSLの場所を調査し、生命を探索するのは難しい課題だとNASAは言う。何故なら、このような水脈は急な勾配のあるところでしか発見できていないからだ。そこに生命があるかどうかを探索するには、「宇宙ロボット工学の領域の問題で、そこに向かうことができる専門のロボットが必要」と言う。機体はさらに、地球の微生物を持ち込まないように厳重に殺菌しなければならない。今の段階で、RSLのどこから液体が発見されたかは明示していない。

火星に液体の水があることは、今後人がこの惑星を探索するミッションを行う際にも役立つだろうとNASAは伝えている。

「この謎を解くのに、何年にも渡って複数台の宇宙船を送り込むことが必要でした。この冷たい、砂漠の惑星の地表に液体の水があることをようやく発見できました」とNASAのワシントン本部で火星探索プログラムのリードサイエンティストを務めるMichael Meyerは言う。「火星について探索するほど、生命がどのように発展するのか、そして今後生命の一端を担う材料がどこにあるのかということについて学ぶことができるでしょう」。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

“学生起業”の挫折乗り越えたアトコレ、メンバーズ傘下に——今後はインバウンド向けメディアを運営

アトコレの石田健氏(中央)、右からサムライインキュベートの榊原健太郎氏(右)、玉木諒氏(左)

アトコレ(現:マイナースタジオ)の石田健氏(中央)、サムライインキュベートの榊原健太郎氏(右)、玉木諒氏(左)

2011年9月に設立された学生スタートアップのアトコレ(9月に社名をマイナースタジオに変更)。同社をメンバーズが買収することが明らかになった。買収額は非公開。関係者によると数億円程度になるという。

創業間もなくメンバーが会社を離れることに

同社は創業時にはサムライインキュベートからシードマネーを調達。アート作品に特化したまとめサイト「みんなの美術館 アトコレ(現:MUSEY)」を提供していた。だが1年ほど経った頃、当時の代表をはじめとしたメンバーが会社を離れ、サービスを企画した石田健氏だけが代表取締役として会社に残ることとなった。ちなみに当時の代表は、現在クラウドソーシングサービス運営のクラウドワークス取締役副社長兼COOを務める成田修造氏。ほかのメンバーは、女性向けメディア「MERY」運営のペロリ代表取締役・中川綾太郎氏、同社取締役の河合真吾氏。それぞれ新しい場所で活躍をしている。

創業から間もないタイミングでの挫折。「みんなで『互いのキャラが濃すぎるとダメなのか』ということまで話し合った。個人的な視点だが、オペレーションを回すのが得意な人間や市場の方向性に明るい人間がいて個性も違う。一方で僕は研究員をやりたいようなタイプ。みんながひと通り事業を経験した今ならまた違うのかも知れないが、それぞれの(事業への)体重のかけ方が違っていた」——石田氏は当時をそう振り返る。

結局アトコレは石田氏を残して実質的に活動を停止。石田氏も大学院に進学し、その一方で個人プロジェクトとしてニュース解説メディア「The New Classic」をスタートした。この反響が大きかったことからサービスをアトコレに移管して運営することになったが、「広告で月の売上が数十万円程度、それ以外は2年間ほとんど何もしていなかった」(石田氏)のだという。

サムライ榊原氏「環境をリセットしてもう一度挑戦を」

そんな状況だが、石田氏には会社をたたむという選択肢はなかった。「当時は学生起業ブーム。だからといって『学生は勝手』と言われるようなことはしたくなかった。榊原さん(株主であるサムライインキュベートの代表取締役・榊原健太郎氏)にも『自由にやりなよ』と言われたので、すぐにではなくても、勝負できるマーケットを見つけて結果を出そうと思った」(石田氏)。榊原氏も当時を振り返って「全員環境をリセットして、もう一度挑戦してもらうべきだと思った」と語る。

一念発起したのは2014年の春。新たに社内にメンバーを迎え、メディア事業を強化。おでかけをテーマにしたキュレーションメディア「Banq」をはじめとした複数の特化型メディアを立ち上げた。Banq、THE NEW CLSSICは、それぞれ現在MAU(月間アクティブユーザー)数百万人のサイトに成長している。

「Banq」のスクリーンショット

「Banq」のスクリーンショット

メディア運営を通じて、オウンドメディアの運用支援事業にも進出した。「単純にコンテンツを作って納品するのではなく、メディア運営ノウハウをもとにSEOなども支援する。ライターに価値に置くよりも、コンバージョンに価値を置いたメディア作りをしている」(石田氏)。売上高などは非公開だが、メディア運営とオウンドメディア運用支援で黒字化は達成しているという。

アトコレでは、メンバーズの買収に合わせて社名をマイナースタジオに変更している。今後はメンバーズのクライアントをターゲットにしたオウンドメディア運用支援・コンテンツマーケティングを行うほか、新たにインバウンド向けのメディアを立ち上げる予定だという。「Banqはただのキュレーションメディアに見えるかもしれないが、実は裏側で各記事にスポット情報が紐付いている。このスポット情報を生かして、新しい『シティガイド』を作っていきたい」(石田氏)

サイバーセキュリティー対策、鍵は女性にあり

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サイバーセキュリティー専門家の需要がかつてなく高い中、最新レポートによるとこの分野で働く女性の数は伸びていない。

女性は、サイバーセキュリティー従事者のわずか10%しかいないことが、今日発表されたレポートで伝えられた。情報技術に特化した非営利団体(ISC)²およびBooz Allen Hamiltonによる。この数字は2年間変わっていない。

この絶望的な数字にも関わらず、同分野における女性の潜在能力は大きいとレポートは言う。女性は政府で働く情報セキュリティー従事者の20%を占め、9/11事件以来急速に増加しているリスク管理・法令順守業務を担っている。調査結果はさらに、女性の方がビジネス目標とリスク管理のバランス感覚に優れると考えられいると書いている。この分野で益々重要視されているスキルだ。

TargetからSonyまで、注目のハッキング事件がサイバーセキュリティーの話題を表舞台に乗せた。しかし、海外政府によるものから身近なハッカーまで脅威が増す中、必要な訓練を受けた人々の数は需要に追いついていない。加えて、モノのインターネットの普及が新たなセキュリティーリスクを招いていることを最近FBIも警告を発している。

「情報セキュリティー分野では、積極的対策を施さない限り2020年までに150万の専門家が不足する」と(ISC)²のCEO David Shearerはニュースリリースに書いている。「これを踏まえると、この業界で働く女性が少ないことは実に残念だ」。

この不足に業界がどう取り組むべきかについての考え方が、調査対象の女性と男性とでは異なる。これまで業界は情報セキュリティー要員を「買う」ことに頼り、サイバーセキュリティー専門家を高給で呼んでいた。しかし、Frost & Sullivanが調査した女性は、この方法では不十分だと答えた。彼女らは他のインセンティブ、例えば柔軟な勤務時間や様々な教育プログラム等を求めている。こうした要望は理にかなっている。最近大手IT企業も育児休業の拡大など同様の制度を試行して、優れたエンジニアの勧誘と維持に務めている。

レポートは、女性に対して早期に、主として学校教育やインターン制度の中で、情報セキュリティー分野におけるキャリアパスを推進していくべきだと強く主張している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Google、リビングルームの支配に向けて準備中

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先日のAppleイベントで私たちはApple TVの計画を聞いた。それは誰もが待ち望んでいたものだった。アプリ!がテレビ!に載る。発売は10月で、価格は149ドル(32GB)と199ドル(64GB)だ。

一方Googleも、リビングルームに関して手をこまねいてはいない。同社のChromecastは私の知る限りそれなりの成功を収め、近々新機種が出るとも噂されている。明日だと言う人もいる(本誌もそのイベントに参加する)。そしてGoogleから出てくるのは音楽ではない、ゲームだ。

実は、Androidチームからささやかな発表があり、デベロッパーはアプリのサイズを現在の50MBから2倍にできるようになった。実際これは非常に大きい変更だ。Googleはゲームに向けてリビングルームの準備を進めている。

これはデベロッパーが最大サイズ100MBのAPKをパブリッシュできることを意味しており、ユーザーはアプリのサイズが100MB割当てを超え拡張ファイルを使う場合にのみ警告される。標準のアップデート設定は変わらず、アプリの自動アップデートはWi-Fi経由のみなので、ユーザーはデータ通信量を節約しながら高品質なアプリとゲームを利用できる。

コントローラーリモコン本格的ゲームシステムが出てくる可能性は低く、Chromecastはコンテンツに富んだアプリを格納するには小さすぎる。だから。おわかりだろう。リビングルームではスマホが鍵であり、すごいアプリは大きく素晴らしくなっていく。

特にゲームは。

そして、おそらくリビングルームではそれを40ドル以下でプレイできる。

さあ、AppleもAmazonもMicrosoftも、ゲームの始まりだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

この折り紙ロボットは、歩くだけでなくジャンプもできる

現時点で、地球上にはバッタよりも折り紙ジャンプロボットの方がたくさんいると私は思う。その最新版、Tribotは形状記憶合金を使用して尺取り虫のように這いまわり、バッタのように飛び跳ねる。

このロボットは「身長の7倍ジャンプ」し、ジャンプとジャンプの間に休む必要がない、とスイス連邦工科大学ローザンヌ校再構成可能ロボット工学研究所のJame Paik研究員は言う。

なぜこの小さなロボットが重要なのか? それは事実上使い捨て可能でありながら様々なすごいことができるからだ。初代折り紙ロボットと同じように、この小さな奴は自然界に放り出されてデータや標本を集めて帰ってくることができる ― あるいはそのまま死んでしまうことも。

「このロボットには数多くのアクチュエーター(作動装置)が付いていて、それぞれが互いに独立している。アクチュエーターを起動することによってロボットが這い始める。ジャンピングモードでは、これも形状記憶合金で作られたバネを使用している」と共同制作者のZhenishbek Zhakypovは言った。

via Phys.org

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Apple、iPhoneの発売直後の週末に1300万台販売。毎分3000台で過去最高記録を更新

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Appleは先ほど、iPhone 6sとiPhone 6s Plusを発売を開始した最初の週末で1300万台を売り上げたことを発表した。昨年は1000万台、2013年は900万台だったのでAppleは最高記録を更新したことになる。

昨年と比較すると、AppleはiPhone 6sと6s Plusを中国でもローンチ日と同時に発売している。昨年、中国でiPhone 6と6 Plusの発売を開始したのは、ローンチしてから数週間後のことだった。ただ2013年のiPhone 5sと5cの時は中国でもローンチ日に発売している。2年前と比較しても、かなりの販売台数を伸ばす結果だ。

表現を変えれば、Appleは発売から3日間で、毎分3000台、あるいは毎秒50台の端末を販売したことになる。ものすごい数だ。Appleは「サービスとしての端末」方式で購入できる新しいiPhone Upgrade Programの最初の売上は開示していない。このプログラムは、24ヶ月の支払いプランで、iPhoneを毎年アップグレードするオプションが付く。iPhone 6sの最も安いモデルは月々32ドルから入手できる。

AppleはiPhone 6sと6s Plusを10月9日からイタリア、メキシコ、ロシア、スペイン、台湾を始めとする、新たに40の国と地域に販売エリアを拡大する。Appleは年末までに新しいiPhoneの端末を全世界130の国と地域で販売することになる。以前、Appleは予約の数を受け、すでに昨年の販売実績を超える勢いであると発表していた。

iPhone 6sは、端末の中の機能面を大幅に改良している。良いカメラを搭載し、チップも格段に速く、Touch IDは迅速で、3D Touchもある。特に3D Touchのテクノロジーは開発に5年を要し、iPhoneの使い方を変えるかもしれない。

iPhone 6sと6s Plusは10月9日から次の国と地域で入手できるようになる。

アンドラ、オーストリア、ベルギー、ボスニア、ブルガリア、クロアチア、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、ギリシャ、グリーンランド、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、マン島、イタリア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、モルディブ、メキシコ、モナコ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、スロベキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、台湾。10月10日から、バーレーン、ヨルダン、クウェート、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦でも販売を開始する。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

Facebookがダウンした!(アップデート:復旧済み)

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みなさん、あり得ない(こともない)ことが起きた。巨人、Facebookが落ちた。

通常私たちはFacebookが1分間停まったからといって大騒ぎしないが、今回はもう20(アップデート:30!)分になる。1日に数百万ドルを稼ぐ会社にとって、これは何万ドルもの収入減だ。

本誌はFacebookに連絡を取り、何が起きているか調べている。

アップデート: 35~40分間のサービス停止の後、復旧したと報告する人たちがいる。まだダウン中という報告もある。どうやらサーバー単位で復帰しているようだ。

アップデート #2: どうやら殆どの人のところで復旧したもよう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

BtoB企業で記者会見をやってみたい方に。イノーバの事業戦略発表会に潜入取材

数あるマーケティング手法の中でも、高い認知拡大効果を見込めるのが記者会見です。プレスを集客し記事にしてもらえれば、絶好のPRの場となります。 しかし多くのマーケッターにとって記者会見は、高難易度なマーケティング手法。特に […]