診察予約アプリZocdocは「プログラミングエラー」で患者データへの不正アクセス可能だった

医療機関オンライン予約サービスのZocdocは、医院や歯科医院の現職および元スタッフのユーザーアカウントが適切に削除されていなかったために、患者データへのアクセスが可能になっていたバグを修正したと発表した。

ニューヨークに本社を置くZocdocは、カリフォルニア州司法長官に宛てた書簡の中でこの問題を明らかにした。企業は500人以上の州民がセキュリティ上の不備や違反の影響を受けた場合、同州の司法長官事務所に通知することが義務づけられている。Zocdocは今回のセキュリティインシデントにより、米国全体で約7千600人のユーザーが影響を受けていることを確認した。

Zocdocは、見込み患者が医師や歯科医師を検索し予約を入れることができるサービスを提供しており、各医療機関や歯科医院のスタッフがZocdocを通じて行われた予約にアクセスするためのユーザー名とパスワードを提供しているが「プログラミングエラー」、つまり基本的にはZocdoc自身のシステムにおけるソフトウェアのバグにより「過去または現在の医療機関のスタッフの一部が、ユーザー名とパスワードを削除、消去、またはその他の方法で制限することを意図した後に、プロバイダーポータルにアクセスすることができた」と述べている。

この書簡では、Zocdocのポータルに保存されている患者データがアクセスされた可能性があることが確認されている。該当データには、患者の氏名、電子メールアドレス、電話番号、予約日時の他、保険の詳細、社会保障番号、患者の病歴の詳細など、診療所と共有されていた可能性のあるデータも含まれている。

しかしZocdocによると、支払いカード番号、X線や診断書、医療記録などは同社は保存しないため、盗まれていないとのこと。

Zocdocの広報担当者であるSandra Glading(サンドラ・グレーディング)氏はメールで、同社は2020年8月にバグを発見したが「コードが複雑なため、どの診療所やユーザーがどのように影響を受けたかを特定するには、相当な調査が必要だった」と述べた。同社は、カリフォルニア州の司法長官事務所に「可能な限り早く」通知したと述べている。

Zocdocは「この脆弱性の悪用の可能性を含む、あらゆるデータの悪用を検出できる詳細なログ」を保有しており、それらのログの確認とその他の調査作業を行った結果「現時点では、個人情報が何らかの形で悪用された形跡はない」と述べた。

同社によれば、月間約600万人のユーザーがZocdocにアクセスしているという。

この事件に何となく聞き覚えがあるとしたら、それは2016年にZocdocが報告したセキュリティ問題と酷似しているからだ。当時提出された書簡には、医療機関のスタッフが患者データに不正にアクセスできる同様の「プログラミングエラー」が挙げられていた。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:Zocdocデータ漏洩個人情報医療バグ

画像クレジット:TechCrunch(スクリーンショット)

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

ヒュンダイの全電動車IONIQ 5は決済システムを搭載

Hyundai(ヒュンダイ)が開発した車載決済システムは、次期電動クロスオーバー「IONIQ(アイオニック) 5」に搭載され、EVの充電や食事、駐車場などの料金を払えるようになる。これは、自動車メーカーが収益を上げるための新しい方法として、通常はスマートフォンに付随する機能を顧客に提供していうる最新の例だ。

IONIQ 5の北米地区発売は2021年秋を予定しているが、米国時間5月24日に行われた同社発表によると、決済システムに最初から登録されているマーチャントはDominoes(ドミノ・ピザ)と電子駐車サービスのParkWhizと充電サービスのChargehubだ。IONIQ 5の北米デビューではさまざまな機能が搭載されるが、車載決済もその1つとなる。

決済システムはヒュンダイ自身の車載インターネット接続システムBluelinkから利用する。Bluelinkからさまざまなクルマの機能やサービスをコントロールできるが、サブスクリプション契約が必要だ。3種類のパッケージがあり、それぞれクルマのメンテナンスとアラート、リモート天気予報、アンロックとロック、目的地検索などのサービスにアクセスできるようになる。またBluelinkでユーザーのスマートフォン上のGoogleアシスタントの機能にリンクして、情報をクルマに送ることもできる。

この車載決済システムは今後、課金をともなうその他の企業にも拡張される。ドライブスルーの食べ物やコーヒー、駐車などがその候補だ。ヒュンダイの広報担当者によると、新しいマーチャントの登録はXevo Marketplaceから今後定期的に行われるという。

IONIQ 5は、E-GMP (Electric-Global Modular Platform) という新プラットフォーム上に構築された同社初のバッテリー電気自動車だ。このプラットフォームはKia(起亜自動車)と共有されており、新しいEV 6のプラットフォームにもなっている。

聞いたことがある名前だ、と思う方もいるかもしれないが、それは「IONIQ」という名称が以前から存在するからだ。ヒュンダイは2016年に、IIONIQと名づけたハッチバックを、ハイブリッド、プラグインハイブリッドそして電気自動車という3つの型式で発売した。この韓国の自動車メーカーは、その車種を新たなEVブランドへの跳躍台として使っていた。

今後IONIQブランドの車種はすべて、E-GMPのプラットフォームが使われる。IONIQ 5はヒュンダイのConcept 45がベースで、それは同社が2019年にフランクフルトの国際モーターショーで公開されたモノコック風ボディのクロスオーバーだ。コンセプト45のデザイナーは「ヒュンダイの最初のコンセプトである1974年の『Pony Coupe(ポニー・クーペ)』のラインや特徴の一部を参考にしました。『45』という名称は、車両のフロントとリアの角度が45度であることにも由来しています」と語っている。

ヒュンダイはまだ、IONIQ 5の価格を発表していない。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Hyundai電気自動車決済

画像クレジット:Hyundai

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

北京市が自律走行車両の公道試験の許可をJD.com、Meituan、Neolixに

北京郊外の人は、人間の配達員を乗せて通りを注意深く走行する自律運転の配達ミニバンを近所で目にし始めることになりそうだ。

現地時間5月25日に開かれたモビリティ会議での北京市当局の発表によると、同市はJD.com、Meituan、Neolixに亦荘開発区域の専用の公道で自律走行する配達車両を試験する許可を与えた。同区域は北京市による経済・技術的成長を目的とする試験エリアで、自動運転ベンチャーのためのインフラを用意しようと5Gを積極的に展開している。

3社は荷物を配達するのにNuroのものと似ている、ボックスに車輪がついたかわいらしい車両を使う。中国の電気自動車スタートアップLi Autoが支援する創業3年のNeolixは、小売や監視、その他の市サービスのための自律走行車両にフォーカスしている。その一方で、テック大企業であるJD.comとMeituanは、無人配達が自社の中核事業にとって重要性を増していると考えている。

Meituanの自動走行配達車両(画像クレジット:Meituan via WeChat)

オンライン小売のJD.comは専属の配達スタッフを抱えているが、Meituanの方はレストランのテイクアウトを顧客に届けるのにライダーの全国ネットワークに頼っている。両社ともここ数年、社内で自動運転テクノロジーに取り組んでいて、中国で配達ドローンの小型車両をテストしている。

Neolixは2021年6月までに北京の路上で配達車両150台を走らせる予定だ。JD.comは展開する車両の台数を明らかにするのは却下した。Meituanにはコメントを求ることができていない。

試験を担当する北京市当局は5月25日のイベントで、亦荘開発区域での配達専用の車両の運用に関するルールも示した。ロボットは「非モーター車両」に分類される。これからするに車両は車ではなく自転車や電動スクーターに近い区分になるようだ。中国の都市の道路状況は、予測できない歩行者、リースに繋がれていないペット、無謀なスクーター利用者のおかげで米国の道路、あるいは歩道やバイクレーンよりずっと複雑だ。

さらに重要なのは、ロボットは「現場と遠隔に」セーフティドライバーを置く必要があると規則にある。

Neolixの配達ロボット(画像クレジット:Neolix via WeChat)

JD.comは、同社のテクノロジーによってリモートセーフティドライバーは運行中の配達ロボット最大50台をモニターできると話す。車両は物流センターやスーパーマーケットから周辺のオフィスビル、集合住宅、学校のキャンパスなどへと荷物を運ぶ。顧客はテキストメッセージで送られてくるピックアップ用のコードを使って注文したものをバンから直接取ることができる。

対照的に、試験エリアでのNeolixの車両は周辺のオフィスビルで働く人向けのスナックやランチを売って回るモバイル自動販売機のようだ。ユーザーはロボットに搭載された小さなスクリーンで注文してQRコードで支払いをすれば、アイススクリームや温かいお弁当をすぐさま入手できる。

カテゴリー:モビリティ
タグ:JD.comMeituanNeolix中国北京自動運転ロボット配達

画像クレジット:JD.com’s delivery robot. Photo:JD.com

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

医療機器データプラットフォームのAcuityMDが7.6億円調達、医師とメーカーに情報提供

膨大な量のノイズとわずかなシグナルを含む世界では、消費者の選択を簡単なものにするスタートアップの存在は理に適っている。Career Karmaは学生のテックブートキャンプ選びを手伝っており、Stackin’はネオバンクと節約アプリの世界でミレニアル世代を誘導している。そしてボストン拠点の新たな会社はマーケットに出回っている最新の医療機器の情報を医師が把握するのをサポートしている。

Mike Monovoukas(マイク・モノフカス)氏、Lee Smith(リー・スミス)氏、Robert Coe(ロバート・コー)氏によって2019年に設立されたAcuityMD(アキュイティエムディー)は、格納されていることが多い医療機器データを開放したいと考えている法人向けのソフトウェア企業だ。その目的を達成するために、同社は米国時間5月24日の週にBenchmarkがリードしたシードラウンドで700万ドル(約7億6000万円)を調達した。

資金調達の一環として、BenchmarkのゼネラルパートナーであるEric Vishria(エリック・ヴィシュリア)氏がAcuityMDの役員会に加わる。医療テック企業をサポートするために2019年に1億ドル(約109億円)をクローズしたAjax HealthもAcuityMDのラウンドに参加した。シード資金でAcuityMDは現在8人のチームを年末までに倍増させ、1つのとある分野に投資する計画だとモノフカス氏は話した。その分野とは何をおいても「プロダクト」だ。

AcuityMDは、アイテムの販売から術後患者のその後の経過まで医療機器のライフサイクル全般を追跡するデータプラットフォームだ。1つのプロダクトについてある種のメタデータを与えるべく、個々の医療デバイスについての産業・マーケットデータを統合している。

「毎年発売されるプロダクトが1000点以上あり、医師がフェローやレジデントとしての期間を終えた後にそこら中にある最新かつ最もすばらしい医療テクノロジーの情報についていくのはほぼ不可能です」とモノフカス氏は述べた。「当社はこれをソフトウェアと調整の問題だととらえています。そこら中にデータはあるが、意思決定者に辿り着くという点では非効率です」。

同氏は、自身の家族が連続で手術を受けなければならなかったときに医療デバイス管理の非効率さを直に体験した。

「私がすばらしいと思ったのは、メーカーが何を使うべきかについて多くの情報を持っているということでした。しかし、その情報は正しいタイミングで適切な医師に伝わっていませんでした」と同氏は指摘した。「私が持った基本的な認識は、この業界の情報フローはやや壊れているというものでした。それは有能な医師や外科医であるということの問題ではなく、情報移送が欠如していました。これはデータ主導の世界においてはクレイジーなことです」。

そしてBain & Companyや医療デバイス会社で以前働いたことのあるモノフカス氏は、医療デバイスを長期療養患者の経過により対応するものにするためにどのようにデータを使うかについて考え始めた。より多くの情報の恩恵を受ける主な関係者は医師である一方で、AcuityMDのチームは主要顧客としてデバイスメーカーにも目を向けた。

その理由の1つは、病院と医師は販売先としては面倒なことで悪名高いためだ。別の理由は、医療デバイスのパフォーマンスデータはメーカーの販売チームが販促したりターゲットを絞ったり、そして売り込んだりするのに使うことができるキー信号だからだとモノフカス氏は筆者に語った。自社のデバイスの中で多くの外科医が必要とするかもしれないものに関するデータから、特定のデバイスの長期的な結果に至るまで、メーカーが自社のプロダクトのためにマーケットの可視性をいかに欲しているか同氏は説明した。

データは販売チームが特定のプロダクトで10人の医師をターゲットとすることがいかにメーカーにとって財務的にそして残るマーケットとの文脈において影響を及ぼすかを先制的に理解するのに役立つかもしれない。

AcuityMDは医療デバイスのリアルタイムデータベースになることを目指している。長期的には、かなりの需要がある重要なトランザクションにおいてメーカーと外科医をつなげる同日配送サービス事業者と自社を位置付けることができるかもしれない。モノフカス氏はロジスティックと在庫が医療デバイス産業のための「内臓にダメージを与えるような」問題である一方で、まだソリューションがないと話す。AcuityMDが各施設で必要とされる在庫を予想することができるようにったときに出番だと同氏はみている。Chloe Alpert(クロエ・アルパート)氏によって共同創業されたMedinasのような一部の企業が病院のシステムの中でどのように運営・管理しているのかに似ている。

しかし差し当たってAcuityMDは、自社のプラットフォームとベンチャー資金をプロバイダーシステムの外で使うのがベストだと考えている。同社は病院と外科医に関する多くのデータをMedicare CMSと保険会社から仕入れていて、プロバイダー側でしなければならないことはない。

問題は、そうしたデータソースが本当の動向を引き出すのに十分よいものであることを確保することだ。この点についてAcuityMDは十分だとしている。

「デジタルヘルス会社はゆくゆくはヘルスケアデータ会社になると誰かがいうのを聞いたことがあります。当社はやや異なるアプローチをとっています」とモノフカス氏は話した。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:AcuityMD資金調達医療

画像クレジット:akinbostanci / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nariko Mizoguchi

マイクロソフトはGPT-3を使い自然言語でコードを書けるようにする

2021年のMicrosoft Build開発者会議には例年ほどの大きな驚きはなかったが、開発者がおそらく注目するであろう発表が1つある。Microsoftは同社のノーコード / ローコードサービスであるPower AppsでOpenAIの強力なGPT-3自然言語モデルを使って、話し言葉を最近発表されたPower Fx言語のコードに翻訳する。

しかし我を忘れてはいけない。自然言語だけを使って次のTikTokを開発しようということではないのだ。MicrosoftがやっているのはPower Appsのようなツールでローコードになっている部分の一部をなくすことであり、AIを使って基本的にノーコードのエクスペリエンスにしようともしている。現時点で主眼となっているのはPower Appsの数式で、これはもともとローコードのサービスではあるが、高度なアプリを開発しようと思ったら遅かれ早かれ何らかの数式を書かなくてはならない。

Microsoftのローコードアプリケーションプラットフォーム担当CVPであるCharles Lamanna(チャールズ・ラマンナ)氏は「このような高度なAIモデルを使うことで、まさに私たちがノーコードと呼んでいるものになり、Microsoftのローコードツールはさらに多くの人たちに使われるようになります」と述べた。

実際には、シチズンプログラマーが「find products where the name starts with ‘kids’」(「kids」で始まる名前の製品を見つける)のように書くと、Power Appsが「Filter(‘BC Orders’ Left(‘Product Name’,4)=”Kids”)」とレンダリングする。

MicrosoftはOpenAIに投資しているので、MicrosoftがこのエクスペリエンスにOpenAIのモデルを利用することに決めたのは当然だ。

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画像クレジット:Microsoft

これによってプログラミングが簡単になるが、そうはいってもユーザーは自分が開発しているアプリケーションのロジックを理解する必要があるとMicrosoft自身が強調していることは重要なポイントだ。同社は今回の発表の中で「この機能によって自分が実装しているコードを理解する必要性がなくなるわけではありませんが、プログラミング言語のPower Fxを学んでいる人を支援し、必要な結果を得るための正しい数式を選ぶ助けとなります。高度なアプリ開発へのアクセスが劇的に広がり、ローコードツールの使い方をこれまで以上に短期間でトレーニングできます」と説明している。

ExcelやPowerBI、Googleスプレッドシートなどで利用できる自然言語クエリ機能を使うのと、まったく違うというわけではない。これらも結局のところ、自然言語を数式に翻訳している。おそらくGPT-3はもう少し高度でもっと複雑なクエリを理解できるだろうが、自然言語を数式に翻訳するという点ではそれほど新しくはない。

長期的にはこのようなツールがもっと賢くなって複雑なプログラミングタスクを処理できるようになると見られる。しかし複雑なプログラミングができるようになることは、翻訳の問題よりもずっと高いステップアップだ。概して、クエリが複雑になるほどプログラムをしっかり理解することが必要だ。数式はたいてい自己完結型のステートメントだが「本物の」コードを生成できるようなモデルではもっと多くのコンテクストを処理しなくてはならない。

この新機能は、2021年6月末までに北米のユーザーに対して英語版のパブリックプレビューが公開される。


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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftMicrosoft BuildMicrosoft Build 2021ノーコードローコードPower Apps自然言語処理OpenAI

画像クレジット:Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

マイクロソフトのブラウザ「Edge」は起動が速くなりタブがスリープする機能も搭載する

米国時間5月25日、毎年恒例のBuildカンファレンスでMicrosoftはEdgeブラウザのバージョン91に搭載される新機能を紹介した。2021年のBuildは驚くような発表(開発者のベロシティ!)があまりなく、それはEdgeの新機能も同様だが、ユーザーにとっては生活の質が上がる良いアップグレードだ。MicrosoftはEdgeをオープンに開発しているため、Edgeのロードマップに注目している人にとってはすでに知っている機能のように感じられるかもしれない。実際、筆者はEdge 90で新機能の大半をすでに見ていた気がする。

新機能の1つは、Edgeがほぼ瞬間的に起動するStartup Boostだ。Microsoftはかなり単純な方法でこれを実現している。Windowsマシンを起動するたびに単純にEdgeのコアのプロセスの一部をロードしているので、Edgeを起動するときには処理する作業があまりないのだ。Windows 10の起動時間にはあまり影響を与えないはずなので、おそらくトレードオフの価値はあるだろう。しかし筆者はここ数年、誰かがブラウザの起動時間について不平をいうのを聞いた記憶はない。

もう1つの新機能は「スリーピングタブ」で、名前から期待するとおりのものだ。タブをスリープさせるので、不要なメモリやCPUサイクルを消費しなくなる。

Microsoftは2020年12月にこの機能をテストしていることを初めて公表した。その時点でEdgeチームは、スリープしているタブはスリープしていないタブと比べてCPUの使用が平均で37%少ないため、メモリ使用量が32%減りバッテリー駆動時間も伸びると述べていた。

ベースのテクノロジーの多くをEdgeと共有しているGoogleのChromeブラウザも、リソースの使用を制限するツールを提供していることを付記しておく。例えば、現在の主なブラウザのほとんどが備えている機能で、Googleが「タブフリージング」と呼んでいるものなどだ。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftMicrosoft Build 2021Microsoft Edgeブラウザ

画像クレジット:Olga Gimaeva / EyeEm / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

本物の天窓のような空間演出を実現する「天窓Vision」をパナソニックが開発、照明や音響の連動制御ユニットが夏頃完成

本物の天窓のような空間演出を実現する「天窓Vision」をパナソニックが開発、照明や音響の連動制御ユニットが2021夏頃完成ビル内のオフィスや地下にある店舗などでは、自然光を取り入れづらく、空間に閉塞感が生まれがちだ。しかし、コロナ禍においてテレワークやネットショッピングが普及しつつある今、リアルオフィスやリアル店舗は、オンラインではなし得ないコミュニケーション活性化のためのリラックス感やデライト感、またネットショッピングでは難しい実体験を得られる場所としての位置づけが求められている。

パナソニック ライフソリューションズ(以下、パナソニック)が開発した空間演出システム「天窓Vision」が、そんな閉塞感を払拭し、新たな体験をもたらすかもしれない。

天窓Visionは、2019年に同社が開発し、リラックス感や外とのつながりを感じられることを実証実験で確認した「天窓照明」より約2.4倍の発光面積を持つ約1.1m角の大型タイプを展開。さらに本体同士の連結(最大3台)と、映像コンテンツの連動(6台まで)を可能にしたことで、本物の大きなガラス窓から見える景色のような、ダイナミックかつ解放感のある空間演出を可能にした製品だ。

本物の天窓のような空間演出を実現する「天窓Vision」をパナソニックが開発、照明や音響の連動制御ユニットが2021夏頃完成

イメージ画像左は「2台連結×2セット、4台で映像連動」、画像右は「3台連結を2セット、6台で映像連動」

 

天窓Visionには、刻々と移り変わる空の色や流れる雲だけでなく、木々と木漏れ日、桜、紅葉といった季節に応じたコンテンツのほか、星空や雨模様、イルカやオーロラといった、通常の窓からは見られない景色も表示できる(有料オプション)。もともと柔らかで奥行き感のある映像表現を行っていた天窓照明に、高解像度機能を持たせたことにより、このような映像コンテンツの拡充が図れたという。

本物の天窓のような空間演出を実現する「天窓Vision」をパナソニックが開発、照明や音響の連動制御ユニットが2021夏頃完成

時間帯に合わせた映像の切り替えが可能

また、天窓照明に比べ、製品の高さを約30%低減し、大型タイプだけでなく小型タイプも展開したことにより、スペースの限られる天井裏や、面積の取れない壁や天井などへの設置を可能にした。

本物の天窓のような空間演出を実現する「天窓Vision」をパナソニックが開発、照明や音響の連動制御ユニットが2021夏頃完成

さらに、天窓Visionの空間演出に合わせ、照明や音響、プロジェクターなどの機器と連動できる制御ユニットも開発中。バイオフィリックデザイン(バイオ=自然、フィリア=愛好。建築物の中に自然とのつながりを感じられるようにするデザインのこと。業務効率や幸福度に影響を与えると考えられている)にデジタル技術をかけ合わせた新たな空間演出をパナソニックでは提案していく。

 

天窓Visionは、機器に映像システム、標準コンテンツ、施工、設定をパッケージにしたエンジニアリング商品で、2021年6月1日からパナソニックの関係会社でエンジニアリング事業を担う事業会社を通じて展開。制御ユニットは2021年夏頃の完成を目指しており、天窓Visionを扱う同事業会社を通じ、天窓Visionと組み合わせて展開する。制御ユニット単体での販売は予定していない。

パナソニックでは、天窓Vision導入に関する問い合わせフォームを設置している。

本物の天窓のような空間演出を実現する「天窓Vision」をパナソニックが開発、照明や音響の連動制御ユニットが2021夏頃完成

様々な機器を連動させた場合のイメージ図

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:IoT(用語)バイオフィリックデザイン(用語)Panasonic / パナソニック(企業)日本(国・地域)

Surface Duoの2つのスクリーンがゲーム画面+バーチャルコントローラーとして使用可能に

2020年12月にMicrosoft(マイクロソフト)が掲載した「Surface Duo(サーフェイス・デュオ)の今後1年」と題したブログ記事には、このデュアルスクリーンデバイスが米国以外の地域(カナダ、英国、フランス、ドイツ)でも発売予定であることや、いくつかの機能が紹介されていた。だが、このデバイスを使ってみたことがあるほとんどの人(我々を含む)は、このデバイスがまったくの未完成であることを認めている。

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マイクロソフトは米国時間5月24日、Android版「Xbox Cloud Gaming(エックスボックス・クラウド・ゲーミング)」のアップデートを行い、この製品のエンターテインメント性の一部を解放した。これまでベータ版として提供されてきたこの機能は、マイクロソフトの中で議論が続けられ、プレビューも行われていたが、今まで隠された機能の1つだった。

本日、#SurfaceDuoをご利用のお客様にとてもクールなアップデートが公開されました!@Xboxと協力して、私たちはその2つ目のスクリーンにタッチ式コントローラーを搭載しました。@xboxGamePassのアルティメットメンバーなら、50種類以上のゲームがタッチ操作で遊べるようになりました。

このアプリは、あなたがSurface Duoに期待する通りの使い方を実現する。横向きのCompose Mode(コンポーズモード)にすると、上の画面にゲームが表示され、下の画面はバーチャルなXboxコントローラーに変わる。もちろん、タッチスクリーンでできることは限られているが、ゲームが2画面あると便利なアプリケーションであることは確かだ。

Engadgetによると、このタッチコントローラーはXbox Game Pass Ultimateに加入しているユーザーが利用できる50以上のタイトルに対応しているという。

従来の折りたたみ式フォームファクタに代わる製品として大いに宣伝され、非常に期待されていたSurface Duoだが、発売当初は期待外れだった。マイクロソフトはその後、この製品の価格を1399ドル(約15万2000円)から999ドル(約10万9000円)に値下げしている。つまり、あまり売れていなかったということだろう。しかし、今回のようにソフトウェアのサポートが続けられているということは、初期の失敗にも拘らず、同社が今後もこの製品をサポートしていくという意思の表れなのかもしれない。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:MicrosoftXbox Game Pass折りたたみスマートフォンSurfaceSurface Duo

画像クレジット:Microsoft

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

電気設備工事での電力計確認を効率化、SPIDERPLUSときんでんがOCR連携機能実験

スパイダープラスは5月24日、関西電力グループの総合設備工事会社「きんでん」と協力し、図面管理・情報共有システム「SPIDERPLUS」(スパイダープラス)とOCR連携による確認作業支援機能を開発し、実証実験を開始すると発表した。

電気設備工事では、設計時と施工後の電力量計情報の照合・確認を行うことになっているが、その際作業員が10桁以上に及ぶメーターの製造番号や各種数値を目視すると同時に手書きでメモを行うという。そのため表示内容の見間違いや書き間違い、警告表示の見逃しなどのヒューマンエラーが起きやすく、業務時間が伸びる原因の1つとなっているそうだ。

このような課題を解決すべく、スパイダープラスはきんでんと協力し、SPIDERPLUSとOCR技術の連携による「確認作業支援機能」を開発した。SPIDERPLUSの入ったタブレットで電力量計を撮影し、画像データをクラウドに送信すれば、画像内の文字をOCR連携によって認識し、その結果と設計時の情報とが自動照合される。また、相違判定の際は確認支援機能によって警告が表示される。OCR処理による自動判定と、作業員の目視を合わせたダブルチェックを実施することで、ヒューマンエラーの防止に加え、確実な作業管理と効率化につなげられるとしている。

OCR連携による確認作業支援機能のメリット

  • 警告表示による見間違いや見逃しの防止:設計値と異なる仕様や設定値である場合、電力量計に誤結線などのエラーが表示されている場合などは、警告を表示し見逃しを防止
  • 情報流用による省力化:設置済みの電力量計情報の収集のみを目的とする場合を含めて、OCR処理結果の情報流用による省力化が可能となる
  • 読み取りデータの保存:写真を撮影すると、読み取りデータが保存される(別売の電力量計を撮影用補助具として使用することを推奨)

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:建設 / 建築(用語)スパイダープラス(企業・サービス)日本(国・地域)

東京大学に量子ネイティブ人材を育成する「量子ソフトウェア」寄付講座が開設、2021年6月1日~2024年5月31日の3年間

東京大学に量子ネイティブ人材を育成する「量子ソフトウェア」寄付講座が開設、2021年6月1日~2024年5月31日の3年間

電通国際情報サービスは5月24日、東京大学大学院に、協賛企業9社による「量子ソフトウェア」寄付講座を開設すると発表した。期間は2021年6月1日から2024年5月31日までの3年間。

この講座は、東京大学大学院理学系研究科に設置され、同研究室科の「知の物理学研究センター」の協力で推進される。寄付講座とは、大学外部の団体から資金や人材などの寄付を受けて開かれる講座のこと。協賛企業は、CSK、NTTデータ、電通国際情報サービス、日鉄ソリューションズ、三井住友フィナンシャルグループ日本総合研究所、日本電気、日本ユニシス、富士通、blueqat。

この講座の目的は次の3つ。

  1. 量子コンピューター、情報圧縮や計算の効率化に役立つテンソルネットワーク、情報抽出を行うサンプリング手法などを組み合わせた新しい量子機会学習手法や量子アプリケーションの開発
  2. 大規模シミュレーションによる量子コンピューターの背後に潜む物理の理解と最先端知見の獲得による社会実装における課題の解決
  3. 量子ネイティブな専門人材育成

2021年度は、試行段階として、学生向けのセミナー形式の講義、社会人向け講義、シンポジウムなどのイベントの実施を予定している。2022年から本格的な講座を開始し、量子ネイティブ人材の育成を行う。協賛企業は、自社社員をここで学ばせることもできる。

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カテゴリー:EdTech
タグ:教育 / EdTech / エドテック(用語)東京大学(組織)blueqat量子コンピュータ(用語)日本(国・地域)

インド警察が与党政治家の投稿に「操作メディア」とラベル付けした同国のツイッター支社を訪問

インド中央政府の管轄下にあるデリー警察は、現地時間5月24日の夕方、首都デリーとその近隣のハリヤナ州グルガオンにあるTwitter(ツイッター)の2つのオフィスを訪れ、同国の与党であるインド人民党(BJP)の広報担当者によるツイートに「操作されたメディア」とラベルを付けたTwitterの根拠についての情報を求めた。

関連記事:インドがTwitterの同国政治家に対する「操作メディア」判定に異議、「インド型変異株」投稿削除をSNS各社に要請

現地の複数のニュースチャンネルが生中継したところによると、テロなどの犯罪を捜査するデリー警察の特別捜査班は、捜索開始から1時間後、Twitterのオフィスが閉鎖されており、社内にTwitterの従業員がいなかったことから、オフィスを立ち退いたという。

Twitterの広報担当者はコメントを控えている。世界第2位のインターネット市場であるインドは、Twitterをはじめとする多くの米国のテクノロジー企業にとって重要な海外地域だ。

インド政府は先週、Twitterがインドの与党BJPの広報担当者であるSambit Patra(サンビット・パトラ)氏のツイートを「操作されたメディア」とラベル付けしたため、同社に通知を送った。

このツイートの中でパトラ氏は、インドの最大野党であるインド国民会議が、インド政府の新型コロナウイルス感染に対する取り組みを阻害するために、いわゆる「ツールキット」を使用していると主張していた。なお、インドの主要なファクトチェックの非営利団体であるAlt Newsは、パトラ氏の主張を虚偽であると否定している。

デリー警察は、パトラ氏のツイートのラベル付けについて苦情を受けているため現在調査中であると発表し、Twitter Indiaのトップに調査の通知を出すためにオフィスを訪れたとしている。警察は声明の中で、この件に関するTwitter Indiaの最高責任者の返答は「非常にあいまい」だったと述べている。

Twitter Indiaのオフィスが閉鎖されていることを知り、デリー警察の特別捜査班がグルガオンから戻るところです。どうやらTwitter Indiaでは2020年3月から自宅で仕事をしているようです。この動きは政府からのメッセージなのでしょうか?

「デリー警察は、シュリ・サンビット・パトラ氏(BJP広報担当者)のツイートを『操作的』と分類したことについてTwitterに説明を求める苦情を受け、現在調査を行っています。Twitterは我々が知らない情報を持っていて、それに基づいてそのように分類したようです」と、デリー警察は地元のTV局やその他のジャーナリストに向けた先の声明で述べている。

そして「この情報は調査に関連しています。調査を行っている特別捜査本部は真実を解明したいと考えています。根本的な真実を知っていると主張しているTwitterは、それを明らかにすべきです」と続けている。

その後の声明では、デリー警察はこの日の出来事を「強制捜索」と呼ぶことに異議を唱えている。

複数の政策担当者などが、デリー警察の動機を疑問視している。

Rohan Venkat@RohanV
デリー警察(インドの中央政府によって管理されている)が、インドのTwitterのオフィスを強制捜索しています。BJPが支配する中央政府は、Twitterが党のプロパガンダを「操作されたメディア」とラベル付けしたことに不満を持っているからです。

Tanvi Madan@tanvi_madan
インドは国際社会、特に米国からの優先的な援助を求めているので、これはインドが目前の本当の問題に力を入れていることを彼らに納得させる1つの方法ではないかと私は思います。

ANI@ANI
デリー警察の特別捜査班が、デリーにあるTwitter Indiaのオフィスで捜索を行っています。詳細が待たれます。

Raman Chima@tame_wildcard
与党の広報担当者のツイートを「操作されたメディアを含んでいる」とラベル付けすればどうなるか。連邦政府はデリー警察の特殊部隊を首都圏にある御社のインド子会社のオフィスに送り込み、思い知らせてくれるでしょう。

あからさまな権威主義ですね。

Bar & Bench@barandbench
デリー警察がデリーのラド・サライとグルグラムにあるTwitter Indiaのオフィスを家宅捜索したとANIが報じています。

Raheel Khursheed@Raheelk
これが悲劇でないなら不可解だ。デリー警察は、@TwitterIndiaのオフィスには物理的にデータが保存されていないことを知っているのだから、家宅捜索の目的は脅迫に他ならない。

今回の動きがあったのは、TwitterとFacebook(フェイスブック)に、インドのソーシャルメディアを規制する新ガイドラインに準拠する期限が目前に迫りつつある時期のことだった。

インド政府は両社に対する新たな通告の中で「IT規則に従わない場合、仲介業者(intermediary)としての地位や保護を失う可能性がある」と警告している。

今回の出来事は、ここ数カ月の間、インド政府との平和的関係を維持するのに苦労してきた米国企業にとって、新たな頭痛の種となっている。

Twitterは2021年初め、インド政府の要請に一時的に応じた後、政府の政策やNarendra Modi(ナレンドラ・モディ)首相に対する批判的なツイートを投稿したアカウントを復旧させたことで、政府から非難を浴びた。

インド政府が2021年4月、TwitterとFacebookに対して、新型コロナウイルス感染流行に対する政府の対応に批判的な投稿を削除するよう命じたため、両者は再び公の場で対立することになった。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:インドTwitterSNS新型コロナウイルス警察

画像クレジット:Nasir Kachroo / NurPhoto / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】警察犬ロボのパトロールが嫌ならCCOPS法の検討を

編集部注:本稿の著者であるAron Solomon(アロン・ソロモン)氏は、NextLevel.comのデジタル戦略責任者であり、モントリオールのマギル大学Desautels Faculty of Managementのビジネスマネジメントの非常勤教授。

ーーー

Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)のロボット「犬」やその類似製品は、ハワイ、マサチューセッツ、ニューヨークの警察署ですでに採用されている。ベールに包まれた実験とあって、これらの強力な監視装置を使用する利点やコストについて警察からの回答はほとんどない。

米国自由人権協会(The American Civil Liberties Union、ACLU)は、 CCOPS(警察の監視に対する地域社会による制御)に関する立場表明書で、監視技術の透明性を促進し、市民の権利と自由を保護するための決議を提言した。これまでに米国の19の都市がCCOPS法案を可決させている。つまり他のすべての地域社会では、事実上、警察による監視技術の使用の透明性は必要とされていないことになる。

このようにさまざまな場面で新しい未完成技術を使用できることは、多くの人にとって問題となる可能性がある。世界的に有名な人工知能の専門家であり、TuraltのCTO(最高技術責任者)のStuart Watt(スチュアート・ワット)氏はこれに不快感を示している。

「こうした指針とロボット犬、そして、その実情には愕然としています。膨大な資金の浪費であり、実際の警察業務の妨げとなっているのです」とワット氏は述べた。「間違いなく、地域社会はこれらに関与していく必要があります。正直言って、警察がどう考えているのかさえわかりません。物理的な監視システムを使って思いとどまらせるためでしょうか?それとも、実際に、ある時点で行われる何らかの監視に人々を備えさせているのでしょうか?」

「警察の大部分は『保護し、奉仕する』ことをすべて忘れてしまい、それを実行していません」とワット氏は付け加えた。「もし人工知能を使ってホームレス、麻薬中毒者、性労働者、貧困層、不当に攻撃されているマイノリティのような弱者を実際に保護し、奉仕することができるなら、その方がはるかに良いでしょう。人工知能に資金を費やす必要があるならば、人々を助けるために使うべきです」。

米国自由人権協会の主張は、ワット氏の提言とまったく同じだ。国中の市議会への提言で、米国自由人権協会は次のように明確に述べている。

市議会による監視技術に関する資金、導入、または使用の承認は、監視技術の利点がコストを上回り、その提案が市民の自由と権利を保護し、監視技術の使用や配備が、差別や見解要因に基づくことなく、いかなる地域社会やグループにも差別的インパクトがないと判断される場合にのみ行われるものとしなければならない。

Team Lawで特別顧問を務める、弁護士のAnthony Gualano(アンソニー・グアラノ)氏は、法的観点からCCOPS法案は多くの面で理に適っていると考えている。

「全国各地で警察による監視技術の使用が増えるにつれて、人々を守るために使用する技術はより強力で、効果の高いものとなってきます。使われる技術やその使用方法を確認するために、透明性を義務付ける法律が必要です」。

このボストン・ダイナミクスの犬だけでなく、未来のスーパーテック犬のすべてについて心配している人にとって現在の法的環境が問題なのは、地域社会が大手テクノロジー企業や政府が関わる実験場となるのを本質的に認めているからだ。

ちょうど先月である2021年4月、世論の圧力によって、ニューヨーク市警本部はDigidog(デジドッグ)という非常に控えめな名前のロボット犬の使用停止を余儀なくされた。市民からの反発のため、テクノロジー犬が一時帰休措置にされた後の3月に、ニューヨーク市警は公営住宅でそれを使用した。予想通り、これに端を発して、ニューヨークでのこうしたテクノロジーの当面の扱いに関する議論がもたらされた。

ニューヨーク・タイムズはこれを目の当たりにして「過度に攻撃的な治安維持活動の悲惨な例として批判者の注目を集め、ニューヨーク市警はこのデバイスを予定よりも早く返却することになるだろう」と的確に表現した。

これらのバイオニックドッグは犯罪を減少させるのには十分だが、それを使おうとしている警察は、まずは多くの広報活動を行う必要がある。警察は積極的かつ前向きにCCOPSの議論に参加し、明日、翌月、そして、今から数年後に使用する可能性があるテクノロジーの詳細やそれら(およびロボット)の使用方法を説明することから始めるべきだろう。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:Boston Dynamics警察アメリカ米国自由人権協会コラム

画像クレジット:Harry Murphy / Getty Images

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(文:Aron Solomon、翻訳:Dragonfly)

【コラム】欧州のAIに必要なのは過剰な規制ではなく、戦略的なリーダーシップだ

編集部注:本稿の著者Mark Minevich(マーク・ミネビッチ)氏はGoing Global Venturesの社長であり、Boston Consulting Groupのアドバイザー、IPsoftのデジタルフェロー。また世界的なAIの専門家で、デジタルコグニティブストラテジスト、ベンチャーキャピタリストでもある。

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EU委員会は最近、緊急の必要性があるとして、AIを規制するための新たな厳格なルールを提案した。AI規制の世界的な競争が正式に始まる中、EUはAIの規制方法についての詳細な提案を発表している。AIの一部の使用を明確に禁止し「高リスク」とみなされる事柄を定義し、人々の権利や安全を脅かすAIの使用を禁止する計画だ。

欧州委員会のMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベステアー)副委員長が「人工知能に関しては、信頼はあったらいいなというものではなく、なくてはならないものです」と述べた心情には誰もが同意できるものだが、信頼を確保するための最も効果的かつ効率的な方法は規制なのだろうか。

委員会ではかなり深い見識が得られたが、私が最も同意できたことは、規制されたAIの目指すところは人間の幸福度を高めることであるべきだという主張だ。しかし、規制によってAIシステムの実験や開発を過度に制約するべきではない。

高リスクのAIシステムは、常に変更不可能な人間による監視・制御メカニズムを内蔵すべきである。人との対話やコンテンツの生成を目的としたAIシステムは、高リスクであるか否かに関わらず、特定の透明性の義務を負うべきである。また、公的にアクセス可能な場所に設置されるAIベースの遠隔生体認証システムは、EUまたは加盟国の法律によって認可されたものでなければならず、重大な犯罪やテロの防止、検知、調査の目的に資するものでなければならない。

AIと人類のパートナーシップ

欧州で制定された一連の法律と法的枠組みは、過去10年間にGDPR規制が生み出した効果と同様に、世界中のAI規制に大きな影響を与えることだろう。しかしこれらの法律は、EU全体の行き当たりばったりの規制方法から、単一で共通の分類への移行をサポートするものになるのだろうか?

私は、中国や米国が躍進する一方で、EUのAI開発はこの規制により廃れてしまうと考えている。人工知能のユースケースやイノベーションが制限され、EUは世界的に技術的に劣位に置かれることになるだろう。米国では、企業の収益性と効率性を最大化するためにAIが最適化されている。中国では、政府が権力を維持して国民を最大限支配するために、AIが最適化されている。EUの過剰な規制環境は、EUのさまざまな機関での規制が矛盾し始めると、完全なカオスに陥るだろう。

EUの企業家精神への悪影響

EUが米国や中国にAI競争で負けているのは、EUにおけるAIへの投資不足が大きな要因だ。現在、EUの居住者数は約4億4600万人、米国の居住者数は約3億3100万人だが、EUの2020年のAIへの投資額は20億ドル(約2178億8100万円)だったのに対し、米国の投資額は236億ドル(2兆5710万円)だった。

もしEUが積極的な規制と資金不足を推し進めれば、EUはAI規制において世界的なリーダーシップを享受することにはなるが、多くのヨーロッパの起業家が、よりAIに優しい国でスタートアップ企業を立ち上げるようになってもおかしくない。

イノベーションや起業家に優しいEUを実現するためには、AIのパイオニアが先導する共同ネットワークを作る必要がある。

一方、他の国々は、EUが厳格な規制を推し進めていることを利用して、イノベーションを促進し、世界のテクノロジーの未来をよりしっかりと作り出すだろう。最近の世界銀行の報告書によると、2019年にデータコンプライアンスに関する調査を開始したのは、北米ではわずか12%だったのに対し、EUでは38%だったという。企業にとってこれほどまでに厳しく厄介な負担を強いる政策では、イノベーターや起業家たちが世界でよりビジネスに適した地域に移動し始めても不思議ではない。

規制は降格を招く

今回の規制案では、違反した場合、最大2000万ユーロ(約26億6100万円)、またはAIプロバイダーの年間総売上高の最大4%の罰金が科せられることになっている。これまでのEUの法律とその後のデジタルイノベーションの欠如を考慮すると、この規制案はEU圏におけるデジタルイノベーションと導入の慢性的な停滞を引き起こすだろう。

つまり、これらの規制が法制化されれば、EUはパイオニアになるどころか、ラガードになってしまうのではないだろうか。AIの真の可能性を明らかにする「本当の」ユースケースはまだ登場していない。リスクの高いユースケースに対する大規模な官僚主義は、起業家精神やボトムアップのイノベーションの努力を削ぐことになるだろう。歴史的に見てもEUは不況に向かっている傾向にあり、今はイノベーションを阻害する時ではない。

グローバルAIに人間の顔を持たせ、その価値を示すべき

AIが広く受け入れられるためには、AIが人々の問題や課題の解決に役立つということを示す人間の顔が必要だ。私たちは、事実に基づいた魅力的なストーリーを強調し、その背後にいる実在の人物を見せなければならない。国民全体がAIの可能性を受け入れるためには、自分たちと同じような人がAIの良さの恩恵を受けている姿を目にする必要があるのだ。

AIの資金調達とは、何よりもまずスタートアップ企業の資金調達のことを指す。スタートアップ企業は、破壊的技術の発見や開発と、一般の人々による日常的な使用の橋渡しをする。欧州ではすでにかなりの計画が立っているが、これを加速させなければならない。

欧州のベンチャーキャピタルは、米国のモデルに比べて遅れている。急成長しているスタートアップ企業は、ほとんどが米国やアジアの投資家に依存している。そのためには、機関投資家側の投資制限の緩和など、投資文化を再考し、ダイナミックな投資環境を賢明に推進する必要がある。

今、私たちは「ムーンショット」の時代に生きている。起業家や科学者がこれまで以上に前進することができる時代だ。次の経済で競争するためには、イノベーションを10倍にすることを目標とした新しいイノベーションに挑戦する必要がある。

このレベルに到達するためには、段階的な最適化は役に立たない。大きなイノベーション、つまりムーンショットに焦点を当てる必要がある。リスクを取ることが許容され、大規模でリスクのあるアイデアを実行することが普通になるべきだ。

イノベーションと起業家に優しいEUを作るためには、AIの先駆者たちが先導する協力的なネットワークを作らなければならない。起業家やデータサイエンスのリーダーたちは、長期的な視点で世界を良くするためのAI for good(社会貢献のためのAI)に注力し、規制緩和を提唱しなければならない。そのためには、主要な研究機関、企業、公共部門、市民社会からの参加者で構成される「社会貢献のためのAI」に関するグローバルなAIパイオニア協議会を設立し、ベストプラクティスについての共通理解を深める必要がある。

AIはもはや、企業システムや社会インフラを最適化するためのツールではなく、その可能性は、気候変動や制御不能なパンデミックなど、人類が直面するさまざまな危機を解決するための広範囲なものとなっている。世界中のすべての超大国において責任あるAI、そして「社会貢献のためのAI」の導入ができれば、これらの危機を解決することができる。

EUが世界の中でイノベーションを阻害し、起業家精神をくじく地域になるわけにはいかない。EUは、過剰な規制ではなく「社会貢献のためのAI」に基づいたAIの戦略的リーダーシップに移行しなければならない。過剰な規制の道は、停滞の深みにつながる。EUの未来をどうしたいかを決めるのは、EU自身にかかっている。

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カテゴリー:人工知能・AI
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(文:Mark Minevich、翻訳:Dragonfly)

フロリダ州の「禁止の禁止」令はSNS企業の言論の自由の試金石となる

フロリダ州のRon Desantis(ロン・デサンティス)知事は、ソーシャルメディア企業が州議会候補や報道機関による利用を禁止する行為を制限する法案に署名した。これは企業に与えられた言論の自由の権利に真っ向から挑戦するものだ。同法が法廷で異議を唱えられることはほぼ確実であり、違憲であるだけでなく連邦法とも直接衝突する。

その法律、フロリダ上院法案7072は、テック企業とソーシャルメディア企業に新たなチェック項目をもたらす。いくつか例をあげると以下のとおりになる。

  • プラットフォームは州議会候補の利用を禁止あるいは優先度を下げてはならない
  • プラットフォームは一定の規模要件を満たす報道機関の利用を禁止あるいは優先度を下げてはならない
  • プラットフォームは管理プロセスに関して透明でなくてはならず、ユーザーに管理行為の通知を送る必要がある
  • ユーザーおよび州は同法に違反する企業を訴訟する権利をもつ。一部の違反に対しては1日当たり最大25万ドル(約2700万円)の法定罰金が課される。

この法律が該当企業の管理手続きに影響を与えることは明らかだ。しかし、そうすることが検閲(政府による実際の検閲であり、しばしばこの用語が使われる一般的概念における制約のことではない)につながるかどうかは定かではない。明白なケースであれば、上院法案7072に対する法的行為によって強制される可能性は高い。

これに関する状況の前例と分析は膨大な数に上るが「ソーシャルメディアによる管理プロセスが憲法修正第1項によって保護されるかどうか」の問題はは未解決だ。法学者や判例は強く「イエス」に傾いているが、Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)が例示できるような決定的な前例は存在しない。

この言論の自由論争の要点は、ソーシャルメディアは新聞や出版社とは大きく異なるが、政府の介入からは概ね同じように憲法によって保護される、という主張に始まる。「言論の自由」は驚くほど自由に解釈される用語であるが、もし企業がお金を使うことがアイデアの保護された表現の1つであるとみなされるなら、その同じ会社がコンテンツを公開するか否かのポリシーを適用することも同様であるべきだと容易に想像できる。もしそうであれば、当局は保護されない言論の非常に狭い定義(満員の劇場で「火事だ」と叫ぶことなど)を越えて介入することは禁止される。これはフロリダ法の憲法に基づく根拠を崩すものだ。

もう1つの衝突の相手は連邦法、具体的にはかなり話題になった通信品位法230条で、企業を発信するコンテンツの責任から守る(代わりにクリエイターが責任を持つ)ものだ。さらに、企業自身の選んだルールに基づいてコンテンツを削除することも選択できる。同法の共同提起人であるRon Wyden(ロン・ワイデン)上院議員(民主党・オレゴン州)が指摘するように、これは企業に盾と剣の両方を与え、彼らはそれを使ってプラットフォームにおけるリスキーな発言と戦うことができる。

しかし上院法案7072は、その剣と盾の両方を奪う。誰を管理できるのかを制限し、さらには残された管理行為に対する法的行為に関する新たな条項を加えている。

連邦法と州法とはしばしば矛盾をきたし、両者を調停する方法の教科書は存在しない。一方では、州で合法化されているマリファナ店舗や栽培者が連邦当局の手入れを受けている。もう一方では、強力な州レベルの消費者保護法が、もっと弱い連邦法に先んじらずにいる。なぜならそうすることが人々を危険に晒すからだ。

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第230条については、誰が誰を保護しているのか容易にはわからない。フロリダ州の現行州政府は「真のフロリダ人」を「シリコンバレーのエリート」から保護していると言っている。しかし、そんなエリートたち(率直に言ってまさしくそのとおり)はこれを、明白な政府の勇み足であり、文字どおりの検閲であると主張するだろう。

こうした強力な法的異議申し立ては、影響を受ける企業からの必然的な訴訟を引き起こし、おそらくその法律が発効される前に提起され、覆されることを目標とするだろう。

興味深いのは、同法の影響を受けないであろう2つの会社は、世界で最も大きく最も妥協しない会社、Disney(ディズニー)とComcast(コムキャスト)だ。なぜだろうか?それはこの法律には、一定規模の「テーマパークまたはエンターテインメント集合施設を所有する」企業に対する特別免除条項があるからだ。

そう、この法律にはネズミの形をした穴があり、Universal Studios(ユニバーサルスタジオ)を所有するComcastは、たまたまそこにぴったりはまっただけだ。注目すべきはこれが修正条項として付け加えられたことであり、州内の二大雇用者が、自分たちのいかなるデジタル財産に対してでも新たな責任を負わされるアイデアを喜ばなかったことが推察される。

地元献金企業に対するこの露骨な迎合は、同法の推進者たちをエリートとの正義の戦いで倫理的に不利な立場に追い込むものだが、その効果も、数カ月後に現在起草されているであろう訴訟が起きた時には、上院法案7072対する禁止命令が施行意味をなくすだろう。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:フロリダSNS言論の自由

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

建築学生向けサービス「BEAVER」を運営するArchiTechが3500万円を調達、利用者数3000人突破

建築学生向けサービス「BEAVER」を運営するArchiTechが3500万円を調達、利用者数3000人突破

設計作品共有・建築ソフト学習・就活支援などを包括する建築学生向けサービス「BEAVER」(ビーバー)を提供するArchiTech(アーキテック)は5月24日、第三者割当増資による総額3500万円の資金調達を5月17日に実施したと発表した。引受先はTHE SEED。

調達した資金は、学生ユーザーのさらなる増加と定着を図るためのマーケティングとサービス開発体制、また企業とのマッチングを生み出し続けるためのBtoBサポート体制の構築にあてるとしている。

BEAVERは、「建築学生に必要な全てがここに。」をテーマに、建築を志す学生が学生期間中常に傍らにおいて使えるウェブサービスとして2018年11月にリリース。2021年5月現在で利用ユーザー数は3000人を突破し、日本最大級の建築学生コミュニティとなっているという。

同サービスでは、建築ITソフトのチュートリアル学習サービス、自身の設計作品の投稿や全国の学生の作品を閲覧できる作品共有サービス、自身の実績をまとめたウェブポートフォリオを基に企業とのマッチングを図る就活支援サービスを提供している。

2018年11月設立のArchiTechは、「愛される建築が生み出され続ける世界を実現する」をミッションに掲げる建築系スタートアップ。BEAVER、建築学生と建築系企業のマッチングサービス「BEAVER CAREER」(ビーバーキャリア)、建築CGイメージや3Dモデルの制作を行う「THE PERS」(ザ・パース)などの事業活動、またデザイン評価の可視・定量化に関する京都大学の共同研究事業を行っている。

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カテゴリー:EdTech
タグ:ArchiTech(企業)オンライン学習 / eラーニング / オンラインレッスン(用語)建設 / 建築(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

韓国のRiiidはソフトバンクの支援を受けてAIベースの学習プラットフォームをグローバルに拡大する

「AIが教育の世界を食べている」。ソウルを拠点とするRiiidの共同創業者でCEOのYJ Jang(YJ・チャン)氏は、自分のLinkedInのプロフィールにそう書いている。米国時間5月24日、AIを利用して学生のテスト対策学習などをパーソナライズするRiiidが、AIが教育を食べるプロセスのプレイヤーとして地位を確立するための大型資金調達を発表した。

Riiidは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2のみから資金を調達する1億7500万ドル(約190億2000万円)のエクイティラウンドを完了した。

EdTechが好調な中での今回の資金調達となった。2020年にコロナ禍で学習がリモートに移行し、より良いツールを開発して教育市場に提供するチャンスが注目されたことを受けて、この分野の多くのスタートアップが多額の資金を調達してチャンスに挑戦している。Riiidは調達した資金で海外へ進出し、製品を拡充する計画だ。

Riiidは評価額を明らかにしていないが、このラウンドはこれまでで最大の規模で、同社のこれまでの調達金額の合計は2億5000万ドル(約271億7500万円)となった。これはEdTechの世界ではかなり大きい金額だ。

Riiidは主にSantaというTOEIC L&R対策アプリで有名になった。このアプリはこれまでに韓国と日本で250万人以上の学生に利用されている。英語のネイティブ話者でない場合、英語が使われている大学を志望する際にTOEICのスコアを求められることがよくある。

Riiidは他社との協力でTOEIC以外の試験対策にも乗り出している。Kaplanとの協力による韓国の学生向けのGMAT対策、教育サービスを各国に合わせて調整し提供するConnecME Educationとの協力によるエジプト、UAE、トルコ、サウジアラビア、ヨルダン向けACT対策、ラテンアメリカの大学受験生向けAIベースツールの開発などだ。ACT対策の開発の前には、ACTのCEOだったMarten Roorda(マーテン・ローダ)氏がRiiidの国際部門であるRiiid Labsに「エグゼクティブ・イン・レジデンス」として加わるとRiiidが発表していたため、ACT対策アプリを他のマーケットにも拡大するかもしれない。

同社は大学入試対策に加え、職業訓練アプリも開発している。不動産業者試験対策のSanta Realtorや保険代理店試験対策ツールを韓国で展開している。

EdTechがビジネスとして成長して全体の信頼性が高まり、対面での学習が一時的に中断したことによって生じたギャップを緊急に埋める必要がある中で、Riiidは成長してきた。AIをプラスアルファの要素として導入するのは、珍しいことではない。多くの企業が、1つで全員に対応する画一的なモデルにコンピュータビジョンや自然言語処理、機械学習の進化を取り入れて、エクスペリエンスをパーソナライズしている。ここで注目されるのは、Riiidが知的財産を考慮した研究開発を多く手がけてきたことだ。同社によれば、国内外で103件の特許を出願し、そのうち27件は取得済みだという。

RiiidのCEOであるチャン氏は発表の中で「Riiidは教育をAIで変革し、教育機会を真に民主化することを目指しています。今回の資金調達は我々が業界の新しいエコシステムをつくるジャーニーの始まりで、我々はグローバルなパートナーシップでこのミッションを実現していきます」と述べた。

ソフトバンクにとってはEdTech企業への大型投資の1つだ。他にはKahootに2億1500万ドル(約233億7000万円)を投資し、インドのUnacademyやブラジルのDescomplicaにも投資している。Riiidによれば、このラウンドはソフトバンクにとって教育アプリ用AI分野に特化した初の投資だったという。

SoftBank Investment AdvisersのマネージングパートナーであるGreg Moon(グレッグ・ムーン)氏は「Riiidは画一的なアプローチからパーソナライズされた指導へという教育におけるパラダイムシフトを牽引しています。AIと機械学習を活用したRiiidのプラットフォームは、教育関連企業、学校、学生にパーソナライズされたプランとツールを提供し、学習機会を最適化します。我々はYJやRiiidのチームと協力し、世界中で質の高い教育を民主化する目標を支援できることを喜んでいます」と述べている。

カテゴリー:EdTech
タグ:Riiid韓国ソフトバンク・ビジョン・ファンド資金調達AI

画像クレジット:Ivan Pantic / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Kaori Koyama)

グーグルが手話認識技術を開発、日本財団らが手話とろう者への理解促進を目指した手話学習オンラインゲームをベータ公開


公益事業をサポートする社会貢献財団「日本財団」は5月24日、香港中文大学関西学院大学Googleの協力を得て、手話学習オンラインゲーム「手話タウン」のベータ版を公開した。

手話タウンでは、PCカメラの前で手話を表現することで、手話が公用語の架空の町「手話タウン」を旅しながらアイテムを集めていく。学習した手話で正しく表現できているかを、AI技術を使って確認できるというわけだ。

手話学習者であれば、手話が単なる手の動きだけでなく、顔の表情、頷き、上半身を使った身振りなどを交えたものであるということを認識しているが、これまでの手話認識モデルは手の形と動きのみにフォーカスした認識技術にとどまっていた。

また、PCに搭載しているカメラは一般的に2D(平面)認識しかできず、奥行きのある立体的な手話の動作を認識するには専用カメラや認識を容易にする手袋といった特別な設備が必要だったため、広く普及させるのが困難であった。

しかし、今回の手話タウンプロジェクトでは、2Dしか認識できない一般的なカメラでも立体的な手話の動きを、上半身、頭、顔、口も含めて認識できる機械学習モデルを開発。日本と香港で手話を日常的に使用しているろう者の手話映像データを収集し、学習させることで、手話学習者が正しく手話を表現できているかの判断を可能にした。

今回、香港中文大学はプロジェクト全体の日本財団との共同統括、手話言語学における学術的見地からの監修、手話データの収集、ろう者に関する知見の提供を、関西学院大学は日本手話の学習データ収集とろう者に関する知見の提供、Googleはプロジェクトのコンセプト立案、AIによる手話認識技術の研究開発をするといった役割を担う。日本財団は、手話・ろう者についての知見の提供ならびに開発に必要な資金の提供を行っている。

誰もがスマホを持ち歩いていることから、ろう者に対しても「その場で入力したテキストを見せれば良いのではないか」と、健常者は考えるかもしれないが、生まれつき耳が聴こえない場合、文字を音として認識できず、理解が難しい場合が多い(「ろう児はどのように文字習得をするか」)。

その点、手話であれば、日常的に使っているため、一瞬で理解できる。そのことからも、2006年には国連障害者権利条約で「手話は言語である」と明記され、国内でも2011年には障害者基本法で手話の言語性が認められたが、手話とろう者への理解は未だ十分に浸透していない。

とはいえ、コロナ禍でひんぱんに行われる政府会見で手話通訳者を見る機会が増えたことから、手話への関心は高まりつつある。今回の手話タウンプロジェクトは、これを好機ととらえ手話やろう者への理解促進を図る目的で開発された。

手話タウンでは、言語を英語、日本語、中国が(繁体字)から、手話言語を日本手話と香港手話から選択可能。9月23日の手話言語の国際デーに正式公開を目指し、公式サイトにおいてフィードバックを募集している。

なお、基盤となっている手話認識技術はTensorFlowを活用し3つの機械学習モデル(PoseNet、Facemesh、ハンドトラッキング)を組み合わせており、ソースコードはオープンソースとして公開している。これにより、世界中の開発者や研究者が他の手話でも同様の認識技術を容易に開発することを可能にしているそうだ。

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手の動きを追跡するGoogleのアルゴリズムで手話を認識できるか

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クリエイターの収益化を可能にする「リンクインバイオ」ホームページビルダーのBeaconsが6.5億円調達

モバイル用ランディングページビルダーを提供するBeacons(ビーコンズ)が、600万ドル(約6億5000万円)のシードラウンドを実施した。同社はクリエイターが自分のソーシャルメディアのプロフィール欄を通して収益を上げられるようにするというビジョンを提唱している。Neal Jean(ニール・ジーン)氏、Jesse Zhang(ジェシー・ゾン)氏、Greg Luppescu(グレッグ・ルペスク)氏、David Zeng(デビッド・ゼン)氏が共同で創業したこの会社は、ソーシャルメディアを利用する人が自分のフォロワーに表示することができる、モバイルに最適化された単一のリンクハブを提供する。

競合他社のLinktree(リンクツリー)同様に、Beaconsは、TikTok、Instagram、Twitterのプロフィール欄から他のサイトにリンクする方法を提供し、同時にフォロワーに対して寄付やアフィリエイトリンクなどを紹介する。こうしたリンクインバイオ(プロフィール欄のリンク)分野で競う企業には、他に Shorby(ショービー)Milkshake(ミルクシェイク)Tap.bio(タップバイオ)Link in Profile(リンクインプロフィール)bio.fm(バイオfm)、そしてCampsite(キャンプサイト)などがある。

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Beaconsは、Y Combinatorの2019年夏クラスに参加し、2020年9月にプライベートベータ版を開始した。Andreessen Horowitzがシードラウンドを主導し、Atelier VenturesThe ChainsmokersのMantis Fund、Night Media Ventures、ブラジルのeスポーツグループであるLOUDggが参加している。

Beaconsは、今回の600万ドルのシードラウンドをエンジェルラウンドで調達していた60万ドル(約6500万円)に加えることで、同社はエンジニアやデザイナーを採用し、初めて創業を経験した4人の小さなチームを成長させることができる。

Beaconsの共同創業者でCEOのニール・ジーン氏は、TechCrunchの取材に対して「当社がLinktreeと大きく異なる点は、クリエイターが自分のページを無料でカスタマイズでき、無料プランでもより多くのオプションを提供していることです」と語った。

「【略】クリエイターのみなさんは、自分のウェブサイトの見栄えをとても気にしていますので、このやり方はクリエイターのみなさんが望む機能を提供して、私たちの市場でのシェアを拡大するための良い方法だと思っています」。

ソーシャルメディア企業たちは、クリエイターを自社のプラットフォームや今後の収益化スキームに囲い込むため、特に個々のコンテンツへの埋め込みリンクにはあまり熱心に対応していない。また、ユーザーのプロフィールに掲載できるURLを1つに限定しているところも多く、クリエイターは1つのリンクの価値をを最大限に高める必要がある。当然ながらBeaconsは、多くのソーシャルプラットフォームの制限的なデザインが、クリエイターがコンテンツから簡単かつ柔軟に収益を上げる可能性を妨げていると主張している。

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ジーン氏は「まず手始めに、クリエイターが使えるさまざまな機能を開発していますが、長期的には、多くの人がその上で構築することができるプラットフォームやエコシステムにしていくことが、よりスケーラブルな方法だと考えています」という。

「現在は、コンテンツ制作者にとってのWix(ウィックス)やSquarespace(スクエアスペース)のような存在だと思いますが、将来的には、クリエイターにとってのShopify(ショッピファイ)のような存在になりたいと考えています」。

Beacons上での構築

Beaconsを使う際に、ユーザーは無料とプレミアムの2つのプランを選ぶことができる。月額10ドル(約1087円)の「アントレプレナー」(起業家)プランは、独自ドメインのサポートや、Beaconsページを構成するリンク、テキスト、画像のスロットである「ブロック」の追加オプションなど、検討に値する機能を提供している。

画像クレジット:Beacons

Beaconsは、プレミアム収入以外にも、マネタイズに特化したいくつかのブロックで売上の一部を受け取ることで収益を上げる。たとえばショッピングに対応したTikTokフィード、動画や電子書籍のデジタルストア、クリエイターが自分のフォロワーにカスタムコンテンツを直接販売できる「リクエスト」ブロックなどだ。Beaconsの無料プランでは取引に9%の手数料がかかるが、プレミアムプランでは5%に減額される。

Beaconsで構築されたランディングサイトは、高度なカスタマイズ性を持っていて、メディアリッチでキュレーションされたホームページがあったMyspace(マイスペース)の時代を彷彿とさせる。同社は最近「コミュニティブロック」と呼ぶブロックを追加した。これは、たとえばTikTokのようなコラボレーションが盛んなプラットフォームで頻繁にチームを組む可能性のあるコラボレーターたちに、スポットライトを当てるための特別な場所だ。現在、Sia(シーア)、Green Day(グリーン・デイ)、Russell Brand(ラッセル・ブランド)などの有名人が登録されている。

Beaconsはまた、メールやSMSによるモバイルマーケティングや、クリエイターがオーディエンスを知るための分析機能にも対応している。同社によると、2020年10月のローンチ以来、ユーザー数は毎月70%ずつ増加しているという。

「現在、コンテンツ制作者と消費者は、既存のソーシャルプラットフォームが提供するもの以上の、高度な期待を抱いています」とジーン氏は調達時の声明で語った。「【略】Beaconを使えば、クリエイターは、見た目が良く、共有可能で、最終的に収益を生むことのできるカスタムドメインにオンライントラフィックを誘導することで、自分の将来をコントロールすることができるのです」。

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画像クレジット:Beacons

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:sako)

強力なL5バンドを使う次世代GPS対応の低コスト省エネ型チップ開発のOneNavが22.8億円調達、米政府系企業と開発契約

GPSは、エンドユーザーは簡単に使えるが、それを設計するエンジニアにとっては課題が果てしないSF的なテクノロジーの1つだ。今やGPSは現代人の生活の中核にあり、Amazonの荷物の配達から、クルマやトラックの運転、国立公園で行なうトレッキングまで、私たちは数メートルの精度で監視する地図上のピンに依存している。

誕生から数十年も経ったGPSの技術は、現在、待望の近代化が進められている。米国やヨーロッパ、中国、日本などは、L5バンド(1176MHz)と呼ばれる強力な信号を使える新世代のGNSS衛星を設置してきた(GNSSは、米国の規格であるGPSなどを含む衛星航法システムの総称)。そのため第1世代のL1バンドの衛星と違って、もっと正確な地図上の位置を指し示すことができ、特に都市部など正確な見通し線が得ることが難しい場所で役に立つ。米国政府の説明によると、L5は「安全な輸送やその他の高性能なアプリケーションの厳しい要求を満たす」よう設計されている。

衛星を軌道上に打ち上げるのは比較的簡単でも、それらの信号をスキャンして座標を三角法で求める電力効率の良いチップを作るのは難しい。これまでチップのメーカーは、L1とL5の両方を同時に取り出すハイブリッドなチップを開発してきた。Broadcomは最近、同社のハイブリッドチップの第2世代機を発表した

しかしここでご紹介するOneNavは、製品の設計に関してまったく違う意見を持ち、そのことを社名でも表現している。同社は新旧の信号が混在するハイブリッドチップを避け、1つのチップがL5の単一バンドをモニターする低コストで省エネ型のデバイスを開発しようとしている。つまり社名は、1つの(one)航法(nav)で十分、ということなのだ。

同社は米国時間5月20日、Googleの親会社Alphabetのファンドだけで運用されているVCであるGVのパートナーKarim Faris(カリム・ファリス)氏がリードするシリーズBのラウンドで、2100万ドル(約22億8000万円)を調達したことを発表した。その他の投資家は、前のラウンドで投資したNorwestのMatthew Howard(マシュー・ハワード)氏とGSR Venturesだ。2年前に創業したOneNavの総調達額は、これで3300万ドル(約35億9000万円)になる。

CEOで共同創業者のSteve Poizner(スティーブ・ポイズナー)氏は、測位ビジネスの古顔だ。彼の前の企業SnapTrackは、GPSを利用するモバイルデバイス用の位置技術で、それはドットコムバブルの最盛期だった2000年の3月にQualcommが10億ドル(約1087億5000万円)の株式払いで買収した。共同創業者でOneNavのCTOであるPaul McBurney(ポール・マクバーニー)氏も、やはりGNSSの世界で数十年を過ごし、彼のLinkedInのプロフィールによると、最近までAppleに在籍していた。

OneNavのCEOで共同創業者のスティーブ・ポイズナー氏(2009年撮影、画像クレジット:David McNew/Getty Images)

L5バンドの衛星が最近特に話題になってきたので、彼らは起業のチャンスだと考えた。市場とL5技術の現状を見ると、他社よりも先を進み、レガシーなGPS技術を捨てるべきだと考えられた。その彼らの方針によって、同社のチップは「サイズは旧システムの半分と小さいが信頼性と性能はずっと高い」とポイズナー氏は主張する。それにより「位置技術をもっと多くの製品に導入したい」という。

彼は、GPSのアップグレードとワイヤレスのアップグレードを比較して、次のように語る。「L5の衛星があればL1の衛星はもう必要ありません。しかし5Gでは、依然として4Gが必要です」。L5バンドのGPSは、それまでのGPSにできたことをすべて、もっと良くできる。一方ワイヤレスの技術では、新技術が旧技術を補完する形でピーク時性能を提供する場合が多い。

ただし、米国政府はL5の信号をまだ「運用前」だと考えている。なしている。米国のGPSシステムはわずか16基の衛星が信号をブロードキャストしているが、2020年代中に目標の24基になる。しかしその他の国々もL5のGNSS衛星を展開しているため、米国政府の見方では未然形でも、消費者にとっては現状でも十分かもしれない。

ポイズナー氏によると、OneNavの目標は「GNSS分野のArm」になることだ。世界中ほとんどすべてのモバイルデバイスがArmの設計によるチップを使っているように、OneNavはL5バンドGPSチップのさまざまな設計を行い、それを他のさまざまなメーカーの製品がSoCとして組み込む。そしてそれによって「彼らのシリコンをベースとするハイパフォーマンスな位置エンジンを、彼ら自身の製品に組み込めるようになる」。

本日の同社発表によると、OneNavによる設計の最初の顧客は、米国の諜報分野のベンチャーキャピタルで事業開発団体でもあるIn-Q-Telだ。同社は曰く「今や弊社は米国の政府機関と開発契約を結んだ」という。ただし同社の顧客評価部門は2021年末ごろに完了し、OneNavの技術が実際にエンドユーザーのデバイスに搭載されるのは2022年後期だ。

位置追跡は今やベンチャーキャピタルの大きな投資対象分野であり、GPSの外縁に多様な技術の企業が群がって、GPSに欠けてい細部的技術や機能性を提供している。ポイズナー氏によると、OneNavで開発しているものに対しても、それを補完する技術として、そういう多様な周辺的技術が育つことを期待したいという。「GPSがもっと良くなれば、そういった拡張的システムに対するプレッシャーも少なくなります。ただし、マンハッタンのダウンタウンや地下鉄の中など、GPSが使えない場所は依然として残るでしょう」とポイズナー氏は語る。

ポイズナー氏にとっては、起業家精神へのささやかな復帰だ。OneNav以前の彼は、カリフォルニア州の政治に深く関係していた。SnapTrackをQualcommに売却した数年後に、彼は州議会議員になろうとして失敗した。しかし以前の、Arnold Schwarzenegger(アーノルド・シュワルツェネッガー)知事のときには、2007年に州の保険庁長官に選挙で選ばれた。2010年には知事に立候補したが、共和党の予備選で、長年eBayのトップだったMeg Whitman(メグ・ホイットマン)氏に負けた。2018年には無所属で、州保険庁長官の座を再び狙ったが、負けた。

OneNavはパロアルトに本社があり、30名ほどの社員がいる。

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画像クレジット:GPS.gov / U.S. Government

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(文:Danny Crichton、翻訳:Hiroshi Iwatani)

AIアシスタント「Pyrenee Drive」で交通事故撲滅を目指すPyreneeが2億円を調達

AIアシスタント「Pyrenee Drive」で交通事故撲滅を目指すPyreneeが2億円を調達

自動車の運転をより安全で快適にする車載機器「Pyrenee Drive」(ピレニードライブ)の開発を続けているPyrenee(ピレニー)は5月25日、総額2億円の資金調達を発表した。引受先は、フューチャーベンチャーキャピタル、菊池製作所、井伸之氏(クオンタムリープ代表取締役会長)、複数のベンチャーキャピタル、事業会社、個人投資家。

Pyrenee Driveは、交通事故の最大原因とされるドライバーのヒューマンエラーを回避するための装置。搭載されたAIが、道路状況の確認と危険予知を行い、事故の可能性を感知すると、音声と画面表示で即座にドライバーに警告する。オンライン型ドライブレコーダーも搭載するほか、後付け機器なのでどんな車にも装着できる。ナビゲーションなどの機能も、オンラインアップデートで追加してゆくとのこと。発売は2022年中を目指している。

AIアシスタント「Pyrenee Drive」で交通事故撲滅を目指すPyreneeが2億円を調達

開発中のPyrenee Driveと画面イメージ

今回調達した資金は、Pyrenee DriveのAIを活用した事故回避機能の強化と、発売に向けたハードウェアの量産設計に使われる予定。今後も調達を続けてゆくという。

Pyreneeは、人間の相棒となる製品を開発、販売するメーカーとして2016年創業。Pyrenee Driveは第1弾製品にあたり、2022年中の発売を目指して開発している。

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