民間弾道飛行での宇宙飛行士の訓練にNASAは期待を寄せる

宇宙を第二の故郷と呼ぶ宇宙飛行士でさえ、初飛行を経験している。NASAは、Virgin Galactic(バージン・ギャラクティック)やBlue Origin(ブルー・オリジン)に委託して宇宙飛行士たちを弾道飛行を体験させ、数々の挑戦的な宇宙計画に備えてもらおうと考えている。これは現在、芽生え始めている民間宇宙飛行業界に新たな巨大市場が開かれることを示唆している。

2020年3月に開かれたNext Generation Suborbital Researchers conference(次世代準軌道研究者会議)で、NASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官が演壇に立ち、NASAが現在民間ロケットの利用を検討しているのは、単にこれまでその可能性が存在していなかったからだと話した。

「それは、つい最近まで私たちが国として所有していなかった能力です」と彼は、Space.comの記事の中で語っている。

だが、現在その能力が確かにあると断言もできない。Virgin GalacticもBlue Originも、宇宙との境目をほんのかすった程度の弾道(準軌道)飛行を実証できただけで、試験飛行や商用飛行となると、まったく別の話だ。

関連記事:Virgin GalacticのSpaceShip2がマッハ2.9で宇宙の淵に到達(未訳)

Virginは既にチケットを発売しているが、客を乗せた初飛行の日程は決まっていない。2020年中に行われる公算は大きいが、信頼できるスケジュールを立て、ミッションの成功を記録しない限り、現時点ではただ熱望しているだけとしか見えない。それが宇宙旅行というものだ。その道の99パーセントは、まだ霧の中だ。

だがVirginにせよBlue Originにせよ、ロケットの打ち上げを請け負うその他の企業にせよ、今後数年以内に、ペイロードや人を乗せる能力を持つ宇宙船の弾道飛行を成功させることは間違いない。NASAが彼らの採用に熱心なのは、そのためだ。

それと同じぐらい避けられない現実として、奇妙に思えるのは宇宙飛行士の訓練をすべて地上で行わなければならないことだ。彼らはさまざまなシミュレーターで訓練を行う。いわゆる「嘔吐彗星」や、彼らが大好きなプールでのトレーニングなどだ。それでも宇宙を体験するには、宇宙に行くしかない。

Commercial Crewのデモミッションで最初にISSへ飛行する予定の宇宙飛行士Bob Behnken(ボブ・ベンケン)とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)。Crew Dragon宇宙船のシミュレーターを操作している。

つい最近まで、それは何億ドルもするロケットの先端に乗ってISSまで飛ぶことを意味していた。またはその昔は、オービターや着陸船で月へ行くことを意味していた。

その準備として可能なことはほんのわずかしかないが、ごく限られた中の1つとして、安価で一時的な宇宙飛行がある。それを実現するのが弾道飛行だ。

ロケットで大気圏外に出て、その結果として数分間の無重力を体験できる環境は、訓練や実験や、その他のこれ以外には軌道上でしか行えない活動にはうってつけだ。NASAはその実現を期待しているのだが、まだ実際の契約には至っていない。

VirginやBlue Originなどの企業は、最初の数回の弾道飛行によりチケットの完売をほぼ確実にしたが、宇宙ツーリズムには産業としての実績はなく、また現在のパンデミックやその後に予想される経済の落ち込みにより、そうした高額商品(または宇宙ツーリズムを提供する能力)は深刻なダメージを受ける恐れがある。そのためこうした政府との定期契約は、弾道飛行の提供や支援を行う企業にとっては、ほぼ間違いなく大きな安心となる。

「これはNASAにとって大きな移行ですが、重要な移行です」とブライデンスタイン長官は言う。この移行は、近年の政府事業がそうしているような、単に民間企業への委託を増やすという程度の話でなく、民間飛行を公式なトレーニングに利用するということだ。飛行は徹底的に安全でなければならないが、ISSへの飛行時と同じ厳格な基準に従う必要もないと長官は述べている。

実際にはNASAが運用しない飛行でのトレーニングやテストが増えることで、新しいミッションの準備が促進される。準備が加速されると同時に、その能力を唯一持っていたNASAによる飛行ミッションに依存するこれまでのようなプログラムの煩雑さが低減される。私は、この件に関する詳しい内容をNASAに問い合わせている。新しい情報が入り次第お伝えする予定だ。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

Netflixの2020年1Q新規加入者数は予測を大幅に上回る1577万人

新型コロナ(COVID-19)パンデミックでほとんどの人が家に閉じこもる中、Netflixが2020年第1四半期で良い業績を上げることは誰もが予想していた。しかし、結果は予想を超えていた。

現在の危機以前、Netflixはこのほど発表された決算時の新規有料加入者を700万人と予測していた。劇的な環境の変化によって、成長が予測を上回ることは明らかだったが、Q1の新規有料会員数は予想の2倍以上となる1577万人の純増だった。これでNetflixの有料会員総数は1億8286万人になった。

一方同社の売上、57.7億ドルと1株あたり利益(EPS)1.57ドルはウォール街の予測とほぼ一致しており、EPSがわずかに予測の1.65ドルを下回った。

投資家宛の書簡でNetflixは、パンデミックが同社の財務状況に与えた主な影響を3つ挙げた。

第一に、会員数の成長は自宅待機のために一時的に加速されている。第二に、海外売上は急激なドル高のために前回の予想を下回る見込みだ。第三に、制作の中断によって、コンテンツのための現金支出が遅れフリーキャッシュフローが改善されたが、一部のタイトルはリリースが一四半期程度遅れることとなった。

いまのところNetflixは、この成長は一時的な急増であり、視聴時間と会員数の成長は、「ウイルス対策の進展によって政府が自宅待機を解除すれば」すぐに減少すると見ている。このため同社のQ2予測の全世界会員数純増は750万人にとどまっている。

世界的経済停滞が映画テレビの制作に与える影響について同社は、Q2における影響は「控えめ」であり、主に字幕翻訳の部分だと言っている。今四半期は、つい最近買付けを発表したKumail Nanjiani(クメイル・ナンジアニ)とIssa Rae(イッサ・レイ)のコメディー “The Lovebirds”(当初は劇場公開の予定だった)やMillie Bobby Brown(ミリー・ボビー・ブラウン)のミステリー、”Enola Holmes”、さらには”Space Force”や”Hollywood”といった新番組も放映される。

「さまざまな国で通常の制作作業を再開できるのがいつになるのか、可能になった時、どのような海外渡航が可能で、さまざまな資源(タレント、ステージ、ポストプロダクションなど)の交渉がどうなるのか誰にもわからない」と投資家宛の書簡に書かれている。「当社への影響は今年の現金支出が減ることだが、これは一部のコンテンツプロジェクトが延期されたためだ。われわれは会員が望んでいるコンテンツを完成させるために全力を尽くしており、新たな映画や番組シリーズをライセンスすることで補っていく」

書簡には、最近の番組の視聴者数も書かれている。これはNetflixが前四半期に発表した “chose to watch” (意識的な視聴)という測定基準(ある番組や映画を2分以上見た人を数える)によるものだ。6400万人もの人たちが “Tiger King“というドキュメンタリーを見た。しかし、Mark Wahlberg(マーク・ウォルバーグ)の最新アクション映画、”Spenser Confidential”(スペンサー・コンスィデンシャル)の8500万人には及ばない。

東海岸時刻4月21日午後4:35現在、Netflix株は時間外取引でやや高とやや安の間を行き来している。これは、あの急激な会員増が投資家の予想通りだったことを示しているのだろう。

アップデート:決算会見の中で最高コンテンツ責任者(CCO)のTed Sarandos(テッド・サランドス)氏は、同社および同社パートナー企業のワークフローが劇的に変化したことについて語った。

「制作、ポストプロダクション、そして会社のオフィスも、今や世界中のリビングや寝室やキッチンに分散している」とサランドス氏は言った。「われわれは驚くべきイノベーションを目撃している。会社封鎖から数時間後、少なくとも数日後に、われわれの制作はリモートで稼働を始め、ポストプロダクションがリモートで進み、アニメーションがリモートで作られ、検討会はバーチャルで開かれ、ライターはバーチャルに集合している」

一方CEOのReed Hastings(リード・ヘイスティング)氏は、パンデミックがNetflixの成長に及ぼす長期的影響が予測不能であることを強調した。

「われわれは「推測する」や「当て推量」という言葉を軽々しく使わない」と彼は言った。「そういう言葉を使うのは多くの人々が困窮していて、先行きがわからないからだ。しかし、インターネット・エンターテインメントが次の5年でもっともっと重要になるのかどうか? そこは何も変わっていない。」

関連記事:Disney+の有料会員数が半年を待たずに5000万人を突破

画像クレジット:Krisztian Bocsi / Bloomberg / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Verizonが新型コロナで利用者が急増するB2Bビデオ会議のBlueJeansを約540億円で買収

Verizon

米国を本拠地とする電気通信事業者のVerizon(ベライゾン)*はB2Bビデオ会議プラットフォームの老舗のBlueJeans Network(ブルージーンズネットワーク)の買収に5億ドル(約539億円)近い金額を注ぎ込んだとウォール・ストリート・ジャーナルがスクープしている。

ベライゾンのスポークスマンは売却価格は5億ドルに近いことは認めたが、正確な金額は開示しなかった。Crunchbaseの記録によると、約10年前の創業以来、ビデオ会議プラットフォームのBlueJeans Networkは、米投資家NEA主導による2015年のシリーズEラウンドで約1億7500万ドル(約189億円)を調達している。

この取引に関するベライゾンのプレスリリースでは「没入型ユニファイドコミュニケーションポートフォリオ」拡大を目的とする、企業グレードのビデオ会議とイベントプラットフォーム買収の正式契約が発表された。

同プレスリリースでは「顧客はベライゾンの高性能グローバルネットワーク上で、BlueJeans Networkの企業グレードのビデオ体験ができるようになる。プラットフォームはベライゾンの5G商品計画の中核にも組み込まれ、遠隔医療、遠隔教育、フィールドサービス業務などの高成長部門でのセキュアでリアルタイムのエンゲージメントソリューションを提供する」としている。

Verizon Business(ベライゾンビジネス)CEOのTami Erwin(タミ・アーウィン)氏は声明の中で「私たちの働き方は常に変化している。企業と公共部門の顧客には、エンタープライズ対応のセキュアで手間のかからない、既存のツールと統合できる包括的な製品スイートが絶対に必要だ」と補足した。「ここ数カ月、あらゆる規模とセクターの事業で、コラボレーションとコミュニケーションは最優先事項になっている。BlueJeans Networkのビデオプラットフォームをベライゾンビジネスの接続ネットワーク、プラットフォーム、ソリューションに組み合わせ、顧客のニーズに応えることを非常に楽しみにしている」と述べている。

この買収は、 新型コロナウイルス感染症(COVI-D19)のパンデミックの影響を受けて世界中のホワイトカラーが自宅で会議に出席するようになったことによるビデオ会議の急増時期に重なる。

ただしここ数週間のビデオ会議の急激なブームで最も名が知られているのは、BlueJeans Networkのライバル企業であるZoomだ。Zoomは最近、同社プラットフォームを利用する1日の会議出席者数は12月の1000万人という控えめな数から、3月には2億人に急増したと発表している。

このような急激な成長と一般ユーザーの利用に伴いZoomには厳格な精査が行われ、その結果、セキュリティとプライバシーの懸念による多数の警告一部には禁止も)が発生した。2020年4月初めに同社は、ユーザーが急増し、その点検により表面化した多数の問題解決に集中するため、商品開発を当面凍結すると発表し、この急成長に多少の陰りが見えている。

単純に利用数のみで比較すると、B2Bに焦点を絞り続けているBlueJeans NetworkはZoomより規模が小さいことには違いない。同社のスポークスマンはTechCrunchに対して、現時点でARRは1億ドル(約108億円)、顧客は1万5000人を超えると語っている(ユーザーの中にはFacebookディズニーも名を連ねる)。

ベライゾンにとって最も関心が高いのは有料ユーザーだろう。これは、新型コロナウイルス感染症の影響によってデジタル化が加速期を迎える遠隔医療、遠隔教育、フィールドサービス業務の領域になる。一方でロイターによると、一般的にキャリアは、パンデミックで増加した使用数を収益に還元できていないらしい。これは新型コロナウイルス危機の間に株価を襲った固定費、負債、市場の混乱が重なった結果である。B2Bツールを買収することは、ネットワークによる収益を増やす一案かもしれない。

BlueJeans NetworkのCEOであるQuentin Gallivan(クエンティン・ギャリバン)氏は声明の中で「BlueJeansの世界クラスの企業向けビデオコラボレーションプラットフォームと信頼のブランドを、ベライゾンビジネスの次世代エッジコンピューティングイノベーションと組み合わせることで、大きな差別化要因を持つ魅力的なソリューションを両社の顧客に提供できる」と述べている。また「当社はベライゾンのチームに加わることに大きな期待を寄せ、ビジネスコミュニケーションの未来はここから始まると確信している!」という。

ベライゾンは4月16日、BlueJeans Networkの創業者と「主要社員」が買収の一環として同社に加わり、BlueJeansの従業員は取引の完了次第、ベライゾンの従業員になると述べた。これは通常の完了条件に応じて、第2四半期になると予測される。

ブルージーンズの共同創業者であるKrish Ramakrishnan(クリシュ・ラーマクリシュナン)氏は以前にもイグジットを遂げた経験がある。自社のスピンアウトの間に、自らも働いたことのあるネットワークの大手Cisco(シスコ)に数社のスタートアップを売却している。

*注:ベライゾンはTechCrunchを運営するベライゾンメディアの親会社でもある。

画像クレジット:David Ramos / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳: Dragonfly)

傘シェアのアイカサが新型コロナ対策第2弾、外出自粛期間中は何日借りてもレンタル料金は70円に

傘のシェアリングサービス「アイカサ」を運営するNature Innovation Groupは4月22日、利用開始から24時間ごとに発生する追加レンタル料金の70円をすべて無料にするサービスを開始した。通常は1日(24時間)の料金が70円で、その後は24時間経過ごとに70円が加算され、レンタル開始後6日後にレンタル料金の総額が420円になると、それ以降は1カ月後まで420円で傘を借りられるサービス。今回の期間限定サービスにより、新型コロナウイルスの蔓延防止のために外出自粛要請が出ている期間は、傘のレンタル料が何日借りても70円となる。

アイカサは4月15日時点で登録ユーザー数が9万2501人、アイカサスポット(傘の設置場所)が850カ所。今回の同社の取り組みは、利用者が追加料金の発生を回避するために返却場所まで外出するリスクを排除するのが狙い。

同社は、新型コロナウイルス対策の第1弾として4月18日からアイカサスポットなどに消毒用アルコールを設置する「#staysafe」プロジェクトも展開しており、4月21日からは都営新宿線沿線に計12カ所、西武新宿線沿線に計24カ所を追加設置している。設置スポットの詳細はアイカサの公式LINEアカウントから参照できるマップで確認できる。

同社では、アイカサスポットの有無に限らず、さまざまなかたちでの協賛企業様を募集中だ。

新型コロナウイルス 関連アップデート

東南アジアでオンライン学習サービスを手がけるManabieが約5.2億円調達、今後は「学校のオンライン化」支援も

「東南アジアではスマホの普及に伴って、これまで質の高い学習へアクセスできなかった子どもたちに良質な学習コンテンツを届けるスタートアップが台頭し始めている。今後求められるようになるのは単に学習機会を提供するだけでなく、オンライン上でもしっかりと学習を継続できる仕組み。その仕組み作りに向けて、もう一度起業をして本気チャレンジしたいという思いが強かった」

そう話すのは教育系スタートアップManabieの代表取締役を務める本間拓也氏だ。

本間氏はイギリス発のEdTechスタートアップ「Quipper」の共同創業メンバーの1人で、同社が2015年にリクルートに買収されて以降も含めて約9年間に渡ってオンライン教育に携わってきた人物。現在は2019年4月にシンガポールで創業したManabieを通じて、ベトナムを中心にオンライン学習アプリやオフラインの学習塾を展開している。

そのManabieは4月22日、さらなる事業拡大に向けて総額約5.2億円(480万ドル)の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社によると今回の資金調達額はエンジェルラウンドとシードラウンドを合わせたものとのこと。日本のエンジェル投資家やベンチャーキャピタルを中心に、国内外の投資家から出資を受けているという。主な投資家リストは以下の通りだ。

  • 本田圭佑氏
  • 梅田望夫氏
  • 有安伸宏氏
  • 松本恭攝氏
  • 福島良典氏
  • 渡辺雅之氏
  • 大湯俊介氏
  • ジェネシア・ベンチャーズ
  • そのほか東南アジアのVCや個人投資家など

Manabieでは今回調達した資金を活用し既存サービスの開発体制の強化を進めるほか、コロナウイルスの影響で「学校のオンライン化」が迫られる教育機関の支援にも取り組む計画だ。

動画レッスン+人によるサポートで継続的な学習を支援

Manabieが手がける「Manabie Basic」や「Manabie Prime」は動画授業をベースとした学習アプリだ。ユーザーはスマホなどを使って動画レッスンを見ながらインプットをし、クイズ形式の演習問題を解くことで知識を定着させていく。人間の先生ではなくバーチャル(アニメーション)のキャラクターによるレッスンという違いはあるものの、仕組み自体は「スタディサプリ」などに近いイメージだ。

今は高校生向けの数学/化学/物理/生物/英語に対応していて、約1000種類の動画レッスンコンテンツ、2万問の問題を提供。今後は中学生向けのコンテンツへの拡張やベトナム以外の東南アジアへの展開も見据えている。

年間50ドル(約5000円)で使えるManabie Basicが質の高い教育コンテンツをリーズナブルな価格で多くの子どもに届けることを目指したものだとすれば、年間250ドルのManabie Primeはそこに人力のサポートを加えることで、オンライン上での継続的な学習を強力に後押しするものだと言えるだろう。

このプランではManabie Basicのコンテンツにプラスして、オンラインコーチとメンターによる支援がついてくる。コーチはユーザーの心のケアや個々に合わせた学習計画の作成などが主な役割で、各生徒が途中で離脱してしまわないようにオンライン上で声かけをしたり相談に乗ったりする。一方のメンターはユーザーがわからない問題に直面した際に家庭教師のような形で質問に答えるのがミッションだ。

「現地の子どもたちは学ぶ意欲が高く学習塾などに通っている子も増えているが、そこに教材や塾のクオリティが追いついておらず、いろいろな負があるのが現状。まずはオンライン上で質の高いコンテンツにアクセスできるようになるだけでも、その状況を大きく変えられる」

「一方でオンライン学習サービスに共通するのが、全体の8割ほどのユーザーは学習が続かないということ。そのユーザーをいかにサポートしていくかが鍵になる。Manabie Primeではコーチやメンターによるサポートを取り入れ『教育版のライザップ』のような形で支援する仕組みを作った。各ユーザーにはコーチから自分用に設定された今日のToDoが送られてきて、コーチやメンターのサポートも受けながら課題に取り組む」(本間氏)

Manabie Primeでは裏側のオペレーションなどにもかなりこだわっているそう。コーチングカリキュラムはスタンフォード大学でコーチング領域を学んだメンバーが開発。それに加えてコーチ用に生徒ごとの進捗状況などが見れるシステムを開発し、どの生徒にどのタイミングで声かけをするのがいいか、サジェストするような仕組みも入れている。

学習アプリを使ったオフラインの学習塾も展開

また同社では学習を継続する仕組みとして、学習アプリだけでなくリアルな学習塾「Manabie Hub」も手がける。ここでは集団学習塾のような形で講師が授業をするのではなく、各生徒がスマホやタブレットからManabieの学習アプリを開き、自分に最適化された課題を自分のペースで黙々と進めていく。

最近は日本でもタブレット学習アプリを取り入れた学習塾が増えてきているが、まさにそれと同じ仕組みだ。教室では1人の講師の代わりにコーチがいるので、何か課題にぶつかった際は彼ら彼女らにサポートを求めることができる。

本間氏によるとベトナムではまだまだ集団型の学習塾が主流で、授業についていけない生徒が学習を継続するのが難しいという課題が残っているそう。Manabie Hubはその解決策として機能していて、昨年12月以降でホーチミンに5つの教室を開いたところ、200人ほどの生徒が集まった(現在はコロナウイルスの影響で開校していない)。

冒頭でも触れた通り、近年はスマホの普及もあって中国や東南アジアでオンライン教育サービスが広がり始めている段階。本間氏の前職であるQuipperも東南アジアで事業を拡大しているほか、現地発のスタートアップも生まれ業界の変革が進む。

とはいえManabieが取り組むベトナムなどの国では強力なEdTechプレイヤーは生まれていない状況で、テクノロジーに強みを持つスタートアップには大きなチャンスがあるというのが本間氏の見解だ。

かつて本間氏がQuipperを創業したのもそういった未来を見据えてのこと。東京大学を中退後、英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンに通っていた際にDeNAの創業メンバーでもある渡辺雅之氏らと出会い、「全く同じようなことを考えていた」ため共に会社を作った。

それからは約9年間に渡ってQuipperの商品開発やグローバル展開、事業開発などを幅広く担当。 フィリピンやインドネシアなどにも滞在し、カントリーマネージャーとして現地チームの立ち上げや東南アジアでのサービス拡大にも取り組んできた。

東南アジアの教育市場が新たなフェーズに差し掛かるタイミングを迎える中で、自らもう一度大きなチャレンジをするなら今やるべきだと考えManabieの創業を決断したという。

コロナの影響受け「学校のオンライン化」支援強化も

本間氏によると既存事業が軌道に乗りつつあり、事業拡大のスピードを上げるべく今回の資金調達を実施したそう。当初は中学生向けなど対象を拡大するほか、ベトナム以外の国への事業展開を予定していたが、コロナウイルスの影響を受けて方向性を少しシフトすることになるようだ。

「ベトナムでも1月後半から学校が休校し、いつから再開できるかわからない状態。日本も含めて学校継続のために『学校のオンライン化』が大きな課題になっている。現場がかなり混乱している上に、このような状況は今まで誰も経験していないため解決策を手探りで探していかなければならない状態。自分たちとしてもこの課題解決に取り組んでいきたい」(本間氏)

それこそスタディサプリやQuipperも含めて学校向けに展開しているサービスもあるが、今まではあくまで授業の補助教材として使われるケースが一般的だった。学校が休校になるとそもそも従来のやり方では授業ができなくなり、前提条件自体も変わる。当然新しい課題も生まれてくるだろう。

「今はZoomなどを使ってオンラインの授業をしたり、宿題などの課題を配信したりすることで対応を始めている学校も出てきている。ただZoomで複数人を相手に授業をするとなると、どうしてもリアルな授業に比べてインタラクティブ性にかけてしまうし、生徒の反応も見えづらく、先生にとっては悩ましい問題になっている」(本間氏)

Manabieでは学校のオンライン移行をサポートするべく自社でガイドブックを公開したところ、様々な教育機関から問い合わせがきているそう。今後はそういった現場の声も踏まえながら、学校向けのラーニングマネジメントシステムの開発にも取り組む方針だ。

これについてはまだ詳細は明かせないとのことだが、もともと同社ではtoC向けのプロダクトと並行して教育機関向けのプロダクトの開発にも着手していたとのこと。まずは自社で展開する塾などでの活用を考えたいたそうだが、今の教育現場の状況を受け、現場で使えるような形で機能面をブラッシュアップしてリリースする計画だという。

「toC向けの事業は、まずは良質な学習環境にオンライン上でアクセスできる仕組みと学習がしっかり継続できるシステムを作り込むフェーズ。ただ本来は受験勉強以外にも学ぶべき大切なことがあると考えているので、中長期的には受験に限らず、今の時代を生きるにあたって必要なことが学べるようなサービスにしていきたいと考えている」

「その一方で足元ではコロナウイルスの影響で学校のあり方自体が変わり始めている。withコロナ時代の学校のあり方とはどんなものなのか、自分たちでもそれを考えながら学校現場をサポートするためにできることをやっていく」(本間氏)

Uber Eatsユーザーによるアプリ内でのレストラン支援寄付が3.2億円を達成

Uber Eatsの顧客は、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック対応としてアプリ内に設けられた新機能を使ってこれまでに300万ドル(約3億2000万円)をレストランに直接寄付した。

このマイルストーンは、顧客による寄付に連動させていたUber Eatsのキャンペーンの最後を飾るものだ。Uber Eatsは顧客の寄付と同額の300万ドルを全米レストラン協会のレストラン従業員支援基金(RERF)に贈る。同社はこの前にもRERFへ200万ドル(約2億2000万円)寄付している。

キャンペーンは終了した。しかしレストランへの寄付機能は続く。この機能は最初にニューヨークで始まり、現在は20カ国で展開されている。

Uber Eatsのレストランプロダクト管理チームを率いるTherese Lim(テレーズ・リム)氏によると、レストランを支援する機能は、7日間にわたって奮闘したエンジニアチームによって開発された。

「『この機能を作るべきだから、君達、今すぐ取り掛かってくれ』と言った幹部は誰もいなかった」とリム氏は話した。新型コロナウイルス拡大を受けて、これまで展開していた店内での飲食提供を取りやることを余儀なくされたレストランを目の当たりにして始まった草の根的な取り組みだとも付け加えた。Uber Eatsユーザーは、どうやったらレストランを支援できるか、LinkedInや電子メール、その他の手段を使ってレストラン従業員に連絡を取り始めていた。

「新型コロナでレストランが深刻な影響を受けているというのが目に見えるようになっていた」とリム氏は語った。「各州が、屋内退避や外出禁止の命令を出すと一層明白になった」。

チームは新機能に関して、2つの懸念を持っていた。ユーザーが配達員にあげたチップの一部を横取りしたくなかったし、顧客がレストランへの注文を少なくするようなことにもしたくなかった。

この機能で配達員へのチップが影響を受けないことを確かめるため、チームは4月1日にニューヨーク市内の狭いエリアで機能提供をスタートさせた。4月3日にはニューヨーク市全体に広げ、その翌週には全米に拡大した。この支援機能は今では20カ国のUber Eatsで提供されている。

「我々はレストランを傷つけるようなことは導入したくなかった。ユーザーがいらいらしたり結果を不満に思ったり、あるいは注文を取り止めたりといったことにつながり得る摩擦を生み出してないことを確認するのは大事なことだった」。

しかしこの機能が導入されてからのデータで、懸念は杞憂に終わったことが示された。顧客はチップを増やしただけでなく、頻繁にUber Eatsを利用するユーザーになった。

Uberによると、レストランに寄付したユーザーは、寄付しなかった人より30〜50%多いチップを配達員にわたしている。しかもレストランに寄付した米国内のUber Eats顧客の約15%は繰り返し寄付している。

データではまた、早い夕食タイム、午後6時ごろが最も寄付が多い時間帯であることも示された。午後5時〜11時の夕食時の寄付が全体の60%を占めているとのことだ。

インターナショナルな料理の注文がより多くの寄付につながっていることもわかった。中でも、フランス、エチオピア、アルゼンチン、タイの料理を提供するレストランへの寄付が多い。

そして、一部の州は他の州よりも寛大で、少なくとも1回は寄付をしたアクティブUber Eatsユーザーの割合が多かったトップ5の州はワシントン、バーモント、モンタナ、コネチカット、サウスカロライナだった。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

Nintedo Switchが「あつまれ どうぶつの森」絶好調で新記録

この3月、世界でたいへんな数のNintedo Switchが売れた。簡単に組み換えができる小さなゲーム機は自宅に引きこもることを余儀なくされた世界の人々にとって救いの手となった。新型コロナウイルス(COVID-19)による旅行や移動の制限に加えて「どうぶつの森」に待望の新バージョン、「あつまれ どうぶつの森(Animal Crossing: New Horizons)がリリースされたことが大きな要因だ。Switchは発売後3年目となるプラットフォームだが、売れ行きからすればパーフェクトストームになっている。

リサーチ企業のNPDのレポートによれば、2020年3月のNintedo Switchの販売台数は対前年比で2倍以上に急増した。Switchが発売されたのは2017年3月だったが、この3月の数字はこれを上回った。しかも、同じ任天堂の2010年のDSの記録を別にすれば、あらゆるゲーム機を通じた四半期セールスの新記録となった。

Nintendo Switchは、3月のゲーム機販売台数で記録を更新した。2017年3月の発売月のセールス記録も上回る過去最高となっている

「あつまれ どうぶつの森」のリリースは売り上げ好調の要因の1つだったことは間違いない。人気の育成シミュレーションシリーズに追加された新ゲームはプラットフォームを通じて、3月の新記録となるベストセラーとなった。また新タイトルのリリースとして、NPDが調査を開始して以来、任天堂の歴史の中で第3位の月間セールスとなっている。専用ゲームのリリース月のセールスでこれを上回ったのは2008年と2018年の大乱闘スマッシュブラザーズだけだった。

NPDによれば、「あつまれ どうぶつの森」は「どうぶつの森」シリーズ中でも既にベストセラーとなっている。このタイトルの発売のタイミングに加えて、「自然豊かな無人島への移住」というテーマやゲームのソーシャル化に力を入れたことが世界で巨大な販売量を生む結果となったようだ。またゲーム専門家、批評家の評価も高くMetacriticでは91%という高いポイントを得ている。

販売店は、需要が急増する中でSwitchの在庫を確保するために悪戦苦闘している。任天堂は生産台数を10%増加させると報じられている。

【Japan編集部追記】

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

個人の違法解雇につながる?雇用主は従業員に新型コロナテストを実施できるのか

Amazon(アマゾン)のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が先週株主に送った毎年恒例のレターでは、当然のことながら新型コロナウイルス(COVID-19)について多く割かれていた。同氏はパンデミックを克服するためのさまざまなレベルでの取り組みを示した。その中には、従業員向けテストラボの設置が含まれていて「症状がない人を含め、全Amazon従業員を定期的に検査する」と書かれていた。

Amazonが、熱やその他の新型コロナ特有の症状がある従業員にテストを行うというのは既知の事実だ。結局のところ、同社は米国やその他の多くの国にとって小売を支える主要企業の1つだ。ウイルスが小包経由でうつされるとは考えられない、と世界保健機関(WHO)は述べたが、その一方でウイルスが倉庫内でかなり早く広まる可能性がある。

しかし症状のない従業員をテストするというのは、テストキットが限られているため、緊急性は低い。しかし、WHOやCDC(米疾病予防管理予防センター)、他の機関がそろって指摘しているように、症状がなくてもウイルスを運ぶことは大いにあり得る。この事実が新型コロナをより恐ろしいものにしている。

テストが広く利用できるようになったら、実際のところ、症状があるかないかにもかかわらず雇用主が従業員にテストを行えるのかをはっきりさせることが重要になる。公共の安全と個人の権利を考慮しなければならない大事な問題だ。

米雇用機会均等(EEO)委員会は、障害を持つアメリカ人法(ADA)のもとに雇用主向けのガイドラインを積極的にアップデートしている。

ADAとリハビリの法律を含むEEO法は新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック時でも適用される。しかし、CDCや州・地方の公衆衛生機関が雇用主向けに出している新型コロナウイルスに関するガイドラインや提案を雇用主が守ることを妨げない。雇用主は、新型コロナウイルスパンデミックが広がるにつれ、公衆衛生当局が出すガイダンスが変わり得ることを考慮すべきだ。ゆえに、雇用主は職場の安全性維持に関する最新情報を引き続きフォローする必要がある。

パンデミックに対応するためにアップデートされたものの1つが、体温チェックを含むスクリーニングだ。「パンデミックの間は、ADAが適用される雇用主は従業員にパンデミックを起こしているウイルスによる症状があるかどうかを尋ねることができる」と米雇用機会均等委員会は続ける。「新型コロナウイルス感染症に関しては、症状として発熱や悪寒、咳、息切れ、喉の痛みなどが挙げられる。雇用主はADAに従って従業員の病気についての全情報を機密の医療記録として扱わなければならない」。

我々は、雇用と商事の訴訟を専門とするDebevoise & Plimptonの弁護士、Tricia Bozyk Sherno(トリシア・ボジック・シェルノ)氏に質問をぶつけた。

「既存従業員の場合、健康調査や検査は、特定の従業員がその健康状態によって『直接的な脅威』になると雇用主が合理的確信を持つ場合のみ許される」とシェルノ氏は説明する。「新規従業員に関しては、仮雇用契約のあとで雇用主が健康調査を実施することをADAは認めている。しかし個人が働き始める前に受ける検査は、同じ部門の従業員に提供されているものと同一のものでなければならない。既存のEEOCガイダンスが想定している主な『健康調査』は体温測定だ。参考ガイダンスでは新型コロナウイルス感染症テストについてまだ言及されていない」。

テストに関する現在のルールは、直近のガイドラインのもとでは完全に明確ではない。ただ、テストが広く受けられるようになり、また州政府が外出規制を緩和し始めているため、今後ルールがはっきりすると思われる。パンデミックがもはや脅威でなくなれば、ガイダンスは適用されないことが予想される。その後、ADAガイドラインのもとに残るものはといえば、新型コロナウイルス感染症のような症状をめぐっての個人の違法解雇だ。

「ADAは障害を持つ個人に対する差別を禁じていて、雇用主にはそうした個人に合理的配慮を提供することを義務付けている。地方自治体の法律が、影響を受けている従業員に追加の保護策を提供するかもしれない」とシェルノ氏は話している。

画像クレジット:zhangshuang / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

アップルはApp Store、Apple Music、iCloudなどのサービスをさらに数十の国や地域に拡大

アップル(Apple)は米国時間4月21日、App Store、Apple Podcasts、iCloud、およびApple Musicの各サービスを、アフリカ、欧州、アジアパシフィック、中東などの数十の追加市場に向けて開始すると発表した。これは、世界最大規模の企業によるサービスの世界最大規模の地理的な拡張となる。

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg/Getty Images

App Store、Apple Arcade、Apple Podcast、iCloudについては、利用できる国が20か国増えた。また同社の音楽ストリーミングサービス、Apple Musicについては、これまでより52も多くの国で利用可能となっている。

アップルによると、Apple Musicには、Africa Now、Afrobeats Hits、Ghana Bounceなど、地域ごとにキュレートされたプレイリストが、新しい市場向けに提供される。また、新たな市場に対する導入時の特典として、Apple Musicを6か月間無料で使用できるようになっている。

App Store、Apple Arcade、Apple Music、Apple Podcast、iCloudは、以下の国と地域で利用可能となった。

アフリカ:カメルーン、コートジボワール、コンゴ民主共和国、ガボン、リビア、モロッコ、ルワンダ、ザンビア
アジアパシフィック:モルディブ、ミャンマー
欧州:ボスニア·ヘルツェゴビナ、ジョージア、コソボ、モンテネグロ、セルビア
中東:アフガニスタン(Apple Musicを除く)、イラク
オセアニア:ナウル(Apple Musicを除く)、トンガ、バヌアツ

Apple Musicが利用可能となったのは、以下の国と地域だ。

アフリカ:アルジェリア、アンゴラ、ベナン、チャド、リベリア、マダガスカル、マラウイ、マリ、モーリタニア、モザンビーク、ナミビア、コンゴ、セネガル、セーシェル、シエラレオネ、タンザニア、チュニジア
アジアパシフィック:ブータン
欧州:クロアチア、アイスランド、北マケドニア
ラテンアメリカおよびカリブ諸島:バハマ、ガイアナ、ジャマイカ、モントセラト、セントルシア、セントビンセントおよびグレナディーン諸島、スリナム、タークス·カイコス諸島、ウルグアイ
中東:クウェート、カタール、イエメン
オセアニア:ソロモン諸島

「皆様から愛されているAppleのサービスの多くが、これまで以上に多くの国々のユーザーの皆様にお届けできるのをうれしく思います」と、Apple Musicおよびインターナショナルコンテンツ担当バイスプレジデントのオリバー・シュッサー(Oliver Schusser)氏は述べている。

また、「お客様に選りすぐりの新しいアプリケーション、ゲーム、音楽、ポッドキャストを見つけていただくことで、世界有数のクリエイター、アーティスト、アプリケーション開発者を、私たちが引き続き支援していけることを望んでいます」とも付け加えた。

App Storeは、これで175の国と地域で利用できるようになった。一方Apple Musicの市場は167まで拡大している。それに対して、大手音楽ストリーミングサービスのSpotifyが利用できるのは、100か国未満にとどまっている。

アップルのこのようなサービスが、数十の新しい市場で利用できるようになることで、同社のサービス部門の売り上げは、さらに伸びることになるはずだ。アップルのサービス部門は、すでにMac、iPad、ウェアラブル、アクセサリよりも多くの収益を記録している。

また、こうしたサービスの利用範囲が拡がることは、より多くのユーザーの目をアップル製品に向けさせることにもつながる。これまでもiPhoneユーザーは、同社のサービスを利用できる地域が限られていることに不満を表面することがあった。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

サムスンのGalaxy Watchの血圧測定アプリが韓国で規制をパス

Samsung Electronics(サムスン電子)が今日(4/21)、Galaxy Watch用の血圧測定アプリが韓国の規制当局に承認された、と発表した。Samsung Health Monitorと呼ばれるそのアプリは、第三四半期中に少なくとも韓国で、Galaxy Watch Active2で利用できるようになり、そして今後のGalaxy Watch製品にも加わる。

TechCrunchは、Galaxy Watch Active2の高度なセンサー技術を利用しているそのアプリが韓国以外ではいつごろ提供されるか、問い合わせている。

それは韓国の食品薬品安全省より、一般市販のカフレス血圧測定アプリとして認められた。このアプリは最初に、従来からある血圧カフで調整する必要がある。そしてその後は、脈波分析で血圧を測定する。調製は少なくとも4週間に一度行う必要がある。

IDCの最近の記事によると、2019年の最後の四半期ではSamsungのウェアラブルの売れ行きはApple(アップル)とXiaomi(シャオミ)に次いで第三位だった。その量を支えたのは、Galaxy Activeウォッチだ。Samsung(サムスン)は、スリープトラッカーなど、健康とフィットネスにフォーカスしたモニタリング機能で、同社のスマートウォッチを差別化したいようだ。

関連記事: サムスンのGalaxy Watch Active 2はAndroidユーザーに最適なスマートウォッチ

画像クレジット: Samsung Electronics

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Voyageがカリフォルニアの公道上での自動運転タクシーサービスの認可を取得

Voyage は、これまでカリフォルニア州サンノゼにある退職者コミュニティの私道内に限られていた同社の自動運転サービスを、規制のハードルをクリアすることによって州の他の地域の公道に拡大できるようになった。

California Public Utilities Commission(CPUC、カリフォルニア州公共事業委員会)は、米国時間4月20日にVoyageに対して、州の公道上で自動運転車を使って乗客を移送する許可を与えた。同州のAutonomous Vehicle Passenger Service(自動運転車乗客サービス)パイロットプログラムの一部であるこの許可により、Voyageは従来の自動運転車テストを超えて拡大することを目指す新しい成長企業グループに加わることになる。Aurora、AutoX、Cruise、Pony.ai、ZooxそしてWaymoはすべて、CPUCから「運転手同乗」自動運転車乗客サービスパイロットプログラムに参加する許可を得ている

許可証はまた、Voyageへより広い商業化への道を拓く。

同社はこれまで、カリフォルニア州サンノゼで4000人以上の住民が暮らすコミュニティーであるThe Villagesの中で、常に運転席に運転手が同乗する形で、6台の自動運転車を運行してきた(こうした活動は、新型コロナウィルス感染症パンデミックによって促された州全体の屋内避難命令の下で一時的に停止されていた)。Voyageはまた、フロリダ州の中央部にある、広さ40平方マイル、人口12万5000人の退職者の街でも運行を行う。

このコミュニティは私道で構成されているため、VoyageはCPUCの許可を必要としていなかったが、CEOのOliver Cameron(オリバー・キャメロン)氏は、技術的な問題には関係なく州の規則を遵守したいと述べていた。Voyageはまた、The Villagesの住民たちをコミュニティ外の目的地まで輸送するという、より大きな野望にも動機付けられていた。

「私たちは人びとを、The Villageの外にあるすべての場所、病院や食料品店といった場所に連れていきたいのです」とVoyageのキャメロン氏は月曜日のインタビューでTechCrunchに対して語った。

Voyageの戦略は、顧客からの特定の需要があり、周囲の環境がよりシンプルな退職者コミュニティから始めるというものだった。Voyageがサービスを提供している集団の平均年齢は70歳だ。今回の目標は、顧客ベースを変更することではない。そうではなく、キャメロン氏は会社の現在の運用デザイン領域を拡大して、Voyageにより大きな運行範囲を提供したいと考えている。

最終的な目標は、キャメロン氏がパワーユーザーと呼ぶVoyageのコア顧客である人びとが、近所の家に夕食に行ったり、ショッピングや医者に行ったり、空港に行ったりと、あらゆることにサービスを利用できるようになることだ。

CPUCは、2018年5月に自動運転車で乗客を移送するための2つのパイロットプログラムを設定した。1つ目は「Drivered Autonomous Vehicle Passenger Service program」(運転手同乗自動運転車乗客サービスパイロットプログラム)と呼ばれ、企業は特定のルールに従う限り、自動運転車を使用して配車サービスを運営できる。企業は乗車に対する料金を請求することはできず、人間の安全運転手が運転席に座っていなければならず、特定のデータを四半期ごとに報告しなければならない。

2番目のCPUCパイロットプログラムは、同乗運転手なしの乗客サービスを許可するものだ。ただし、その許可を取得している会社はまだない。

今回の許可の下では、Voyageは乗車料金を請求できない。ただし、ちょっとした法的な抜け道の余地はある。Voyageは、The Villages内の乗車に対しては課金をすることができる。実際、新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミック関連のシャットダウンの前には、同社は配車サービスに対する料金を請求し始めていた。

The Villagesの外での乗車は無料でなければならないが、車両がコミュニティーから出るまでの走行距離や時間に対して、会社が請求できるかどうかは不明だ。

Voyageはこれをさらに推し進めることを望んでいる。同社はまたリムジン、バス、およびその他のサードパーティのチャーターサービスの運行に必要な、従来のトランスポーテーションチャーター許可も申請している。キャメロン氏によれば、同社はまず、CPUCの運転手同乗自動運転車両認可の厳しい申請プロセスを経なければならなかったと言う。

CPUCのプログラムをカリフォルニア州のDepartment of Motor Vehicles(DMV、自動車管理局)と混同してはならない。DMVは公道で自動運転車をテストするための規制を行い許可を発行している部局だ。ただしこちらのテストは常に安全運転手の同乗の下で行われる必要がある。DMVによって発行された自動運転車両テスト許可を保持している企業は65社存在する。CPUCプログラムへの参加を希望する企業は、まずDMVのテスト許可が必要だ。

原文へ

(翻訳:sako)

VCがいま新規事業に出資することはないが、1カ月後には何かが変わるかもしれない

法律事務所のFenwick & Westは米国時間4月9日、ベンチャーキャピタル業界の最新動向を把握するために、Eniac Ventures創設者でジェネラルパートナーのHadley Harris(ハドリー・ハリス)氏、Primary Venturesの共同創設者でジェネラルパートナーのBrad Svrluga(ブラッド・スヴルーガ)氏、GreycroftのパートナーEllie Wheeler(エリー・ウィーラー)氏の3人とバーチャル座談会を開催した。いずれもニューヨークで活動する投資家である。

彼らは皆、新型コロナウィルスによるロックダウンの影響を受けているが、個々の状況は当然ながら三者三様である。しかし、仕事の話になると全員が口をそろえて「現在の状況でVCが新規事業に出資することはない、ということを起業家たちに認識してほしい」と言う。

プライベートでは、ウィーラー氏は第一子の出産を控えており、ハリス氏は奥さんとのランチを毎日楽しんでいる。スヴルーガ氏は「こんなに毎日連続して子どもたちと食事をしたのは本当に久しぶりだ。もう10年以上こんなことはなかった」と話す(彼は今の状況をご褒美だと思っている)。

仕事面では、プライベートとは反対に苦戦を強いられており、3人ともこの数週間忙殺されている。どのスタートアップが一番危ういか、この状況でも救済する価値のあるスタートアップはどれか、予想外のビジネスチャンスに恵まれる可能性のあるスタートアップはどれかといったことを検討し、それぞれのケースに対応する方法を考える必要があるからだ。

あまりにも忙しすぎて、いま初めて出資を募ってきた起業家がいたとしても、誰も小切手を切る余裕などないだろう。実際にハリス氏は、この危機の中でも起業家たちの売り込みに対して門戸を開いていると話す投資家たちに対して異議を唱える。「多くのVCがこの状況の中でも出資の申し込みを受け付けていると話していることは知っている。しかし私は、Twitterでもかなりズバッと発言したように、今のような状況で出資を続けられるなんていうのはほとんどデタラメだし、起業家たちに間違ったメッセージを送ることになると思う」とハリス氏は語る。

「現時点でVC業界には新規投資案件を扱うための余力はまったくない。既存の投資先企業に対してやるべきことが山積みだからだ。余力がないことが今一番の足かせだ。資金の問題ではない」。

余力が回復したらどうなるのだろうか?そうなっても、直接会社に出向くことなくオンラインのみで起業家とやり取りすることが、出資判断において的確、正常、あるいは有効な方法だと考えているVCなどないという点は覚えておかねばならない。

「豊富な実績を持つ一部のアクセラレータやシードファンドが多数のスタートアップに対して、何らかの方法や形で短期的にリモートでの出資判断を行っている例はあるが、直接会ったことがない人物に対する出資を検討するなど、賢い方法とは思えない」とウィーラー氏は言う。

「出資先の調査で最初に行うことはいつも決まっている。何も難しいことではない。スタートアップのチームと会い、その会社に出向き、こちらのチームにも会ってもらう。これをオンラインでやるのは無理がある。正式な場あるいは仕事外のカジュアルな場で一緒に時間を過ごすことから得られる情報をオンラインで得られるとはとても思えない。そこをわかっていない人が多い。現在の状況が長引くほど、その点を認識する必要がある」とウィーラー氏。

いずれにしても、今の状況で何をVCに売り込めばいいのか。3人とも、新型コロナウィルスによって一変した世界とあまり関連のない分野にはほとんど興味がない。「例えば、今は実店舗ビジネスについて新しいアイデアを提案する時期ではない」とハリス氏は言う。ウィーラー氏は別の視点から、この数週間で多くの人が「分散型チームとリモートワークは思っていたよりも実行可能かつ持続可能である」と気づいたようだと指摘し、Greycroftは引き続きこうした環境を実現するソフトウェアに注目していることを示唆した。

Primary Venturesも、よりシームレスなリモートワークを実現するソフトウェアに注目しているとスヴルーガ氏は言う。在宅勤務については「当社の18人の社員でしばらく行ってみたら自然に受け入れられた」と同氏。

必然的な流れとして、3人はダウンサイジングについて、この座談会のモデレータであるEvan Bienstock(エヴァン・ビエンストック)氏から質問を受けた。この質問については3人とも一様に、スタートアップが今すぐにランウェイを引き伸ばすには、ダウンサイジングはほぼ不可避だと指摘した。「最悪だよ。今、人々は職を失っている。(新しい事業を育てるのに最適な環境だった)60日前と同じ組織でチームの運営を続けるなんて不可能だ」とスヴルーガ氏。

3人はまた、人員削減を余儀なくされている管理部門に対するアドバイスについても話し合った。そこでは、2回目を行わずに済むように最初の人員削減で思い切って切るべきだという意見で一致した。

一緒にやってきた人たちを誰も好んで切りたいとは思わないが、「『しまった。人員カットをやり過ぎた』と言ったCEOに会ったことは今までに一度もない」と、自身も二度の不景気を経験したことのあるスヴルーガ氏は言う。彼の知っているCEOの「少なくとも30%」は、企業文化も守りながら事業を保護できる状態まで人員削減を行えていないと認めたという。

「二度目の人員カットはもっと大変になる。大なたを振るうことになるのは二度目のレイオフだ」とウィーラー氏は付け加えた。

今後については、3人とも「既存の投資先がレイオフ、バーンレート、ランウェイ予測に関する業務がひと段落したら、起業家の新しいアイデアを受け入れられるようになるだろう。それに加えて、新しい経済対策をスタートアップが最大限に活用できるようにサポートしていく」と答えた。

それがどのくらい先になるのかについては、「1カ月後にはこの混乱も少し落ち着いているかもしれない」とウィーラー氏とスヴルーガ氏は指摘する。「起業家たちも、4週間くらいあれば自分たちが抱えているさまざまな問題点を調整するために必要な時間を確保できるはずだ」。

ハリス氏も同じ意見だ。「少しずつやっていくことになるだろう。来週どうなるかはわからないが、1か月経ったらぜひ連絡して欲しい。新規出資を再開できる状態かどうか伝えるよ」。

画像クレジット:Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳: Dragonfly)

事業用不動産は新型コロナ終息後の回復に影

ここ数年の好景気により、事業用不動産のオーナー、不動産業者、土地所有者たちは、年間数千億ドルもの収益を上げてきた。

それが今、新型コロナウイルスのパンデミックによって引き起こされた経済危機で、大打撃を受けている。さらに悪いことに、不動産業界は元に戻れないほどに変わり果ててしまう可能性もある。

今、賃貸料を回収するのは明らかに至難の業である。National Multifamily Housing Councilによれば、米国では、3月5日の時点で家賃を支払えた世帯が81%であったが、4月5日にはそれが69%まで激減した。昨年の同じ時期には82%の世帯が家賃を支払っていたのに、だ。

解雇された人や自宅待機となった人の数が急増したことを考えると、この数は、5月5日までに、ほぼ間違いなく悪化するだろう。

事業用不動産でも、問題は深刻になりつつある。賃料を支払えなくなり、立ち退きを余儀なくされた小売店やレストラン業は数え切れない。さらに、大手チェーンの中にも、賃借料の支払いが困難になったり支払いを拒否したりする企業が増えている。

例えば、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じるところによると、WeWorkは米国にある一部の施設の賃借料を支払えず、リース契約についての再交渉を試みている。とはいえ、WeWorkは自社がコワーキングスペースを提供するテナントには賃料の請求を続けている

StaplesSubway、Mattress Firmも、賃貸料の値下げ、リース契約の修正、新型コロナウイルスの影響で被った損失を埋め合わせるその他の措置を講じるよう建物のオーナーに強く迫るため、賃貸料の支払いを停止したのである。

目まぐるしい変化

一番答えが知りたい質問は、次に何が起こるかということだ。行き詰ってしまった資産を何とかしようと、その方法を探る人たちもいるが、事業用不動産市場が元に戻らないという可能性は非常に高い。

小売業者やレストランが姿を消していく一方で、オンラインで事業を展開する企業の業績は上がっている。Amazonは、悪い評判がないとは言えないが、それでも一日ごとに市場シェアを拡大している。実際、Amazonの時価総額は今週1兆ドルの大台を取り戻した。

数週間前に報じた通り、ストリートウェアのオンライン販売を手掛けるStockXも急成長している。StockXのCEOであるScott Cutler(スコット・カトラー)氏は、その時にこう語っていた。「StockXは、これまでもずっと希少性の高い購買プラットフォームだったが、実際の店舗に行けなくなった今、StockXの利用者はさらに増えている」。

特に、サンフランシスコ、シカゴ、ボストン、ニューヨークといった市場では状況が急速に変化する可能性がある。個人経営の店やレストランがしのぎを削るエリアであったのに、ベンチャー企業の従業員やサラリーマンたちが突然在宅勤務となってその業務形態に順応してきており、消費需要が落ち込んでいるためだ。

Cadenceの創設者兼CEOであるNelson Chu(ネルソン・チュー)氏の例を考えてみよう。Cadenceは、ニューヨークにおいて17人のスタッフで証券化プラットフォームを運営する駆け出しの会社である。最近、400万ドルの資金調達に成功し、先月、住宅地内の物件の賃貸契約を結んだ。その契約では、オフィスを移転できるまでは、賃借料を請求されないことになっていた。

Cadenceにしてみれば、良い条件である。使ってもいない場所の貸借料の支払いを心配しなくて済むのだ。それにもかかわらず、Chu氏は、リモートで働かなければならない状況に追い込まれたことで、自社の業務形態にリモートワークをもっと組み込む余地があることに気づかされたと述べている。

Chu氏は次のように語っている。「これまでリモートワークがビジネスを継続する上で悪影響を及ぼすのではないかと心配されてきた。しかし現在、リモートワークが強いられる中でも、業務には何の支障も出ていない。これは、オフィスの規模を縮小し、州外に住む従業員が毎日出勤しなくても運営が成り立つことを示しているのではないだろうか」。

想像に難くないが、これまでテレワークというトレンドに同調してこなかった他の起業家や経営陣も、Slack、Googleスプレッドシート、Zoomなどのツールを使うようになり、同じ結論に達しつつある。

生き残りをかけて

リモートワークに関するこの新たな可能性は、不動産会社に直接影響する。

事業用不動産向けサービス会社大手のCBREで、調査と分析のディレクターを務めるColin Yasukochi(コリン・ヤスコチ)氏はこう語っている。「リモートワークは現在、その運用が活発に検討されている分野である。今はリモートワークを余儀なくされている状況だが、その働き方を今後も続ける企業が当然出てくるだろう。問題はリモートワークの規模や期間がわからないことだ」。

この状況はもちろん、CBREや他の不動産業界が今年期待していた動向ではない。昨年11月にCBREが発行した「市場展望」レポートの内容はかなり楽観的だった。当時は、「不測のリスクがなければ」と前置きした上で、「活発な経済活動、強固な財務基盤、低金利、資産クラスとしてある程度の魅力が不動産にあること」について考えると、2020年は事業用不動産業界にとって「非常に良い年」になるであろうと推測していたのである。

ご存知の通り、その後の数カ月間に生じた「不測のリスク」により、企業は休業に追い込まれ、産業界のほぼすべてのセクターにおいて一時解雇が余儀なくされている。また、ウイルス感染の本質が明らかになった今、オフィスに再び出勤できるようになったとしても、人が密集する職場に行くことに気乗りしない人が出ることも十分に考えられる。

オフィスに行かずに仕事ができることを知ってしまえば、間違いなくそうなるであろう。

それが、今後のオフィス用スペースの需要減少につながる可能性は高い。そして、減少したのと同じ(またはそれより大きな)スペースが、新たな形体のオフィスに利用されることになるかもしれない。このことは、事業用不動産業者を含め、誰にもまだわからないのだ。

Mark George(マーク・ジョージ)氏はカリフォルニア州サンノゼ在住の仲介業者で、Cresaという事業用不動産会社に勤務している。現在、在宅勤務を行っており、同じく初めてリモートワークを行う妻とオフィスを共有し、子どもたちと一緒に家にいる時間を楽しんでいる。「しかし、特に不動産業では、自宅から出られない状況で業界の動向の変化を把握するのは難しい」と同氏は言う。

ジョージ氏によると、仲介業者は「いくぶん孤立している」。「物件を見せられないので、内見などの仕事はすっかりなくなってしまった。どの地方自治体でも庁舎は閉まっていて許可を得られないため、不動産業界はまさに休業状態だ」とのことだ。

「最終段階まで来ていた取引は」新型コロナウイルスが米国で勢いを増す前に「おそらく契約までこぎ着け」た。しかし「契約成立まであと少しだったが、最終段階とは言えない取引はどうなったかわからない。私が見てきた取引は、全て保留になっている。皆が待機状態に陥っている」と同氏は語っている。

同じくCresaに勤務しており、サンフランシスコ在住のBrandon Leitner(ブランドン・ライトナー)氏も同じように感じており、「取引に急速な動きはない」と言う。それでも、自社がTwitterのような大企業をはじめ、シリーズAラウンドやシードラウンドのスタートアップとも取引があるため、現在の市の外出禁止令が解除され、仲介業者が再び物件を見せられるようになれば、取引は再び活発化するであろうと期待している。

CBREによると、過去数年間、サンフランシスコで商業用スペースは1平方フィート(1000平方cm)当たり88ドルで取り引きされていたが、ライトナー氏は、その価値が「最低でも10%、おそらく20~30%」低下すると予想している。要因としては、市内にある200万平方フィートのスペースを押さえていた複数の企業がそれを手放したがっており、取引が可能になるとすぐにその物件が市場に出回ることが挙げられる。

特に、取引可能な320万平方フィートの商業用スペースがすでにあることを考えると、この数字は大きい。さらに、CBREのヤスコチ氏は、過去6カ月間だけでも「相当」なスペースが市場に上がってきたと述べている。

回復に望みをかける

ライトナー氏が言うように、「市場に上がる物件の数を増やすことを今は控えたい」と言う不動産所有者には、ありがたくない話である。

同氏は、不動産所有者が「現実的」であり、「できる限り譲歩して」踏みとどまり、新たなテナントを募集するようにと提案している。もちろん、できることには限界がある。土地所有者もたいてい負債を抱えているのだ。つまり、業績不振が長引き、オフィス利用者の数が元に戻らなければ、自分たちも苦境を乗り切るのに、金融業者に頼らざるを得なくなるのである。

サンノゼ在住の仲介業者であるジョージ氏は金融業者は投資を保護するためにも、不動産業者に助けを差し伸べるだろうと考えている。連邦準備制度も、銀行に不動産ローンの支払いを先送りする権限を与えることで、不動産所有者が賃貸料の請求を先延ばししやすくする可能性もある。

とはいえ、新型コロナウイルス感染症の終息後、事業用不動産マーケットが元に状態に完全に戻るのかどうかは、フタを開けてみなければわからない。

ヤスコチ氏は「このパンデミックは、我々が今までに経験したことのない事態だ」と語っている。CBREのエコノミストは第2四半期と第3四半期の目算が「非常に厳しい」と予測しているが、同氏によると、第4四半期には市場に「大幅な上昇傾向が見られるかもしれない」とのことである。

ただし、「これは、需要が回復するか、業務拡張計画が延期になるのか、それとも永久に白紙になるのかにかかっている」とも語っている。

今のところヤスコチ氏は、特に地元サンフランシスコの市場では、通常通りのビジネスに戻れるだろうと楽観視しているようである。「Bay Areaは何かあるとすぐ悪影響を受ける気がするが、たいてい回復も早い」と語っている。

業界関係者は、その回復に望みをかけているに違いない。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳: Dragonfly)

ファイザーの元科学主任が設立したUnlearn.AIは「デジタルの双子」で臨床試験の高速化と改善を目指す

医療研究の分野では、双子は昔から重要な役割を果たしてきた。特に臨床試験では、遺伝的に近い2人の片方に処置を施すという方法で、双子は治療の有効性の測定に寄与している。米国時間4月20日、Pfizer(ファイザー)の元科学主任が設立し、AIを使ってこのコンセプトをデジタル化する方法を開発したスタートアップが、その研究をさらに進めるための資金を得たと発表した。臨床試験の検査に使用する患者の「デジタルツイン(デジタル上の双子)」のプロファイルを構築する機械学習プラットフォームUnlearn.AI(アンラーンAI)が、シリーズAラウンドで1200万ドル(約13億円)を調達した。

このラウンドは8VCが主導し、前回の投資企業であるDCVC、DCVC Bio、Mubadala Capital Venturesも参加している。

DiGenesis(ダイジェネシス)というこのスタートアップのプラットフォームは、当初は神経疾患、具体的にはアルツハイマー病と多発性硬化症に適用するためのものだったのだが、これらは有効な治療方法がいまだ確立されておらず、既に発症している患者を対象にした臨床試験の実施が非常に難しい。

Unlearn.AIは新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック関連の医療にはほとんど関わっていないものの、臨床試験の改善がなぜ重要なのかを知るいい機会を与えてくれた。この新型ウイルスに対抗するワクチンや治療法をみんなが緊急に競い合う中で、臨床試験のより効果的なアプローチの必要性が注目されている。そこはAIが力を発揮できる分野だ。

Unlearnは、現在のビジネスにおける提携先を公表していない。また実践的な臨床試験を、実際にどこまで実現できているのかも不明だ。今回の資金は、商業的展開に少しだけ近づくためのものと思われる。

「今回の資金調達は、私たちの成長にとって重要な布石だ。既にデジタルツインの研究を開始し、強力なエビデンスでその価値を実証し、臨床試験での成功の可能性を高めつつある規制当局との協力関係を大幅に前進させる力となります」とUnlearn.AIの創設者でCEOのCharles K. Fisher(チャールズ・K・フィッシャー)博士は声明の中で述べている。

「臨床試験は非常に困難な局面にあり、ここ数週間は深刻化する一方です。未来志向の投資家や提携企業の支援をいただき、極めて有能な私たちの人材をさらに成長させ、世界初のデジタルツインのアプローチを支える科学技術をさらに発展させられることを、とてもうれしく思っています」。

フィッシャー博士は、まさにテクノロジーと医療研究の集合体の中を歩んできた。製薬大手のファイザーで科学主任を勤めた経歴に加え、Leap Motion(リープモーション)で働いていたこともある。それ以前には、長年にわたり学術界にて生物物理学の勉強と研究を重ねていた。

Unlearnは昔ながらの機械学習の課題のひとつとして、いわゆるデジタルツインを構築するというアイデアに取り組んでいる。そこでは「デジタルツインを生み出すための疾病専用の機械学習モデルと仮想診療記録を構築するための、患者数万人分もの臨床試験のデータセット」が使われている。

これらは、単なる患者プロファイルとは異なる。デモグラフィック、臨床検査、生体指標に従って人と人とをマッチングさせてある。臨床試験と検査に必要な類似の人間、できれば双子を探す手間を、AIベースの双子を作ることで削減したいという考えに基づくものだ。

Unlearnは、2017年からこのプラットフォームの開発に取り組んできたが、双子(そして医療研究において遺伝子構造が類似した1組の人たち)を使った病理学や治療法の研究は、もう数十年前から始まっている。面白いことに、ある大人気の新型コロナウイルス監視アプリは、ロンドンのキングズ・カレッジ病院と、アメリカのスタフォード大学とマサチューセッツ総合病院が共同で行った長期にわたる双子の調査から生まれている

AIで「人」を作り出し、薬の有効性をテストする研究が広がっているが、それはコンピューターとアルゴリズムを使って薬品の組み合わや治療法を割り出しテストするという、さらに大きな課題へとつながる。以前は、長い時間と大きな資金を費やし、手で行ってきたであろうことだ(医療とは別の応用例として、製品開発がある。一般消費財のメーカーは、新しい石鹸やさまざまな製品の調合をAIプラットフォームで行っている)。

「Unlearnによるデジタルツインの先駆的な利用により、プラシーボを与えられる患者の数を減らすことができ、臨床試験にかかる全体的な時間も短縮できます」と8VCのプリンシパルFrancisco Gimenez(フランシスコ・ヒメネス)博士は声明の中で述べている。「医療とテクノロジーの交差点の投資家として、私たちは、最先端のコンピューター技術と革新的なビジネスモデルを組み合わせて医療の有意義な改善に取り組む企業に情熱を注いでいます。8VCはUnlearnをパートナーに迎え、無作為化臨床試験以来となる薬品の認可プロセスへの大きな挑戦に乗り出せたことで、大変に興奮しています」。ヒメネス氏は今回のラウンドにより、Unlearnの役員に加わった。

画像クレジット: Emsi Production Flickr under a CC BY 2.0 license.

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

パンデミックによりスポーツはファンの体験を再考する必要に迫られている

10歳のときに、父が私を初めてボストン・レッドソックスの本拠地、フェンウェイパークに連れていってくれた。通路を上った後に目に飛び込んできた輝く緑の芝を鮮明に覚えている。何もかもが素晴らしかった。それは優れたカスタマーエクスペリエンスだ。

私はすぐに野球場の美しさのとりこになった。内野の守備練習中にダイヤモンドでボールを軽々と放る才能豊かな選手たちを見る前から。試合の初球の前から、バットが折れる前から、観客がどよめく前から。音、景色、ホットドッグとドリンクも、その一部だった。私はエメラルドの芝を目にした瞬間から、そのエクスペリエンスに心を奪われた。

スタジアムで見るスポーツにはいつだってエクスペリエンスが重要だ。野球ファンにはおなじみの歌「私を野球に連れてって」(Take Me Out to the Ball Game)には「ピーナッツとクラッカージャックを買ってね、もう家に帰らなくてもかまわない」と歌われている。マスコットとダンサー、巨大な高解像度スコアボードの時代に、エクスペリエンスは強化された。

しかし2020年、スポーツは突然の存続の危機に瀕している。無観客で再開するとしたら、リーグは進化したテクノロジーを使って、家にいるファンにどのようにして興奮を感じさせるだろうか? パンデミックの中、あらゆるビジネスがカスタマーエクスペリエンスの意味を再考する必要に迫られている。スポーツは道を示せるかもしれない。ファンはこれまで「ホームチームにひたすら声援を送るよ」と歌ってきた。

今週、NFLのドラフトがバーチャルで実施され、私たちは新しいエクスペリエンスを初めて味わうことになりそうだ。NFLのドラフトは、ラスベガスで3日間にわたって開催される、お楽しみ満載のスペクタクルになる計画だった。ベラージオホテルの前に水上ステージが設けられ、指名された選手は船で登場するはずだった。新型コロナウイルスの影響で人々は集まれなくなり、細部まで作り込まれた野外劇はすべてご破算になって、代わりにテクノロジーを使ってドラフトは開催される。

短期的には、このドラフトをバーチャル移行の最終訓練として見るのはフェアではないだろう。これは初めての試みであり、完璧ではないかもしれない。しかしイベントや大学、小売店に至るまで、あらゆるビジネスがあらゆるエクスペリエンスの可能性を突然検討することになった。みんながこれからどうするか、興味深い。

ウイルスの影響で変化しているのは、第1ラウンドのスペクタクルだけではない。多くの企業がそうであるように、ここ6週間でチームの働き方も変化している。重要な人物がひとつの部屋に集まれず、「ドラフト作戦室」を再編成する方法を見つけなくてはならない。どこかで聞いた話でしょう?

ゲームが再開したら、我々がライブでスポーツを見る方法もおそらく変わるだろう。スポーツはNFLの最初の試みから何を学んで再構築するだろう? 雰囲気を盛り上げる生の観客なしで、コミュニティをどう作り、興奮を生み出すだろう?

大きな変化もあれば小さな変化もあるだろう。アイデアをいくつかひねってみよう。選手がファンとともに参加するライブのインタラクティブなコミュニティがあり得るかもしれない。フィールドの内外で選手やコーチがマイクをつければ、我々がふだん知ることのできない場面をもっと幅広く伝えてもらえるかもしれない。可能性は無限にある。プロも学生も、すべてのスポーツで何ができるかを大いに議論しているはずだ。

VRの活用のほか、先進的なリプレイや工夫されたカメラビュー、ファンを仮想的にフィールドに入れるなどエクスペリエンスの拡張もできるだろう。近年、こうしたアイデアは検討され、徐々に実装されて、アメリカンフットボールリーグのXFL(今月破産申請して短命に終わったが)で実際に目にすることもあった。AWSとスポーツリーグの協力により、詳しいデータが見事なビジュアルで表示されるのも見たことがある。このようなアイデア、そしてさらに多くのアイデアを、急激に加速させなくてはならない状況が突然やってきた。

さまざまなエクスペリエンスが現れるとしても、我々が今まさに見出そうとしているのはリーグの創造性だ。おそらく我々は、家の中で球場の範囲を超えた体験をする新しい方法を見つけるだろう。それは、これまでとは違うが、負けず劣らずエキサイティングなエクスペリエンスだ。10歳の子供はかつての私が感じたのと同じときめきを感じるかもしれないが、その手段はきっと違う。「私を野球に連れてって」の歌詞になぞらえて言うなら、「ホームチームが負けたらとても残念。1、2、3ストライクでアウトだよ、『新しい』野球では」。

画像:Ron Miller/TechCrunch

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

全社員に弱音も話す、5人から50人の社長となって見つけた組織の成長戦略とは?

28歳で起業後、1年でM&Aを成功させた成井五久実氏。買収先の会社で5人から50人規模の会社の代表になり、書籍を執筆したり講演会に登壇したりするなど、現在進行形でサクセスストーリーを描いているように見える。

しかしその裏で、経営統合してできた企業の代表としての苦悩も。違うカルチャーを持つ従業員同士の連携や新しく経営を共にする役員との信頼向上など、3年間「当たり前のこと」積み重ねてたどり着いた、成長する組織の作り方とは。

成井五久実(個人ブログ
1987年福島県生まれ。東京女子大学後、新卒でDeNAに入社。デジタル広告営業を経験する。その後トレンダーズに転職。2016年、28歳でJIONを設立する。会社設立から1年後の2017年、3億円で事業売却。現在は、ベクトル傘下のメディア運営会社スマートメディアのCEOを務める。

経営統合の課題は「従業員同士の連携」と「役員陣への信頼」

成井氏が代表を務めていたウェブメディアを運営するJIONは2018年、ベクトルに事業譲渡。同年、同じくメディア事業でベクトルに買収された4社が統合され、新体制でIPOを目指すスマートメディアが設立され、CEOに就任する。

JIONは高校時代の友人や前職の同僚など信頼関係のある5人で構成されていた。しかしスマートメディアは統合して集まった異なるカルチャーを持つ50人規模の組織。

「昔から大きな組織を作り社会にインパクトのある企業を作りたい、と思っていたので、スマートメディアの代表になったのはとても光栄なことでした」。

「しかし年齢やカルチャーがまったく違う会社が統合したことで、事業の多角化が進むと同時に、従業員間には感情の隔たりがありました」。

「さらにトップが急に変わったことで、人間の心理上ハシゴを外されたような気分を味わった従業員も多くいたと思います。なので1年目は「従業員同士の連携」と「経営陣への信頼向上」というのが大きな課題になりました」。

組織をまとめるために行った3つの施策、ビジョン策定とオフィス移転、そして人員強化

組織をまとめるためにまず始めたのはビジョンの策定

「ICCなどのカンファレンスで組織戦略の講座を受講し、経営者に必要なことを改めて学びに行きました。話を聞いていたらどこでも『ビジョンを決めて啓蒙すること』が大切だと言っていて。確かに、目指す目標を共有し『ひとつの船に乗っている』という認識を持ってもらうためには必要不可欠です」。

「とはいえ、そんなのすごく当たり前なことだと思いますよね。でも意外とビジョンがなかったり、あったとしても浸透していなかったりする企業は多い。だからこそ、きちんとビジョンを作り理解を深めてもらうようにしようと思いました」。

会社設立した3カ月後、役員とビジョニングを専門としているクリエイティブエージェンシーのNEWPEACEを交えてビジョンを設定した。打ち立てたビジョンは「Update Media,Update Human」。

「統合した4社はメディア事業をしていたという共通項があります。だからメディア産業をテクノロジーの力でアップデートしていきたい。そして人間の感性を刺激し、私たち自身もアップデートをしていく。そのような思いでこのビジョンを作りました」。

ビジョンはできたものの、社内に浸透させるには時間がかかる。そこで、統合前のまま点在していた複数のオフィスをワンフロアに移転。

「物理的に近くなると心の距離も縮まるので、一気にまとまりが出ました」。

「さらに人員強化も行いました。まず自分より能力が高く、信頼できる人を経営陣に加えたく、当時VOYAGEGROUPの取締役だった戸崎さんにジョインいただいたことでグッと経営が安定しました」。

「次に各事業部で、会社に対して貢献度合いが高い人材をマネージャーに任命し、事業の数字を担ってもらう仕組みに。経営陣とマネージャー6人が隔週で集まり密にコミュニケーションを取ることで、マネージャーから現場へビジョンやトップの声が届くようにしたんです」。

CEO自ら営業で数字を取り、組織成長を牽引する

1年目にビジョンの策定、オフィス移転、人員強化の実施。そういったひとつひとつの施策を丁寧にやることで、バラバラだった組織が少しずつまとまりを見せるように。従業員の発案で夜にボードゲーム会を開いたり、飲み会が開催されたりと事業部の垣根を超えたコミュニケーションが活発になった。

「月に一度の全社会も始めて、毎回冒頭に私があいさつするようにしました。カッコいいことを言っても刺さらなかったら意味がない。だからこそ、素直に感じていることを話します」。

「例えば、最初のほうは『みんなと目線が合っていない気がする』と弱音もはっきり言っていましたね。自分をよく見せようとせず本音をぶつけたことで、役員への信頼度も上がったと思います」。

同社の代表になり2年目に入った2019年。事業をさらに拡大させるため、会社員時代に年間1億円の受注を取っていた実績のある成井氏自身が営業の最前線に立つことに。

「トップが口だけだと周りはついてきません。だから自ら現場に立ち営業をして、数字を出すことにこだわりました。私が誰よりも働いている姿を見せることで、現場にも熱量を感じ取ってもらいたいと思いました。その結果、マネージャーを筆頭に数字にコミットする組織文化が形成され、会社全体で売り上げも前年比で2倍の成長率を更新しています」。

さらに初年度赤字が見込めた際には、最後のクオーターに自身のお給料を全カット。体当たりの経営を実施した。

すでに2回ピボット、環境の変化に対して柔軟に対応できる組織に

実はスマートメディアは小さなピボットを重ねている。

「1年目はメディア運営をメインにしていましたが、キュレーションメディアの需要が下がり、さらにはSNSインフルエンサーの流行により、メディアの細分化が進んだことからタイアップ広告が頭打ちになっていました。受託開発やD2C事業も並行して行っていましたが、事業拡大を狙えなかったため事業の柱にはなりませんでいた」。

「そこで2年目からサブスクリプションの形態で売上が増えていく企業のオウンドメディア事業に力を入れました。メディアのPVを伸ばすノウハウを持った我々が、企業のオウンドメディアの運営をサポートすることで、顧客のマーケティング課題を解決する。この戦略がはまり、今では弊社で一番拡大している事業になっています」。

さらに3年目の今年はオウンドメディアのCMS事業「Clipkit」を運営するラグルとの経営統合を果たし、オウンドメディアやキュレーションサイトなどのウェブメディアをすぐに構築できるBtoBのSaaS型のCMSクラウド事業にピボットをしている。

「スマートメディアは5つの会社がひとつになり、柔軟な組織づくりによって成長しています。だからこそビジネスモデルにも固執しないようにしています。今はスマートメディアという社名ですが、もはやメディア事業という型には収まりきらない進化を見せています。今後は情報を届けたい人が、狙ったターゲットにリーチできるBtoB SaaS型のコンテンツプラットフォーム事業を強化していくつもりです」。

「そして世の中の流れをいち早く察知して方向転換や軌道修正を行い、事業拡大していきたい。IPOをして時価総額3桁億円を超える優良企業を目指します」。

数百名の学者たちがプライバシーに配慮したコロナウイルス接触者追跡を支持

世界中の何百名もの学者たちが、コロナウイルスの広がりを理解するための接触者追跡システム(contact tracing systems)がプライバシーを重視することを歓迎している。

300名近くの学者が署名し、月曜日(米国時間4/20)に公開された書簡が、自分などがCOVID-19感染者と接触したかを知るためのオプトインで非集権的な方法を共同開発するという、最近のAppleとGoogleの発表を賞賛している。

学者たちによると、その接触追跡アプリは、Bluetoothによる追跡を自動的に行い、位置データを集めて中央的な場所に保存するアプリに比べて、はるかにプライバシーをしっかり保護する。

書簡はこう言っている: 「接触追跡はよく理解されている疫病対策ツールだが、従来は手作業でやっていた。スマートフォンの接触追跡アプリは、状況によっては手作業による接触追跡よりも効果的だ。しかしその効果性に対しては異論もある。まず、その実装はユーザーのプライバシーを護るものでなければならない。そのことが、他の多くの問題の対策にもなる。たとえば、そんなアプリを利用して、望まざる差別や監視が行われがちだ」。

この学者たちからの推奨は、いちばん重要なタイミングでやってきた。個人のコロナウイルスへの接触を追跡する方法は、いろいろある。しかし非集権的なシステムは追跡データを一箇所に置かないから、プライバシー保護が優れている。しかし学者たちによると、データの集権的中央的な保存は「人びとに関する情報の侵害的な再構築を許すから、議論の余地なく排除すべきだ」、という。そしてそれは、「外部からの検査が可能でプライバシーの保護ができる設計になってなければならない」。

さらにまた、「現在の危機を口実に、人びとのデータを大量に集められるツールを作ってはならない。今だけでなく、今後においても」。

この書簡の数日前には、この同じ学術グループが、PEPP-PTと呼ばれる同様の接触追跡プロジェクトのサポートを取り下げた。このツールは、詳細が不詳の7つの国が使用している。そのうちの2か国、スペインとスイスは、非集権的な接触追跡ソリューションを求めていた。しかし、蓋を開けてみるとPEPP-PTは、プロトコルが独自規格の集権的中央的なもので、そのプロジェクトに関わった一部の学者も、オープンでないし透明性を欠くとして、プライバシーを重視するDP-3TプロトコルやAppleとGoogleのクロスプラットホームなソリューションの方をサポートするようになった。

この書簡に署名した学者の一人であるサリー大学のAlan Woodward氏はTechCrunchに、書簡は学術世界のコミュニティが「正しいやり方」と信ずるものを示している、と語った。

「これまで、この世界でこんなものを見たことがない」、とWoodward氏は語る。「わずかな人たちでなく、多くの人が懸念していることの表れだ。やり直しは困難だから、政府もこの声をよく聴いてから対策に着手してほしい」、とも。

関連記事: 新型コロナの接触者追跡とはどのようなものか?

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

3Dプリントメガネ製造のFitzがヘルスケアワーカーにカスタム保護メガネを提供

多くのスタートアップが、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大や影響を抑制すべく取り組んでいるヘルスケアワーカーをサポートしようと、個人用防護具(PPE)やその他の必需品を求める声に応じている。そのうちの1社が消費者直結型3DプリントメガネブランドのFitz(フィッツ)だ。できる限りの保護を必要とする最前線で働くヘルスケアワーカーのための度入りレンズの保護メガネを作るのに、同社のカスタムフィットメガネ技術を活用している。

Fitz Protectは、FitzがiOSアプリ用に作り出したカスタムメードのための手法で作られている。この手法は、Appleが最近のiPhoneや全iPad Proモデルに搭載している深度センサー付きFace IDカメラによって可能になった。アプリではバーチャルのお試しができ、フィット感をミリ単位で調整できる。Protectはメガネの1種で、あらゆる度数に対応する。しかし、目の周辺から液体が入ることがないよう、カバーとガード機能を強化した安全メガネとなっている。

ヘルスケアのスタッフは、感染を拡大させる新型コロナ患者の咳やくしゃみ、飛沫を飛ばすようなその他の行為から顔や口、鼻、目を保護するために出来る限りのことをしている。それらの策は、1枚の透明なプラスティックシートを搭載しているフェイスシールドと、口と鼻を守るN95マスク(入手できないときはそれに代わるもの)が一般的だ。

FitzのCEO、Gabriel Schlumberger(ガブリエル・シュルンベルジュ)氏は電子メールで、Fitz Protectのデザインは、処方レンズ搭載の保護メガネを探していたニューヨークやロサンゼルス、テキサスの医療現場で働く医師や看護師によるものだと説明した。

「医師の60%超がメガネを使用している。そして現在のガイドラインではコンタクトレンズの使用中止を推奨している」とシュルンベルジュ氏は話した。しかもFitz Protectはさらに保護レイヤーを加えるフェイスシールドと併用することもできる、と付け加えた。

「メガネを使用する人から、普通のメガネでは特に眉の上などのカバー範囲が十分でない、と聞いた。ボール紙の切り抜きを加えている人もいた」と同氏は述べた。「もっといいものを作るために当社が持っているシステムを活用した」

Fitzのモデルは価格面でも貢献している。というのも、従来のメガネに比べてかなり競争力のある設定になっているからだ。Fitzのメガネはフレーム、レンズ、送料込みで通常たったの95ドル(約1万円)で販売されている。また、年間185ドル(約2万円)で無制限にフレームを変えられるメンバーシッププランも提供されている。医師、看護師、その他の病院スタッフ向けのFitz Protectの費用は免除している。そして同社は、現在1つあたり100ドル(約1万1000円)ほどかかる製造コストを賄うため寄付を募っている。ただし、シュルンベルジュ氏によると、この製造コストはプロセスの改善でもう少し抑えることができるという。

最初の週にすでに3000人超のヘルスケアワーカーから申し込みがあり、他にも需要が出てきた場合に応えられるよう同社は準備しているという。

“新型コロナウイルス

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

エネチェンジがLooopと共同で海外特化の脱炭素エネルギーファンド設立、1000億規模の投資目指す

テクノロジーを活用したエネルギー関連の事業を手がけるENECHANGE(エネチェンジ)は4月21日、太陽光発電システムや電力小売り事業を展開するLooopと共同で海外特化の海外特化型の脱炭素エネルギーファンド「JAPAN ENERGY ファンド」を設立したことを明らかにした。

同ファンドは脱炭素・ESG投資を実施する国内外の投資家の協力を受けながら、投資総額1000億円規模を目指す計画。2019年12月に組成した第1号ファンドでは1億米ドル(110億円規模)での展開を予定していて、運営はENECHANGEとLooopがJapan Energy Capitalを介して共同で行う。LPには2社に加えて大和エナジー・インフラ、北陸電力が参画を決めた。

ENECHANGEとしてはデータ解析技術を持つエネルギーテック企業として、海外の再生可能エネルギー領域により深く進出していく計画だ。

ENECHANGE代表取締役会長兼CEOの城口洋平氏によると、今回のファンドは「日本企業による海外への脱炭素エネルギー投資促進」を通じて、持続可能な社会の実現へ向けた取り組みを推進するのが目的だ。

特にエマージング諸国(新興国)は先進国と比べてプレイヤーが少なく、テクノロジーの活用によって発電量や収益性向上を見込める余地も大きい。そのような背景からトルコやヨルダンなど新興国での展開を中心としたファンドの立ち上げを決めたようだ。

本ファンドは具体的に2つのプロジェクトで構成される。1つが新興国の再生可能エネルギー事業へ投資をする「JEF Renewables」。もう1つが電力ビジネスの先進国である欧米諸国などに拠点を置くエネルギー系スタートアップへ投資する「JEF Ventures」だ。

メインとなるのは前者。エネルギー自給率が低く再生可能エネルギーによるインフラ開発の必要性が高い新興国で稼働中の再生可能エネルギー発電所(太陽光発電所など)に対し、日本政府や現地政府、地元事業者と連携して投資をする。

城口氏によると新興国の発電所に関しては運営や管理が不十分なことから、発電量や収益性などの観点で本来のポテンシャルを発揮できていないところも多いそう。そこにENECHANGEグループが培ってきたデータ解析技術や設備保守点検ノウハウを取り入れバリューアップを行い、売電や再販売によって収益をあげる。

イメージとしては不動産の二次流通に考え方が近く、仕入れてきた中古不動産をリノベーションしてより高い価格で販売するようなものだという。

「センサーを設置してパネルやインバーターなどのデータをリアルタイムで取得し、発電量や日射量、パネル温度などを緻密に解析すると、本来はもっと効率的に運用できる可能性を秘めた発電所がわかる。イギリスやドイツなど一部の先進国ではこのような取り組みが進んでいるが、新興国はまだまだ水準が低い。AIやデータ解析技術を使うことで改善できる余地が大きい」(城口氏)

1号投資案件としてはトルコの太陽光発電所に対して約1000万米ドル(約11億円)を出資し、共同運営権を取得する。この発電所も東京ドーム数個分の大きさのため、人力でくまなく状況をチェックするのは極めて難しく、そこにテクノロジーを活かせるという。

これまでENECHANGEではグループ会社であるSMAP ENERGYの技術を用いてスマートメーターの解析に力を入れてきたが、電力分野においては電力の消費側だけでなく、発電側にもデータを活用できるチャンスがあり市場も大きい。同社としてはその市場に進出していきたいという考えもあるようだ。

「再生可能エネルギー領域ではもともと二次流通市場が存在していなかったところから、徐々にグローバルで市場ができ始めている状況。日本では固定価格買取制度(FIT)があるため現時点で大きな市場ではないものの、2030年代から広がっていくと考えられる。ゆくゆくは日本での事業展開も視野に入れながら事業を作っていきたい」(城口氏)

上述した通りJAPAN ENERGYファンドでは先端技術を有する海外スタートアップへの投資も並行して実施して行く計画。こちらではENECHANGEが運営する欧州エネルギーベンチャー開拓プログラム「Japan Energy Challenge」と連携し、脱炭素技術に関して先行する有望なスタートアップへの投資を通じて、日本国内での脱炭素化に繋がるオープンイノベーションの実現を目指すという。

Y Combinatorが本年夏季からアクセラレーターのクラスを全面的にリモートへ移行

先月はCOVID-19の全国的なアウトブレークで急遽、リモートのデモデーを余儀なくされたY Combinatorが今日(米国時間4/20)、次回は全セッションを完全にリモートで行う、と発表した。

Y CombinatorのCEO Michael Seibel氏は同社のサイトへのポストで、その発表を行なった。そこで彼は、「2020年夏季はリモートで行うと決定した。COVID-19の危機のさなかでは、創業者たちとYCのスタッフの安全が優先されるからである」、と述べている。

2020年夏季を受ける創業者たちは、面接も執務時間も夜の会合もすべてビデオ会議で行う。ということは、まだ発表はないが、彼らのデモデーもリモートになるのだろう。最前のクラスではスタートアップたちが、ステージ上のローンチを今後のデモデーに延ばしてもよい、というオプションを与えられたが、今後それはないだろう。

YCがオンライン化されると当然、創業者としてはクラスの質が気になる。従来、YCのアクセラレーター事業に参加する創業者たちは、15万ドルの資金を得てその見返りに会社の所有権の7%をYCに提供していた。そしてその後は、YCのネットワークやアドバイザー集団にアクセスできるようになる。

Y Combinatorのクラスは、今ではとても大きいが、今回はその形の全体が変わることになる。今度の夏季のサイズはまだ確定していないが、前回は240のスタートアップが参加した。これだけの数にオンラインで対応するためにYCは、スタートアップをグループ化するやり方や、彼らが投資家にプレゼンするやり方などを工夫しなければならない。前回も対面のデモデーがなくなって創業者たちは、このイベントに集まるVCたちの大きな集団に生身の自分を紹介する機会を失った。

先週TechCrunchは、YCが、その比例案分制の投資をやめて、スタートアップへの投資をケースバイケースで行う、と報じた。既存の持ち分に応じての比例的なシード資金やシリーズAの投資は、これまでの同社の伝統だった。

関連記事: Changing policy, Y Combinator cuts its pro rata stake and makes investments case-by-case…Y Combinatorが比例案分制をやめてケースバイケースの投資に移行(未訳)

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa