国防省の仕事を請け負う大手電子機器メーカーCPIがランサムウェア攻撃によって業務に支障

防衛ならびに通信市場向けの大手電子機器メーカーであるCPI(Communications & Power Industries)が、ランサムウェア攻撃を受けて業務に支障が生じている状態に置かれているというニュースをTechCrunchはつかんだ。事件を知る情報筋によれば、CPIは事件直後の1月中旬に約50万ドル(5300万円)の身代金を支払ったものの、業務はまだ完全には復旧していないとのことだ。

米国カリフォルニアに本拠を置くCPIは、レーダー、ミサイルシーカー、そして電子戦技術といった軍事用デバイスおよび機器に向けたコンポーネントを製造している。同社の顧客には、米国国防総省とその最先端研究組織DARPAも名前を連ねている。

同社はランサムウェア攻撃を受けたことを認めた。

「私たちは事件を調査するために、第三者であるフォレンジック調査企業と協力しています。調査は継続中です」と語るのはCPIの広報担当者であるAmanda Mogin(アマンダ・モギン)氏だ。「私たちは弁護士と協力して、法執行機関や政府当局はもちろん、お客様にもタイムリーに通知してきました」。

情報筋によれば、(ネットワーク上で最高レベルの権限を持つユーザーである)ドメイン管理者が、ログイン中に悪意のあるリンクをクリックしたために、ファイル暗号化マルウェアが起動されたのだという。数千台のコンピューターがセグメント化されていないネットワーク上の同じドメイン上にあったために、ランサムウェアはオンサイトのバックアップを含め、すべてのCPIオフィスに急速に広がったのだと情報筋は明かす。

また2月末の時点では、全社のコンピューターの約4分の1だけが、復旧し稼働しているに過ぎないため、同社は「パニックモード」であるとも伝えている。

人員不足が業務を妨げていると情報筋は語る。機密の軍事データを保持していたコンピューターの一部は、同社が身代金を支払って手に入れた復号キーを用いて回復することができた。そのうちの1つのシステムには、ロッキードマーチンが開発したイージス海軍兵器システムに関連するファイルも置かれていたと言われている。

ロッキードの広報担当者は「私たちはCPIの状況を知っていますし、サプライチェーンに関連した潜在的サイバー事故に対する弊社の標準的な対応プロセスに従っています」と説明する。

情報筋は、残りのコンピューターの多くはオペレーティングシステムをゼロからインストールし直していると語る。なおCPIのシステムの一部(約150台のコンピューター)は、いまでもWindows XPを運用している(XPは2014年にセキュリティパッチの配信が終了している)。

しかし、今回の攻撃にどのようなランサムウェアが使用されたかはわかっていない。CPIのスポークスマンは、私たちの質問には一切答えず、簡単な声明以上のコメントを拒否した。同社は、先月大企業を標的として相次いで行われた攻撃の最新の被害者となった。今週だけでも、法律サービスの巨人Epiq Globalがランサムウェアの攻撃によって業務に支障が出ており、またTeslaとSpaceXに部品を供給するVisserが、データを盗むDoppelPaymerと呼ばれる新しい種類のランサムウェアの攻撃に見舞われた。このマルウェアはファイルを暗号化するだけでなく、ハッカーのサーバーへ企業データを流出させるのだ。

DoppelPaymer攻撃を行ったハッカーたちは、会社が身代金を支払わなかったために、先週Visserの 内部ファイルの公開を始めた。セキュリティ会社のEmsisoftで脅威アナリストを務めるBrett Callow(ブレット・キャロウ氏)は、旧来のファイル暗号化ランサムウェアの戦術が変更されてきたと語る。

「これらの事件は、最初の段階から漏洩として考えられるべきであり、そのように開示され報告されるべきなのです」とキャロウ氏は語った。「企業や人びとが何も知らされないうちに、犯罪者たちはデータを悪用するための時間をたっぷりと手に入れつつあるのです」。

画像クレジット: Audrey Connolly (opens in a new window)/ Getty Images

原文へ

(翻訳:sako)

米マイクロソフトは在宅勤務で仕事のない時給制現場労働者にも通常賃金を払い続ける

米国で新型コロナウイルス(COVID-19)の患者が増えるに伴い、一部の企業は社員にできる限り在宅勤務を求めている。しかしそれでは困るのが現場業務、とりわけ時間給で働いているスタッフだ。米国時間3月5日、Microsoft(マイクロソフト)は「ワシントン州ピュージェット湾と北カリフォルニアのすべてのベンダーの時給制サービスプロバイダーに通常の賃金を継続的に支払う。労務時間の減少は賃金の計算に勘案しない」と発表した

この発表はマイクロソフトの両地域の労働者だけを指しているが、同社は「新型コロナウイルスの影響下にあるこの国と世界のそのほかの部分についても同様の方式を前向きに検討する」と説明している。同社社長のBrad Smith(ブラッド・スミス)氏はブログで「「在宅勤務が可能な地域の従業員に同様の対応を求めている」とコメントしている。

同氏はさらに「その結果、該当地域ではマイクロソフトの日常業務に欠かせない時間給労働者の現場常駐ニーズを減らしている。例えば、マイクロソフトのベンダーのために働いている個人や、カフェのスタッフ、シャトルの運転手、および現場の技術やオーディオビジュアルのニーズをサポートしている人々だ。時間給の従業員が仕事を失うことの苦難は十分に承知している。その結果マイクロソフトは、すべてのベンダーの時給制サービスプロバイダーにサービスのニーズを減らしたこの期間中、通常の賃金を継続的に支払うことを決定した」とブログに書いている。

スミス氏はさらに「国民の健康を守る仕事は現状ではもっとスピードアップが必要だが、経済は減速が許されない。弊社は健康を最優先している企業ではあるが、同時に新型コロナウイルスが経済と社会に及ぼす影響にも対処していくつもりだ。大企業にできることが小企業にはできないこともありうると承知しているが、このようなやり方を採ることの可能な大企業は、それをぜひ検討していただきたい」と続ける。

新型コロナウイルスの患者が見つかった地域で従業員の在宅勤務を求めているワシントン州とカリフォルニア州のテクノロジー企業は同社のほかに、GoogleLyftSquareなどがある。また新型コロナウイルスの懸念により、MWC(Mobile World Congress)やGoogleのデベロッパーカンファレンスであるGoogle I/Oなど、大きなイベントも中止となった

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

App Storeで警官配備の表示アプリが禁止され出会い系も困難に、アップルがガイドライン改定

Apple(アップル)は今週、デベロッパーにApp Store Reviewガイドライン改訂版を示し、どのようなアプリが許可され、あるいは拒絶されるのか、またアプリの動作として許されることを詳しく記述して注意を促した。同社によれば、今回のガイドラインの変更は、レビュー、プッシュ通知、アップルでサインイン(Sign in with Apple)、データの収集とストレージ、モバイルデバイスの管理、その他に影響を与えるという。かなり目立つ変更点としては、アプリが広告を通知として表示できるようになったこと、出会い系や占いアプリに対してのルールが厳しくなったこと、ユーザーが警察による取り締まりを回避することを助けるようなアプリをAppleが拒絶できるようする新ルールが盛り込まれたことなど、いろいろある。

最後に挙げた、警官のいる場所を表示するアプリに対する変更は、驚くべきことに、プッシュ広告や出会い系アプリに対する変更ほど注目されていない。しかし、これは今回のルール変更の中で最も注視すべきものだろう。

App Store Reviewガイドラインの以前のバージョン(2020年1月のスナップショットを参照)には、「アプリは法執行機関によって公開された飲酒運転検問所のみを表示できる」と書かれていた。そして「アプリが「飲酒運転」や「速度の超過」を助長するようなことをしてはならない」と記されていた。当然の懸念だろう。

今回改訂されたルール(セクション1.4.4)では、これまでの文言に加えて、「ユーザーが法執行機関を回避するのを補助することによって、その種類を問わず、犯罪を犯したり、犯そうとするするために使われるような」アプリをアップルは拒絶すると明記されている。

思い出してみれば、昨年アップルは香港の民主主義推進派のデモ隊が警官を避けるために使用していたクラウドソーシングによるマッピングアプリ「HKmap」を拒絶するという決定を巡って、やっかいな状況に巻き込まれていた。当初、アプリは承認されたが、同社は中国の国営メディアから「暴徒による暴力行為を助長している」と批判されると、その1日後に承認が取り消した。

このアプリでは、ユーザーは警官のいる場所、催涙ガスが使われている場所、その他の抗議活動に関する詳細など、クラウドソーシングによって集めた情報を、定期的に地図上にプロットして共有できる。アップルは声明の中で、そのアプリが「警官を待ち伏せして標的にする」ために使われていることが判明したため、削除したと述べた。

セクション1.4.4の変更前(上)と変更後(下)

新しいApp Store Reviewガイドラインでは、この種のアプリに関するアップルの最終決定を明記している。事実上、ユーザーが法執行機関を回避することを支援するアプリを禁止した。ただし、ガイドラインにも記載されているように、警官を避けるのは必ずしも「犯罪を犯す」ためとは限らない。アムネスティ・インターナショナルは、香港の抗議活動中に警察に拘束された人々が、殴打されたり、拷問を受けるなど、警察による残虐行為があったことを文書で報告している。つまりHKmapには、ユーザーが自らの身の安全を確保するために、警官を回避することを可能にするという面もあったことになる。

このようにアップルのルールにはあいまいな部分があり、アプリを拒絶したり禁止したりすることを決定する前に、そのアプリがどのように使われるのか同社として精査する余地を残している。

今回のガイドラインに関して注目すべき他の変更としては、アプリのデベロッパーが、プッシュ通知でマーケティングメッセージ(つまり広告)を送信できるようにするという更新(セクション4.5.4)も含まれている。これまではこのような動作は禁止されていた。この変更は、すぐにユーザーから抗議を受けることになったが、最初に考えられたほど悪くないかもしれない。

これまで禁止されていたにもかかわらず、多くのアプリが、すでにユーザーにスパム広告を表示していたのは明らかだ。これからは、そうしたアプリは、ユーザーインターフェース内で顧客の同意を得る必要があり、アプリ内にオプトアウトのための仕組みを用意して、ユーザーがプッシュ通知による広告をオフにできるようにすることが求められる。この変更により、アプリ内購入が可能だったり、広告収入に依存しているアプリについて、オプトアウトの仕組みを備えているか、少なくともレビュー担当者はチェックしなければならなくなる。

「こうしたサービスを悪用すると、デベロッパーの権利が取り消される可能性があります」と、アップルは警告している。また別の変更では、「占い」や「出会い系」アプリが、「ユニークで高品質な」体験を提供していない場合、スパムとみなされるアプリのリストに追加された。それに関連するセクション(4.3)では、アップルが過飽和だと認識していたり、より厳格なレビューが必要だと考えているアプリのカテゴリについてデベロッパーに注意を促している。

また新しいガイドラインには、App Storeに投稿されたレビューにデベロッパーが対応する方法を指示するセクション(5.6.1)が含まれている。そこには「ユーザーのコメントに返信する際には、敬意を持って接すること」や、無関係な情報、個人情報、スパム、マーケティング情報を文面に含んではならないと念を押している。またこのセクションには、デベロッパーがユーザーのレビューを求める際には、アップルのAPIを使い、ほかのメカニズムを利用してはならないことも明記している。これによりユーザーは、iOSの設定からすべてのアプリについてApp Storeのレビューの要求をオフに切り替えることができる。この文言は以前のガイドラインにもあったものだが、セクション1.1.7から同5.6.1に移動した。

最後にアップルは、既存アプリのアップデートを含み、今後のすべてのアプリは、2020年4月30日以降、iOS 13のSDKを使用したものである必要があると、デベロッパーに念を押している。それ以降のアプリは、すべて「Appleでサインイン」のログイン/サインアップ機能をサポートする必要もある。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

Axiom Spaceが提供する国際宇宙ステーション10日間の旅はコミコミでたったの58億円

Axiom Space(アクシアム・スペース)は、国際宇宙ステーション(ISS)への定員3名の往復旅行を5500万ドル(約58億円)という超低価格で提供し、歴史を変えようとしている。

米国ヒューストンに本社を置き、ベンチャー投資企業の支援を受けるAxiomは、同社で訓練した司令官1人と、民間宇宙飛行士3人をISSまでCrew Dragon(クルー・ドラゴン)で往復輸送する契約をSpaceX(スペースエックス)と交わした。

このミッションは2021年後半に打ち上げが予定されており、3人のクルーはISSに滞在して「少なくとも8日間、大きな由緒正しい宇宙ステーションでしか味わえない微小重力と地球の眺めを堪能できます」と同社は声明の中で述べている。

同社の最高責任者Michael Suffredini(マイケル・サフレディニ)氏にとってこの宇宙旅行は、米航空宇宙局(NASA)でのISSの管理者という以前の仕事の延長線上にある。

「この歴史に残る宇宙飛行は、誰もが日常的に宇宙に行ける時代に向かう分岐点となります」とサフレディニ氏は声明で語っている。「これはAxiom Spaceが、つまり民間企業が初めて運営する数々のISSへの完全な有人飛行ミッションの中の最初のひとつに過ぎません。輸送手段を確保できたことは、目標達成への大きな前進であり、この事業でSpaceXと協力できることを大変にうれしく思います」。

この宇宙旅行は、AxiomがNASAと交わしたSpace Act Agreement(宇宙法協定)のもとで実施されるISSへの数々の「先駆け的ミッション」の中の最初のものとなる。Axiomは、この他にもISSへの民間宇宙飛行ミッションの合意を得るべくNASAと話し合いを続けている。

Axiomでは、NASAのスケジュールの合間を縫って年2回のフライトを人々に提供したいと考えている。その計画を進めながら、同社は自己資金による宇宙ステーションの建造も進める。

同社はすでにその目標のために機関投資家の支援を取り付け、個人投資家やCrunchbaseの情報によるとBalfour Capital(バルフォー・キャピタル)、Starbridge Venture Capital(スターブリッジ・ベンチャー・キャピタル)といった機関投資企業から1600万ドル(約17億円)を調達している。

「2012年からSpaceXは、NASAとの契約に従いISSに物資を送っていました。そして今年の後半には、初めてNASAの宇宙飛行士を運びます」とSpaceXの社長兼最高執行責任者であるGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏は声明で述べている。「今、AxiomとそのNASAからの支援のお陰で、国際宇宙ステーションが初めて民間有人ミッションに門戸を開いたことにより、宇宙の商業化はさらに加速され、有人宇宙探査の新時代が幕を開けようとしています」。

Axiomは、宇宙飛行に挑戦したいという人には、あらゆるトレーニング、計画、ハードウェア、生命維持、医療サポート、生活必需品、安全性証明、軌道上のオペレーションを提供すると話している。

また同社は、2024年後半から始まる、ISSへの宇宙ステーションモジュールの造設を担う企業としても、NASAから選定されている。その目的は、宇宙ステーションにプライベートセクションを設け、その利用可能で居住可能な空間を広げることにある。ISSの運用が終了した際にはそのセグメントを切り離し、自由飛行の商用宇宙ステーションとして運用したいとAxiomは考えている。

SpaceXにとってAxiomとの契約は、単にNASAの宇宙飛行士を運送し、大きな収入源を加えてくれる以上にCrew Dragon宇宙船の商業運用の幅を広げてくれるものでもある。

まさにそれが、SpaceXが商用有人宇宙観光業者と交わしたもうひとつの契約だ。先月、SpaceXは、Crew Dragonに4人の乗客を乗せて5日間の宇宙飛行を提供する事業を行うことで、Space Adventures(スペース・アドベンチャーズ)と合意している。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

5G通信は24カ国でスタートし2025年には世界通信の20%に、GSMAが年次報告発表

世界の携帯電話キャリヤが参加する通信事業者協会であるGSMAがモバイルビジネスの現状と見通しに関して年次報告を発表した。これによれば、次世代モバイル通信の標準規格、 5Gは世界の24市場で実際に利用がスタートしたという。

5Gは最先端のネットワークテクノロジーであり、現在のLTE/4Gと比較して最大で100倍速くなる。レイテンシーは数ミリ秒に短縮され、セルタワーあたりでさらに多くのデバイスを接続できる。5Gの導入はリアルタイムのAI利用を強化するだけでなく、各種のレガシー・ビジネスのデジタル化を促進するスマート・サービスの新しい波となることが強く期待されている。

GSMAの昨年のレポートでは、5Gが稼働している市場についてはっきりした数字が出ていなかったがもの、2018年末に米国と韓国で5Gが一般向けにリリースされたことを受けて、5Gテクノロジーは「確固たる現実」だとした。また主要国16カ国が2019年末までに5Gネットワークを開始すると予想した。今年のレポートは5Gの「大きな市場牽引力」を強調している。「2020年1月20日にはさらに39カ国79事業者が商用5Gサービスを開始する計画を発表した」という。

4Gおよびそれ以前の世代の接続と比べて5G接続のシェアは今のところごくわずかに過ぎない。レポートによると、2019年の支配的なモバイルテクノロジーは4Gだ。セッション数は40億以上で総セッション数の52%を占めている(携帯網利用ライセンスを取得したIoTデバイスを除く)。

GSMAは、今後数年間は4Gが成長を続け、2023年に世界のセッションの60%弱を占めてピークとなると予測している。5G について、予測では2025年までに世界のセッションの20%になると予測しており、アジアの先進地帯、北米、ヨーロッパで「非常に積極的な展開」を期待している。

さらに視野を広げると、世界人口のほぼ半数の38億人が2Gから5Gまでのモバイルインターネットのユーザーであり、2025年までにはこの数字は61%(50億人)に増加すると予測されている。

ただし5Gはユニバーサル・サービスとして導入されているわけではない点は強調しておく必要がある。現実には5Gは都市の中心部をターゲットとする傾向が強い。5Gサービスを立ち上げてきた24市場にしても人口比でいえばカバー率は非常に低いだろう。また5Gとそれ以外のスマートフォンを比較しても同様だ。ただソニーが最初の5Gスマートフォンを発表するなど、昨年より多くの製品がリリースされている。

しかし最も重要な点は次世代デバイスの接続性に対する消費者の需要がまだ十分立ち上がっていないこだろう。GSMAのレポートには(キャリアにとっては死活的な)「消費者は(5Gに)進んで料金を払うだろうか?」という項目がある。

【略】

英国、オーストラリア、スペイン、イタリアなどの市場の大人の場合、5Gテクノロジーにに対する認識率は高いものの支払い意欲は低い。5Gへのアップグレードを希望していると回答したのは35%未満に留まった。米国市場も同様に5Gの知名度は高いが、アップグレードの移行はヨーロッパよりはわずかに高い(最大40%強)程度だ。

GSMAは「データ速度の向上だけでなく、他のメリットの認知度を高めるためにキャリアはさらに努力しなければならない」としている。これには「モバイル提供地域の拡大」「革新的な新しいサービス」「従来接続できていなかった各種IoTデバイスへの接続」などをアピールすることが5Gマーケティングに必要だという。

ただしこのレポートは、中国以外ではIoTデバイスに関して程度の差はあるもののニーズが高くないことを明らかにしている。

それでもGSMAは、今後5年間で数十億個のIoTデバイスが接続されることになると予測している。2019年から2025年にかけて世界のIoTデバイスの接続数は約250億と2倍を超え、収入は3倍の1.1兆ドルにまで成長することを期待している。

レポートの別の章では、通信事業者の収入の伸びがインターネットを利用する企業に比べて低いという以前からの問題を扱っていまり。GSMAは、通信事業者インターネットを利用する巨大企業だけでなくデバイスのメーカーにも遅れをとっていることに注意を促している。

【略】

ちなみにGSMAの2025年に向けての予測ないし希望的観測のトップはGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)の1社が分割されるというものだ。大胆な予測で特に会社かを名指しはしていないが、米国人の多くはGoogleに注目することだろう。GSMAの短期のウィッシュリストには、「有力メーカーのARメガネが少なくとも一種類マスマーケット入りする」ことだ。 ヘルス関連のウェアラブル・デバイスは「公衆衛生システムの負荷を軽減する解決策の一部なる」という。

【略】

2025年の5GについてGSMAは 「これはモバイルの歴史の中で、消費者よりも企業に大きな影響を与える最初のテクノロジーはとなる」と予測する。これは確かに5Gに対する消費者の需要が低調だということの裏側を婉曲に述べたものだろう。消費者は(ネットワークごとに異なるものの)多少の速度の向上と引き換えにいま以上の料金を支払う意欲に欠けており、キャリヤは企業需要にヘッジを期待しているようだ。

GSMAはレポートで「政府、規制当局は、高度な技術(AIやIoTなど)がすべての経済分野で推進されることを奨励するような政策を実施し、5Gテクノロジーの商業利用を促進する役割を果たさなければならない」と書いているが、これは欧州委員会によって最近EU委員会によって設定された政策の優先順位と一致しておりブリュッセルでのキャリアのロビー活動が実を結んだことを示している。

EU全体の産業データをプールし再利用する戦略を推進するEUの域内市場担当コミッショナー、Thierry Breton(ティエリ・ブルトン)氏は、5Gネットワークの構築が「決定的に重要」という立場だが、Breton氏はこれ以前にFrance Telecom(現在のOrange)のCEOを務めていた。

GSMAの年次レポートは全文がダウンロードできる。

画像:Miquel Benitez / Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

大手ファッションブランドのJ.Crewが顧客アカウントの被害を公表

大手ファッションブランドのJ.Crewが、同社顧客のオンラインアカウントが「権限のない1つのグループ」によってアクセスされたと発表した。このアクセスは約1年前のことだが、今になってこの被害を公表した。

同社は米国時間3月3日にカリフォルニア州司法当局を通じて公表した書面で、ハッカーは2019年4月ごろに顧客のアカウントにアクセスしたと述べた。この書面によれば、ハッカーは顧客のオンラインアカウントからカード種別、カード番号の下4桁、有効期限、請求先住所などの情報を取得した。オンラインアカウントには顧客の注文番号、配送確認番号、配送状況も保存されていた。

同社の広報担当者は、ハッカーがクレデンシャルスタッフィング攻撃(パスワードリスト型攻撃)のテクニックを使ったことを認めた。これは、すでに流出しているユーザー名とパスワードを使って別のウェブサイトのアカウントにアクセスするテクニックだ。

広報担当者は、影響を受けた顧客は「少数」だと述べたが、正確な数には言及しなかった。カリフォルニア州で事業を運営している企業は、同州の500人以上の住民に関係するセキュリティの問題が発生したら司法当局に報告することが義務づけられている。当局に提出された書面には「複数の州」への通知と記載されており、カリフォルニア州在住以外の顧客にも影響が及んだことが示唆されている。

さらに重大な疑問は、なぜJ.Crewはこの問題を検知し当局と顧客に公表するまでに約1年を要したのかということだが、これについても明らかにされていない。

広報担当者は、「定期的なウェブのスキャン」で不正アクセスを検知し、顧客には「即座に通知した」と述べた。いつスキャンしたか、なぜアカウントの被害をもっと早く検知できなかったかは明らかにされていない。カリフォルニアと、J.Crewの本社があるニューヨーク、そのどちらの法律でも、企業が被害を公表する期限は具体的には定められていない。「適切なタイミングで、不合理な遅れなく」顧客に通知するというだけだ。

クレデンシャルスタッフィング攻撃によるセキュリティの被害を公表した企業としては、J.Crewが最新のケースだ。昨年はSpotify、メキシコ料理レストランのChipotle、Amazon傘下のドア用インターホンメーカーのRing、ゲームストリーミングサービスのTwitchが顧客からアカウント流出の訴えを受けた。

画像: Bloomberg / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

イスラエルのAIチップメーカーHailoがNECなどから約64億円調達

イスラエルのAIチップメーカーであるHailo(ハイロ)は3月5日、既存投資家がリードするシリーズBラウンドで6000万ドル(約64億円)を調達したと発表した。本ラウンドには新規の戦略投資家としてスイスを拠点とする多国籍企業ABBのベンチャー部門であるABB Technology Venturesや、日本電気(NEC)、英国ロンドンのLatitude Venturesも参加した。調達した資金はHailo-8ディープラーニングチップの展開と新たなマーケットや産業の開拓に使われる見込みだ。

「既存の投資家ならびに新たな戦略投資家から寄せられた多大な信頼は、弊社の画期的なイノベーションとマーケットに秘められた可能性を示している」とCEOで共同創業者のOrr Danon(オア・ダノン)氏は話した。そして「調達した資金で、モビリティ、スマートシティ、産業オートメーション、スマート小売などの分野を含む世界中のスマートデバイスや知能産業において新たなレベルのエッジコンピューティング能力の展開を促進できる」と続ける。

筆者が最後にHailoのチームに会ったのは1月のCESだ。そのとき、同社はかなりの回数の素晴らしいデモを披露していた。その多くはリアルタイム画像認識のものだ。Hailoチップで素晴らしいのは、画期的なアーキテクチャ。ユーザーのカスタムニュートラルネットワークをベストな状態にするためにリソースに自動的に対応することができる。この能力ゆえに、Hailoチップは単に速いだけでなく、かなり省エネだ。同社はこのチップのパフォーマンスとして1秒あたり26兆オペレーションを約束し、「小ささ、高パフォーマンス、低エネルギー消費でもって他のエッジプロセッサーをしのぐ」と話す。

今回の投資ラウンドで、Hailoの累計調達額は8800万ドル(約93億円)となった。投資家がHailoに向けている熱い眼差しは、部分的には他のイスラエルのチップスタートアップの成功からきている。Mobileye(モービルアイ)はIntel(インテル)に153億ドル(約1兆6000億円)で買収され、Intelはつい最近Habana Labs(ハバナ・ラボ)も買収した。もちろん、AI/MLテクノロジーが急速に必須のものになりつつあるなかで、先端のディープラーニングチップにとって機は熟している。

「急速に台頭しているAIプロセッサーの市場でHailoは際立ったプレイヤーになる準備ができている」とLatitude VenturesのパートナーであるJulian Rowe(ジュリアン・ロウ)氏は話した。「彼らのディープラーニングエッジチップは多くの部門とってディスラプティブなものとなり得る。一方でHailoのチップが切り開く革新的なユースケースは出始めたばかりだ。今後の展開を考えたとき、チームに加わるのが楽しみだ」

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

ウェブを定期的にクロールしてブロックすべきトラッカーのリストを作るDuckDuckGo

大量の無用な広告を避けたりブロックしてやっと目的の情報に到達することは、今や毎日のお決まりの仕事のようだ。現在のほとんどすべてのウェブサイトを悩ませているこの迷惑行為を軽減するため、DuckDuckGoは主な犯人のリストを作り、それを自社のクローラーでコンスタントに更新している。もちろん無料で。

このTracker Radarと呼ばれる新しいサービスを発表するブログ記事でDuckDuckGoは「広告ブロッカーやトラッカーブロッカーは必要不可欠なソフトウェアだが、仕事の効率が低かったり、一時的な効果しかないものが多い」と説明する。

例えば、ブロッカーソフトが使っている人気のリストのひとつであるEasyListには、ルールが10万件ある。それに基づいて、警戒すべきURLや文字列をブロッカーに教える。それは優れたリソースだが、何年もかけて手作業で編集しているので、今や無用に肥大している。陳腐化したルールが何千もあるし、ユーザーがよく訪れる上位100位ぐらいのサイトではめったに現れない迷惑広告もある。

DuckDuckGoでは、毎回白紙状態からスタートしてウェブクローラーに仕事をさせる。クローラーとは、多くのウェブサイトを次々と訪ねてそのサイトの内容のカタログを作るソフトウェアだ。Tracker Radarは、クローラーが集めた情報を利用して、トラッカーの特徴やサイト管理者の要求に基づくルールのデータベースを作る。

DuckDuckGoのTracker RadarPartが記録したトラッカーのプロファイルの一部

Tracker Radarは毎回およそ5万のサイトの特徴を比較してルールや関連づけを見つけるので、このデータベースは網羅的でかつフレキシブルだ。最近のトラッキングは極めて巧妙で、複数のサイトやサービスを使ってCookieなどを無効にしているユーザーでも見つけ出す。Tracker Radarは多くのサイトの挙動を常時比較し、それらが共通して使っているトラッキングのテクニックを見つける。そうやって得られるデータは、リッチでしかも最新のものだ。

というのは、あくまでもDuckDuckGoのピッチ(セールストーク)だが、同社はプライバシー保護のためのプラグインやアプリも提供している。もちろんそれらには、Tracker Radarのデータが使われている。そして無料なのはデータだけでなく、Tracker Radarがデータを集めてまとめる部分のコードもだ。誰もが自分なりに利用して改良もできる。

そこで、今使ってるのが人気のブロッカーツールのuBlock Originなどである人も、単純にそのデータベースの情報を利用できる。あるいは、DuckDuckGoの軽量のソリューションがよければ、ブラウザーの「プラグイン」→「エクステンション」→「アドオン」のメニューからインストールすればいいりただし対応ブラウザーは、Chrome、FirefoxまたはSafariだ。モバイルでは、DuckDuckGo自身のブラウザーを使える。

画像クレジット: DuckDuckGo

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Mars 2020火星探査車の名称は忍耐を意味するPerseveranceに決定

NASAが火星に送り込む次のローバー(探査車)は、これまでのコードネームから、この国の純真な少年の提案した名前に変わった。美徳に関する名前を使う伝統を守り、Mars 2020ローバーの名前はPerseverance(パーシビランス)に決まった。

この名前を提案したのは、バージニア州の中学生であるAlexander Mather(アレクサンダー・マザー)氏だ。彼を含む約2万8000人の子供が昨年行われたエッセイコンテストで名前を提案した。最終9候補は、Endurance(持続)、Tenacity(執拗)、Promise(約束)、Vision(先見)、Clarity(明瞭)、Ingenuity(独創)、Fortitude(不屈)、Courage(勇気)、そして勝者となったPerseverance(忍耐)だ。

この名前は、おそらく最も適切であり、過去の火星探査車が公式ミッション期間よりはるかに長く働いてきた記録を踏まえると、他に選ぶとすればEnduranceだけだろう。先の探査車、Oppotunity(オボチュニティ)は90日間の火星への旅を命じられたが、惑星規模の砂嵐の中でついに電力を失うまで14年以上走り続けたことはよく知られている。

関連記事:オポチュニティ、火星での偉大な探査ミッションを終える

もちろん探査車は苦労もなく走り続けたわけではない。チームは遠く離れたロボットプラットフォーム の方向転換や再プログラムをしながら常に救援体制を整えていた。NASAが注目したのはこの点だったと思われる。

「これまでのどの探査ミッションとも同じく、この探査車は幾多の困難に直面し、驚くべき発見をするだろう。ここに至るまでにも数多くの障害を乗り越えてきた」とNASAの科学ミッション本部のThomas Zurbuchen(トーマス・ザーブチェン)副長官がニュースリリースで言った。「Alex君や彼のクラスメートたちはアルテミス世代であり、火星に向かう宇宙の次の一歩を進む人たちだ。この感動的な仕事には常に忍耐が必要だ」

マザー少年は、教師がまとめてメールで申し込む教室内活動に参加したわけではない。2018年のスペースキャンプに参加し、そこで見たサターンVロケットに心を奪われた。ネーミングコンテストで優勝したことで、この夏には家族と共にケープカナベラルにローバーの打上げを見に行くことになった。

「これは月に人を送り、近く再びやろうとしているNASAの力になるチャンスでした」とマザー氏は言った。「この火星探査車は火星に人間が住むための道筋をつくるものであり、どんな形でも役に立ちたいと思っていました。挑戦しないという選択肢はありません」

関連記事:NASAの火星探査車「Mars 2020」が6輪ホイールで初接地

コンテストに参加した他の子供たちへの謝意をこめて、Perseveranceにはセミファイナリスト8人の名前が彼らの提案155件と共に刻まれたチップが載せられる。文字は人間の毛髪の1000分の1の大きさだが、それでも。

TechCrunchでは打ち上げが近づいたらさらにミッションの記事を書くつもりだが、それまでは責任感が強く常に明るいローバーの一人称Twitterアカウントで最新情報をフォローしよう。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Twitterはヘイト禁止規則に年齢、障害、疾患にもとづく人間性を否定する言動を追加

昨年、Twitterはヘイトスピーチに関する規定の禁止項目を拡大し、宗教団体に対する人間性を否定する言動を加えた。米国時間3月5日、Twitterはその規定を拡大し、年齢、障害、または疾患を理由に人間性を否定する言動も禁止すると発表した。最後のひとつは、もちろん、感染が広がりつつある新型コロナウイルス(COVID-19)に関連させたTwitter上での憎悪に満ちた、または人種差別的発言に即応するためのものだ。

Twitterは、本日以前にこのルールを破った投稿は削除する必要があるが、投稿された時点ではまだこのルールが適用されていないため、このことで投稿者のアカウントが停止されることはないと話している。ただし、今から投稿されるものに関しては、Twitterの改訂版「暴言や脅迫、差別的言動に対するTwitterのポリシー」のルールに従うこととなる。この包括的なポリシーには、ヘイト行為(暴力行為や脅迫行為を助長する投稿)や、ヘイト表現を伴う画像やユーザー名の公表に関するルールが記されている。

Twitter Safety:私たちはTwitterをより安全にするためのルールを常に刷新しています。昨年、私たちは 『ヘイト行為に対するTwitterポリシー』 を改訂し、非人間的な言葉に対応しました。この度、年齢、障がいや病気にもとづいて人間性を否定する言葉もポリシーの対象に含めます。

そのポリシーはすでに、人種、民族、出身地、社会的地位、性的指向、性別、性同一性など、人間性を否定する言動を広範な分野にわたり禁止している。Twitterは、そのプラットフォームで禁止したいヘイトスピーチやヘイト行為の対象となる分野をより広くカバーできるよう、時と共に禁止対象を拡大してきた。

ヘイト行為を禁止するTwitterのポリシーが抱える問題には、投稿されるツイートの量が多すぎて、処分が追いつかない点がある。さらに、投稿を審査対象とするか否かの判断をユーザーに委ねているため、ヘイトスピーチの排除は積極的に行えず、後手の処理となる。Twitterは、そのポリシーを適切に施行せず、ネット上の嫌がらせを野放しにしているとして激しく非難されている。

本日の発表でTwitterは、上記のものも含めいくつか問題があることを率直に認めている。そこで、より徹底したトレーニングを行い、テスト期間を延長して、いつ、どのように行動するか、さらに、非主流派の人たちの発言をいかにして守るかを審査担当者に理解させることにしたと話している。加えてTwitterは、人種、民族、出身地といった複雑な話題でのニュアンスや文脈をより正しく理解するためのTrust & Safety(信頼と安全)協議会を設立した。

[年齢層]はみな寄生虫だ。我々から支援を受ける資格はない
[疾患]にかかった人間は周囲の人たちに病気をうつすドブネズミだ
[障害]者は人間以下なので公共の場に出るべきではない
[宗教団体]は処罰すべきだ。その汚らわしい動物どもの排除対策が手ぬるい

 

残念なことにTwitterの最大の問題は、長年にわたって公共の広場として運用され、利用者は本名を隠して比較的自由に自己表現ができ、その発言や行動の責任を負わないという点にある。匿名でのネット利用には、たとえば、抑圧的な政権下であっても人々が自由に意見交換できるなど、それなりの正当性がある。しかしその反面、実名では言えないような発言を助長してしまう。そこに社会の監視の目は働かない。それが今、現実の世界で起きていることだ。

しかも、Twitterがヘイトスピーチやヘイト行為を取り締まろうとすれば、いつだって言論の自由を阻害すると批判されてしまう。あたかもそのソーシャルメディアのプラットフォームが、アメリカ合衆国憲法修正第1条(言論の自由)に守られた場であるかのように言われるのだ。アメリカの裁判所はそれを否定している。実際、最近になって裁判所は、YouTubeは公共の広場ではないと判断した。従って、利用者の言論の自由を保証する義務はない。これが前例となり、他のソーシャル・プラットフォームも同様の扱いとなった。Twitterもこれに含まれる。

Twitterは、もっと多くの人に登録してもらい、参加してもらえるよう奮闘してきた。だが同時に、そのプラットフォームの悪用は感知しないという方針が、その目標の達成を阻んでいる。そのためTwitterは、より多くのエンゲージメントを促すことが期待される、たとえば時間が経つと消える「ストーリー」など、新機能のテストを行っている。実際には、ポリシーを適切に施行しさえすれば実現することなのだが。投稿入力欄で教育的な助言を表示する機能(その投稿が通報されたり削除される恐れがあると利用者に警告するInstagramの仕組みと似たようなもの)の追加も遅すぎた。

Twitterがポリシーで規制する対象の幅を広げたのはいいことだ。しかし、行動を伴って初めて言葉は意味を持つ。

Twitterは、この新しい規定は本日付けで発効されると話している。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

短編ストリーミングサブスクのQuibiがサービス開始を前に約800億円を調達

The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)紙によると、正式なサービス開始まであと1カ月余りというタイミングで、短編ストリーミングの月額課金(サブスクリプション)サービスのQuibi(クイビー)が7億5000万ドル(約800億円)の新規資金調達を完了した。

同社は今回のラウンドに参加した投資家の名前を開示せず(これは常に素晴らしい兆候だ)、新しい投資が同社のバリュエーションにどう影響するかについてもコメントを避けた。

最高経営責任者のMeg Whitman(メグ・ホイットマン)氏は「今回の資金調達は長期的な事業構築のための財務的柔軟性と成長基盤を確保するために行われた」と同紙に語ったが、Brandless(ブランドレス)やWeWork(ウィーワーク)などの企業も資金調達の際に同じ目標に言及していたと思われる。

同紙によると、同社の新規投資に参加したのは、既存投資家からAlibaba Group(アリババグループ)、Hollywood Studios(ハリウッドスタジオ)、Quibiの共同創業者でありハリウッドの大御所Jeffrey Katzenberg(ジェフリー・カッツェンバーグ)氏が立ち上げた投資会社で持株会社のWndrCoなどだ。これまでにQuibiは17億5000万ドル(約1860億円)を調達した。

同社はストーリーテリングへの独自のアプローチと、アプリで流すシリーズを開発する多数の優れた人材について宣伝している。ただ、他社も以前短編に力を入れたことがある特にTechCrunchの親会社)。だが結果は芳しくなかった。

単に一時停止ボタンを押すのではなく、短編ストーリーが必要とされているというアイデアは興味深い。YouTube(ユーチューブ)やTikTok(ティクトク)ではなく、有料でも必要とされるドラマやリアリティショースタイルのエンターテイメントとは何かを確認する実験だと言える。

おそらくQuibiはリアリティショーとドラマ(正直なところ、かなり面白そう)で勝利するだろう。カッツェンバーグ氏と共同創業者ホイットマン氏が約束したビッグネームは、同社の番組について報じた最近のEntertainment Weekly(エンターテイメント・ウイークリー)の記事で確かに挙げられている。

競合するストリーミングサービスと異なり、Quibiは過去に放映したタイトルのカタログがまだないため、1年目はなんと175番組で8500エピソードを繰り出す。1本10分以内の内容になる。

サービス開始時には50の番組が提供される予定だ。それらがどう受け止められるかに多くがかかっている。タイトルの多くは魅力的に見えるが、Quibiが期待するような、視聴者に訴求する魅力を持ち、有料でサブスクに加入してもいいと思えるタイトルは2つくらいにすぎない。

このサービスでは、ネットワークテレビやNetflix(ネットフリックス)で一般的なシーズンごとのリリースではなく、新しいエピソードを毎日配信することで差別化を図る。

アプリ自体は、他のストリーマーで利用可能なサービスとあまり差別化されていないようだ。同社は2月、アプリの事前予約を開始したときに以下のように説明した。

モバイルテクノロジーを活用した新しい方法でテレビを見直すためにQuibiではさまざまな試みが行われてきましたが、アプリ自体は他のストリーミングサービスとよく似ています。

アプリには、NetflixやPrime Video(プライムビデオ)などのストリーミングアプリに共通の暗めの画面表示を採用し、下部に4つのメインナビゲーションボタンがあります。

最初のページはパーソナライズされた「For You」ページで、アプリがユーザーの好みを推測して新しいコンテンツを提示するフィードを表示します。

「検索」タブでトレンドの番組を探すことができ、番組のタイトル、ジャンル、雰囲気で検索することができます。

「フォロー中」タブはお気に入りの番組を、「ダウンロード」タブはオフライン視聴可能にした番組を追跡するのにそれぞれ使います。

その他の点では、Quibiのインターフェースは非常にシンプルです。動画は大画面で表示され、ホームフィード上で垂直に、または「ブラウズ」セクションを移動するときに水平・垂直の両方でめくることができます。

同社はアプリストアの説明で「TurnStyle」表示テクノロジーを宣伝しているが、その名前には言及せず、自分で完全にコントロールできる視聴体験だと説明している。「スマホを持つ向きに関係なく、すべてが画面に収まるように表示される」と説明している。

垂直表示モードでは、画面の左側または右側に表示されるコントロールも導入しする。これは、左利きか右利きかに基づいて選択する。

Quibiは、アプリが事前予約できることを正式に発表しなかった。カッツェンバーグ氏が創業したこのスタートアップは、最近完了した4億ドル(約410億円)のラウンドを含め10億ドル(約1060億円)以上の資金に支えられてきた。

成功の可能性を疑う向きにもかかわらず、Quibiはサービス初年度に利用可能な広告枠1億5000万ドル(約160億円)を売り切った

ユーザーだけでなく広告主もしっかり確保できるのかは何とも言えない。このサービスはストリーミングメディアとしては、Michael Bloomberg(マイケル・ブルームバーグ)氏の選挙戦のような結果に終わる可能性がある。多額の費用をかけたが目に見える成果がまだない。

画像クレジット:CES

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

韓国が世界に先駆けて包括的暗号通貨法案を可決

米国時間3月5日、韓国国会は暗号通貨および暗号化取引の規制と法制化の骨格を決める新法案を可決した。

新型コロナウィルスの状況が悪化する中で召集された特別議会で、同国の金融サービス法修正案が満場一致で可決された。これで韓国の金融当局は、この新興分野を事実上監視し、反マネーロンダリング関連の規則制定が可能になる。

韓国は過去数年、暗号通貨のにわか景気と不景気の中心にあり、暗号化技術を大規模に取り入れている少数の国々のひとつだ。暗号通貨ブームのピークだった2017年に行われた調査によると、韓国労働人口の駅前にあるパーティションで区切られいない路上喫煙所の移転、時期未定の延期になった。毎朝大量の紫煙をくぐり抜けて駅にたどり着く通勤から解放されると思ったのに残念。3分の1以上がBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)などの暗号通貨に積極的に投資していた。同国最大の都市であるソウルでは政府が狂乱の時代精神を取り込むべく設計した独自の暗号通貨S-Coin(エスコイン)を導入する取組みが始まった。

その間韓国政府はブロックチェーンの普及を取り締まる新たな規則をすばやく制定し、その結果投資家が市場の反応を見守るなか、Bitcoinの価格は大きく乱高下した。

わずか数年後の現在の議決は、規制当局の動きとしては比較的早く、ブロックチェーン、具体的には暗号通貨の導入が国内外の金融サービスで進んでいることを示している。韓国最大級のテクノロジー企業であるKakao(カカオ)は今もブロックチェーンへの取組みに力を入れており、地域のエコシステムも業界のイノベーションへの順応性は比較的高い。

暗号通貨法案の成立は、韓国スタートアップエコシステムにとっては大歓迎だが、他の業界については未だに大きな課題だ。

今日最も注目されたのが、現地のライドシェアリング・スタートアップで規制下にある伝統的タクシー業界と競合しているTada(타다、タダ)の運命だ。2018年末に開業した同社は、規制当局による中止命令の脅威に直面してきたが、数週間前に最高憲法裁判所が営業を認可したことで危機を免れた。

しかし、暗号通貨法案が可決された同じ特別議会で、Tadaを事実上禁止し政府の営業許可を必須とする法案が承認された。今後数週間のTadaの動きが注目される。

暗号通貨法案の可決後、ムン・ジェイン大統領が署名すると、数カ月にわたる法制化手続きが始まり、その間に既存のスタートアップや交換所は法の新しい規制方法に対応することになる。

韓国の議会選挙をわずか数週間後の4月15日に控え、地元新聞の見出しを新型コロナウィルス関連の話題が独占する中、テック関連法案に対する賛否は、候補者が自らの立場を表明する手段のひとつとなっている。

画像クレジット:Republic of Korea/ Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Nvidiaが高速コンピューティングのためのデータストレージと管理プラットホーム開発のSwiftStackを買収

Nvidiaは米国時間3月5日、SwiftStackを買収したことを発表した。同社はソフトウェアを中心にデータを保存し管理するプラットホームで、パブリッククラウドとオンプレミス、そしてエッジへのデプロイをサポートしている。

その最新のバージョンはAIとハイパフォーマンスコンピューティングおよびGPUなどによる) 高速コンピューティングのワークロードをサポートしており、Nvidiaの関心はもっぱらそこにあると思われる。

SwiftStackの共同創業者でCPOのJoe Arnold(ジョー・アーノルド)氏は、本日の発表声明で「SwiftStackのチームはAIコンピューティングの構築に傾注してきた。Nvidiaの有能な人びとと共に仕事をすることは、そんな我々にとって最高に素晴らしいことだ。同社の世界最高の高速コンピューティングのソリューションに貢献できる日が、待ち遠しい」と述べている。

買収の価額は公表されていないが、SwiftStackはこれまでシリーズAとBのラウンドで約2360万ドル(約25億円)を調達している。それらのラウンドをリードしたのはMayfield FundとOpenView Venture Partners、ほかにStorm VenturesとUMC Capitalが参加した。

2011年設立のSwiftStackは、ごく初期のOpenStack企業でもある。その大規模なオープンソースプロジェクトは、企業のデータセンターにAWSのようなプラットホーム管理能力を与えた。SwiftStackはOpenStackの中でもとくにオブジェクトストレージSwiftの最大のコントリビューターで、そのさまざまな関連サービスを提供した。しかし近年ではOpenStackの人気の衰えと共に、その関係も薄れていた。

現在のSwiftStackは、PayPalやRogers、データセンターのプロバイダーDC Blox、Snapfish、TechCrunchの親会社Verizonなどが主な顧客だ。Nvidiaも顧客である。

SwiftStackによると、今後もSwiftやProxyFS、1space、およびControllerのような既存のオープンソースツールのメンテナンスは継続する。

アーノルド氏は「SwiftStackの技術はすでにNvidiaのGPUによるAIインフラストラクチャの重要な部分であり、買収によってさらにその関係が強まるだろう」と説明した。

関連記事:OpenStackのストレージプラットホームSwiftによるオブジェクトストレージサービスSwiftStack1600万ドルを調達

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

マーケットプレイスの作り方(3):サプライを増やす12のグロース戦略集

編集部注:本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するPodcast「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。当シリーズ第1弾「Airbnb、Uberから学ぶマーケットプレイスの作り方(1)マーケットプレイスを制限する」第2弾「マーケットプレイスの作り方(2)サプライかデマンド、どちらにまず集中するべきか?」も合わせてぜひチェックしてみてもらいたい。

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。普段は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。今回も前回に引き続き、Lenny Rachitskyさんから許可を頂き、翻訳した「マーケットプレイスの作り方」シリーズをお送りします。過去回を読まれていない方はこちらから読むことができます。

ーーーー宣伝 ーーーー
Off Topicでは、UberやPinterestなどの創業ストーリーや最新ニュースの解説をしているポッドキャストもやってます。まだ購読されてない方はチェックしてみてください (Apple / Spotify
ーーーーーーーーーーー

本シリーズは、大きく3つのフェーズに分けての構成になります。

1) フェーズ1:ニワトリとタマゴ問題について
マーケットプレイスを拘束・制限すること
 ・サプライ側かデマンド側、どちらにまず集中するべきか?
初期サプライの伸ばし方(←今回)
・エンドユーザーの伸ばし方
2) フェーズ2:マーケットプレイスのスケールの仕方
・サプライ側とデマンド側のどちらが伸び悩んでいるかをどう判断するべき?
・スケール時のグロース戦略
・クオリティー担保戦略
・学び・やり直すと何を変える?
3) フェーズ3:マーケットプレイスの進化させる方法
・「Managed」(管理された)マーケットプレイスへの進化する方法とは?
・新規事業の追加方法 ・新規事業の追加方法

多くのマーケットプレイスはサプライ側を伸ばす課題を持ち続けている

過去にa16zパートナー Li Jinさんのツイートを翻訳しました、C向けのマーケットプレイスのほとんどはデマンドが多すぎて、サプライを伸ばすのが常に課題になっているのがわかります。

AirbnbやUberなど有名マーケットプレイスの初期

サプライ側がそれだけ大事とわかったところ、今の大手マーケットプレイスはどうやって初期サプライは獲得したのか。以下のチートシートは、成功したマーケットプレイスのグロース戦略を分けた表だ。

画像1

サプライのグロース戦略をまとめると:

1) ダイレクト営業
2) リファラー
3) 既存ネットワークの活用
4) 口コミ
5) 助成金
6) 従業員がサプライヤーになる
7) シングルプレイヤーモード
8) 広告
9) ループを見つける
10) イベント
11) SEOとコンテンツマーケティング
12) コミュニティー

面白いことに、成功した企業のほとんどが戦略を絞って実行していた。平均で2.5戦略を使って、中央値が2個のグロース戦略。ここで学びは、一つの戦略にフォーカスすること。何が成功する戦略か探したタイミングでそこにひたすら投資すること。
ここから成功しやすかった戦略から順にご紹介したいと思う。

グロース戦略1ーダイレクト営業

インタビューの中での一番の驚きは、「ダイレクト営業」がいかに重要だったかということ。約60%の会社は、ダイレクト営業がかなり重要なグロース戦略になっていた。

事例1:Airbnb
「ダイレクト営業は最初のリスティング時に重要だった。ユーザーもまだ集まってない未熟な市場では特に重要。それによってサプライの選別をしてどういう家が良いのか選べた。各ローカルチームが街中でどの地域、値段、リスティングの大きさを判断できるようにしたよ。」— Georg Bauser氏

事例2:OpenTable
「レストラン側では簡単なグロース戦略はなかったよ。営業チームを採用して、直接ドアノックしてソフトウェアをデモしていた。」— Mike Xenakis氏

事例3:Etsy
「一番成功したのはクラフト系のイベントなどで売手側を見つけてリクルートすることだった。そのうち、どこかのタイミングで売手が勝手に自分をプロモーションしてくれるようになった。」— Dan McKinley氏

事例4:Caviar
「私達のサプライ側の成長戦略はダイレクト営業だった。」— Gokul Rajaram氏

事例5:Uber
「Uber Blackは最初電話営業だった。リムジン事業者にひたすら電話し、ピッチしていた。リムジン事業者の多くは個人事業主だったので、そこでピッチしたのはUber Blackアプリを使うとミニマムの収入ギャランティーを約束していた。」— Andrew Chen氏

事例6:DoorDash
「一番のレストラン数を伸ばす戦略は電話営業とドアノック営業。ピッチで話すことは、集客を増やすこと。大手チェーンのマクドナルドは、デリバリー事業で70〜80%の売上増加が見込めると発言しているが、小さい店舗だと集客を増やすオプションが限られている。パートの採用、マーケティング、バックオフィスの仕事で追われているので、私たちがマーケティングを代わりにして上げることをピッチした。」— Micah Moreau氏

事例7:AngelList
「初期サプライを増やすためにいろんな投資先にウェブフォームにて名前、地域、好きな領域、年間投資社数、平均投資額などを記載してもらった。」— Babk Nivi氏

グロース戦略2ーリファラー

2番目に使われていたグロース戦略が「リファラー」だ。これは既存サプライに新しいサプライを紹介してもらう仕組みづくりのこと。インタビューしたマーケットプレイスの3分の1が、これで成功した。

事例1:Lyft
「リファラーやアンバサダープログラムはかなり重要だった。何十%の新規サプライはその仕組みから来ていたよ。コアユーザーが若かったので、初期ターゲットは学生。学生へのピッチ内容は仕事の経験とお金儲け。報酬はレベル分けをしていて、トップレベルはアルバイトと同等の報酬。しかも、トップレベルになると、Lyft COOから推薦状をもらえたので、多くの学生がリファラーになった。ネットからのリファラーも影響はあったが、現場のアンバサダーは各都市では欠かせない存在だった。それで初期プロモーションも出来てたし、コスト削減もできた。」— Benjamin Lauzier氏

事例2:Uber
「サプライ側では3分の1がリファラー経由だった。そこからのドライバーが一番良かった。その他だと口コミが3分の1、広告からが3分の1。」— Andrew Chen氏

事例3:Caviar
「リファラーは、どのマーケットでも最初の大きな成長戦略。これは初期もそうだし、成長してからでも重要。」— Gokul Rajaram氏

事例4:DoorDash
「リファーラルはDasher側ではかなり大きかった。エンドユーザー側でも効果的だったが、サプライ側の方がリファーラル経由での獲得が多かった。」— Micah Moreau氏

グロース戦略3ー既存ネットワークの活用

3分の1の事例は、既存ネットワークをうまく活用して伸びた(ほとんどのケースはCraigslist)。うまくいったケースでは一二を争う成長戦略となった。

事例1:Uber
「Launcherチームが新しい市場に入り込む時は、まずサプライ側の囲い込みを行う。その際にはまずCraigslistを使った。」— Andrew Chen氏

グロース戦略4ー口コミ

成長戦略ではないかもしれないが、口コミは初期サプライ側の獲得にかなり役立っていた。

事例1:OpenTable
「レストラン業界はかなり親密だ。レストランオーナーはお互い知っていて、何か新しいことを試すとバイラルに広がる。それを上手く活用できたと思う。さらにレストランの従業員は転職の頻度が高いので、新しいオーナーにOpen Tableを使うように言ってくれるんだ。」— Mike Xenakis氏

事例2:Eventbrite
「IPO申請資料を見てもわかるが、サプライ側の36%は口コミから来ている。」— Brian Rothenberg氏

事例3:Patreon
「クリエイターは、知り合いのクリエイターすでに使っていると、来てくれる。」— Tal Raviv氏

グロース戦略5ー助成金

4分の1の成功事例は、初期サプライは自社で払ったり、ディスカウントする「助成金」の戦略を使っていた。

事例1:Uber
「お金を使って課題解決した。Uberを使って運転してくれたら、1時間$40払うギャランティーをして、その代わりに常にアプリを稼働させて70%の配車リクエストを承認すること。」— Andrew Chen氏

事例2:Lyft
「ドライバーに対して最低収入を設けた。このおかげでマーケットプレイスのサプライを獲得できた。」— Benjamin Lauzier氏

事例3:Breather
「どっち側を補助するかを決めなければいけない。Breatherの場合は、サプライ側だった。家具、金庫、鍵を提供してサプライ側のクオリティを上げた。1取引が小さいため、悪いクオリティにすると致命的。」— Julien Smith氏

事例4:Zillow
「初期リード獲得は、ほぼ全て補助をしていた。新しいユーザーにマーケットプレイス上のコネクションをリスクフリーで見せるためにはそうするしかなかった。後々バリューを見せつけられたタイミングで課金し始めたりした。これで初期のサプライを増やしたよ。」— Nate Moch氏

グロース戦略6ー従業員がサプライヤーになる

数社では流動性と課題周りをより理解するために、従業員が初期サプライ側となった。

事例1:Rover
「初期サプライは全て従業員だった。」— David Rosenthal氏

事例2:DoorDash
社内の全従業員が月一でDashをするポリシーがある。初期の時はDasherが足りてなかったのでCEOのTonyさんとチームがほぼ毎日Dasherとして勤務していた。しかもTonyさんの奥さんも一緒にDasherとして勤務していた時もあった。」— Micah Moreau氏

事例3:TaskRabbit
初期はCEOのLeahさんとチームがTaskerだった。本社から従業員を現場へ送り込んだのを覚えている。初めはエンドユーザーの体験を最高にするため、呼ばれた時に何をしててもエンドユーザーの元へ行った。初期にクオリティー担保を保てたのはそのおかげ。」— Jamie Viggiano氏

グロース戦略7ーシングルプレイヤーモード

サプライ側にデマンドを必要としない良いツールを提供することでサプライの数を伸ばす戦略は、意外と使われてなかったが、うまく行ったケースでは一番重要な成長戦略となった。

事例1:OpenTable
「オンライン予約が人気なかった時代に、レストランにオンライン予約の話をしても無駄だった。なのでまずは、デマンドを必要としないソフトウェアの開発への投資を行った。具体的にはレストラン側のマニュアルの予約システムのリプレイス。最初のピッチの9割はソフトウェアを使ってより効率よくレストランを回すことで、1割ぐらいオンライン予約の話しかしてなかった。」— Mike Xenakis氏

事例2:Eventbrite
「サプライ側にはプロダクトを早めにセルフサービス型にした。」— Tamara Mendelsohn氏

グロース戦略8ー広告

初期段階でサプライ側を広告で増やすのはLyftとUberぐらいだった。

事例1:Lyft
「SEM、ディスプレイ広告、Facebook広告は初期のサプライとデマンド獲得に役立った。そこのCACをベンチマークとして他の成長戦略を試した。」— Benjamin Lauzier氏

事例2:Uber
広告チャネルからは半分の登録があったが、合計Trip数の3分の1しかなかったので、一番効率悪いチャネルだった。」— Andrew Chen氏

グロース戦略9ーループを見つける

EventbriteとAirbnbはサプライ側のグロースサイクルを見つけたことで成長できた。

事例1:Eventbrite
イベント参加者(デマンド側)がイベント作成者(サプライ側)になるようなバイラルループをプロダクトに埋め込んでいた。さらに、無償イベントだと無償で使えるfree-to-paidループのおかげで初回の利用ハードルを下げた。後ほど初回で無償イベントのイベント作成者は有料イベントを作成して課金してくれた。そのループは34%のサプライ側の獲得となり、無償イベントを作ったイベント作成者の17%は12ヶ月以内に有料イベントを作成している。」— Tamara Mendelsohn氏、Brian Rothenberg氏

事例2:Airbnb
「エンドユーザーが旅行をブッキングする → 体験に満足している旅行中に自分の家をゲスト用に空けて旅行費の一部を負担しないかとオファーを出す → エンドユーザーがホストになる。」— Casey Winters氏

グロース戦略10ーイベント

AirbnbやLyftは初期サプライを増やすためにイベントやミートアップを開催していた。

事例1:Airbnb
「新しい都市でローンチする時にはそこでミートアップを開催していた。SFだとサービスの創業者に会うのはあまり大したことではないが、他の地域だと貴重な体験と思われる。私達に会ったことを友達に言ってくれる。」— Brian Chesky氏

事例2:Lyft
「初期の基盤となったのがドライバー用のオンボーディング授業。教育動画やチャットを用意して、ドライバーに来てもらって、ベーグルや食べ物も提供していた。」— Benjamin Lauzier氏

グロース戦略11ーSEOとコンテンツマーケティング

SEOはほとんどの会社では成長戦略として使われていなかった。

事例1:Eventbrite
「初期にイベントマーケティングのノウハウ記事を書いてSEOトラフィックを稼いでいた。SEOループは:
1) イベント作成者が自社コンテンツでイベントページを作成
2) 自社サイトにEventbriteページのURLを貼る
3) そのEventbriteページのSEOランクは高くなり、さらに自社の「サンフランシスコイベント」ページのコンテンツ作りとなって、さらにSEO効果があった
4) デマンドだけではなく、サプライ側の獲得にも繋がった」

— Tamara Mendelsohn氏、Brian Rothenberg氏

グロース戦略12ーコミュニティー

一番ユニークな成長戦略はEtsyかもしれない。

事例1:Etsy
「オフラインでEtsyコミュニティーを作るのが初期で一番の成長戦略となった。『Etsy street teams』と言う熱意の高いコミュニティーメンバーの組織を作り、現場のアンバサダーとなった。各地域のチームリーダーにはツールやお金を渡し、売手のコミュニティーを作れるようにした。いくつかのチームは未だに存在している。初期は広告も全く使わず、売手側が自分のショップやブランドをプロモーションして成長した。しかも金銭的なインセンティブがなく、単純にEtsyに対する愛情でやってくれていた。」— Nickey Skarstad氏

次の記事では、「12のデマンド成長戦略」をご紹介します!

新型コロナ拡大でGoogleがワシントン州の全従業員に在宅勤務を通達

今週Googleは、新型コロナウイルス(COVID-19)拡大の懸念が高まっていることから、ワシントン州の全従業員に在宅勤務を推奨する通達を出した。広報担当者はその事実をTechCrunchへのメールで認めた。地元の保健当局に相談した上での措置だ。

Googleはオフィスを閉鎖してはいない。在宅勤務推奨について公のコメントを出す予定もない。しかしこのニュースは新型コロナ拡大をかなり深刻に、そして広範に警戒していることを示している。Lyftは同様の措置を先に取っていて、サンフランシスコオフィスの従業員を在宅勤務としている。

Googleはワシントン州内にいくつかのオフィスを構えている。同州は米国においてウイルス拡大の懸念が最も深刻で、これまでに70人の感染が報告され、10人が亡くなった。シアトルとカークランドを擁するキング郡で最も感染例が多く、Googleはどちらの都市にもオフィスを置いている。

COVID-19はテクノロジーハブとなっている他の主要都市にも広がりつつあるが、今回の決断はおそらく初めてのものだ。Googleは今週初め、デベロッパー会議やI/Oなど人が直接顔を合わせるようなイベントを中止すると発表した。もっとも、新型コロナ感染拡大によって中止されるテック会議はI/Oだけでなく、先月のモバイル・ワールド・コングレスを皮切りに同様の動きが続いている。

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

Googleが9月までに検索のモバイルファースト化完了へ

Googleは以前から検索をモバイルファースト化することに取り組んできた。これは検索エンジンのインデクシングのデフォルトをモバイルサイトとするものだ。モバイルファースト化が実施されるとGoogle検索は主としてサイトのモバイルコンテンツを使用してインデックスを作成し、ランキングが決定される。

Googleがモバイルファースト化の計画を最初に発表したのは2016年だったが、米国時間3月5日の告知によれば、2020年9月までに、すべてのサイトのデフォルトの動作がモバイルファーストとなる。

テストを何回かした後、Googleは昨年から全面的な移行を開始した。昨年12月には検索結果に表示されるページの半分以上がモバイルファーストとなった。現在この比率はすでに70%になっている。

Googleでは大部分のサイトが新システムに対応するようになったと述べている。ただし従来どおりGooglebotを使ってデスクトップ版ページをクロールする場合もある。Googleが2つの異なるクローラーを使用するため今後数カ月、Googleのサイトへのアクセスの回数が増える可能性がある。クローラーの1つはモバイルスマートフォンユーザーエージェントで、もう1つは現在使用されているChromium版でデスクトップサイトを読み込む。ただしほとんどの場合、ウェブサイト管理者にはモバイルエージェントだけが表示されるはずだ。

ほとんどのサイトでは、この切り替えはシームレスに行われるはずだが、クローラーが理解できる形式で書かれた構造化データをデスクトップサイトでのみを公開している場合は、モバイルサイトでも公開する必要がある。また、Googleは同一コンテンツに対してデスクトップ版とモバイル版で異なるURLを使用しないよう推奨している。これは「(別のURLを用いることは)長年にわたって検索エンジンとユーザーの双方に混乱と不便を引き起こしてきた」からだという。

サイト管理者が準備を整えたい場合はSearch Consoleにアクセスしてページの状況を確認できまる。

【Japan編集部追記】Search Consoleの日本語版トップページはこちら。構造化データのテストはこちら

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

SEOのエキスパートによる強調スニペットの変更及びコアアップデートへの見解

2020年は年明け早々、コアアップデートと強調スニペットの変更という大きな変化がありました。

Googleはアルゴリズムを変更することも、検索結果を改善することも、常に行っています。こうした変化は常にキャッチアップしたいところですが、どのように認識すればよいか、迷うこともあるのではないでしょうか。

そこで、今回は海外の著名なSEMツールベンダーであるSEMrushから許可をいただき、Googleの変化に対するエキスパート達の見解をまとめた記事を翻訳いたしました。

自身の見解に対する参考材料としてご活用いただければ幸いです。

Googleは、人々が注目せざるを得ないアナウンスを再び行った。

リリー・レイ氏が呼ぶところの「強調スニペットの黙示録」は下記のツイートから始まっている。

あるWebページが強調スニペットとして扱われている場合、ページを再び検索結果に表示させることはしない。この変更は検索結果を整理し、関連性のある情報をユーザーがより発見しやすくなるようにすることが目的だ。強調スニペットは、検索結果に表示される10個のWebページの1つとして扱われる。

このツイートは多くの議論とパニックを巻き起こし、その後24時間経っても質問が止むことはなかった。

Googleは多くの質問に対応せざるを得なくなり、そして、Googleからの回答がさらなる質問、いらだち、そして心配を引き起こした。

強調スニペットの整理はTop StoriesやInteresting Findsなどのその他の機能は該当しません。また、強調スニペットに採用されたURLのみ、検索結果の1ページ目のみが該当します。

「強調スニペットとの重複」として整理されたURLは検索結果の2ページ目に表示されていることに気がついた方もいるようだ。

しかし、その状況は保証されたものではなく、そう設計されたものでなく、ずっとその状態が続くとも限らない。重複の整理は、対象のURLを2ページ目に意図的に移動させる趣旨のものではない。

非常に多くの注目を集めているため、我々は、複数のエキスパートに対し、コアアップデートと強調スニペットの変更についてどのように考えているか、尋ねてみることにした。

この2つの変更に対する彼らの考え、対応の仕方は、我々の指針となるはずだ。彼らの意見に耳を傾け、どのような影響があるのか、考えてみよう。

マリエ・ヘイネス氏(Marie Haynes Consulting社 オーナー)

クライアントのサイトのランキングをモニタリングし、レポートしていた者にとっては興味深い機会となるだろう。

Googleによると、コアアップデートは1月13日に開始し、完全にロールアウトするまでに2週間かかっている。そして、1月22日に、強調スニペットの変更が確認できた。

我々が発見する「1~2日前から変化があった」という話もある。そのため、1月にトラフィックに大きな変化があった場合、その原因を特定するためには、深い調査が必要となるだろう。

また、「強調スニペットに採用されることが良いことになるのかどうか」という点を我々はまだ把握していない。

強調スニペットは、検索結果の上位に表示されるため、より多くのクリックが発生する場合はあるだろう。

しかし、強調スニペットはユーザーに答えを提供してしまうため、クリックが発生しない場合もある。さらには、ユーザーが「Googleの所有物」(広告、People Also Ask、強調スニペットなど)をスキップし、自然検索結果を見に行くという習慣が身についてしまうことも考えられる。

この場合、強調スニペットに採用されることで、CTRは大きく減少してしまうだろう。

「eat seo」というキーワードで1位に表示されているが、SEMrushのページが強調スニペットに採用されている。この場合、強調スニペットに採用されていないことが、我々により多くの流入をもたらす結果となっている。

強調スニペットに採用されることが良いことか悪いことかを判断するために、他の誰かが言ったことを信じるのではなく、自身のデータをテストして判断することを勧める。

強調スニペットに採用されているサイトの運営者は、1月の変更以降、クリック数が増加したかどうかを教えてほしい。

クリック数が減少した場合、max-snippetを使用したコンテンツのリライトをテストすることもできる。強調スニペットの採用が取り消されるかどうか、試してみるためだ。

多くの場合、自然検索において以前と同様の順位で表示されるはずだ。強調スニペットで表示されなくなったら、自然検索結果に表示される場合と強調スニペットに採用される場合とで、クリック数の比較を行える。

強調スニペットに採用されるべきか否かの判断は、クエリ、ユーザーインテント、強調スニペットがユーザーの疑問を完全に答えているか、などの複数の要素によって決定される。多くのテストが求められていると言えるのだ。

リリー・レイ氏(Path Interactive社 SEOディレクター)

2020年1月のコアアップデートの規模は大きく、特に、健康・医療系、薬やリハビリ、金融関連のトピック、ニュースや政治関連など、YMYLのWebサイトに影響を与えた。

初期調査では、以前のアップデートで順位が下降した医師運営サイトの順位が回復した例を目撃している。

こうしたWebサイトは、E-A-Tの改善、専門家によるレビュー、ブランドに関するレピュテーション問題の解決など、大きな変更を行っていた。回復したトラフィックの量は、2019年のトラフィックほどではないが、回復したという事実は確かである。

強調スニペットのアップデート

今のところ、強調スニペットについての変更は、SEO業界ではネガティブに受け取られている。

実際、我々のクライアントの中で、最も重要なサービスページのトラフィックが30%下落した例もある。これは、検索結果画面の右側に表示される強調スニペットに採用されており、自然検索結果にも1位で表示されていたページが、1ページ目表示から外されてしまったことが原因だ。

検索結果画面の「乱雑」を整理するというGoogleの考え方自体はよいものである。しかし、多くのブランドが1ページ目表示を獲得できるという結果にはならないだろう。強調スニペットに採用されたURLが再度表示されることも、他のページにも表示されることもなくなったということだ。

このアップデートにおける唯一の希望は、強調スニペットに採用されているキーワードの10位以内に2つ目のURLが表示されると報告しているSEO担当者が何人かいることだ。

つまり、2つのURLが検索結果に表示される可能性はまだあるということだ。

強調スニペットに採用されているキーワードとページのパフォーマンスに注目することが大事だ。

トラフィックの下落が大きい場合は、nosnippet tagを使用し、強調スニペットに採用されることを防ぐのも1つの手段となる。しかし、その後、自然検索結果に表示される順位が、以前と同じ順位となる保証はない。

「強調スニペットの黙示録」について、さらに大きなニュースだ。画面右側に表示されるスニペットは1ヶ月以内にメインコラムに統合される。もし、この強調スニペットに採用されている場合は、(特にデスクトップからの)流入が一時的に大きく減少しているだろう。しかし、その一部はすぐに戻ってくるはずだ。

AJ・コーン氏(Blond Five Year Old社 オーナー)

January 2020 Core Algorithm Update

January 2020 Core Algorithm Updateは、クエリのインテントにより合致したコンテンツを表示させるという、Googleが続けてきたパターンを追随するものだ。

自然言語の理解の進化は、5~9個の単語からなるクエリにさえも、Googleが関連した結果を表示できるようになることを意味している。加えて、該当のコンテンツを含む権威性の高いカテゴリページよりも、トピックに正確に合致したドキュメントが好まれる傾向が増えている。

ロングテールに合致したサイトが勝者であり、17回のスクロールを要するような”ガイドページ”の戦略を採用しているサイトは、トラフィックを失っている。ユーザーがどのように検索しているか(クエリ・シンタックス)を理解し、正確性を伴い、検索者の意図を満たす優れたフォーマットのコンテンツを作成することが、私が与えられる最高のアドバイスだ。

思考をシンプルにし、パンダ・アップデートのことは忘れ、ユーザーの時間を大事にしよう。検索での成功は、ますます、マルチ・セッションのアプローチに依存するようになっている。

強調スニペットのアップデート

強調スニペットの変更は、想定されていたクリック数に大きな影響を与える可能性がある。現時点では、どのくらいの変化になるかを判断するには時期が早すぎる。また、自然検索結果からの除外は、そのWebサイトが何位に表示されているかで大きく異なるだろう。

1位の場合はどうだろうか。髪を切った場合で考えてみよう。「おお、随分と変わったね」といったところだろうか。4位の場合はどうだろうか。髪を切ってはみたが、大きな変化はないため、誰も気が付かないかもしれない。

しかし、私は、強調スニペットへの最適化を中止すべきではないと考えている。検索結果の1番上に表示される強調スニペットからのトラフィックは、通常とても多いものだ。

以前ほどのクリック数は見込めないかもしれないが、競合サイトが強調スニペットに表示されるよりはマシなはずだ。もちろん、特定のバーティカル領域やクエリにおける注意事項は発生する。しかし、競合サイトが強調スニペットへの戦略を諦めようとした場合、私は非常に嬉しく思うだろう。

考えてみよう。もし、強調スニペットの重複排除が検索結果の乱雑さを軽減し、それがユーザーのためになるのであれば、同じことが広告と自然検索結果においても言えるのではないだろうか。

アレイダ・ソリス(Orainti社 創業者兼インターナショナルSEOコンサルタント)

強調スニペットのアップデートについては、下記の項目を考慮した上で、判断すべきだと思う。

あらゆる判断を下す前に、以前(強調スニペットと”通常”の自然検索結果での表示)と以後(強調スニペットのみ)のクリック数と自然検索結果からのトラフィックを比較する。

以前と比べて悪かった場合は、強調スニペットに表示されないという選択が良いかもしれない。また、強調スニペットに表示されなくなった後、自然検索結果のどの順位に表示されるかを確認することも重要だと考える。

アップデート以前の順位はSEMrushを使用して確認できる。もしくは、ケビン・リチャード氏によるこの素敵なツールも使用可能だ。

強調スニペットに表示されるかされないかで、予想される順位からのCTRが有益であるかどうか、確認することができる。

こうした確認を行った後、強調スニペットに採用されず、通常の自然検索結果に表示されたほうがよい(もしくは、そのテストを行いたい)と判断した場合は、小さなグループで、Googleが定める方法でmax-snippetタグを使用し、確認することを勧める。

これにより、自然検索結果での表示を維持しながら、強調スニペットに採用されることを防ぐことができる。テスト結果が好ましければ、より大きなグループにこの施策を適用し、テスト結果が好ましくなければ、施策を中止すればいい。

強調スニペットについてのアナウンスだ。同様のクエリで表示されなくなる可能性もあるため、現在強調スニペットに表示されているページのCTRはよく確認しよう。

ミッシェル・ロビンス氏(Aimclear社 プロダクト・イノベーションVP)

今月にGoogleによってアナウンスされたアップデートに対し、我々のクライアントは、検索結果のビジビリティ(可視率)という観点で、概ね安定した状態を維持している。

コアアップデート以降、自然検索結果のインプレッションが増えた事例もある。我々のクライアントには、複数の業界の医療系やECサイトがあるが、他サイトが報告するような、大きな変化は見られない。

今回のアップデートについての結論を出すことは好ましくないと感じる。それよりも、価値のあるトラフィックへコンバートするという、核となる目標に注力する時間を増やすべきだ。

アップデートの影響を受けないようにするためには、複数のトラフィックプロフィール(Googleの自然検索のみに依存しない状態)を構築することだろう。当たり前のことに思われるだろうが、マルチ・チャネル、統合されたマーケティングプラン、コンテンツへの注力、あなたのWebサイトに訪れた際にその顧客が求めることを提供すること、などが長期間の戦いにおける勝利条件となる。

Googleは、アップデートを行う度(特に、コアアップデートにおいては)検索結果の関連性を改善しようとしている。アップデートの度にあなたの心臓が強く脈打つのであれば、顧客ではなく、Googleのアルゴリズムを追いかけることに時間を費やしすぎているのだろう。

強調スニペットのアップデートについても、我々のクライアントの中では大きな変化は起きていない。また、Googleの考えも、驚くべきことではない。

Googleは、2019年6月に、検索結果の多様性についてアナウンスしている。また、概して、彼らは混雑した検索結果を整理しようと、積極的に活動している。

おそらくは、今後も検索結果に表示される様々な機能は変化し続け、よりコンテキストが重要となり、ユーザーとの関わりによって左右されるようになるだろう。

いつの時代も重要であることは、あなたが持つ全ての卵を、Googleというバスケットに置いておかないでいることだ。

アン・スマーティ(Internet Marketing Ninjas社 ブランド&コミュニティマネージャー)

強調スニペットは説明的である。

そして、検索者が必ずしも求めているものではない。強調スニペットは、即時の答えを提供するために導入されており、その答えはしばしばシンプルすぎているため、クリックを必要としないこともある。

このいずれか、もしくは両方の理由により、強調スニペットは自然検索結果よりも、クリック率は低い。今回のアップデート以降に多くの人々が報告している通りである。

しかし、それは直ちに強調スニペットへの最適化をやめるべきという事を意味しているわけではない。自然検索結果の状況を悪くしてしまうかもしれないからだ。また、私は強調スニペットの「オプトアウト」の施策にも疑問を持っている。各ケースにおけるオプトアウトが、実行の面でも測定の面でも疑わしい。

加えて、順位が3位よりも下である場合、強調スニペットに表示される方が良い(最適化を行えば十分に可能性がある)といった場合も考えられる。

この意味において、我々がすべきことを判断するにはまだ早すぎると考えている。すぐに行うべきことは下記となるだろう。

  • 強調スニペットに現在採用されているページのレビュー(ツールが役立つはずだ)
  • それらのページの自然検索からのトラフィックが減少しているかどうかの確認

検索流入が減少している場合でも、まずすべきことは、強調スニペットをオプトアウトするのではなく、タイトルを調整しより多くのクリックを得られるかどうか試してみることだ。

何らかのコール・トゥ・アクション(「ここをクリック!」や「ダウンロード!」など)を追加して、変化があるかどうかしばらく待とう。同様に、強調スニペットに採用されているコンテンツの調整を行ってもよいかもしれない。

強調スニペットはパブリッシャーにもユーザーにも価値を提供していると考えている。そのため、今すぐに拒否するものではないはずだ。

アン氏の最新の記事を確認しよう:Googleの強調スニペットの重複問題:パブリッシャーにとって、何を意味するのか?(英語)

ビル・スラウスキ氏(Go Fish Digital社 SEOリサーチ・ダイレクター)

強調スニペット関連のGoogleの最も新しい特許について、「Googleは強調スニペット用の回答を作成するために、Schemaを使用するのか?」という記事を書いている。その特許によると、Googleは質問に対する(さらに詳細な)答えや検索される情報の定義の作成のためのテキスト情報を求めているようだ。

さらに、Googleは構造化データを伴ったテキストに注目しているようであり、スキーマやテーブルからのデータを含むものが対象となるようだ。

強調スニペットを目撃した多くの人々が、そのテキスト情報のソースへの属性が提供されていない場合、その答えはパブリックなドメイン以上の情報であるとコメントしている。そして、Googleはリンクという形でソースへの属性を提供している。

Googleは強調スニペットのソースを、検索結果の1ページ目に表示されている、権威の有るページから選んでいる。そして、検索結果の上部に表示させることで、GoogleによるQ&Aのような形を取っている。

また、Googleによる定義としても機能しており、自然検索結果の上部に表示される追加情報としての歴史も長いことから、0位に表示される検索結果として認識されている。

アナウンスメント

昨日、ダニー・サリバン氏からのアナウンスがあった。Googleが強調スニペットの扱いを変更するという内容だ。(明らかに検索結果の1ページ目から選ばれている)スニペットのソースを自然検索結果の上部に移動させ、テキスト情報をリンクと共に表示させる。

強調スニペットに選ばれたページが、検索結果の1ページ目に再度表示されることはない。

バグであるようにも思われるが、検索結果の上部に強調スニペットとして表示されたページは、2ページ目の上部にも表示されていることがある。我々は、2ページ目に表示されなくなるとも考えている。多くの質問がダニー・サリバン氏の元に届き、それらに対する回答もされている。

「強調スニペットとの重複」として整理されたURLは検索結果の2ページ目に表示されていることに気がついた方もいるようだ。

しかし、その状況は保証されたものではなく、そう設計されたものでなく、ずっとその状態が続くとも限らない。重複の整理は、対象のURLを2ページ目に意図的に移動させる趣旨のものではない。

人々の間で議論されている内容

トラフィックの減少を危惧している人々もおり、彼らは、通常の検索結果で表示されるよりも、強調スニペットから得られるクリック数は少ないと考えているようだ。

強調スニペットに表示される画像について尋ねている人もいる。テキストとリンクが表示されているページとは別のページからの画像となっている場合だ。「画像が強調スニペットに採用された場合にも、1ページ目に表示されることはなくなってしまうのか」という点について興味があるようだ。

実際は、画像のみが強調スニペットに採用されている場合、1ページ目に表示されなくなることはない。

”Top results”などの特殊な場合は、自然検索結果の1ページ目に引き続き表示されていることに気がついた人々もいる。

強調スニペットと自然検索結果の両方に表示されていたページの場合、仮に1ページ目の強調スニペットから除外された場合でも、2ページ目には表示され続けると考えている。

今回の変更に対するGoogleの回答の1つに、検索結果の1ページ目の表示から除外されたとしても、検索結果の最上部に表示されることになり、それは多くのSEO担当者が望む状況だろう。私個人、また同様の関心をTwitterでも見かけるが、クリック数の減少がどうなるかについて興味がある。

今回の変更は、検索結果の「整理整頓」を目的としたものである。近藤麻理恵氏が、自身の保有物を整理し、喜ばしい状況を保ち続けようと唱えているように。

強調スニペットに採用された場合、検索結果の1ページ目に再び表示されることはない。今回の変更は検索結果を整理することになり、ユーザーが関連する情報へ、より簡単にたどり着けるようになるものだ。強調スニペットは、自然検索結果の一部としてみなされるようになる。

今回の変更も、Googleが以前より求めている、多用な検索結果の提供という試みの線上にある。

今回の変更は、ローカルの検索結果を優遇し、自然検索結果を除去することで、ローカル検索結果の上位と自然検索結果を統合するというかつての取り組みに似ている。それについては、「Googleは、ローカルと自然検索の結果を統合することにより、どのようにして検索結果の多様性を作ろとしているのか?」という記事を書いている。こうした統合がかつても行われてるが、長い間続かないこともあった。

強調スニペットに採用された場合、1ページ目に表示されなくなるという今回の変更をGoogleがロールバックすることは無いように思える。

ドーン・アンダーソン氏 BeBertey社 マネージング・ダイレクター

今回の変更に関して全てを知っていたといえば嘘になる。

しかし、少数のキーワードに注力するのではなく、全体的なアプローチであるため、私の戦略はアルゴリズムの変更を重視しているものではないと言うことができる。

今回の強調スニペットの変更は、ユーザー体験の向上を目的としている変更であることは疑いがない。そして、リアルなユーザーのフィードバックに基づいているものだろう。

強調スニペットに採用され、0位を獲得し、また、自然検索結果の10本の青いリンクの1位に表示されていたブランドからは悲観的な声が生まれれるだろうが、答えを探しているユーザーの体験としては、必ずしも合致はしない。

さらに、特に一般ワードにおいては、検索結果の多様性は重要である。検索結果画面の領域を「保有」することは、どのブランドでも約束されたものではない。

私のアドバイスは、「あなたのオーディエンスが求めている情報を特定し、それらの情報に合致するメディアの形式を複数考え、ユーザーを優遇し、個々のページにも注力しながらプロジェクト全体の改善を試みる」といったものだ。

検索意図のニュアンスの差異へ、複数のページで対応しよう(強調スニペットに採用されながらも、別のURLで1ページ目に表示される可能性が考えられるからである)。

あなたの戦略がSEOにおける勝利を導くことが明らかにならない限り、アルゴリズムアップデートの分析に心血を注ぐことはやめよう。

大規模なコアアップデートでは、YMYLのトピックが強化されるため、そのトピックについてあなたがしっかりと語れるだけの品質があるかどうか、また、いくつかのローカル検索において、十分な品質があるかどうかについては着目しよう。

新しいファビコン

モバイルとデスクトップでの新しいファビコンについては、広告がより自然検索に見えるようになったと感じている。

あるクライアントは、彼らのブランド名での検索で順位が4つ下がったと、数日前にメールで連絡をくれた。私が確認したところ、順位は全く下がってなかった。そのクライアントのブランド名で入札している3つの他サイトの下に表示されていたのだ。

彼らは、それらが広告であると認識していなかったのだ(連絡をくれたクライアントはECサイトのマネージャーである)。

通常のユーザーであれば、広告と自然検索の区別がつかないのではないかと推測する。しかし、時間がたつにつれ、彼らも広告として認識するようになり、以前と同様に広告をスキップするようになるのではと考えている。

協力してくれた全ての方々に感謝する

この記事で紹介したエキスパート達の考えは、業界全体の大きな助けとなるはずだ。

読者に対して述べたいことは、この記事で紹介したエキスパート達は、最新のGoogleのアップデートやSEOをキャッチアップするために、ぜひフォローしていただきたい人達であるということだ。

TwitterとLinkedInへのリンクも記載しているので、彼らの発言をキャッチアップできるはずだ。彼らは皆忙しい日々を過ごしているだろうが、今回の記事に協力してくれたことに、大きく感謝したい。

最後に、ツイートを1つ紹介したい。下記の一連のツイートを確認いただければ、より多くの情報を得られるだろう。

今回の変更による、Search Consoleのレポートの変化はない。我々は、最上位に表示されているURLの順位を計測している。

強調スニペットはすでにその中に含まれていたため、それより下位に表示されているURLはもともと対象外となる。

この記事は、SEMrushに掲載された「Google Featured Snippet and Core Updates in January 2020: Expert Roundup」を翻訳した内容です。
コアアップデートはもちろんそうですが、強調スニペットの変更については、多くのSEO担当者の興味を引きつけたと思います。

検索ユーザー全体のためと考えれば納得できますが、Web担当者としては、自サイトへの流入は気になるところではあります。記事内でも触れられていますが、まだ結論を出すには、時期尚早かもしれません。

まずはしっかりとデータを集め、なるべく正確に捉え、適切な判断を下していきましょう。

なお、今回の記事の翻訳元であるSEMrushは弊社でも導入しており、日々活用しています。
キーワードの順位計測やレポーティングなど、幅広い用途に対応していますので、ぜひ導入を検討されてみてはいかがでしょうか。

SEMrush公式サイト
SEMrush導入企業インタビュー|アイオイクス株式会社

メールマガジン購読・SEO Japan Miniのご案内

SEO Japanでは、2週に1度メールマガジンを配信しています。

SEO業界の動向を受けたコラムや、記事の更新情報などが中心です。ぜひご購読ください。

また、SEO Japan Miniというオリジナル記事を配信するメディアも始めました。SEOやWebマーケティングに関する記事を執筆しています。
ぜひお読みいただけると幸いです。

SEO Japan Mini - アイオイクスのオウンドメディア

投稿 SEOのエキスパートによる強調スニペットの変更及びコアアップデートへの見解SEO Japan|アイオイクスのSEO・CV改善・Webサイト集客情報ブログ に最初に表示されました。

前置きからミッドシップへ、シボレーコルベット2020は今後が楽しみなスーパーカー

コルベットとは何か?私にとって、その質問に答えるのは簡単だ。強力なエンジンを備えながら、2つのゴルフバッグを収納でき、手頃な価格のパッケージにまとめられた車ということになる。過去62年間に渡って、ずっとエンジンは前置きで、床にシフトレバーを配置していた。それが今回はだいぶ様子の異なるものとなっている。そして、それは素晴らしいことの始まりのように思われる。

今回、コルベットとして初めてエンジンはミッドシップとなり、これまで守ってきた伝統からは大きく逸脱するものとなった。この配置により、コルベットの運転感覚もだいぶ異なるものとなった。「良くなった」という人が多いと思われる半面、変更を嘆く人もいる。私は前者のグループに入る。新しいコルベットはエンジニアリングの成果であり、強烈なスリルを与えてくれる車には違いない。その力強いトルクには微笑まずにはいられない。

最初にまとめておこう。コルベット2020は素晴らしく、今後もさらに優れたものになる。現時点でも、コルベットは購入した人の多くを喜ばせる素晴らしい車だ。しかし中には、もっとパワーが欲しいとか、ブレーキの改良が必要だとか、さらにエキサイティングなものを求める人もいるだろう。そうした要求を満たす車も、時間が経てばやがて登場するはずだ。

コルベット2020は、シボレーにとって新しい時代の始まりを意味する。今回のモデルは、これまでに最も長く維持してきたブランドにとって、最大の変更となった。1953年以来コルベットは、ヨーロッパ製の高級車に、ずっと安価ながら対抗しうる米国製のスポーツカーであり続けてきた。それは、この新しいパッケージでも何ら変わらない。新しいミッドシップのコルベットは、6万ドル(約642万円)からという価格設定だ。

私は、ラスベガスとその周辺で、新しいコルベットと数日を過ごす機会を得た。混雑した高速道路、砂漠を突っ切る空いた道、ラスベガスストリップの通りを走ってみた。また、サーキットでも数時間走ってみることで、この車の個性の異なる側面を見ることもできた。

コルベットには力強いパワーがあり、キビキビした運転にも、快適なクルージングにも適したシャーシを備えていることがわかった。後ろにはゴルフバッグを2つ、前にもビール箱をいくつか積むことができる。快適で余裕がある。新たなV8シボレー・スモールブロックエンジンには、タイヤを空転させて白煙を上げたり、ドライバーを笑顔にする力もある。

しかし、同時にがっかりした部分もある。コルベットは2020は、卓越しているとまでは言えない。ブレーキは気難しく、一貫性に欠ける。首に負担がかかるほどのパワーはなかなか味わえず、そこに達するためには、タコメーターの針をかなりの角度まで回す必要がある。数え切れないほどのメニューとオプションによって、さまざまな安全機能が制御されている。圧倒されるほどだ。そしてなぜかは不明だが、すべての空調コントロールボタンは、運転手と助手席の間にまたがる奇妙な仕切りの長いバーに収められている。

  1. DSC01950

  2. DSC01967

  3. DSC01900

  4. DSC01895

  5. DSC01892

  6. DSC01891

  7. DSC01867-1

  8. DSC01924

  9. DSC01930

  10. DSC01931

新しいコルベットのハンドリング性能は優れている。シボレーはシャーシのチューニング方法を心得ている。その点はなかなかすばらしい。この車は、全幅の信頼を抱いてコーナーに飛び込むことができる。そしてそのコーナーを抜けるまで、何のドラマも起こらず、タイヤがスピンするようなこともない。

サーキットでは、路面の状態が車の挙動に大きな影響を及ぼすことがあるが、コルベットなら安心だ。ただし、それがいいことなのかどうか確信はない。

コルベットは、これまでずっと前輪の車軸上に重いエンジンを載せ、抑制の効いたカオスを提供するものだった。ダッジ・バイパーや昔のランボルギーニのように、度の過ぎたものではなかった。それでも尊敬に値するほどの、クレイジーなパワーを持っていた。ただし、それも昔のこと。コーナーに突っ込んだときも、ストレートでベタ踏みしたときも、Z51パッケージのコルベット2020は、きちんと制御され、整然としていた。これに納得する人もいるのはわかるが、以前の車のような恐ろしいほどの興奮が奪われたのは確かだ。

エンジンをドライバーの後ろ、かつ後輪の車軸の前に配置したミッドシップのコルベットは、マッスルカーというよりもスーパーカーのようなハンドリング特性となっている。サーキット上では、ほとんどどんな人がドライブしても、それなりに競争力を発揮する。常に狙い通りに操れるはずだ。高度なトラクションコントロールを備えたことで、コルベット2020は自信をもたらし、その上にエキサイティングなものを付加してくれる。起伏のある丘や、曲がりくねったコーナーに挑むのに、ためらいはいらない。テクニカルなカーブでも挙動は安定している。それでも、望むなら補助機能をいくつかオフにして、後輪をスライドさせることも可能だ。

ただし、人を微笑ませるだけのパワーはあっても、声を出して笑ってしまうほどではない。この基本パッケージのままでは、コルベットはレーサーというよりも、スピーディなグランドツアラーといったところだ。

もっとブレーキが優れていれば、と思う。

新しいコルベットには、新しいブレーキシステムが搭載されている。これは、ブレーキ・バイ・ワイヤーによるもので、従来のような油圧のブレーキシステムを制御するマスターシリンダーは存在しない。コンピューターがシステムをコントロールしているのだ。私は、この仕組があまり好きではない。一般道では、神経質で扱いにくい。サーキットでは、もっとできることがあるはずだと思わせる。

サーキットで走りたい人のために付け加えれば、ブレーキのフェードはほとんどない。ブレーキの状態はラップごとに安定するようだ。数時間におよぶレースの間、その状態が保たれるだろうか。今のところ不明だが、もしGMが車を提供してくれるなら、喜んで確かめたいと思っている。

ブレーキは、この車の中で、最悪の部分の1つだ。シボレーは、ブレンボ(Brembo)に助けを求めた。と言えば、うまくいきそうに聞こえる。ブレンボは、ブレーキシステムのトップメーカーだ。しかしこの組み合わせについて言えば、ブレンボとシボレーのどちらが悪いということではなく、なぜかうまくいかなかったようだ。このブレーキは変更の必要がある。

シボレーのスモールブロックエンジンは、コルベットの心臓であり、伝説的なコルベットのエンジニア、ゾラ・アルクス・ダントフ(Zora Arkus-Duntov)氏が、1955年に採用して以来、脈を打ち続けてきた。このV8エンジンのないコルベットなど、ホットドッグと法外な値段のビールのない野球の試合のようなもの。まったく非アメリカ的だ。

この車のLT2エンジンは、490hpの馬力と465lb-ft(637Nm)のトルクを発生するコンパクトなスモールブロックとなっている。現代のエンジンに期待される、あらゆるギミックを備える。たとえばシリンダーの半分をシャットオフして、4気筒だけでスムーズに動作するモードもある。この切り替えはシームレスで、実際に高速道路での燃費は、約30mpg(約12.7km/l)にまで向上する。

この洗練されたスモールブロックは、コルベットが静止状態から約3秒で60mph(約96.6km/h)に達することのできる要因の1つだ。もちろん、コンピューターによる発車支援機能、トランスアクスル、適切な重量配分も寄与している。

それから、インテリアにも触れておこう。コルベット2020のインテリアは、間違いなくシボレーがこれまでに作ったコルベットの中で最高のできだ。アウディ、マクラーレン、BMW、アキュラなどに引けを取らないほど美しく、よくできている。

こうしたものすべてが、6万ドル(約642万円)という価格に含まれている。オプションの装備をあれこれ加えても、8万ドル(約856万円)には収まるだろう。

つまり、7人乗りSUVほどの価格の車で、人は子供たちを打ち捨て、ゴルフクラブしか運べない、2人乗りのミッドシップコルベットを手に入れ、約3秒で60mph(約96.6km/h)にまで加速できるというわけだ。必要ならスノータイヤも装備できる。

これは、良くも悪くも、自動車にとって新しい時代の幕開けだ。

コルベットは米国のアイコンであり、それが問題になる。モデルチェンジのたびに、いつも非現実的な期待が寄せられる。どんなものになっても、けっして満足しない人達がいるのだ。モデルチェンジは、毎回とことん分析され、否定されてしまう。シボレーは、60年におよぶ伝統、伝承、噂に立ち向かわなければならない。たとえば、今回のモデルには、円形のテールライトがない。それは一部の頑固なコルベットファンにとっては、重罪に等しい。

コルベット2020では、ゼネラルモーターズのシボレー部門はすべてを捨て、最初から作り直した。その結果、頑丈なピックアップトラック程度の価格で、一般道でもサーキットでも快適なミッドシップのスポーツカーができ上がった。

コルベットは常にその時代の産物であり、今回も例外ではない。世界中が電気自動車に向かうという動向の中、シボレーはコルベットを未来に向けて進化させるしかなかった。しかし、エンジンをドライバーの後ろに置くよう、シボレーを仕向けたのはテスラではない。それは物理学だ。

コルベット2020がユニークなのは、その構成要素の集合によるものではない。車を構成するの部品と、その価格を合わせて考えた時にユニークと言える。コルベット2020は、十分に優れている。そして2021年以降のモデルは、さらに素晴らしいものになるだろう。コルベット2020を支えているプラットフォームは、見事としか言いようがない。

いくつかの装備の選択と、そこからくる運動性能については、議論の余地があるだろう。とにかくブレーキは良くない。インテリアのオプションは、キンピカし過ぎだろう。爆発的なパワーは、深く秘められていて、ほとんどの運転状況では、それを引き出すのはまず不可能だ。しかし、こうしたことは、すべて時間の経過とともに改善されるはず。現在の状態でも満足できる人はいるだろう。しかし、登場したばかりのものに完璧を求めるのは、どだい無理がある。

どうしても比較してしまうが、もう少し金額を足せば、フェラーリが買える。フロントエンジンのマスタング・シェルビーGT350Rと同じくらいの価格だが、ハンドリングはこちらの方が優れている。同じ価格帯のミッドシップでも、コルベットのスモールブロックはV型8気筒なのに対して、ポルシェのケイマンは4気筒だ。ポルシェを選ぶ理由があるだろうか。コルベット2020が、そうした車よりも本質的に優れているわけではない。まったく違う車なのだ。

コルベットは、誰にとっても入手可能なスーパーカーであるという点で、米国の自動車業界の頂点に位置している。シボレーは、コルベット2020で、ミッドシップの躍動を非常に安価に提供しているのだ。

もちろん、フェラーリやマクラーレンほど優れているわけではないが、かなり近いと言える。シボレーに、さらに数年を与えれば、このミッドシップのコルベットプラットフォームは、さらに高い競争力を獲得するはずだ。

このコルベットを作ったエンジニアの何人かと直接話ができた。古いモデルの2019年型コルベットZR1は、非常に強力なスーパーチャージャーを装備し、コルベット2020よりも速い。話をしたエンジニアによると、そのスーパーチャージャーを新しいエンジンに取り付けることも可能だという。さらなるパワーの獲得に期待できそうだ。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

人気の写真編集アプリ「VSCO」に複数の写真や映像を重ねられる映像ツール「Montage」が加わる

写真編集アプリとして人気の高く、Z世代のお気に入りというミームでもあるVSCOは、このところビデオに力を入れているようだ。先月、同社はついに、写真とともにビデオも投稿できる機能を加えた。そして米国時間3月4日、Montage(モンタージュ)と呼ばれるさらに強力で複雑なビデオ編集ツールを発表した

すでにVSCOには、ビデオにフィルターをかけたり、露出を調節したりと、写真編集のようなビデオ編集機能がある。しかしMontageは、それらとはまったく異なるビデオ編集体験だ。まず、ユーザーは複数のシーンのある長いストーリーを作成できる。そしてストーリーには、複数のビデオや写真、色、形などを重ねてコラージュのような作品も作れる。

その新しい機能は、VSCOのいわば原点でもあるVSCO Studioから利用できる。使用するユーザーはまず、方形、横長、縦長などの縦横(アスペクト)比を指定し、「カメラロール」から複数の写真やビデオを加えてシーンを作る。

「モンタージュ」を作るときに重ねていく像の透明度を指定できる。ビデオに加えるシーンの数に制限はない。ただし投稿できるビデオは2分以内だ。最終結果はVimeo以外でも共有できる。

VSCOがビデオに投資するこの時期には、Instagramストーリーや、人気アプリTikTokやByteによってソーシャルメディア上のビデオ共有が急激に盛んになり、ビデオを編集することへの関心も急増している。

昨年VSCOは、ビデオ技術の企業であるRyloを買収して、ビデオに注力する意思を明らかにした。Montageなどに搭載される新しいビデオ機能には、有料会員を増やしたい思惑もある。12月に同社は「今のペースでは2020年内に有料ユーザーが400万人を超え、年商は8000万ドル近くになる」とコメントした。これは、年間19.99ドルの会費によるもの。VSCOの1週間のアクティブユーザーは2000万人を超えているが、そのうち200万人強が有料ユーザーだ。

無料ユーザーもMontageで遊べるが、完成したビデオの保存や投稿は有料ユーザーのみだ。MontageのiOSおよびAndroidバージョンは、本日から提供される。

関連記事
Z世代お気に入りの写真共有アプリVSCOが動画投稿も可能に
有料ユーザー400万人の写真共有サービスVSCOが360度カメラ開発のRyloを買収
写真フィルターの模倣でVSCOが競合のPicsArtを提訴、写真編集アプリメーカー同士の争い
人気写真加工アプリVSCOが動画にも対応、対象は有料ユーザーのみ

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

持続可能なマイクログリッドがクリーンエネルギーの未来を作る

気候変動や日常化しつつある自然災害に対抗するために必要不可欠なツールとして、持続可能なマイクログリッドが米国中に作られ始めている。ハリケーン、地震、山火事に襲われた多くの地域では、従来型の電力網による電力供給の維持が難しくなり、停電が発生すれば地域経済は停滞し、究極的には人の命が危険にさらされる。

マイクログリッド(災害時には広域の電力網から独立して運用できるように設計された電力供給設備)が生まれて数十年になるが、21世紀に入るまで発電はもっぱら化石燃料に頼っていた。ソーラーパネルとバッテリー容量のコストが十分に下がって持続可能なマイクログリッドが経済的な現実味を帯びるようになるまでに、そこから20年を要した。しかし、このところの注目度の高まりや設置件数の増加を見るにそれは変曲点に達し、未来のクリーンエネルギーとしての可能性が大いに高まったと言える。

サンタバーバラの例を見てみよう。同郡では、全学校に設置できるマイクログリッドの研究と設計のために50万ドル(約5400万円)を割り当てることについて、11月に統一学区が全員一致で賛成票を投じた。Clean Coalition(クリーン・コーリション)は、予備調査で18の学校の敷地には太陽光で15MW(メガワット)以上を発電できる可能性を割り出している。

こうしたソーラーパネルとバッテリーを組み合わせた「ソーラー・プラス・ストレージ」型のマイクログリッドを適切な学校に設置すれば、自然災害や、昨年10月に数十万人もの住民に損害を与えたカリフォルニアの電力会社PG&Gの停電事故のようなときに、地域社会に貢献できる。こうしたサイトは、重要な緊急援助サービス、痛みやすい食料の保存、照明、電気、インターネット絶続を非常時に供給する場にもなる。

マイクログリッド設置の実現性の調査は6月に完了する。最終的な費用は4000万ドル(約43億円)ほどと見積もられているが、長期の電力販売契約(PPA)を結ぶことで、学区はサイトを無料で設置し、通常の電気料金と同じ形で料金を長期支払いにできる(価格は電力会社の電気よりも安い)。このような契約は、ここ数年の間に再生可能エネルギーの発電コストが継続的に低下し、経済的な有効性が認められて初めて可能となった。そしてこれが、マイクログリッド・ブームの中心的な牽引力になっている。

1月末に、Scale Microgrid Solutions(スケール・マイクログリッド・ソリューションズ)は、投資会社のWarburg Pincus(ウォーバーグ・ピンカス)から3億ドル(約320億円)の投資を受けた。現在のマイクログリッドは、個々の顧客の特別な状況に合わせて設計され設置されるのが普通だ。だがScale Microgrid Solutionsは、運送用のコンテナの中にソーラーパネル、バッテリー、制御装置、バックアップ用のガス発電機を組み込んだモジュール式のマイクログリッド・インフラストラクチャーを提供している。

このモジュールは素早く設置でき、1500万ドル(約16億円)程度の予算でマイクログリッドの設備が欲しいと考える顧客や施設に適したオプションだ。最初のモジュール型マイクログリッドは、2019年5月、高度なクリーンエネルギー技術への投資に特化した金融会社であるGenerate Capital(ジェネレート・キャピタル)の資金援助で設置されている。

一方、米国の反対側、米国自治連邦区プエルトリコでは、自然災害の連続によりソーラー・プラス・ストレージ型マイクログリッドの有効性が証明されている。2017年にハリケーン・マリアがこの地の集中型の電力網に壊滅的な被害を加え、大勢の人たちが1年以上もの期間にわたって電気のない生活を強いられていた。

Rocky Mountain Institute(ロッキーマウンテン研究所)、Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)、Kinesis Foundation(キネシス財団)は、プエルトリコの中心地である山岳地帯の10の学校にソーラー・プラス・ストレージ型マイクログリッドを設置した。学校内の図書館、厨房、水道ポンプが停電の間、無期限で使えるように作られている。設置は2019年12月に完了した。ただでさえ経済復興が停滞していたプエルトリコを危機にさらした1月の群発地震発生の直前だ。ロッキーマウンテン研究所の島しょ緊急事態プログラムが専門情報サイトMicrogrid Knowledge(マイクログリッド・ナレッジ)に話したところによると、いくつもの学校で電力網の電気が止まったが、マイクログリッドは見事に機能し続け、重要なサービスを提供できたという。

マイクログリッドの利用は学校に留まらない。いくつかの地域社会では、自宅に設置したソーラー・アンド・ストレージ・システムをリンクさせているところもある。インバーターや制御装置は、この2年ほどで効率が向上し、電力網を補完して、またはそこから独立して参加者同士で電気を融通し合う「コミュニティー・マイクログリッド」の構築コストが、ようやく手の届く範囲になってきたという。

1月、オーストラリアのスタートアップであるRelectrify(リレクトリファイ)は、バッテリーの寿命を最大で30%も延ばし、同時に運用コストも削減するというインバーターとバッテリーの管理技術の継続的な改善にシリーズA投資450万ドル(約4億8000万円)を獲得した。Relectrifyの技術はまた、電気自動車に使われていたが、自動車用としての安定性が低下しすぎたバッテリー(Teslaの大人気の製品も含む)を再利用することもできる。これにより、需要が高まるマイクログリッドに大量の中古バッテリーを転用する道が開かれる。

これらの事業が魅力的に感じられるのは、電力網の回復力や電力網からの独立が化石燃料に依存することが多かったからでもあるが、エネルギー消費者にとって、どんどんコストが下がる安価なオプションになってきたという理由もある。プエルトリコの家庭用電力の価格は、2019年時点で1キロワット毎時(kWh)あたり27セント(約29円)と高額だ。これに対して、家庭用のソーラー・アンド・ストレージ・システムの価格は、条件がよければ24セント(約26円)まで下がる。

ソーラーパネルの設置費用は、調査会社Wood Mackenzie(ウッド・マッケンジー)の調べでは、この10年間で90%も下落した。同時に、地球温暖化とそれに起因する自然災害による早期の影響が、それでなくとも通常の維持管理や高まる需要の対応に苦しんでいる米国のエネルギーインフラに負担をかけ始めている。多くの大手電力会社が老朽化する集中型の電力網に依存する天然ガスやその他の部分的なソリューションに目を向ける中、災厄を経験した社会はすでにマイクログリッドの価値を実感し、競って導入するようになっているのだ。

これらの初期型のサステナブルなマイクログリッドが与える最大のインパクトは、近隣住民に電力を届ける非常用電源としての役割を超える。発電方法と電気の使い方に関する地域社会とエネルギー消費者の考え方を劇的に変化させるきっかけが、そこにはある。地域社会のマイクログリッド・システムでは、住民は電力源との間に具体的で明確なつながりを持つことができ、需要に対して十分な電力が行き渡るように友人や近所の人たちと協力し合うことが求められる。

このようなシステムは、あるかないかの社会的または技術的な制約のために、ピーク需要に合わせて環境にもっとも悪い燃料を常に燃やし続けるよう発電所に要求する現在の電力網とは、まったく対照的だ。持続可能なマイクログリッドは、ついに完全に誰の手にも届く価格にまでなってきた。そしていつの間にかマイクログリッドは、エネルギー消費と復元力に対する私たちの考え方を変え始めた。

【編集部注】著者のAlex Behrens(アレックス・ベレンズ)は、運輸、エネルギー、自動化、分散化における未来のテクノロジーを専門とする調査分析家でありブロガー。Fortune 500に選ばれた企業や技術系スタートアップでのデータおよび運用業務を経験。Seeking Alpha、Spend Matters、Metal Minerといったパブリッシャーのレギュラー寄稿者。

画像クレジット:Will Lester/Inland Valley Daily Bulletin (opens in a new window)/ Getty Images

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)