コンバージョンに焦点を当てたUXテストの実施ガイド

コンバージョンを主眼に置いたテストの実施手法には様々なものがあります。有名なところでいうとA/Bテストなどが代表格ですが、それ以外にも様々な種類があります。どのようなタイプがあり、それぞれのテストがどの場面で活躍するのかを見ていきましょう。– SEO Japan

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ユーザー体験という言葉は漠然としている。「優れた」UXと「悪い」UXを決めるものとは何なのだろう。そして、その中間に位置するものは、どういったものなのだろう。

UXのテストと測定には、チャレンジが待っている。できる限り正確にテストする手法やツールは、存在するのだろうか。

答えは、もちろんイエスだ。この記事では、UXのテストと測定について紹介する。もしこれを読んでいるあなたが、UXやコンバージョン最適化の専門家であれば、この記事の内容は基本的なものかもしれない。それでも、これから始める人々にとっては、概要をつかむのに役立つだろう。

UXテストとは何か

ユーザー体験とは、高レベルに言えば、ウェブサイトやアプリといった製品を使う際の、総合的な主観体験である。そこには、優れたデザインや適正なユーザビリティ以上のものが含まれる。

ピーター・モーヴィル氏とその友人たちが、ハチの巣状の六角形を用いて、UXの全ての側面を網羅的に説明してくれている。

honeycomb

これが表すのは、次の通り。

  • 便利であること。あなたの製品やウェブサイトは、便利なものになっているだろうか?便利であるほど、優れた体験を提供できる。
  • 簡単に使えること。複雑すぎたり、ユーザーを戸惑わせたりする製品に、最初から勝ち目はない。ユーザビリティは絶対に必要なものである(しかし十分ではない)。
  • 望ましいこと。画像やアイデンティティ、ブランド、その他の感情的なデザイン要素が持つ力と価値を理解することで、効率を高めることが容易になるはずだ。
  • 見つけやすいこと。私たちは、移動しやすいウェブサイトや見つけやすいオブジェクトのデザインに尽力しなければならない。そうすることで、ユーザーは求めるものを発見できる。
  • アクセスしやすいこと。ビルにエレベーターやスロープが設置されているのと同様、ウェブサイトもハンデを持つ人々(人口の約20%)がアクセスできるものでなければならない。現在では、これがいいビジネスや道徳的な行いと見なされている。いずれは、法律となり義務化されるだろう。
  • 信頼できること。ウェブサイトは信頼できるものでなくてはならない。ユーザーの信用に影響するデザイン要素を知っておくべきだ。
  • 価値があること。サイトは、ユーザーに価値を提供しなくてはならない。非営利のサイトならば、ユーザー体験が彼らのミッションを前進させなければならない。営利サイトでは、収益に貢献し、顧客満足度を高めてくれる。

これらに留意して設計された、ユーザー体験テストの手法が存在する。

ユーザー体験テストの手法

ここに、よく使われるユーザー体験テストの手法と、その特徴をまとめた。これらは「ユーザーテスト」という広い意味にまとめられているが、リモートユーザーテストを行うソフトウェアが増加していることで、より個別に意味を持つようになっている。

管理されたユーザーテスト

ユーザーテストとは基本的に、製品や体験を実際のユーザーでテストすることである。ユーザーは一連のタスクを提示され、どれだけ効率的にこなせるかを計測される。

これには、主に2種類が存在する。

  • 管理されているもの
  • 管理されていないもの

管理されたユーザーテストは、実験者がリアルタイムにユーザーの行動を観察する。実際に対面する場合も、リモート環境で行う場合もあるが、どちらにおいてもユーザーはタスクの進行を観察されることになる。

管理されたユーザーテストでは、ユーザーに指示を与え、疑問に回答し、フィードバックを伺うといったことがリアルタイムに行える。より強いつながりと高い柔軟性がある一方、バイアスに影響される可能性があるという欠点も存在する。

ここでの主なバイアスとして、ホーソン効果が挙げられる。

ホーソン効果

WiderFunnelのクリス・ゴワード氏が、ユーザーテストにおけるホーソン効果を解説してくれている。

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クリス・ゴワード氏
「何かを観察するということは、それを変化させるということだ。人は自分が観察されていると知っている時、タスクを完了させるのに、より積極的になる。たとえばテスターが、実験者がユーザビリティの問題を調べているのを知っている場合、彼らはその問題が重要かどうかに関係なく、問題を発見しようとより積極的になるだろう。」

もし私たちが書いた、定性的研究におけるバイアスの記事を読んでいるなら、賢馬ハンス実験者効果についてはご存知だろう。基本的に、実験者の認知バイアスがテスターに、無意識的に影響を与えてしまうということだ。

賢馬ハンス

どんな場合でも、調査は注意深く行わなければならない。そうしないと、意図せず結果を歪めてしまうだろう。

管理されていないユーザーテスト

管理されていないユーザーテストとは、もちろん、管理されたものと非常に近いものである。しかしこちらは、事前に決定されたタスクをテスターに説明し、タスク完了まで干渉しない。

こちらの形式には、多くの長所がある。コストが安く、スケーラブルで、結果にバイアスがかかることがない。

Unmoderated User Testing

しかし、もちろん短所も存在する。

候補者選びを入念に行わなければ質の低いテスト結果を得ることとなり、ユーザー体験について間違った結果を信じることになるだろう。また、有名プラットフォームのテスターたちは、金銭を得るためにテストに参加する。そのため多くのテストを受けており、通常のトラフィックで得られるユーザーと一致しないだろう。

すぐ使えるユーザーテストのポイント
そのため、UserTesting.comWhatUsersDoTryMyUIといったサイトでテストを行う場合には、次のことを頭に入れておく必要がある。

  • ほとんどのテストで、テストプロトコルに次の3種類のタスクを盛り込んでおく。
  • 限定的なタスク
  • 広範囲のタスク
  • ファンネルの達成
  • テスターがターゲットユーザーと一致することを確認する。
  • あなたのサイトを使うのが初めてでなくてはならない。
  • ほとんどの場合、5~10人テスターがいれば十分である。
  • 通常、テスターが話すことより、行うことの方が重要である。

大きな変更をリリースする前には必ず(ステージングサーバーで)、もしくは少なくとも年に一度は、ユーザーテストを行うべきだろう。

5秒間テスト

本当は他の領域に属するテストだが、非常にユニークで、独自のカテゴリーを形成していると私は考えている。

UsabilityHubによって広まったテストで、コンセプトは単純だ。人々の第一印象を測定することで、デザインの明確さを最適化する、というものである。

テストでは、デザイン(ホームページデザイン、ランディングページ、ロゴ、パンフレット、マーケティング素材など)をアップロードし、人々に5秒間見せる。5秒経過した後、覚えていることを質問する。

明確さの確認においては優れたテストであり、デザインチームや上司に素敵なクラウドを見せられるだろう。

5秒間テスト

もし意図したものと結果に大きな差異がある場合には、明確さにおいて問題があることを意味する。

カードソーティング

カードソーティングは、情報アーキテクチャでよく使われる、UX調査戦略である。カードソーティングのセッションにおいて、「参加者はトピックを、意味が通じる形でカテゴリーに分けていく。グループにラベルをつけるヒントにもなるだろう。」

テストは参加者と対面する形で、実際のカードや紙を使って行えるが、多くの場合にはソフトウェアが利用される。

カードソーティング

このテクニックは特に、ウェブサイトの管理とラベル付けに関連する。ユーザーがサイトをどう捉えるのかを知り、より優れたUXのためにどう整列すべきか、最適な方法がわかるだろう。

セッションリプレイ

セッションリプレイの正しい分析手法については、我々がすでに包括的な情報をまとめている。

セッションリプレイとは、ウェブサイトやウェブアプリの訪問者がたどる道筋を再現することである。匿名の訪問者がインターフェースにどう触れるかを観察する。ユーザーは観察されていることを通常は知らないため、ユーザーテストと比較して大きなメリットがある。

セッションリプレイ

いくつかの理由により、このテストはUXテストにおいて非常にポピュラーなものとなっている。収集できるデータの質が高まっており、現在ではユーザーがストレスを感じる場所にフラグを立てたり、イベント、トラフィック源、ゴールなどに応じてグループに分けたりすることも可能となっている。

他にも、よく使われる理由がある。それは、ここから得られるのが受動的なデータであるということだ。収集に特別な努力を必要とせず、ただ得られたデータを分析すれば良い。サイトにJavaScriptスニペットを埋め込むだけで、準備ができてしまう。

ただしセッションリプレイには、多くの問題点もある。時間がかかること、バイアスに影響されやすいこと、洞察が曖昧になる可能性があることだ。

セッションリプレイは、非常に多くの洞察を与えてくれる。しかし、これを唯一のデータソースとしてはならない。得られた洞察をA/Bテストにかけ、そこから学ぶことを忘れないように。

お客様の声

お客様の声は、顧客が求めるもの、必要とするものを、定性調査と数量調査から見つけるプロセスである。顧客の期待、趣向、嫌うものを発見する、より深いプロセスとも言える。

1993年にグリフィン氏とハウザー氏が書いたマーケティング科学の論文において、VOCを行う際に考慮すべき4つの側面が定義されている。

  • 顧客自身の言葉で表現された顧客ニーズ
  • ニーズの階層的グループ分け
  • ニーズの優先度の決定
  • ニーズのセグメント分けと、顧客が感じる利益

VOC調査はユーザーの動機やUXの洞察をもたらすだけでなく、コピーライティングに大きく役立つ情報も提供してくれる。

お客様の声

このデータを収集する方法は複数あり、顧客調査や現地調査などが利用できる。しかし最も重要なのは、すぐに使えるデータを作成することだ。このデータを収集できるツールとしては、顧客調査ツールとしてSurveyMonkeyTypeformがあるが、私が好きなツールとして、HotJarQualarooUsabillaもぜひ紹介しておきたい。

態度調査

UXの洞察を得るのによく使われる手法として、直接顧客にたずねることが挙げられる。

ResearchXLのコンバージョン調査プロセスにおいて、顧客調査は欠かせないものとなっている。

ResearchXL

調査については、反応スケールからNPSまで、非常に多くのことが書かれている。ここであまり多くは取り上げないが、正しく行えば、さまざまなデータが得られるだろう(ただし間違った方法もあるため、注意が必要である)。

満足度測定

ユーザーテストや調査内で、満足やストレスを与える個別の事例を測定する方法がいくつか存在する。これについては、以前私が記事を執筆している。そこで挙げた測定ツールを8つ紹介する

  • アフターシナリオアンケート(ASQ)
  • NASA-TLX
  • 主観的知的努力アンケート(SMEQ)
  • ユーザビリティマグニチュード推定(UME)
  • 単一の簡単な質問(SEQ)
  • システムユーザビリティスケール(SUS)
  • SUPR-Q
  • ネットプロモータースコア(NPS)

これらによって、より具体的・数量的なデータを得ることができる。時にサンプルサイズが小さくなってしまっても信頼区間を計算できる。また、いくつかは、他の企業や競合のデータベースとあなたの指標を比較することも可能だ。

UX調査やUXテストを始めたばかりの者には、かなり複雑である。もしまだ慣れていないのであれば、いくつかユーザーテストを行って、セッションリプレイの動画を分析してみるのをおすすめする。より多くの情報が知りたくなったら、私が書いた別の記事を読んでみてほしい。

アイトラッキング

アイトラッキングの研究でも、ユーザーがどうサイトに触れているのかを確かめられる。対面、もしくはリモートでのユーザーテストの一貫として、アイトラッキングを実施できる。

テスターは通常時と同様にサイトに触れたり、もしくは一連のタスクを行ったりすることで、アイトラッキングソフトウェアが最も集中している場所や、視線の移動経路を割り出してくれる。

アイトラッキング

プロトタイプやUIの早期バージョンに対してもアイトラッキングを実施でき、大きなミスを避けたり、開発コストを低減させたりすることができる。またコンバージョン調査においても、テストアイデアや仮説を形成するのに活用できる。

アイトラッキングやビジュアルエンゲージメント調査を最適化プロセスに導入することで、多くの人々が考えもしないような発見を見つけ出せるだろう。

アイトラッキングについては、こちらの記事も参照してほしい。

生体もしくは高度な感情のトラッキング

生体ユーザーリサーチでは、ユーザーがどう感じているのかを調査できる。

生体もしくは高度な感情のトラッキング

若干複雑ではあるが、基本的にこのリサーチが行うのは、サイトの構造、まとめ方、動機を促す要素、そしてコンテンツの効率について洞察をもたらすことである。

心拍数や表情、瞳孔の開き方といった生物学的データを計測し、統計的に分析して適用する。サイト訪問者の感情的反応や特定の体験に、意味を与えてくれる。

入門者向けではないが、生体反応調査は非常に高い価値をもたらす。新規サイトや広告の立ち上げにおいては、特に有用である。

A/Bテスト

A/Bテストを行う場合、通常は「ユーザー体験」といったものに最適化する場面ではないだろう。しかし管理された実験(A/Bテストの 言い換え)は、実施した変更が重要な指標にいい影響を与えるかどうかを判別する、唯一の手段である。

様々な変更によってユーザー満足度は改善しうるが、訪問者一人あたりの収益が低下することもある。理由は誰にも分からない。

A/Bテスト

ここまで紹介したユーザー体験テストと計測法は、どれも有効かつ高い価値を持つ。ただし、もし十分なトラフィックを獲得しているなら、意思決定のために管理された実験を優先すべきだ。あなたは、定性的もしくはマイクロレベルの指標だけでなく、マクロレベルの指標において、得られる効果をより明確に理解しているだろう。

もしA/Bテストが初めてなら、こちらのガイドをおすすめする

私は、CXLの創業者ピープ・ラジャ氏がまとめてくれた言葉が気に入っている。

peep laja

ピープ・ラジャ氏
「ユーザー体験の効率をどう計測すればいいだろうか?答えはシンプルだ。
反対するデザイナーもいるかもしれないが、私は、全てはビジネス目標を達成することだと考えている。ユーザー体験とは、目標を達成するための手段なのである。
最もシンプルで客観的な基準は、コンバージョン率だ。体験のデザインにおける変更がコンバージョンを改善したか、悪化させたか。コンバージョンの行動は、何でも構わない(購入、登録、引用のリクエスト、繰り返しのログインなど)。」

これをコンバージョン最適化にどう取り込むか

優れたUXは、大幅な成長と高いコンバージョン率をもたらす(通常は)。

基本的に、優れたユーザー体験は、目標への手段である。ただ誰かを幸せにするためだけに、素晴らしいユーザー体験を作るのではない。何らの結果につなげたいと思うはずである。あなたのソーシャルネットワークサイトを使い続けてもらったり、ECサイトでジーンズを購入してもらったり、SaaSツールで最高の価値を作り出してもらったり、といった結果である。

How Does This Factor Into Conversion Optimization?

ユーザーがあなたのサイトを訪問した時には必ず、何らかの体験を得ることとなる。その体験の質はユーザーの意見(これが好きだろうか?)や紹介の可能性(このことをツイートしたり話したりするだろうか?)、そして究極的にはコンバージョン(ユーザーはこちらがして欲しいことをしてくれるだろうか?)に大きく影響を及ぼす。

ユーザー体験テストは、デザインや広告、もしくは提案中の実験的デザインに大きな投資を行う前に、リスクを低減させてくれる優れた手段である。通常は実験を行うよりも低予算かつ短期で済むため、より優れたテスト仮説の作成には完璧なメカニズムとなっている(そしてその仮説は、より高いコンバージョン率や収益をもたらす)。

結論

ユーザー体験は、(通常は)より高いコンバージョンと収益をもたらしてくれる。つまり、UXの計測とテストは必須である。特に製品デザインやマーケティングが一定の成熟を見せた際には、さらに重要となる。

少なくともユーザー体験テストは、トラフィックとトランザクション数が増大する中で、確かな実験プログラムを作成する足掛かりとなってくれる。

これは、製品の更なる成長へとつながる、強い相関性を持つマイクロレベルの指標である。大きな規模で見れば、何らかのUXテストをすることになるのはほぼ確実だ。

この記事は入門レベルのガイドであるが、あなたが正しい形でテストを行う手助けになることを祈っている。


この記事は、CXLに掲載された「User Experience Testing: A Conversion-Focused Guide」を翻訳した内容です。


ピープ氏の意見は、先日ご紹介したパー・アクスボム氏の考えとは相対する意見でした。UXを企業のコンバージョンのためのものとしてみるのか、ユーザーが真なる目標を達成するためのものとして見るのか、専門家によってもその考えは大きく異なるようです。
以前ご紹介したパー・アクスボム氏の記事はこちら
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投稿者:

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002年開設、アイオイクスによる日本初のSEOポータル。SEOに関する最新情報記事を多数配信。SEOサービスはもちろん、高機能LPOツール&コンサルティング、次世代SEOに欠かせないインフォグラフィックを活用したコンテンツマーケティング等も提供。 SEOブログながら、ウェブマーケ全般。アドテク、ソーシャル、スタートアップ、インフォグラフィック等。