米国最強投資家からのシンプルすぎるアドバイス「会社の運命を自分で決めたいなら、利益を出せ」

日本でもスタートアップに数千万はもちろんのこと、数億円単位の投資が普通に行われる時代になってきた最近。そんな環境の変化が喜ばしくもあり、若手のスタートアップ経営者が羨ましくもある40代に入った中堅経営者でもある私です。今回は米国でもトップクラスの投資会社アンドリーセン・ホロウィッツの創業者が語る、起業家へのアドバイスについて。「利益を出せ」とは、利益どころか売上もさほどない会社が何十億、何百億、時には1000億で売却されるような今の時代に即していない言葉と思われる人も多いかもしれません。そもそも彼の投資会社自体、全く売上のないInstagramに2500万投資して、Facebookへの売却で78億円儲けたそうですし。。思わず「お前が言うな」といいたくなりますが、あえてその彼が改めて問う言葉だけに何かのヒントが隠されているはず?真相はいかに。 — SEO Japan

起業家なら、気難しいベテランのCEOや投資家から「キャッシュが王様」だと言われたことがあるはずだ。ツイッターのIPO関連の記事を読み、「あの爺さん達は、一体何を言っているんだ?」と心の中で呟いたのではないだろうか?ツイッターは、設立から6年が経過した今でも多額の資金を費やしている。キャッシュではなく、ツイッター(製品)が最も重要視されているように思える。

このような状況では、「これが経験則の問題点だ。理解することは出来るものの、分かち合うことが出来ない」と自分に言い聞かせるようにしている。しかし、この名言だけは、根本的に重要であるため、今回は、年寄りの役割を務めさせてもらうことにする。

私が会社を設立し、CEOを務めていた1999年-2000年においては、キャッシュは、王様と言うよりも奴隷のような存在であった。「冒険するか、諦めるか」の二者択一を迫られる時代であった。投資家は、インターネットビジネスなら何でも飛びつき、収益を度外視していた。私は会社を急速に発展させていった。設立してから9ヶ月も経たないうちに、2700万ドル/四半期を集めることに成功した。冒険の真っ最中であり、諦めるつもりはなかった。

その後、ドットコムバブルがはじけ、投資家達は考え方を一変させた。インターネットビジネスを嫌うようになり、自ら資金を得ることが出来ない会社には、投資を控えるようになった。

2年間にわたって四苦八苦し、3名の従業員を解雇し、睡眠時間を取れないほど身を粉にして働いた結果、ようやくキャッシュを得られる可能性を感じる位置まで辿り着くことが出来た。しかし、この時点では、事業運営が、成功するかどうかは微妙であった。手強い競合者に囲まれ、大量の仕事に追われていたが、倒産に追い込まれるほど追いつめられているわけではなかった。それでも、共同設立者であり、取締役会長であるマーク・アンドリーセン氏は、そろそろ利益を上げるべきだと話した。何となく、アンドリーセン氏の指摘は正しいと思えた。

そこで私は、従業員と話し合いの場を持ち、2003年の第2四半期までに黒字化を行い、投資機関にも約束するつもりだと話した。すると、最も優秀な従業員が、この方針を疑問視した。この人物は、現金の減少ペースが早い点、資金が不足している点、そして、すぐに完了しなければならない作業を次々と指摘していった。そして、「無理やり決定を下す必要はあるのか?」と尋ねた。考えをまとめるためには、厳しい質問を投げ掛けなければならない時もある。当時の私の答えは、今、同じ質問を問う起業家に与える答えと同じである:

「まずは、どれだけ従業員を解雇する意思があるのか考えるべきだ。躊躇せずに解雇することが出来るなら、赤字のままで構わない。収益を上げない会社には、資本市場が解雇のタイミングを教えてくれる。我々は、投資家の意見に真剣に耳を傾けなければならない。投資家に嫌われたら、会社はあっと言う間に傾いてしまうからだ。君はどう思うか分からないが、私はこんな方法で会社を運営するのは嫌だ。投資家にあれこれ指示される前に、従業員全員に対して、自分達が正しいと思うことを私は伝えたい。自分の運命は自分で決めたいんだ。」

この従業員は何も言葉を発さなかったが、目を見れば、私の言いたいことが伝わっている点は明白であった。これは、戦略や手法ではなく、自由を求める戦いである。自分達がベストだと思うように会社を作るための自由だ。

その後の5年間、投資家は様々な要求をした。賢明なアイデアもあれば、浅はかなアイデアもあった。私達は真摯に耳を傾けたものの、常に、自分達が正しいと思ったことを実行し、結果を気にしなかった。この会社の運命を決めたのは投資家ではなかった。自分達で運命を決め、自分達で決定を下すことが出来たこの5年の間に、会社の価値は40倍になった。

利益のない巨大な成長を介して、資金を調達している会社は多い。状況によっては、そして、会社によっては、この戦略は功を奏する可能性がある。例えば、ツイッターのような会社には、この戦略は向いている。その理由を二つ挙げる。まず、ツイッターは、今後、多額のキャッシュをもたらすと誰もが考えた、非常に重要な製品を構築している。次に、過去6年間の資本市場は、ツイッターを快くサポートしてきた(2000年から2006年の間とは対照的)。つまり、ツイッターと同じような製品を提供し、この時代に会社を経営しているなら、何もかもうまくいく。

しかし、製品がツイッターほど重要ではないなら、そして、時代の流れが変わったなら、注意が必要だ。利益を上げるまでは、たとえ誤った指摘であっても、投資家に従わなければならない。ある日、投資家が、突然、もうダメだと言ったら、会社は廃業を余儀なくされる。利益を上げれば、投資家からの浅はかな要請に対しては、カニエ・ウェストのように反論しても構わない:

え?何か言ったかい?あんたの意見は聞かないよ。


この記事は、ben’s blogに掲載された「Cash Flow and Destiny」を翻訳した内容です。

文中に出てくる会社とは、彼がVC設立前に経営していたLoudCloudという会社のことです。売上2億円でネットバブル時に無理やり上場したものの、その後、売上が伸びずネットバブル崩壊後にキャッシュを求める投資家との軋轢もあり、相当苦労したようですね。最終的には会社を成長路線に乗せ、2007年にHPに1600億円で買収し大成功したようですが。

記事を読めばわかるように、単純に全ての会社に当てはまるアドバイスでもないですが、Twitter等、圧倒的な将来性を持つ企業を除き、ちょっとした時代やトレンドの変化でその将来性が大きく左右される(つまり大半の)スタートアップ企業には、「勢いで出資を受けて利益が出ないまま突っ走る」行為には大きな可能性も逆にリスクもあることは認識した方が良いのかもしれません。

私の会社は幸運なことに最初から利益が出ていないので投資を受けることなくここまで来ましたが、新規に伸ばしていこうと思っている事業の幾つかは、外部からの投資受け入れも含めて今以上にスケールさせていきたいとは思っていますし。当面は利益優先か成長優先かギリギリの所を突き進んでいきそうな雰囲気ですし、彼のアドバイスを心に留め、成功失敗はともかく後で後悔しない選択をし一歩一歩進んでいきたいと思います。 — SEO Japan [G+]

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SEO Japan

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