SEOとリスティングの思考の違い


SEOとリスティングはどちらも検索エンジンマーケティング(SEM)の販促手法である。
というかSEMといえばこの二つしかないと言っていい。

以前に「新版 リスティング広告 成功の法則【阿部 圭司著】 リスティングとSEOの本質は同じ」という記事を書いた。

リスティングもSEOも検索キーワードを媒介として、ユーザーと検索エンジンから集客するため根本的な思考は共通している。

  1. ユーザーのニーズを洞察し
  2. ニーズから検索キーワードを推測し
  3. 検索結果をクリックさせるためのキャッチコピーを考える

この一連の集客のための発想・思考は共通であるため、根本は同一と言える部分がある。
しかし、違う点は数多くある。

一般的にSEOとリスティングの違い、言い換えるとメリットデメリットは以下の通りだと言われている。

SEOとリスティングの比較

リスティングは即効性、確実性(費用さえ払えば確実に表示させられる)に非常に優れるが、費用がかかることが欠点だと言われる。
端的に言えばそういうことなのだが、これはニュアンスの違いのごく一部しか言い表していない。

どんな名作と呼ばれる小説であっても、あらすじを50文字で書いてしまったら味もそっけもなく、どうして感動したのかわからない。
それと一緒だ。

SEOとリスティングは決定的に違うものなのだ。

根本の思考は共通であるにもかかわらず実務においては全く違う。
両者を高いバランスでこなせる担当者はまずいないことからも明らかである。
私はSEOのプロ、リスティングのプロと話をすることがよくあるが、どちらもやるという人にあったことがない(インハウスにはいるかもしれないが)。

笑い話のような笑えない話だが、住太陽氏のSEOのセミナーの参加者の中に、SEOを無料のリスティングだと勘違いして聴講に来ていた人がいて非常に面喰っていたらしい。
これは極端な話であるが、非常に違うのである。

ではどう違うのか?

私はリスティングに詳しいわけではなく、本を読んで近年実践を始めたばかりなのだが、私の感じたことを書いてみたい。
ちなみに読んだことのある本は以下の2冊。いずれも良書なのでお勧め。気が向いたらアフィリエイトリンクなので買ってください。最近子育てにお金がかかるので助かります。

リスティングがSEOと違うと感じた点は以下の通りだ。

  1. 準備に手間がかかる
    通常はコンテンツを作ることイコールSEOとなるが、これは一朝一夕にはできないので、少しづつ作り上げていくといった感じになる。
    (サイト構築時に行うSEOは別。きちんと準備せねばならない)
    ところが、リスティングの場合は先を見通して、周到に準備する必要がある。
  2. 調査・工夫・推敲により精度を高め続けることが可能
    どこでやめるか、言い換えればどのあたりで妥協するか?がすごく難しい。
    ユーザーニーズの分析、競合分析、キーワードの洗い出し、広告文の作成・校正のいずれをとっても手間をかければいくらでも手間をかけられる。
    手間をかければアカウントの出来は良くなるが、手間をかけ続けているといつまでたってもアカウントの作成が終わらない。
  3. 常に軌道修正が必要
    SEOの場合は一旦方針を固めたら後はその方向に向かってひたすらやるだけだ。
    しかし、リスティングの場合は常に微調整が必要だ。時には微調整というレベルではなく大幅見直しも必要になる。
    これを絶え間なく毎日のように行う。
    SEOはサイト自体を育てるがサイトは成長が遅い。
    それに対して、リスティングのアカウントは手をかければかけるほど早く成長する。そうして改善しないと今この瞬間にも無駄な出費が続くので、可能な限り早く動かねばならない。
  4. 費用対効果が明確
    SEOは基本的には費用をかけるものではなくて手間をかけるものである。
    しかし、サイトの修正や再構築といったことが必要になる場合には費用も必要になる。しかし、費用対効果は不明瞭だ。
    その手間や費用をかけたから検索エンジンからの評価が上がって、コンバージョンが取れたという因果関係はなかなか証明しにくい。
    これに対して、リスティングは非常に明確である。
    運用側としては大きなメリットであるのだが、担当者としてはごまかしも言い訳もできないためプレッシャーが厳しい。
  5. リスティングはリスティングだけで完結しない
    前の費用対効果が明確にもかかわることなのだが、SEOもSEOだけでは完結しないのだが、SEOの場合はコンバージョンまでの責任を求められないことがほとんどだ。
    SEOはWebサイトに集客するまでの仕事と捉えられることが多いが、リスティングは結果が求められる。
    結果を出すためには、リスティングだけでは無理でサイト全体の導線を改善したり、デザインやキャッチコピーを魅力あるものに変えたり、LPを作成したり・・・。といった努力が必要になる。
    リスティングだけ頑張っても難しいのだ。
  6. リスティングには科学的思考が求められる
    SEOは文系的な集客手法だ。結局のところ、ユーザーにとって役立つコンテンツを作れば集客できるのがSEOだ。
    しかし、リスティングは常にCTR、CPC、CPAといった数字を見ながら、改善を続けていくという思考が必要になる。
    数字を把握するためには、常にGoogle Analyticsを見て、データを読み解く技術が必要。
    SEOの場合は、検索順位、検索クエリ数、検索エンジン経由の集客数といったウェブマスターツールで把握できるぐらいの情報があれば、日常の業務においてはだいたい事足りる。
    リスティングの場合は数字を見るだけではなく、分析して、そこから次にどのようなアクションを取らなければならないか?を自分で導き出さないといけない。
  7. リスティングは覚えることが多い
    操作や、用語など覚えなければならないことが非常に多い。SEOは専門用語なんかわからなくたってできることがほとんどだ。

といった違いがある。
一つ一つの違いがとても大きく、それゆえに両者をこなせる担当者がいないと私は考えている。

しかし、SEO担当者にとってリスティングを学ぶメリットは大きい。

  • キーワード選定の精度が大きく高まる。
  • SEOは成果が出るまでに時間がかかるため、まずはリスティングを先行させることで成果を早く得ることができる。
  • リスティングで広告文をテストすることで、CTRの高いtitle・descriptionを作ることができる。
  • リスティングでPDCAを回しCPAを改善する過程において、現サイトのボトルネックを潰すことができる。

といったわけで、SEO担当者もリスティングをやってみることを強くお勧めする次第でである。