SEO=「ユーザーにとって役に立つコンテンツを作る」に対する違和感

こんにちは、ナイルのWebコンサルティング事業部でSEOのマネージャーをやっている渡邉です。最近のSEOのあるべき論として「SEO=ユーザーにとって役に立つコンテンツを作る」という流れがあるとおもいます。その考え方自体は良いとして、じゃあ実際の取り組みはどうなの?となった時にお客様の取り組みを聞いているとそうなっていないケースも多いように感じます。

そこで今回は、

  • 「結局SEOコンサル会社の提案ってどこも同じだよね」と感じている方
  • 「オウンドメディア立ち上げたり、SEO色々取り組んだけど思うようにいかない」と悩んでいる方
  • 「SEO大事だとわかっているけど社内の理解や協力を得るのが大変」と悩んでいる方

に向けて、ナイルの考える「これからのSEOの取り組み方」についてお話させて頂きます。

前提:外部リンク ⇒ コンテンツ大量生産 ⇒ ユーザーに役立つコンテンツを作るSEO時代の流れ

そもそも「ユーザーにとって役立つコンテンツを作ることがSEOである」という流れが当たり前になってきた経緯を軽くお話しておきます。

SEOの時代変化

2012年に初めてペンギンアップデート*1が導入されて以来、外部リンク施策による特定キーワードの上位表示狙いのSEOに対するリンクが大きくなり、Googleがそういった外部リンク施策を行うサイトの取り締まりを強化していくなかで、「リンクではなくコンテンツが大事!」という流れが強くなってきました。

その流れに加えてクラウドソーシングの台頭も重なったことで、外部リンクではなくコンテンツをたくさんつくってGoogleから評価を高めようというふうになってきたのか2013年~2014年くらい、キュレーションやオウンドメディアという言葉がSEOを目的として頻繁に使われるようになったのが2015年くらいでしょうか。そういった流れの中で2016年にWELQ問題*2が起き、それ以降は「コンテンツを量産してGoogleの評価を高めることではなく、ユーザーにとって役立つコンテンツを創っていくことが大事」という考え方が世間一般の当たり前になってきたのではないでしょうか。(もちろんそれ以前、昔からユーザーをみてコンテンツを丁寧に作ってきた方々も沢山いると思いますが、ここでは業界のざっくりの変化としてお話してます。)

参考)
*1ペンギンアップデートとは
*2 医療情報に関わるメディアは「覚悟」を – 問われる検索結果の信頼性(朽木誠一郎)

 WELQの問題で改めて考える、信頼できるネットの医療情報とは? 朽木誠一郎さんに聞く

「ユーザーに役立つコンテンツを作る=SEO」に対する違和感

「Googleの評価を高めることではなく、ユーザーにとって役立つコンテンツを作っていこう」という考え方自体は正しいものですが、実際SEOの取り組みは本当にそうなっているのかというと、必ずしもそうなっていないのではないかと思います。

よくあるSEOコンテンツ作り

よくあるSEOの取り組みとして、

  • ユーザーに役立つコンテンツを作ろう
  • ユーザーに役立つということは検索ニーズがある
  • 検索ニーズがあるということは、キーワードの検索ボリュームがある
  • 検索ボリュームのあるキーワードを獲得できるコンテンツを作ろう

こんな感じの流れになってしまっていないでしょうか。

つまり、結局「SEO=検索ボリュームのあるキーワードに対応したコンテンツをいっぱい作ること」の手法論に陥ってしまっているケースが圧倒的に多いということです。この取り組み方でもたしかにユーザーのインテント(検索意図)はたしかにある程度加味されたものになるかもしれませんが、本当にそれだけでいいのでしょうか。

「キーワード・コンテンツベースのSEO施策」⇒「検索ユーザーベースのSEO戦略」への切替が必要

SEOのゴールを「検索流入経由のコンバージョンを増やす」こと、そのための直近の成果を「検索ユーザーの流入数を増やす」とした場合に、「いかに検索ボリュームのあるキーワードの上位表示をして、検索流入を増やすのか」を考えるのは必然の流れになるでしょう。

SEOにおけるカスタマージャーニーの限界

SEOのカスタマージャーニー

上記を考えるにあたり、AISASやAIDMAなどのマーケティング理論を用いて簡単なカスタマージャーニーマップを作成して、各フェーズにおいて検索されうるキーワードを考えることも多いのではないでしょうか。ただし、こういったカスタマージャーニーはこういう動きをユーザーにしてほしい」という企業都合の視点になりやすく、抽象化されて普遍的になってしまうため、実際のユーザーのニーズや行動を再現しきれているかというとそうでもありません。

SEOにおけるファネル理論の限界

SEOのファネル理論

また、「コンバージョンを増やす」というSEOのゴールを達成するために、ファネルを用いてゴールから逆算して確率的に考えている方も多いのではないでしょうか。ファネル理論自体は大まかな集客~コンバージョンまでの割合を知る上では有用ですが、これに基づいてSEOに取り組んでしまうと、「コンバージョンするのは全体の◯%だから、とにかく入り口となるユーザーの集客を増やしていくのが大事」となって、間口を広げようと検索ボリュームのあるキーワードに対応したコンテンツをひたすら作っていくという手法論に陥ってしまいがちです。

コンテンツごとの役割定義が必要

上記のカスタマージャーニーから洗い出したキーワード方針やファネル理論に基づく間口を広げていこうというSEOの手法論に基づくと「検索ボリュームのないキーワードを作る必要がない」ということになりますが、実際はそんなことはありません。

単純にSEOで集客に繋がるコンテンツばかりを作るのではなく、実際のユーザーのニーズやサイト流入後の行動も踏まえて、それぞれのコンテンツの役割を定義していく必要があります。

コンテンツの役割分類

  • 集客は出来るが、接客は出来ないコンテンツ
  • 接客は出来るが、集客には繋がらないコンテンツ
  • 集客も接客も出来るハイブリッドなコンテンツ

(コンテンツの役割定義について話し出すと長くなりそうなので、別の機会にお話しようと思います。)

上述してきたように、「検索ボリュームのあるキーワードに対応するコンテンツを作ること」を前提として考えるのではなく、実際の検索ユーザーのニーズや行動を踏まえてコンテンツの役割を定義し、そこから集客につながるキーワードを取りに行くべきなのか、現状流入しているユーザーの悩みを解消する術を教える接客コンテンツを作り込むべきなのかを考えていくべきです。(※留意点:カスタマージャーニーマップやファネル理論は弊社でも用いるので、この考え方自体を否定するつもりはありませんし、考えを体系的に整理する、社内の共通認識を作るのには有用だと考えています。)

参考) 検索ボリュームがないキーワードでSEOを行う必要があるのかという話

コンセプトダイアグラムの考え方を用いた検索ユーザー行動とキーワード選定

前述したように、これからのSEOの考え方として「キーワード・コンテンツベースのSEO施策」から「検索ユーザーベースのSEO戦略」への転換が必要になってきます。では、実際にどうやってそれを行っていけばいいのでしょうか。

ナイルでは、弊社のデジタルマーケティング戦略顧問でもある清水氏が提唱する「コンセプトダイアグラム」*3を用いて考えるケースが多いです。

SEOのコンセプトダイアグラム
  • ユーザーの実際の行動をSTEPごとに分類してマッピングする
  • 各STEPにおけるユーザーの理解を深める、態度を変容させるためのコンテンツがある
  • 各STEPに応じたコンテンツの定義がある:①集客、②接客、③集客×接客
  • 各STEPにいるユーザーをどうやって集めて、どうやって育て行くのかという考え方が必要になる
  • それぞれの役割に応じたコンテンツと、そこで獲得しうるキーワードを逆算していく

上記のようにコンセプトダイアグラムを用いると、キーワードの検索ボリュームがあるか/ないかではなく、◯◯なユーザーが検索するのか/しないのかという観点でキーワードを考える*4ことが出来ます。キーワードの検索ボリュームが有り無しはその後の話です。

参考)

*3 コンセプトダイアグラムとは:企業が目指す顧客の態度・心理変容のステップと施策を図解したコミュニケーション戦略マップ。企業理念や戦略を踏まえた上で必要となる施策を洗い出して位置付けを明確化し、各ステップの到達を数値化することで、データに基づくプランニングや最適化が可能になります。
アクセス解析新手法「コンセプトダイアグラム」とは? サイトの全体像を可視化して知るべき指標を知る【レポート】

*4 留意事項:SEOにおけるコンセプトダイアグラムの活用は、アルバイト求人や水漏れ修理など検討期間の短い商材や消費財などのコモディティ化した商材では効果を発揮しづらく、転職エージェントやBtoBのソリューション商材などの検討期間が長い商材の方が現時点では相性が良いように思います。

最後に:今後のSEOは成果指標の見直しも必要になる

冒頭のSEOの潮流変化に見てきたように、今は単純にキーワードの上位表示ではなく、検索ユーザーのインテント(検索意図)に応えることのできる「検索ユーザーにとって役立つコンテンツを作る」ことが必要な時代です。この考え方自体はいいものですが、実際の取り組みがただ集客フェーズだけになってしまうのではなく、流入後の接客フェーズにおいてもいかにしてユーザーの悩みを解決していくのか、そのなかで自社サービスの強みや特長を訴求していくのかも併せて考えないと片手落ちになってしまいます。(SEOが「検索エンジン最適化」から「検索体験最適化」に変わっていっているとも言えますね。)

SEOの成果指標

つまりは、「検索ユーザーの流入数を増やす」という入り口と、「自然検索流入経由のコンバージョンを増やす」という出口ばかりを追っていてもダメですし、実際にそこばかりを成果として見られて社内で上手くSEOの取り組みの意義や必要性を共通認識として持てずに困っているという方も多いかと思います。

今後は入り口と出口だけではなく、「検索流入できたユーザーのSTEPが進んだのか」という中間指標をおき、検索ユーザー単位でナーチャリング(育成)していくという考え方をしていくことで、SEOの取り組みの成果実感も持ちやすく、社内の理解や協力も得られやすくなるのではないでしょうか。(コンセプトダイアグラムにおけるSTEPの作り方、中間指標の作り方はまた別の記事でお話させていただきます。)

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