人体のGoogle EarthがシリーズAの資金調達―BioDigitalはブラウザ・ベースの精密な3D人体図鑑

ニューヨークに本拠を置く画像処理のスタートアップ、Biodigitalが野心的なプロジェクトを開始したのは昨年だった。精密な3Dのアニメーション人体図鑑をブラウザを通じて提供しようというのだ。共同ファウンダーのFrankSculliとJohn QualterはCAD、HTML5、WebGLなどのテクノロジーを駆使して印刷版の解剖学教科書を時代遅れの存在にしようという試みをスタートさせた。

昨年のローンチ以来、Human Biodigitalと名付けれられた3Dバーチャル人体には病気や妊娠など医学的に正確な何千もの画像が追加されている。このバーチャル人体はGoogle Earthによく似た方式で回転させたり傾けたりズームインしたりできる。ユーザーはすでに100万人に上っている。Sculliがわれわれに語ったところによると、Bioditalは2500以上の学校で解剖学の授業に活用されているという。また一般ユーザーも健康に関する知識を得るために利用し始めている。

また病院やクリニックで医師が患者に症状を説明する際にもBiodigitalのバーチャル人体が利用されている。しかし共同ファウンダーたちの長期的な野心は、強力なAPIを提供し、サードパーティーのデベロッパーがアプリやサービスを開発できるようにして、Biodigitalを人体画像のプラットフォーム化することだ。

サービスの拡大にともなって、Biodigitalは今日(米国時間9/24)、400万ドルのシリーズAの資金調達を行ったことを発表した。今回のラウンドはFirstMark Capitalがリードし、NYU Venture Fund、数人のエンジェル投資家が参加している。

Sculliは今日発表したブログ記事で「3D画像処理テクノロジーはゲームや映画のあり方を根本的に変えただけなく、Google Earthのようなサービスを通じて今や一般ユーザーにも馴染み深いものになりつつある。バーチャル人体以上にこの3Dテクノロジーの建設的な応用場面は少ない」と書いている。これには私もまったく同感だ。ブラウザが3D画像処理をネーティブにサポートし、APIベースのビジネスが爆発的に拡大している現在、Sculliの意見では、バーチャル人体は医療やヘルスケアにとどまらず、ウェブ一般にあらゆる応用が考えられるという。

今回の資金調達でBiodigitalは本格的にAPIの開発に乗り出すことができる。現在バーチャル人体は無料で利用できるが、同時に有料のプレミアム版も提供している。

われわれのJohn Biggs記者のファウンダーに対するインタビューと初期のプロダクトのデモのビデオを下にエンベッドした。オリジナル記事はこちら


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Vinod Khosla:「今後10年、データサイエンスの進化は全生命科学分野が成し遂げてきた以上の成果をもたらす」

他の記事に登場しているが、Khosla VenturesのファウンダーであるVinod Khoslaの話をもうひとつ取り上げておこう。ここしばらくで「最もホットである」とする分野について話をしているのだ。その分野とはメディカル分野だ。食品分野にも興味を感じているが、メディカル分野こそ、最も熱い分野だと感じているのだとのこと。「これからの十年で、メディカル分野におけるデータサイエンスおよびソフトウェアの進化に注目すべきだと思っています。これまでに生物科学が成し遂げてきたことを上回る成果をおさめるだろうと考えているのです」とのこと。

かなり大きなことを言っていて、おそらくは賛否両論のあるところだろう。しかしKhoslaはモバイル関連技術の進化と、ハードウェアの低価格化により、数年のうちにヘルスケア分野は大きな変革期を迎えると考えているのだ。但し、とKhoslaは注意を促す。「変革を担っていくのに、スタンフォードを1年で中退してスタートアップを立ち上げる、と短絡するのはどうかと思います。博士レベルの知識が必要になってくるでしょうし、またロボット工学系の学位も必要となってくるでしょう。さらに機械学習分野などについての知識も必要となってくるはずです」とのこと。

さらに続けてKhoslaは言う。「センサー技術およびウェアラブルデバイスの進化が相まって、ヘルスケアの実践方法にもいろいろと変化をもたらすことになるでしょう」。こうした時代に対処するためにKhoslaは、ビッグデータ分析やモバイル技術を用いて、精神医学面も含めたヘルスケアサービスを展開するGinger.ioなどにも出資しているわけだ。

他にもiPhoneを利用した診断用デバイスの開発を行うCellScopeにも出資しており、こちらはまずデジタルオトスコープ(訳注:耳鏡。耳管と鼓膜などの調査を行うための器具)を世に出している。「自分でiPhone上のCellScope技術を用いて安全な診断ができれば、わざわざ医者に行く手間をとる必要もありません」とKhoslaは言う。

「医者の行うことの80%は、その何分の一かのコストで、テック(技術)に代替させることができます。とくに医療後進地域ではそうでしょう」と続ける。もちろん、研究病院におけるような先端分野までもが、直ちにテックにより置き換わっていくだろうと言っているわけではない。


バックステージ・インタビュー

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(翻訳:Maeda, H)


入院患者の健康回復は「歩く」ことから。歩行支援機器を提供するMobilizer Inc.は順調に成長中

入院患者の多くの人にとって、退院時期をはやめ、また血栓や褥瘡性潰瘍などのリスクを低下させる最善策は、とにかく「歩きまわること」であったりもする。

しかし酸素吸入を受けていたり、静脈点滴などいろいろなものが繋がっている状態では、看護師に手伝って貰っても準備に20分ほどもかかることになる。病院全体でみると、毎週数百時間もの無駄が生じることになったりもする。

病院としてはすべての患者の面倒を見る必要があり、せっかく歩行活動準備が整っても、病室のドアまでいってすぐに引き返すことになってしまったりもする。

この問題を解決しようと考えているのがMobilizer Inc.だ。医療機器関連のスタートアップアクセラレーターであるZeroTo510の出身だ。このMobilizer Inc.は6輪の歩行トレーニング支援機器を開発した。ここには各種医療機器を搭載することができ、したがって迅速な準備を行って、これまでよりもはるかに簡単に歩きまわることができるようになる。

Mobilizerのスタートは5月で、Innova MemphisおよびMB Venture Partnersから30万ドルの資金を調達している。また、来年中には40万ドルの資金を追加調達予定でもあるとのこと。CEO兼共同ファウンダーのJames Bellによると、機材の価格は1台あたり5000ドル弱で、これまでにMass General HospitalおよびVanderbilt University Medical Centerが購入しているとのこと。

Bellの予測によるとMobilizerは、本年末にはネットキャッシュ・フローでプラスになる見込みらしい。これまでの販売台数は合計で100台程度になるそうだ。

Mobilizerなどの医療系スタートアップは、さまざまな付加価値を生み出すこともある。たとえば今回の場合は、経済的な効果もさることながら、病院という仕組みに関わるいろいろな人の負担を減らす一助となる可能性もある。Scanadu SCOUTTeddy the Guardianのような医療用携帯分析装置なども、医療分析を患者本人が行えるようにし、結果として不必要に医者にかかることを防ぐという効果も狙っている。

Mobilizerの場合、患者の血流面からの医療ケアを行うことで、患者の滞在時間を減らすことができ、そして余計な医療費支出を低く抑える効果がある。もちろん医療スタッフも、より効率的に仕事ができるようになる。

医療系テック企業はFDAの承認を得るのに苦労するケースも多いが、MobilizerはFDA 510(k)プロセス免除機器に分類されるもので、一定レベルの品質保証と登録申請を行っておくだけで市場に出すことができるものだ。

Bell曰く、Mobilizerをさまざまな診療科で用いることのできる「プラットフォーム」として育てていきたいとのこと。つまり種々の診療機器を搭載できるようにしようと試みているところなのだそうだ。また病院内に拘らずとも、家庭用の診療機器としての活用も考えられるだろう。また、他の医療系テック企業とのパートナーシップについてもいろいろと考えているところなのだそうだ。

「他企業との関係も深めていこうとしているところです。たとえばMobilizerに搭載するのに適切なサイズであるポータブル酸素吸入器などを開発している企業などと組めば、関係者全員にとってメリットのあるプロダクトを提供できるようになるでしょう」とBellは言っている。

この分野にもやはり競合はある。しかし未だに病院における標準的プロダクトは存在しない。たとえば患者の移動に際して、ある医療センターでは装置を乗せるのにRadio Flyer(訳注リンク:www.radioflyer.com)を使っていたり、あるいはテープを使って酸素吸入器を患者の身体に巻きつけたりしているそうなのだ。もちろんこうした方法は非常に危険なものではある。

未だにそうした医療機関があるという事実だけでも、Mobilizerのようなソリューションが必要とされていることを意味するのだ。

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(翻訳:Maeda, H)


スマートフォンから設定し、タッチで作動する未来の鍵、UniKeyがAmazonで予約受付け開始

タッチ作動のロック、UniKey Kevoは昨年からマスコミ、投資家、消費者すべての関心を集めていた。この自動ロックシステムはCBSのShark Tankという番組で紹介された後で総額275万ドルの資金調達に成功し、会社を立ち上げることができた。

このUnikeyがいよいよ予約を受付け始めたのを機に、われわれはUniKeyのファウンダー、Phil Dumasに株主のff Venture Capitalのオフィスでインタビューすることができた。

しかしまずはUniKey Kevoがどんなプロダクトなのかおさらいしておこう。

KevoロックはBluetooth 4.0を通じてユーザーを認識する。認識されたユーザーがロックにタッチするだけで解錠/施錠される。Lockitronのようなリモート操作機能は備えていない。Kevoは操作の簡便さを優先している。つまりユーザーは操作のためにいちいちポケットから鍵、スマートフォンその他のデバイスを取り出す必要がない。

Unikeyはアメリカ最大のロック・メーカーのKwiksetと提携しており、ロックの本体はKwikset製であるため、ドアへの取り付けは非常に簡単だ。

「スマートフォンでドアのロックを操作するシステムを開発したのはわれわれが最初ではない。しかしタッチするだけで解錠/施錠できる使いやすいシステムを開発したのはわれわれが最初だ」とDumasは言う。

しかし肝心のスマートフォンを失くしてしまったらどうするのか? Kevoのウェブサイトかアプリにログインすれば新しいデバイスを登録することができる。またKevoにはキー・フォブ(電子キー)が1個付属してくる。予備のフォブも25ドルで購入できる。

将来、Unikeyは自動車、旅行など他の分野にも進出する計画だ。やがてわれわれはガチャガチャと鍵束を持ち歩かなくてすむようになるだろう。またUnikeyはホームセキュリティーやホームオートメーションのシステムの企業とも提携していくという。特定の事態に対応して自動的に施錠したり解錠したりするようなスマートシステムが考えられている。

当面、Unikeyは予約注文を受け付けている段階だ。219ドルでAmazon、Newegg、Home Depot、Build.comで注文できる。出荷は10月になる予定。

〔日本版〕専用アプリを登録したスマートフォンを身につけたユーザーがロックに近づくと、Bluetooth 4.0でアプリとロックが交信しユーザーを認証する。この状態でロックの表面にタッチすると解錠/施錠動作が行われる。現在アプリはiPhone4S、5、iPod touch 5, iPad 3+ and iPad miniが開発ずみ。Andoroidなど他のプラットフォームは現在開発中。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


スタートアップの生死を決めるのは「今やる」決断と勇気…Menlo VenturesのMark Siegelが語る

今週の「VCに聞く」(Ask A VC)にご登場いただくのは、Menlo Venturesの専務取締役Mark Siegelだ。

Siegelは主にエンタプライズや広告方面の投資を扱っているが、最近、モバイルとソーシャルとクラウドコンピューティングとデータ分析、この四つの分野に存在する商機について書いた本、“The Right Now Economy.”〔仮訳: “今でしょ!の経済”〕を出版した。UberやNetflixをはじめ、「今」の波にうまく乗って伸びている企業は多いが、Siegelはこのインタビューで、その波のうしろに来ている次の「今」の波は、保険医療、教育、そして金融サービスだという。今日~明日生まれるスタートアップは、自分のための今でしょ!の波に、うまく乗らないといけない。

Siegelは、VCとして、シード資金やシリーズAの投下を決めるときの対象企業の評価基準についても、語った。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


プレゼン用ウェブアプリ、Bunkrは優れもの―HTML5出力でどんなデバイスでもブラウザだけでスライドが再生可能

フランスのスタートアップ、BunkrはPowerPointキラーになろうという野望を抱いている。

このウェブ・アプリを使うユーザーはビジュアルなコンテンツをさまざまな場所から収集、編集してスライドに仕上げることができる。UIはよく考えられており、デザインも美しい。スライドショーはHTML5ファイルで出力されるので、パソコンでもタブレットでもスマートフォンでも自由に再生できる。またPDF、PPT形式でも出力できる。

共同ファウンダーで最高マーケティング責任者のÉdouard Petitは私の取材に対して「われわれは役立つ情報を収集、分析してクライアントのために戦略を立案するのに使う以上の労力を美しいPowerPointプレゼンを準備するために費やすという本末転倒に陥っている。そこでBunkrではどうやったら最小限の時間でわかりやすいスライドが制作でくるかを追求した」と語った。

その回答はこのプロダクトの2つの側面、情報の収集とプレゼンの制作に現れている。PowerPointでは役に立つ画像や動画をウェブで検索し、ダウンロードして、スライドに体裁よく配置することに非常に長い時間がかかる。また情報の収集と保存にはEvernoteのような別のアプリを使わねばならない。

これに対してBunkrはこのプロセスをすべて引き受ける。 単なるスライド制作ツールではなく、Evernote的なクリッピングと整理のツールでもある。ウェブで役に立ちそうな情報を発見したらブックマークレットでチェックするだけで、Bunkrのアカウントに保存される。ユーザーは画像、ビデオ、ウェブページ、ノート、引用などをこうして処理できる。

Bunkrは伝統的スライドショーを枠組みを守りながらあらゆるデバイスのあらゆるブラウザで自由に再生できる能力を加えた

その結果はテーマごとにPinterest風のグラフィカルなデータベースに保存される。毎日なんらかのプレゼンをしなければならないようなエグゼクティブ―つまりPowerPointのパワー・ユーザーにとっては非常に魅力的な機能yだ。

Petitは「“共同ファウンダーと私は以前、広告代理店に勤務しており、毎日の大半の時間をプレゼンの準備に使っていた。それがBunkrの開発を思い立った理由だ」と語った。

ただしプレゼンの構造に関してはBunkrはたとえば、Preziのように過激に新しくはない。これはPowerPointユーザーには安心できる要素だ。しかしPreziなどのライバルとの最大の違いはBunkrがフルHTML5出力をサポートしている点だ。Flashプログインを必要とせずにブラウザなどのデバイスで再生できるl.スマートフォンで再生するにも専用アプリをインストールする必要がない。ユーザーはプレゼンへのリンクを送るだけで、相手はどんなデバイスのどんなブラウザでも再生できる。またYouTubeのエンベッドも簡単だ。

Google Driveのプレゼンテーション・ウェブアプリと同様、複数のユーザーが同時にスライドを同時に編集できる。サービスを使い始めるのは無料だが、HTML5ファイルやPPTフォーマットでダウンロードせずにオンラインで同時に3つ以上のプレゼンを保存しようとすると、月額2.50ユーロ(日本からは3ドル/月)の利用料金がかかる。現在、7000ユーザーのうち200人が有料契約をしているという。

Bunkrはフランスのルーアンに本拠を置くTheFamilyアクセラレータ参加のスタートアップで、年内にもシード資金調達のラウンドを行う予定だ。しかしプロダクトはすでに完成しており、出来は非常に良い。これだけのデザイン力と技術力があればBunkerが有力なPowerPointのライバルに成長できる可能性は十分ある。まずは試してみることをお勧めする。

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迷子ペットの識別に顔認識技術を使うPiP

飼い犬や飼い猫を迷い犬/迷い猫にしてしまって、そのまま失ってしまうというのはトラウマに成りかねないほどの衝撃をうける出来事だろう。またもし誰かが迷子のペットを見つけてくれても、どうやって飼い主を見つけられるのかと途方にくれてしまってお終いになってしまうこともよくある。そして収容施設に送られて安楽死させられてしまうことすらあるのだ。PiP(The Pet Recognition Company)CEOのPhilip Rooyakkersは、これをなんとかしたいと思った。そして、ICタグの現状を研究しつつ、迷子になってしまったペットを見つけるシステムを有効に動作させるために、顔認識技術を使うことができないかと考えたのだった。

PiPはIndiegogoにおけるキャンペーンを立ち上げてもいる。目標はアプリケーションを市場に出すために必要な資金のうち、現在のところ不足している10万ドルの資金を調達することだ。

先週バンクーバーで行われたGROWカンファレンスでRooyakkersに話も聞いた。話によると、アプリケーションで利用するシステムは画像認識のエキスパートであるDaesik Jang博士が開発したものであるとのことだ。このシステムにより98%の犬や猫を識別できるのだという。ここにメタデータ(品種、大きさ、体重、性別、色)を加えれば、実際的にはすべてのペットをきちんと認識できるのだとしている。

アプリケーション動作の仕組みを記しておこう。まず、飼い主がPiPにペットの写真をアップロードする。そしてシステム側でペットの顔つきなどの情報を整理して、データベースに情報を登録しておくわけだ。

迷子のペットを見つけた人は、ペットの情報を参照するのにアプリケーションをダウンロードして利用することができる。アプリケーションを通じて、見つけた迷子ペットの写真をシステム側にアップロードするのだ。買主側の方はサブスクリプション方式でアプリケーションを利用する(月額費用1ドル49セントで、収益の2%はペットレスキュー基金に寄付することにしたいとのこと)。ペットがいなくなってしまったとき、PiPは地元の動物保護組織、獣医、そしてソーシャルメディアなどにアラートを流す。

この「Amber Alert」(緊急迷子報告のようなもの)がサービスの肝となる部分だ。他には、どこかで迷子ペットを保護しているという情報があがっていないかを、ソーシャルメディア上で検索したりもする。「迷子ペットの情報をソーシャルメディアに流すだけではありません。アプリケーションをインストールしている(近隣地区の)人には、アラートもポップアップするようになっています。また飼い主との直接的コンタクトも取り情報を収集し、可及的速やかに情報収集・提供を行えるようにします」と、Rooyakkersは述べている。

迷子ペットの発見情報がシステムに寄せられた場合には、送られてきた写真を顔認識技術にてデータ化して、システムに登録されているペットに該当するものがいないかを検索する。ちなみにこの際、誤認識を防ぐために、認識手順を完全には自動化せず、必ず人力でメタデータの確認を行うことにしているとのこと。

もちろんペットの個体識別を行う技術は他にもある。たとえばIDタグや埋込み型マイクロチップなどだ。しかしマイクロチップに記録する情報についてはいろいろなスタンダードがあり、施設によっては情報をスキャンできない場合もあるのだ(訳注:日本の場合に当てはまるのかどうかは不明です)。顔認識は、迷子らしきペットを保護した人の誰もが、特殊な機材なしに情報提供できるのがメリットだとのこと。この手軽さにより、飼い主とペットの再開までの時間を短くしたいというのがサービスの狙いだ。

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(翻訳:Maeda, H)


ケビン・ローズがEvernoteのファウンダー、CEO、フィル・リビンにインタビュー―スタートアップはゼロサム・ゲームではない

〔この記事はKevin Roseの執筆〕

私のFoundationシリーズ、今回はEvernoteのファウンダー、CEO、Phil LibinをSTART SFカンファレンスの会場でインタビューした。Philは「クラウド」というバズワードについて語り、「イノベーションとかクラウドという言葉をたくさん使え会社ほどほど中身がない」と批判した。またEvernoteを100年続く会社にする戦略や暗号化を魅力的に見せる方法などについても語った。

以下はPhilのビジネス上の競争に関するバランスの取れた意見だ。

われわれはよくビジネスをスポーツのような誰かが勝てば誰か負けるゼロサム・ゲームだと考える。しかしスタートアップというのはボクシングの試合みたいなものではない。むしろむしろ音楽のようなものだ。戦いというより芸術に近い。もちろん競争相手は存在する。しかし競争相手との関係にしても単なるゼロサムではない。ゼロサムだと考えていては失敗する。競争相手が優秀だからといって自分たちが失敗するわけではない。きみたちが非常に優秀なら、他の皆がきみたちをさらに盛り上げてくれる。野球の試合をするというより、オーケストラで演奏するというように考えた方がいい。

Kevin RoseはDiggのファウンダーで現在Google Vnturesのゼネラル・パートナー。KevinのFoundationシリーズのインタビューのEv Williamsの回はこちら

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KDDI子会社のmediba、アドテクベンチャーのスケールアウトを買収――買収額は10億円程度

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つい先日、Dennnoが110万ドルを調達したとお伝えしたばかりだが、日本発のアドテク関連ベンチャーでまた大きな動きがあった。KDDIの子会社でauスマートパスを中心に広告事業を展開するmedibaが、広告配信システムを開発・提供しているスケールアウトの既存株式を取得して子会社した。株式の取得数や保有割合は明かされていないが、関係者の話によると買収額は10億円程度と推測される。

medibaは2011年8月にノボットを子会社化してアドネットワークという「面」を手に入れているが、今回の買収により、スケールアウトが持つ配信プラットフォーム「ScaleOut DSP」で技術面を強化していくことになる。もともと過去1年半ほどにわたってスケールアウトはこの配信プラットフォームをmedibaにOEM提供をしていたというから、たとえは下品だが同棲期間を経て婚約という感じかもしれない。スケールアウトは九段下にあるオフィスを、mediba本社のある渋谷近辺に移す予定だという。

広告配信プラットフォームは広告主側か媒体側か、そのどちらに最適化してインターフェイスなどを作り込んでいるかで、DSP(Demand Side Platform)とSSP(Supply Side Platform)に分類される。SSPは媒体社が利用するもので、サイトやオーディエンスごとに収益性の高い最適な広告を配信する。一方、スケールアウトは代理店や広告主側が利用するDSP側のプラットフォームを主に構築してきた。mediba広告事業本部プロダクト企画部部長の宮本裕樹氏によれば、今後、medibaではDSPからSSPまで一貫した配信プラットフォームを作っていくことになる。具体的には、属性データや広告配信データ、広告反応データを一元管理して蓄積できるDMP(Data Management Platform)事業へ参入する。アドテク業界は媒体社や代理店といったビジネス構造に最適化した形でDSPやSSP、アドネットワークといったプラットフォームが立ち上がり、それらが絡み合って林立する状態となっている。スケールアウトの創業社長の山崎大輔氏に見立てでは、今後はDSPとSSPの統合、アド関連企業とキャリアの連携が深まっていくことになりそうで、今回の買収もそうした流れの中にある。DSPとSSPの連携でマッチング精度が上がれば、現在、利用率が30%程度といわれるリアルタイム入札の市場拡大も期待できるという。

KDDIはモバイルキャリアとしてユーザーの属性情報を多く持っている。プライバシーの問題があるため粒度は粗めだが、性別・年齢層、サービス加入の有無や広告閲覧履歴などを利用したターゲティングを行う広告配信を2012年12月に始めている。一方、スケールアウトが取り組んできたDSPは「代理店が手でやってきたことの自動化」(山崎氏)なので技術進化の余地や伸びしろが大きいが、行動履歴から属性情報を類推するアプローチのために精度向上に限界がある。だから、今風にいえばKDDIが持つビッグデータと、存在感を増すDSPという2つを融合してマッチング精度を高めた広告配信プラットフォームを作っていく、というのが今回の買収の狙いということになりそうだ。スケールアウトから見ると、KDDIのグループ会社となることで属性情報というセンシティブなデータを扱いやすくなるということもあるし、営業力や資本力の点でも独立してやっていくよりも自然な選択だった、と山崎氏は話す。

medibaでは今後、PCやスマフォだけでなく、タブレットやスマートTVまで含めたマルチデバイスの広告配信を目指すという。medibaの宮本氏によれば、国内ではマルチデバイスで広告配信ができるプレイヤーはまだいないという。

エンジニアが起業してエグジットした成功例

スケールアウトは、ヤフーで広告システム技術を担当していた山崎大輔氏が2006年に独立して創業した広告配信システムの会社だ。今も社員11人のうち9人がエンジニアというから技術志向が強く、エンジニアが起業してエグジットまで持っていった成功例としても注目を集めそうだ。山崎氏によれば、エンジニアでありながら成功できた理由として大きいのは、2年前にB DASH VENTURESからの投資を受けて、ベンチャーキャピタリストの渡辺洋行氏にビジネス面でのアドバイスを受けることができたことだという。渡辺氏の紹介でスケールアウトに加わった菅原健一氏らのおかげでスケールアウトはビジネス面で加速できたのだという。

山崎氏は渡辺氏に出会うまで、ほそぼそと黒字を出し、忙しくなく続ける数人の会社というポジショニングでスケールアウトを経営していた。ひと口に「広告配信システムの提供」といっても、顧客先に出向いてシステムのインストールから運用、カスタマイズまでこなす形態もあれば、現在のスケールアウトのようにASP型のOEM提供を主体とする形態もある。スケールアウトは当初は前者で、エンジニアが顧客先に出向くビジネスを行なっていたため規模でスケールするのが難しかったという。技術革新も競争も加速するアドテク業界にあって、こうしたモデルはいずれ立ち行かなくなる。そう感じていた山崎氏は、渡辺氏や菅原氏らのアドバイスを得ながら1年をかけてASP型を開発。より多くの顧客に少ない手数で提供できるシステムと販売体制を整えた。「ぼくはビジネスの才能があるわけではないので、菅原というビジネスが分かる人間を雇うことができたのは幸運だった」(山崎氏)。もともとB2Bであるため技術1本で勝負というスタイルになりがちだったところに、ビジネスの才覚がある2人が加わったことが、スケールアウトが業績を伸ばせた理由という。「エンジニアリングが世界を変えるというのは確か。だけど、成功しているのはビジネスとエンジニアリングの両方ができたところ。グリーなら田中社長とCTOの藤本さん、mixiなら笠原社長とバタラさんというように、ビジネスとエンジニアリングは両輪です」。

ビジネス面の大切さを語る山崎氏だが、「そうはいってもモノが作れないとダメ。技術の下支えが絶対に必要」とエンジニアリングでエッジが利いてることも成功の条件と話す。

スケールアウトの創業当時、ネット広告業界では高価なヘビー級サーバを購入して案件管理だけでなく配信までRDB経由で行う「贅沢な」広告配信システムが多かった。大量のトラフィックをさばくシステムの配信部分でRDBを使うのは効率が悪い。そんな中、山崎氏はC言語で書いたApacheモジュールをサーバ群に分散配置することで競合より配信コストを1桁も2桁も抑え、「1日数十億インプレッションをカジュアルに捌くシステム」を当初は1人で作り上げた。案件管理やログ処理、分散の仕組みはRuby/Railsで書いた。Ruby on Railsという選択が二重の意味で奏功した、と山崎氏はいう。1つは、もともとバックエンドが得意なエンジニアだった山崎氏にとって、業務アプリの画面を大量に作るのにRailsの効率が高かったこと。もう1つは、2006年ごろから現在にいたるまでRuby周辺には優秀なエンジニアが多くいて、スケールアウトのシステムは、こうしたエンジニア達に支えられて成長できたからだ。

ずいぶん前から私は山崎氏のことを知っている。Ruby技術者が集まるコミュニティのAsakusa.rbで時々話す機会があったからだ。そんな私には、2年ほど前のある夜のミートアップで耳にした会話が忘れられない。その日はRubyの生みの親として知られるまつもとゆきひろ氏が、ふらりとAsakusa.rbにやってきていた。数十億という単位の途方もない数の文字列オブジェクトをメモリ上で効率的にコピーする良い方法はないものか、そう熱心にまつもと氏に聞いている人物、それが山崎氏だった。結局、それはRubyのオブジェクトの生成コスト自体の問題からRubyレベルでは解決不能だと分かり、独自実装のC拡張を作ることとなった。そのモジュールを作ったのは、現在グーグルで活躍するRubyistとして知られる園田裕貴(yugui)氏だ。20分の処理が1分になった。

「経理も経営も全部やらなきゃいけないので、創業以来、常に勉強、勉強でした。苦労だらけだった中で、唯一苦労しなかったのは、最初に設計した配信エンジンのアーキテクチャとエンジニアの採用ですね」と山崎氏は笑う。腕の立つエンジニア達と仕事ができたのは東京の活発なエンジニアコミュニティの存在のおかげで、「Rubyのコミュニティに助けてもらった。お返ししたいという思いがある」という。一方で、エンジニアとして成功した自身の経験から、エンジニアたちに次のようなメッセージを発してもいる。

「例えばSIer業界にも、まだまだエッジな人材がいると思いますが、そういう人たちにも、もっとビジネス側の人とあってほしい。海外のスタートアップを見て感心してる場合じゃなくて、そういうプレイヤーになれると自覚してほしい。資本規模を抜きにすると、われわれもアメリカにも負けない感じになってきている。アプリ開発のフレームワークやミドルウェアが進化していて、1人とか2人で世界で戦えるプロダクトがいきなり作れる時代なんです。エンジニアにやれることはいっぱいある。だからもっとビジネス側に目を向けて、自分たちが変えるんだという気概をもってやってほしい」

「かつての我々と同様に、高い技術力があるのに伸び悩んでいる会社がある。メンタリングとか大げさな話ではなく、今後はそうした会社を引き上げるようなことができればということも思っています。自分はエンジニア側の人間と見られているので、エンジニアリングとビジネスの架け橋になりたいですね」。


TC Tokyoでデビューしたクラウド会計ソフトのfreeeが2.7億円の資金調達を実施

昨年のTechCrunch Tokyoでデビューを果たし、今年3月にローンチしたクラウド会計ソフトのfreeeは順調に成長しているようだ。現在もプロダクトの開発にフォーカスをしていて、いよいよ8月には有料版がリリースされる。現在は6500の事業所が登録しているということだが、有料版への移行も順調に進んでいるという。

このfreeeを開発するCFOが今回資金調達を発表した。第三者割当増資を実施して総額で2.7億円を調達したというものだ。引受先はInfinity VentursとDCMで、DCMはシードラウンドで投資をしている既存株主である。CFOはこの資金調達と同時タイミングに社名もサービス名と同じfreeeに変えている。

この資金調達によって、さらなるプロダクトの開発にフォーカスをしたいと代表取締役の佐々木大輔氏は語っている。たとえば、現在は銀行やクレジットカードなどのサービスをクローリングすることで、データを取得しているが、今後は現金の動きも取り込めるようにしたいという。具体的にはレジアプリやレシートの読み込みアプリなど、現金の動きを扱うアプリやサービスなどの連携を考えているのだという。ほかにもCRMツールとの連動などオープンな設計を目指している。

また、これまでは経理担当者のみが使うためのツールだったが、会計事務所や社員が使うようなコラボレーション機能なども導入していきたいという。たとえば、これによって経費精算などを社員が直接入力するような機能が実装されることになる。彼らがこだわっているのはビジネスアプリとしてのエクスペリエンスで、使い心地やデバイスそのもの広がりにも大きな投資をしていくという。

海外ではXeroのようなクラウドベースの会計ソフトが台頭しているが、今後はfreeeも海外での展開を目指して行きたいと佐々木氏は語っている。freeeは今回の資金調達以前にDCMから5,000万円を調達している。また、最近ではInfinity Ventures SummitのLaunchpadでの優勝を果たしている。


国内12兆円市場を狙う「住」のソーシャルサイト「SUVACO」が今朝ローンチ

「ソーシャル・ホームデザイン・サイト」という耳慣れないジャンルのWebサイト「SUVACO」(スバコ)が今朝、プレオープンした。建築家やリフォーム業者、インテリアメーカーといった「住」のプロフェッショナルや業者と、その顧客である施工主を結びつけるオンラインのコミュニティサイトだ。リフォームや、新築デザインを建築家やインテリアデザイナーに依頼したいが、そもそもどこを探せばいいか分からない私やあなたのような人と、まだ発掘されていないような建築家を結ぶプラットホームを目指す。


SUVACO共同創業者の黒木武将氏(左)と、中田寿氏(右)

ぱっと見は一種のカタログサイトだ。建築家のホームデザインの事例や、インテリア写真を雑誌感覚で眺められる。もともと住宅やインテリア関連の雑誌を眺める層には、サイトを巡回するだけでも楽しめそうなサービスだが、2013年のローンチなので、狙いソーシャルなインタラクションが発生するプラットフォームとなることだ。お気に入りの建築家をフォローしてみたり、コミュニケーションを取るとか、気に入った画像を家族や友人とシェアするといったことができる。建築家の作品に対してコメントを入れるとかデザインを相談するといったことも可能だ。こうしたインタラクティブなやり取りを通して、自分のイメージにあう理想の部屋やインテリアを探し、それを作れるプロに出会えるというのがSUVACOだという。

なんだ、またマッチングサイトかと思うかもしれないが、これは注目のスタートアップだ。

何しろリフォームや注文住宅は12兆円もある巨大市場という。SUVACO共同創業者の1人で、過去11年にわたってメリルリンチ等の外資系証券会社などでIPOを手がけてきた中田寿氏は「ネット企業がdisruptしていない最後の巨大市場」とし、次のメガベンチャーが登場する可能性がある市場規模と話す。生命保険の37兆円、銀行の15兆円、ファンションの7兆円、旅行の6兆円、化粧品の2兆円といった市場では、それぞれライフネット生命、ソニー銀行やじぶん銀行、zozotownといったようにネット企業が既存勢力のパイを侵食しているが、同様の変化は住宅関連市場では、まだ起こっていないという。

「まだ起こっていない」というのは、米国では同コンセプトのプラットフォームとして2009年2月に「Houzz」がスタートし、現在月間アクティブユーザー数が1600万人にのぼるコミュニティに成長しているからだ。Houzzはこれまでにセコイアキャピタル、KPCBなどを含むVCから計3度、総額49億円ほどの資金調達をしているレイターステージの成長株だ。Houzzはこれまでに蓄積したデータから「現実的なリフォームの相場」を米国の州ごとに表示するような機能を追加したり、雑誌の切り抜きをスクラップするようにお気に入りのアイテムを貯めることができるideabookという機能を提供していたりする。内装写真の各所に付けられたタグにマウスオーバーすれば、アイテムの商品情報や販売サイトへのリンクが表示されるなど、単にカタログ雑誌の写真をオンライン化した以上のイノベーションを起こしつつある。

本日プレオープンとなったSUVACOは、Houzzほど高度な機能はさすがにまだ提供できていないものの、スッキリした美しいUIで、建築やインテリア好きなら眺めているだけでも飽きないかもしれない。すでに書いたようにフォロー機能やFacebookの「いいね!」的な「クール」ボタン、ユーザーがアイテムや部屋に対して付けたコメントが時系列に表示されるタイムラインとして「みんなの投稿」というソーシャル要素も実装されている。プレオープン時点で、すでに50人の建築家などの専門家、約700のアイテム、1,000強の部屋のデザイン例を集めている。こだわりを持って作られた「作品」が並ぶ。

リフォーム市場の7兆円、建売住宅以外の注文住宅市場が5兆円。このうち建築家が手がける約3兆円の市場、それに家具の6,000億円の市場がSUVACOのひとまずのターゲットという。例えば5,000万円の案件の場合、デザイン料として一般的に建築家は1割の500万円の対価を得るが、この対価のうちさらに1割の50万円がSUVACOの取り分となるという(建築家か工務店か、リフォームか注文住宅かなどで1〜5%とSUVACOの手数料率は異なる)。現状でも市場規模は大きいが、追い風も吹いているという。日本は新築市場の比率が高く、他国に比べてリフォームやリノベーション市場の割合が小さい。このことからリフォーム市場には成長余地があるとして、2020年までに倍増すると政府の成長戦略に盛り込まれている。

中田氏とともにSUVACOを共同で創業した黒木武将氏が自ら建築家を口説いて回った。富士銀行でキャリアをスタートし、シカゴ大学MBA、米国でも日本でも買収案件を手がけてきた金融業界20年のエリートが、なぜ住宅関連のITベンチャーなのか? 黒木氏は「日本にLBOが入り始めたころからM&Aを手がけてきた。もうやり尽くしたという思いもあり、新しい価値を作って行きたい。われわれミドルの人間がやらないと」という。長くIPOを手がけてきた中田氏には米中に大きく水を空けられてるIPOの市場規模の現状に対して、日本のスタートアップ業界に必要なのは数を増やすことよりも、量を増やすことという問題意識があったという。「必要なのは次のメガベンチャーを生み出すこと」という思いから住宅市場に取り組むことに決めた。「中田も私も建築業界の非効率性を外部の人間としてビジネスの観点から見れる。そこを建築家や事業会社の方々にご説明して賛同いただいた上でSUVACOに参加していただいている」という。必ずしも賛同が得られる場合ばかりだはなかったというが、黒木氏は「このままじゃダメだと思っている建築家が多かったのは発見」といい手応えを感じている。現状、建築家と施工主の出会いは前時代的な口コミがメイン。一般的な建築事務所だとアシスタントが何人かいて、事例を掲載するWebサイトもあるかもしれないが、潜在的な施工主がこうしたページにたどり着く道筋はほとんどないのが現状という。部数10万部程度の住に関する雑誌は数誌あるが、こうした雑誌が扱うのは個別案件ではなく、コミュニケーションも発生しない。

建築業界は言語や文化、地域性が強いビジネスだが、4年先を行っているHouzzが将来に日本市場に将来参入しないとも限らない。グローバルな視点で見た場合の競合はどう見るのか? 「3年から5年あれば日本市場を取れると見ています。その後はアジア圏を目指したい。アジアでは日本の建築のデザインや品質に対する評価は高い」と黒木氏は語る。

「ソーシャル」と聞くと写真共有やコミュニケーションのことを思い浮かべて食傷気味に思う読者も多いかもしれないが、巨大市場に切り込む地に足の着いたベンチャーの門出を祝いつつ、TechCrunchとしてはSUVACOの9月のグランドオープンも引き続き注目していきたい。


キーリングに付けられるスマートフォンカメラのリモートシャッター、Muku ShuttrがKickstarterで資金調達中

スマートフォンで自画撮りするのは難しい。ネットは腕をいっぱいに伸ばして撮った顔が妙なぐあいに歪んだ写真で溢れている。現在Kickstarterで出資者を求めているMuku ShuttrはiOSとAndroid向けのBluetoothを利用した小型のリモートシャッターだ。

開発者は香港のスタートアップ、Muku Labs。すでに目標額は集まっているが、99ドルの出資で注文者の名前入りのMuku Shuttr1台が入手できる。出荷は10月の予定。

Muku Labsのファウンダーは香港在住のエンジニア、Kevin Leung. Leung。

厚さ6mmと薄いのでShuttrは撮影時には手の中に隠せるし、キーリングなどに付けておける。 有効距離は9m程度。無線接続なので見通せなくてもよい。つまりポケットの中からシャッターを切ることもできる。

対象はすべてのiOSデバイス、SamsungのGalaxy S3、S4、Note 2、Tab 10.1、LGのNexus 4を始め3.0以降のBluetoothを備えた多数のAndroid4.1以降のデバイスで作動する。またiOSのCamera+、645 Proアプリをサポートしており、iPhoneの内蔵カメラをバイパスして撮影することができる。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


ジェスチャー・インタフェース・テクノロジーがますますホットに―OmekをIntelが買収(確認ずみ)

Googleがイスラエルのクラウドソース・カーナビのWazeを11億ドルで買収したことが記憶に新しいが、今日(米国時間7/16)、ジェスチャーを利用したインタフェースを開発しているイスラエルのスタートアップ、Omek InteractiveIntelが買収したという情報をわれわれは独自の情報源によって確認することができた。Omekに対してIntelは以前から投資していた

また、イスラエルのCalcalistの記事によれば、MicrosoftのKinectに利用されているジェスチャー・テクノロジーを開発したPrimeSenseの買収をAppleが試みているという。

こうした動きを合わせて考えると、Kinect的なジェスチャー・インタフェースの利用が今後大いに進みそうだ。

ただしApple/PrimeSenseの噂はいささか根拠が薄弱で、「まったくのでたらめだ」と否定する関係者もいる。PrimeSenseはこれまでにGeminiIsrael Funds、Canaan Partners、Genesis Partners、Silver Lake Partnersなどから3000万ドル近い資金を調達している。

一方、われわれはOmekを電話で取材したが、その相手はくすくす笑って(本当だ)、「話はIntelに聞いてもらいたい」と言った。

アップデート: Intelは私の取材に対してOmekの買収を確認した。同時に、「報じられている買収価格をIntelとして確認したことはない。またこのテクノロジーを利用した製品計画について現在コメントはできない」と付け加えた。

Omekの買収価格については3000万ドルから5000万ドルと観測されている。Omekはこれまでに1380万ドルの資金を調達しており、うち700万ドルはIntelCapitalからの投資だ。Intelがなぜ戦略的投資の枠を超えて買収に踏み切ったのか、いくつかの説明が出ている。

その一つはVentureBeatの記事で、これによると、両者は今年3月に交渉を始めた。当初、Omekは新たな資金調達をもくろんでいたが、結局エグジットの道を選んだという。

もうひとつの観点は、Intelは3Dヴィジュジュアル化とパーセプチュアル・コンピューティングの実現という野心的な戦略の重要な要素としてジェスチャー・テクノロジーを必要としていたからだというものだ。パーセプチュアル・コンピューティングというのは音声、タッチ、ジェスチャーなどAI解析を必要とする感覚的インタフェース全般を指すIntelの用語だ。この4月にスタートしたIntelの1億ドルの投資ファンドの対象もまさにこの分野だ。

第3の説明はもっと散文的なものだが、それだけに真実をうがっているかもしれない。GeekTimeによれば、この買収はハードウェアのセールスをテコ入れするためだという。IntelはOmekのテクノロジーをチップに焼きこみ、製品の差別化に役立てるつもりだろうという。

PrimeSenseのニュースの真偽はさておき、9to5Macはジェスチャー・テクノロジーを含む知的所有権が、Apple TVのようなユーザーのリビングルームで使われるプロダクト分野をも制覇したいというAppleの野心にとってきわめて重要であるという説得力ある分析をしている。

いずれの説によるにせよ、ジェスチャー・テクノロジーの重要性が増していることは疑いない。近い将来、われわれは手の動きや指のサインでコンピュータを操る時代に入りそうだ。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


アメリカのベンチャーキャピタル投資額、第2四半期中に倍増―依然としてシリコンバレーのシェアが圧倒的

われわれのCrunchBaseの集計によれば、アメリカにおけるテクノロジー産業へのベンチャー投資額は4月の 19億ドルから6月の38億ドルへと第2四半期中に倍増した。このデータはさらに投資ラウンドの種類別、地域別、その他の基準によって詳しく分類されている。

2013年第2四半期のベンチャー投資総額は92億ドルで、1347件のラウンドが実施された。内訳はエンジェル・ラウンドが500件、シリーズAが306件、シリーズBが109件、シリーズC以降が102件、分類不明が330件となっている。

このラウンドにはプライベート・エクイティの投資や上場後の増資などは含まれていない。したがって実際の投資総額はこれより大きい。

依然としてサンフランシスコのベイエリアにおける投資が最大のシェアを占めている。ボストン、ニューヨーク、ロサンゼルスにおける投資額の合計よりベイエリアの投資額の方が大きい。

ベイエリアでの投資額は32億ドル、316件のラウンドが実施された。ボストンは10億ドル、84件、ニューヨークは8億ドル、142件、ロサンゼルスは5億ドル、81件だった。

バイオ関連企業への投資額がトップで、ソフトウェア関連がそれに次いだ。バイオ企業のシェアが月平均で30%、ソフトウェアが19%となっている。

ベンチャー投資家ではTechStarsAndreessen Horowitz500 StartupsSV AngelAngelPadGoogle Venturesの投資件数が多い。

これらのデータはすべてTechCrunchが運営する無料のデータベース、CrunchBaseから得たものだ。CrunchBaseから毎月レポートを受け取ることもできるし、データそのものをダウンロードすることもできる。第2四半期のデータはこちら

注意:資金を調達した企業すべてについて業種分類や地域が記入されているわけではない。ほとんどの企業は記入されているが100%ではない。若干の漏れがある。

この記事のためのデータ分析とグラフの作成はCrunchBaseのEddy Kimによる。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


CrunchBase(テック系企業データベース)の更新情報を、毎日メールで通知するサービスを開始

TechCrunch読者の皆さんなら、CrunchBaseのチェックを日課にしているという方もいらっしゃるに違いない。競合の資金調達状況などをチェックにも利用できる。そのような形で利用している人に向けて、新たにCrunchBase Dailyを立ち上げた。CrunchBaseに登録された最新投資情報をお知らせするものだ。こちらでメーリングリストに登録できるようになっており、また要約をお伝えするTwitterアカウントも用意している。

(本稿の執筆は、CrunchBaseプレジデントのMatt Kaufman)

このCrunchBase Daily、まずは投資情報のみをお伝えすることとなる。ちなみに情報量は本年初頭と比べて倍以上に増えている。情報量が増えたのはCrunchBase Venture Programを立ち上げたおかげもある。6週間前にDisrupt NYでアナウンスしたもので、今では200以上の投資ファームが参加してくれている。CrunchBaseに今月登録された情報の件数は30ヵ国から417ラウンドにもおよぶ件数となっている。資金総額で見ると34億ドルにものぼる。

CrunchBase Dailyには、買収情報、人材の移動(異動)情報なども加えていく予定だ。

ところでCrunchBaseというのはテック系企業や人材、および投資家などを登録しているフリーのデータベースで、誰でも編集できるようになっている。多くの読者からの情報により、投資情報、人物情報、企業のマイルストン達成情報などが更新されている。

関係者による情報更新やマイルストン達成情報などは、多くの場面で活用されている。たとえばTechCrunchでも記事にCrunchBaseの情報を張っているケースが多いし、他のサイトでもCrunchBaseを活用しているところがある。また投資関連企業やビジネス開発チームなどでも活用してもらっているようだ。TechCrunchでは、CrunchBaseの情報を使った記事なども適宜掲載している。

もちろん、さまざまに活用していただくために、CrunchBaseの情報が正確なものであることが大前提だ。もしCrunchBaseの情報に問題がある際には、feedback@crunchbase.com宛にメールを送って頂きたい。

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(翻訳:Maeda, H)


GoogleのWaze買収研究―なぜモバイル・ナビのスタートアップに11億ドルも出したのか? その影響は?

Waze買収に関する噂は数ヶ月前から流れていた。最初はAppleが5億ドルを提示し、続いてFacebookが10億ドルという値付けをしたと報じられた。そこに突如Googleがやって来て獲物をさらっていった。イスラエルの経済紙Globesによれば、Facebookの幹部がイスラエルに飛び、真剣な交渉を始めていたという。

この大騒ぎの元のWazeっていったい何だ?

Wazeは2007年に創業され、現在イスラエルとシリコンバレーのパロアルトにオフィスがある。主なプロダクトはiOSとAndroid向けの無料カーナビ・アプリだ。創立の1年後にWazeはシリコンバレー(KleinerPerkinsなど)や香港(Horizons Ventures)の有力ベンチャーキャピタルから6700万ドルの資金を調達し、社員110人の企業に成長した。社員の大部分はイスラエルに住むイスラエル人で、CEOのNoam Bardin他10人程度がパロアルトのオフィスに勤務する。

モバイル地図アプリが無数に生まれている中、Wazeのユーザーは5000万人(昨年10月の3000万人)を超えて着実に増加中だ。強みの一つはユニークなクラウドソースによる地図編集方式にある。自ら現地を回って地理情報を収集する代わりに、Wazeは地図作成にあたって何千万ものユーザーが投稿する情報に頼っている。ユーザー車両の車速や位置などの情報は自動的にアップロードされ、さらにユーザーは新たな交通規制、事故、渋滞などの情報をリアルタイムでWazeに投稿する。

こうしてドライバーからクラウドソースで収集されたデータはユーザー・コミュニティーによって共有、管理される。大勢の熱心な市民地図作成者からの情報は非常に有益であり、何よりリアルタイム性が高い。カーナビ・サービスでは道を間違えたときの経路再検索の処理が非常にやっかいで、Googleでさえ苦闘している。膨大なクラウドソース・データを持つWazeは、経路再検索でも非常に高い能力を発揮する。

ドライバーは単に運転経路だけでなく、ソーシャル・レイヤーを使って沿道のガソリンスタンドの位置と最新のガソリン価格、観光地、レストラン情報などをハンズフリーで受け取ることができる。ソーシャル・サービスはすべてそうだが、規模が大きくなればなるほど有用性も増大する。

ビッグ3すべてが買収を狙ったわけ

Jordan Crook記者も指摘していたとおり、巨大モバイル・テクノロジー企業の間で「マップ戦争」がますます激しくなっている。情報が網羅的で、信頼性が高く、使い勝手のいいナビゲーション・サービスはすべてのモバイル体験のベースになる。地図アプリ、ナビ・アプリが使われる頻度がこれだけ極端に高ければ、Facebook、Apple、Googleのビッグ3がこの分野のユーザー体験の改善に全力を投入するのは当然だ。

Appleの場合、Waze買収に興味を示したのはAppleのCEOのTim Cookが公式に謝罪する破目になった.悪名高い地図アプリの大失敗の後だった。正確さで名高いWazeを買収するという選択は地図で被った悪評を打ち消すために理にかなっていると思われた。.

Facebookもことところ全力を挙げてサービス全体のモバイル化に取り組んできた。モバイル部門は次第にFacebookの決算に直接大きな影響を与えるようになった。Facebookにとって、自社独自の優秀なネーティブ地図アプリを持てば、不人気なFacebook Homeのてこ入れにもなるはずだった。

この2社に対してGoogleの状況は若干異なる。Googleはすでに文句なく世界一の地図プロダクトを持っている。一般ユーザー向けカーナビ・モバイル・アプリの世界標準を確立したのもGoogleだ。Googleはおかしな格好のストリートビューカメラを装備した撮影チームの大部隊を世界に展開し、おかげでわれわれは道路だけでなくグランドキャニオンを下る小道から海の底まで地球上のあらゆる場所をワンクリックで見られるのを当たり前だと思うまでになっている。考えてみればとほうもない偉業だ。

なぜGoogleが勝ったのか?

今日のブログ記事でWazeのCEO、Noam BardinはGoogleと(特にCEOのラリー・ペイジ、ジオ・プロダクト担当副社長のBrian McClendon)の間で長期的ビジョンにおいて共感するところがあったからだと書いている。しかしそれだけではあまり具体性がある情報とはいえない。そこで以下、なぜGoogleが巨額を投じることを決めたのか、Apple、Facebookを始めモバイル・マップ関連業界に激震を走らせることになったのか分析してみたい。

地理情報

WazeがGoogleを選んだ理由は他の2社のようにシリコバレーへの移転を求めなかったからだと言われている。Googleはイスラエルには優秀なITエンジニアを輩出することをよく認識している。GoogleはこれまでにLabpixiesやQuickseeなどイスラエルで生まれたスタートアップを買収しているだけでなく、イスラエルに拠点を持ち、地元の起業家を支援するプログラムを運営するなど存在感を高めていた。Wazeの社員の大部分がイスラエルに居住している。GoogleがWazeにシリコンバレーへの移転を求めなかったのは、イスラエルのエンジニアの人材を獲得するのに現状のままのの方が有利だと判断したからだろう。

5000万ユーザーより、そのビッグデータの方が重要

通常、買収にあたってはサービスのトラクション(ユーザー数、トラフィック)がもっとも重視される。しかしGoogleはすでにアメリカでもっとも人気の高いカーナビ・アプリを持っている。なるほど5000万ユーザーも魅力ではあろうが、喉から手が出るほどトラクションの増加を必要としていたわけではない。.

Googleがもっとも魅力を感じたのはトラクションではないはずだ。Wazeは自らを「地図企業ではなくビッグデータ企業だ」と規定している。Googleは「地球上のあらゆるデータを組織化する」のを使命と考えている。Antonio Regaladoによればビッグデータという概念を生んだのは事実上Google(とその発明になるMapReduceシステム)だ。またGoogleはビッグ・データを地図上に新たなフォーマットで表示する実験に力を入れてきた。もちろんGoogleマップ改善にも常に精力的に取り組んでいる。

巨大なデータ・セットと地図インフラを擁するGoogleは個別のユーザー向けにカスタマイズされた体験を提供しようという努力を始めている。これを実現するにはWazeが得意とするようなソーシャル・レイヤーが必要になってくる。たとえばナビゲーションではGoogleは依然として固定的な経路を事前に設定する方式に頼る傾向が強い。なるほど最新のGoogle Mapsでは渋滞情報のレイヤーも提供されるようになった。しかしWazeのように運転中にリアルタイムで常に渋滞情報がアップデートされ、ドライバーに渋滞を避ける代替ルートが提案されるというレベルにはなっていない。

こうした代替ルートの提案などのWazeの機能は一見ささいに見えるかもしれないが、Googleマップに統合されれば大きなユーザー体験の向上となることは間違いない。またWazeのUIデザインは見て楽しく、対話性にも優れている。Googleは位置情報サービス全体にこのデザインを取り入れることができる。Wazeユーザーは渋滞やネズミ捕りの情報を共有するのに非常に熱心だ。これもまたGoogleにとって大きな価値になる。

ソーシャル・ドライビング

WazeはGoogle+とGoogleマップをソーシャル化するために理想的なプラットフォームを提供できる。昨年、Wazeはソーシャル化を一歩進め、友だちの位置が表示できるようにした。これは待ち合わせに便利だし、さまざまな会話や情報共有の可能が広がる。

WazeにはFacebookへのワンクリック・サインイン機能がある。これはそのままGoogle+の認証に使える。Google+にはユーザーの友だちがいる。Facebookとの連携ではWazeは特定の待ち合わせ場所やそこへの運転経路を友だちの間で共有できる。これらはすべてすぐにGoogle+に生かせるだろう。

ローカル広告にビッグチャンス

言うまでもないが、Googleのビジネスは徹頭徹尾、広告だ。Googleのさまざまなサービスの究極の目的は消費者の前に広告を表示することにある。Wazeもまた非常に有望な広告プラットフォームだ。

当初Wazeは収益化を後回しにしてプロダクトの開発と成長に専念してきた。しかし昨年後半にWazeはローカル・ビジネスと大手ブランド向けに位置情報に基づく運転者向けローカル広告のプラットフォームを発表した。

以前からWazeはガソリンスタンド情報などをタップとスワイプですばやく調べることができる機能を提供しいてが、広告プロダクトはいわばそれの強化版だ。ただでさえ狭いモバイル画面に単にバナー広告を表示するのではなく、Wazeの広告は、たとえばドライバーが「レストラン」を検索した場合に、付近のレストランやファーストフード・チェーンの店舗の広告が表示される仕組みだ。

Wazeの広告プラットフォームを利用すれば、たとえばローカルビジネスだけでなくダンキン・ドーナッツのようなチェーン店もセフルサービスでモバイル広告キャンペーンを実施し、成果を評価できる。これは従来のローカル検索広告や高度なターゲット広告と組み合わせることによって一層効果を高めることができるだろう。

これまでFoursquare、Yelp、Facebookその他有力テクノロジー・サービスはなんとかして効果的なローカル広告プロダクトを作り出そうと苦闘してきた。ここに名前を上げた3社はローカル検索と位置情報を統合したチェックインシステムを提供している。しかしこと検索に関しては3社とも機能、規模いずれをとってGoogleのレベルには御びょばない。.

たしかに今のところGoogle+’のローカルビジネス・ページはFacebookページほど普及していないが、その差は縮まりつつある。Googleはローカルビジネスに関して膨大なデータをすでに保有しており、住所、連絡先、営業内容などを把握している。キーワード検索を通じて適切なターゲットに広告を表示するテクノロジーではGoogleには圧倒的な蓄積がある。

アメリカのローカル・モバイル広告市場はここ数年で爆発的に成長すると見込まれている。Googleの巨大なローカルビジネスのデータベースとWazeが統合されればきわめて強力なソーシャル・モバイル広告のプラットフォームとなるだろう。現在Wazeに欠けている一般的な検索機能をGoogleが補うのも容易だ。

地図戦争はゲーム・オーバー?

GoogleのWaze買収の動機を調べれば調べるほどこれは安い買い物だったと思わざるを得ない。地図サービスの改良を絶望的に必要としているライバル2社ではなく、すでに世界最高の地図サービスを持つGoogleが既存のサービスとは方向の異なる優れた新興サービスを手に入れたのだ。

将来の統合のことはしばらく置くとしても、Greg Kumparak記者も指摘していたとおり、GoogleはすぐにでもWazeのリアルタイム交通情報データと代替経路提案をカーナビ・アプリに取り入れることができる。どちらもGoogleマップの大幅な改良になる上に、Waze側のユーザー体験を損なうこともない。

端的に言って、今回のGoogleによるWaze買収はFacebookとAppleに取って打撃だったと思う。両社はWazeがGoogleの手に落ちるのを防ぐという目的のためだけにでも、もっと真剣に買収の努力をすべきだったのではないか。これでApple、Facebook、その他地図サービスに関わる全員が流れに逆らって上流に泳ぐような苦しい戦いを強いられることになりそうだ。.

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


テスラモーターズのCEO、Elon Musk曰く「電気自動車業界に参入したのは、競合がなさそうだったから」

テスラモーターズのファウンダーであるElon Muskが、D11カンファレンスにおけるキーノート講演で、電気自動車事業に参入した理由を述べていた。曰く、他に誰も電気自動車を作ろうとしなかったからなのだそうだ。Musk自身、電気自動車事業への参入が「最も無分別な行為のひとつ」であり、気違い沙汰のようにも感じられたと話している。

「ほとんどの人は正気の沙汰でなく、大変に愚かしいことであると考えたようです」とMuskは述べる。「私自身が参入を決意したのも、目の前に広がる大きな市場をイメージしたからというわけではありません。あまりにもリスクが高く、大手自動車メーカーが参入してくることはないだろうと考えたからなのです」とのこと。

SpaceXおよびSolar CityのファウンダーでもあるMuskは、リスクを考慮しつつも、交通手段にも「持続可能性」(サステナビリティ)の視点が必要だろうと考えたのだった。しかし、電気自動車を作って、一般向けの市場で販売しようというアイデアはなかなか他の人には受け入れてもらえなかったそうだ。

「自動車業界は、2つの先入観に囚われていたのです」とMuskは言う。「ひとつは市場性のある電気自動車など開発不可能だというもの。そしてもうひとつは誰も電気自動車など欲しがらないというものです」。

テスラは既に電気自動車を実用に供しており、そして今は価格をより抑えたものにしようと努力しているところだ。Muskは、3、4年のうちに価格は3万ドルないし4万ドルのラインまで落とすことが可能だと考えているそうだ。そのために車の小型化や設計面での効率化、そして一層の普及を実現した量産メリットなどを活用して行きたい考えだ。

尚、今ではMuskも電気自動車業界がもう少し広がって欲しいと考えているようだ。他に参入してくる企業があれば、それにより消費者にとってはさらに身近な存在となることができるわけだ。「テスラは収益をあげる企業に成長しました。この分野に参入し、ともに世界を広げていってくれるような企業に出てきて欲しいと考えているのです」とのことだ。

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(翻訳:Maeda, H)


ポール・グレアム、「Y Combinatorの37社の買収額、評価額は4000万ドル以上」とツイート―全511社の総額は115億ドル

Y Combinatorの共同ファウンダー、ポール・グレアムはそのスタートアップの評価額について興味ある数字をツイートした。グレアムによれば、Y Combinatorはこれまでに511のスタートアップに投資してきたが、そのうち37社は4000万ドル以上ですでに買収されたか、あるいは4000万ドル以上の評価額を受けているという。「511社の買収額ないし評価額の合計は115億ドルに上る」とグレアムは自身の Hacker Newsに書いている。

このツイートを読んでまず気になったのはその37社とはどれとどれだろうということだった。グレアムによればRap Geniusはリストに含まれているそうだ。また買収金額や資金調達ラウンドでの評価額が公表されているYCの卒業生もたくさんある。

FacebookはParseを最近8500万ドルで買収したし、Dropboxの評価額は40億ドルと報じられている。HerokuはSalesforceに2億ドル以上で買収された。Airbnbの評価額は25億ドル、Looptの買収額は4300万ドル、 ZyngaのOMGPOPの買収額は1億8000万ドルなどと伝えられる。Cloudkickの買収額は5000万ドル、 AutoDeskのSocialCamの買収額は6000万ドルだったという。

この他に4000万ドル以上のリストに乗っている可能性が高いのは、Stripe、Weebly、Optimizely、Justin.TV、Xobni、Scribd、Hipmunk、Disqusなどだ。

2011年にGrahamは 「YC出身スタートアップのうち25社が買収され、そのうちの5社の買収額が1000万ドル以上だった」と書いた。しかしその記事によると、残りのすべてのスタートアップの価値の合計はトップ5社の買収額の合計より大きいということだった。昨年、YCは380社目のスタートアップをローンチした。YC出身スタートアップが調達したベンチャー資金の総額は10億ドル、平均すると270万ドルとなる。その後、資金調達総額は15億ドルに更新された。New York Timesは最近の記事でY Combinatorのスタートアップの平均価値は2240万ドルだと報じている。

今日のグレアムの発表は興味深い。 単なる評価額にとどまらず、ここ数年以内にY Combinator出身スタートアップからは1社ないし2社の株式上場がありそうだ。読者が4000万ドル以上の価値があると知っているYCスタートアップがあったらコメント欄で知らせていただきたい。

〔日本版〕 Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール(滑川海彦・高橋信夫共訳)が日経BPから出版されている。 『プラネット・グーグル』などで知られるベテラン・ジャーナリストのランダル・ストロスがY Combinatorに半年常駐し、内部からYCを詳細にレポートしたノンフィクションだ。スタートアップ側だけでなく、ポール・グレアム、妻のジェシカ・リビングストン、「モリス・ワーム」で有名なロバート・モリスらパートナー側の人間像も詳しく書き込まれており、「スタートアップを成功させるシリコンバレー文化」がバーチャル体験できる。機会があれば手に取ってご覧いただきたい。

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8億ドルを集めた電気自動車バッテリーのスタートアップBetter Placeが会社精算へ―グリーン企業に試練続く

2007年の創立以来、これまでに8億ドルのベンチャー資金を調達してきたイスラエルのテルアビブに本拠を置く電気自動車用バッテリーのスタートアップ、Better Placeは、今日(米国時間5/26)、裁判所に会社精算手続きを開始する申し立てを行ったことを確認した

これは先ごろ試みた新たな資金調達の試みが不調に終わった結果とみられる。同社の倒産が差し迫っていることは、先週、FortuneのDan Primackがスクープした。

Better Placeの株式の過半数を握るイスラエルのコングロマリット、Israel Corp.が新たな資金調達に応じないと決定した直後に会社精算の公式発表が行われた。Better Placeの存続に足りる規模の資金を供給する可能性のある投資家は他に存在しなかった。

一時はイスラエルのベンチャー企業の星であり、グリーン・テクノロジーの世界的なリーダーとなるともてはやされた企業としてはまことに不本意な結末となった。しかし要するにBetterPlaceのビジョンが現実を正しく捉えていなかったということだろう。lBetter Placeの不調は1年以上前から始まっていたが、2012年の10月にカリスマ的ファウンダーのShai AgassiCEOを解任された後、急速に状況が悪化した。当時、TechCrunchのJohn BiggsがBetter Placeの初期のブームとその後の苦境を的確に分析した記事を書いている。

Better Placeがイスラエルを代表するテクノロジー・スタートアップとして当初注目を浴びたのは、ユニークは「電気自動車用交換式バッテリー」のアイディアによるものだった。同社の構想による電気自動車システムは、ドライバーが電力を使い果たすと世界各地に設置される補給ステーションに立ち寄り、充電ずみのバッテリーと交換することによってすぐに走り出せるというものだった。しかしながら、このようなインフラが整備されるには長い年月がかかるはずであり、Agassiはイスラエルの奇跡の経済成長のち父の一人とみなされているものの、この構想の実現に向けての具体的努力をほとんどして来なかった。

Better Placeは、世界のグリーン・テク企業が受けている試練の最新の例に過ぎない。一時は熱狂的にもてはやされ、莫大な投資が行われたが、現在は倒産、精算が相次いでいる。Kleiner Perkinsのように数年前に大金をこの分野に投資したベンチャーキャピタルも今や大きく方針を変えた

しかしもちろん敗者ばかりではなく、勝者も生まれている。Fisker Automotive躓いたが、Tesla Motors前進中だ。エネルギー効率の改善、バッテリー・テクノロジーの改良の重要性は依然としてきわめて大きい。Better Placeの倒産は、この会社がなすべきことをなせなかったという結果に過ぎない。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


センサーハッキングを通じて、データリテラシーを指導するSensors for Studentsが発進

今年のGoogle I/Oでは、会場のあちらこちらにセンサーデバイスが配置されていた。会期の間、さまざまな環境データを収集していたようだ。I/Oに限らずとも、あらゆるところに「センサー」が配置されているのが現代であるとも言える。私たちの使っているスマートフォンも「センサー」のひとつであるし、また「スマート家電」などもやはり「センサー」の中に含めることができる。そんな中、ManyLabsから「小さなうちからセンサーに慣れ親しんで欲しい」と考えるKickstarterプロジェクトが登場してきた。

プロジェクトの名前はSensors for Students。オープンソースのArduino基盤と、加速度計、電磁場検知機、カラーセンサー、自動水やり機(Bitponicsの自動水耕ガーデンでも同様のものが利用されている)などのGrove拡張基盤からなるセットを提供しようというアイデアだ。

ManyLabsというのは、Peter SandとElliot Dicusが組織したもので、科学と数学のハンズオンをローコストで提供しようとする非営利団体となっている。SandはMITからコンピュータサイエンスのPh.Dを取得しており、コンピューターによる認知工学、ロボット工学、そして教育分野で活躍している。

SnadとDicusの目的は、子供たちに、小さなうちからハードウェアに親しんでもらい、また、データリテラシーを身につけてもらうことだ。目的面を見ると、以前紹介したAdafruitに似ているともいえよう。こちらの方はニューヨークを拠点として、子供のうちから電子工作やDIY文化に慣れ親しませようとするものだった。

ただし、ManyLabsの提供するのはハードウェアのみではない。購入者に対して1年間にわたって実験方法や指導方法などのコンテンツも提供することになっている。キットの配布を今年夏にも開始したい心づもりで、価格は40ドルからだ。キットを単体でオーダーする場合で、最も高額なものは75ドルとなっている。Arduinoを自前で用意する必要があるが、それでも魅力的な価格であると言えよう。

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(翻訳:Maeda, H)