LINEが人気飲食店のネット予約サービスをひっそり開始、しかも人力で

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LINEが一部地域で、ひっそりと飲食店のネット予約サービス「LINE グルメ予約」を開始した。

「デート」や「宴会」などのシーンから最大4店舗を選び、氏名や電話番号、来店日時、人数を入力すると、オペレーターが電話予約をしてくれる。飲食店のエリアやジャンル、予算などの詳細条件も設定できる。いわば人力の予約代行サービスだ。予約完了後はLINEで通知が届き、予約の依頼から完了まで最短10分で完結するという。

人気飲食店だけを厳選

人気飲食店の予約に特化していることも、大きな特徴だ。サービスの提供にあたっては実名型グルメサービス「Retty」と提携し、人気店舗を中心に9都道府県8500店舗を厳選。Rettyの画像や口コミといった店舗情報を掲載している。

ざっと見た限りだと、食べログの評価3.5点以上の店舗が多いような印象だ。逆に言うと、大手予約サービスが対応しているチェーン店は掲載していない。掲載店舗については、すべて許諾を取得している。

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利用するには外部のアプリインストール不要で、LINEアプリから「その他>LINE App>LINE グルメ予約」を選択する。現在は試験的な「ソフトローンチ」という位置づけで、LINE公式アカウントを登録して整理番号を取得した順番に、利用開始の通知が届く。今後は段階的に利用できるユーザーを増やしていく予定だ。

LINEの飲食店予約サービスは初めてではない。2014年11月には渋谷限定で、空席情報をLINEのトーク上からリアルタイム検索できる「LINEいますぐ予約」を開始。予約希望人数をトーク上から送信すると、当日の空席店舗情報がわかるサービスだ。LINE グルメ予約は、事前の予約を受け付けている点が異なる。

あえて人力予約を採用した理由

国内の飲食店ネット予約サービスにはホットペッパーグルメやぐるなび、食べログなどのプレイヤーが参入しているが、対応店舗は大手チェーン店が中心。今年4月には飲食店向け予約台帳サービスのトレタとヤフーが機能連携し、「俺のフレンチ」をはじめとする人気店のネット予約を開始したが、電話予約しか受け付けない人気店は多い。予約システム導入の負担が大きいためだ。

店舗の負担となっているのは、オペレーション変更に伴う教育コスト、複数の予約サービスを使うことでのオーバーブッキング、キャンセルのリスクなどがあり、集客に困っていない人気店がわざわざネット予約を導入しないのもうなずける。LINEは店舗の負担をなくすために、まずは、あえてスケールが見込めない電話での予約代行という方法を採用した。

前述のとおり、LINE グルメ予約はユーザーに代わってオペレーターが電話予約を代行してくれるサービスだ。店舗側はネット予約のシステムが不要で、オーバーブッキングも回避できる。個人と紐付いたLINEを通した予約となるため、キャンセルの抑止力も働く。悪質なキャンセルを繰り返すユーザーに対してLINEは、LINE グルメ予約の利用を停止させる措置も検討しているという。

ずっと人力の予約代行を続ける?

それでは予約代行サービスをずっと続けるのかというと、そうではない。今後は、飲食店がコミュニケーションツール「LINE@」を通じて予約を受け付けたり、顧客を管理できる機能を提供する。LINEとしては、LINE@の有料アカウント(月額5400円〜)を増やす狙いがある。

もともとネット予約を受け付けていなかった店舗に、どうやってLINE@を普及させるのか。LINE グルメ予約を担当するLINEの杉本謙一氏は、「人気店でも、曜日や時間帯によっては集客のニーズはまだある」と勝算を語る。「LINE経由の予約でキャンセル抑止につながったり、予約のやりとりを簡素化できることもアピールしたい」。

ヴォラーレがアプリレビューサイト「Appliv」で海外進出——MAU600万人、アプリ版は100万ダウンロード

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ヴォラーレ代表取締役の高橋飛翔氏

ヴォラーレが提供するアプリレビューサイト「Appliv(アプリヴ)」が海外に進出する。同社は6月にフィリピン子会社を設立。今後現地の人材を採用して英語でのアプリレビュー記事を作成していき、9月末をめどにUS版のウェブサイトを立ち上げる予定だ。将来的には他の地域への展開も視野に入れる。

Applivは2012年8月にスタートしたスマートフォンアプリ向けのレビューサイト。アプリを1500のカテゴリーに細分化し、約6万8000件のレビューを掲載している。レビューはヴォラーレのライターが執筆したものに加えて、ユーザーの投稿も掲載。MAU(月間アクティブユーザーは)は600万人。

3月に提供を開始したスマートフォンアプリ版(iOSおよびAndroid)は、合計100万ダウンロードを突破した。アプリ版のダウンロード数は現在月間数十万件ペースで増加しているという。

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iOS版の「Appliv」

ちなみにApplivはウェブ版とアプリ版でサイト構成が異なっており、ウェブ版が同社によるレビューが中心になっているのに対して、アプリ版ではユーザーレビューが中心(一部同社の「公式キュレーター」によるユーザーレビューもあるそうだ)になっている。またアプリ版はレビューが時系列で表示される「タイムライン」を用意している。

この理由についてヴォラーレ代表取締役の高橋飛翔氏は「ウェブとアプリではユーザーの導線設計が違っているから」と説明する。

ウェブ版は検索から流入するユーザーが中心。つまりどんなアプリをダウンロードしたいかというニーズが明確だ。一方でアプリの場合はニーズが抽象的。なんとなく(レビューを)見に行くので、「『友達のおすすめ感覚』でアプリを紹介している」(高橋氏)のだという。

Applivは広告モデルでサービスを展開しており、2013年からは「Appliv Ad」と呼ぶインフィード型のネイティブアドを展開している。アプリストアへの送客で課金を行う成功報酬型の広告となっている。

デバイス間やクラウドストレージ間に散らばったコンテンツをまとめて表示してくれるJmptuit

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かならずあるはずの写真や音楽を探して、所有するさまざまなデバイスやあるいはDropboxないしGoogle Driveなどのクラウドストレージを探して何時間も無駄にしてしまった人は多いのではなかろうか。

それをなんとかしようと考えたのが、本日公開されたJumptuitだ。デバイスやクラウドストレージを横断してすべての情報を一元的に提供しようとするアプリケーションだ。デスクトップ、モバイル、スマートテレビなどに対応したアプリケーションがあり、Amazon Cloud DriveやBoxなどのオンラインストレージはもちろん、SpotifyやVimeoなどのサービスなども検索対象にすることができる。

Jumptuitを使うには、まず利用するデバイスに対応したアプリケーションをインストールする。そして利用しているクラウドサービスへのアクセス設定を行う。最初にこうした設定をしておくことで、あちこちにちらばったコンテンツを、すべてのデバイスから横断的に検索できるようになる。

たとえばスマートTV上でiPhoneやDropboxに保存した写真を閲覧しようとするときにも便利だ。写真がさまざまなデバイスに散らばっていても、すべての写真がスマートTV内に保管されているように閲覧することができるのだ。音楽やビデオ、あるいはドキュメントなどについても同様に横断的な管理が行えるようになる。

また、Jumptuitには使いやすいファイルマネージャーとしての側面もある。クラウドサービス間をまたがったコピーや移動などを行うことができるのだ。たとえばDropboxの残り容量が少なくなってきているのであれば、Jumptuitを使ってDropbox内の写真をFlickrなどの他サービスに転送したりすることもできる。

検索機能もとても便利だ。探したいファイルの名前を指定すれば、アプリケーションをインストールしているすべてのデバイスおよび接続している各種クラウドストレージから、ファイルを探しだしてくれるのだ。

開発を行なっているのはDon Lekaにより設立された会社だ。Don Lekaとは、オンラインオペレーティングシステムのひとつであるGlide OSの制作者でもある。これがJumptuitの元ともなっている。

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(翻訳:Maeda, H

テイラー・スウィフト、「1989」のApple Musicへの提供を承認

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テイラー・スウィフトが、彼女の新作アルバムである「1989」をAppleのストリーミングサービスに喜んで提供するとTwitterで発言している。これは、Apple Musicが利用者に提供する3ヶ月間の無償期間の間も、アーティストに対する支払いは行うように方針転換したことをうけてのことだ。

話の流れをまとめておこう。テイラー・スウィフトは当初、Apple Musicに「1989」を提供しないと話をしていた。これはAppleが3ヶ月間のトライアル期間中はアーティストに印税を支払わないとしていたことに抗議したものだ。

Appleはこの抗議をうけて、SVP兼iTunes部門のチーフであるEddy Cueが、Twitter上で方針の変更をアナウンスしていた。すなわち、トライアル期間中でもアーティストに対する著作権料の支払いを行うことにしたのだ。

無料トライアル期間も料金を支払うようにしたことで、当初は難色を示していたインディーレーベルも積極的に楽曲の提供を行う動きが加速しているのだとのこと(メジャーレーベルとは事前に話をまとめていた)。New York Timesによると、トライアル期間中の支払金額は有料期間に予定されているものよりは低いものになる。しかし、Spotifyなどの広告掲載を行う無料サービスなどにおけるのと同程度の額なのだそうだ。

テイラー・スウィフトは、今回の方針転換を評価する旨のツイートも行なっている。

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(翻訳:Maeda, H

Microsoft、Androidスマートフォン向けOfficeアプリケーションを公式リリース

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MicrosoftがOffice for Android phoneの公式リリースをアナウンスした。プレビュー版のリリースから5週間で正式版に進化した形だ。このたびリリースされたのはWord、Excel、およびPowerPointのAndroid Phone版だ。これによりiOSデバイス、Windows、OS X、そしてAndroidタブレットに続いてOfficeを正式に利用できる環境が整ったことになる。

リリースされたオフィスアプリケーションでは、オフィスドキュメントを閲覧するのはもちろん、編集することもできる。またスマートフォン上のPowerPointでプレゼンテーションを行うこともできよう。さらに保存場所にGoogle Drive、Dropbox、あるいはBoxなどもサポートされている。プレビュー版投入時にも言われていたことだが、今回リリースされたWord、Excel、PowerPointの各アプリケーションは、以前から投入されていたOffice Mobileに代わるものだ。新しいアプリケーションの動作には1GBのRAMと、Android KitKat(4.4.x)以上が必要となる。Android Mはまだサポートされていない。

無料のMicrosoftのアカウントをもっていれば、アプリケーションも無料で利用できる。ただし一部の高度な機能を利用するにはOffice 365の申し込みが必要となる。

このアプリケーションは、Samsung、LG、Sony、その他、30社以上の端末にプレインストールされる予定となっている。プレインストールされたモデルは今年の後半に市場に並ぶことになる。

もちろん、アプリケーションを利用するのにプレインストールモデルのリリースを待つ必要などない。すでに誰でもダウンロードできるように公開されているのだ。たとえばGoogle PlayにもWord for AndroidExcel for AndroidPowerPoint for Androidが登録されている。また中国ではTencent、Baidu、Xiaomi、およびCMCCといったアプリケーションストアからもダウンロードできるようになっている。Samsungの自社アプリケーションストアからダウンロードできるようにしているようだ。

Microsoftによれば、Android Phone版オフィスのプレビュー版は1900種類以上の端末にて、83ヵ国でテストされたのだとのこと。そうしたユーザーからのフィードバックも、正式版に反映しているとのことだ。対応したフィードバックには、バグについての報告だけでなく、新機能の要望なども含まれる。Google DriveやBoxなどのサードパーティーのオンラインストレージに対応したのも、利用者からの要望があったからであるようだ。メニューの配置などについての修正も行われたとのこと。

今回のリリースでも明らかなように、ソフトウェアについてMicrosoftは全方位的なクロスプラットフォーム戦略をおしすすめていくつもりであるらしい。その昔、Officeを使いたいならWindows PCを使えばいいともいうような姿勢であった頃からは隔世の感がある。自社のフラッグシッププロダクトを、ライバルOSの利用者も含めた、より広い層に利用してもらいたいという気持ちが現れているわけだ。Microsoftのこの作戦は、少なくともいまのところはとても順調に機能している様子。Microsoftによれば、iOSおよびAndroid版アプリケーションのダウンロード総数は1億件を超えているとのことだ。

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(翻訳:Maeda, H

Foursqure、Swarmに「メイヤー」の仕組みを再投入

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以前からの(あるいは以前の)Foursquareユーザーは「メイヤーシップ」という言葉をきくと胸がドキドキしてしまうかもしれない。Foursquareの主要な機能のひとつだったが、Foursquareからも、あるいはそこから分離したSwarmというアプリケーションからも削除されてしまっていたのだった。

しかし「メイヤーシップ」ファンにとっての失意の時代は去ったようだ。Swarmがアップデートされ、以前の記事でも予告していたようにふたたび「メイヤーシップ」が帰ってきたのだ。

このところ、Swarmで「競う」といえばステッカーを集めることだった。しかしメイヤーシップの復活により、Swarmを利用する他のユーザーとの間で競い合う楽しみが復活することとなった。

Swarmのアプリケーションから、これまでに集めたステッカーのページを開くと「メイヤーになっているスポット」というタブも表示されるようになった。そちらのタブをタップすれば、現在メイヤーとなっている施設が表示されるようになっている。

Swarmはこれまでも過去一定の期間におけるチェックイン数を集積しているので、今回のアップデートと同時に、メイヤーになっているスポットが直ちに表示されるようになったようだ。

ちなみにメイヤーとしての評価は、30日毎のチェックイン数に基づいて行われる。但し、1日のチェックインカウントは1度限りだ。すなわち、たとえば1日になんどもTechCrunch HQにやってきてチェックインしたとしても、それだけでメイヤーを獲得できたりはしないということだ。

尚、メイヤー資格の奪取に、あと何度のチェックインが必要であるのかという情報も表示されるようになっている。

FoursquareがSwarmと分離してからは、友人間での比較によるメイヤーシップが存在してきたが、今回のアップデートでその機能はなくなった。閉じられた仲間の間だけではなく、Swarmネットワーク全体と競う仕組みになったわけだ。将来的には友人間での競い合いも何かの形で復活するような話もあるらしい。

いずれにせよ、今回のアップデートはSwarmにとって大きなものであることは間違いなかろう。

初期のFoursquare利用者の中には、メイヤーの仕組みをとても楽しみにしている人が多くいた。Foursquareを使って面白い場所を発見しようというのではなく、どこかの施設の「常連」となることに喜びを感じていたわけだ。

FoursquareがレコメンドツールとしてのFoursquareとチェックインのためのSwarmに分割された際、Swarmからはメイヤーシップを巡って競うような意味合いは消え去っていた。そのかわりに位置情報を活用したソーシャルネットワークとしての意義を前面に出し、友人同士で現在の訪問地を示したり、近くにいる友だちとメッセージをやりとりするためのツールとして発展してきた。

しかしここ数カ月のうち、Swarmは再度ゲーム的要素をアプリケーションに搭載する方向に舵を切っている。その方向性が最初に見えたのがSticker Bookの搭載だ。ここには、ユーザーが獲得すべき100のステッカーが表示されているのだ。特定の種類の場所にチェックインしたり、あるいは短期間のうちに数多くの場所でチェックインしたり、あるいはチェックイン時に特定のコメントを添えることなどで、ステッカーをアンロックすることができる。

ステッカーのアンロックにさまざまな仕組みを導入したのは、そこにゲーム性をもちこもうと考えたからにほかならない。5月頭にリリースされたバージョン2.3から、この面での強化が行われている様子。そして今後もSticker Bookをさらに充実していくつもりでもあるようだ。

そしてメイヤーの仕組みを再導入したSwarmは、やはりゲーミフィケーションの考えを強調しようとしていると考えて良いのだろう。メイヤーの仕組みは古くからのFoursquareファンにとってはノスタルジックな意味合いももつものである。新しいアプリケーションに、旧来の仕組みを導入し、そこからかつてのFoursquareに比べれば知名度も低いSwarmに注目を集められるのではないかと考えてもいるのだろう。

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(翻訳:Maeda, H

「会社設立 freee」は全自動で会社設立に必要な書類をすべて出力できる無料ツール

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会社設立の手続きは想像以上に時間がかかるものである。

例えば、会社のルールをまとめた定款をはじめとする各種書類。ネットや本を見ながら苦労して作っても、不備があれば役所に突き返される。各種書類に同じ情報を何度も記載するのも面倒。そんな非効率な起業環境を改善するツールが「会社設立 freee(フリー)」だ。わずか5分で会社設立に必要な書類が出力できることをうたう。クラウド会計ソフトのfreeeが本日、無料で公開した。

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案内通りに入力するだけで、会社設立に必要な各種書類を自動で作成。一度の入力で、必要な書類や手続きに情報を再利用するので、同じ情報を何度も入力する手間もない。

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役所ごとに提出すべき書類や捺印箇所を手続きの段階ごとに指示。各役所に持っていく持ち物リストも教えてくれるので、役所で再提出を命じられる憂き目を避けられそうだ。

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データはすべてクラウド上に保存するので、PCだけでなくスマートフォンやタブレットからも利用できる。freeeの佐々木大輔社長は、「スマホでの表示に完全対応しているので、スタバでも5分で必要な書類が作れる」と使い勝手の良さをアピールする。

そのほかに有料のオプション機能として、すでに入力した情報を転記してジャパンネット銀行の口座を開設したり、ハンコヤドットコムで会社実印を注文することが可能。官報に掲載すると1回約6万円かかる公告を年間1000円で利用できる「freee 電子公告」なども提供する。

スマホにも最適化している

スマホにも最適化している

設立したての企業を囲い込む「ゆりかご戦略」

専門知識がない人にとって、会社設立の手続きは本やネットで調べて自力でやるか、行政書士などの専門家に依頼するケースが多い。freeeが会社設立経験者500人を対象に実施した調査によれば、会社設立手続きに要した期間は平均24.2日、費用は平均11万2000円と、多くの時間とコストがかかっていた。

世界銀行が昨年10月に発表した年次報告書「Doing Business 2015」によれば、“起業環境の良さ”で日本は世界83位。この数字は「手続き数」「かかる日数」「コスト 」「最低限必要な資本金」をもとに算出したものだが、会社設立 freeeを使えば「かかる日数」と「コスト」が改善し、現在の順位を45位にまで押し上げられると、佐々木氏は言う。

freeeの佐々木大輔社長

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「実は僕が起業した時も、法務省のサイトを見ながら定款を作って、行政書士にチェックしてもらっていました。それでも役所に提出する書類が足りなかったり、押印を忘れて受理されず、法務局を何往復かしたことも……。会社設立 freeeは起業環境を圧倒的に改善できる。日本の開業率を現状の5%から10%にできると思っています。」

会社設立 freeeを無償提供するのは、本業のクラウド会計ソフト「freee」を利用してもらうためだ。設立手続きが完了すると、自動でfreeeのアカウントが作成されるので、希望に応じて設立当初からクラウド会計ソフトを導入できる。freeeを導入しているのは、創業間もない事業者が多いというデータもあることから、いわば「ゆりかご」状態の企業を囲い込もういうことなのだろう。

グロースハック支援ツール提供のシロク、今度はディープリンクサービスを開始

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URL経由で、ウェブやアプリのトップ画面ではなく、特定のページやコンテンツに直接アクセスできる「ディープリンク」。最近ではスマートフォンでブラウザからアプリ、アプリから別のアプリに遷移することも多いが、その遷移の際にアプリのトップ画面が表示されるのではなく、直接目的のコンテンツが表示されたというような経験はないだろうか? あれもディープリンクによるものだ。通常のリンクよりダイレクトにユーザーの求めるコンテンツを提供することができるため、アプリの価値向上に有効だ。

以前TechCrunchでも紹介したフクロウラボの「Circuit」のようなプロダクトも登場し、国産アプリでも徐々に導入が進みつつあるディープリンクだが、サイバーエージェントの連結子会社であるシロクもその領域に参入した。同社は6月23日、「国内で最も多機能なディープリンクサービス」をうたう新サービス、「Growth Link」の提供を開始した。

Growth Linkは、ウェブサイトやアプリ上でのディープリンクを手軽に設定できるツールだ。通常ディープリンクに対応するには、OSをはじめとしたさまざまな環境に合わせた設定が必要になるが、Growth Linkでは、アプリにSDKを組み込み、リンク先の設定をするだけでだけ対応可能だという。

シロクではグロースハック系のツールを「Growthbeat」という1つのSDKにまとめて展開しており、これまでに同SDKで利用できるGrowth Push(プッシュ通知配信ASP)、Growth Message(アプリ内ポップアップツール)、Growth Analytics(解析ツール)の3つのツールを提供しているが、Growth Linkはその4つ目のツールとなる。

競合製品と比較してユニークだとうたう機能は、アプリインストール前のユーザーに対する施策だ。通常、ユーザーが当該アプリを未インストールの状態でそのアプリに遷移するディープリンクにアクセスした場合、アプリストアに誘導することしかできない(ダウンロード後にアプリを起動するとトップ画面が表示される)。だがGrowth Linkではアプリストア経由後もディープリンクを保持するため、アプリストアをアプリをインストールして初回起動した際に、意図したディープリンク先を表示できるという。これによって、アプリ未インストールユーザーの継続率を向上することができるという(詳細は割愛するが、ブラウザのcookieを利用してこれを実現しているそうだ)。

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またA/Bテストにも対応しており、1つのURLから複数のアプリ内リンクを作成し、ユーザーをランダムに飛ばすことが出来る。その後のユーザーアクションを記録することでどのリンクが最も有効か計測可能だ。

さらに、同社の他ツールと連携させることで更に踏み込んだ訴求が可能と訴える。例えばGrowth Linkで作成したディープリンクを活用して、グルメサイトからのユーザー、旅行サイトからのユーザーといったようにユーザーをセグメント化。そしてGrowth Pushのセグメント機能を使い、セグメントごとに異なる内容のプッシュ通知を配信する、といった応用が考えられる。

Growthbeatは現在6500アプリに導入されているが、シロク代表取締役の飯塚勇太氏は2015年中に1万アプリへの導入を目指すとしている。今後はGrowthbeatのプラットフォーム展開も視野に入れており、自社で機能追加するだけでなく、サードパーティが開発した機能をGrowthbeatに取り込む事も検討している。

ImintのVidhanceオートズーム・テクノロジーは驚異的―ライブビデオをリアルタイムで見やすく編集する

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数ヶ月前、われわれはスウェーデンのビデオ・ウィザード、Imintビデオ安定化テクノロジーを紹介した。このほど、Iminitは製品版の機能を紹介する驚くべきデモ動画を発表した。このビデオでは普通のスマートフォンで撮影した動画が手ブレを補正される同時に、軍事用に開発された自動ズーム・テクノロジーでリアルタムで編集され、動画中でもっとも興味ある対象がアップでフォローされいる。

Imintのテクノロジーはすべて軍事用に開発されたものの民生版だ。軍用ドローンのカメラは地上の武装勢力のトラックを簡単に追尾できなければならない。さらにヘルファイア・ミサイルで攻撃するときには、オペレーターたちは、それが間違いなく武装勢力のトラックであって、付近の農民が市場に作物を運ぶ途中でないことを祈ることになる。 自動ズーム・テクノロジーはもちろん非軍用の捜索、救難活動にも利用される。

ImintのCEO、Andreas Lifvendahlは私の取材に対して「(自動ズームというのは)一見したよりも実現がはるかに難しい。特にリアルタイムではそうだ。固定監視カメラ向けの初歩的なバージョンはすでに存在していた。この場合はフレーム全体は固定されているので動きの検出は楽だ。しかし通常のスマートフォンのビデオの場合、フレームごとに画像全体が動くので、その中から意味のある動きを検出するのがたいへん困難になる」と語った。つまりカメラの揺れの他に、風になびく木の葉や水面の波のようなノイズを見分けなければならないわけだ。

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Imintチームは、関心ある対象の動きの予測など、さらにテクノロジーの改良を続けている。またこうしたツールに最適なユーザーインターフェイスも種々実験しているところだという。しかし現在のレベルでも効果はきわめて大きく、はるかに優れたカメラを使って人間が編集した品質に匹敵するものになっているとLifvendahlは言う。

開発チームが現在特に力を注いでいるのは複数のカメラで同時に撮影される動画を自動的にひとつにまとめて編集する機能だ。

Lifvendahlは「おそらく20秒程度のタイムラグが許されれば、人間のビデオ制作者による編集と同程度の品質をアルゴリズム編集で達成できるはずだ」と述べた。

オート・ズームとアルゴリズムによるライブビデオ編集は現在、数多くの提携企業でテスト中だが、ImintはこれらのテクノロジーをSDKとして一般に提供していく計画だ。Imintのテクノロジーが広く実用化されれば、われわれのスマートフォンでのビデオ撮影の常識が大きく変わることになりそうだ。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

日本でeスポーツは流行らない? ならばモバイル賞金付きゲームで世界を狙う「ワンダーリーグ」

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欧米で流行するe-Sports(eスポーツ)が、日本で独自の発展を見せるかもしれない。

eスポーツとは、複数のプレイヤーで対戦するビデオゲームを競技として楽しむジャンルを総称したものだ。人気ゲームになると世界大会が開催され、テレビやウェブで中継されることもある。TechCrunchでもお伝えしたが、昨年7月に行われた「Dota 2」の世界大会は賞金総額が11億円に上り話題となった。

海外ではPCメーカーや飲料メーカーがスポンサーするほどの盛況ぶりだが、日本はそれほどの熱量はない。主な競技種目である、PCゲームの人口が少ないためだ。ならば、日本が強いスマートフォンを舞台に盛り上げようとしているのが、「世界初のモバイルeスポーツ」をうたうワンダーリーグだ。本日、iPhoneとAndroidアプリを正式リリースした。

1位と100位のランキング獲得者に毎日賞金

アプリ上では日替わりでカジュアルゲームのスコアを競い合い、毎日1位と100位のランキング獲得者が賞金5000円を入手できる。欧米で人気のPCゲームをモバイルで再現するのではなく、スマホが普及した日本ならではの、スキマ時間の暇つぶし感覚で楽しめる脳トレやパズルゲームを揃えているのが特徴だ。

プレイ回数は1日5回まで。友達招待やSNS投稿をすれば、無料で追加プレイができる。それでも足りなければ、課金で追加プレイが可能。この課金と広告費がワンダーリーグの収益となる。

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賞金の元手は広告費だ。といっても、ワンダーリーグが得る広告費ではなく、支払う広告費を抑えて賞金に回している。

同社の北村勝利社長によれば、開発費が数億円かかるようなモバイルゲームの多くは、アプリのダウンロードと引き換えにAmazonギフト券などの報酬を与える、いわゆる「ブースト」に多大な金額を投じていると指摘。「そういった広告費をユーザーに還元すれば、自ずと人気が出る」と見ている。

超定番ゲームを次々と招致

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「糸通し」は2005年の公開以降、「究極の暇つぶし」というキャッチフレーズとともに数多くのシリーズを展開している

ワンダーリーグは有名ゲームを招致する興行主のようなポジションだ。

まずは累計1500万ダウンロードの「糸通し」や、累計700万ダウンロードの「Touch the Numbers」といった定番ゲームを3カ月にわたって配信。期間中にトータルでトップスコアを獲得したユーザーには、ゲーム開発会社が10万円を進呈する賞金イベントも併催する。

近日中にパックマンを配信することも決まっている。ちなみにパックマンは、バンダイ・ナムコの人気タイトル17作品を日本のクリエイターに開放し、二次創作を許可する「カタログIPオープン化プロジェクト」の一環。ワンダーランドは二次創作者として採用されたかたちだ。

ゲーム会社に対してはライセンス料を支払うか、レベニューシェア契約を結ぶ。ゲームはいずれもワンダーリーグ向けにカスタマイズして組み込む「インゲーム方式」を採用していて、ユーザーは1つのアプリで、複数のゲームを日替わりで楽しめる。ゲーム会社としては、過去にヒットしたタイトルで収益を得られるメリットがある。

カジュアルゲームに国境はない、2020年に世界大会を

運営元のワンダーリーグは昨年6月に設立。今年2月にはアドウェイズ、サイバーエージェント・ベンチャーズ、B Dash Venturesの3社から1億円の資金を調達している。

今年50歳を迎える北村勝利社長は過去に、モバイルコンテンツ事業のアイフリークやゲーム事業のバタフライなどでイグジットを経験した起業家だ。2012年8月まで社長を務めたバタフライでは、パチンコ・パチスロ店舗の実機をシミュレーションできるアプリ「モバ7」を手がけ、700万ダウンロードのヒットを飛ばした。「パチンコ・パチスロ人口の3人に1人が利用するほどの人気だった」。

ワンダーリーグの北村勝利社長

ワンダーリーグの北村勝利社長

なぜ、カジュアルゲームで起業したのか。北村氏はバタフライの社長退任後、世界で勝負できる事業を探していて出会ったのがeスポーツだったと振り返る。「実際に業界研究してみると、モバイル分野では誰もやっていない。我々はスタートアップで資金力がないのでカジュアルゲームで勝負するしかないが、独自のイベントを絡めれば新たな市場を作れると思ったので、やるしかないなと」。

年内には、海外で人気のカジュアルゲームを揃えた英語版もリリースする。日本と同様のタイトルに加え、海外でヒットしたゲームの開発企業とも交渉していく。賞金は海外送金手数料を抑えるために、PayPalとBitCoinのどちらかで送金する。「カジュアルゲームに国境はないので十分に勝機はある」と北村氏。2020年にはワンダーリーグの世界大会を開催したいと展望を語っている。

Apple Storeから静かに姿を消したオリジナルのiPad mini

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販売中の中で唯一Retina非・対応だったオリジナルのiPad miniの販売が停止となった模様だ。9to5Macの記事にあるように、ひっそりとAppleのオンラインストアから姿を消してしまったようだ。1日前のiPad販売コーナーと見比べてみると(下の写真参照)、第一世代iPad miniが製品リストから姿を消しているのだ。iPad mini 2、iPad AirおよびiPad Air 2は相変わらずリストに掲載されていて購入可能となっている。

姿を消したのはやや唐突ではあったものの、iPad miniが姿を消すのは当然のことであるとも思う。リリースは2012年で、解像度は初代iPadと同じ1024×768だった。Appleにとってははじめての7.9インチモデルで、初代iPadと同じピクセル数であったことから解像度的には向上してはいたものの、昨今のRetinaモデルとはずいぶん差のあるスペックとなっていた。

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搭載されていたプロセッサーもA5で、世代的にみてもいささか古臭いものとなっていた。326ppiのRetinaディスプレイを搭載したiPad mini 2のエントリーモデルと比較すると、価格差は50ドルしかなかったが、多くの購入者は当然にiPad mini 2を選択するようにもなっていた。

Apple.comのサイトには「Certified Refurbished」というコーナーがあり、そこではまだiPad miniが扱われている。Apple以外の小売ショップではまだ在庫にもっているところもある。しかしいずれにしても、オリジナルiPad miniの時代は終わったということになる。もちろんすでに利用している人がただちにiPadを楽しめなくなるというわけではない。Appleも、この秋にリリースされる新機能を搭載したiOS 9にも対応しているとアナウンスしている。

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(翻訳:Maeda, H

1インチセンサーを搭載したiPhone用プラグインカメラのDxO One、現在プレオーダーを受け付け中

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iPhoneのカメラは、それ自体でもなかなかすぐれたモバイルカメラであると評価されている。しかし、デジタルイメージングのリーディングカンパニーであるDxOからリリースされたカメラとタッグを組ませれば、さらに素晴らしいクオリティを望むことができる。発表されたDxO ONEは、LightningケーブルでiPhoneと接続する。f1.8のレンズを搭載し、画素数は20.2メガピクセルでセンサーサイズは1インチとなっている。1インチのセンサーサイズといえば、TechCrunchでも取り上げたコンパクトカメラのSony RX100と同じサイズだ。小型ながらノイズの少ない高画質を期待することができ、もちろんボケ描写力などにも力を発揮する。

このDxO ONEはもちろんRX100よりも小さく、背の高さがiPhoneの幅とほぼ同じで、厚さも1インチしかない。Lightningポートに接続しつつiPhoneを回転式LCDディスプレイとして利用する。RAWモードでの撮影も可能で、Adobe Lightroomなどといっしょに使えば、利用シーンも大きく広がることだろう。

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絞りやシャッター速度、およびISOなどはもちろん手動で設定することができる。デジタル一眼カメラやミラーレスカメラなどに搭載されている撮影モードメニューも用意されている。さらに1080p/30fpsでビデオ撮影を行ったり、あるいは720p/120fpsでスローモーション撮影をすることもできる。写真やビデオの保存用にmicroSDカードが搭載されているし、もちろんiPhoneのカメラロールに保存することもできる。

いくつかDxOによる写真を掲載しておく。

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趣味の写真家にとって非常に魅力的なプロダクトであるように思える。599ドルという価格も同性能の単体カメラを買うよりもずいぶん安い感じだ(訳注:記事中からリンクされているDxOのサイトには79900円という表記も見えます)。参考までにRX100 IVの価格は1000ドルだ。レンズは32mm相当に固定されることになるわけだが、それでもずいぶん魅力的な商品ではなかろうか。

現在dxo.comにてプレオーダーを受付中で、アメリカでの出荷開始は9月になるとのことだ。

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(翻訳:Maeda, H

マガジンの作者が多様な付加的コンテンツでニュースコンテンツをより賑やかにするFlipboardの新機能…Apple Newsに対して差別化

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人気最大のモバイルニューズマガジンFlipboardは、今度のiOS 9で、実質的にFlipboardクローンと言われている強敵Newsアプリが出たって平気らしい。でももちろん、何百万というiPhoneに搭載される内蔵アプリに負けないためには、絶えざるイノベーションが欠かせない。そこで今朝(米国時間6/16)同社は、AppleのNewsに対して強力に差別化できると思われる、ある方法を発表した。それは、マガジンの作者たちが自分の出版物に自分の声を加えて、これから共有しようとしているニュースに対する意見や考えを述べたり、読者に質問したり、テキストを引用したり、リンクや個人的な写真などで自分のマガジンをカスタマイズできる、という機能だ。

これまでFlipboardのユーザは、いろんなソースから記事を引っぱり込んで自分のマガジンを作り、自分の関心を軸とする、世界に一つしかないコレクションを提供できた。しかし大手メディア企業などが提供している派手なマガジンと違って、このデジタルコンテンツの集合体には、編集者の生(なま)の声が欠けていた。それが、これからは変わる。これからはマガジンの作者が、テキストやリンクや画像などを自分のマガジンに添付できるのだ。

Flipboardが提案しているこの機能の使い方は、質問をする、読者と会話する、コンテンツ提供者にリクエストする、マガジンの変更について注記する、などだ。コンテンツの中で自分が感動したフレーズを、引用してもよいし、記事に対する感想や意見をシェアしてもよい。作者〜編集者によるこれらの付加物によって、記事のコンテキストがより豊かになる(より多面的立体的になる)。

記事をリンクや自分が撮った写真などで修飾してもよい。するとマガジンに(願わくば良い意味での)個人性が加わるだろう。

Apple製のNewsアプリも、人間の編集チームが制作に関与し、地域ニュース、全国ニュース、世界のニュースの各レベルでニュースをふるいにかけるらしい。Newsアプリの編集者もコンテンツを大小さまざまなソースから取り込むが、ときにはマイナーなミニコミみたいなものから素材を拾うこともあるらしい。

だから二つのニューズマガジンは、体裁や美観だけでなく、その内容でも競合することになる。多くの読者にとって、おもしろい、センスが良い、と感じられるのは、どちらの編集姿勢だろうか。Flipboardがこれから行う、作者によるマガジンの個人化の強化は、吉と出るか凶と出るか、はたして?

Flipboardによると、この新しい機能はまずとりあえずiOSでローンチするが、じきにAndroidにも行く。このオプションを利用するためには、表紙にある”compose”アイコンをタップするとよい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

PushbulletのPortalはどんなファイルでもパソコンからAndroidに高速コピーする便利なアプリ

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Pushbullet同名のユーティリティーを作ったスタートアップだ。Pushbulletはスマートフォンとパソコンの間で通知やファイルを簡単にやりとりするアプリで、特にスマートフォンに表示される通知をChromeにリアルタイムに表示できるのが便利だ〔Pushbulletアプリは日本語化ずみ〕。今回リリースされたPortalはPushbulletの数多い機能の中でパソコンからスマートフォンへのファイル転送に絞って、シンプル化、高速化したアプリだ。当面はAndroid版のみだが、iOS版も開発中だという。

フラグシップ・プロダクトのPushbulletにもファイル転送機能はあるが、PortalはWi-Fi転送に的を絞っているところが違う。スマートフォンとパソコンが同一のWiFiに接続してなければならないが、転送の速度はるかに向上し、対象ファイルの数やサイズにも制限がない。

PushbulletのCEO、Ryan Oldenburgによれば「飛行機に乗る前に映画をまるごとスマートフォンにコピーすることもできる」という。

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PortalアプリをGoogle Playからインストールした後、パソコンで Portalサイトを訪問するとQRコードが表示される。スマートフォンのカメラでスキャンするとパソコンとスマートフォンの間にチャンネルが確立されるので、転送したいファイル(あるいはフォルダー)をそのウェブページにドラグ&ドロップですればよい。.

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スマートフォンとパソコンのファイル転送を行うAndroidユーティリティーはFilePushFiledropなどいくつかあるが、Portalはパソコン側にアプリやブラウザの拡張機能をインストール必要がない。すべてブラウザの通常のページ内で処理がすむ。つまり職場や友達のコンピュータからも自分のAndroidにファイルを転送できる。

またDropboxなどを使って同期する場合と異なり、クラウドの容量を必要としない。アップロード、ダウンロードを行わず、デバイス間で直接接続を行うのでデータ通信の容量を食わない点もメリットだ。

OldenburgによるとPushbulletのアプリはすでに数百万のユーザーがいるという。これらのアプリは無料でアプリ内購入や広告表示もしていないので、今のところ売上はゼロだ。しかしPushbulletは今年150万ドルのシード資金の調達に成功しており、当面は売上を立てることより優れたアプリの開発に集中していくという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Twitter、ビデオおよびGIFの自動再生機能を提供開始

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Twitterが、iOSアプリケーションおよびウェブにて、ビデオやアニメーションGIFを自動再生する機能の提供をを開始した。Android版でも間もなく実装される予定であるとのこと。TwitterにアップロードされたネイティブビデオやVine、あるいはGIFなどは、タイムラインに表示されるようになると同時に再生されるようになるわけだ。Facebookでのビデオ自動再生と同じような機能だといえばわかりやすいだろうか。

この機能はしばらく前から限定的にテストされていたものだ。本日より、すべての利用者にむけて公開されることとなった。Twitterはこの自動再生の機能を「より多くの情報を伝えるための手段」と位置づけているそうだ。もちろん広告プラットフォームとしての価値を高めるための機能拡張であることも明言している。

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TwitterのGlobal Revenue部門のプレジデントであるAdam Bainによると、ビデオ広告に対する課金が発生するのはビデオが100%表示されている場合のみであるとのことだ。上下がカットされたりしておらず、かつ3秒以上再生された場合にのみ課金するような仕組みになっているのだとのこと。広告の「ビュー」を明確に定義することにより、ビデオ広告を出そうとする企業にとって最善のプラットフォームたらんとする発想によるものだとのことだ。

ビデオの自動再生はミュート状態にて行われる。もちろんこれはふさわしい振る舞いであるはずだ。また、自動再生をオフにする機能もある(標準ではオンだ)。再生中のビデオをクリックすればフルスクリーン・ビューとなり、さらに音声も再生されるようになる。またデータ通信量を意識して、Wi-Fi接続時のみオートプレイをオンにするオプションもある。また帯域幅の狭い地域やデータ通信料金が高額な地域の利用者に対しては、これまで同様にクリックして再生する形式が標準として提供されるのだそうだ。

今回の変更についてどのような反応があるのかは興味深いところだ。Facebookがビデオの自動再生をはじめたときには、反対の声もさほどなかった様子。しかしTwitterについては別の反応もあり得るだろう。またフォローしている人の数や、フォロー相手によっては、タイムラインがとても騒々しくなるということはあり得る話だ。そのような中から、予想外な反応が生まれてくることも考えられる。

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(翻訳:Maeda, H

Adobe、Android版のPhotoshop Mix、Brush CC、Shape CC、Color CCをリリース

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今日(米国時間6/15)、Adobeは新しいAndroidアプリ4種類をリリースした(スケジュールよりやや早い)。PhotoshopやLightroomなどAdobeの人気アプリは以前からiOS版が提供されているが、これまでAndroid版の開発は遅れていた。しかし今日からCreative Cloudの契約者はPhotoshop MixBrush CCShape CCColor CC をGoogleのプラットフォームで利用できるようになった。

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AdobeのCreative Cloud担当シニア・マーケティング・ディレクター、Scott Morrisによれば、ユーザーからの要望が強かったためAndroidプラットフォームをサポートすることに決めたのだという。開発チームはまずAdobeのCreative SDKをAndroidに移植するところから始めねばならなかった。そこでユーザー向けのアプリをリリースするまでないかなりの時間がかかったという。Morrisはまた「Androidにはたいへん数多くの多様な機種が市場に存在するため開発は非常に難しかった」と述べた。

Adobeのモバイル化の戦略は、Creative Cloudを一挙にモバイル化するのではなく、単機能の比較的シンプルなアプリを順次リリースしていくという方向のようだ。

たとえば、Brush CCはモバイル・デバイスで取り込んだ写真やグラフィックをブラシに変換して、Adobe Photoshop CCやIllustrator CCで利用するアプリだ。

同様にShape CCは画像をキャプチャーしてPhotoshopなどで利用できるベクトルグラフィックスを作成する。〔 Color CC (aka Kuler) は日本Play Storeでは未公開〕

Photoshop Mixはこれらとはやや異なり、Photoshopの基本的な機能が提供される画像編集アプリとなっている。

Morrisによれば、今後Androidは全体としてiOS同様にサポートされていくことになるという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

FacebookのMessengerに最初のゲーム登場―スパム化を防止する舵取りが必要

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Facebook Messengerはついにゲームの世界にまで拡張された。今日(米国時間6/10)、私はMessengerプラットフォームのアプリのリストにDoodle Drawという ゲームを発見した。取材したところ、Facebookは「4月にプラットフォームがスタートして以来、これが最初の本格的なゲームだ」と確認した。

Doodle Draw

当初FacebookはMessengerプラットフォームに登録できるアプリをGIF化やサウンドメーカーなどコンテンツ加工系に限っており、ゲームは許可していなかった。

しかし私はプラットフォームのローンチ前に情報源から「Facebookはテストの結果がよければ、けっきょくゲームやユーティリティーなど広範囲なアプリを許可することになるだろう」と聞いていた。先月、The Informationは「FacebookはMessengerにゲームを導入することを前向きに検討している」という記事を載せた。

私の取材に対して、Facebookは「われわれはMessengerプラットフォームにもっとも適したアプリはコンテンツ加工とキュレーション系だと考えている。 しかしF8カンファレンスでMessenger Platformはすべてのデベロッパーに開かれていると宣言したことでもあり、もっと広い範囲のアプリも考慮することにした」と語った。

Doodle Draw(iOS版、Android版)をプレイしたゲームファンの中には何か見覚えがあると感じたものもいたはずだ。実はこのゲームは 2012年にいっときブームとなり、とんでもない高値でZyngaに買収されたDraw Somethingというゲームのデッドコピーなのだ。しかしDraw Something自体が昔からあるパーティーゲームのPictionaryのモバイル版だったのだから、あまり憤慨することもないだろう。デベロッパーの ClayのサイトにはDoodle Draw以外のゲームもたくさんある。

Doodle Draw is an obvious clone of this game, Draw Something

Doodle Drawの元になったDraw Something

Doodle Drawを開くとテーマが表示されるので、限られたツールと色でそれを描き、友達に送る。友達はそれが何かを当てなければならない。友達を招待したりプレイ回数を重ねたりするとプレイヤーにはポイントが付与され、そのポイントで新しい色を購入することができる。将来は色やツールをキャッシュでゲーム内購入できるようにするのだろう。

こうした売上からFacebookが手数料を徴収することになるのかどうかはまだ不明だ。UltratextというMessengerアプリは有料でフィルターを販売しているがFacebookは手数料を課していない。

Facebook Messenger Games

うまくいけばゲームはMessengerプラットフォームのエコシステムを急成長させるのに役立つが、反面、以前のFacebookゲームがそうなったように、ユーザーを騙して課金するアプリやスパムの温床になりかねない。Zyngaはプレイヤーが友達を誘ってゲームに参加させるとポイントが与えられるシステムを作り、ポイント欲しさのしつこい宣伝投稿でニュースフィードがひどく汚染されるという騒ぎになった。〔日本版:2009年にTechCrunchのファウンダーで当時の編集長、Micheal Arringtonは詐欺まがいが蔓延―ソーシャル・ゲームの邪悪のエコシステムは放っておけないという記事でZyngaのフラグシップ・ゲーム、Farmvilleなどが悪質な課金手法を取っていることを厳しく指摘し、Zyngaは謝罪した。〕

Facebookはニュースフィードの質の低下を恐れて、こうしたバイラル勧誘の仕組みに大ナタをふるい、大部分を禁止してしまった。これと、同時に進展したモバイル化のためソーシャル・ゲーム会社は大打撃を受けた。

Doodle Drawにもこうしたソーシャルスパムへの萌芽が見えるのが気がかりなところだ。ゲームをプレイするとゲーム内通貨として使えるポイントが与えられるという仕組みは、ポイント欲しさにつまらない絵が大量に送られる危険性を秘めている。 Facebookはこういうインセンティブの与え方に対して厳格な態度を取るべきだろう。

Messenger Game Spam

今後Messengerプラットフォームがどこまで拡大するかは未知数だが、Messengerの価値がゲームスパムで傷つけられることがないよう、Facebookの適切な舵取りが期待される。.

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

メッセージはFacebookの一人勝ち―Messenger、Google Playでのダウンロードが10億回に

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Google Playでダウンロードが10億回を超えた会社は2社しかない。そのうちの1社はもちろんGoogle自身だ。今日(米国時間6/9)、FacebookはSMSを代替するビジネスの市場がどれほど巨大かを実証した。Messenger部門の責任者、David Marcusが発表したところによると、MessengerのAndoid版のダウンロード回数が 10億回の大台に乗ったという。10億回超えのアプリはFacebook本体、WhatsApp、Gmail、YouTube、Google検索、Googleマップと極めて数が少ない。Messengerもついにこのエリートクラブに仲間入りしたわけだ。

最新のモバイル・デバイスの共有機能とスピーディーなテキストメッセージのやりとりを結合させるというMessengerの基本戦略は成功した。しかもFacebookはMessengerの機能を野心的に拡大中だ。VOIP通話、ビデオ会議、スタンプ、ボイスメール、ピア・ツー・ピア支払、ロケーション、サードパーティー向けアプリのためのプラットフォーム化等々、Messengerはユーザーのあらゆるコミュニケーションのニーズに一手に応えようとしている。 そしてそのユーザーはすでに6億人に上っている。

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シンプルなメッセージ・サービスに特化したWhatsAppを傘下に持つFacebookはメッセージ・アプリの世界の難攻不落の要塞を建設することに成功している。Snapchat とYik Yakもいくらかおこぼれにあずかれるかもしれないが、Facebookはすでにコミュニケーション・ユーティリティーとして次の展開を狙っている。

Facebookは現在、目立たないやり方でMessengerを本体にさらに緊密に組み込もうとしている。

たとえばグラフ検索で「xxの曲を聞いたことがある友達は?」のような検索をすると、そのユーザーのプロファイルではなくMessengerのリンクが表示される。友達の誕生日にFacebookは誕生祝いのメッセージを、ニュースフィードではなく、メッセージで送信するよう促すことがある。

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先週、FacebookはMessengerの地図とロケーション機能をリニューアルした。これはGPS機能を利用した新たなロケーション機能導入のための準備だ。これまで、待ち合わせ場所の確認はFacebppl本体アプリのNearby Friendsが受け持っていた。

Facebookがライバルのチャットサービスに対して優位なのは、FacebookはMessengerで金を儲ける必要がないという点だ。広告を溢れさせたり有料のスタンプを売り込んだりする必要がない。Messengerの役割はユーザーをFacebookコミュニティーにしっかりと繋ぎ止めることで十分果たされており、その後はFacebookのモバイル広告が十分すぎるほどの売上をもたらす

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しかしここまでの道のりは必ずしも平坦ではなかった。Facebookはユーザーにメッセージを使うなら本体と別に新たなアプリをダウンロードするよう告げねばならず、少なからぬユーザーが反発した。しかしそれも無事に収まって新アプリが普及するに連れ、チャット・サービスに日が当たるようになり、エンゲージメントは着実に上昇し始めた。Facebook本体という巨艦から独立したことでMessengerは身軽になり、新機能の実装も素早くなった。

PayPalの元プレジデント、David Marcusをトップに、プロダクトのエキスパート、Stan Chudnovskyがナンバー2を務めるMessengerチームがこの半年で実施した主なアップデートは次のようなものだ。

一方で、メッセージ分野を制することができる資金と技術力をもったライバル、Googleはここ数年、彼らが言うところのムーンショット(野心的)プロジェクトに気を取られて失敗を重ねてきた。Googleハングアウトはビデオチャットで先行したにもかかわらず、それ以上に伸びなかったし、WhatsAppの買収にも失敗した。成功していれば二頭立てレースになったはずだが、現状はFacebookの一人勝ちという結果になっている。

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Facebookはメッセージ・アプリが今後モバイルでもっとも長い時間使われるようになると考えている。中国のWeChatはチャットをすべてのモバイル活動のポータルとするという戦略のパイオニアだが、Facebookも必要に応じてあらゆる機能をMessengerに移植できる態勢を整えている。

長年、シリコンバレーでは「何がFacebookキラーになるか?」という議論が続いてきた。結局、Facebookキラーを作り出したのはFacebook自身だったようだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

IAB調査:モバイルデバイスで閲覧するビデオは長時間化の傾向あり?!

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Interactive Advertising Bureauにより、世界のさまざまな国を対象とした、モバイル端末によるビデオ閲覧状況についての調査が行われた。

「あたりまえ」と言えるのかもしれないが、1年前に比べてより多くの人がモバイル端末を利用してビデオを楽しむようになってきているようだ。アメリカでの回答者の50%、カナダ、ニュージーランド、および南アフリカにおける回答者の42%が、モバイル端末でビデオを閲覧する頻度が高まっていると回答している。

そうしたビデオ閲覧者も、ごく短い30秒程度のクリップを見ているわけではないようだ。回答者の36%が、5分以上の長さをもつビデオを毎日閲覧していると回答しているのだ(36%という率は半数にも見たない数字ではある。しかし「多くの人」と表現してよい割合であるように思える)。

とくに中国においては映画やテレビドラマなどもスマートフォンで閲覧する傾向が高まっているのだそうだ。なお、中国では37%、シンガポールでは35%のひとが、スマートフォンのビデオ閲覧が増えるに従って、以前よりテレビを見る時間が減ったと回答している。

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閲覧するビデオを見つけるきっかけとしては、62%がYouTubeをあげていて、33%がソーシャルメディアからの情報であると回答している。情報を検索していてビデオを見始めたという人は20%で、広告経由で見ることになったと回答している人も14%存在している。

IAB Mobile Marketing Center of ExcellenceのシニアディレクターであるJoe Laszloが調査についてのプレスリリースで述べたところによると、「コンテクストに合致した適度な広告については、多くの視聴者がその存在を受け入れる傾向であるようです」とのことだ。

この調査は24ヵ国にて、それぞれ200名を対象として行われたものだ。より詳細な内容についてはこちらで見ることができるようになっている。

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(翻訳:Maeda, H

「本物の定額制音楽サービスを見せる」 LINE MUSIC仕掛け人、狙いを語る

LINE MUSICの社長であり、LINEの取締役CSMO最高戦略・マーケティング責任者舛田淳氏(左)と、ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長(右)

いよいよ「LINE MUSIC」が始まる。5月28日にティザーサイトを開設し、近日中にサービスを開始することを公表した。音楽配信を主体とする事業会社、LINE MUSICに共同出資するエイベックス・デジタル、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ユニバーサルミュージックの音楽レーベル3社と共同でビジネスを開始する。

LINE MUSICのティザーサイト

LINE MUSICのティザーサイト

それにしても、スタートまでに紆余曲折があったものである。LINEは幾度も音楽配信への参入宣言をしているが、具体的な動きをなかなか出せずにいた。そもそも定額制音楽サービスは、日本では芽が出ていない。海外大手「Spotify」も近日中の日本参入を公表しつつも具体的な動きが見えない状況にある。きょう未明には、Appleが月額9.99ドルの「Apple Music」を世界100カ国で6月30日に開始すると発表。日本でもまもなく登場することが予想される。

今回LINEはようやくサービス開始にこぎつけたわけだが、スタートが難航した理由はなんだったのか。そしてLINE MUSICは、どうやって日本に定額制音楽配信を根付かせようとしているのか。LINE MUSICの社長であり、LINEの取締役 CSMO 最高戦略・マーケティング責任者である舛田淳氏と、音楽レーベル側の代表として、ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長に話を聞いた。

残念ながら、この記事が公開される段階では、LINE MUSICのサービスは開始されていないため、料金体系を含めたサービスの詳細は明かすことができない。そのため、ビジネス状況や戦略を中心に説明していただいた。サービスの詳細を含めた戦略と展開については、別途近日中にインタビューの第二弾を公開する予定である。

LINE MUSICの社長であり、LINEの取締役CSMO最高戦略・マーケティング責任者舛田淳氏(左)と、ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長(右)

LINE MUSICの社長であり、LINEの取締役CSMO最高戦略・マーケティング責任者舛田淳氏(左)と、ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長(右)

4度目の正直だったLINE MUSIC

――LINEは音楽事業への参入にかなりこだわってきたように見えます。LINE MUSICはなかなかスタートできなかった。これまでの経緯を教えてください。

舛田氏(以下敬称略):LINEがまだ生まれる前のネイバージャパンの時代……2010年頃に検索サービスを日本で立ち上げた時代から、「検索と音楽」であったり「まとめと音楽」であったりというものが何かないかと考え、「NAVER MUSIC」という企画を立てました。「まとめ」というキュレーションメディアにストリーミングをくっつけたり、検索にストリーミングメディアをくっつけたりというモデルをしたかったんです。

その時、企画書をもって色んな音楽メーカー・レーベルを回らせていただいたのですが、一言でいえば「ダメ」でした。市場の環境がまったく整っていなかった上に、私どもも「検索サービス」という意味ではパワーがまったく足りませんでした。「NAVERまとめ」も成長の過程にあった状態でしたし、この企画自身はなくなりました

さらにそれ以降、本日に至るまで3回くらい、過去に「LINEは音楽をやります」と宣言してきました。第一弾は2012年のカンファレンスにて、話をさせていただいて、その時は大手音楽配信サービスとのパートナーシップを検討していました。しかしこれも、私たちが思い描くサービスができそうになかった。サービスとして十分ではないものは出さない、という判断をして、企画をまた白紙にしました。

次は私どもが単独で、2013年に「LINE MUSIC」を立ち上げて、そこに対して、各メーカー・レーベルさんに参画いただく、という形で準備を進めました。我々は「LINE MUSIC 1.0」と呼んでいるんですが、これは予定日の1週間前になって、サービスのローンチを止めました。ちょうど1年前でしたが、アプリマーケットの審査も通しましたし、記者会見の場所すら押さえていたんです(笑)。

でも「1.0」はアプリごとつぶし、ゼロにしました。そして、それを経て出来上がったのが、今のLINE MUSICです。

「腹をくくって一緒にやろう」

――ローンチ直前まで進んでいた「1.0」を捨てた理由は? どんなきっかけがあったのですか?

linemusic04舛田:今、思い返せば、実は私も迷いながら、GOを出そうとしていたんです。市場環境が整わないなら、まず出してみて、そこから変えていこうと。

日本において「ユーザーの音楽体験を変える」「海外と同じように、ダウンロードからストリーミングに変えていく」には、いくつかの条件があると思っているんです。それは「主要メーカーが参加しているか」や「豊富な楽曲数」であるとか「新譜があるか」であるとか、「手に入りやすい価格帯か」「オンデマンドであるか」「ユーザーにデリバリーする仕組みとして特徴があるか」、あとは「アーティストから見てプロモーション力があるか」といったところでしょうか。こういったところが、「LINE MUSIC 1.0」は、高いレベルになかった。

ローンチ前の段階でも、楽曲をご提供いただくことについて、最後の最後の段階で返事をいただけていなかったレーベルさんもいたんです。ソニー・ミュージックさんなんですが(笑)「前向きなようだが、まだGOは出ていない」という話だったので、ある種の直談判ということで、ソニー・ミュージックさんを訪ねていったんです。

日本の音楽市場の未来、問題点、アーティストのモノ作りへの想い、LINEとしての構想など、お互いに素直に話をさせていただいたのですが、その時に、ソニー・ミュージックの村松(俊亮社長)さんに思ってもみない言葉を言われました。「今よりも、もっと腹くくって一緒にやらないか?」と。

——渡辺さんにおうかがいします。ソニー・ミュージックはなぜ「腹をくくって一緒にやろう」とLINE側に言ったのですか?

渡辺:レコード会社は、音源を作り、ユーザーに届けるのが仕事です。当時も今も大きいのは「パッケージメディア」。特に日本はパッケージの売り上げが多いのが特徴です。ですからビジネスプランもそこが中心になります。

その一方で現在は、映画業界のように「ウィンドウ」的にサブスクリプションを捉えていかなくてはいけない時代です。ファースト・ウィンドウはパッケージとダウンロードで、どちらかといえばアーティストのファンに向けて売っていく。その後にウィンドウをつけてサブスクリプションに持っていく……というプランが、当時の構想でした。

ただ僕たちが重要だと思ったことがあります。アーティストのファンはもちろん大切なんですが、やはり「音楽ファン」に広くアプローチして、そこからアーティストのファンになっていただきたい。そういうやり方はウィンドウ戦略とはまた違うものです。

そういう発想でいくと、やっぱり一番一緒にやりたいのはLINEだよね、と社内で話していたのですが、そこにLINEからサブスクリプション型の提案がきていました。ならば、僕たち側からも逆提案しよう、という形になったんです。

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舛田:LINE MUSICを立ち上げる前に、ユーザーアンケートをとりました。「音楽は好きですか?」「音楽は聴きますか?」という問いに対しては、9割以上の方々が「聴きます」「好きです」と答えるんです。音楽はいつの時代も皆が好きで、魅力的なコンテンツなんです。

ただ、今の市場環境としては、パッケージ販売が落ちてきています。ある種、世界の中で希有な存在とされてきた日本のパッケージ市場ですら、ダウントレンドに入ってきた。それを埋めるはずのダウンロードも世界ではダウントレンドに入ったと言われています。

音楽は好きだが、そこにお金を払う、という状況から離れ始めた、というのが今の状況です。

日本のユーザーの多くは「本物のサブスクリプション・サービス」を知らない

――LINE MUSIC 1.0は、音楽レーベルとLINEの双方で「これじゃない」という思いがあったようですが、具体的に何が足りなかったんでしょうか。

舛田:今の時点に至るまで、日本のユーザーの多くは「本物のサブスクリプション・サービス」を知らないんですよ。カタログが揃っている、と言える状態には一回もなったことがない。なおかつ、手に入りやすい価格でもなかった。いままでもいくつか出てはいますが、多くのユーザーを熱狂させるものには、なれていなかった。

LINEが「1.0」として出そうとしていたものも、「業界標準価格の1メニューだけで、メジャーレーベルも参加せず、カタログも不十分」という形でした。その当時の判断として、これでは熱狂させる「本物のサブスクリプション」にはなっていない、という判断をしました。

逆にいえば「カタログが揃っている」「手に入りやすい価格である」のが、これからスタートするLINE MUSICである、と言えます。

フリーミアムモデルは音楽市場の成長につながらない

――海外のストリーミングサービスは、無料の機能制限版+広告の無料会員と、月額10ドル程度の有料会員の2階建ての「フリーミアムモデル」が主流です。LINE MUSICはどのような料金体系なのでしょうか?

舛田:まだ詳細はお伝えできませんが、日本のLINE MUSICに関していえば、一般的なフリーミアムモデルを採用しません。海外でフリーミアムのストリーミングはここ数年伸びていますが、今年に入り「本当に大丈夫?」という声もアーティスト側から聞こえてきています。市場を本当に成長させてくれるの? という疑問が出てきていますね。テイラー・スウィフトがフリーミアムサービスには楽曲を提供しないと発言したのは印象的でしたね。今後世界でのフリーミアムモデルの環境変化には、注目しています。

――フリーミアムモデルは無料で音楽を聴く人が増えすぎて消耗戦に陥っている、との批判があります。音楽業界側からは無料型ではなく「有料型」で、という意見が強いのですが、LINE MUSICもそれに倣うということでしょうか。

舛田:日本のユーザーは素晴らしい。これまでも音楽に価値を認め、お金をお支払いいただいているわけです。グローバルでフリーミアムが流行っているからといってそれを闇雲に日本のサービスに持ち込むべきでない、という部分は、コンテンツ側からの要請ではなく、私自身も「そうすべきだ」と思っているからです。コンテンツ、国、市場によって、それぞれ最適なモデルにしていくべきです。

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コミュニケーションに音楽を取り込む

舛田:昔はレコード店で楽曲を買いました。情報はテレビ・ラジオなどのマスメディアで仕入れる。それがデジタル化し、次は「検索」や「ポータル」で知るようになりました。今はさらに時代が変わり、「ソーシャルメディア」で知るようになりました。ソーシャルメディア・サービスが人のコンテンツとの出会いを演出するメディアになったんです。

しかし一方、一般的なSNSは密接なクローズドなコミュニケーションの中には入り切れていません。我々が目指すところであり、求められていることは、LINEが担っているリアルな人間関係の中のリアルなコミュニケーションの中に音楽の話題を入れていくことです。

学生時代は、とにかくたくさん、友人と音楽のことを話していたはずです。でも今はそんなにしなくなっている。「好きなのに」「聴くのに」です。

そこに矛盾が生まれ始めている。ユーザーにとっても、提供するプラットフォーム側にとっても、音楽を提供する側にとっても、です。今回は、我々のコミュニケーションプラットフォーム上に音楽コンテンツを置くことで、コミュニケーションの中でもう一回音楽を採り上げていただく環境を作る、ということが、一つの大きな方向性です。

「着うた」以上の巨大市場を期待するレコード会社

――音楽レーベルとしては、LINE MUSICでどのくらいのユーザー数を獲得したいと考えていますか?

linemusic02渡辺:着うたの時もユニークなユーザーが、最盛期には約2000万人くらいいました。LINE MUSICをはじめとしたストリーミング・ミュージック全体で、2000万人くらいのユーザーに楽しんでもらえるようになれば……と思います。非常に大きなデジタルでの音楽マーケットができるのではないか、と期待しています。

2000万人に楽しんでもらえるような市場になれば、アーティストへの分配も、着うた時代以上に可能になるでしょう。特に日本においては、フリーミアムによる広告モデルでのレベニューシェアでは、そうした規模のビジネスは非常に難しいと思います。

日本で定額音楽配信サービスはブレイクするか?

定額制音楽配信の多くは、音楽をPCやスマートフォンなどにダウンロードせず、ストリーミング形式で再生する。すでに海外では、CDやダウンロードをしのぐ勢いである。アメリカ・レコード協会(RIAA)の発表によれば、2014年のアメリカの音楽事業では、ストリーミング・ミュージックの売り上げは18億7000万ドル。ついに、CDの売り上げ(18億5000万ドル)を越えてきた。

しかし、日本ではどうも伸びない。日本でも「KKBOX」や「レコチョク Best」、「dヒッツ」などの先行サービスはあるものの、ブレイクするには至っていない。海外の大物を含め、「本命」と呼べるサービスが不在であるから……ともいえる。

5月27日には、エイベックスとサイバーエージェントが共同出資する「AWA」がスタートして話題になったが、メッセージングの分野で圧倒的なシェアを持つLINEが参入するとなれば、注目されるのも当然といえる。

LINEとしてはもちろん、定額制音楽配信の中でトップを狙う。競合となるサービスも今年中に続々スタートするとみられており、舛田氏は「2015年というのが、日本の音楽市場にとってターニングポイントになるのではないか。いや、そう”したい”」と意気込みを語る。

では、具体的にどのようなサービスになるのか? それはどういう狙いで組み立てられたものなのか? そうした点は、サービスがスタートした段階で改めて解説していくこととしたい。