会員制の動物病院Small Doorがニューヨーク7番街に正式オープン

会員制の動物病院Small Doorは米国時間1月22日、米国ニューヨーク7番街に正式オープンした。Small Doorは昨年11月から、この場所にソフトローンチしていた。

同社は2019年の4月に350万ドルのシード資金を調達して注目を浴びた。そのラウンドをリードしたのはLerer Hippeau Venturesで、Primary Venture PartnersBrand Foundry Venturesが参加した。また、Flatiron Healthの創業者であるNat Turner(ナット・ターナー)氏とZach Weinberg(ザック・ワインバーグ)氏、Warby Parkerの共同創業者であるDave Gilboa(デイブ・ギルボア)氏とNeil Blumenthal(ニール・ブルメンタール)氏、そしてSweetgreenの創業者であるJon Neman(
ジョン・ネマン)氏、Nic Jammet(ニック・ジャメット)氏およびNat Ru(ナット・ルー)氏らも参加した。

同社は、動物病院に会員制という新しいやり方を採り入れている。その点は、人間のプライマリケアサービスOne Medicalに似ている。

今の動物病院の問題は、獣医の過重労働と低収入だ。そして患者の待ち時間は長く、診療時間は短く、獣医もプロとしての尊厳ある生活を送れない。Small Doorは、会員制の導入によって獣医がペットの患者を診る時間が増え、患者と飼い主の待ち時間が大幅に減ると考えている。

同社は健康的な動物病院にも配慮している。たとえば待合室は広くて、小さな凹みが随所にあり、待ち時間に動物が他の動物の脅威を感じないようになっている。

会費は、サービスの内容によって段階的だ。たとえば月額12ドルの犬の基本メニューでは、当日または翌日診療と専門医への優先アクセス、そして24時間年中無休の仮想ケアが提供される。月額75ドルの特別メニューでは、年2回の健診、重要な予防接種、年1回の血液検査、フィラリアなどの寄生虫の予防と検査と駆除が含まれる。さらに月額89ドルの最高メニューでは、1カ月に一度のノミ、マダニ、フィラリアの予防処置がある。猫には、月額8ドルから74ドルで上と同様のメニューがある。

Small Doorは企業の形態として公益社団法人を選び、獣医とペットの両方が株主だ。今、獣医師の自殺が問題になっている。負債の増大や同情疲労、重労働、飼い主のわがままなどがその原因だ。

創業者のJosh Guttman(ジョシュ・ガットマン)氏によると、ソフトローンチのときには、顧客の55%がミレニアル世代で、70%は女性だったとのこと。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

見るだけで子供の弱視が治る特殊なディスプレイ

弱視は多くの人を苦しめている視覚障がいだが、早期に発見できれば完全に治すことができる。ただし、治療のために何か月も眼帯を着けなければならない。しかしNovaSightは「弊社製のディスプレイの前で1日に1時間過ごすだけで治る」と主張する。

弱視は、2つの目の動きがそろわないことによって起きる。通常は両目の網膜にある物の細部を見分ける凹部分が、今見ている対象に焦点を合わせる。しかし弱視の場合は、片方の目の凹部が対象に正しく焦点を合わせられず、その結果、両目が正しく収束しないので視覚障がいになる。治療を怠ると、次第に視力を失うこともある。

この障がいは子供のとき早期に見つけることができ、正しく機能している目をほぼ終日眼帯で覆うという簡単な方法で治すことができる。そうすると悪いほうの目が正しく見ることを強制され、次第に治るのだ。ただし言うまでもなく、子供にとって眼帯は不快だし面倒だ。しかも片目だと、校庭で十分に遊べないなど不自由なことも多い。

これを着けるとクールだ!

NovaSightのCureSightを使うと、眼帯なしでこの治療を進められる。その代わり、子供が見ているコンテンツの一部をぼかすことによって正しい方の目を休ませ、その間に問題がある方の目に頑張らせる。

このような二重視像方式は、昔の遊園地などによくあった立体映画でも使われていた。そのときは、片方の像は青のフィルター、もう片方の像を赤のフィルターを通して、右の目と左の目が本物の立体物を見た場合のように、互いにわずかに視差のある像を見ていた。今回の二重視像は、正常な像とぼかした像の2つを使う。

CureSightの場合はまず、円の画像を用いて二重の視像を作る。そのスクリーンはTobiiのアイトラッキング用センサーを使って、ユーザーの目線から円があるべき位置を知る。私自身も試してみたが、円の像は目が見ている方向にいつも正しくある。そうすると、ぼけてない正しい方の画像を悪い方の目がみて円の正しい位置を知ろうとする。

この方法がいいのは、特別の処置や検査がいらないことだ。NovaSightによると、円の像だけでなく、子供はYouTubeでもムービーでも、何でもこのスクリーンで見ているうちに、悪い方の目が矯正されてくる。しかも自宅で好きな時間にできる。

グラフ提供: NovaSight

同社が実施した小規模な治験によると、12週間で十分な改善効果が得られた。「今後は完治の結果を得ることと確立しているほかの処置方法との違いの検証に力を入れたい」と同社は語る。

でも3Dディスプレイの技術がお粗末な映画でなくて視覚障がいの治療に使われるのは素敵なことだ。NovaSightは、弱視の治療だけでなく目の検査や診断のための製品も、同じく3Dディスプレイの技術を使って開発している。詳しくは同社のウェブサイトを参照してほしい。

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Google社内にも診療所があるプライマリーケア医療のOne Medicalが上場を申請

サンフランシスコでテクノロジーを活用したコンシエルジュサービスによりプライマリーケアを提供するOne Medicalは米国時間1月3日、証券取引委員会(Securities and Exchange Commission、SEC)にIPOを申請した。

内科医のTom Lee(トム・リー)氏が2007年に創業した同社は、現在評価額が10億ドルあまりに達している。リー氏は2017年に同社を去り、元UnitedHealthグループの役員Amir Rubin(アミー・ルービン)氏に後を託した。

同社の診療所は米国の9つの主要都市に全部で72カ所あり、2020年には3カ所の新設を予定している。これまで5億ドルを超えるベンチャー資金を調達しており、主な投資家は同社の株の4分の1以上を保有するCarlyle Groupのほか、AlphabetのGVやJ.P. Morganなどが名を連ねる。

Googleは社内にOne Medicalの診療所があり、SECへの提出文書によると同社売上の約10%を占める。IPO申請文書にはさらに、同社が1Life Healthcare 、ティッカー名「ONEM」として正式に法人化され、1億ドルの調達を計画していることが言及されている。

おそらくこの資金は、同社のテクノロジーの改良と市場の拡大に充てられると考えられる。One Medicalに詳細を問い合わせたところ、この声明を読むよう指示された。

そしてその声明によると、One MedicalはNasdaq Global Select Marketにティッカーシンボル「ONEM」で上場を申請している。より詳しい情報が得られ次第、この記事をアップデートする予定だ。

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デンタルケア用品のBurstが専門家たちと協力しハイテクフロスを開発

とってもかわいい歯ブラシを販売しているサブスクリプションのデンタルケアサービスを提供するBurst(バースト)が、毎月届くキットに、とても使いやすいデンタルフロスを追加した。

ロサンゼルス生まれの歯の衛生専門サイトは、成長資金の投資企業Volition Capitalから2000万ドル(約22億円)を獲得し、Quip(キップ)などの競合他社とは違うやり方で消費者に接近しようとしている。

Burstは歯科衛生士や歯科医たちのネットワークと協力して流通チャネルを開拓し、新製品の販売や新製品開発に対する意見も聞いている。現在、2万名以上ものデンタルヘルスのプロフェッショナルがBurstの販売チャネルとして協力している。Burstは彼らと利益を共有し、これまでに約350万ドル(約3億8000万円)を配布した。

今回のデンタルフロスも、エキスパートのネットワークとのパートナーシップがあったからこそ開発できたものだと言える。

BurstのCOOであるBrittany Stewart(ブリタニー・スチュワート)氏は「たしかに、市場に安くて良い電動歯ブラシがないという状況はあるが、Burstが成功したのは、歯科医療や歯科技術のプロたちとの非常に強力なパートナーシップのおかげだ。製品の開発からテスト、ネットワークでの共有など、すべての段階でBurstのアンバサダーたちが手伝ってくれる。歯のプロたちが自主的に草の根運動を熱心に続けてくれていることが誇りだ。彼らは古くさい業界の現代化に、我々と同じくらい情熱を傾けている」と語る。

新製品であるミントとユーカリ味の木炭でコーティングしたデンタルフロスは12ドル99セント(約1400円)。交換用のフロスは毎月6ドル99セント(約770円)で郵便受けに届く。

Volition Capitalの共同創業者でマネージングパートナーのLarry Cheng(ラリー・チェン)氏は「Burstの創業者たちに初めて会ったとき、彼らが根本的な変化が期待されている業界に変革を起こす特殊な能力を持っていることがすぐにわかった。彼らのビジョンにも感銘を受けた。さらなる成長の機会を探りながら、製品開発の能力も高く、アンバサダーのネットワークを持つ彼らの強みを活かし、成長路線にすでに乗っていた彼らを支援したいと考えている」と述べている。

画像クレジット: Burst

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ゲノム配列を利用して非侵襲的ながん検診を実現するLucenceが20億円超を調達

非侵襲的な癌検診技術を開発しているゲノム医学のスタートアップLucence Diagnosticsが、世界最大の民間総合ヘルスケアグループの一つであるIHH HealthcareがリードするシリーズAのラウンドで2000万ドル(約22億円)を調達した。これにはSGInnovateとこれまでの投資家Heliconia Capital(Temasek Holdingsの子会社)、Lim Kaling、およびKoh Boon Hweeが参加した。

この資金はLucenceの研究施設の規模拡大と人員増員および、アジアと北米地区で同社製品の商用化を進め、より多くの患者が利用できるようにすることに充当される。

資金はまた、2つの有望な治験をサポートする。ひとつはこの技術の、末期がん患者への有効な感応性にフォーカスし、他は肺がんや大腸がん、乳がん、すい臓がんなどいくつかのタイプのがんの早期発見への有効性の評価だ。Lucenceは現在、早期発見の評価のために10万名を対象とする調査を設計している。最初の患者の起用を来年半ばと予定しており、米国とアジアでローンチする。

この前のシード資金と合わせてLucenceの総調達額は2920万ドルになる。

Lucenceのテストは現在、東南アジアと香港の医師が利用しているが、今後は北米と東アジアにも広げる計画だ。シンガポールの研究所はすでにCLIAとCAPの認定を得ているので、米国の医師と患者もそのテストを利用できる。現在ベイエリアに建設中のラボが完成すれば、患者が結果を得るまでの時間も短くなる。

シンガポールに本社があり、サンフランシスコと香港と中国の蘇州にオフィスのあるLucenceは、CEOで医師のMin-Han Tan(ミン-ハン・タン)氏が創業した。彼は腫瘍専門医で、2016年にシンガポールの科学技術研究庁からスピンアウトした。2年後にLiquidHALLMARKをローンチし、それは同社によると「世界初で唯一の血液の遺伝子配列テストにより、1回のテストでがん関連の遺伝子の突然変異と癌を起こすウィルスの両方を検出する」。それは、14種のがんの兆候を検査できた。同社によるとLiquidHALLMARKはこれまで、アジアの1000名の患者に利用された。

ゲノム配列を利用するがん検診を開発したスタートアップとして、ほかにSanomics、Prenetics、Guardant、Grailなどがいる。Lucenceの差別化要因は、その特許技術によるアンプリコンシーケンスで、ゲノムの特定部分の変異を調べて癌に結びつく突然変異などを見つけることにある。同社はそのテストを「スイス製アーミーナイフ」と呼んでいる。それは、がんの検診と診断と処置と選別と監視に利用できるからだ。

IHH HealthcareのCEOに任命されているドクターの、Kelvin Loh(ケビン・ロー)氏は声明で「液体生検は、処置の精密な選択とより安価なケアによって癌の処置を画期的に改善した。Lucenceへの投資は、IHHの患者にこの先進的な技術へのより良いアクセスを提供するだろう」と述べている。

画像クレジット: Enterprise Singapore

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わずか数滴の母乳で健康診断が可能な検査キット「MyMilk Labs」

赤ちゃんを母乳で育てることは誰にでもできると言われるが、でもそれは実際には不安やわからないことの多い体験だ。特に生後の数週間が難しい。赤ちゃんの栄養は足りてるか、母乳の量は十分かなどと親の悩みは尽きない。そこでMyMilk Labsが開発したセンサー器具「Mylee」は、わずか数滴の母乳をスキャンしてその組成に関する情報を同社のモバイルアプリに渡す。本日米国時間10月2日にDisrupt Battlefieldでプレゼンした同社は、Startup Alleyで選ばれた2つのワイルドカード企業のひとつだ。

DisruptでローンチしたMyleeは、予約価格が249ドル、小売定価は349ドルだ。イスラエルに本社を置くMyMilk Labsは、2014年にRavid Schecter(ラヴィド・シェクター)氏とSharon Haramati(シャロン・ハラマーティ)氏の両氏が創業した。2人はワイツマン科学研究所(Weizmann Institute of Science)で神経免疫学と神経生物学の博士課程にいたときに出会った。

Mylee device

Battlefieldのプレゼンテーションでシェクター氏は、このデバイスは母親や授乳相談員などに母乳に関する客観的な情報を提供することが目的だと語った。

母乳は生後数日から数週間の間に初乳から成乳へと変わっていく。Myleeは乳の電気化学的な特性をスキャンしてそれらを同社の研究結果と対照し、変化の過程のどのあたりかを計算する。そしてその分析結果に応じて母親には、乳の実際の日齢や週齢と対比して変化が遅いか早いかを告げる。

デバイスの最初のバージョンは目下パイロット中のベータで、テストに参加した授乳相談員たちがこれまで500名の母親からの乳の標本をスキャンした。

MyMilk Labsにはすでに消費者向けの母乳検査キットがあり、母親は自宅で乳の少量の標本を採取してMyMilk Labsに送って分析してもらう。結果はアプリの画面のパネルに表示され、栄養パネルでは乳のビタミンB6、B12、Aのレベル、カロリー、脂肪のパーセンテージなどが表示される。また、母親の食生活のアドバイスもある。もうひとつのパネルでは、母乳保育で一番の悩みである乳房痛の対策が表示される。細菌などによる感染症が疑われたら菌種などにより最適の抗生剤が推奨される。

母乳で育児をしている母親のほとんどにとって検査キットなんか要らないと主張する医師もいるが、母乳による子育てに関しては母親の知識不足の不安もあるため、すでに複数の企業が母乳検査キットを発売している。それらは、Lactation Labs、Everly Well、Happy Vitalsなどだ。ハラマーティ氏はDisrupt Battlefieldのステージで、将来は検査の一部をMylee自身ができるようにしたいと述べた。

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Facebook創業者夫妻の慈善団体が人体細胞地図プロジェクトに約73億円寄付

人間の体の細胞の地図を作る、現在進行形のグローバルなプロジェクトが、Chan-Zuckerberg Initiative(CZI、チャン・ザッカーバーグ・イニシアティブ)から6800万ドル(約73億円)を寄贈された。文字どおり人間の細胞の地図を意味するHuman Cell Atlasプロジェクト(HCA)を構成する数ダースもの個別プロジェクトを、このお金が支えるだろう。

Human Cell Atlasは複数のプロジェクトの集まりで、それぞれが健康な人間の細胞を詳細かつ実用性のあるレベルで記録しようとしている。CZIはこれまでも数年間、いろんなやり方で支援してきた。それは、同団体の基礎研究における継続的慈善事業の一環だ。

実はCZIはかなり前に、期間3年のプロジェクトを38件、期間1年のプロジェクトを85件、今回と同様に支援することを発表している。しかし審査と承認のプロセスが長引いたため助成金の交付は遅れた。科学者や研究機関が、何をしてもいい白紙小切手のようなお金をもらうことはまれだ。

しかし今回の6800万ドルは、CZIのHCAとの関わりの範囲をより明確化している。支援が決まったプロジェクトの一覧がここにあり、関わっている研究者と研究機関も明記されている。

仕事の結果とそのために作られたツールは、ほかの研究者たちが無料で利用できる。CZIのプライオリティには、オープンソースやデータセットも含まれている。

CZIの科学部のトップCori Bargmann氏はプレスリリースで「Human Cell Atlasの最初の草案を目指す進歩を加速する学際的なコラボレーションをさらに支援し構築していくことに、喜びを感じている」とコメントしている。とても大きな仕事だから、数年後にその進捗をチェックしてみたい。

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脳でコントロールするロボットやコンピューターが手術不要で実現する

カーネギーメロン大学とミネソタ大学の共同研究グループが、ブレインコンピュータインタフェース(Brain-Computer Interface、BCI、脳とコンピューターのインタフェイス)およびロボット工学における大きな突破口を開いた。彼らが開発したのは、人間が自分の心でロボットアームをコントロールする方法だ。手術のような侵襲的な手続きは要らない。

この実験のマインドコントロールロボットは、高度な運動制御能力も示した。画面の上で動くコンピューターのカーソルを、追うことができたのだ。これは言うまでもなくロボット工学の分野における大きな前進であり、個別ケースではなく一般的に、コンピューターを脳で制御できる可能性を実証している。それにはありとあらゆる用途がありえるが、麻痺などで運動能力に制約のある人でも、コンピューター化されたデバイスを操作できるようになるだろう。

これまで成功した高精度のBCI技術は、脳の信号をピックアップするインプラントを必要とした。インプラントを埋め込むのは危険であるだけでなく、高価であり、人間への長期的な影響も解明されていない。そのため広く普及することはなく、少数の人たちだけが恩恵に与っていた。

研究グループが開発した画期的な技術では、体内に装着するのではなく皮膚に貼ったセンサーからの低品質な信号を利用する。彼らは皮膚感覚と機械学習を結びつけて、ユーザーからの信号を捉える。その信号の起源は脳の内奥だが、捉えた信号には非侵襲的なテクニックにありがちなノイズがない。

この画期的な発見は、医療現場での実用化に向けてそう遠くないかもしれない。チームは、近く臨床試験を始めたい意向だ。

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腸内細菌の正常化で病気を治すWhole Biomeが2型糖尿病向け製品をリリース

マイクロバイオーム(体内微生物相)の応用企業Whole Biomeが、シリーズBで3500万ドル(約37億8000万円)を調達した。投資家はSequoia、Khosla、True Ventures、Mayo Foundation、AME Venturesなどなど、大物揃いだ。資金調達の目的は、微生物の力で人間を健康にし、病気を治すことだ。

数年前から医学は、マクロバイオティックスとしても知られるこれらの微生物によって確保促進される腸の健康の重要性に着目してきた。そして今ではスタートアップたちがベンチャー資金を使って、新しいアイデアを次々と生み出している。

Whole Biomeの協同ファウンダーでCEOのColleen Cutcliffe氏はこう語る。「今は人類の歴史の上で、今しかないと言えるほどの希少かつ貴重な時期だ。そこではマイクロバイオームが最先端のテクノロジーおよび生物情報科学(バイオインフォマティクス)と合体して、まったく新しい分野の革新的な健康産業が生まれようとしている」。

DNA配列企業Pacific BiosciencesにいたCutliffeが、パートナーのJim BullardやJohn Eidと共に作ったプラットホームは、マイクロバイオームのさまざまな母集団の情報を計算によって求め、それらの遺伝子解析により、患者のフローラの欠陥と健康問題の関連を見つけ出そうとする。

今回の新たな資金の用途は、2型糖尿病を管理するプロダクトを立ち上げることだ。

市販されている糖尿病の処方薬の多くが、胃の不調やめまい、発疹、アルコールの消化不能など、副作用を伴う。しかしWhole Biomeによると、同社の製品には副作用がまったくない。

すでに本格的な治験を済ませ、2020年に発売予定のその製品は、特殊なプロバイオティクスを患者の腸にリリースし、血糖値スパイク(食後過血糖)を減少させる。

SequoiaのパートナーRoelof Bothaは語る。「Whole Biomeは新しい病気治療目的のマイクロバイオーム投与法を作り出しつつある。それによって、今日の人びとが直面している多くの重大な健康問題を改善できるだろう。彼らが作り出した学際的で統合的な方式による研究開発および商用化の手法により、複雑なマイクロバイオーム的生物学が開錠され、臨床効果と他に類のない安全性を併有する製品が作られている」。

Whole Biomeのこれまでの調達総額は5700万ドル(約61億5600万円)である。

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スナックバーの破壊的創造、完全食を目指すSoylentが米国1兆億円規模の市場に参入

完全食を目指すSoylent(ソイレント)は、これまでの液状製品(飲み物)を捨てて、スナックバー的なパッケージ商品を発売する。

その熱量100カロリーのバーは植物性たんぱく質5グラムと36種の栄養素、そして消化を助けるプロバイオティクス(乳酸菌など)を含んでいる。チョコレートブラウニー、シトラスベリー、塩キャラメルの三種類がある。

それは同社の今年2つめの新製品だ。1月には食事の代わりになるシェーク製品としてSoylent Bridgeの1食バージョンを出した。スナックサイズのバーには、シェークや飲み物より大きな市場があるだろう。Research and Marketsのデータによると、スナックバーの2023年の売上は米国だけでも88億ドル(約1兆円)だそうだ。

CEOのBrian Crowley氏はこう言う。「これでかなり前進したと思うよ。持続可能な栄養をもっといいかたちで人々に届けられるんだから、大きな一歩だし、すごくうれしい。バー食の世界の破壊的創造だ。最初はドリンク製品で朝食を狙ったけど、今度の製品は完全な栄養をいつでもどこでも摂れる」。

Soylentのスナックバー

スナックバーへの進出はHuelのようなコンペティターとのSoylentの差別化にも寄与する。なお、Soylentという名前は、1960年代のSF小説「Make Room! Make Room!」に登場する大豆(soy bean)とレンズ豆(lentil)で作った食べ物に由来しており、のちに劇場で原作を有名にしたバージョンとは無縁だ(とファウンダーは強調したいのだ!)。

Huelはイギリスでローンチしたが、今ではロサンゼルスでよく見かける。昨年Highland Europeから2600万ドルを調達して、その栄養ドリンクとパウダーを主に米国市場で拡販したいらしい。一方フランスには固形スナックとシェークを売っているFeedがあり、ヨーロッパにおけるSoylent的スタートアップだ。

関連記事: Feed raises $17.4 million for its Soylent-like food products(Feedの資金調達、未訳)

ただしSoylentは今後も、機能性サプリのような世界へ赴く気はない。Crowley氏はこう言う。「Bulletproofsのようなものは、良質な科学の裏付けがあるんだろうけど、でもお金持ち相手だね」。

Crowley氏が望むのは、Soylentがすべての消費者のための安価で栄養価の高い代替食であり続けることだ。同社によると、バーの原料はこれまでのドリンクやパウダーと同じで、 多量養素(たんぱく質、炭水化物など)+26種のビタミンとミネラル、9種のアミノ酸、2種の必須脂肪酸、そしてオメガ-3とオメガ-6を含む。

さらに、消化を助けるためのプロバイオティクスと、3グラムの砂糖を加えている。現在、バーはケース入りでネット販売のみ。1ケースに30個入っている。

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コンピュータービジョン技術で細胞を分析し病原体を見つけるPathAIが67億円超を調達

コンピュータービジョンの技術で病原体を見つけるPathAIのサービスは、臨床現場での実用化まではまだ1年あまりと言われるが、同社は最近の資金調達ラウンドで6000万ドル(約67億円)を獲得した。

医師は、患者から採取した標本細胞を同社の技術を利用して分析し、細菌やウィルス、癌細胞などの病原体の存否を判定する。しかし現時点では、PathAIの技術は病院における患者の診療よりも製薬企業の新薬開発に使われていることが多い。同社の共同ファウンダーでCEOのAndy Beck(アンディー・ベック)博士はそう語った。

ベック博士は語る。「私たちの今日の最大のフォーカスは、(臨床よりもむしろ)難病の新しい治療法を見つけるために使われている研究プラットホームにある。安全で効果的な医薬品の開発を加速することは、患者にとって本当に重要な問題だと考えている」。

製薬企業は新しいテクノロジーに病院よりも大きな額を投じているから、PathAIのようなスタートアップにとっても魅力的なマーケットだ。同社が病理学者たちと協働するときは、彼らは研究目的で技術を使っているとベック博士は語る。しかし臨床での診断のためには治験が必要であり、規制当局が認可するまで時間がかかるとのこと。そして「そのため、直接臨床で使われるようになるまではあと1〜2年はかかる」そうだ。

同社の最新のラウンドはGeneral Atlanticがリードし、さらにこれまでの投資家であるGeneral Catalystや8VC、DHVC、REfactor Capital、KdT Ventures、そしてPillar Companiesも参加したPathAIの社員は昨年60名あまりに増え、そしてBristol-Myers SquibbやNovartisとパートナーシップを結んだ。

新たな投資の結果としてGeneral AtlanticのマネージングディレクターMichelle Dipp(ミッチェル・ディップ)博士が同社の取締役会に座ることになる。General CatalystのマネージングディレクターであるDavid Fialkow(デイビット・フィオーコウ)氏は声明で次のように述べている。「PathAIの技術によって疾病診断の精度と再現性が向上し、それらの疾病を治療する新薬の開発を助けるだろう」。

画像クレジット: Ed Uthman/Flickr CC BY 2.0のライセンスによる

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抗うつ剤における30年ぶりの大進歩、米食品医薬品局がエスケタミン点鼻薬を承認

米国の食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)は米国時間3月5日、新しい抗うつ剤の承認を発表した。ケタミン誘導体エスケタミン(esketamine)を用いるこの抗うつ剤は、うつ病治療の歴史において数十年ぶりの大きな進歩だ。

Johnson & Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)がSpravato(スプラバート)という名前で発売するこの薬は、経口抗うつ剤と併用する点鼻薬(ないし鼻腔噴霧剤)で、そのほかの治療法に反応しない患者を対象とする。スプラバートはProzac(プロザック)以来久しぶりの、FDAが承認する重要な抗うつ剤だ。これまでの抗うつ剤に比べて副作用が少ないとされるプロザックが発売されたのは30年以上前で、それはほかの薬に比べて即効性がある点でも注目された。

FDAがケタミンを麻酔薬として承認したのは1970年だが、どんな用途にせよ、エスケタミンを承認するのはこれが初めてだ。ケタミンはレクリエーション薬として人気があったが、医師は、抗うつ剤などの治療法に反応しない患者に何年も前から、適応外として処方してきた。FDAの諮問委員会は、14対2(棄権1)で2月に承認した。

FDAによるエスケタミンの承認には但し書きがあり、それはリスク評価軽減戦略(Risk Evaluation and Mitigation Strategies、REMS)のもとに使用しなければならない。その流通と配布の方式は制限され、安全性への重視により薬物による鎮静化や人格解離を避けるとともに、濫用や誤用の可能性のある配布を行ってはならない。患者はその点鼻薬を自分で投与するが、それは医師の診察室や医療機関においてのみ許される。スプラバートを家に持ち帰ってはならない。

スプラバートの有効性は、3回の短期治験と1回の長期治験で評価された。各4週間の短期治験のひとつでは、ときには2日以内に、プラセボ(偽薬)との対比でスプラバートと経口抗うつ剤の組み合わせが「統計的に有意な効果」を示した。ほかの2回の短期治験は、効果が既定の統計的試験の規準を満たさなかった。

長期治験では、安定化し二つの医薬の組み合わせを継続した患者が、経口抗うつ剤とプラセーボの点鼻薬を投与した患者に比べて再発までの時間が「統計的に有意に長かった」。

画像クレジット: Janssen

〔訳注: ネット上に散在する情報によると、ケタミンやエスケタミンはいわゆるドラッグの一種としてその健康被害が懸念されている。したがって、個人的な入手や使用を試みるべきでない。〕

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アメリカでも麻疹大流行YouTubeは予防接種反対ビデオの広告収入をゼロ化へ

BuzzFeed Newsに指摘されたYouTubeは、予防接種反対派のビデオを同社の広告収入源にすることをやめる。また同社は新しい情報パネルを予防接種反対ビデオの前に置き、そこに“vaccine hesitancy”(予防接種躊躇)のWikipedia記事のリンクを置く。YouTubeが誤報と戦う努力〔日本語記事〕の一環である情報パネルは、すでに麻疹(はしか)やおたふくかぜ、風疹(ふうしん)のワクチンに関するものが、それらに言及する予防接種反対派ビデオの前に置かれている。

BuzzFeed Newsへの声明文でYouTubeはこう述べている:

“弊社には、どんなビデオなら広告が現れてもよいかに関する厳格なポリシーがある。予防接種反対のコンテンツを助長するビデオは、そのポリシーに違反している。弊社はこれらのポリシーを強力に執行しており、それらに違反するビデオを見つけたときには直ちに反応し広告を取り去っている”。

今週YouTubeのアドバタイザーズが広告を停止せざるをえなくなったのは、これが二度目である。前回はネスレやディズニーなど数社の大型アドバタイザーズが、広告を停止する、と発表した。それは、YouTube上のクリエイターMatt Watsonが、YouTubeのリコメンデーションのアルゴリズムが、彼が“ソフトコアの小児性愛グループ”と呼んでいる連中に悪用されていることを暴(あば)いたからだ。

BuzzFeed Newsは、予防接種の安全性に関する検索で最初に上位に出てくるのは病院などのまともなソースだが、YouTubeのUp Nextアルゴリズムがそれらの次に出してくるリコメンデーションは、予防接種反対のビデオであることが多い、と指摘している。広告はYouTubeの広告アルゴリズムが勝手に出しているものだが、それらのビデオの多くにも広告は表示される。YouTubeはBuzzFeed Newsに、Up Nextアルゴリズムを書き換えて、予防接種反対ビデオの拡散を防ぐ、と言っている。

アメリカなどの国で麻疹が大流行し、FacebookやGoogleなど、ソーシャルメディアをはじめとするテクノロジー企業は、誤報の拡散を防ぐための自分たちの役割を、真剣に引き受けざるをえなくなっている。

BuzzFeed Newsが取材したアドバタイザーズの中で、自分たちの広告が予防接種反対ビデオの前には出ないようにしたい、と答えた企業は、Nomad Health、Retail Me Not、Grammarly、Brilliant Earth、CWCBExpo、XTIVIA、そしてSolarWindsだった。VitacostはBuzzFeed Newsに、自分たちは児童搾取問題が知れ渡る前からすでに広告を取り去っていた、と述べた。

予防接種反対のチャネルから広告を取り去る企業に、VAXXED TV、LarryCook333、そしてiHealthTubeが加わった。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Samsungの今度のスマートウォッチは血圧計つき、ストレスチェックも改良

おいおい、こんなにたくさん持ちきれないよ。Samsungは今日のUnpackedイベントで山のように多くの新製品を披露した。5つのスマートフォン(内ひとつはフォールダブル)、イヤーバッド、フィットネストラッカー、そして同社の最新のスマートウォッチGalaxy Watch Activeだ。

ウォッチ戦線の最大のニュースは、同社が他社に倣って健康志向になったことだ。しかもこのデバイスには血圧計がある。その詳細は未発表だが、この機能はUCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)との共同設計だ、と言っている。そのアプリは、3月15日からダウンロードできる。

ストッレスチェックが改良された。深呼吸と一連のコースにより、“あなたのストレスレベルを常時チェックする”という。フィットネストラッカーは、あなたの運動(ワークアウト)を自動的に検出する。走っている、自転車に載ってる、ローイング(ボートを漕ぐ)をしてる、エリプティカル・マシンをやってる、などなど。

同社のそのほかの最新製品に倣って、上図のように最小限の要素しかないデザインだ。シンプルな、円形のケースがあるだけだ。当然ながらこれは、同じく新製品のS10からワイヤレスで充電できる

このウォッチの1.1インチのディスプレイはGorilla Glass 3で保護されている。Samsungのそのほかのウォッチと同じくTizenを搭載、RAMは4GB、バッテリーは239mAhだ。

3月8日に200ドルで発売される。今日以降、予約で買った人には、無料で充電器が提供される。色は、シルバー、ブラック、ローズゴールド、グリーンの4色だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

AppleとAplhabetが進化させるヘルスケアウェアラブル

Appleが、Apple Watchのデータを活用する新しいアプリに関して、健康保険会社のAetnaと提携したという発表や、Googleの親会社のAlphabetの傘下にある健康にフォーカスする会社Verilyが、体重と動きを検知できる靴を開発しているといったニュースは、ウェアラブルからのデータを、臨床用の健康管理アプリや治療に活用しようという動きが勢いを増していることを示している。

ベンチャーキャピタルの投資家にとって、このようなAppleとAlphabetの動きは、ウェアラブルデバイス用の新しいアプリケーションへの道を切り開くものであり、正しい方向への第一歩となる。それは、むしろ遅すぎたくらいだ。

「医療サービス提供者として、私たちは予防医療の重要性についてかなり話してきました。しかし米国の医療システムには、それにお金を払うための適切なインセンティブがありません」と、Trinity Venturesの起業家、Cameron Sepahは書いている。「大会社の経営者は(メディケードやメディケア以外に)すでに多額の医療費を支払っているので、予防のためにまでにお金を出そうという気には、なかなかなりません。というのも、従業員がそれほど長く会社に留まることもないので、長期的な健康管理の費用を負担しようとは思わないからです。そのため、この分野のスタートアップのほとんどは、企業にとって見返りの少ない健康手当となりがちです。しかし、Aetnaのような保険会社が会員を十分長く引き止めておけるのであれば、うまく連携して、このアプリを普及させることもできるでしょう」。

Sepahは、健康保険会社とハイテク企業が提携すれば、さまざまな種類のデバイスによって健康状態を検出して診断することができる、という大きな可能性を視野に入れている。

「ほとんどの患者と保険会社との関係は、紙に印刷された請求書や通知を郵便で受け取るだけで、顧客満足度(NPS)はどこを見ても最低です」とSepahは電子メールに書いている。「しかし、もし手首に装着されたデバイスを通して、より密接な関係を築く方法があれば、他の健康関連技術のスタートアップと協力して取り組む可能性も広がります。たとえばMindstrongは、自覚症状が出る前に精神的な健康の問題を通知できます。またCardiogramは、高血圧や睡眠時の無呼吸を検出して治療を促します。あるいは、Omada Healthは、デバイスからの健康データを、慢性疾患の治療プログラムに活用することができます」。

(関連記事:Apple partners with Aetna to launch health app leveraging Apple Watch data

Aetnaは、Apple Watchのデータを健康保険に結び付けた最初の会社ではない。John Hancockは、2018年の9月にVitalityというプログラムを立ち上げた。ユーザーがJohn Hancockのアプリとリンクすれば、最新のApple Watchを割引するというものだ。さらに、ユーザーがダイエットとエクササイズに関する習慣を変えれば、会社が報奨金を支払う。

米国、英国および南アフリカ共和国の40万人を対象としてRand Europeが実施した調査によれば、Apple Watchを着用し、Vitalityのプログラムに参加したユーザーは、Apple Watchを着けていない人と比べて、運動量が平均で34パーセントも増加したという。その数字は、1ヶ月あたり、ほぼ5日分もトレーニング量を増やしたのに相当する。

「CVSとAppleの協力が、どのような結果になるのか興味深く見守っています。個人の医療履歴と、ウェアラブルからのリアルタイムのデータの組み合わせに基づいて、健康に関するパーソナライズされたアドバイスを提供することは、非常に大きな価値のある目標となるでしょう」と、ベンチャーキャピタルMenlo Venturesの共同経営者、Greg Yapは書いている。しかしYapは、「彼らの第1世代のアプリが、幅広い利用者に対して十分な価値を提供できるだけのデータや学習能力を備えているかについては疑問があります。しかし話題性はあるし、それも重要だと思っています」と続けている。

その一方で、消費者の健康情報を記録するデバイスの種類は増え続けている。これも、少なからずVerilyのおかげだ。

CNBCによれば、Verilyはユーザーの動きや体重を監視するセンサーを備えた靴の共同開発に取り組んでいて、さらに健康状態の監視および管理のための常時接続型デバイスの種類を拡張しているという。すでに同社は、FDAが承認した心電図を含む、患者の特定のデータを監視する腕時計を実用化しており、さらに、糖尿病に由来する眼の疾患を感知する技術や、白内障を治療するスマートレンズを開発中だという。

こうした動きは、ハイテク企業が、ほぼ3兆ドル規模にもなるヘルスケア市場に食い込もうとして、消費者の健康に密接に関わることをもくろんでいるのを示すものだ。

ウェアラブルデバイスから、あるいは消費者の行動から、より多くのデータを収集できれば、そしてそれを継続的に監視できれば、ハイテク企業が、より早い段階で通知することで、より低コストの治療を提供することもできるかもしれない。緊急の、あるいは救急医療の必要性をなくすことにつながるからだ。

ハイテク企業による、いわば大風呂敷を広げたようなコミュニケーションとモニタリングのサービスは、うまくすれば、ユーザーと将来に医療を受ける人を、今とは異なったシステムに移行させるかもしれない。それは、治療の量や処置の回数よりも、結果にフォーカスすることになり、低コストのものになる可能性が高い。

持続的なモニタリングが良質な治療に結びつくと、すべての医師が確信しているわけではない。スタンフォード大学の有名な教授であるDr. John Ioannidisは、データが実際に何を明らかにするのかをはっきり理解しない限り、モニタリングを有効に利用することはできないと主張している。

「情報というものは、それが何を意味するのかを知っていれば、有益なものとなります。その情報の大部分については、何を意味しているのか分かっていません。それをどう扱えばよいのか、皆目見当も付かないのです。単に不安の種を増やすだけでしょう」と、Dr. Ioannidisは述べた。

ライフサイエンスのスタートアップを支援している投資家によれば、目標は、機械学習を使用して問題を特定し、同時に治療方法を確立できるような、パーソナライズされたアドバイスを提供することなのだという。

「Omada、Livongo、Lark、Vida、Virta、といったスタートアップは、リアルタイムのデータと、個人の履歴データを組み合わせるというアイディアに、すでに取り組んでいて、それはうまくいくと私は考えています。しかし、スタートアップが成功するためには、さらに細かく絞り込むことで、より良い結果を提供できるようにする必要があるでしょう。もちろん、早急に経済的な利益を生み出すことも重要です」と前出のYapは付け加えた。

画像クレジット:VenimoShutterstock

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

犬の癌を治療するスタートアップがAndreessen Horowitzから$5Mのシードを調達

National Canine Cancer Foundation(全米犬癌財団)によると、犬は、3頭に1頭が癌になる。最近、Andreessen HorowitzのBioファンドによるシードラウンドで500万ドルを調達したOne Healthは、犬の癌を人間にとって、もっと対応しやすくすることをねらっている。犬の死亡原因のトップが、癌なのだ。なお、シードラウンドにはLerer HippeauとY Combinatorが参加した。

One HealthのファウンダーでCEOのChristina Lopesはこう言う: “癌の罹患率と発病率は人間より犬の方が高い”。

One HealthのFidoCureブランドの製品は、犬の癌を低費用で扱いやすくすることを目的としている。最新の遺伝子配列技術を利用して、犬の癌の原因となる遺伝子の突然変異を正しく理解する。そしてさらに、人間へのリコメンデーションとアクションプランを提供し、最良の治療法と各個体に合った処置を教える。

“うちでは、人間にできることを重視します”、とLopesは言う。“最初は検査をします。次に、遺伝子変異が見つかったら、その犬のデータに合ったFDA認可の薬を教えます。複数の薬剤師や調剤薬局と提携しています”。

あなたの犬が癌と診断されたら、獣医師はOne Healthの製品を推奨するかもしれない。しかしそれでも、獣医師通いは続けた方が良い。One Healthも、多くの優秀な獣医師と提携しているから、相談できる。

推奨するFDA認可の薬は人間用だが、それらを犬に与えるためのデータがある。そのデータを得るための研究に、One Healthは相当な時間とお金を投資した。

“私たちは薬の開発はしませんが、薬に関する、犬と人間との情報ギャップを埋める作業がたいへんでした”、とLopesは語る。

One Healthは、獣医師に直接課金する。獣医師がさらに、患者に課金してもよい。犬の癌の診療に要する費用は、1頭につき平均6700ドルだ。それでも、One Healthは薬価に大きな利幅を載せないので安い方だ、という。

“癌生物学の進歩で、人間の癌の診断と治療は革命的に良くなった”、とA16ZのゼネラルパートナーJorge Condeが声明文で言っている。“今後、犬と人間の違いや類似性がより明らかになるにつれて、One Healthはこれらの進歩を単純にペットに応用するだけでなく、逆に犬の診療で発見したことを人間に応用できるようにもなるだろう”。

画像クレジット: One Health

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Alphabet傘下VerilyのECGモニタをFDAが認可、Googleのスマートウォッチにも応用か?

今週(米国時間1/13-19)はGoogleのウェアラブルで大きなニュースが相次いだ。こんなことを2019年になって書くとは、夢にも想像しなかった。しかし、同社がFossilのウェアラブル技術を4000万ドルで買ったと発表したその翌日には、同じくAlphabet傘下の研究グループVerilyが、その心電図(electrocardiogram, ECG)技術にFDAのOKをもらった。

認可をもらった製品は、同社のStudy Watchだ。このデバイスは2017年に発表されたが、それはAlphabet/Googleの消費者向けWear OSスマートウォッチではない。この製品はむしろ本格的な医療用検査器具で、多発性硬化症やパーキンソン病などの症状を調べるためにさまざまな生命徴候データを集める。

Verilyはブログにこう書いている: “オンデマンドでシングルリード(単線)でECGを撮れるので、グループ診療と個人の臨床の両方で使える。今回認可が下りたことは、われわれの技術の安全性と有効性がFDAの高い基準を満たしていることを示し、Study Watchを今後もっとさまざまな疾病や生命徴候検査に利用していけるものと考えている”。

Study Watchは医師の処方箋に基づいて使用するデバイスだが、FDAの認可が下りたことは、今後Pixel Watchに載る可能性があるのかもしれない。FossilのWear OSデバイスも、最近のスマートウォッチの傾向に合わせてもっぱら健康志向だ。Appleは最近、Series 4 WatchにECGを加えたから、Googleもやらないはずはないだろう。

なお、このニュースは、E Inkが医療の研究方面で利用される道を拓いた、とも言えるかもしれない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

双子のDNAを検査したらおかしな結果が出た…DNA検査は眉に唾して受けよう

【抄訳】
あなたが自分の唾液を真面目に郵送したことのある方なら、今のDNA検査企業が送り返してくる予想外の結果にも興味津々だろう。あなたの祖先は、イベリア半島でうろうろしていたのか? あなたの家族の何代にもわたる言い伝えの中に、科学が認めるものがあるとすれば、それはなんだろう?

メールオーダーのDNA検査を利用する人たちの多くは、その結果の背後にある科学について無頓着だ。なにしろ、それは科学だから。でも、DNA検査企業は強力な監督機関を欠き、自分たちのアルゴリズムをオープンにしないから、ユーザーが得たいと思っている先祖に関する知見が、これらの企業がそうでないと言えば言うほど、主観的であることもありうるのだ。

その点に関して、CBCのMarketplaceのホストCharlsie Agroと彼女の双子の妹Carlyが、5社のDNA検査キットを郵送してみた: それらは、23andMe、 AncestryDNA、 MyHeritage、 FamilyTreeDNA、そしてLiving DNAだ。

CBCはこう報告した: “事実上同一のDNAでありながら、この双子たちはどの企業からも互いに合致する結果をもらえなかった”。

このことに、驚くべきではない。各社が、それぞれ独自の試薬を使ってDNAを分析するから、違いが生ずるのは当然だ。たとえばある一社、FamilyTreeDNAは、双子のDNAの14%が中東起源とした。それは他の4社にはない結果だった。

それ以外では、素人でも予想できるような当たり前の結果が多い。しかし、23andMeのデータだけはおかしい。

CBSはこう言ってる:

23andMeの所見では、先祖が“大まかにヨーロッパ人”(“Broadly European”)はCharlsieがCarlyより10%近く少ない。Charlsieにはフランス人とドイツ人が各2.6%あるが、Carlyにはない。〔下図〕

この互いに同一の双子は、東ヨーロッパ人の継承も異なり、Charlsieの28%に対しCarlyは24.7%だ。そしてCarlyの東ヨーロッパ人の祖先はポーランドに結びついているが、Charlsieの結果にはこの国がない。

この双子は彼女らのDNAをエール大学の計算生物学グループと共有し、二つのDNAが統計学的に同一、と判定された。疑問に対して23andMeは、同社の分析が“統計的推定”だ、と言った。あなたが顧客なら、この言葉を覚えておくべきだ。

覚えておいた方がよいのは、その検査が正しい科学ではないことだ。対照群はないし、標本サイズは双子のDNAワンセットだけだ。ここから決定的な結果は導けない。でも、興味深い疑問が生ずることは確かだ。

アップデート: 23andMeのスポークスパーソンが次のような声明で、問題の結果のコンテキストを明かそうとしている:

CharlsieとCarlyの23andMeの結果の変位は主に、“大まかにヨーロッパ人”の推定値にある。このカテゴリーはわれわれのアルゴリズムが確信を持ってヨーロッパ人と同定できる層を捉えているが、国などもっと精密な分類の確信はない。双子の一方がより多くの“おおまかにヨーロッパ人”を持っていても、それは矛盾していない。それが意味するのは、一つの個体に関してはアルゴリズムが、より細かい粒度の予測をできるほどの確信を持っていなかったことである。たとえば双子の片方に関しては2.6%のフランス人とドイツ人を同定できたが、他方関してはゲノムのその部分が大まかにヨーロッパ人に割り当てられたのである。

同社が強調するのは、23andMeの先祖検査と健康診断のそれとの違いだ。後者はFDAの規則があり、その基準と精度と臨床的有効性を満たさなければならない。

双子の調査は長年、科学研究において重要な役割を担ってきた。たとえば双子の調査により、中毒や精神病、心疾患などさまざまな特性への生物学的影響と環境的影響の違いを研究できる。23andMeのような企業の場合は、双子の調査が〔今回のように〕同社の秘密のアルゴリズムの特質を明らかにし、ユーザーに対する今後の知見や、企業としての売上のアップに貢献するだろう。

【中略】

民間のDNA検査サービスは、祖先の判定だけでなく、将来の遺伝子病発病の可能性や、健康的な生活のためのアドバイスなど、‘商品’のメニューが多様化している。しかも検査の方法は年々変化し進化している。それとともに検査の‘結果’も変わる。

そこでもう一度言えば、CBCの非公式な実験は決して本物の科学ではなく、またDNA検査サービスもそうだ。ご自分の検査結果をどきどきしながら待っている方に申し上げたいのは、これらの企業がどうやってその結論に到達したのか、その方法や過程や理論について、われわれは知らないことが多すぎる。そのような営利企業を介してあなたの遺伝学的データが大手製薬企業の手に渡るとしたら、そこにはプライバシーをめぐる大きなトレードオフがある。こいつは、よーく考えてみたい問題だよね。

関連記事: 23andMeの祖先判定ツールが黒人や黄色人種に対しても詳しくなった

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この腕輪は麻薬の過剰摂取を検出して死を未然に防ぐ

カーネギーメロン大学の学生たちのプロジェクトが、人命を救うかもしれない。HopeBandと名付けられた腕輪が、血中の酸素濃度が低いことを感知して、それが急を要するレベルならテキストメッセージとアラーム音を送る。

学生のRashmi Kalkunteが、IEEEにこう語っている: “友だちの誰かがいつも過量摂取を心配していたら、その使い方パターンを理解し、どんなときには誰に助けを求めるべきか知ってる人が近くにいるといいよね。HopeBandは、そんな人の代わりになることを目指して、設計したんだ”。

9月に行われたHealth 2.0カンファレンスでチームは、Robert Wood Johnson財団主催のOpioid Challengeコンペに応募して三位になった。彼らはその腕輪を、ピッツバーグの針交換事業*に送るつもりだ。売価は20ドル未満をねらっている。〔*: 注射針を新品の針に交換することでエイズなどの伝染を防ぐ。多くは地方自治体の公衆衛生事業の一環。〕

今年アメリカで過量摂取で死んだ人は72000人を超えている。こんなデバイスがあれば、人びとを少しは安全にできるだろう。

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人間の爪のミクロン単位のゆがみから症状の治癒や悪化を判定する超小型センサーをIBM Researchが開発

IBMが今日(米国時間12/20)、人間の手の指の爪につけて、パーキンソン病なやそのほかの疾病の治療薬の効果をモニターする、小さなセンサーを開発した、と発表した。そのデータを分析する専用のソフトウェアと共にセンサーは、ユーザーが物を握ったときの爪の歪(ゆが)みを測定する。ほとんどどんな活動にも、物を握る行為があるので、そのソフトウェアが分析すべき大量のデータが生成される。

センサーを爪ではなく肌につけて運動をモニターし、筋肉や神経の健康を調べる方法もあるが、IBMのチームによると、皮膚を使う方法には感染など多くの問題があるので、爪の曲がりから得られるデータを使う方法を選んだ。

ただし、多くの場合に、爪はわずかしか曲がらないので、感度の高いセンサーが必要になる。研究者たちはこう説明している: “分かってきたのは、人間の指が、それらで物を握ったり掴んだり、曲げたり伸ばしたりするとき、一定のパターンで変形することだ。この変形の大きさは通常、ひと桁の数ミクロンのオーダーで、肉眼では見えない。しかし、ひずみゲージを使えば容易に検出できる。ご参考までに、人間の毛髪の太さは50から100ミクロン、赤血球の径は10ミクロン未満だ”。

現在のプロトタイプバージョンでは、センサーを爪に接着している。爪はけっこう丈夫なので、そのやり方でもリスクはほとんどない。肌につけるセンサーよりは、ずっと安全だ。センサーのデータはスマートウォッチへ行き、そこで機械学習のモデルを動かして、震(ふる)えなどのパーキンソン病の症状を検出する。モデルは、装着者が今何をしているかも検出できる(ドアノブを回している、ドライバーを使っている、など)。装着者が自分の指で数字を書くと、それも正確に判読できる。

今後は、このセンサーのプロトタイプとモデルの改良により、そのほかの疾病も認識し分析できるようにしたい、とチームは望んでいる。このセンサーが市販される時期については、まだ発表の段階ではないようだ。

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