「日本の決済ビジネスには3つのチャンス」 PayPalが今後の戦略を説明

PayPalジャパン・カントリー・マネージャーのエレナ・ワイズ氏

親会社であるeBayからスピンオフし、7月20日に独立企業として再びNASDAQに上場し、親会社を超える500億ドルという時価総額を付けたPayPal(2002年のeBayによる買収は15億ドルだったので、その33倍にもなるわけだ)。同社は今後の日本展開について説明すべく、7月21日に東京・赤坂で発表会を開催した。

「お金そのものが変わろうとしている。その最大の理由はデジタルウォレットが台頭してきたことだ」――イベントに登壇したPayPal東京支社 ジャパン・カントリー・マネージャーのエレナ・ワイズ氏はこのように切り出した。

17年以上にわたって決済サービスを提供してきたPayPalから見ても、金融システムはDisruption(創造的破壊)を起こしうる状況にあるのだそう。「物理的なお金はすべてデジタル化しつつある。それによってモバイルでお金を払うだけでなく、支払いを受け取ったり、クレジットを利用したり、将来的には財布を持ち歩く必要すらなくなるだろう」(ワイズ氏)。

このモバイルの成長を裏付けする数字としてワイズ氏が提示するのがPayPalの決済全体に対するモバイル決済の比率の増加だ。2014年度には決済全体の2割だったモバイル決済は、2015年度第1四半期時点で3割まで向上している。

そんなお金の「デジタル化」する世界では、企業はデータ分析の機能やサイバーセキュリティが求められていくという。また同時に各国政府の規制を知り、法令を遵守することも求められる。ワイズ氏はPayPalがこういった課題を解決し、金融システムのDisruptionを起こせるユニークな状況にあると語る。

アクティブユーザー1.69億人、取扱高2350億円の決済基盤に

PayPalは現在203の国と地域でサービスを展開。直近のアクティブユーザーは16900万人で、2014年度の新規アクティブユーザーは1900万人。取扱高は2350億ドル(28兆円)で前年比28%の成長。収益は80億ドル(1兆円)で同じく19%の成長となっている。取引件数は40億件で、こちらも前年比27%の成長だ。

またPayPalの強みとして、17年以上のサービス運営実績や不正利用の検知、トラブル時の消費者・店舗への全額保証、8000人24時間体制のサポート体制、法令遵守での運営体制などを挙げる。「決済ビジネスは簡単なモノではない。この実績と経験が競合と差別化のユニークな点だ」(ワイズ氏)

では再上場したペイパルはどこに向かうのか。ワイズ氏は「世界をリードするオープンデジタル決済プラットフォーム」を目指すと語る。v.zeroと呼ぶSDKでビットコインをはじめとした仮想通貨でも決済に対応するほか、ここ数年で刷新したユーザーインターフェースも日本で導入を進めている。「お金そのものをもっと自由に扱えるようにする。我々は自身をDisruptし続ける、また(他社に)Disruptされかねないという危機感を持ってビジネスを進めている」(ワイズ氏)

日本の決済ビジネスに3つのチャンス

続けてワイズ氏は、日本の決済市場について、3つのチャンスがあると説明した。

まず1つ目は中小企業やスタートアップの台頭だ。創業期から中小企業のネット決済の手段として利用されているPayPal。導入の手軽さや不正検知、決済から現金化まで最短3日という特徴は中小企業にとっても価値のあるものになっているという。また今後増えるであろうモバイルでの越境ECなど、より役立てる機会があるとした。

2つ目のチャンスはモバイルによる次世代のコマースだ。すでに世界の人口より多い72億台という端末が流通し、PayPalの決済でもモバイルの割合は上がるばかり。そんな状況で生まれるスタートアップは、モバイルアプリでサービスを提供するところが中心。PayPalではクレジットカードをカメラで撮影して読み取るSDKなども用意。ユーザーに対してたがるな決済手段を容易に提供できるとする。またヤマダ電機やネスカフェなどに対しては、オムニチャネル化に向けたモバイル決済の実験なども行っている。「オンライン、リアルにかかわらず、今後モバイル決済は『選択肢の1つ』ではなく『マストなもの』になる」(ワイズ氏)

3点目がインバウンド需要への対応だ。ワイズ氏によると、1~5月の訪日観光客は前年比45%、年間2500万人にも届く勢いだという。またこれにあわせて訪日観光客の国内支出も前年比43%増という状況だと説明。「ホテルや旅行代理店などにたいして、強い決済サービスが提供できることは多い」とした。またTokyo Otaku Mode(TOM)をはじめとした”クールジャパン”関連のECでもPayPalの導入が進んでいると説明。TOMでは、導入から数カ月後にはPayPalでの決済が全決済の半数を占めるようになったという。

再上場の影響「日本にはない」

ここからは質疑応答の内容などを少し紹介する。まず再上場による日本市場への影響については、「eBayのプラットフォームがないため、大きな影響がない。影響があるとすれば、日本や他の国において『eBayの関連会社』ということで(競合のため)付き合えない会社があったが、そこでのビジネスチャンスが生まれる」(ワイズ氏)という。

また日本市場におけるにおけるPayPalの立ち位置については、「個別の市場の数字については公開を控えている。言えるのはアクティブユーザーは国内、越境を含めて100万人以上。マーチャントも10万単位かそれ以上。決して少なくない数字」(ワイズ氏)とのことだった。

発表会後、日本と米国など海外の決済市場との違いについて聞いたのだけれども、「CtoCサービスでの利用は日本が多い」という点が特徴的なんだそう。一方で「越境コマース」への対応が弱いという課題もあるとした。「そこに関してはPayPalは強みを持っているので、サービスを提供していきたい」(ワイズ氏)