メンタルヘルスの服薬管理に特化したテレヘルス管理プラットフォーム「Minded」が約28.7億円を調達

消費者のメンタルヘルスの服薬管理に特化した精神医学専門のテレヘルス企業であるMinded(マインデッド)は、シード資金として2500万ドル(約28億7400万円)を調達した。2021年にニューヨークで立ち上げられたMindedは、消費者がオンラインで精神医療にアクセスできるようにする。Mindedは現在、ニューヨーク、ニュージャージー、ペンシルベニア、フロリダ、テキサス、イリノイ、カリフォルニアで利用可能だ。同社によると、今回の新たな資金調達は、全国展開と革新的な精神科医療の導入に充てられるという。

以前はフィンテックのユニコーン企業Stash(スタッシュ)を共同創業した、Mindedの共同創業者兼CEOのDavid Ronick(デイビッド・ロニック)氏は、消費者直結のデジタル分野の起業家として、解決すべき顧客がフラストレーションを感じている問題を探していると、TechCrunchに語った。彼は、10年間不安と不眠のために薬を服用しており、精神医学の専門家からケアを受けるにはお金がかかると指摘した。彼は、遠隔医療企業Pager(ページャー)の共同設立でこの分野の専門知識を持つGaspard de Dreuzy(ガスパール・ド・ドゥルージー)氏と、複数州のライセンスを持つ精神科医Chris Dennis(クリス・デニス)博士とチームを組んだ。

「私たちは、メンタルヘルスの薬物治療の第1人者になり、薬物治療にまつわる偏見と戦い、そしてすべての人に簡単で手頃な価格で薬を提供することを使命としてMindedを設立しました」と、ロニック氏は述べた。

Mindedは、不安症、うつ病、不眠症の患者、またはその可能性があり、治療の一環としての薬物療法に関心のある18歳以上の人々が利用できる。Mindedの利用を開始するには、オンラインアセスメントを行い、Mindedの利用が自分に適しているかどうかを確認する。その後、精神科医またはナースプラクティショナーとビデオチャットで会話し、どの薬が適切かを決定する。

Mindedのサービスを利用するために、患者は事前の診断や処方箋を必要としない。このスタートアップのメンタルヘルスの専門家は、うつ病、不安、不眠症の症状を評価し、状態を診断し、患者が初めて薬を服用する場合でも、すでに服用している場合でも、適切な治療計画を策定することができる。薬が処方されると、Mindedは処方箋を患者に届けるか、オンライン薬局や患者の近くの薬局に送る。患者は、薬について質問があったり、治療法を変更したい場合、オンラインで精神科医とチャットすることができる。

同社は、患者がMindedに登録するのに保険は必要ないと述べている。Mindedの会員になるには、月々65ドル(約7400円)、それに薬代がかかる。処方箋は患者の保険プランで払い戻しが可能な場合もあるが、それはプロバイダーによる。

今回の資金調達について、ロニック氏は、Mindedをあらゆる精神状態の治療に拡大し、30州以上に拡大する予定だと述べている。また、医療チームの規模を倍増し、医療従事者が管理業務よりも患者への対応に時間を割けるようにするための技術開発も継続する予定だそうだ。

Mindedのシードラウンドには、Streamlined Ventures(ストリームラインド・ベンチャーズ)、Link Ventures(リンク・ベンチャーズ)、The Tiger Fund(タイガー・ファンド)、Unicorn Ventures(ユニコーン・ベンチャーズ)、Trousdale Ventures(トラスデール・ベンチャーズ)、Gaingels(ゲインゲル)、SALT Fund、TheFund、Care.com、Bolt(ボルト)、Gravity Blanket(グラヴィティ・ブランケット)、RXBAR、Gilt.comの創業者、およびWTIからのベンチャー債権が参加した。

将来的には、革新的な治療法が利用可能になり、安全で効果的であることが証明されれば、Mindedはそれを導入するとロニック氏は述べている。

「より精度の高い診断と治療のためのDNA検査や、治療抵抗性の不安やうつ病のためのサイケデリックを提供する予定です」と、ロニック氏は語った。「精神医学の分野は、この20年間、あまり変わっていません。需要と供給の間の大きな格差と、技術や治療法の新たな発展の間で、精神医学の未来を構築する時が来ており、我々はその先頭に立つつもりです」。

Mindedはシードラウンドに先立ち、Streamlined Ventures、Link Ventures、その他CityMDの創業者Richard Park(リチャード・パーク)氏やCare.comの創業者Sheila Marcelo(シーラ・マルセロ)氏などの投資家から500万ドル(約5億7500万円)を調達している

画像クレジット:Minded

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

韓国のスタートアップAtommerce、約19.4億円の資金調達でメンタルヘルスサービスを拡大させる

モバイルアプリ「MiNDCAFE」を通じてユーザーがメンタルヘルス専門家とつながることを支援する韓国のスタートアップ、Atommerce(アトマース)は、2カ月で3倍の応募超過となった1670万ドル(約19億3600万円)のシリーズBで、メンタルヘルスのサービスを拡大する計画だ。

今回の資金調達で、Atommerceはプラットフォームの人工知能と機械学習技術を強化し、精神疾患に特化したデジタル治療に投資する予定だ。また、調達資金は人員増強にも充てられる。

ソウルを拠点とするこのスタートアップは、バーチャル・セラピー・プログラムと雇用者向けメンタルヘルス・ベネフィット・ソリューションを提供している。AtommerceのCEOであるKyu-Tae Kim(ギュテ・キム)氏はTechCrunchに対し、Atommerceは人間の専門家と同じようにセラピーができるAIチャットボットサービスを加えることで、患者、人間の専門家、精神疾患に対応するために人工知能が相互に作用するエコシステムを構築したいと考えていると語った。12月に発売された同社のAIチャットボット「RONI」は、推奨される回答を提供することで人間の専門家をサポートすると、キム氏は述べた。

Atommerceは、韓国で100万人以上のアプリユーザーと、Naver(ネイバー)、NHN、新韓インベストメント、Neowiz(ネオウィズ)、ソウル市役所など100社の企業を顧客として主張している。現在、MiNDCAFEの従業員支援プログラム(EAP)を通じて、B2Bクライアントの約20万人の従業員がアプリを利用している。同社は、250人以上のメンタルヘルス専門家を抱えているという。

新型コロナウイルスのパンデミックは、同社の成長を加速させた。例えば、2021年第1四半期の同社の売上高は、2020年第1四半期と比較して約1200%伸びた。また、過去2年間は年平均400%増の売上を記録しているという。

このスタートアップは、米国留学中にセラピーを受けてうつ病を克服したキム氏が、2015年に創業した。韓国に帰国したキム氏は、米国とは異なり、社会的なスティグマからメンタルヘルスの専門家の助けを得ることが難しいことを実感し、MiNDCAFEを立ち上げることを決意した。

韓国は、精神衛生問題を含むさまざまな要因でOECD諸国の中で最も自殺率の高い国となっているが、精神的な問題に対するスティグマから、人々は専門家に相談することをためらっていたと、キム氏はいう。しかし、ここ数年で変わってきた。現在、そのユーザーのほとんどは、国内のミレニアル世代とZ世代の成人女性であるとキム氏は付け加えた。

Atommerceは2022年前半に日本への進出を予定しており、早ければ年末に北米への浸透を目指す。同社のサービスは、言語やUX・UIなどのユーザーインターフェースデザインを完全にローカライズする予定だと、キム氏はTechCrunchに語った。また、次の資金調達計画について尋ねたところ、2023年第1四半期にシリーズCの調達を検討しているとのことだ。

画像クレジット:MiNDCAFE app

今回のラウンドで、同社の資金調達総額は約2600万ドル(約30億1400万円)に達した。シリーズBは、Hashed(ハッシュド)が主導し、E&Investment(E&Iインベストメンと)、K2 Investment(K2インベストメント)、Samsung Next(サムスンネクスト)が参加した。既存の出資者であるInsight Equity Partners(インサイト・エクイティ・パートナーズ)と韓国の製薬会社GC Green Cross Holdings(GCグリーンクロスホールディングス)もこのラウンドに参加した。

キム氏は声明の中で、今回の投資により、テクノロジーによって人々のメンタルヘルスを支援するという使命を持つMiNDCAFEが成長を加速させることができると述べている。さらに、Atommerceはメンタルケアエコシステムへのアクセスを向上させる。

画像クレジット:Carol Yepes / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Yuta Kaminishi)

うつ病の自宅臨床試験の実施に乗り出すCerebralとAlto Neuroscience

パンデミックによって、リモートワーク、学校、研究を注目せざるを得ない状況になっている。実はそうなる前から、分散化臨床試験はおそらくその姿を現し始めていたのだが、今、それが本格的に登場してきた。

2021年12月、高精度の精神医学スタートアップAlto Neuroscience(アルトニューロサイエンス)とオンラインメンタルヘルスプロバイダーCerebral(セラブラル)が、アルトのうつ病薬候補ALTO-300の分散化フェーズ2臨床試験で協力すると発表した。この臨床試験の大半は患者の自宅で実施される。

具体的にいうと、このプロジェクトでは、セラブラルのプラットフォームから、現在うつ病で苦しんでいるが、既存の治療法では症状が改善されない約200人の患者を募集する。アルトは新薬を提供するだけでなく、患者の生体指標を使って患者に効果がある(または効果がない)薬品を予測するという同社独自の新薬開発アプローチを評価しようとしている。

「臨床試験に数十億ドル(数千億円)を使う羽目になる前に、患者グループに対して徹底した表現型検査を実施して、患者のどのサブグループが本当に新薬の恩恵を受けることができるのかを特定するという方法は、業界では至極道理に適っているものの、これまで誰も行おうとしなかったのです」とセラブラルの医務部長David Mou(デビッド・マオ)氏はTechCrunchに語った。

「ある意味、当社とアルトは相性抜群でした。当社はアルトが必要としているものを持っていましたし、アルトのビジョンは最も成功する可能性が高いものだと確信しています」。

分散化臨床試験の興味深い点

「分散化臨床試験」の定義はいろいろあり、それぞれ微妙に異なるものの、基本的には、バーチャルに、またはモバイル臨床医によって、何らかの形で患者に医療行為が施されるという意味だ。また、データも通常患者のいる場所で収集される。わざわざ、研究センターまで患者が足を運ぶ必要はない。

臨床試験を患者の自宅で実施することによって、患者から見た煩わしさが軽減されるため、現在の臨床試験が抱える大きな問題を解消できる可能性がある。例えば臨床試験を受ける患者の約7割が研究センターから2時間以上離れた場所に住んでいる。登録者数不足のため臨床試験が打ち切られることもよくある。およそ8割の臨床試験で、試験実施までに十分な数の患者を登録できていない。また、専門家によると、臨床試験を患者の自宅で実施することで、新薬研究の多様性とアクセス可能性が向上する可能性があるという。

今回の臨床試験は最初の分散化臨床試験というには程遠いものだが、業界の転換期に登場した手法であることは間違いない。

McKinsey(マッキンゼー)の調査によると、パンデミック前は、分散化臨床試験が主力サービスになると考えていたのは、製薬会社と開発業務受託機関(CRO:製薬会社と契約して開発をする組織)の38%ほどに過ぎなかったという。

マッキンゼーが同じ調査を2020年に実施したところ、回答した企業や機関すべてが、分散化臨床試験は今後大きな役割を果たすようになると考えていると回答した。

今回の臨床試験で判明すること

今回の臨床試験で、自宅で収集されたデータの強み、そうしたデータに対するFDAの考え方、そして現実世界で現場ベースの臨床試験が長年に渡って抱えてきた問題が分散化臨床試験によって解決されるのかどうかといった点について多くのことが明らかになる可能性がある。

詳細なデータを収集することは、アルトの医薬品開発戦略にとってとりわけ重要である。それは、同社が、EEG測定値から感情や気分に関するアンケートまで、さまざまなメンタルヘルス診断を使用した独自の生体指標(体の状態や病態を示す指標)駆動型の患者ポートレートを基盤としているからだ。

「当社はさまざまな精神疾患用の新薬を開発していますが、その際、脳のテストや脳の生体指標に基づいてその新薬の対象となる患者を特定することに重点を置いています」とアルトの創業者兼CEOのAmit Etkin(アミット・エトキン)氏はTechCrunchに語った。

「つまり、今回の臨床試験における当社の主眼点は、当社の収集した整体指標データによって、当社の新薬が効果を発揮する患者を、最も一般化可能な形で特定できることを確認することです」。

セラブラルが近く実施されるアルトの臨床試験において魅力的なパートナーとなる理由はいくつかある。まず、セラブラルは今回の臨床試験の具体的な内容に適合する患者グループを迅速に見つけることができたという点だ。「当社は今回の臨床試験の対象となる200人の患者を1時間以内に見つけ出しました」とマオ氏はいう。

しかし、最も重要なのは、セラブラルが患者や臨床医に関する膨大なデータをすでに収集蓄積しているという点だった。つまり、セラブラルはアルトが必要とする高品質のデータを収集する能力を備えているということだ。このデータには、重篤なうつ病(ウェルネス分野に属するアプリでは対象外となることが多い病状)を患っている患者に関するデータも含まれる。

例えばセラブラルの登録患者はすでに症状や心的状態についてのアンケートに定期的に回答している。またCerebralは臨床医の処方パターンに関するデータも持っており、どの薬が効果がある(または効果がない)のかを知ることができる。

「当社は高品質の医療を非常に重視してきたので、バックエンドにデータインフラを構築せざるを得ませんでした。結果として、患者と臨床医について、現存する他のどのメンタルヘルスプロバイダーよりも詳細に把握できるようになりました」とマオ氏はいう。

厄介なのは、分散化リモート方式で収集されたデータをFDAがどのように見るかという点だ。このプロセスは現在開発中だ。たとえば2021年4月に、FDAは、がんの分散化臨床試験において、対面で収集したデータとリモートで収集したデータを識別できるようにデータセットにラベル付けを行うことを義務付けた。

今回の臨床試験では2つの手法を比較対照できるという利点もある。実際、アルトは、ALTO-300について2の類似した臨床試験を併行して進めている。1つはCerebralと協力して行うものもう1つは従来のサイトベースで行うものだ。

ここでの狙いは、ALTO-300の有効性を検証することだけではない。分散化高精度精神科臨床試験というアイデアそのものをテストするという目的もある。

「当社が行おうとしているのは、FDAに代わって当社のアプローチの正当性を立証し、分散化アプローチで得られる結果が、従来のサイトベースのアプローチで得られる結果と比べて何の遜色もないことを示すことです」。

最後に、今回の臨床試験によって従来の臨床試験が抱えていたさまざまな障害(登録者数不足など)を克服できるという証拠もいくつかあがっている。とはいえ、この方法も完璧ではない。例えばセラブラルの臨床試験に登録されている患者は、ニューヨーク、ダラス、アトランタなどに在住しており、必ずしも主要な医療センターから何時間も離れているというわけではない。

「この方法で登録者数不足が解消されるかといえば、完全に解消されることはないでしょう」とマオ氏はいう。「しかし、今回の登録者たちは極めて精度の高いグループです。従来のように実際の病院経由で登録患者を集めるよりも、本当にうつ病を患っている可能性がずっと高いと思われます」。

試験から商品化へ

両創業者とも、分散化臨床試験は医薬品の商品化の下準備になることを指摘している。例えばセラブラルは承認後に処方すれば患者に効くと思われる薬を承認前に簡単に処方できるとマオ氏は指摘する。

アルトから見ると、セラブラルはメンタルヘルスの生体指標を臨床診断に持ち込むためのパイプ役になる。これはメンタルヘルスの症状を診断する際の長年の懸案だった(これまでメンタルヘルスの診断は、医療試験ではなく、行動に現れる症状を観察することによって行われていたが、一部の研究者やアルトなどの民間企業が生体指標の確認による診断へと変えるべく取り組みを進めてきた)。

「当社の投薬用生体指標データが承認されれば、セラブラルなどのパートナー企業は同データを臨床試験に持ち込むのに理想的な存在となります。彼らの臨床ケアは構造化が進んでおり、徹底して追跡されているからです」。

アルトとセラブラルの両社は、今回の臨床試験について、2022年末までに最初の結果を取得する考えだ。

画像クレジット:Evgeny Gromov / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

メンタルヘルス分野のビジネスに科学と健全さをもたらすWave

子どもたちは大丈夫ではない。Wave(ウェーブ)の創設者によると、Z世代の75%が心の健康に悩んでいるそうだ。はっきり言って、彼らのすべてが診断可能な精神疾患の基準を満たしているわけではないのだが、彼らは固い握手と「がんばれ、息子よ」という言葉以上のものを必要としているのだ。若年層が利用できるツールやテクニックを提供するために、包括性を第一に考えたアプローチをとるデジタルプラットフォームで、Waveが主に狙っているのはこの市場だ。

このアプリは、2022年初めに一般ユーザー向けのテスト版をリリースし、年内にはより多くの消費者に向けて幅広く展開していく予定だ。同社の創業者は、スタンフォード大学の精神医学教授であり、臨床心理士でもあるSarah Adler(サラ・アドラー)博士だ。彼女は、このアプリが何をするかを世界に向けて発信したいと考えているが、アプリが広く一般に公開されるまでは、少し慎重に行動している。アドラー博士は、ユーザー中心のデザインによってケアへのアクセスを向上させる革新的なデリバリーモデルの構築にキャリアを費やしてきた。彼女は、データに基づいたデジタルソリューションと、ヘルスコーチのような訓練された低コストの人的資源を組み合わせることが、特に、従来は話題に上らず見落とされていた人々(GSRMやBIPOCなど)に対して、質の高いケアを大規模に提供するための最良の方法であると考えている。

アドラー博士に、このアプリで提供できるエクササイズの例を聞いてみた。

「私たちが基本的に信じていることの1つは、不安やうつに対するエビデンスに基づいた治療法であるアクセプタンス・アンド・コミットメント・セラピー(ACT)に由来するものです。私たちは、人生において誤った決断をしたり、気分が良くない決断をしたりするのは、自分にとって何が大切なのかがはっきりしていないからだと考えています。価値観を明確にするエクササイズは、もしあなたにセラピストがいて、そのセラピストに1時間250ドル(約2万8000円)払う余裕があるなら、セラピストと一緒に行うことができるエクササイズです。しかし私たちは、もっと魅力的なエクササイズを考案しました。それは、ビデオゲームのような経験で、価値観を明確にするエクササイズを行い、最後には、私と一緒にセラピーを受けるのと同じように、脳内で神経化学的に喚起したい感情を呼び起こします」とアドラー博士は説明した。アドラー博士は「自分の価値観が明確になれば、どのように意思決定をすればよいかが見えてきます。自分の重要な価値観に沿った私がとりたい行動とは何か? 今夜は友達と飲み明かしたいか? 自分の長期的な目標や価値観を知ることで、自分の行動を調和させることができます。それが意思決定の助けになるのです」。

同社は、2021年の夏の終わりに200万ドル(約2億2975万円)のプレシードラウンドをクローズしたことを発表したばかりだ。このラウンドは、Hannah Grey VC(ハンナ・グレイVC)がリードし、K50 Ventures(K50ベンチャーズ)、Tribe Capital(トライブキャピタル)、Alumni Venture Group(アラムナイベンチャーグループ)、Verissimo Ventures(ベリッシモ・ベンチャーズ)、Conscience VC(コンサイスVC)、および厳選された戦略的エンジェルが参加した。

「科学的な裏づけがなく、包括的なユーザーエクスペリエンスに深く関わっておらず、再現性のある成果を示していないプロダクトを構築し、拡張するために、メンタルヘルス分野には、2020年だけで25億ドル(約2871億円)を超える莫大な資金が投入されています」アドラー博士は言った。「Waveでは、ダウンロード、サインアップ、パイロットなどのビジネス指標にただ関心があるだけではなく、従来はケアを受けることができなかった人々に測定可能な成果をもたらす、具体的な結果を目指しています」。

「私たちはソーシャルメディアと戦っているわけではありません。ソーシャルメディアと統合しようとしているのです。私たちは、ユーザーに対応し、関心を持ってもらうためには、ユーザーがいる場所で出会う必要があると考えています。これは特に携帯電話と完全に結びついているジェネレーションだとより重要です。私たちはこれをデジタルエコシステムと呼んでおり、このエコシステムでは、エビデンスに基づく最高のコンテンツと、最高のビデオゲーム技術を用いた没入型の体験を統合しています。ただ、私はトークンエコノミーの話をしているのではなくて、ビデオゲーム業界が学んだ、人々が学ばなければならないことに興味を持たせ続けるための方法を意味しています」とアドラー博士は説明した。「私たちは、没入感のある体験を作り、人々が何度も利用するように提供します。それが、最終的には、人々がよくなることにつながるのです」。

画像クレジット:Wave

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Yuta Kaminishi)

バーチャルアシスタントが慢性疾患に関する質問に答える仏Wefight、約13.2億円調達

Wefightはフランスのスタートアップ企業で、慢性疾患に苦しむ人々を支援するために10種類以上のアプリを開発している。基本的なチャットボットのインターフェースを使って、人々は自分の病気について質問し、答えを得ることができる。

同スタートアップはこのたび、Digital Health VenturesとImpact Partners、そして既存の投資家であるInvestir&+とBADGEのビジネスエンジェルから1160万ドル(1000万ユーロ、約13億2000万円)の資金調達を実施した。

Wefightは、慢性疾患ごとに異なるアプリを開発した。それらはすべて、Vikという同じバーチャルアシスタントをベースにしている。現在、うつ病、喘息、複数のタイプのがんなどに関するアプリが10数種類ある。

Vikは基本的に、患者とWefightのコンテンツとの間のインターフェースとして機能する。自然言語処理技術から、Wefightが新しいアプリを作るために活用するフレームワークまで、すべて自社で開発している。

患者が質問をするたびに、このサービスは質問の意味を理解しようとし、知識データベースから関連する情報を見つけ出す。

そして、コンテンツを中継して患者に提供する。コンテンツはプロの薬剤師によって書かれており、できるだけ情報を提供し、中立的な立場であることを心がけている。これにより、必ずしも次の診察日を待たずに、自分が持っている質問のリストを見ていくことができる。

共同設立者兼CEOのBenoit Brouard(ブノワ・ブルワール)氏はこう語った。「Vikは、ケア経路の誰かを置き換えるものではありません。ギャップを埋めるためにあるのです」。

ギャップがあるのは確かなようだ。これまでに、40万人以上の人がこのサービスを利用している。Vikは500万件の回答を配信しているという。Wefightでは今、70人のスタッフが働いている。Wefightは、患者団体とつながることで、新しいユーザーを見つけようとしている。

ビジネスモデルとしては、製薬会社と協力して新しいアプリに資金を提供している。治療法を商業的に成功させるためには、患者が自分の患っている慢性疾患を特定できるようにする必要がある。そして、Vikはトップオブファネルのコンテンツプロバイダーとしての役割を担っている。

「当社は、臨床的惰性(Clinical Inertia)を減らします。臨床ラボが『Vik Asthma』への融資を決定した場合、そのラボは私たちが作成するコンテンツに影響を与えることはありません」とブルワール氏はいう。「そうしたラボ(製薬会社)は、喘息に苦しむ患者さんに呼吸器科医の診察を受けてもらいたいと思っているのです」。

そうすれば、特定の薬を購入する可能性のある患者の数が増える。製薬会社にとっては複雑な販売戦略だが、Vikのような方法は、患者の生活の質を向上させる可能性がある。

10月25日の資金調達により、同社はベルリンに新しいオフィスを構え、他の国への進出を計画している。Wefightは、新しい市場でアプリを発売するたびに、現地の医療従事者を雇用し、現地の患者団体と関係を作る。長いプロセスだが、そうやってWefightは世界中の患者に正しい情報を提供することができるのだ。

画像クレジット:Wefight

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

東南アジアでメンタルヘルス支援アプリを提供するThoughtFullが約1.2億円を獲得

新型コロナウイルス(COVID-19)が流行する以前から、うつ病や不安神経症は人々の健康に深刻な影響を与えていたが、パンデミックをきっかけに、メンタルヘルス関連のスタートアップ企業への関心(およびベンチャーキャピタル)が高まってきている。Calm(カーム)Headspace Health(ヘッドスペース・ヘルス)のようなメンタルヘルス関連のスタートアップ企業の多くは米国に拠点を置いているが、世界各地でもエモーショナル・ウェルネスに注目が集まっている。例えば、東南アジアでは、メンタルヘルスケアやサポートへのアクセスを向上させるスタートアップ企業が増えている。その1つであるThoughtFull(ソウトフル)は米国時間10月12日、110万ドル(約1億2400万円)のシード資金を調達したことを発表した。これまでに東南アジアのデジタルメンタルヘルススタートアップが調達したシードラウンドの中で最大級のものだという。

関連記事:新型コロナを追い風に瞑想アプリのCalmが2080億円のバリュエーションで78億円調達

2019年に設立されたThoughtFullのアプリ「ThoughtFullChat」は、ユーザーをメンタルヘルスの専門家につなげてコーチングセッションやセラピーを受けさせたり、セルフガイドのツールも用意している。「ThoughtFullCare Pro」と呼ばれる同スタートアップのメンタルヘルス専門家向けアプリは、オンライン診療の管理と拡大を可能にしてくれる。ThoughtFullChatは、App StoreGoogle Playでダウンロードできる他、保険会社や従業員の福利厚生プログラムを通じても入手可能だ。

今回のシードラウンドの投資家には、The Hive SEA(ザ・ハイブ・シー)、ボストンを拠点とするFlybridge(フライブリッジ)、Vulpes Investment Management(バルプス・インベストメント・マネジメント)の他、アジア太平洋地域のファミリーオフィスやエンジェル投資家が名を連ねている。

ThoughtFullを立ち上げる前、創業者兼CEOのJoan Low(ジョーン・ロー)氏は、香港のJ.P.Morgan(J.P.モルガン)での6年間を含み、投資銀行家だった。ロー氏はTechCrunchに電子メールで「私が住み、働き、学んできた米国やヨーロッパなどでは、デジタルメンタルヘルスのイノベーションが猛烈なスピードで起こっているのに比べ、東南アジアではメンタルヘルスケアにアクセスするのがいかに難しいかを認識し、金融機関を辞めなくてはいけないと感じました」と語ってくれた。

ThoughtFullの主な運営市場はシンガポールとマレーシアだが、現在は43カ国にユーザーがいる。2020年にサービスを開始した同社のアプリは、5つの言語に対応している。英語、バハサ・マレーシア、バハサ・インドネシア、北京語、広東語の5つの言語に加え、タミル語、タイ語、ベトナム語、タガログ語にも精通したコーチがいる。

ロー氏は、ThoughtFull社が各市場に合わせたサービスを提供するために、現地のヘルスケアシステムと密接に連携していると述べている。例えば、The Hive Southeast Asiaやマレーシア財務省の100%子会社であるPenna Capital(ペンナ・キャピタル)と提携し、パンデミックの影響で対面での相談を含むケアへのアクセスが困難になったマレーシアのメンタルヘルスのエコシステムをデジタル化する予定だ。

「ヘルスケアシステムは、さまざまなステークホルダー、構造、結果が絡み合っているため、本質的に複雑です。しかし、アジアのヘルスケアは、文化だけでなく、ケア提供から支払者や研究モデルに至るまで、システムが多様であるため、特に複雑なのです」とロー氏はいう。「そのため、参入障壁が高く、アジアのヘルスケアに大々的に参入する外資系企業が少ないのです」。

東南アジアでメンタルヘルスの専門家へのデジタルアクセスを提供するアプリには、最近ベンチャー資金を調達したIntellect(インテレクト)がある。ロー氏は、ThoughtFullが他のメンタルヘルス関連のスタートアップ企業と異なる点として、エンド・ツー・エンドのサービスに焦点を当て、ユーザーにパーソナライズされた予防と治療のオプションを提供し「より質の高いメンタルヘルスケアを提供するための完全に閉じたフィードバックループ」を構築することを挙げている。

ThoughtFullのシードラウンドは、ディープテック技術の開発や臨床研究を含む製品開発に使用される。

関連記事:アジア全体で心のケアをより身近にしたい遠隔メンタルヘルスケアのIntellectが約2.4億円調達

画像クレジット:ThoughtFull

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(文:Catherine Shu、Akihito Mizukoshi)

コロナ禍の孤立感に応え、心の健康ケアを参加しやすいビデオクラスにするMindLabs

心の健康ケアを日常的なルーティンにすることは難しい。すでに多忙で、ストレスを抱えていたらなおさらだ。MindLabsは、オンデマンドまたはライブのビデオクラスとコミュニティ機能を組み合わせることで、メンタルウェルネスを生活に取り入れやすくしたいと考えている。同社はプレシード資金調達から約11ヵ月後になる英国時間10月7日、350万ドル(約3億9000万円)のシードラウンドを実施したと発表した。

今シードラウンドは、PROFounders Capitalがリードし、Slack Fund、英国の衛星放送大手Sky(スカイ)の前CEOであるJeremy Darroch(ジェレミー・ダロック)会長、そして既存投資家のPassion CapitalとSeedcampが参加した。この発表は、10月10日の世界メンタルヘルスデーの3日前というタイミングで行われ、メンタルヘルスの問題に対する意識を高め、ケアへのアクセスを増やすことを目指している。

今回の新たな資金調達は、2022年の一般公開に向けて、MindLabsの製品やエンジニアリング、コンテンツ、マーケティングのための雇用に充てられる予定とのこと。

MindLabsは2020年、Adnan Ebrahim(アドナン・エブラヒム)氏とGabor Szedlak(ガボール・スゼドラック)氏によって設立された。2人は以前、自動車関連のサイト・コミュニティCarThrottleを立ち上げ運営していたが、そのビジネスは2019年にDennis Publishingに買収された。2020年初めて創業者たちに話を聞いたとき、彼らは次のスタートアップでメンタルヘルスに注力しようと決めたのは、特にパンデミックの間に、うつ病が急激に増加したからだと語った。

MindLabsはこの1年間で、エンジニアリング、プロダクション、マーケティングの各チームにリーダーを採用し、ベータ版アプリを完成させ、現在は16人のインストラクターを擁している。このスタートアップのプラットフォームは、2022年の第1四半期に提供開始される予定だ。エブラヒム氏がTechCrunchに語ったところによると、MindLabsのウェイティングリストには現在数千人のユーザーが登録しており、その理由の1つとして、約6万人のフォロワーを持つInstagramアカウントの成長が挙げられている。

MindLabsは、まず英国で発売され、その後、米国でもローンチされる。エブラヒム氏によれば英語圏以外の国にも展開していく予定で、それはこのプラットフォームは翻訳しやすいと考えているからだという。

同社のアプリには、メンタルウェルネス、心理学、神経科学の専門家が制作した100以上のオンデマンドビデオが用意されている。また、西ロンドンにあるスタジオでは、毎日ライブビデオクラスが開催される。その講師の1人が、瞑想や呼吸法の専門家である「The Breath Guy」ことRichie Bostock(リッチー・ボストック)氏だ。パンデミックの際に人々が経験した孤立感に対応するために、コミュニティ機能も組み込まれている。

また、MindLabsは、健康指標を把握するためのEEGヘッドバンドなどのハードウェアもいずれ発売する予定だ。エブラヒム氏によると、MindLabsはウェアラブルに移行する前にアプリを優先した戦略をとっており、できるだけ多くの人に利用してもらえるよう、手頃な価格のサブスクリプションプランを用意しているとのこと。

同氏はこう述べている。「脳波、心拍数、呼吸パターンなどの心のバイオマーカーを、既存または独自のウェアラブル機器で追跡することに、今でも非常に興奮しています。これにより、ユーザーの気持ちをより正確に、リアルタイムに把握することができ、その結果、ユーザーの気分を向上させるのに最適なビデオレッスンを提供することができると考えています」。

関連記事:【コラム】テックコミュニティにおけるメンタルヘルスの偏見をなくすために

画像クレジット:MindLabs

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(文:Catherine Shu、翻訳:Aya Nakazato)

精神疾患向けVRデジタル治療を手がけるBiPSEEが2.5億円調達、VRプロダクト開発や臨床試験に注力

精神疾患向けVRデジタル治療を手がけるBiPSEEが2.5億円調達、VRプロダクト開発や臨床試験に注力

精神疾患向けにVRを用いた新たな治療手法を開発しているBiPSEEは10月7日、プレシリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による2億5000万円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のBeyond Next Ventures、またANRI、Scrum Ventures。調達した資金により、うつ病患者向けのVRデジタル治療薬の開発および臨床試験を進め、VRデジタル治療の実現を目指す。

BiPSEEは、2017年に心療内科医が設立したMedTechスタートアップ。VR技術と医学的エビデンスに基づいた、精神疾患治療向け「VRデジタル治療薬」の研究・開発から製造販売までを手がけている。

このVRデジタル治療薬は、デジタルツールを用いて疾患を治療する「医療機器プログラム」(SaMD。DTxとも呼ばれる)の一種。既存の医薬品や医療機器と異なり、VRを用いることで患者の心理に対して働きかける治療アプローチを通じ、従来治療しきれなかった多くの疾患を治せる可能性を持った革新的な治療ツールという。とりわけ精神疾患は、他疾病と比べても薬物療法など既存の治療法のみでは奏功しにくい領域とされており、新しい治療方法が求められているとしている。

VRデジタル治療薬は、以下の点で特徴的という。
・患者の能動的な治療への参加を実現
・治療側の力量により治療効果や経過の差異が生じるメンタル領域において、世界中いつでも・どこからでも均一に質の高い医療サービスへのアクセスが可能
・医薬品や医療機器と比べて、高い費用対効果を実現できる

BiPSEEは、ネガティブな感情や事柄に対して繰り返し考えてしまう「反すう」という症状に着目。反すうは治療対象としてあまり注目されてこなかったが、うつ病をはじめとする疾患横断的な症状であり、増悪の要因ともなっていることが分かっているという。BiPSEEのVRデジタル治療薬は、VR空間での没入やインタラクションにより、反すうを抑制するために必要な自己肯定感を醸成することを可能とする。

現在、反すうを抱えるうつ病患者向けのVRデジタル治療薬について、高知大学医学部と共同研究を行い、同病院で臨床試験を進めるとしている。