腸の免疫調節に作用するメカニズムを発見し免疫医薬品を開発するアイバイオズが7.7億円を調達

腸の免疫調節に作用するメカニズムを発見し免疫医薬品を開発するアイバイオズが7.7億円を調達

創薬バイオテック企業アイバイオズ(AIBIOS)は6月11日、第三者割当増資による総額約7億7000万円の資金調達を発表した。引受先は、リードインベスターのSBI インベストメント、既存株主のBeyond Next Ventures、アクシル・キャピタル。

調達した資金により、免疫学に基づき、消化器・オンコロジー (がん)・ニューロサイエンス(神経精神疾患)および希少疾患の4疾患領域という研究開発パイプラインの中長期的な開発を実施。同時に、慢性炎症性疾患が長期的に悪化すると悪性腫瘍に至るリスクが高くなることから、がん免疫分野も強化していく方針という。戦略的ビジネスパートナリングを通じ医療機関および製薬企業と共同研究・開発を継続して行い、アンメット・メディカルニーズ(Unmet MedicalNeeds)に応える技術革新を活用した新薬創出を目指す。

AIBIOSは、事業創立時より免疫システムの重要性を重視しており、岡山大学と有機合成プラットフォームを通じ新規低分子医薬品創出の共同研究を行い、また慶應義塾大学と免疫疾患モデルを通じて、腸における過剰な炎症を抑える新しいメカニズムを発見し、腸管粘膜の新たな免疫調節機構を解明した。炎症性因子の抑制と粘膜修復の可能性を持った作用機序のある低分子は、さまざまな慢性炎症性疾患の治療に多大な貢献をするものと期待されているという。

AIBIOSは、腸管内の免疫システムのバランスに着目しており、生体防御の最前線で働く腸粘膜で発症する炎症性腸疾患(IBD。Inflammatory Bowel Disease)を対象とした新薬候補物AIB-301のグローバル開発を手がけている。

IBDは、最も患者数の多い指定難病であり、大腸と小腸など消化管に炎症が起こり、腫瘍を合併することもある疾患という。原因は不明で、根治できる方法がいまだにないそうだ。IBDでは主に下痢や腹痛といった症状が起こり、悪化した「活動期」と落ち着いている「寛解期」を繰り返す、極めて治療が難しい病気という。

このIBDを対象とするAIB-301は、免疫システムを過度に抑制せず、中長期的に使用できる新規医薬品としての開発を目指しているという。そのため、安定した治療過程を観察しながら適した診断ができるように、遺伝的要素や腸内細菌といった新規バイオマーカーも併せ持ってグローバル臨床試験の実施を計画しているそうだ。

また近年の臨床研究では、腸は独自の神経ネットワークを持っており、脳腸相関を介してお互いに密接に影響することが明らかになりつつある。北海道大学遺伝子病制御研究所とAIBIOSとの共同研究では、脳内の特定血管に免疫細胞が侵入し、微小炎症(MicroInflammation)を引き起こす、新しい「ゲートウェイ反射」を発見した。この血管部の微小炎症は、通常は存在しない神経回路を形成して活性化し、消化管や心臓の機能不全を引き起こすリスクがあることを解明した。

これらの発症メカニズムは慢性的なストレスにも関連しており、AIBIOSでは、米国の神経外科医師との共同研究を通じて、多発性硬化症やパーキンソン病の新規治療薬の開発しているという。加えて、慢性ストレスが「睡眠障害」を誘導し、さまざまな臓器に対して悪影響をおよぼしていることもわかってきた。これらの研究成果をもとに、腸疾患のみならず、抗炎症作用と免疫調節を介して、中枢神経系、呼吸器系疾患、自己免疫疾患の治療薬の開発を目指しているとした。

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カテゴリー:バイオテック
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