産業用リモートセンシングのスカイマティクスが日本初のAI米粒等級解析アプリ「らいす」公開

スカイマティクス らいす

産業用リモートセンシングのスカイマティクスは7月30日、スマホ写真ひとつで玄米等級判定を行える業界初のスマホアプリ「らいす」(iOS版Android版)の提供を開始した。

お米の生産者は、収穫後に農作物検査場で玄米等級の検査を受けるものの、想定より低い等級と判定された場合、持ち帰り再選別・再検査を行うといった手間と労力を要する作業が必要になるという。また、事前に自分で等級を調べる場合には、穀粒判別機能付きの高価な計測器を購入しなければならないという課題がある。

同社がリリースした「らいす」では、アプリ内のカメラ機能で撮影した米粒画像を、独自のAIシステムで自動解析し玄米等級の目安を判定・表示可能。高価な穀粒判別機能を有する計測器は必要なく、農作物検査を受ける前に自分で等級の目安を確認できるようにした。

これにより、持ち帰り・再選別・再検査の手間をなくし作業効率を高めることが可能となり、解析結果は、稲刈日・乾燥日・籾摺日・ロットNo・品種情報とセットで管理できる。農作物検査後、実際の検査等級の入力も可能。

また解析回数・ユーザー数・機能に応じた複数の料金プランを用意。個人農家から大規模農業生産法人まで全ての生産者が利用でき、無料トライアルも用意している。

同社は、ドローン撮影画像を活用した栽培管理向け葉色解析サービス「いろは」、収穫後向けのAI米粒等級解析アプリ「らいす」の提供により、生産者の栽培から収穫までの作業を効率化するスマート農業サービスの普及に貢献していくとしている。

2016年10月設立のスカイマティクスは、産業用リモートセンシングサービスの企画・開発・販売を手がけるスタートアップ。「あらゆる産業の課題をリモートセンシングで解決する」という信念と使命をもって、リモートセンシングデータが産業界で当たり前に使われる日を実現することを目指しているという。

肥料や農薬を葉の気孔から取り入れさせて99%の高効率で植物に吸収させるナノ粒子技術

植物の施肥や農薬の撒布は一般的に損失の大きい問題だ。今、工業生産や食品生産の農業で使用されている物質のわずか1%しか実際に植物に取り込まれていない。残りは土壌に流出している。カーネギーメロン大学のGreg Lowry(グレッグ・ローリー)氏のチームは世界で初めてこの比率を逆転させ、植物が最大99%の効率で分子を吸収し、わずか1%しか無駄にしない技術を実証した。

ローリー氏らの研究は、Nanoscale Communications誌で公開されている査読論文で概説されているように、植物に吸収させたい分子物質である成長や作物の収量を最適化するように設計された栄養素や、破壊的な虫や害虫から植物を守る殺虫剤などを、ナノ粒子でコーティングすることで実現している。

本誌は2019年に、この技術をデモンステレーション前の段階で紹介したことがある。現在、ローリー氏のチームは、植物の葉の表面にある気孔に合ったサイズのナノ粒子を実際に生産することができるようになっている。その作業は基本的に、葉の表面にある受容体のためのレゴブロックをカスタマイズして作り、そのレゴブロックに届けたい栄養素を結びつけて完璧にフィットさせるようなものだ。

この実証はチームの仮説を裏付けるものだ。これによってさらなる開発の可能性や最終的には商用化の見通しも立てられるようになった。収穫可能な作物の40%がいまだに植物病害で害虫などで失われていると同社は推定しており、この技術はおそらく農薬としての商業利用の可能性が最も高いと考えられている。また、この技術を使うことで植物の栄養分や肥料の吸収率を上げて生長を刺激することもできる。それらを組み合わせることで、1回のナノ粒子の投与で防除と施肥の両方ができるため、労働生産性においても植物や作物の生産量を増加させる大きな可能性がある。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ケニアの農業ベンチャーApollo AgricultureがシリーズAで約6.5億円を調達

Apollo Agriculture(アポロアグリカルチャー)は、ケニアの小規模農家たちの収益を最大化する支援をすることで、利益を生み出すことができると考えている。

それこそが、Anthemisが主導するシリーズAの資金調達ラウンドで600万ドル(約6億5000万円)を調達した、ナイロビを拠点とするこのスタートアップのミッションなのだ。

2016年に創業されたApollo Agriculture は、運転資金、より高い作物収量のためのデータ分析、主要な資材や機器の購入オプションなどを提供する、モバイルベースの製品群を農家に提供している。

「農家が成功するために必要なすべてを提供します。それは、植える必要がある種子と肥料だったり、彼らがシーズンを通してその作物を管理するために必要なアドバイスだったりします。そして不作の年に農家を守るために必要な保険と……最終的はファイナンシングですね」とTechCrunnchとの電話で語ったのは、Apollo AgricultureのCEOであるEli Pollak(エリ・ポラック)氏だ。

Apolloが対応可能な市場には、ケニアの人口5300万人にまたがる多くの小規模農家が含まれている。同社が提供するものは、農家自身が思い描くプロット上で、より良い結果を達成するための技術と、リソースへのアクセス不足という問題に対する支援だ。

スタートアップが設計したのは、ケニアの農家とつながるための独自のアプリ、プラットフォーム、そしてアウトリーチプログラムである。Apolloは自身が提供するクレジットと製品を提供するために、モバイルマネーM-Pesa、機械学習、そして衛星データを使用している。

ポラック氏によれば、TechCrunch Startup Battlefield Africa 2018のファイナリストだった同社は、創業以来4万件の農家を支援し、2020年には支払いが発生する関係が2万5000件に達すると語っている。

Apollo Agricultureが始動

Apollo Agricultureの共同創業者であるベンジャミン・ネンガ氏とエリ・ポラック氏。

Apollo Agricultureは、農産物の販売とファイナンシング時のマージンから収益を生み出している。「農家は支援パッケージに対して固定価格を支払いますが、その支払期限は収穫時です。ここには必要な費用がすべて含まれており、隠れた追加料金は発生しません」とポラック氏は語る。

シリーズAで調達された600万ドルの使途について彼は「まずは、成長への投資を継続することが本当に重要です。すばらしい製品を手に入れたような気がしています。顧客の皆さまからすばらしい評価を頂けていますので、それをスケーリングし続けたいと思っています」と語った。すなわち採用、Apolloの技術への投資そしてスタートアップ自身の、セールスおよびマーケティング活動の拡大に投入するということだ。

「2つ目は、顧客の方々に貸し出す必要がある運転資金を引き続き調達できるように、バランスシートを本気で強化するということです」とポラック氏は述べている。

現時点では、ケニアの国境を越えたアフリカ内での拡大は構想されてはいるものの、短期的に行われる予定はない。「もちろんそれはロードマップ上にあります」とポラック氏は語った。「しかしすべての企業と同様に、現在はすべてが流動的です。したがって、新型コロナウイルス(COVID-19)で物事が揺れ動くのを見定める間、即時拡大の計画の一部は一時停止しています」。

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アフリカの小規模農家の生産高と収益を向上させようとするApollo Agricultureの活動は、共同創業者たちの共通の関心から生まれた。

ポラック氏は、スタンフォード大学で工学を学んだ後、The Climate Corporation(モンサント傘下のデジタル農業企業)で米国内の農学に従事した米国人だ。「それがApolloに期待をかける理由になったのです。なにしろ私は他の市場を見たときに『おいおい、アフリカ全体ではメイズ、つまりトウモロコシの作付面積が20%も大きいのに、米国の農家に比べてアフリカの農家は驚くほど生産量が少ないぞ』と口に出したのです」とポラック氏は語る。

またポラック氏の同僚であるBenjamin Njenga(ベンジャミン・ネンガ)氏は、自身の成長過程の体験からインスピレーションを得た。「私はケニアの村の農場で育ちました。小規模農家だった私の母は、低品質の種子を使い肥料を使わずに作物を植えていました。毎年エーカーあたりの収穫は5袋しかありませんでした」と、彼は2018年にラゴスで開催されたStartup Battlefield in Africaで聴衆に語りかけた。

画像クレジット:Apollo Agriculture

「私たちは、もし母が肥料とハイブリッド種子を使用したなら、生産量が倍になって、私の学費の支払いが容易になることはわかっていました」。ネンガ氏は、母親はこれらの準備を整えるためのクレジットにアクセスできなかったと説明した。それが彼にとってApollo Agricultureを推進するための動機となっているのだ。

Anthemis Exponential VenturesのVica Manos(バイカ・マノス)氏が、Apolloの最新の調達を主導したことを認めた。マノス氏はTechCrunchに対して、英国を拠点とし主にヨーロッパと米国に投資を行う同VCファームは、南アフリカのフィンテック企業Jumo(ジャンボ)への支援も行っており、アフリカのスタートアップへの投資を引き続き検討していると語った。

Apollo AgricultureのシリーズAラウンドには、Accion Venture Lab、Leaps by BayerそしてFlourish Venturesなども名を連ねている。

農業はアフリカにおける主要な雇用創出産業だが、ベンチャー企業や起業家たちからは、フィンテック、ロジスティクス、eコマースと同じような注目は集めていない。アフリカ大陸のアグリテックスタートアップたちが、資金調達で遅れをとっていることは、Disrupt AfricaとWeeTrackerによる2019年の資金調達レポートに報告されている。

VC資金を獲得した注目すべきアグリテックベンチャーとしては、ナイジェリアのFarmcrowdyIBMと提携したHello Tractor、そしてナイロビを拠点とするゴールドマンの支援を受けたB2B農業サプライチェーンスタートアップのTwiga Foodsなどがある。

Apollo AgricultureがTwigaを競争相手と見なしているかどうかという問いに対して、CEOのエリ・ポラック氏ははコラボレーションを探っていると答えた。「Twigaは将来的にパートナーになる可能性のある会社かもしれません」と彼はいう。

「私たちは高品質の作物を大量に生産するために農家と提携しています。Twigaは農家が収量に対して安定した価格を確保できるように支援するための、すばらしいパートナーになる可能性があります」。

プロ農家の栽培技術を動画で継承するAGRI SMILEが4000万円調達、JA蒲郡市で導入へ

「一部の技術が高い農家を除き、業界全体として栽培技術が十分に行き届いていないことに課題感を持っている。トップクラスの農家の栽培技術が他の就農者にも伝わっていく仕組みを作り、農をつないでいきたい」

そう話すのはアグリテック領域のスタートアップ・AGRI SMILE創業者で代表取締役を務める中道貴也氏。同社では動画などを用いてプロ農家の栽培技術を継承していくサービスを展開している。

農業界においては農業就業人口の減少や高齢化(約7割が65歳以上)、次世代の担い手不足などが大きな課題として取り上げられることも多い。従来はごく限られた人の間でのみ伝わってきた「栽培技術や知見」を動画にすることによって、業界全体に届けていこうというのが中道氏たちのチャレンジだ。

その取り組みを加速させるべく、AGRI SMILEでは1月23日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額で4000万円を調達したことを明らかにした。

調達した資金を活用して人材採用を強化し、プロダクト開発や事業展開を進める計画。なお今回同社に出資した投資家陣は以下の通りだ。

  • ザシードキャピタル
  • マネックスベンチャーズ
  • 本田謙氏(フリークアウト・ホールディングス代表取締役社長)
  • 西尾健太郎氏(ゲームエイト代表取締役)
  • 長谷川祐太氏(Evrika代表取締役社長)
  • 高野秀敏氏(キープレイヤーズ代表取締役)

農家の栽培技術を体系化した動画でナレッジを次世代に

AGRI SMILEは2018年8月設立のスタートアップ。創業者の中道氏は兵庫県丹波市の生まれで、祖父母が農家を営んでいたこともあり、子どもの時から農業に触れて育った。進学先の京都大学大学院農学研究科では生物化学や分析化学を学び、ビール酵母を用いたバイオスティミュラント資材の研究開発に没頭。対象資材は地球環境大賞で農林水産大臣賞を受賞している。

幼少期から農業を手伝っていたことや大学で研究に携わっていたこともあり「販売よりも栽培の方が好き。科学や栽培技術に特に興味がある」という中道氏。研究者としてではなく、農業界に貢献できる仕組みを起業家として生み出す道を選び、会社を立ち上げた。

そのAGRI SMILEでは現在「AGRIs」「AGRIs for Team」という2つのプロダクトを展開している。

AGRIsはすでに農業を営んでいる人や農業に関心がある人など個人を対象としたサービス。もう1つのAGRIs for Teamは直接的な顧客が各地のJAとなり、JAや生産者とタッグを組みながら産地の若手農家や新規就農者などにコンテンツを提供する。

軸となるのはプロ農家の技術を体系化した動画コンテンツだ。これまで勘や経験を頼りに行われてきた栽培技術を撮影し、理解しやすいように解説文などの編集を加えながら各工程を1分前後の短尺動画としてまとめている。

家族経営が一般的な農業においては技術や知識が親から子へと体で継承されるため、これまではナレッジが広がりにくい構造だった。中道氏によると何らかのノウハウを学びたいと思った場合、最近は2〜3ヶ月に一度発行される紙の雑誌や、YouTubeを中心としたオンラインの情報を活用する人も多いという。

たとえば実際にYouTubeで「トマト 栽培」と検索してみると関連する動画がいくつも見つかり、中には数万〜数十万回再生されているものもある。

ただユーザーにヒアリングをすると「体系的にまとまっているものが少ない、正しい情報なのか信頼性にかけるものがある、かゆいところに手が届かない」といった声も聞こえてきたそう。試しに中道氏らが何本か動画を作ってみたところ反応が良かったため、一定数のニーズはあると手応えを掴んだ。

現在動画の数は約220本。AGRI SMILEの理念に共感した各地の農家が協力してくれていて、現地にいる学生インターンや地域おこし協力隊のメンバーなどが動画撮影を行う。まずは主要40品目に対して合計1000本の動画を制作するのが当面の目標だ。

「農家の人たちは農作物の種類や品種、地域の土壌、気候などにあった栽培方法を日々探求しているがそれには膨大な時間が必要。全国のプロ農家のノウハウにアクセスできる仕組みを通じて独自の栽培方法を確立しやすい環境を整え、品質や収益の向上に貢献したい。また農業を始めるハードルを下げることで次世代の担い手を増やしたり、一般の人が農業への関心を深めるきっかけも作っていければと考えている」(中道氏)

AGRIsではこの動画コンテンツに加えて「プロ農家への質問機能」と「1000以上の農薬の情報を集めたデータベース」を合わせて提供している。料金は月額定額制のサブスクモデル。新規就農者は月額1480円から、それ以外のユーザーは2980円から利用可能だ(どちらも年間契約の場合の料金。農薬DBは無料で誰でも利用可能)。

昨年11月のローンチということもありまだまだ規模は小さいながらも、少しずつ有料ユーザーも増えてきたそう。規模が拡大すれば、ゆくゆくは動画撮影に協力してくれた農家に対してレベニューシェア形式で収益を分配することも検討している。

JAや生産者とタッグ、産地の技術を継承へ

このAGRIsの仕組みをベースに“産地内”で農をつないでいくために開発したのがAGRIs for Teamだ。こちらも動画がメインにはなるが、JAや生産者と密に連携。サービス導入先となるJAのスタッフが産地独自の技術を撮影し、AGRI SMILEが開発面やコンテンツ制作など一連のサポートを行う。

JAが月額利用料などを負担し、産地の若手農家や新規就農者は無料でサービスを使うことが可能。動画配信のほかオンライン上で疑問点を質問できる機能も備える。産地独自の技術を、限られたメンバー内で共有する点がAGRIsとの大きな違いだ。

「たとえば『剪定』に限っても様々な種類があるので、闇雲にやっていればそれだけで200、300本の動画になってしまう。自分たちの役割は科学的な知見に基づきながら、そこを上手くパターン分けして体系化していくこと。動画を見て欲しいのが新規就農者なのか、産地の中堅農家の人たちなのか、アルバイトさんなのかによっても必要な情報は異なる。動画の方向性を決める段階から密にサポートしている」(中道氏)

中道氏の話では、JA側としては産地の技術レベルを底上げしたいという思いがあることに加え、合併に伴い栽培技術を指導する営農指導員1人あたりの業務負担が増加している点に課題感を抱えているそう。栽培技術を整理した動画だけでなく質問機能でのやりとりを蓄積していくことで、指導員のサポートや負担の削減、後継者を育成しやすい環境整備などにも繋がるという。

実際の動画のイメージ。必要に応じてテキストなどを用いてわかりやすいように編集した上で配信している

AGRIs for Teamは第一弾として全国有数の柑橘産地でもある愛知県のJA蒲郡市に導入が決定済み。まずは柑橘類から運用をスタートし、産地の技術をつなぐ基盤を整えていく計画だ。

AGRI SMILEにとってはこのAGRIs for Teamが事業の重要な柱になり、今回の資金調達も同サービスの開発や導入を加速させることが大きな目的。組織体制を強化し、さまざまな産地や品目での展開を目指す。

農薬業界に革新を、日本発農薬スタートアップのアグロデザイン・スタジオが1億円を調達へ

アグロデザイン・スタジオ代表取締役社長の西ヶ谷有輝氏(左から2番目)と投資家陣

「これまでなかなかイノベーションが起きてこなかった農薬業界において、自分たちがその源流になりたい」——そう話すのは農薬×創薬領域に特化して研究開発を行うアグロデザイン・スタジオで代表取締役社長を務める西ヶ谷有輝氏だ。

医薬業界で創薬に取り組むスタートアップについては耳にすることがあれど、農薬業界では珍しい。

西ヶ谷氏によると医薬の場合は新薬の約60%がスタートアップ由来とも言われ、新興企業がリスクを取って研究開発したものを大手製薬企業が買収やライセンス購入によって引き継ぐ一連のエコシステムが確立されている。一方で農薬はまだまだ大手企業が自社開発をするケースがほとんど。海外でもこの領域のスタートアップはごくわずかだという。

アグロデザイン・スタジオが目指しているのはまさに医薬モデルを農薬産業にも取り入れ、新しい農薬を社会に届けていくこと。そしてそれをビジネスとしてしっかりと成立させ、継続していくことだ。

同社は1月16日、その取り組みを加速させるべくリアルテックファンド、インキュベイトファンドから資金調達を実施したことを明らかにした。すでに締切済みのセカンドクローズも含め、社名非公開の銀⾏系ファンドを加えた3社よりシードラウンドで総額1億円を調達する。

鍵は「酵素データ」、独自手法で毒性リスクの低い農薬実現へ

近年は農薬が人や環境に与える悪影響が大きなトピックとなっている。たとえばグリホサート系除草剤(発がん性の疑い)やネオニコチノイド系殺虫剤(ミツバチの大量死の疑い)など、世界市場で数千億円規模のベストセラー農薬を“発売禁止”にする国が広がってきた。

一方で無農薬有機栽培は収穫量が低下するため、国内の0.2%の農地でしか行われていないのが現状。アグロデザイン・スタジオでは「99.8%の農地で使われる農薬をより安全なものに」をビジョンに掲げ、多くの栽培で使われる農薬をより安全なものにしていくことを目指している。

同社は東京大学や農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)で新規農薬の研究開発を行っていた西ヶ谷氏が2018年3月に立ち上げた農薬スタートアップ。従来の製薬方法をアップデートすることにより、独自の方法で新しい農薬の開発に取り組む。

一部の国で発売禁止になった農薬は発売から十数年〜数十年経過したものも多く、その開発方法には改良の余地があるというのが西ヶ谷氏の見解だ。従来は候補となる化合物を標的害虫にふりかけ、効果のあったものを抽出する「ぶっかけ探索法」で開発されることが多かった。このやり方ではなぜ効いたのかはわからなくても、とにかく効果があればOKとするスタイルだったそうだ。

もちろん安全試験などはきちんと実施しているものの、これだけでは必ずしも人に害がないかはわからず、いずれ発売禁止となった農薬と同じ道をたどる可能性もある。だからこそ「ある種“運任せ”な製薬方法から、理論的なデザイン(IT創薬)へと変換する必要がある」と西ヶ谷氏は話す。

「これまで農薬は典型的な製造業だったが、これを情報産業に変えていくことが重要だ。実際に医薬系の企業は“ものを売るのではなくそれに付随したデータを扱う”情報産業として自分たちを位置付けている。農薬においても同様の変革が必要。そのためには創薬のコンセプトから変えていかなければならない」(西ヶ谷氏)

アグロデザイン・スタジオの薬剤デザインでは「酵素データ」が鍵を握る。たとえば殺虫剤を作る場合、害虫は殺したいがミツバチのような益虫や人間には害を与えたくない。そこで同社では「害虫だけが持っている酵素を見つけ出し、酵素のバイオデータを取得。それを基にコンピュータを用いながら特定の酵素の働きを止める薬剤を作る」アプローチを取っている。

西ヶ谷氏いわく「従来の製薬手法が散弾銃のようなものであれば、(自社の手法は)スナイパーが1点を狙い撃ちするようなイメージ」。害虫にだけ効く殺虫剤を作れることになる。

この創薬方法(In silico 創薬)はデータを取れることが前提。医薬品業界ではかなり発展している方法だが、これまで農薬業界ではそのためのデータがなかなか取得できなかった。詳しくは後述するがアグロデザイン・スタジオではこのデータを取得する工程に注力している。

現在アグロデザイン・スタジオでは殺虫剤を含めて6つのパイプラインの開発を進めている。殺虫剤と並んで研究開発の進捗が良いのが、2018年に同社が東大IPC起業支援プログラムに採択された際にも少し紹介した「硝化抑制剤」だ。

硝化抑制剤とはその名の通り硝化菌を殺菌する薬剤のこと。硝化菌は農地に撒かれた肥料を食べてしまうだけでなく、その排泄物が地球環境を汚染してしまう。そのためこの菌を対峙する硝化抑制剤は撒けば撒くほど環境保全に繋がるという特徴を持つ。

ただしトップクラスのシェアを誇る既製品の1つが、大量に撒いた結果として残留農薬の問題に繋がりニュージーランドで使用禁止になってしまった例もある。アグロデザイン・スタジオではこの問題をクリアするために少量でも強力な効果を持つ硝化抑制剤を研究中。西ヶ谷氏の話では「(使用禁止になったものと比べ)4万倍の殺菌効果がある」ものを開発しているそうだ。

もちろん強力な薬剤は一歩間違えれば人体にも悪影響を及ぼす恐れもあるが、同社では硝化菌のみが持つ酵素にだけピンポイントで効く薬剤をデザインすることで毒性リスクを抑えている。実際に開発に成功すれば、収穫量アップと環境負荷削減を両立できる可能性があり、SDGsの観点でも貢献度が高いという。

医薬モデルを農薬産業にも取り入れ事業推進

アグロデザイン・スタジオではこのような手法で複数の農薬の研究開発を行なっているが、西ヶ谷氏によるとそもそも創薬系のスタートアップには大きく2つのパターンがある。1つは薬を作る技術を提供する「技術系(創薬支援型)」の企業。そしてもう1つがゼロから薬を作る「創薬パイプライン系」の企業で、アグロデザイン・スタジオは後者に該当する。

ゼロから薬を作るタイプの企業にとっては「必ずしも技術的な面が優位性に繋がるのではなく、酵素のデータをいかに内部で持っているか。データを取るところに長けているかが重要」(西ヶ谷氏)になり、そこが同社の強みだ。

データを取る部分は特許を取得するような技術ではなく“ノウハウ”に近いそう。特定の研究室が脈々と受け継いできたような類のもので、そもそも専門のコミュニティに入れないと得るのが難しい。西ヶ谷氏自身が17年の酵素研究のキャリアがあり、この領域に精通していることも大きいという。

一方で取得したデータを解析する手法はパイプラインごとに開発して、それぞれ特許申請をする考え。個々で特許を取るのはもちろん労力がかかるが、そうすることで独自の手法を強固なものにしていく考えだ。

「自分たちは技術開発ではなくサイエンスに投資をしている。サイエンスとは法則を見つけることであり、(アグロデザイン・スタジオにとっては)データを取る工程。そこが大きな特徴であり、他社がなかなか真似できない強みでもある」(西ヶ谷氏)

確かなノウハウを持つ研究室などでは同じアプローチを実現できる可能性もあるが、アカデミアの研究者が必ずしもビジネスに関心があったり、知財に精通しているわけではない。西ヶ谷氏は「ビジネスに理解のある研究者のチームが、それを踏まえた方法でデータを取得していること」をポイントに挙げていた。

その反面、自分たちが注力していない部分では研究室や大手農薬会社と積極的にタッグを組む。冒頭でも触れた医薬業界のモデルと同じだ。

前段階となる基礎研究においてはアカデミアの研究者らと共同研究を実施し、新しい農薬に繋がる”タネ“を見つけて会社で引き受ける。中には今まで農薬をやっていなかったが「もしかしたら農薬のタネになるんじゃないかと心の中に留めていた」研究者もいるそうで、ゼロから一緒に研究するケースもあるという。

また農薬は「1剤当たり100億円以上の研究開発費と10年以上の歳月がかかる」とされているように、実際に世に出すまでに膨大なコストと時間が必要だ。アグロデザイン・スタジオではアカデミアの基礎研究をライセンスインした後、自社でキモとなるPoCの確立と知財の取得を行い、農薬会社にライセンスアウトする形を取っている。

要は自分たちは有効成分を作ることに集中し、登録用試験や製造・販売は知見と予算のある農薬会社にバトンタッチする構造だ。

「実際に薬剤を作るとなると、国によって環境や温度が異なるため国ごとにローカライズが必要になりハードルが高い。一方で成分に関しては共通したものが使えるので、1つの原体を作ればグローバルで展開できるチャンスもある。(ライセンスアウト先としては)国内だけでなく海外の農薬会社も視野に入れている」(西ヶ谷氏)

アグロデザイン・スタジオのパイプライン。時間を要するので参入障壁自体は低くないものの、技術革新が進んでいない領域で参入企業も多くないのでチャンスは十分にあるという

繰り返しになるが農薬を世に出すまでは複数回・複数年に渡る試験などをクリアしていくことが必須であり、長期戦・体力勝負となる領域だ。アグロデザイン・スタジオではこれまで研究開発はもちろん、スタートアップのビジネスとしても成立するようにビジネスモデルのブラッシュアップなども行ってきた。

昨年9月に開催されたインキュベイトキャンプでは総合で2位にもランクインしたが、今回の資金調達においてもコアとなる創薬メソッドだけでなく、ビジネスモデルも一定の評価を得たという。

調達した資金は人材採用の強化や研究開発へ投資をしていく計画。進行中のパイプラインの中では殺虫剤と硝化抑制剤のライセンスアウト・販売を最初に見込んでいて(2023年のライセンスアウトが目標)、それに向けた農薬候補剤の改良や温室試験、安全性試験などの取り組みを加速させる。

「乗り越えなければいけない壁はいくつもあるが、1つ目のライセンスアウト事例をいかに作るかが大きな関門。これを実現できれば農薬業界でもこのビジネスモデルが成り立つことを実証できるし、技術的な面も含めて新しい道を示すことができる。農薬業界においてGenentechのようなスタートアップの先駆けとなる存在を目指していきたい」(西ヶ谷氏)

MITが「サイバー農業」でバジルの風味を最適化

窓際に置いたプランターにバジルの種をまいて、定期的に水をやりながら育てていた日々は終わりを告げた。機械学習によって最適化された水耕栽培が、より強烈な風味を備えた優れた作物を作るようになった今では、これまでのやり方にはもはや意味がないことなのだ。バジルソースの未来がここにある。

とはいえ、なにもソースを改良したいという願望からこの研究が行われたわけではない。これはMITのメディアラボとテキサス大学オースティン校による、農業の改善と自動化の両者を理解することを目的とした研究の成果である。

PLOS ONEが米国時間43日に発表したこの研究では、与えられたゴールを達成するための栽培環境を発見し、栽培戦略を実践できるかどうかが、研究のテーマだった。今回与えられたゴールは、より強い風味をもったバジルの栽培である。

そのような作業には、変えるべき膨大なパラメータが存在している。土壌の種類、植物の特性、散水の頻度と量、照明などだ。そして測定可能な結果、すなわちこの場合は風味を放つ分子の濃度が得られる。これは、機械学習モデルにうまく適合できることを意味している。さまざまな入力から、どれが最良の出力を生成するかについての予測を下すことができるからだ。

MITのセレブ・ハーパー(Caleb Harper)氏は、ニュースリリースの中で以下のように説明している。「私たちは、植物が出会う経験、その表現型、遭遇する一連のストレス、そして遺伝子を取り込み、それらをデジタイズして植物と環境の相互作用を理解できるような、ネットワーク化されたツールを開発したいと本気で思っているのです」。これらの相互作用を理解すればするほど、植物のライフサイクルをより良く設計できるようになる。そのことによって、おそらく収量は増加し、風味は改善し、そして無駄が削減されるはずだ。

今回の研究では、チームは、風味の濃度を高めることを目的として、植物が受ける光の種類と露光時間の、分析と切り替えに限定した機械学習モデルを用意した。

最初の9株の植物は、バジルが一般的に好むと思われる従来の知識を用いた手作業の露光計画に従って栽培が行われた。栽培された植物は収穫・分析された。次に単純なモデルを使用して、最初のラウンドの結果を考慮に入れ、類似はしているもののわずかに調整された露光計画が作成された。そして3回目にはデータからより洗練されたモデルが作成され、環境への変更を推奨する追加の機能も与えられた。

研究者たちが驚いたことに、このモデルは非常に極端な対策を推奨した。すなわち植物に対してUVライトを24時間休むことなく照射せよというものだ。

おわかりのように、当然これはバジルが野生で生育する方法ではないし、日光が昼も夜も力強く注ぎ続ける場所もめったに存在しない。その意味で白夜が存在する北極と南極は魅力的な生態系だが、風味豊かなハーブとスパイスの産地としては知られていない。

にもかかわらず、ライトを照射しっぱなしにするという「レシピ」は実行された(なんといっても実験だったので)、そして驚くべきことに、このことによって風味に関わる分子が大幅に増加したのである。その量は実験対照植物の倍になった。

「このやり方以外で、これを発見することはできなかったでしょう」と語るのは論文の共著者であるジョン・デ・ラ・パラ(John de la Parra)氏だ。「南極に居るのでない限り、実世界で24時間の光照射を行うことはできません。それを発見するためには人工的な状況が必要でした」。

とはいえ、より風味豊かなバジルは歓迎すべき結果だが、ここでのポイントはそこではない。チームは、この方法で優れたデータが得られ、使用したプラットフォームとソフトウェアが検証されたことをより喜んでいる。

「この論文は、多くのことに応用するための第一歩として読んでいただくこともできますし、これまで開発してきたツールの力をご披露するものでもあるのです」とデ・ラ・パラ氏は語った。「私たちが開発したようなシステムを使うことで、 収集できる知識の量を遥かに素早く増やすことができるのです」。

もし私たちがこの先世界を養おうとするなら、それは黄金色に波打つ穀物。すなわち旧来の農業手法によって、成し遂げられるわけではない。一貫生産、水耕栽培、そしてコンピュータによる最適化。21世紀の食料生産を支えるためにはこれらすべての進歩が必要とされる。

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(翻訳:sako)

農業食品 ―― 価値ある8兆ドル産業

大麻入りの飲み物。研究室で育成されたハンバーガー。瓶入りの完全な食事 。消費者、小売業者、そして農家たちは、次世代の食品に飢えており、投資家もその味を試しつつある。農業食品テクノロジーのスタートアップに対する初期ステージ投資は2017年には101億ドルに達した。これは前年に比べて29%の増加である。

農業食品(Agrifood)という言葉は2つの部分に分けることができる。「農業技術」(Agritech)の部分は農家を対象とした技術を指す。対照的に「食品技術」(Foodtech)の部分は、加工業者、小売業者、レストラン、そして消費者をターゲットとしている。共同で両者は、農場から食卓に至る生産ラインのすべての部分に、幅広い影響力を与える。

最近の食品技術投資は、Delivery HeroのIPOを筆頭にして、ele.meInstacartの数百万ドルに及ぶラウンドで 活況を呈している。とはいえ、農業技術の投資も負けずに追い付こうとしている。Indigo AgricultureとGinkgo Bioworksはそれぞれ、2億300万ドル2億7500万ドルを調達した。

また、この分野での買収活動も増えている。最近のニュースでは、UberとAmazonの両社が、Deliverooと買収に関する話し合いをしたことが示唆されている。その一方で、John Deereはロボット会社Blue River Technologyのテーブルに3億500万ドルを積み、DuPontは農業管理ソフトウェアのGranularを3億ドルで買収した。

なぜ農業食品への関心が高まっているのだろうか?

食品は巨大な市場であり、急速に変化している

1958年には、地球上に30億人の人間がいた。現在では、人口は76億人に達しており、2100年には112億人を突破する予定だ。食料を供給しなければならない口の数は多い。

しかし、食品市場の魅力は量的なものだけではない。実際、ベネットの法則に従えば、人々の収入が増えるにつれて、食の嗜好はより多様化する。多様性を追求するこの経済的な強制は、倫理的プロダクトを好む消費者の増加によって補完されている。多くの人々が、食品と生態系、健康、そして動物の福祉との関係を意識している。米国のビーガンの数は過去3年間で6倍になり、英国では過去10年間で3倍以上に増加している。

これらの2つの流れが、スーパーマーケットの棚やレストランのメニューを急速に進化させることにつながった。消費者たちは新しい健康「スーパーフード」を発見するのに熱心だ。例えば昆虫
GrubCricke)や、Huelのような代替食品オプションからallplantsのようなビーガンミールボックスまでを含む新しい消費形態などが挙げられる。

農業技術に目を向けてみると、消費者の好みに応えるための代替生産モデルも生まれている。例えばGrowUpLettUs Growといった総合農場では、農業の環境への影響を劇的に減らすことができた。

人口の増加と食事の多様化という上記の2つの要素を組み合わせることで、投資家の食欲をそそる料理が生み出される。世界の農業ならびに食品産業は、少なくとも8兆ドルの価値があると見積もられている。

新しい技術が大きなチャンスを生み出す

食品と農業のバリューチェーンはボトルネックと非効率性で溢れている。それらのうちのいくつかは、よく知られている技術を用いたインテリジェントなアプリケーションで解決することができる。

例えば、慎ましいオンライン市場がある。YagroHectare Agritech、そしてFarm-rなどを含む市場では、農家が機械や商品を取引し、WeFarmのようなピアツーピアプラットフォームでは知識共有が可能になる。COLLECTIVfoodPesky Fish、そしてCOGZなどの食品調達市場や、FarmdropOddboxのような消費者直販サービスも出現している。

はるかに複雑な技術ソリューションもある。

その中の1つである遺伝工学は、たくさんの「考えることを強いる食品」を提供している。実際国連は、世界の増加する人口に対して食糧を供給するためには、2050年までに食糧生産量を70%増やさなければならないことを示唆している。遺伝子工学は世界の作物収量を22%増やすことができるだけでなく、収穫前損失の回避にも役立つ。

この目的のために、CRISPRが作物の栽培に革命を起こしている。CRISPR技術は、作物が光合成とビタミン含量を最適化することを助ける。2013年にタバコに対して最初に試験されて以来、CRISPRは、コムギや米からオレンジ、トマトなどの多くの作物に使用されて来た。作物の害虫への耐性向上から、栄養成分の改良まで様々な応用が行われている。CRISPRは家畜にも適用されている。スコットランドのロズリン研究所では、研究者たちはCRISPRを使って、ウイルス耐性ブタをの開発に成功している。

同じように、 セルラー(細胞)農業は大きな進歩を遂げている。セルラー農業とは、バイオテクノロジーを食品ならびに組織工学と組み合わせて、実験室の中で培養された細胞から、肉や皮革などの農業製品を生産する手法である。

セルラー農業やそれらを応用する企業たち(例えばMeatableHigher Steaksなど)が、どれほど劇的に農業と食糧生産を変えているのかは簡単にわかる。

したがって投資家たちは、「クリーンミート」業界を一口味わってみる誘惑に駆られがちだ。ヨーロッパでは、Mosa Meatが880万ドルを調達したばかりだし、米国のMemphis Meatsは2017年に1700万ドルを調達した

そうした製品はまだ店の棚に並んではいないが、その魅力は明らかだ。食肉市場は2025年までに7.3兆ドルに成長し、2050年までには需要が73%増加すると予想されている。そして、クリーンミート技術は、肉の生産を実質的に無限に拡大することを可能にする。わずか2ヶ月で、10匹の豚から得たスターター細胞を使って、1培養基あたり5万トンの豚細胞を培養することができる。これは、肉の生産コストとその環境コストを劇的に下げることができる。「伝統的な」肉と比較して、クリーンミート1ポンドあたり、必要な水は6分の1、排出される温室効果ガスは4分の1となる。

人工知能と機械学習もまた農業に影響を与えている。そのなかでも主要なチャンスの1つが、精密農業である。

画像認識、センサー、ロボット工学、そしてもちろん機械学習の進歩によって、農家は作物の状態に関する、より良い情報を受け取るようになった。Hummingbird TechnologiesKisan Hubなどのスタートアップは、人間による「作物の見回り」を上回るソリューションを開発した。同様に、Observe Technologiesは、魚の養殖業者に対して、給餌を最適化するための、AIによる情報を提供する。

屋内に目を向けると、Xihelm(情報開示:Oxford Capitalが投資家である)は、ロボット化された室内収穫を可能にするマシンビジョンアルゴリズムを開発している。このような技術は、農業における労働力不足を解決するのに役立つ。労働力不足によって2017年には英国での労働コストは9〜12%上昇しているのだ。

食品が農場から小売業に移動するとき、サプライチェーンは扱いにくく、管理が難しい場合が多い。その結果、食品には400億ドル規模の不正の問題がつきまとう。この問題を解決するために、Provenanceなどの企業が提供するブロックチェーン技術が適用されている。Walmartは最近、葉物野菜のサプライヤーたちに対して、そのデータをブロックチェーンにアップロードすることを要求することを発表した。このことで食品をその生産者まで(1週間ではなく)2.2秒で遡ることができるようになる。

農業食品テクノロジーへの馴染みはまだ薄い

農業食品市場は巨大で投資の機会も多いものの、依然としてハイテク投資家の好きな料理ではない。もちろん、2017年には投資額は101億ドルに増加している。しかし同じ年にはフィンテックは394億ドルに達しているのだ。

これにはいくつかの理由がある。デジタル化は進んでいるものの、その速度は遅い。農家は当然ながらリスク回避的だ。彼らの回避傾向は、活動の季節変動性と失敗可能性によって強化される。ほとんどの作物は年に一度だけ生産されるので、収穫に失敗するとその影響は劇的かつ長期に及ぶ。大規模な技術的ソリューションを実装することにはリスクを伴う。したがって現状から離れる決定は気軽に下すことはできない。

規制はセクターにとって大きな考慮事項だ。欧州司法裁判所は最近、CRISPRで作られた作物に関しても、遺伝子組み換え作物と同じ期間の承認期間を経なければならないという裁定を下した。2018年にはフランスで、ベジタリアンおよびビーガン向けの完全植物性製品に対して「肉」や「乳製品」といった用語の使用が禁止された(これまでは完全に植物性でも「ソーセージ」「ステーキ」といった名称が使われていた)。とはいうものの、この法律が将来「培養」肉に対してどのように適用されるかは明らかではない。消費者に受け入れてもらうために、クリーンミートスタートアップたちはこの用語を巡る戦いには勝利したいと願っている。

消費者による受容は、農業食品の経済的、環境的、倫理的な影響によって形作られる可能性も高い。農業は世界の労働人口の4分の1を雇用しているが、その労働力の多くが女性であることを忘れてはならない。

食の未来には、農業における失業問題、家畜や原材料生産の大幅な変化、土地管理手法の大幅な変更などが予想されている。さらに、遺伝子編集は、個別の農家ではなく、大企業に利益をもたらす可能性が高い。このことによって通常の農家は危機に晒される可能性がある。

これは単にケーキを手に入れて食べるという話ではない。必要な要素は、とても慎重に選択する必要がある。そうでなければ「食の未来」には苦い味がリスクとして残されることになるだろう。

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(翻訳:sako)

これからはスーパーで買いたい野菜を収穫するようになるかもしれない――Infarmの垂直農業システム

何千マイルも離れた農場で大量生産され、ポリ袋に入れられたハーブの切れっ端の代わりに、小さなバジル農園がおさまった照明付きのコンテナが置いてあるスーパーを思い浮かべてみてほしい。

さまざまなセンサーが作物を観察し、水や肥料はオンラインシステムで管理されている。同心円上に植えられたバジルは、成長度合いに沿って真ん中から外側に向かって広がり、1番外側のものはお客さんが収穫できる状態にある。

このような未来は、もはや想像の世界ではなくなった。SF作家William Gibsonの言葉を言い換えれば、「未来の農場はすでにここにある。ただ行き渡っていないだけだ」ということだ。

3、4年前にこのアイディアを発表した頃は、正気ではないと思われていました

— Infarm共同ファウンダー Erez Galonska

ベルリンに拠点を置き、40人超の社員を抱えるInfarmは、レタスなどの野菜やハーブ、さらにはフルーツまで育てられるような”屋内垂直農業”システムを開発している。コンセプト自体はそこまで新しいものではないかもしれない。日本では限られたスペースを使って多大な需要に応えるため、垂直農業が早くから発達してきた。しかし、他のスタートアップとInfarmの違いは、モジュラー型のアプローチと市場戦略にある。

これはどういうことかというと、同社はひとつひとつは小さくとも組み合わせることで無限大に広げられる農場を開発しており、設置場所も人里離れた倉庫ではなく、食料品店やレストラン、ショッピングモール、学校など消費者が作物と間近に触れ合え、収穫までできるような場所が想定されている。

「3、4年前にこのアイディアを発表した頃は、正気ではないと思われていました」と共同ファウンダーのErez Galonskaは話す。「Infarmは世界で初めてスーパーマーケットに垂直農場を設置しました。昨年のことで、ヨーロッパ最大のホールセラーであるMetro Groupに私たちのシステムを導入したのですが、今では他のスーパーマーケットからも同じことをしたいという要望をもらっています」

それぞれの農場ユニットで個別のエコシステムが成り立っており、作物が育つのに理想的な環境をつくりあげています

— Infarm共同ファウンダー Osnat Michaeli

最近ではドイツ最大のスーパーマーケットチェーンEDEKAともパートナーシップを結んだInfarm。彼らのシステムに対する需要には消費者行動の変化が関係しており、「消費者はより新鮮で、より持続可能な商品を求めています」と共同ファウンダーのOsnat Michaeliは語った(3人いる共同ファウンダーのもう一人はErezの兄弟のGuy Galonska)。食品業界全体としても、サプライチェーンの非効率な部分を解消し、ゴミを減らすのに役立つようなテクノロジーが求められていると彼女は言う。

「私たちの食生活の影響で、一年中栽培できる作物への需要が生まれました。しかし、もちろん中にはある季節にしか育たないものや、地球の裏側でしかとれないものもあります。長期間の輸送に耐えられるような野菜は、新鮮さや栄養に欠けるばかりか、農薬や除草剤に覆われていることも多々あります」

それとは対照的に、Infarmのシステムでは化学農薬が使われておらず、賞味期限の長さや大量生産ができるかといったことよりも、味や色、栄養価を優先して作物を育てることができる。屋内に設置できることから季節性も関係なく、生産地と消費者の間にある距離も完全になくなる。これ以上に新鮮な作物はないだろう。

「私たちの農場の裏では、強力なハードウェアとソフトウェアから構成されたプラットフォームが各作業を正確に行っています」とMichaeliは説明する。「それぞれの農場ユニットで個別のエコシステムが成り立っており、作物が育つのに理想的な環境をつくりあげています。さらにInfarmでは、作物の味や色、栄養価を最大化するために、光のスペクトルや温度、酸性度、肥料をそれぞれの作物ごとに調整したレシピも開発しており、プロバンスのルッコラやメキシカンタラゴン、モロッカンミントまで栽培できます」

Infarmの垂直農業システムは、作物を「毎日、半永久的に収穫」できるように開発されてきた。ひまわりの花びらからヒントを得て、作物が植えられるトレーは苗の大きさや成長度合いによって中心から外周へ移動するようになっているほか、肥料の補充はカートリッジを取り替えるだけでよく、水やりも自動化されている。

さらに、それぞれの農場内に並べられたセンサーがデータを収集・記録するため、設置場所から離れた場所にいるInfarmの植物の専門家やテクノロジーチームは、遠隔で作物の状況を観察し、リアルタイムで設定を最適化したり、温度変化などの異常事態に対応したりできる。

「スマートなシステムのおかげで、いつ、どの作物を収穫すればいいのかがわかる上、実際の収穫はお客さんの手で行われます」とGalonskaは語る。「さらに機械学習技術によって、将来起こりそうな問題についても知ることができます」

新しいハーブや野菜を取り扱うときは、作物のタイプによって、専門家とエンジニアが、肥料や湿度、温度、光の強さやスペクトルなどから構成されるレシピ(もしくはアルゴリズム)を開発しており、個々のシステムのレシピは栽培されている作物によって変わってくる。

IoT、ビッグデータ、クラウドアナリティクスという組合せを考えると、Infarmのプロダクトは「FaaS:Farming-as-a-Service(サービスとしての農業)」のようだと言える。さらに、スペースの限りモジュラー型の農場を広げられるというプロダクトの性質は、ボタンひとつで容量を増やせるクラウドサービスにも少し似ている。

上記のような特徴を備えたInfarmのビジネスは、作物の種類という意味でも、収穫量という意味でもスケール化が可能だ。スーパーマーケットであれば、お客さんが近くで作物を見られるように数種類だけ店内で栽培し、店の奥に在庫をストックしておくということもできるし、大手のオンラインショップであれば、数百種類の作物を何千ユニットも同時に育てることもできる。

このビジネスチャンスに投資家が気づかないわけがない。

最近Infarmは、ベルリンのCherry Venturesがリードインベスターを務めたラウンドで400万ユーロを調達した。このラウンドには、他にも社会投資家のQuadiaやロンドンのLocalGlobe、Atlantic Food Labs、デザイン会社のIdeo、Demand Analytics、エンジェル投資家などが参加していた。

Cherry VenturesのファウンディングパートナーであるChristian Meermannは、他の垂直農業ビジネスと比べる中で、Infarmが開発したシステムの分散型の性質が特に目を引いたと話す。つまりInfarmは、大規模な農業施設を自ら準備することなく各地に農場を置き、クラウド技術を使って一箇所から全てを観察・管理できるネットワークを構築しようとしているのだと彼は言う。

さらにMeermannは、Infarmの機械学習テクノロジーも評価している。機械学習テクノロジーによって、それぞれの作物にピッタリのレシピを作れるため、収穫物の味が大幅に向上するだけでなく、普段見ることがないような作物も育てることができるのだ。

「Infarmを設立して間もない頃は、周りの人から”理想主義的な夢想家”だと思われていました。私たちが全員独学で必要な知識を身に付けていたため、多くの人は新しい農業ソリューションを開発するだけの専門性が私たちにはないと思っていたことも関係しているのでしょう」とMichaeliは付け加える。

「(今の)課題は、私たちに合ったパートナーを見つけることです。今のところはスーパーマーケットやオンラインショップ、ホールセラー、ホテルなど、Infarmの商品の品質や種類、そして固定価格を魅力に感じてくれそうな食品関連業界に注力しています。私たちのプロダクトを使えば、都市部の人たちに作物を育てる喜びを再び感じてもらうことができます」

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter