アバターを作るスタートアップGeniesがNFT人気に乗って65億円相当を調達

これまで数年間、全員が同じ夢を追っている新進のアバター企業を私も人並みに取り上げてきた。その夢とは、ゲームやデジタル空間で広く採用される架空の登場人物(ペルソナ)になるための、カスタマイズ可能なプラットホームを作ることだ。これまで私が取り上げたものの中で、生き残っているのは少ない。でもロサンゼルのGeniesは、有名ミュージシャンたちとのパートナーシップを成功させて、とても広い範囲のアバタープラットホームという大きなビジョンの実現に、初めて近づいている。

同社は今日(米国時間5/3)、Mary Meeker氏のBondがリードする6500万ドルのシリーズBを完了したことを発表した。それにはNEAやBreyer Capital、Tull Investment Group、NetEase、Dapper Labs、Coinbase Venturesなどが参加した。Mary Meeker氏はGeniesの取締役会に加わる。同社の最新の評価額は、公表されていない。

この財源は、創業4年目を迎えた同社のちょうど転換期に投じられた。そのことを、NFTデジタルカードNBA Top ShotのメーカーであるDapper Labsや、暗号通貨大手Coinbaseの参加が証明している。先週発表されたように、同社はDapper LabsのFlowブロックチェーン上のNFTプラットホームを展開して同スタートアップと密接に提携している。それによりDapper Labsは、Genesisのアバターアクセサリーのオンラインストアの、バックエンドを構築することになる。Dapper Labsがプロスポーツのリーグと独占契約してNFTとそれらの公式サポートを提供しているように、Genesisもその名簿に載っているJustin Bieber、Shawn Mendes、Cardi Bなどのセレブたちとのパートナーシップを活用して、アバターアクセサリーを大衆的に売買するためのプラットホームを作っていきたい心算だ。

同社は10月にGucciとのパートナーシップを発表して、自分の目の前に大きな新しい市場機会を切り開いた。

関連記事: Genies updates its software development kit and partners with Gucci, Giphy(未訳)

Geniesのビジネスの大半は、まず有名チームや有名タレントなどとパートナーして、それらが提供するエンターテインメントの顧客にアバターというデジタルの存在を与えることが主体だ。顧客はソーシャルメディアなどの上で、アバターによって自分を目立たせることができる。同社はモバイルアプリのベータで全ユーザーにアバターの創造を展開したから、Genesisは彼らよりも前のアバター企業が明確に持っていた夢の一つにフォーカスしてきたことになる。それは、同社のSDKで、アバターのユーザーの大きなネットワークと、同社の形式と互換性のある多くのプラットホームのネットワークを作っていく、という夢だ。


画像クレジット: Genies

GeniesのCEO、Akash Nigam氏は本誌の取材に次のように語った: 「アバターは本来の自分をもっと積極的に見せていくためのメディアだ。それは別の自己の表現だから、現実世界の制約にとらわれる必要はない」。

NFTというトレンドがGenesisに新たな探究の分野を与えているが、同じくパンデミックというもっと大きなトレンドが、ユーザーを何もかもがデジタルという世界に追いやり、そこでお互いが社交し結びつくようになっている。そこでNigam氏は曰く、「パンデミックはあらゆるものを加速した」。

Nigamが念を押すのは、近い将来、NFTという大きな機会があるとしても、Genesiはあくまでもアバター企業でありNFTのスタートアップではないことだ。ただし、暗号技術に支えられたデジタルグッズとその市場は今後長年存在するだろう、と。デジタルグッズをめぐる現在の環境がGenesisの資金調達を助けた、という説には、彼は納得していない。彼によるとそれは、投資家にとって倍率6〜8倍の投資機会であり、スタートアップへの日和見主義的な投資にすぎなかった。「うちは何年も資金調達をせずにやってきた企業だから」、と冷静な言い方をする。

同社によると暗号化製品のマーケットプレースは、早ければ今年の夏ごろにローンチするそうだ。

関連記事: The NFT market is just getting started, but where is it headed?(未訳、有料記事)

(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Genies

[原文へ]

登録者数1.5億人のアバターアプリZEPETOはSnowから独立して中国を意識する

1年半前にZ世代ユーザーの間で流行した韓国のアプリZEPETO(ゼペット)を覚えている人もいるだろう。自撮り画像をアニメーションするアバターに変換して、コンピュータが作り出したバーチャルなアイテムに囲まれた世界で楽しく遊ぶというアプリだが、その流れは維持されているようだ。ZEPETOの登録ユーザーは1億5000万人に上るが、先日同社がTechCrunchに話したところによると、月ごとのアクティブユーザー数のほうが、そのアプリの性能をよく示しているという。その数は1000万人前後で推移している。

いまのところ、中国がZEPETOの最大の市場だ。中国では、親しみを込めた子どもの呼称「崽崽」(ザイザイ)という名で知られている。「崽崽は、総合的なエコシステムへの発展を志向しつつ、中国全体に強固なコンテンツを提供したいと考えています」とCEOの金大旭(キム・デウク)氏は言う。

このアプリには、その由緒正しい家柄の恩恵も受けているようだ。これは自撮りアプリのSnow(スノー)を開発した同名の企業から生まれ、その親会社はアジアのメッセージアプリの巨人LINE(ライン)を保有するNaver(ネイバー)だ。だが同社は、今月Snowから独立してNaver Z(ネイバーゼット)という子会社になった。

人々がそれに代わる新しいトレンドへと移行していく中で、人気の写真編集ツールがフェードアウトするという話は珍しくない。その理由は、新しいアプリがより魅力的な視覚効果機能を備えているか、マーケティングの妙技によって多くの人たちを魅了するかのどちらか、あるいはその両方だ。そのため、気軽に使えて便利な機能を提供することが目的のアプリは、まだ順調なうちに、ユーザーを逃がさない方法か、強力に関与して収益化を図る方法に、よくよく知恵を絞る必要がある。ZEPETOが行ったのは、その両方と言える。

自分自身とそのZEPETOキャラクターがダンスするユーザーの抖音(中国版TikTok)動画のスクリーンショット

このアプリには、特別なネットワーク機能がある。ユーザーは自分のアバターを使って匿名でバーチャル世界に暮らすことができる。「ザ・シムズ」みたいな感じだ。難題は、もちろん、人々にまた遊びたいと思わせる大きなネットワークを構築することだ。

ZEPETOでは、一連のミニゲームでも遊べる。ZEPETOのグローバルビジネス責任者であるRudy Lee(リウディー・リー)氏は、大人気の「どうぶつの森」で人々が楽しんでいるような平和な冒険と表現している。

別の見方をすると、この事業はバーチャル・アイテムがよく売れるまでに成熟している。事実、この部門の業界リーダーであるTencent(テンセント)でも、ユーザーの仮想プロフィールと仮想空間を装飾するアイテムの売り上げが収益の大半を占めていたことがあるが、それは韓国のインターネットのパイオニアであるうCyworld(サイワールド)がビジネスモデル化したものだ。TencentがWeChat(ウィーチャット)を開発し、記録的な売り上げのビデオゲームを運営して世界的な評価を得る前のことだ。

ZEPETOは、現在のところ、6億個のバーチャルアイテムを販売して1000万ドル(約10億600万円)の収益を得ている。同社は、先日、第三者のアーティストが服やアクセサリーのバーチャル・アイテムを製作して販売できるクリエイティブなマーケットプレイスを立ち上げ、この事業をステップアップさせた。ZEPETO Studio(ゼペット・スタジオ)と呼ばれるこのストアは、オープン最初の月でおよそ70万ドル(約7400万円)の売り上げを記録した。有名ブランドのアドオンも数多くある。これは写真エフェクトのアプリでは一般的な戦略だが、ナイキのバーチャル・アパレルを自慢することもできる。

「私たちは、ディズニーやナイキといった国際的なブランドや、BTSのようなセレブと提携しています。さらにエキサイティングな提携をZaiZai Studioに呼び込み続け、クリエイターたちによりよいサービスを提供できるようにします」とリー氏は、中国でのスタジオ機能が5月中旬にサービスを開始する予定に関連させて話していた。

ZEPETOでブランド展開するナイキのアパレルブランド

十分に大勢の人たちがZEPETOを使い続けたなら、第三者のストアはデザイナーにとっても儲かる商売になる可能性がある。ZEPETOには6万人のアーティストが登録しているが、もっとも多く稼いだ人の最初の月の売り上げは9000ドル(約96万円)ほどにもなった。

だが、ユーザー数が増えるにつれ、ZEPETOはそのマーケットプレイスが、みんなのものであり続けるよう気を付けなければならなくなる。同社は内部にモデレーション・チームを組織し、「バーチャル衣服に書かれる政治的メッセージ、ヘイトスピーチ、差別的メッセージなど」を排除しているとリー氏は言う。そのルールは、とくに中国での展開を意識したもので、情報の流れが厳しく統制されている中国に適応するためのものだ。

また、便利なツールとして生き残る方法としては、他のアプリの成功に便乗することを決めた。以前、我々は、VSCO(ビスコ)のライバルである写真編集アプリPicsArt(ピクスアート)が、TikTokに影響されたステッカーに対応することで生き残った話を書いたが、ZEPETOもそこに注目している。今、多くのユーザーが、アバターのアニメーション動画を、TikTokの中国国内向けバージョン抖音(ドウイン)でシェアし始めているとリー氏は話してくれた。

画像クレジット: Zepeto via Weibo

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

Facebookが写真から自動的にアバターを生成する研究結果を発表

アバターの作成。いったい誰が、そんなことに使える時間を持っているというのだ?もちろんその「誰が」はコンピューターだ。もしこのFacebookも研究が製品化されたら、髪型や、肌の色や、ヒゲの長さを選ぶのにただの1秒も無駄に使う必要はなくなる。

コンピュータービジョン国際会議(International Conference on Computer Vision)で発表された論文(PDF)で、Lior Wolfたちが報告したのは、入力した実際の顔から、絵文字ジェネレーターによる最高の出力結果を生み出す、機械学習システムの構築だ。

読者はおそらくこう思っているかもしれない。待て待て、確か今年の始めにGoogleが同じことをやっていなかったか?と。ある意味その通り。しかし、両者には重要な違いがある。Googleのバージョンもクールだが、様々な顔に共通する様々な特徴に関するランク付けと説明を人間の作業に頼っていた。例えば巻き毛、鼻のタイプ、目の形などなど。そして、これらは特定の特徴の表現としてイラスト化されていた(非常によくできていたと私は思う)。

本質的には、コンピューターが目立つ特徴、例えばそばかす、を見つけて、それに対応する部分アートをデータベースから引き出してくる仕掛けになっている。それは上手く行くものの、その結果は特徴を定義する人間の入力に大きく依存している。

Facebookのアプローチはこれとは異なっている。ここで追求されているアイデアは、手元にある道具(顔の部品や調整手段)を総動員して、与えられた顔を最高にそれっぽく表現できるシステムを追求することだった。つまり既存のツールである、emojiでも、Bitmoji(shudder)でも、Miiでも、VRフェイスジェネレーターでも何でも、そうしたタスクを達成するために使うことが可能だということだ。研究者の言葉を言い換えれば、これらはいつでも人間がやっていることだ、ならばなぜAIを使わないのか?ということになる。

システムは、元の顔と生成された表現の両方に対して、あたかも同じ人物の2枚の写真であるかのように、同じ分析と特徴同定アルゴリズムを使用することによって、このことを(ある程度)達成している。結果として、2つの顔から得られた数値が似通っている場合には、それは2つの顔が視覚的にも十分似通っていることを意味している。(この漫画的な顔を使う限り、ある程度以上は良くはならないということでもある)。

論文に掲載されたこの図では、一番左に元の顔の画像があり、左から2番目に手で作成されたemojiがあり(比較のために置かれていて、システムでは利用されない)、そして今回のシステムの異なるアルゴリズムによる例が示されて、さらに3Dアバターシステムによる例が続く。

この技法の優れている点は、特定のアバタータイプに結び付けられていないため、(理論的には)いずれのアバタータイプに対しても動作するということだ。システムは様々な表現を実際の顔と一致させ、どれが良いものかを判定する。

Facebookはこの情報を多くの有用な目的のために使用することができる——おそらく直近に考えられるのは、専用絵文字システムだ。ユーザーが新しい髪型やヒゲを整えた写真をアップロードするたびに、プロファイルが自動的に更新される可能性さえある。しかし、アバターマッチング機能は、他のサイト向けにでも行うことができる——例えばFacebookから他のVRゲームにサインインした際に、即座に説得力のある自分のアバターを登場させることができる。少なくとも、自分の絵文字の肌の色のディフォルトが黄色ではなくて実際の色に近くなることには、多くの人は反対しないだろう。

完全な論文は、AI会議で発表されたものなので、当然ながらかなり技術的なものだ。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)