アフリカのシリコンバレーに?同地域のテック企業向けに憲章都市を構築するリン・アボジ氏の計画

アフリカの都市、特にサハラ郊外の都市は、世界でも最速の都市成長速度を誇っている。しかし、超過密、混雑、インフラ、電力、貧弱な統治などの課題を抱えているため、都市環境でアフリカの平均的な生活水準を提供するという点で、これらの都市は限界に達してしまった感がある。

一部の専門家は、憲章都市が解決策をもたらしてくれると考えている。憲章都市には新しい統治システムを作成するための特別な権限が付与され、都市の役人は経済規制におけるベストプラクティスを採用できる。

憲章都市は通常、都市開発業者とホスト国間の官民パートナーシップによって実現される。世界には憲章都市として成功している例がいくつかあるが(シンガポール、深セン市、ドバイなど)、大半は予想を下回る成果しか上げていないか、失敗に終わっている。ナイジェリアでは特にそうだ。

例えばEko Atlantic(エコ・アトランティック)というラゴス近郊の特殊な構造の都市は、150万人の人口の大半が家を買う余裕がないエリアで25万人以上に住宅を供給する計画だ。2009年に始まったこのプロジェクトは現在も継続中で、住宅を供給するためとはいえ、新規開発区域周辺の沿海部に住む数万人に立ち退きを迫っている。

ナイジェリアの経済特別区(SEZ:国内の他の地域と異なるビジネスや商取引に関する独自の法律が施行され、税の優遇措置、企業活動への刺激策、規制面での改革などが実施される地域)も苦戦を強いられている。例えば16500ヘクタールのLekki(レッキ)自由貿易地域は期待されたような成果を上げられていない。

この2つの計画が作った前例は、実はもっと重要な問題を浮き彫りにしている。それは、憲章都市とSEZはホスト国の危機や景気低迷による影響から逃れられないという現実だ。特に貧困国ではその傾向が強い。

Talent City(タレントシティ)プロジェクトに対して懐疑的な見方があるのもそのせいだ。タレントシティプロジェクトは、テックプロフェッショナル向けの未来型憲章都市のことで、アフリカのスタートアップに投資するファンドや共同体の管理企業Future Africa(ヒューチャーアフリカ)によって2020年1月に発表された。しかし、このような懐疑的な見方に対し、タレントシティは、この計画都市は「雇用を創出し、アフリカのテクノロジー、イノベーション、デジタル経済を推進する人材を引きつける」ことに重点を置いているため成功すると確信している。

タレントシティの声明には、タレントシティプロジェクトの都市は自由貿易地域内で、独自の「生産性を重視した、企業家中心の規制や条例」によって管理されると記載されている。

アフリカ諸国はテック向けの憲章都市を必要としているか?

この発表から2年が経過した。まだ建造物は1つも建設されていないが、 ヒューチャーアフリカのジェネラル・パートナー Iyinoluwa Aboyeji(リノルワ・アボジ)氏とパートナーたちは、Talent Cityの未来をさかんに宣伝し続けている。

プロジェクトの前進はゆっくりではあるが、 タレントシティは最初の場所Talent Cityラゴスの建設を開始するための土地を買収した。Alaro City(アラロシティ:Lekki自由貿易区域にある2000ヘクタール規模の開発エリア)にある72000平米の区域だ。

この最初のプロトタイプ都市には中央のコワーキングキャンパスとさまざまな住宅が建設される予定で、1000人の居住者と2500人のリモートワーカーのホームタウンになる。この数字は変わる可能性があると同社はいう。

TechCrunchとの電話対談で、このプロジェクトを立ち上げたアボジ氏とLuqman Edu(ラクマン・エデュ)氏およびCoco Liu(ココ・リウ)氏が、タレントシティが技術者のために解決したいと考えている3つの主要な問題について説明してくれた。

アボジ氏がAndela(アンデラ)に在籍していた期間、同社はまだテック系人材のインキュベーターで、ハブにエンジニアたちを住まわせていた。2014~2017年の間に、同社はオフィス環境と居住区に重点的に投資した。というのは、ラゴスの大半の不動産開発者はテック系人材向けの不動産を構築する方法を理解していなかったからだ、とアンデラとFlutterwave (フラッターウェーブ)の創業者でもあるアボジ氏はいう。

他のスタートアップたちと同様、アンデラも、電力、インターネット、通勤に関する問題に直面していた。その上、これらのスタートアップたちは、息が詰まるような政府の政策(2020年の配車サービスの禁止、2021年の暗号資産の禁止がすぐに思い浮かぶ)、不安定な政治情勢、安全の問題と戦っている。

「これはアンデラだけの問題ではありません」とアボジ氏はいう。同氏は決済ユニコーンFlutterwave(フラッターウェーブ)の共同創業者でもある。「私は現在、60のポートフォリオ企業(大半はテック企業)と2000万ドル(約22億9000万円)を超える資産を管理する投資会社を経営しています。これらの企業は口を揃えて、インフラの問題は悪化しているだけでなく、解決にかかる費用も上がっていると言っています」。

「この数年で、私がアンデラにいた頃に比べて産業は成長を遂げています。2021年、テック産業はベンチャーキャピタルから14億ドル(約1605億円)を超える資金を調達しました。都市建設の強い意欲はあるものの、ラゴスの起業家たちは平均以下の環境に留まったままであり、生活水準と機能しないシステムに対する大きなストレスを抱えています」。

タレントシティはこの問題を解決できる可能性があるとアボジ氏はいう。

アボジ氏によると、タレントシティはリモートワーク向けに設計されており、ニッチ市場のテック起業家やプロフェッショナル向けに建設されているという。この憲章都市は安定した電力と高速インターネット、イノベーションを実現するのに好ましいポリシー、お互い近接して生活し働く、同じ考えを持つ人々のコミュニティなど、テック系人材のためのインフラを提供する。

アボジ氏は、より大規模なエコシステムであるアラロシティ内に複合施設を建設することで、ポリシーの変更に対する政府のお決まりの反応から憲章都市とその住民を保護することができるといい、それが最終的な成功にとって必要不可欠であると指摘した。

「我々は自分たちが得意とする部分、すなわち、コミュニティとテクノロジーを支援する方向へ進もうとしています。政府と新たに何かを交渉して最初からやり直すつもりはありません」とGoogle(グーグル)とLine(ライン)の前デザイナーで、タレントシティの運営/エクスペリエンス担当責任者Liu(リュー)氏はいう。

「我々が大都市内の自由貿易地域に自身を戦略的に位置づけている理由もそこにあります。つまり、ポリシーとインフラの両面で、我々が属しているエコシステムの両サイドで発生するリスクの影響を受けないようにしたのです」。

アフリカの新しいシリコンバレー?

リュー氏の説明は印象的だ。官民パートナーシップとして建設される他の憲章都市と違って、ラゴスのタレントシティ最初のプロジェクトは政府の参加を排除する意向だ。

タレントシティは、アラロシティとラゴス州政府間ですでに形成されているパートナーシップを活かすことで、その側面(政府とのパートナーシップ)をある程度カバーするつもりだとエデュ氏はいう。そして、同社がこの方針を採用したのは、まずラゴスでさまざまなアイデアを試してから、それをプロトタイプとしてアフリカのさまざまな地域で試す必要があるからだと付け加えた。

「タレントシティ計画はアフリカ全土にスケールします。当社はすでに、現行のプロジェクトがうまく軌道に乗った後、次のプロジェクトをどこで始めるかについて戦略的な話し合いを始めています。当社はアフリカ全土に憲章都市をゼロから構築してきました」とエデュ氏はいう。同氏は不動産サービスと不動産テック企業のオーナーでもあり、現在ナイジェリアの12の州でこれらの企業を運営している。

チームがタレントシティプロジェクトを高く評価している理由は理解できる。だが、ナイジェリアのテックエコシステムは、最前線のラゴスだけでなく、地域都市でも(ラゴスはアフリカのスタートアップ首都であると、今月発行されたStartupBlink(スタートアップブリンク)レポートには記載されている)、ベンチャーキャピタルから数十億ドルの資金を調達しており、インフラ面のあらゆる課題と格闘しながらも、2021年は3つのユニコーン企業を輩出した。

であれば、そもそもTalent Cityは必要なのだろうか?

アボジ氏は、ナイジェリアのテック企業には大量の資金が投入されてはいるが、インフラ面が整備されていないため、オフィスや住宅の不動産価格は高騰しており、タレントシティが改善したいのはこの点だと指摘する。

昔は、創業者やテック系プロフェッショナルたちもラゴス郊外のYaba(ヤバ)をナイジェリアのシリコンバレーとして称賛していた。だが、アンデラやコンガといった大手企業がインフラ不足を理由に2017年に(その後数年で数社が相次いで)ヤバから出ていき、共同体意識が薄れたため、かつては未来のテック都市と言われたヤバの評判に傷がついた。

我々は今、リモートファーストの世界で運営しているが、企業は社員が快適な生活環境を自身で確実に実現するために必要なものを保証できないでいる。スタートアップとテックプロフェッショナルたちはラゴス内で繁栄する別の場所を、とりわけラゴスの島地域などに見つけているが、タレントシティはそうした人材を引き込んで「アフリカのシリコンバレー」になりたいと考えている。

価格設定は、世界の標準的な価格に匹敵する月額家賃と住宅ローンを用意しているため、個人および企業相手に十分に競争力のある価格になっているという。また、いっしょに働くことによる共同社会としての利点もある。

アボジ氏によると、同氏のベンチャーキャピタル会社ヒューチャーアフリカ(リモートファースト企業)も新しい都市に本社を移転する予定だという。ヒューチャーアフリカは今回のプロジェクトの過半数所有者だ。有名な創業者やVCなどの創業居住者(Yele Bademosi(イェレ・バデモシ)Timi Ajiboye(ティミ・アジボエ)Nadayar Enegesi (ナダヤル・エネゲシ)Kola Aina(コラ・アイナ)の各氏はすでに不動産を購入している)がいるため、都市が形を成してくれば、地域のテック企業も同じように移転するだろう。

アンデラとフラッターウェーブの共同創業者、ヒューチャーアフリカの創業パートナー、タレントシティの共同創業者であるリノルワ・アボジ氏。

タレントシティは、コミュニティおよび開発管理のため、アムステルダム本拠のデザイン/アーバニズム企業NLÉおよび不動産業者Jones Lang LaSalle(ジョーンズラングラサール)と提携する予定だ。

憲章都市は Pronomos(プロノモス)Charter Cities Institute(チャーターシティインスティテュート)Ventures Platform(ベンチャーズプラットフォーム)、およびLoftyInc(ロフティインク)の支援を受け、ラゴスプロジェクト用に1300万ドル(約14億9000万円)を超える資金を調達した。しかし、アボジ氏によると、資金調達の取り組みはまだ継続中だという。最初の建設工事は5月開始の予定で、2023年終わりまでには一部の建造物が完成する。

「普通、何もない広大な場所に14億ドル(約1606億円)規模の産業を構築することなどできません。現実離れしていますから。だからこそ、やってみたいという人たちがいます。私もそうした考えに賛同している1人です。しかし、エコシステムにはイメージが必要です」とアボジ氏はいい、イスラエルに行くことをTalent Cityを始める際の影響因子として挙げた。

「重要なのは、このプロジェクトがエコシステムのイメージになることです。人々が集まってテクノロジーに取り組む場所になることです。この場所は大きな可能性を秘めています。当社と反対側には海港があり、空港も約20分のところにあります。間違いなくラゴスの未来になります。ここに最初にやってくるテック企業は本当にワクワクすると思います」。

民間都市の建設を試みるテックリーダーはアボジ氏だけではない。Uber(ウーバー)の前幹部で電動自転車企業Jump(ジャンプ)をモバイルテック大手に売却したRyan Rzepecki(ライアン・レゼペッキ)氏は、2020年に、自治憲章都市に投資して、パンデミックでシリコンバレーに見切りをつけたテック系の人材を受け入れたいと語っていた。

ただし、レゼペッキ氏の目的はアボジ氏とは異なる。The Telegraph(テレグラフ)によるインタビューで同氏は、サンフランシスコのホームレス危機を解決することが目的だと語っている。

「これまでの地域や都市の構築方法は基本的にサステナブルではありません。もっと良い、サステナビリティが高く環境にも優しい新しい場所を構築できる可能性があります」と同氏はインタビューで語っている。

「本当にさまざまな人たちが、こうしたことに関心を持っており、多くの人が、少なくとも私は、広い意味でより良い世界を作りたいと思っています。今の地球は、すべての人にとって物事がうまく機能しているわけではありません。一部には「何か別のことを試してみよう。懐疑的に反応するのはやめよう」と考える人たちがいると思います」。

懐疑的ではない大物投資家も何人かいる。Peter Thiel(ピーター・ティール)氏とMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏はタレントシティを支援しているPronomos(プロノモス)に投資している。成功している憲章都市は政府の後ろ盾を得て建設されたが、未来のテックハブは民間資金を引きつけている。これは、憲章都市の青写真が描かれ世界中に複製されるのも時間の問題であることを示唆している。

画像クレジット:Talent City

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

Vaya Africaが電気自動車タクシー配車システムを開始

ジンバブエの富豪であるStrive Masiyiwa(ストライブ・マシーワ)氏によって創業された、配車ベンチャーのVaya Africaは、電気自動車タクシーサービスとジンバブエ国内の充電ネットワークの運営を開始した。将来的には大陸全体に広げる計画だ。

南アフリカに本社を置く同社は、電気自動車である日産リーフEVの一群を購入し、独自の太陽光発電充電ステーションを開発した。

運用は今週ジンバブエで開始されるが、同時にVayaはオンデマンド電気タクシーとデリバリーサービスのためのパートナーシップを締結しようとしている。対象とする市場はケニア、ナイジェリア、南アフリカ、そしてザンビアなどである。

「ジンバブエは実際実験場です。私たちは、アフリカの様々な国でパイロットを行なう準備を進めています」とTechCrunchとの電話でジンバブエの首都ハラレから答えるのは、Vaya MobilityのCEOであるDorothy Zimuto(ドロシー・ジムト)氏だ。

Vayaはストライブ・マシーワ氏のEconet Groupの子会社だ、Econet Groupは他にも、南アフリカ最大の携帯電話会社の1つと、インターネットインフラストラクチャ企業である Liquid Telecomも傘下に抱えている。

マシーワ氏は、アフリカのビル・ゲイツ氏もしくはリチャード・ブランソン氏になぞらえられる人物となった、そして世界的には、オバマ元大統領ロックフェラー財団とのつながりや関係を持つ、ビジネスリーダーおよび慈善家として認められている。

Vaya EV製品でジムト氏と協力しているのは、Liquid Telecomのイノベーションパートナーシップの責任者であるOswald Jumira(オズワルド・ジュミラ)氏だ。

この動きは、アフリカのオンデマンドモビリティ市場が、ここ数年本格化していることを受けてのものだ。スタートアップ、投資家、そしてより大規模な配車事業者が人や物の移動にデジタル製品モデルをもたらそうと競い合っている。

エチオピアには、配車ベンチャーのローカル企業であるRide(ライド)とZayride(ザイライド)がある。Uber(ウーバー)は2015年からアフリカ大陸のいくつかの市場で活躍していて、競合他社のBolt(ボルト)と同様に、2018年にはアフリカ内でのオートバイタクシー事業に参入しした。

昨年大陸では、主に二輪車を中心に利用する配車やデリバリーに向けた、EV開発の動きが見られた。

2019年には、ナイジェリアのモビリティスタートアップの MAX.ngはヤマハの支援の下に700万ドル(約7億5400万円)のシリーズA資金調達を行ったが、その資金の一部は再生可能エネルギーを用いる電動二輪車の試験運用に使われた。

昨年ルワンダ政府は、EVスタートアップAmpersandと協力して、ガソリン式の二輪タクシーを電動式に徐々に移行する国家計画を策定した。

Vaya Mobility CEOのドロシー・ジムト氏(画像クレジット:Econet Group)

アフリカのタクシー市場に対して、電気自動車へのシフトが環境的なメリットを超えて持つアピール点は、長期的にメリットがあるユニットエコノミクスである。燃料のコストが大陸の大部分のドライバーたちにとって、個人の収入に比べて概して大きいという状況があるからだ。

「アフリカはエキサイトしています。なぜなら私たちは今やグリーン革命に乗っているからです。排出ガスなし、騒音なし、そして自動車のランニングコストという点での大幅な節約が可能なのです」とジムト氏は述べている。

彼女は、配車プラットフォームのドライバーたちの燃料およびメンテナンスコストが、40%削減できると見積もっている。

Econet Groupのオズワルド・ジュミラ氏によれば、現時点では、Vayaの最初の市場であるジンバブエの燃料価格は1リットルあたり約1.20ドル(約129円)であり、平均移送距離は22キロで運賃は19ドル(約2047円)である。

Vayaの充電ネットワークで日産リーフを使用した場合、移動距離150から200 kmで、チャージにかかるコストは約5ドル(約539円)となる。

画像クレジット:Vaya Africa

「恩恵を受けるのはドライバーです。より多くの収入を得ることができます。そしてそれはまた、配車企業の手数料を引き下げて、乗客の皆さまに、より手軽な価格を提供することを可能にするのです」とジュミラ氏はTechCrunchに対して語った。

同社は、アフリカにおける新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大に対して事業を対応させた。ジムト氏によると、VayaはドライバーにPPE(個人用防護具)を提供し、車を1日4〜5回消毒する。

Vayaは、配達からオートバイやトゥクトゥクタクシーなどの、他のオンデマンド輸送アプリケーションに対するEVオプションも模索している。

アフリカにおける Uberとの競争問題については、Vayaは、EVプログラムによって提供される割引運賃を1つの利点として指摘している。

Vaya MobilityのCEOであるドロシー・ジムト氏も、地域の文化や好みを知っていることの利点を指摘している。

「私たちは『アフリカ語』を話します。それが私たちが理解している言語です。私たちは人びとが、市場全体で何を望んでいるかを理解しています。それが違いを生むのです」と彼女は言った。

アフリカ全域でUberのような他の配車サービス会社と真っ向勝負する際に、VayaのEV注力と地元の消費者に対する知識の多さが、より多くの乗客の流れと収益の創出につながるかどうかが注目される。

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(翻訳:sako)

ケニアの農業ベンチャーApollo AgricultureがシリーズAで約6.5億円を調達

Apollo Agriculture(アポロアグリカルチャー)は、ケニアの小規模農家たちの収益を最大化する支援をすることで、利益を生み出すことができると考えている。

それこそが、Anthemisが主導するシリーズAの資金調達ラウンドで600万ドル(約6億5000万円)を調達した、ナイロビを拠点とするこのスタートアップのミッションなのだ。

2016年に創業されたApollo Agriculture は、運転資金、より高い作物収量のためのデータ分析、主要な資材や機器の購入オプションなどを提供する、モバイルベースの製品群を農家に提供している。

「農家が成功するために必要なすべてを提供します。それは、植える必要がある種子と肥料だったり、彼らがシーズンを通してその作物を管理するために必要なアドバイスだったりします。そして不作の年に農家を守るために必要な保険と……最終的はファイナンシングですね」とTechCrunnchとの電話で語ったのは、Apollo AgricultureのCEOであるEli Pollak(エリ・ポラック)氏だ。

Apolloが対応可能な市場には、ケニアの人口5300万人にまたがる多くの小規模農家が含まれている。同社が提供するものは、農家自身が思い描くプロット上で、より良い結果を達成するための技術と、リソースへのアクセス不足という問題に対する支援だ。

スタートアップが設計したのは、ケニアの農家とつながるための独自のアプリ、プラットフォーム、そしてアウトリーチプログラムである。Apolloは自身が提供するクレジットと製品を提供するために、モバイルマネーM-Pesa、機械学習、そして衛星データを使用している。

ポラック氏によれば、TechCrunch Startup Battlefield Africa 2018のファイナリストだった同社は、創業以来4万件の農家を支援し、2020年には支払いが発生する関係が2万5000件に達すると語っている。

Apollo Agricultureが始動

Apollo Agricultureの共同創業者であるベンジャミン・ネンガ氏とエリ・ポラック氏。

Apollo Agricultureは、農産物の販売とファイナンシング時のマージンから収益を生み出している。「農家は支援パッケージに対して固定価格を支払いますが、その支払期限は収穫時です。ここには必要な費用がすべて含まれており、隠れた追加料金は発生しません」とポラック氏は語る。

シリーズAで調達された600万ドルの使途について彼は「まずは、成長への投資を継続することが本当に重要です。すばらしい製品を手に入れたような気がしています。顧客の皆さまからすばらしい評価を頂けていますので、それをスケーリングし続けたいと思っています」と語った。すなわち採用、Apolloの技術への投資そしてスタートアップ自身の、セールスおよびマーケティング活動の拡大に投入するということだ。

「2つ目は、顧客の方々に貸し出す必要がある運転資金を引き続き調達できるように、バランスシートを本気で強化するということです」とポラック氏は述べている。

現時点では、ケニアの国境を越えたアフリカ内での拡大は構想されてはいるものの、短期的に行われる予定はない。「もちろんそれはロードマップ上にあります」とポラック氏は語った。「しかしすべての企業と同様に、現在はすべてが流動的です。したがって、新型コロナウイルス(COVID-19)で物事が揺れ動くのを見定める間、即時拡大の計画の一部は一時停止しています」。

関連記事:アフリカのテック企業の新型コロナウイルス対応まとめ

アフリカの小規模農家の生産高と収益を向上させようとするApollo Agricultureの活動は、共同創業者たちの共通の関心から生まれた。

ポラック氏は、スタンフォード大学で工学を学んだ後、The Climate Corporation(モンサント傘下のデジタル農業企業)で米国内の農学に従事した米国人だ。「それがApolloに期待をかける理由になったのです。なにしろ私は他の市場を見たときに『おいおい、アフリカ全体ではメイズ、つまりトウモロコシの作付面積が20%も大きいのに、米国の農家に比べてアフリカの農家は驚くほど生産量が少ないぞ』と口に出したのです」とポラック氏は語る。

またポラック氏の同僚であるBenjamin Njenga(ベンジャミン・ネンガ)氏は、自身の成長過程の体験からインスピレーションを得た。「私はケニアの村の農場で育ちました。小規模農家だった私の母は、低品質の種子を使い肥料を使わずに作物を植えていました。毎年エーカーあたりの収穫は5袋しかありませんでした」と、彼は2018年にラゴスで開催されたStartup Battlefield in Africaで聴衆に語りかけた。

画像クレジット:Apollo Agriculture

「私たちは、もし母が肥料とハイブリッド種子を使用したなら、生産量が倍になって、私の学費の支払いが容易になることはわかっていました」。ネンガ氏は、母親はこれらの準備を整えるためのクレジットにアクセスできなかったと説明した。それが彼にとってApollo Agricultureを推進するための動機となっているのだ。

Anthemis Exponential VenturesのVica Manos(バイカ・マノス)氏が、Apolloの最新の調達を主導したことを認めた。マノス氏はTechCrunchに対して、英国を拠点とし主にヨーロッパと米国に投資を行う同VCファームは、南アフリカのフィンテック企業Jumo(ジャンボ)への支援も行っており、アフリカのスタートアップへの投資を引き続き検討していると語った。

Apollo AgricultureのシリーズAラウンドには、Accion Venture Lab、Leaps by BayerそしてFlourish Venturesなども名を連ねている。

農業はアフリカにおける主要な雇用創出産業だが、ベンチャー企業や起業家たちからは、フィンテック、ロジスティクス、eコマースと同じような注目は集めていない。アフリカ大陸のアグリテックスタートアップたちが、資金調達で遅れをとっていることは、Disrupt AfricaとWeeTrackerによる2019年の資金調達レポートに報告されている。

VC資金を獲得した注目すべきアグリテックベンチャーとしては、ナイジェリアのFarmcrowdyIBMと提携したHello Tractor、そしてナイロビを拠点とするゴールドマンの支援を受けたB2B農業サプライチェーンスタートアップのTwiga Foodsなどがある。

Apollo AgricultureがTwigaを競争相手と見なしているかどうかという問いに対して、CEOのエリ・ポラック氏ははコラボレーションを探っていると答えた。「Twigaは将来的にパートナーになる可能性のある会社かもしれません」と彼はいう。

「私たちは高品質の作物を大量に生産するために農家と提携しています。Twigaは農家が収量に対して安定した価格を確保できるように支援するための、すばらしいパートナーになる可能性があります」。

絶滅危惧種の動物とその保護を扱うARゲーム「Wildeverse」がローンチ

ケニアの拡張現実ゲーム開発会社Internet of Elephants(インターネットオブエレファンツ)は米国時間4月3日、Borneo Nature Foundation、Goualougo Triangle Ape Foundation、Zoo Atlanta、Chester Zooの保護科学の専門家と提携して、最新のゲームをローンチした。

Wildeverse」という名前のこの新しいゲームは、ARを使って仮想の森を作り、そこでプレイヤーは特定の動物を探したり、動物の居場所を知る手がかりを探したりすることができる。

本来は屋外でのプレイを想定していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響から、方向転換を行い、ゲーム内の操作で仮想的に移動したり、より狭い場所で歩き回ったりできるオプションを開発した。

ゲームは、まずチャット形式でゲームプレイを紹介し、プレイヤーが探索する仮想環境をセットアップするところから始まる。そのグラフィックは没入型のジャングル環境を完全に再現することには焦点を当てていないが、プレイヤーが探索するための理想化された木々に覆われた森が生成される。例えば特定の動物の識別や、彼らの存在の痕跡を探すミッションを、ARで作られた森の中で行い、プレイヤーがどのくらい時間がかかったかが計測される。

ミッションが完了した後は、プレーヤーは、実際の自然保護活動家による解説を読むことができる。その保護活動家はInternet of Elephantsのゲーム開発者たちにゲームのコンセプト作りで協力し、調査を助け、そして実際にゲームの中に登場する実際の動物に関するサポートを提供した。

画像提供: Internet of Elephants

ゲームは、ARKitまたはARCoreをサポートするiOSまたはAndroidデバイスでプレイできる。

ゲーム内で与えられるミッションは、動物自身やその足跡、食べ残しや糞を探すことから、違法な人間の活動や、実在のオランウータン、チンパンジー、ゴリラ、テナガザルの生息地への脅威を探すことまで、多岐にわたっている。

このゲームを作るために、創業者Gautam Shah(ゴータム・シャー)氏が率いるInternet of Elephantsの開発者たちは、実際にボルネオとコンゴのジャングルに行き、保護活動家とその仕事についての話を聞いたり、ゲームの中で使用するための野生動物のスカウトを行った、という。ゲーム開発者は複数のサルの家族を追跡した。

「類人猿の人口は世界中で減少しています。野生生物の保護は、十分な数の人々が関心を持って初めて、世界的な優先事項になるのです。世界の保護活動家たちは、ほんのひと握りの人びとの支援だけで困難な戦いを繰り広げています」とシャー氏は声明で述べている。「私たちには、今日世界でゲームをプレイしている20億人を、野生生物愛好家かつ保護活動の支援者に変える使命があるのです」。

シャー氏にとって、Internet of Elephantsの最新製品の立ち上げは、同社の使命を堅持するものだ。その使命は、アメリカ生まれのシャー氏がARベースのゲーム会社を立ち上げるためにコンサルティングのキャリアを投げ捨てた2015年に始まった。Internet of Elephantsチームの他のメンバーたちも、同様に興味深いストーリーを持っている。Aardman Animationsのクリエイティブディレクターとして6年を過ごした製品責任者のJake Manion(ジェイク・マニオン)氏もその1人だ(Aardman Animationsは「ウォレスとグルミット」や「ひつじのショーン」を作成したアカデミー賞受賞スタジオである)。

関連記事:Internet of Elephants uses AR to get up close to endangered species, turns their migrations into a game(Internet of ElephantsはARを使用して絶滅危惧種に近づき、その移動をゲームに変える、未訳)

シャー氏は、Wildeverseゲームの中に3つの大事な保護要素を見ている。第1に、それはゲームプレイヤーと、会社が協力する保護活動団体の間に絆を生み出す。なぜならゲームが保護団体の実際の活動を理解させる役割を果たすからだ。またこのゲームでは森林火災、違法伐採、密猟などの問題や、開発や人間の消費によって、動物たちが住むジャングルの構成が変化してしまい悪化する保護活動を取り巻く課題に、プレイヤーは立ち向かうことになる。最後に、ゲームは教育的な要素を持つ。

「本当に本当に興味深いことをたくさん学びます、そして私たちは専門的になることをためらいません」とシャー氏は言う。「これらを総合することで、セントルイスで座っているあなたと、オランウータンを研究している誰かとのつながりを生み出すことができるのです」。

本来このゲームは完全に楽しむためには屋外の半径30メートルのエリアを使ってプレイすることを想定していたが、ローンチ前にチームが修正を加えたことによって、ロサンゼルスの小さなワンルームマンションでも十分にプレイできるようになった。

ゲームのテキスト部分は有益な情報を含み、プレイヤーはオランウータンの食べ物や、彼らの生息地、そしてジャングルにおける彼らの生活について学ぶ機会を得られる。解説は少しぎこちないが、退屈すなものではなく、異なる森で働いている実際の自然保護活動家との会話に基づいている。

最終的にシャー氏は、生息地の数とゲームの幅を拡大して、プレイヤーがさまざまな地域を探索し、すべての大陸の絶滅危惧種について学ぶことができるようにしたいと考えている。

ゲームにはまだ収益化手段がなく、この先も無料でプレイできる予定だが、マルチプレイヤー機能の開発とともに、何らかの収益要素を付け加えたいとシャー氏は語った。

最終的には、このゲームは、最新のテクノロジーとゲームプレイを通じて、新しい世代の人たちに自然保護のすばらしさを伝え、教育することを目的としている。

「私たちは野生動物を、現在保護活動とは無縁の大勢の人びとにとって、日常会話の中のポジティブでエキサイティングな話題にしたいと思っているのです。私たちは、ゲームに登場する実在の類人猿たちであるFio(フィオ)、Buka(ブカ)、Chilli(チリ)、Aida(アイーダ)を、Kim Kardashian(キム・カーダシアン)、Messi(メッシ)、Donald Trump(ドナルド・トランプ)に並ぶくらい有名にしたいと思っています」とシャー氏は言う。「人びとの注目を集めることは、とても重要です」。

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(翻訳:sako)

Zindiが新型コロナ対策に向け1.2万人のアフリカ人データサイエンティストを活用

ケープタウンを拠点とするクラウドソーシングのスタートアップZindiは、創業以来アフリカ中のデータサイエンティストのデータベースを構築してきた。

複雑な問題を解決するために、AIと機械学習を使用する1万2000人の人材がそのプラットフォームには登録されているが、現在同社は、新型コロナウイルス(COVID-19)へのソリューションに対して賞金を提供しようとしている。

Zindiは、新型コロナウイルスの蔓延と混乱を食い止めることに焦点を当てた、オープンコンペティションを行っており、4月にはハッカソンを開催する予定だ。AI4Dが主催する現在のコンペティションは、データを使用して新型コロナウイルスの世界的な広がりを予測することができるモデルを、今後3ヶ月の間に作成することを、サイエンティストたちに課している。

コンペティションは 4月19日まで受付しており、提案されたソリューションはこの先の実際の数値で評価され、勝者は 5000ドル(約55万円)を受け取る。

このコンペティションは、差し迫った民間または公共部門の課題を集約し、解決策を求める人と問題解決者をマッチングさせることができるプラットフォームを構築するという、Zindiのビジネスモデルに合致している。

2018年に設立されたこのアーリーステージベンチャー企業は、企業、NGO、政府機関がデータ指向の課題を中心とした、オンラインコンテストを開催することを可能にしている。

Zindiのビジネスモデルは、アフリカ内外の著名な企業からの注目を集めている。これまでにコンテストを主催してきた企業として、Microsoft、IBM、そしてLiquid Telecomなどの名前を挙げることができる。南アフリカ政府やユニセフといった、公共部門の関係者も、交通安全や農業改革など、さまざまな課題に向けてZindiを利用している。

ケープタウンのZindiチーム

画像クレジット:Zindi

ZindiのCEOであるCelina Lee(セリーナ・リー)氏は、この新型コロナウイルスのような状況を正確に予想していたわけではないが、今回の事態は、彼女が南アフリカ人のMegan Yates(ミーガン・イェーツ)氏ならびにガーナ人のEkow Duker(エコウ・ダッカー)氏と、Zindiを共同設立した理由の1つなのだと考えている。

アフリカのデータサイエンスの専門知識を応用して、新型コロナウイルスのような複雑な健康危機の問題を解決できる能力の提供こそが、Zindiの存在理由だと、リー氏はケープタウンからの電話でTechCrunchに説明した。

「オンラインプラットフォームとして、Zindiは、データサイエンティストたちを、アフリカ全体および世界中から大規模かつ安全に、自宅から動員できる有利な立場にいます」と彼女は言う。

リー氏は、得られた知見によって、アフリカがエピデミックや病気の被害者であり、また発生源であると考える人が多くなったと説明した。「私たちは、アフリカが実際に、世界のソリューションに貢献できることも示したかったのです」。

新型コロナウイルスの登場によって、Zindiはその創業者、スタッフ、そして世界にも影響を及ぼしている問題を緩和するために利用されている。

南アフリカは3月20日に新型コロナウイルスのためにロックダウンが行われたために、リー氏はケープ・タウンで屋内避難を行いながら、TechCrunchと連絡を行った。Zindiの創業者は、新型コロナウイルスが世界的に広まったために、ニューヨーク在住の義理の家族や、サンフランシスコの家族も同様の状況で暮らしていると説明した。

リー氏は、同社が提供するチャレンジが、新型コロナウイルスの蔓延と共に、アフリカの国々が活用できるソリューションを生み出すことができると考えている。「ケニア政府は、ICTセクターの企業を参画させたタスクフォースを開始したばかりです。なので、関心を寄せて貰えるのではと思っています」と彼女は言う。

また4月からは、Zindiは新型コロナウイルスに焦点を当てた、6回の週末にわたるハッカソンを開始する。

アフリカでの新型コロナウイルスの現況を考えると、それはタイムリーなことかもしれない。大陸の国別感染者数は、3月上旬には1桁台だったが、先週には急増している。これを受けて世界保健機関(WHO)の地域責任者であるMatshidiso Moeti(マティシディソ・モティ) 博士 が、アフリカ大陸でのウイルス感染の急速な拡大に警告を発することになった。

3月25日の時点でのWHOの統計 によれば、サハラ砂漠より南の地域には1691人の新型コロナウイルス症例が確認され、29例のウイルスに関連した死亡が確認されている(先週の3月18日の時点では症例は463人、死者は10人だった)。

アフリカでの新型コロナウイルスの流行を受けて、各国やZindi のようなスタートアップは、より広範な対応の一環として、アフリカ大陸のテック企業を巻き込むように訴えている。ガーナ、ナイジェリア、ケニアの中央銀行とフィンテック企業は、世界保健機関がウイルスの蔓延の経路として注意を促した現金ではなく、モバイルマネーの利用を促進するための対策を採用している。

大陸最大のインキュベーターであるCcHubは、新型コロナウイルスとその社会的および経済的影響を抑制することを目的とした、技術プロジェクトのファンディングと公募を開始した

アフリカ全土を覆うeコマース企業Jumiaは、医療施設や従事者に物資を配送するために、同社のラストマイル配送ネットワークの提供をアフリカの各国政府に対して申し出ている。

ZindiのCEOであるリー氏は、同社の開催する新型コロナウイルス関連のコンペティションが、政策立案者たちがウイルスの蔓延と戦うための追加の手段を提供できることを期待している。

「今開催中のものは、うまくいけば、病気の広がりを予測し、国の高リスク地域をより正確に予測することができるように、政府に対して情報を提供することができるようになるはずです」と彼女は語った。
新型コロナウイルス 関連アップデート

画像クレジット: Sam Masikini via Zindi

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アフリカの物流スタートアップLori Systemsが、中国の投資家主導でシリーズA調達を実施

アフリカのオンデマンドトラック運送会社Lori Systems(ロリ・システムズ)は、中国の投資家Hillhouse CapitalとCrystal Stream Capitalが主導するシリーズA調達を行った。

他の参加投資家には、ナイジェリアと米国に拠点を置くEchoVC、Flexport CEOのRyan Petersen(ライアン・ピーターセン)氏、ナイジェリア出身の起業家のIyinoluwa Aboyeji(アイノルワ・アボジジ)氏が含まれている。

Lori SystemsはシリーズAの調達額を明らかにしていない。金曜日にDealStreet Asiaが、ラウンド額を3000万ドル(約32億8000万円)と報告したが、Lori SystemsのCEOであるJosh Sandler(ジョシュ・サンドラー)氏は、その内容を追認してはいない。彼はTechCrunchに対して、その数字は「翻訳の何かの間違い」であり「調達の性質を誤って伝えるものだ」と語った。

同社はMediumの投稿の中で初期報告に対する明確化を発表した。調達額を公開しない理由として、Lori Systemsの共同創業者であるJean-Claude Homawoo(ジャン=クロード・ウマゥー)氏は「Loriは調達の詳細を明かすことはありません。それは最も大切なことです。未開の市場の商品コストを下げようとしている私たちのミッションから目をそらす虚栄の指標だと考えているからです」と語った。

最近出たFinancial Timesの記事は、Loriの総資金調達額を2000万(約21億9000万円)ドルとしている6月のSEC Form Dファイリングによれば、Lori Systemsは2900万ドル(約31億7000万円)の株式資本を発行しているが、どこにどれくらいという詳細は与えられていない。

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2016年にケニアで設立された同社は、Uberのようなドライバーと提携業者のネットワークを通して、モバイルベースのオンデマンドトラックサービスを提供している。Lori Systemsは、東アフリカびケニアとウガンダで事業を展開している。

同社は2019年9月にナイジェリアに進出し、トラック運送会社Kobo360との競合に直面している。

「私たちは今回の調達資金を用いて、物流の世界的な革命を推進するために、運用を強化し、技術開発を行い、最高のチームを雇用します」とLori SystemsのCEOであるジョシュ・サンドラー氏は語った。

同社は最近、ナイジェリア出身のUche Ogboi(ウチェ・オグボイ)氏をEchoVCからCFOとして採用し、また元Quona CapitalのアソシエイトであるEfayomi Carr(エファヨミ・カー)氏も雇用した。Lori Systemsは2017年にStartup Battlefield Africaで優勝している。

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2018年のアフリカのテック産業を特徴付けたのは、VC、グローバル展開、ブロックチェーン、そしてドローン

【編集部注】著者のJake Brightは、ニューヨーク市在住の記者ならびに作家である。彼はまた、The Next Africaの共著者でもある。

この著者による他の記事:

今年2018年は、アフリカのテック産業が、より活発になり国際的になった。大陸のVC企業の数は倍増した。また多数の投資ラウンドがあった。そしてスタートアップたちは買収と世界への拡大を追求した。以下に紹介するのは、この1年アフリカのテック産業を彩ったニュースのスナップショットである。  

VCファンドの急増

このTechCrunchの独占記事で発表されたCrunchbaseのデータによれば、2018年の注目すべきトレンドは、アフリカのVC事情がよりアフリカ的になったということである。すなわち大陸に拠点を置き、現地人によって運営される投資ファンドが増加したのだ。

Crunchbaseは、データベースと1次資料の調査を基にして、シードからシリーズ段階に至るアフリカのスタートアップへ少なくとも7〜10件の投資を行っている、アフリカに注力する51社のVCファンドを世界中で特定した。

51社のファンドのうち、22社(43%)がアフリカに本社を置き、アフリカ人によって管理されている。またその22社のうち、9社(41%)が2016年以降に設立され、また9社がナイジェリア拠点である。

ナイジェリアに拠点を置く9社のファンドのうちの4社は、昨年設立された:Microtraction、Neon Ventures、Beta.Ventures、そしてCcHub’s Growth Capitalファンドだ。

Crunchbaseの調査では、外部ファンドの中にも、より多くのアフリカ人がトップにいることが示され、地元の企業のベンチャー部門が増えていることも明らかになった。

そうした企業のベンチャー部門の1つであるNaspersは、南アフリカの技術系スタートアップに投資することを目的とした、Naspers Foundryという1億ドルのファンドを発表した。これは、TechCrunchですでに報じられているように、南アフリカの技術セクター全体を支援するために、この南アフリカのメディア/投資会社が表明していた、3億ドル(46億ランド)の一部である。

フランスがFrench Development Agency(AFD)によって運営されてる7600万ドルのアフリカスタートアップファンドを発表したとき、別の開発金融機構(development finance institution:DFI)が登場した。 TechCrunchは、それがどのようなものかをここで報じている。

投資と拡大

10年前はアフリカのVC投資に関するニュースは乏しいものだったが、2018年にはそれらが大量に流れるようになった。これは主に、最近設立され資金の提供を始めた、いくつかのアフリカのファンドによるものだ。例えばTLcomの4000万ドル、Partechの7000万ドル、TPGの20億ドルなどが挙げられる。

3月には、ナイジェリアの消費者データ分析会社Terragonが、TLcomから500万ドルを調達した。ケニアの企業向けソフトウェア会社であるAfrica’s Talkingは、IFCに主導されたラウンドで860万ドルを調達した。

投資スタートアップのPiggybank.ngは、シードファンディングで110万ドルを調達し、従来の貯蓄向けの新しいプロダクトであるSmart Targetを発表した。トラック輸送物流会社のKobo360は2ラウンドを行い、合計720万ドルを調達した。ケニアに本拠を置く農業テックサプライチェーンのスタートアップTwiga Foodsは1000万ドルを調達し、B2Bの小売サプライチェーンSokowatchは、4DX venturesが主導したシードラウンドで200万ドルを調達した

またホワイトラベル融資スタートアップのMines.ioは、1300万ドルをシリーズAラウンドで調達した。南アフリカの中小企業向け決済ベンチャーYocoは、1600万ドルを調達した。そしてPaga Paymentsは、新たな資金を1000万ドル追加した。

そして今年は3つの巨大な資金調達があった。まずケニアのデジタル決済会社Cellulantが、TPG Growthが手動するシリーズCラウンドで3750万ドルを集めた。そして南アフリカの融資スタートアップJumoは、Goldman Sachsの主導で5200万ドルを調達している。最後に、今月はThe Carlyle Groupが、アフリカを中心としたオンライン旅行サイトWakanow.comに4000万ドルを投資した

買収と拡大

2018年には、アフリカのテック企業たちは、大陸の中や海外に拡大することで、外の世界に踏み出せることを示した。5月にはMallforAfricaとDHLが共同で、厳選されたアフリカの職人たちが、その工芸品を、DHLが配送を行う220の国の買い手に向けて売る、国際eコマースサイトのMarketPlaceAfrica.comを立ち上げた。

Pagaは、エチオピア、メキシコ、フィリピンなどを見据えながら、アフリカ大陸内と国際的に拡大する計画を発表した。このことはCEOのTayo OviosuがTechCrunchに語っている。Kobo360は、ガーナ、トーゴ、コートジボワールといった新しい市場に参入しようとしている

上に紹介した5200万ドルのラウンドを行ったJumoは、アジアへの進出を口にしており、手始めにシンガポールにそのオフィスを開設する。

買収といった側面で見ると、Terragonがアジアのモバイルマーケティング会社であるBizenseを、現金と株式で買収した。CEOのElo UmehがTechCrunchに語ったところによれば、同社はラテンアメリカと東南アジアで大きな成長を狙っているのだという。

TPG Growthは、アフリカのエンターテイメントコンテンツ会社であるTRACEの株式の大部分を取得した(取得額は未公表)。またNsaperは以前の投資に続いて南アフリカのeコマースベンチャーであるTakealotの株式の96%を取得した。

そして12月には、カリフォルニアに拠点を置くEmergent Technology Holdingsが、ガーナのフィンテック決済会社であるInterpayAfricaを買収した

パートナーシップ

2018年は、地元のテック企業と世界的な大手企業とのコラボレーションが続いた。Liquid TelecomとMicrosoftは共同で、Microsoft Azure、Dynamics 365、そしてOffice 365などの、コネクティビティクラウドサービスを、特定のスタートアップやハブに対して提供するパートナーシップを継続している。これは、将来のクライアントとして、そして大陸内の次の大企業として考えることができる、アフリカのスタートアップ企業たちとの関係を、長期にわたって育むという、Liquid Telecomの戦略の一部だ。

FacebookはナイジェリアのテックハブであるCcHubと組んで、ハイテクインキュベーターであるNG Hubを立ち上げた

ブロックチェーン

2018年に、暗号通貨熱が多くの主要経済圏を席巻する中で、アフリカは独自のブロックチェーンストーリーを描いていた。それは投機というよりも実用に根ざしたものだった。 500 Startupsによって支援を受けたSureRemitは、アフリカ内の数十億ドル規模の送金市場をディスラプトすることを狙って暗号トークン製品を立ち上げ、ICOで700万ドルを調達した。また南アフリカのペイメントベンチャーWalaと、太陽エネルギーのスタートアップSun ExchangeもICOを提供した。

プラットフォームとしてのブロックチェーンについては、農業テックのスタートアップTwiga FoodsHello Tractorが、IBM Researchと提携して、アフリカ大陸の小規模農家と農業を発展させるために、デジタル台帳技術を利用している。

boda bodaの配車サービス

配車テックは大陸で頻繁に使われているモーターサイクルタクシー市場にも広がっている(boda bodaというのは、主に東アフリカに見られる自転車、もしくは自動二輪によるタクシーサービス)。Uberは3月に、タンザニアで三輪tuk tukモトタクシー市場に参入した、そしてケニアとウガンダを含む東アフリカでは、 UberとTaxifyが自動二輪による旅客サービスを開始した

失敗事例

昨年はY Combinatorが支援していたVODのスタートアップAfrostreamが倒産した。2018年2月には、VCの支援を受けていたナイジェリアのeコマーススタートアップのKongaが、窮状に陥り売却された。Kongaと人気者の創業者Sim Shagayaには、大きな期待が寄せられていた。私は、Kongaの売却は、アフリカ初の知られざる大きな失敗だという記事を書いている

ドローン

TechCrunchは、アフリカのドローンシーンを深く掘り下げている。複数の専門家と話をして、出現しつつあるユースケースの、デリバリーサービス、農業テック、そして調査作業などに着目してきた。規制面では、ルワンダ、タンザニア、南アフリカ、ザンビア、マラウイといったいくつかの国が、規制に関連していくつかの興味深い動きを見せていて、世界規模のプレーヤーたちのためのドローンテスト環境を生み出している。

TechCrunchとアフリカ

2018年にTechCrunchは、アフリカでこれまでのどの年よりも、多くの成果を上げた。より多くのコンテンツに加えて、Impact Hub、MEST Accra、ラゴス、そしてCcHubなどと共催した、ガーナとナイジェリアへの市場訪問ツアーもあった。

TechCrunchはまた、Disrupt SFのメインステージで初のアフリカパネルを開催しDisrupt Berlinではアフリカセッションを行い、12月にナイジェリアで第2回Startup Battlefield Africaを開催した。

そのとき、ナイジェリアのラゴスでは、15社のスタートアップが、全アフリカと世界から集まった人びとの前で競い合った。南アフリカのバーチャルバンキングのスタートアップBettrが2位になり、ウガンダの超低価格超音波スタートアップであるM-Scanが優勝した。

その他のアフリカ関連のTechCrunch記事

ネットに取り上げられているアフリカの技術

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(翻訳:sako)

ウガンダの王子と仮想通貨スタートアップが起こすアフリカの金融革命

仮想通貨とブロックチェーンの愛好家は、何年もの間、銀行の中央集権的な世界を批判してきたが、発展途上国の銀行の多くは、その特権的な場所に立ち、それを続けている。しかし、ブロックチェーン技術が発展途上の経済にとって、もっとも画期的であると判明したら、どうなるだろう。

たとえばアフリカだ。アフリカ諸国の消費者たちは、プリペイド式携帯電話の料金をチャージするための銀行取り引きだけでも、いちいち手数料を取られることに不満を募らせている。通信時間が、事実上、お金として扱われている。すでに経済発展をした国々で生まれた、そうした銀行のやり方は、銀行手数料が携帯電話のチャージ料金を上回るような発展途上国ではうまく機能しない。

南アフリカに拠点を置くスタートアップWalaは、それを早期に実現している。既存の銀行インフラを利用して顧客取引を促進しようと、ウォレットのように機能するスマートフォンアプリを開発した。しかし、ほぼすべての取り引きに高額な銀行手数料がかかるため、Walaの顧客基盤も、スマートフォン世代にモバイルウォレットを提供するというWalaの初期のビジネスモデルも、痛手を被った。

料金のかからないソリューションが必要だったが、既存の金融システムでは難しい。そのとき、彼らは仮想通貨に切り替えることができると気がついた。そうすれば、業者同士のピアツーピア・ネットワークでの支払いが可能になり、通信料金、データ料金、電気料金、さらには学校の学費までこれで支払うことができる。

昨年の12月、イーサリアム・ベースの$DALAトークンを新規仮想通貨公開(ICO)で売却して120万ドル(約13億7000万円)を調達したWalaは、現在、ウガンダ、ザンビア、南アフリカで数千件の取り引きを助けている。そのほとんどは、1ドル以下のマイクロペイメントだ。

2018年5月に彼らの通貨$DALAをローンチしてから(現在はWalaのモバイルアプリからアクセス可能)、10万を超える$DALAウォレットが利用され、同社によれば、250万$DALAを超える取り引きが行われているという。この(少なくとも今のところは)マルチチェーンの暗号資産は、ウォレットにEther、取り引きにはStellarを使用している。しかし、ひとつのプラットフォームに固定されているわけではない。

$DALAのプロトコル(Kopa、Soko、Kazi)を通して、消費者は、国境を超えた、低コストの、高効率な独自の金融サービスにアクセスできるようになり、新しい非中央集権型の金融システムでの利益の獲得、貯蓄、貸し借り、鳥時期が可能になる。

だが、それはWalaの最終目標ではない。

10月2日、Walaは、ウガンダのギガワット規模の太陽光発電計画と手を組み、ブロックチェーンによるクリーンエネルギー経済を構築すると発表した。

仕組はこうだ。

エネルギーの老舗企業であるCleanPath Emerging Markets Uganda(CPEM)は、ウガンダ政府、ウガンダ・エネルギー鉱物開発省と共同でこのプロジェクトを進めている。つまりウガンダ人は、この巨大な新規インフラ建設プロジェクトから生み出される太陽光エネルギーを、$DALAで使えるようになるということだ。

CPEMは、DALAブロックチェーンのプラットフォームを使って、台帳、業務委託契約、パートナー契約を管理する。同社はすでに、1万1000メガワット以上の再生可能エネルギーを作り出した経験を持っている。

ウガンダに新しいクリーンエネルギー経済を創出することを目的としたこの15億ドル(約1710億円)規模の計画は、新たな雇用を生み、クリーンエネルギー経済を立ち上げるだけでなく、ウガンダに新しい経済発展をもたらす。ウガンダの消費者は$DALAで太陽光発電された電気を購入でき、労働者は$DALAで賃金を受け取り、この計画自体が$DALAで推進されるのだ。

Walaの共同創設者でCEOのTricia Martinezは、オスロで開かれたPathfounderの会場で、私にこう話してくれた。「$DALAをローンチして以来、私たちが見てきた数字は驚異的なものです。現在の利用者は大半がウガンダ人なので、今回の提携関係は、$DALAを使うことで、さらに利益が増すようになるという自然な流れでした。利用者間には大量のトラフィックがあり、それはウガンダ人が、日常の取り引きに暗号資産を使う準備ができていることを示しています。

しかしこの物語は、映画『ブラックパンサー』の幻の王国ワカンダから歩み出てきたような、聡明なアフリカの王子の存在なくしては実現しなかった。

なぜなら、CPEMの創設者はブガンダ王国(ウガンダの王族のひとつが治める地域)の王子、Kudra Kalemaだからだ。その家系の歴史は、少なくとも14世紀にさかのぼる。現在、ブガンダは、ウガンダから大幅な自治権を与えられた君主制の王国となっている。

「この計画とDalaとの提携に、私たちは大変に興奮しています」とブガンダ王国のKudra Kalema王子は話す。彼はCPEMの経営パートナーであり共同創設者でもある。「$DALAでウガンダ人にクリーンエネルギーを提供できるようになることで、私たちはより開放的な非中央集権型の金融システムを育てることができます。それは古い技術では不可能なことでした」

TechCrunchの独占インタビューで、Kalema王子は私にこう話している。「私たち一族は、自分たちがこの土地の管理人だと考えています。そこで私は、ほぼ10年をかけて、この国を良くする方法を探ってきました。しかし、人々がスイッチをひねって明かりを点けることすらできないような状態で、何ができるでしょうか」

最大の課題は、安価な電力の供給だと彼は悟った。それを再生可能な形で実現する。それは太陽光発電でなければいけない。マイクログリッドでは解決できないことがわかった。もっと大規模にする必要がある。

しかし、なぜ彼は仮想通貨の導入を思いついたのだろう。

「ウガンダの財政構造には十分な力がないことが明確になったので、$DALAを使い始めました。何かが必要であることは明らかでした。私たちが行おうとしていた計画に役立つまでに、ウガンダ・シリングを安定させる道はありせんでした。Walaは、すでにウガンダに投資し、発展途上の市場に仮想通貨を持ち込もうと考えていただけでなく、この国にとって最良の金融機関の形を作ろうとしていました。それは、私たちがやろうとしていたことと一致します。ごく自然な成り行きです」

「今あるものは使い物にならないと、
ウガンダの人たちは言っています」
—Kudra Kalema王子

$DALAと太陽光発電計画を組み合わせるのは、アメリカなどの国よりも、ウガンダのほうがやりやすいと彼は言う。「ウガンダ人の80パーセント以上が35歳以下の若者で、高い教育を受けています。リープ・フロッギングという言葉は好きではありませんが、まさにそれが起きています。彼らは、昔に習ったことを捨て去る必要がないのです。彼らは、自分たちのためになる解決策を学ぼうと、必死になっています。ウガンダで、いかに早くモバイル・マネーが浸透したかを見ればわかります。外から押し付けられたからではなく、人々が自ら欲していたから、それだけの力を持てたのです。今あるものは使い物にならないと、ウガンダの人たちは言っています。銀行の手数料や送金のコストなどです。もう使えないとわかっているものに力を入れるこどなど、ウガンダ人はしません」

ウガンダは、今後も新しい技術を貪欲に求める市場でいるだろう。先日、Binanceが法定通貨と仮想通貨の取引所をウガンダに開設すると発表したが、それもそのひとつだ。

彼はこうも言っている。「ウガンダは、常にこうしたものの先頭にいました。大英帝国の保護領になる前から、ウガンダは、アフリカで新しい商売を始める道を探しに人々が集まる場所でした。私たちには複雑な部族制度がありました。そのために、イギリスはウガンダを侵略するのではなく、保護領としたのです」

この計画の詳細は野心的だ。Kalema王子のCPEMは、ギガワット規模の太陽光発電所建設計画により、人口の25パーセントにクリーンエネルギーを届け、20万人分の雇用をクリーンエネルギー経済の中に生み出すことを目指している。

この発電所で作られる電気は、現在のウガンダの総発電量の2倍に相当する(平均的なアメリカの石炭火力発電所のおよそ2基分だ)。現在は、国民の75パーセントが電気を使えない状態にある。

$DALAを使えば、ウガンダ人は手数料なしに電気が使えるようになる。毎日の買い物にも使え、政府機関、業者、仮想通貨取引所などでウガンダの法定通貨に交換することもできる。

さらに、CPEMとウガンダ政府は、貧しい人たちに電気を無料で与える助成制度を作ることができる。しかも、そうした助成の記録は、完全な監査が可能で、改ざんの心配もない。

アフリカの市場に嵐を起こそうとに、小さなスタートアップがやって来た話は2014年に始まる。

そもそも、アメリカのエンジェル投資家とソーシャルインパクト・ベンチャー投資企業(Impact Engine)に支援されていたTricia Martinez(上の写真)のWalaだが、2016年、ロンドンのアクセラレーターBarclays Techstars Acceleratorに加わった。その後、南アフリカのケープタウンに事務所を開設し、社員を増やしていった(現在は12名)。

間もなく、南アフリカのベンチャー投資企業Newtown Partnersから投資を受け、Walaは$DALA暗号資産を発行し、Dala財団を設立した。Newtown Partnersのトップに、Civicとイーサリアム・ベースのプロジェクトで知られるVinny Linghamがいるのは、おそらく偶然ではない。

Martinezは、仮想通貨が、アフリカのような新興市場が長年欲していた解決策になると情熱を燃やしている。「この計画の価値尺度と価値貯蔵が$DALAであることが、その実用性を証明していて、新興市場での望ましい金融システムになる可能性を示しています。立ち上げの時期から関ることができて、とても嬉しく思うと同時に、消費者のための的確で使いやすい金融システムの構築を手伝えることを、とても楽しみにしています」

彼女はこうも話している。王子もウガンダ政府も「金融包摂を促進して、人々にとって、金融をより効率的なデジタルシステムにするためのパートナーを探していました。そのとき、私たちのことを聞いたのです。話をしてみると、私たちは互いに、暗号資産の上にエコシステム全体を構築できると感じました」

「消費者が単にエネルギーを仮想通貨で購入するというだけでなく、エネルギーグリッドを建設する人たちの賃金も仮想通貨で支払われるということなのです。そのため、とくにエネルギーの観点から、みんなはブロックチェーンで透明化を果たそうと、大変な関心を持つようになりました。政府と一緒に、より信頼性の高い記録を付けることで、汚職の可能性も低減できます」

Martinezはこう指摘する。「ウガンダの10万人以上の利用者が見守る中で、人々はすでに電気や製品やサービスを買っています。この計画の目標は、電気を買う人々が、私たちが提供する他のすべてのサービスも利用してくれるようになることです。私たちは、現金の交換所の開設も予定しています。人々が、街でモバイル・マネーを現金に、また現金をモバイル・マネーに交換できるようにするのです」

これは本当に大きな計画だ。「ウガンダ」と「仮想通貨」という言葉が同じ文章の中に登場するのを見て、陳腐で否定的な評価を下す人もきっといるだろう。

しかし、新興国の渇望、熱心な王子、住民の団結と結びついたWalaの現地での活動は(西欧諸国でのブロックチェーンの会議によくいる肘掛け椅子にふんぞり返った評論家と異なり、その重要さはどんなに誇張しても物足りないほどだが)、決して見くびってはいけない。

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(翻訳:金井哲夫)

アフリカも宇宙競争に参加、ガーナの最初の衛星が地球の周回を始めた

【編集部注】著者のJake Brightは、ニューヨーク市在住の記者ならびに作家である。また彼はThe Next Africaの共著者でもある。

ガーナの最初の衛星であるGhanaSat-1は、友人たちの助けも少し借りながら、軌道に乗ることができた。

All Nations Universityのガーナ人エンジニアリングチームが作成したCubeSat(小型衛星)は、6月にSpaceXロケットに搭載され、ケネディ宇宙センターのパッド39aから発射されてNASAの国際宇宙ステーションへと届けられた、とNASAの広報担当者が語った。

ガーナの教授兼、NASAのアシスタントリサーチサイエンティストであるRichard Damoahによれば、センターから届けられたGhanaSat-1は7月には軌道に乗り、運用が開始されたということだ。

「今回の衛星には2つのミッションがあります」と、DamoahはTechCrunchに語った。「まずガーナの海岸線を詳細にモニタするためのカメラが搭載されています。それから、教育的要素があります。私たちはそれを使って衛星技術を高校教育のカリキュラムに組み込もうと考えているのです」と彼は語った。

GhanaSat-1は、All Nations Universityの宇宙システム技術研究所の地上局に対して信号を送信する。そこは、Benjamin BonsuErnest Teye Matey、Joseph Quansahらを含むエンジニアチームによって衛星が開発された場所だ。 

ガーナの大統領Nana Akufo-Addoは発射に喝采を送りチームを直接労ったが、プロジェクトはガーナ政府の公式な支援を受けていない、とDamoahは語った。その代わりに、日本の国家宇宙機関であるJAXAが、衛星の開発のために大量のリソースと訓練を提供した。

GhanaSat-1の展開は、宇宙探査に向かうアフリカの関心と活動の高まりを示している。ナイジェリア初のCubeSatも、同じSpaceXのミッションで打ち上げられている。「南アフリカ、ナイジェリア、ケニア、そしてエチオピアなどの国が宇宙機関を持っています。アンゴラも来年に衛星を打ち上げる意向を発表しています」と、世界経済フォーラムのアフリカ代表、Elsie Kanzaは語った。

彼女はまた、アフリカ連合(AU)による(昨年採択された)アフリカ宇宙政策と戦略イニシアチブなどの、宇宙開発努力を調整する全アフリカの取り組みを紹介し、これによりアフリカ連合のメンバーたちが「アフリカにおける外宇宙プログラム(Outer space Programme)をAUの優先プログラムの1つとして認識した」と語った。

DamoahはGhanaSat-1の打ち上げ成功によって、 All Nations Universityと同国の宇宙科学技術センターが共同で推進する第2の衛星プロジェクトに足して、ガーナ政府の支援が提供されることを期待している。「今回の打上げ後、私たちは大統領と内閣からの支持は得ています」と述べた。「われわれは、違法な鉱業、水使用、森林破壊などのモニタリングを可能にできる、高解像度のカメラを備えたGhanaSat-2の開発を考えています」。

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(翻訳:Sako)

Facebook、太陽光ドローンAquilaの2回目の飛行試験に成功――今回は着陸もほぼ問題なし

Facebookは太陽エネルギーで駆動するドローンを上空に飛ばし、安定的にインターネットが利用できない地域にネット環境を提供するというプロジェクトに取り組んでいる。そして今週の木曜日に同社は大きなマイルストーンに達した。Aquilaと呼ばれるFacebook初の商用ドローンが、2回目の試験飛行を終え、無事に着陸を果たしたのだ。なお、1回目のテストでは着陸直前に構造上の問題が発生し、運輸安全委員会(NTSB)が調査を行っていた。

5月22日に開催されたこの試験飛行では、Aquilaが夜明け後すぐに地上を離れ、飛行時間は1時間46分におよんだ。機体は制限値の上空3000フィート(914メートル)まで上がり、上昇速度は初回のテストの倍となる分速180フィート(55メートル)を記録した。Aquilaのチームは、1回目の試験飛行のデータをもとに機体に数々の「改良」を加えた結果、この上昇速度を実現できたと話している。

上昇速度は向上したものの、そもそもAquilaは設計上そこまで速く移動できるようにはなっていないため、逆風時の時速は10〜15マイル(16~24キロメートル)程度だとFacebookは語る。しかし、Aquilaは安定したネット環境を提供するために、特定の区間にある程度長時間滞在する必要があることを考えると、飛行速度の遅さはむしろ強みだと言える。先述の通りAquilaは太陽エネルギーで駆動し、Facebookによれば消費電力はヘアドライヤー3個分とのこと。

今回の試験飛行もデータ収集が目的で、Aquilaのチームは手に入れたデータをもとに、エネルギー消費量を予測するモデルの調整やバッテリー、ソーラーシステムの最適化を行う予定だ。これらについては、もちろん試験飛行前に徹底的なシミュレーションが行われているが、細かな部分を調整するには、商業利用が始まったときの現場に近い環境でドローンを飛ばす以外に方法がないのだ。

それ以外にも、抵抗を増やして速度を落とすために新たに搭載されたスポイラーや、機体に搭載されたシステムから発される電波の強度のテストが行われた。1回目のテストで問題が発生した着陸プロセスも事前に見直され、ここでもスポイラーが力を発揮した。

新しい着陸プロセスでは機体へのダメージを軽減するために、プロペラが地面と水平に固定されるようになっており、これはテスト中もほぼ設計通りに機能したとFacebookは発表した。しかし、実際に固定されたプロペラはたったひとつで、上の動画を見ればわかる通り、残りのプロペラは着陸するまで全て垂直のままだった。しかし、着陸前にプロペラのモーターは全て止まり、機体は砂利が広がった地面にゆっくりと着陸した。さらに、機体へのダメージに関しては「すぐに修理可能なへこみが数か所」発生するに留まった。これは初回に比べればかなりマシだが、Aquilaのチームは引き続き着陸プロセスの改善に務める予定だ。

最終的にFacebookは、翼長113フィート(34メートル)もの巨大な機体を1回の飛行で最長90日間上空に滞在させ、直径60マイル(97キロメートル)の範囲にネット環境を提供しようとしている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

“アフリカ版BuzzFeed”、OMG Digitalがシードラウンドで110万ドル調達

OMG Digitalの共同ファウンダー:Dominic Mensah、Prince Boakye Boampong、Jesse Arhin Ghnsah

ガーナ発のメディアスタートアップで「アフリカ版BuzzFeed」とも呼ばれているOMG Digitalが、シードラウンドで110万ドルを調達したと本日発表した。メインのサイトであるOMG Voiceは、既にガーナ以外にもナイジェリアとケニアに進出しており、今回調達した資金はさらなる市場拡大に使われる予定だ。

今回のラウンドには、Kima VenturesやSoma Capital、Comcast Ventures Catalyst Fund、Social Capital、M&Y Growth Partners、Macro Venturesのほか、Mino GamesのJosh BuckleyやWill Sternlicht、エンターテイメント分野で活躍する弁護士のKenneth Hertz、Off-Grid ElectricファウンダーのFrances Xavier Helgesenなど、エンジェル投資家も参加していた。ちなみにOMG Digitalについては、彼らが昨夏Y Combinatorのアクセラレータープログラムに参加した際にTechCrunchでも紹介していた

OMG Voiceは、Jesse Arhin Ghansah、Prince Boakye Boampong、Dominic Mensahの3人によって2016年2月にローンチされ、現在の月間ユニークユーザー数は450万人にのぼる。25人のチームに成長した彼らは、現在南アフリカ、ウガンダ、ザンビア、タンザニアへの進出を計画しおり、シード資金は市場拡大や動画コンテンツの制作、広告・マーケティング部門の増強に使われるという。

Ghansahとふたりの共同ファウンダーは、大学在学中の2012年にOMG Ghanaを立ち上げた。当時スマートフォンが一般に普及し始めていたものの、Ghansahはネット上に面白いコンテンツがあまりないと感じていた。

「インターネットをチェックしても、つまらないニュースや政治に関するコンテンツばかりだったので、かなりフラストレーションが溜まったのを覚えています。その経験から、リスティクル(まとめ記事)や軽めな内容の記事のように、私たちの世代に合った何かをつくりたいと思ったんです。その頃、スマートフォンが一般に広まり、Facebookがかなりの人気を呼んでいたこともあり、私たちはOMGを立ち上げることにしました」とGhansahは話す。

「その頃インターネットを利用していたのは、私たちのような若者ばかりでした。BuzzFeedやMashableはミレニアル世代に向けたコンテンツを発信していましたが、私たちは彼らのコンテンツにあまり共感できなかったので、自分たちで別のものを作ろうと考えたんです」

当初共同ファウンダーの3人は、OMG Ghanaをメインのプロジェクトとは考えておらず、マイクロレンディングプラットフォームを立ち上げようとしていた。しかし資金調達が上手くいかず、その一方でOMG Ghanaの読者は増え、収益も発生し始めていた。そこで彼らはメディア企業を設立することに決め、Y Combinatorのアクセラレータープログラムに参加したのだ。Ghansahは、昨年参加した同プログラムで「超大胆」になる方法を学んだと話す。

「まずはガーナから始めようと思っていたんですが、YCでは外国に進出しろと言われました。参加者は自分の限界を超えて大きなリスクをとるよう彼らに促されるんです」

さらにGhansahは、アフリカの人口の3分の1以上がミレニアル世代にあたるため、OMG Digitalの潜在的な読者はかなりいると付け加える。その一方で、BuzzFeedにはない問題として、彼らはアフリカ各国の文化や言語の違いという課題に取り組んでいかなければならない。

ほとんどのコンテンツは各国のサイトで共有できるような内容だが、それぞれのサイトオリジナルのコンテンツもたくさんある。例えば、ガーナのサイトでは「『Bye Felicia』というフレーズがピッタリな14場面」や「6人のかっこよすぎるガーナ戦士」といったオリジナル記事があり、ケニア版だと「ケニヤ人が『Game of Thrones』を好きな10個の理由」や「今後ケニアではプラスチック袋を持っているだけで刑務所送りに」といった見出しがサイトを飾っている。

「種々の文化的な違いやニュアンスが存在する一方で、中には共通点が見られる国もあります」とGhansahは言う。「例えばガーナとナイジェリアは文化的に近いため、この2国をターゲットにしたコンテンツをつくるのは比較的簡単です。ケニヤとタンザニアも似た文化を持っています。つまり、私たちは(市場拡大にあたって)既存の市場からできるだけ文化的に近い国へ進出しようとしているんです」

OMG Digitalは英語圏をカバーした後にフランス語や他の言語が公用語となっている国へと進出するつもりで、最終的にはアフリカ大陸の全ての国でメディアを運営したいと考えている。また、OMG Voiceの下には既にServePotと名付けられた料理関連のメディアブランドも存在し、今後はテクノロジーやライフスタイル関連のメディアも創刊される予定のようだ。彼らはほかにも、ミートアップイベントやスタートアップカンファレンスなどを開催するイベント業に取り組もうとしている。

BuzzFeedやその他のウェブメディアのように、OMG Digitalはデジタル広告から主な収益をあげている。現在は同社の売上の80%をバナー広告が占めているが、アフリカ以外の市場と同じように、広告主は投資に対する十分なリターンを得られていないと感じており、もっとモバイル端末に合った広告形態を求めているようだ(OMG Digitalのユーザーの90%がモバイル端末から同サイトにアクセスしており、特にAndroidユーザーの比率が高い)。

ユーザーの60%が18〜24歳の若者というOMG Digitalは、それぞれの市場でアフリカの若者にどうリーチすればよいか(国によってはFacebookよりもTwitterの方が人気のため、国ごとに戦略を考えなければならない)考えあぐねている海外企業にとっては魅力的な存在だ。既に同社は、Coca ColaやHuawei、KFC、Philips、Pringlesのほか、MTNを含むアフリカの大手通信会社数社とマーケティングキャンペーンやスポンサードコンテンツに関するパートナーシップを結んでいる。

「私たちは有名ブランドとタッグを組んで、アフリカのデジタル広告ビジネスのパイオニアになりたいと考えています。今のところいい感じにきています」とGhansahは話す。「ブランドも私たちの価値に気づき始めたようなので、これから2年間が大きな勝負になると思います」

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

アフリカ版マネーの虎「Face The Gorillas」は企業の教育を重視したピッチイベント

【編集部注】執筆者のJake Brightはニューヨーク在住のライター兼作家で『The Next Africa』の共著者。

オーディエンスが見守る中、アフリカ発のスタートアップが資金調達を目指してベンチャーキャピタリストにプレゼンする。

これが『Face The Gorillas』の内容だ。ルワンダで年に数回開催されているこのピッチイベントは、現地のテレビやYouTubeで放送されており、他のイベント内で開催されることもある。

Faces The Gorillasは、2013年にYariv Cohen・Angela Homsi夫妻の手によって誕生した。ふたりは、社会的投資活動を行うKaenaatIgnite Power Solarイニシアチブでの仕事を通じて、ルワンダのテックシーンと関わるようになった。

「私たちはICTセクターの支援をしようと、スタートアップ投資に興味がある人たちを集めたイベントを開催しており、それが番組化したものがFace The Gorillasなんです」とCohenはキガリ(Kigali)のオフィスの中で語った。「そもそもの目的は、ルワンダのスタートアップにビジネスの世界で通用するプレゼンのやり方を教えること、そして彼らに投資家が何を求めているのか理解してもらうことでした」

その後、ルワンダのICT商工会議所kLabのような団体とパートナーシップを結んだこともあり、Face The Gorillasはシリーズ化して年に数回開催されることになった。2013年のローンチからこれまでに8回行われたイベントでは、8社のスタートアップが資金調達に成功し、3社が失敗に終わったとCohenは話す。投資額はアクセラレーターのようなパートナーシップを含み、最高で20万ドルに設定されている。

2015年には、大学生くらいの年齢のPatrick Muhire・Cedrick Muhoza兄弟によって設立されたルワンダ発のフィンテック企業VugaPayが、10%の株式と引換えに2人のVCからメンターシップと2万ドルの資金を獲得した。このイベントで名が広まった同社は、その後シリコンバレーの投資家Tim Draperからも投資を受けることになる。

Cohenによれば、Face The Gorillasではアフリカ大陸のルワンダ以外の国々からも参加を受け付けているという。彼らはイベントの場所と日時が決まり次第「アフリカ中のICTハブに募集要項を送付し、応募企業の中から資金を調達できそうなレベルの企業を選んで、トレーニングを実施してから本番にのぞみます」と彼は話す。

その場で投資契約をまとめるという番組のつくりは、アメリカの『Shark Tank」(日本版注:「マネーの虎」のアメリカ版)と似ているが、両者の間にはいくつか大きな違いがある。まず、Face The Gorillasに参加できるのはテックスタートアップのみだ。さらに、彼らは投資家と企業間の建設的な関係の構築を目指しており、Cohenも「私たちのイベントでは、投資だけでなくスタートアップの支援や教育に重きをおいているVCを”ゴリラ”として選ぶようにしています」と語っている。「直近で行われた3つのイベントでは、オーディエンスからの投資もありました」と彼は続ける。

中でも、ルワンダのTransform Africa Summit内で行われるイベントには注目が集まっている。今年の5月に行われたイベントでは、VugaTVを立ち上げたInes Muhozaのような若いファウンダーが、Cohenと投資家の前で5分間のプレゼンを行い、その後実際の投資に関する質疑応答が行われた。VugaTV CEOのMuhozaは、資金を調達することができなかったものの、Face The Gorillasに参加してよかったと感じており、「イベントに参加したことで、投資家を説得する上で何が重要かというのがわかったので、次は資金を調達できるように頑張ります」と語った。

そのとき会場にいた投資家のひとりであるEugene Nyagaheneは、Muhozaに対してビジネスの相談にのることを提案した。Nyagaheneはルワンダのメディア界の重鎮で、50万ドルのファンドの運用も行う実業家だ。”ゴリラ”のひとりとして、「まず起業家のビジネスに対する情熱を見て、それから数字に目を向けます。このふたつが揃っていないと私は投資しません」と彼は語る。

そのふたつが揃った企業が同じイベントに登場した。Ibaze Groupと呼ばれるこの太陽光発電スタートアップは、18%の株式と引換えにNyagaheneを含む複数の投資家が共同で出資した3万5000ドルを獲得し、プレゼン終了後にはオーディエンスから大きな拍手が送られていた

Face The Gorillaは今後アフリカ中に活動の幅を広げていくのだろうか? 「そういった要望は既に受けていて、現在検討中です」とイベントのプロデューサー兼投資家でもあるYariv Cohenは語った。「もしも他の国に進出するとしても、教育というテーマ、そして投資家ではなく起業家にフォーカスしたスタイルは変えたくありません」

次のFace The Gorillasは2017年の第四四半期中に行われる予定だ。参加を希望するアフリカのスタートアップはkLabのウェブサイトでイベントの詳細や申請に関する情報を確認できる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

モバイル化が進むアフリカの医療業界―、遠隔医療相談サービスのKangpe

アフリカの医療業界と聞くと、国境なき医師団から派遣された医師が、人里離れた村で治療にあたっている様子を思い浮かべる人もいるかもしれないが、実際には、モバイルテクノロジーがアフリカ大陸全体の医療業界を急激に変化させている。Y Combinatorのプログラムに参加しているKangpe Healthは、モバイルデバイスを通じて医師と遠隔で連絡がとれるプラットフォームを開発し、変革が続くアフリカ市場に挑もうとしている。

ユーザーは、ベーシックな携帯電話やスマートフォン上のアプリを通じてKangpeのプラットフォームにアクセスし、健康に関する質問を送付することができる。簡単なものであれば、Kangpeの医療スタッフが10分以内に少額で質問に答え、もっと専門的なアドバイスが必要と判断された場合は、彼らがユーザーを専門医に紹介するようになっている。

もともとナイジェリアで医師として働いていたFemi Kutiは、Kangpeのアイディアを思いつき、友人のOpe OlumekenとMatthew Mayakiを誘って昨年同社を設立した。自分が担当した患者や友人から、常に何かしらの症状に関する質問のメッセージを受け取っていたKutiは、彼が無料で提供していたアドバイスを事業に転換できるのではと考えたのだ。

現在Kangpeはガーナとケニアでも営業しており、カバー地域の合計人口は2億4500万人に及ぶ。さらにKutiによれば、これまでのところ同社のプラットフォームには、6万人のユーザーが登録している。

もちろんKangpe以外にも、遠隔医療相談の事業を運営している企業は存在する。アメリカでは、Kangpeのように医師と遠隔でコンタクトできるプラットフォームのDoctor on Demandや、メッセージベースで医療関連の質問に答えるFrist Opinionといったサービスがある。さらにケニアのMedAfricaやウガンダのMatibabu、さらには現在アフリカの10カ国で営業しているHello Doctorなども、Kangpeと同じパイを狙っている。

一方で、新しいテクノロジーが急速に普及し、経済的に大きく成長している国々が存在するアフリカでは、まだまだ潜在的な顧客を獲得するチャンスは残されている。

さらにKutiは、アメリカの類似サービスをそのままアフリカに転用することはできないと指摘し、「Googleはアフリカ固有の病気について知りませんからね」と話す。

Kangpeは既に社会的にも注目されており、同社のプラットフォームはFacebookとのパートナシップを通じて、ナイジェリア向けFree Basicsプログラムではトップのサービスとして紹介されている。以下のFacebookが作ったビデオでは、Free Basics内でKangpeのサービスが宣伝されている様子を見ることができる。

しかし将来的には、”アフリカのOscar Health”を目指し、初期診断や医療保険、さらにはもっと専門的な医療サービスを提供できるようなプラットフォームへとKangpeを成長させていきたいとKutiは語る。

「私たちは、アフリカの人たちが納得できる価格で医療サービスを提供するため、日々努力を重ねています」と彼は付け加える。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Shutterstockに画像エディタ登場―有料ダウンロード前にストック写真を加工できる

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ストック写真のサイト、Shutterstockが誕生したのは2003年だが、やっと21世紀にふさわしいアップデートが発表された。今やShutterstockには画像エディタが内蔵されている。ソーシャルメディアやウェブページにこのサイトのストック写真を利用する場合、フィルターを適用したりその場で文字やイラストを追加できるようになった。

編集ツール自体はテキスト、画像の追加、フィルターなどが主な機能で、比較的初歩的だが、使って楽しい。これまでShutterstockのユーザーは必要な写真を有料でダウンロードした後、別アプリで編集しなければならないことに困惑していた。そこでこの画像エディタは簡単に使えることを最優先している。これでストック写真の使い道はかなり広がるだろう。

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プロダクト責任者のCatherine Ulrichは次のように述べている。

われわれの画像の利用にあたってユーザーはもっと多様なツール機能を必要としているという声を聞いた。ダウンロード後、多くのユーザーは画像のトリミングやリサイズ、フィルターの適用のために別途画像処理をソフトを利用している。つまりShutterstockの外で加工しなければならない。Shutterstock Editorを使えば、画像の利用過程を効率化できるだけでなく、操作自体も直感的に簡単にできるようになる。デザイナーではないユーザーにも基本的なデザイン技術が自由が利用できる。われわれは外部エディターという障壁を取り除いた。サイトのエディタを利用すればユーザーは写真を購入する前に適切な処理を試みることができる。

Shutterstockはストック写真を手軽に利用したスモールビジネスのオーナーに人気があるサイトだ。今回追加された画像エディターには複数のテンプレートやテーマに加えてFacebook、Instagram、Twitter用のトリミング機能が含まれる。ユーザーはPhotoshopのような高価で使い方の難しい画像編集ソフトを使わずに、サイト内で必要な加工が簡単に行える。しかも有料でダウンロードする前に出来栄えが確認できる。現在のところShuterstock Editorの機能は限られているが、こうしたウェブベースのツールの常として、今後改良されていくだろう。

〔日本版〕Shutterstockの料金プランはこちら(日本語)。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

フィットネス熱高まるアフリカでGarminがMTNと時計ラインをローンチ

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【編集部注】執筆者のJake Brightはニューヨークを拠点とするライター・作家で、The Next Africaの共著者。

Garminはモバイル通信大手のMTNと共同で、ガーナにてフィットネスウォッチをローンチすると発表した。GPSナビやスポーツ関連製品の製造・販売を行っているGarminは、今後MTN Ghanaの一部店舗を通じて、vivoFit3やvivoMove、vivoActive、Fenix3、vivoSmartアクティビティトラッカーを販売していく。

フィットネスに関心をもっているガーナの消費者は、今後最新のスマートフォンに加え、Garmin製の時計をMTNの店舗で購入できるようになる上、購入時には3ヶ月間有効の900MBデータ通信が無料でついてくる。なお、エントリーモデルのvivoFit3の販売価格は148ドルほどだ。

ガーナでの製品ローンチは、今後発展が期待されるアフリカのフィットネス市場に入り込むための戦略のひとつだと、Garminでサハラ以南アフリカ担当マネージング・ディレクターを務めるWalter Mechは話す。「GarminのGPS製品は有名ですが、健康機器にはそこまで力を入れていませんでした。そのため、健康機器の販売を伸ばすための新しい国や流通モデルを探すことにしたんです」

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MTNとのコラボレーションにあたっては、同社のアフリカにおける流通ネットワークが鍵となっていた。

「ちゃんとした販売チャンネルを持った企業という意味では、大手の通信事業者以外にあまり選択肢がありませんでした」とMechは話す。MTNも、Garminのインタラクティブな健康・スポーツ用プラットフォームをアフリカで利用することを楽しみにしているようで、Mechは「私たちの製品ラインを見て、MTNは健康とスポーツ両方の側面が製品に含まれていると感じ、幅広い消費者の心を掴むことができるのではないかと理解してくれました」と語っている。

さらにMechは、MTNがガーナのユーザー向けにLeaderboardsを採用すると語った。このプラットフォーム上では、さまざまなフィットネスアクティビティごとにユーザーがランク付けされ、他のユーザーと競い合うことができるようになっている。

Garminは南アフリカに自社のオフィスを設けており、他にもアフリカの25カ国へ代理店を通じて製品を販売している。また、ウェアラブルに関して言えば、南アフリカはGarminにとってアフリカ最大の市場で、ケニアとタンザニアがその後に続くとMechは話す。

アフリカのウェアラブルデバイス市場の未来に関して、信頼に値するデータをみつけるのは難しいが、Garminはアフリカ諸国のモバイルネットワークの統計をもとに計画を立てている。「私たちは、一国のモバイル契約者数の1%がスマートフォンを持つトップユーザー層だという仮定のもと、この層が私たちの狙うウェアラブル市場のサイズを表していると考えています」とMechは話す。南アフリカを例にとると、約600万人がこの層に含まれる計算になる。

さらにMechは、人口トレンドやフィットネス市場の盛り上がりから、Garminがアフリカのウェアラブル市場で成功をおさめることができる信じている。「健康に関心を持ち、モバイルデバイス好きな若い消費者が今後アフリカで増えていくということに他の企業は気づいていません。実際に、利用者の性別を問わず、ジムやスポーツクラブのほか、サイクリング・ランニングクラブの数は増えてきています」

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ウェアラブル市場の可能性を示す別の指標となるアフリカの消費者の購買力も、上記の動向にマッチしている。McKinsey’s Global Instituteによれば、アフリカ大陸の個人消費額は2015年に年間1兆4000億ドルを超えたが、この数字は2025年までに2兆ドルに達すると予測されている。

来年の計画として、Garminは、ガーナに加えてケニアでもフィットネスウェアラブルの売上額を大きく伸ばしていこうとしている。さらに、今回のMTNとのパートナーシップを参考に、アフリカ最大の人口(1億8200万人)・市場規模を誇るナイジェリアでの販売も強化していく予定だ。「私たちは現在、MTNとのパイロットテストから多くのことを学んでいます。ガーナに時間をかけていくうちに、何が上手くいって何が上手くいかないのか分かるため、今後はもっと簡単に他国で通信事業者と協業していけるようになるでしょう」

またGarminはマーケティングを目的として、ガーナやその他のアフリカ諸国で、もっとフィットネスやスポーツ関連のスポンサーを行うことも検討している。なお、2016年10月に行われたナイロビ国際マラソンでも同社はスポンサーを務めていた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

マーク・ザッカーバーグのアフリカ訪問は、同大陸の技術的関心の高まりを反映している

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【編集部注】著者のJake Brightはニューヨーク在住のライターである。共著書にThe Next Africaがある。

ナイジェリアの首都ラゴスで技術者との突然のミーティングを終えて、マーク・ザッカーバーグはこの木曜日ケニアに向かった。そこでFacebookのCEOはiHubイノベーションスペースを訪問し、BRCKモバイルWi-Fiデバイスを見たあと、ケニアのICT担当官Joseph Mucheruと昼食を食べて、技術リーダーのJuliana RotichとErik Hersmanに会った。

ラゴス訪問同様、この訪問も事前の発表はなされていない。「元々はFacebookのIme Archibongが来ると聞かされていました」とHersman(iHubの共同創設者)は語った。「しかし、私たちは最後の瞬間までマークの訪問については知りませんでした」。ArchibongはFacebookの戦略的提携ディレクター(Strategic Partnerships Director)だ。

ザッカーバーグの最初のケニア訪問では、正式なビジネスのコミットメントは(FacebookからTechCrunchへの回答によれば)何も計画されていないものの、Hersmanはそれがおそらく何かの先触れになると思っている。

「ね。このナイジェリアとケニアでのミーティングが、皆のための大した宣伝になっていますよ」と彼は語る。「とはいえ、私が観察したやりとりからは…Facebookのチームとこちらの技術コミュニティの様々な人たちの間のやりとりということですが、私は実際の活動がほどなく始まるのではないかと思います」。

ザッカーバーグが、最近になってやっとグローバルな技術ニュースに載るようになったばかりのナイジェリアを訪問することは、あまり予想されていなかったが、一方ケニアの方はそれほど意外なものではなかった。

4400万人を擁する東アフリカの同国は、デジタル金融、技術インキュベーション、そしてBRCKUshahidi crowdsourcingプラットホームのようなローカルなITイノベーションによって、「シリコンサバンナ」との異名を受け、大陸の非公式な技術首都となっている。

地域電話会社SafaricomのM-Pesaモバイルマネープロダクトは世界的に認知されている
同社はそのモバイルインフラストラクチャーを多くのデジタルプロダクトの革新に使ってきた、例えば太陽発電(M-Kopa)、オンラインTV、そして最近起業したM-Pesaに統合されたride-hailアプリ(Little:Uberの競合である)などである。

ICT担当局を設立したケニアは、その技術エコシステムを支援することに関してもっとも先行している政府の1つである。そして最近のGSMAの調査によれば、iHubは大陸内で300以上のイノベーションスペースを数えるアフリカの技術インキュベーター運動に拍車をかける支援をしている。

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技術的観点からは、ナイロビを訪問したザッカーバーグの決定は、比較的素直なものである。彼が着目した2つのイニシアティブは、BRCKベンチャーとデジタルプロトタイピングを行うスタートアップGearboxだった。どちらもErik HersmanとJuliana Rotichが設立したiHubインフラストラクチャから生まれたものだ。BRCKはローカルな貧弱なネット接続性と電源事情に起因するITチャレンジに応えるための開発された。

(おおよそ実際のれんが大の)ソーラー充電式のBRCK Wi-Fiプロダクトは、他の機器への充電や、3Gや4Gの回線を使って20台までのインターネット接続を提供する。現在は60以上の国に出荷されている。Hersmanは、小学校の児童のためのBRCKの教育用タブレットを示しながら「彼は次世代のBRCKデバイスのデモを見て、そして私たちのKioデバイスにかなり興味をそそられたようです」と語った。

ザッカーバーグはまた、Gearboxの支援を受けたStrauss太陽エネルギーパネルPayGo Energyホームクッキングプロダクトを見学した。Hersmanは、PayGoのプロダクトがケニア国民に、携帯電話とM-Pesaモバイルペイメントを使った分割払いを許していることを指摘しながら「彼は本当にM-Pesaの他のサービスへの統合に興味を持っていました」と語った。

KIO.TABLET

ザッカーバーグのナイジェリアとケニア訪問はFacebookのアフリカにおける存在感の拡大と、大陸の成長著しいデジタルプロフィールに符合する。広報担当者のSally Aldousによれば、Facebookはサハラ砂漠以南の地帯に8400万、南アフリカに1400万、ケニアに570万のユーザーを抱えている。

以前報告されたように、アフリカにおけるFacebookの利用は、オンライン広告マーケットへの刺激を始めている。大陸のデジタル商取引と歩調を合わせて2025年迄には750億ドルの規模になることが予想されている。

Facebookは、その最初のアフリカオフィスを2015年に南アフリカに開き、OgilvyとMatherを広告エグゼクティブに、Nunu Ntshingilaをアフリカ全土の責任者に指名した。ケニアでは、同社はiHubのイベントとワークショップに金銭的援助を提供した(Erik Hersmanに確認した)。

ケニアはまた、FacebookのInternet.orgによるFree Basics適用国の1つである。Free BasicsはAirtelの利用者にモバイルを介したインターネットアクセスを限定して提供するプログラムだ。Facebookによる、より多くのアフリカ人をインターネットにつなぐという約束は、木曜日に少々後退を余儀なくされた。同社のAmos-6衛星を搭載したSpaceXのロケットが発射直前に爆発したからだ。

ザッカーバーグの訪問後のアフリカで、Facebookから何を期待するかについて、広報担当者は詳細を発表していない。iHub、Gearbox、そしてBRCKの共同創設者Erik Hersmanは、Facebookの接続性向上の努力に期待している。「Free Basicsは成長していますが、まだ開かれたインターネットではありません」と彼は語った。「うまく行くビジネスモデルの周りに、それを広げていくチャンスはあるでしょう」。

Hersmanはまた、FacebookのCEOがシリコンバレーからより多くの注意をアフリカへ引きつけることを信じている。「彼はただ南アフリカを訪問することもできたのですよね、そちらの方がもっと皆に期待されていたことでしたから」と彼は言った。「ナイジェリアとケニアを訪問したことは、他のグローバル技術プレイヤーたちを前面に押し出すメッセージを送ったのです。もしFacebookが、時間や関心そしてお金をこの市場に注ぎ込むのなら、他の会社もかならず注目するでしょう」。

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(翻訳:Sako)