アマゾン、アップル、マイクロソフト、新型コロナウイルス対策への3社三様の取り組み

IT業界は、かなりのリソースを投入して、拡大を続ける新型コロナウイルスの世界的な大流行に対する取り組みをサポートしている。先週末、アマゾン、アップル、マイクロソフトの各CEOは、それぞれの会社の継続的な貢献について、さまざまな方面におよぶ最新状況を公開した。そこには、最前線の医療従事者に向けて医療用品や個人用保護具(PPE)を寄付することから、感染の世界的な広がりを追跡し分析することを支援するソフトウェアプロジェクトなどが含まれている。

画像クレジット:Simon Dawson/Bloomberg、Jason Alden/Bloomberg、MANDEL NGAN/AFP/Getty Images

アップルCEOのTim Cook(ティム・クック)氏はTwitterで、同社は米国とヨーロッパの両方で、医療従事者が必要としている必需品の調達を試みており、そのために「数百万枚のマスク」に参加していることを明らかにした。またアップルは、以前のリリースに関してもアップデートして詳細も説明した。その中には、1500万ドル(約16億6000万円)の寄付に加えて、すべての従業員の寄付に対して2対1のマッチングで寄付額を上乗せすることも発表した。いずれも新型コロナウイルス対策として使われる。

アマゾンの創立者兼CEOのJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏は、米国時間3月21日に同社の公式ブログを更新し、アマゾンの倉庫と物流業務における優先順位の変更に関する詳細を説明した。現在では、日常の家庭用の食料、ベビー用品や医療用品、といった必需品を優先的に処理するようにした。またベゾス氏は、10万人を新たに雇用するとともに、フルフィルメント労働者の時給を上げるという同社の約束を改めて確認している。

ベゾス氏によれば、同社は「数百万枚のマスクを発注しました」という。それらは、自宅作業ができない正社員や契約社員に配られることになるが、世界的な供給不足により「まだほんのわずかしか納品されていません」ということだ。さらに同氏は、そうした製品は、まず最初に最前線の医療従事者に届けられることになり、同社の従業員に対しては、納品されしだい、優先順位に従って供給されると説明している。

マイクロソフトCEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は、米国時間3月21日にLinkedInに、同社のさまざまな取り組みについて長い説明を投稿した。そこでは、同氏がマイクロソフトの全従業員に送信したメールの内容も公開している。ナデラ氏は、同社の遠隔医療のためのソフトウェアプラットフォームについて触れ、ジョン・ホプキンス大学(John Hopkins University)の世界的な新型コロナウイルス感染状況トラッカーなど、いくつかの共同データプロジェクトについても説明している。CDC(Centers for Disease Control and Prevention、米疾病対策センター)も、マイクロソフトの医療チャットボット技術を基盤フレームワークとして利用した、チャットボットによる新型コロナウイルス判定ツールをリリースした。

またマイクロソフトは、Microsoft TeamsとMinecraftが、世界中の学校の閉鎖を補うために設計された、リモート学習の新たな取り組みに利用されていることを確認している。さらに世界的な研究活動をサポートするため、機械学習とビッグデータのプロジェクトにも取り組んでいることも報告している。今週のはじめ、マイクロソフトの最高科学責任者、Eric Horvitz(エリック・ホービッツ)氏は、世界中の学術機関と共同で、オープンな研究データセットを提供すると発表した。これには、ホワイトハウスの科学技術政策局や、チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブも一枚噛んでいる。この、COVID-19 Open Research Data Setと呼ばれるデータセットには、同ウイルスに関する2万9000件を超える学術論文が含まれており、新たなものが公開されれば、逐次追加されることになっている。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ジェフ・ベゾス氏がホワイトハウスと新型コロナ対策で密に連絡

米国時間3月16日のホワイトハウスのブリーフィングで、政権の新型コロナウイルス対策タスクフォースと、CDC(米疾病予防管理センター)からの公衆衛生に関する新しい勧告について、詳細が語られた。その中でトランプ大統領は、ホワイトハウスがAmazon(アマゾン)のCEOJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏とCOVID-19の流行に関して「毎日」のように連絡をとっているという報道について、報道陣から真偽をたずねられた。

トランプ氏の答えは、それを明確に確認するものではなかったものの、アマゾンの創立者兼最高経営責任者とホワイトハウスが、状況の変化に応じて一定程度協力していることを示すもののように思われた。明確な答えを求めたTechCrunchに対して、アマゾンの広報担当者は、新型コロナウイルスの流行に関して「ジェフ・ベゾスはホワイトハウスと連絡を取り合っています」と明かしている。

「まあ、それは本当だと聞いているよ」と、トランプ氏もブリーフィング中に語っている。「ホントかどうかはわからないが、我々のスタッフがアマゾン、あるいはベゾス氏本人と関わっていると、私は理解しているよ。素晴らしいことじゃないか。我々は多くの人達から多大なサポートを受けているんだ。彼もその1人だと思っているよ」

先週Fox Businessは、ウイルスを封じ込める対策にについて話し合うため、ホワイトハウスは大手IT企業と会合を持つことになるだろうと報じた。その対象としては、Facebook(フェイスッブック)、Google(グーグル)、アマゾン、Twitter(ツイッター)、Apple(アップル)、Microsoft(マイクソフト)が挙げられていた。

ベゾス氏が、どの程度ホワイトハウスと協力し、コロナウイルスのパンデミックに対処するのかは、まだよくわからない。とはいえ、アマゾンとしても世界的なウイルスの流行によって大きな影響を受けていることは確かだ。その証拠にアマゾンは、米国内で10万人の雇用を追加して、倉庫と配送に配備することを模索している。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

「アレクサ、ガソリン代払って」コマンドが米国の1万カ所以上のGSで利用可能に

車にガソリンを入れるのは、それほど難しいことではない。しかしAmazon(アマゾン)は、ボイスコマンドを利用することで、それがもっと簡単になると考えている。ガソリンスタンドの計量器の横に車を止めたら、「アレクサ、ガソリン代払って」と言えばいいのだ。米国時間の1月7日、Amazonは、ExxonMobil(エクソンモービル)、Fiserv(ファイサーブ)と連名で、音声指示によるガソリン給油について発表した。今年の後半には、米国の1万1500以上のExxon(エクソン)とモービル(Mobile)のガソリンスタンドで利用可能になる。

Amazonによると、Alexa(アレクサ)を利用してガソリン代を支払う機能は、まずはAlexa対応の車、Echo AutoやAlexa対応のモバイルデバイスを持っている顧客から利用可能になるという。

顧客は計量器の横に着いたら「アレクサ、ガソリン代払って」と言うだけで使い始めることができる。するとAlexaは、ガソリンスタンドの位置と計量器の番号を確認する。

支払い自体は、Amazon Payを使って処理される。その支払情報も、顧客の通常のAmazonアカウントに保存される。Fiservの電子商取引の技術によって、ガソリンの計量器を稼働させ、安全な支払いが実行されるよう、トークンの生成も円滑に進行する。

このような、Alexaを利用した給油体験が、支払カードを計量器に直接セットするより、大幅に早くて簡単かどうかは定かではない。どちらかと言うと、ちょっと回りくどいような感じもする。しかし、これは便利だと感じる人もいるだろう。計量器が認証されて給油可能になるまで、車の外で処理の進行を待つ代わり、車の中に居ることができるのだから。

特に寒い冬の日には、ありがたいものに感じられるかもしれない。また、女性など、計量器の横に一人でいるのが心配だという人には歓迎されるだろう。夜間やよく知らない場所など、安心できないような状況でガソリンを入れる場合には特にそうかもしれない。

「私たちは、ガソリンスタンドに新しいテクノロジーと、素晴らしい体験をもたらすことにワクワクしています」と、エクソンモービルの米国燃料マーケティングマネージャーであるEric Carmichael(エリック・カーマイケル)氏は声明で述べた。「私たちは、消費者をあっと言わせるような、使いやすさと安全性を両立させるテクノロジーを開発し、探求してまいります」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

低価格のAmazon Echo StudioがアップルのHomePodを追撃

思い起こせばAmazon(アマゾン)は、2014年の年末にオリジナルのEchoを引っさげて、スマートスピーカー市場に参入した。同社の多くのハードウェア製品と同様、かなり実利的なデバイスだった。この初代のEchoは「賢い」ことに重点が置かれ、「スピーカー」としての性能はないがしろにされていた。

Echoシリーズとしては、徐々に音質も改善されてきたが、Apple(アップル)のHomePodや、Google(グーグル)のHome Maxが登場したことで、Echoのラインアップに本当に高品質のスピーカーがないことが露呈してしまった。アマゾンでは、EchoシリーズにLink、Amp、Sub、Inputといった製品を追加することで、Alexaを既存のホームステレオに統合する戦略にも出た。しかし、このStudioが発表されるまで、アップルのHomePodに対する本当の答えは示されていなかった。

Echo Studioは、あらゆる点で、アマゾンがHomePodを意識して作ったもの。良い点も悪い点も、その他すべての特徴が必然的に含まれる。確かに、これはアマゾンが今までに発売した中で最も高級なEchoスピーカーだが、Studioはいわゆる高級スピーカーというものとはちょっと違っている。製造品質や素材の質感は、アップルのHomePodには及ばない。しかし、価格の差が100ドル(約1万900円)もあることを考えれば、納得できる範囲のものだろう。

アマゾンが、この製品をHomePodよりも低価格で提供したのは、間違いなく正しい動きと言える。さすがに、300ドル(約3万2600円)もするスピーカーは、アマゾンでも売るのがかなり難しい。しかしちょうど200ドルを切るような(日本では2万4800円)価格は、Echo Studioにとって適切な値付けだと考えられる。しかもアマゾンが、頻繁にハードウェアを割引販売することを考えればなおさらだ。

ぱっと見、StudioはHomePodにちょっと似ている。サイズもほぼ同じ。標準のEchoよりもかなり大きくはなっているものの、たいていの机や棚に無理なく収まらないほど大きくはない。上部には、特徴的な大きなライトリングがあり、それに沿ってマイクのオン/オフ(オフでリングが赤く光る)、音量を上げる/下げる、Alexaを起動するアクションボタンという4つの物理的なボタンが配置されている。

Googleのデバイスを使っていると、曲の再生や一時停止を、押して操作するのが自然に感じられることを実感させられる。ほかのEchoシリーズのデバイスでもそうだが、そのような操作はできない。

上から、全体のほぼ3分の2ほど下がった部分には、大きな切り欠きがあり本体を貫通している。これは低音用の開口部で、下向きに取り付けられたウーファの効果を最大限に引き出すもの。その狙いどおりの効果を発揮している。低音の不足はまったく感じられない。私の好みで言えば強すぎるくらいだ。ロックをかけると音が濁る傾向がある。

Echo Budsと同様、アマゾンのアプリを使ってイコライザーのレベルを変更できるので、思いどおりに調整できる。Studioにも、音質のキャリブレーション機能が組み込まれている。競合する他社のシステムと同様、周囲の音を聴き取って自動調整するもの。音質を最適化するには、少なくとも壁から6インチ(約15cm)離して設置するようAmazonは勧めている。私もリビングルーム内で、何カ所かの場所に置いて試してみた。音質はなかなかいいが、他社の高級スマートスピーカーにはちょっと及ばないと感じた。

Studioの音質は、例えばBill Evans(ビル・エヴァンス)のジャズピアノのような、シンプルなサウンドの再生に適している。一方、The Hold Steadyのようなロックや、Run the Jewelsのようなヒップホップを再生すると、明瞭さが若干損なわれる感じだ。とはいえ、アパートの部屋など、狭めの部屋で使う分には音量的にも申しぶんなく十二分に機能する。ホームシアター用のオプションを追加すれば、Fire TVのユーザーにとって効果的なアップグレードとなるはずだ。

Studioは疑いの余地なく、これまでで最も優れた最も豊かな音質を実現したEchoだ。音質に限って言えば、アップルHomePodや、Sonos(ソノス)のMove、あるいはグーグルのHome Maxより優れているということはできないが、199ドル(日本では2万4800円)という価格設定は、アマゾンが考える、より低予算のスマートホームへのアプローチにも適合するものだろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

マイクロソフトが勝利しても米国防総省JEDIのサーガは終わらない

米国防総省のJEDI(Joint Enterprise Defense Infrastructure)、つまり防衛基盤整備のための共同事業は、米国時間10月25日午後にスリリングな結末を迎えたが、まさにそうなるべくして、土壇場の逆転劇が展開された。本命のAmazon(アマゾン)が契約を逃したことには、大勢が息を飲んだ。当のアマゾンもそうであったに違いない。結局、100億ドル(約1兆900億円)を勝ち取ったのはMicrosoft(マイクロソフト))だった。

この契約は、最初からドラマにあふれていた。その金額もさることながら、長い契約期間1社総取りという性質に加えて政治までも絡んできた。政治の話は忘れられない。つまりはワシントンの話だ。アマゾンのCEOであるジェフ・ベゾス氏はワシントンポスト紙を所有している。

調達手順全般に対するオラクルの激しい怒りもあった。8月にはトランプ大統領も出てきた。決定が下された2日前の10月23日には国防長官が身を引いた。10月25日夕方に発表された最終決定も含め、なんとも壮大なドラマだった。しかし、まだはっきりしないことがある。はたして、これで決着したのか、それともこの後、二転三転の物語が続くのか。

関連記事:マイクロソフトはアマゾンとの入札競争に勝って国防総省の1兆円相当のクラウドを作る

100億ドルとはどれほどか

マイクロソフト100億ドルの10年契約を手にしたことに腰を抜かす前に、去年、アマゾンがクラウド部門だけで90億ドル(約9800億円)の収益を上げていることを考えてみよう。マイクロソフトは前四半期の総収入を330億ドル(約3兆6000億円)と報告した。クラウド部門での収益は110億ドル(約1兆2000億円)だという。シナジー研究所は、現在のクラウド・インフラ市場は、年間1000億ドル(約10兆9000億円)規模と見積もっている(さらに成長中)。

ここで話題になっている契約は年間100億ドル相当だ。しかも、政府が取引解除事項のひとつを使えば、それだけの価値は得られなくなる。契約が保証しているのは最初の2年間だけだ。その後、3年間の継続オプションが2回あり、最後にそこまで辿り着けた場合だが残りの2年間のオプションがある。

米国防総省は、いつ足元をすくわれるともわからないハイテク業界の変わり身の早さを考慮して、このユニークな契約内容と1社との単独契約により、常にオプションをオープンにしておきたかったと認めている。契約企業が他社に突然潰されてしまうこともあり得るため、10年もの間、ひとつの企業との関係に拘束されることを嫌ったのだ。流れる砂のように急速に変化するテクノロジーの性質を考えれば、その戦略は賢明だと言える。

関連記事:ペンタゴンの100億ドルJEDIクラウド契約を大局的に見てみよう(未訳)

どこに価値があるのか

この取引の価値は契約そのものにはないとするなら、なぜみんなそれほどまで欲しがっていたのかという疑問が湧く。100億ドルのJEDI契約は単なる入り口に過ぎない。国防総省のインフラを近代化できるなら、政府の他の機関の近代化も可能だろうという話になる。そうしてマイクロソフトには、政府のクラウドビジネスというおいしい話への扉が開くのだ。

だが、マイクロソフトがまだおいしいクラウドビジネスにありついていないというわけではない。例えば2016年、マイクロソフトは国防総省全体をWindows10に移行させるための、およそ10億ドルの契約を交わしている。アマゾンも、政府との契約により利益を享受している。あの有名な、CIAのプライベートクラウドを構築する6億ドル(約650億円)の契約だ。

しかし、この契約の注目度の高さを見るに、これには政府からの通常の受注契約とは少し違う雰囲気が常に漂っている。事実、国防総省は「スター・ウォーズ」にちなんだ略称を使って、最初からこのプロジェクトに関心を集めようとしていた。そのため、この契約を勝ち取ることは大変な名誉であり、マイクロソフトは鼻高々だった。それに引き換えアマゾンは、いったい何が悪かったのかと思いに沈んでいる。オラクルなどその他の企業は、この結果をどう捉えているのか知るよしもない。

関連記事:JEDIの期限を目前にしてマイクロソフトは政府向けクラウドサービスを披露(未訳)

地獄は軽蔑されたオラクルのような怒りをもたない

オラクル。JEDIの提案募集の段階を通じて怒りを露わにしてきたオラクルを語らずして、この話は完結しない。提案募集が始まる以前から、同社は調達方法について不満を述べていた。オラクルの共同CEOであるSafra Catz(サフラ・キャッツ)氏は、大統領と夕食をともにし、契約手順は不公正だと訴えた。その後、彼らは米政府説明責任局に苦情を申し立てた。だが、契約手順に問題はないと判断された。

そして彼らは裁判所に訴え出た。だが裁判官は、調達手順が不公正であることと、国防総省に雇われたアマゾンの元従業員が提案依頼書の作成に関わっていたことの両方の訴えを退けた。彼らは、その元従業員が、契約がアマゾン有利になっていることの証拠だと主張した。しかし裁判官はそれに同意せず、彼らの苦情を却下した。

オラクルが決して譲れないのは、マイクロソフトとアマゾンというファイナリストに匹敵するクラウド技術を単純に持たないからという理由だ。クラウド技術で遅れをとっていたり、市場占有率がアマゾンやマイクロソフトの数分の1ということは決してない。問題は手順にあるか、誰かが意図的にオラクルを追い出したとしか考えられない。

関連記事:100億ドルのペンタゴンJEDIクラウド提案依頼に関するオラクルの抗議を政府が否定

マイクロソフトは何を提案したのか

決定に関する政治的な駆け引き(近く報告する)とは別に、豊富な経験と高い技術力を提示したマイクロソフトが選考段階で優位になったのは確実だ。選考理由を知るまでは、なぜ国防総省がマイクロソフトを選んだのかを正確に知ることはできなかった。しかし、今になって少しわかってきた。

まずは、国防総省との間に継続中の契約があったこと。前述のWindows10の契約のほかに、国防総省に「革新的な企業サービス」をもたらすための国防情報局との17億6000万ドル(約1920億円)の5年契約を結んでいる。

そして、軍隊がどこにでも設置できるポータブルなプライベートクラウドスタックAzure Stack(アジュール・スタック)がある。これは、クラウドサーバーでの通信が困難になる恐れのある戦場で、作戦遂行の大きな助けになる。

関連記事:JEDI落札前にも政府のセキュリティー対策で信頼を築き上げるマイクロソフト

これで終わりだなんてあり得ない

これでいいのだろうか?決定は下され、いよいよ動き出すときだ。アマゾンは家に帰って傷を癒す。マイクロソフトは意気揚々で物事は治った。だが実際のところ、ここはまだまだ話の結末などではない。

たとえばアマゾンは、ジェームズ・マティス元国防長官の著書を論拠にできる。マティス氏は大統領から「100億ドルの契約からベゾスを締め出せ」と命じられたという。彼は拒否したと書いているが、この疑惑がある限り、論争は終わらない。

ジェフ・ベゾス氏がワシントンポストを所有していて、大統領がこの新聞社を目の敵にしていることも指摘しておくべきだろう。事実、今週ホワイトハウスはワシントンポストの購読を停止し、他の政府機関もそれに倣うよう奨励した。

さらに、現国防長官のマーク・エスパー氏が10月23日午後に、突然この件には不適格であると担当から身を引いた事件があった。息子がIBMで働いている(クラウドとは関係のないコンサルティング業務)という小さな理由によるものだ。彼は、どんなに些細なことでも利害に関わる疑念を排除したいのだと語っていた。しかし、その時点ではすでにマイクロソフトとアマゾンに候補は絞られていた。IBMはまったく関与していない。

アマゾンが今回の決定に抗議するとしたら、オラクルの場合よりもずっと強固な証拠が必要になるだろう。アマゾンの広報担当者は「その選択肢は捨てずにいる」とだけ話している。

結論として、少なくとも今の段階では決定が下されたということだが、その過程では最初からプロジェクトの設計そのものにおいても論争が絶えなかった。そのため、アマゾンが独自で抗議行動に出たとしても不思議はない。なぜだか、それが自然に思える。

関連記事:ペンタゴンの100億ドル規模のプロジェクトJEDI(ジェダイ)が、クラウド企業たちを悩ます理由

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(翻訳:金井哲夫)

アマゾンのQ&Aプラットフォーム「Alexa Answers」を米国で開始

Amazon(アマゾン)は昨年12月、Alexa(アレクサ)の質問に答える能力を高めることを目的に、クラウドソーシングによるQ&Aプラットフォームのベータ版をローンチした。Alexa Answers(アレクサ・アンサーズ)と呼ばれるこの機能の一般向けサービスが米国で開始された。アマゾンによると、この機能は招待された人だけが参加できた初期のコミュニティーで大変に評判がよく、彼らはその後も引き続き何十万件という回答を登録して貢献し、その回答はAlexaのユーザーの間で何百万回とシェアされている。

アマゾンは、この回答と通常のAlexaの応対とを区別するために、答の内容の責任をアマゾンの顧客に持たせている。

一般公開に際してアマゾンが説明したところによると、「バーバラ・ブッシュはどこに埋葬されている?」とか「ロード・オブ・ザ・リングの作曲者は?」とか「コルクは何からできている?」とか「コウモリは冬はどこにいる?」といった、これまでAlexaには対処できなかった質問の答が数千件用意されているという。

Bing(ビング)などの情報源と統合されていることを考えれば、Alexaにはすでにそうした質問に答える能力はあったはずだが、対応できる分野に限りがあった。

上記のような一般的な質問に答えられる能力は、現在はGoogleアシスタントのひとつの強みになっている。ウェブにあふれるデータに基づいて、長年にわたりグーグルが構築してきたナレッジグラフのお陰だ。

それに対して、回答のデータベースを急いで構築するためにアマゾンが下した決定は、クラウドソーシングを利用し、数多くの潜在的な難題、とりわけ悪用や正確性の問題に対して自らをオープンにするというものだった。

Yahoo Answers(ヤフー・アンサーズ)やQuora(クオーラ)などのクラウドソーシングQ&Aプラットフォームを使ったことのある方なら、高い支持を得た答がかならずしもベストではなく、正しいとも限らないことをよくご存知だろう。ときにはいい加減なものもある。さらに、報酬制度につられて参加した人の場合は、トップ貢献者に指定されたいがために、とにかく回答を乱発しようとするかも知れない。そうした人たち全員が、自ら探し出した質問に対する最善の回答者であるとは限らないのだ。

アマゾンは、そのような問題には、不適切であったり人を不快にさせるような回答を自動フィルタリングによって選別するプラットフォームで対処しようとしている。さらに、コミュニティーのプラットフォームでベストと評価された回答がAlexaでシェアされ、質問に答えた人にはポイントが贈られる。

これまで、このコミュニティーは招待された少数の人だけで構成される限られた世界だった。

それが今、米国アマゾンにアカウントを持つすべての人が貢献できるようになった。用意された質問のリストから、最も多く質問されたや最新などのフィルターで絞り込むか、トピックで分類された中から質問を選ぶ。回答を書くとポイントが与えられ、週ごと、月ごとのリーダーボードに掲載される。さらに、質問に答えた数、アレクサのユーザー間でシェアされた回数などに基づき、バッジが授与される。

「この機能は、Alexaの能力向上のために継続的に行っているさまざまな努力の中の、ひとつの例に過ぎません」とアマゾンの広報担当者は話している。「これまでと同様、私たちはお客様からのフィードバックに基づいて、体験を進化させていく所存です」

今のところ、この機能で不愉快な思いをしたという報告はないが、まだそれほど広まっているわけでもない。また、炎上目的でオンラインコミュニティーを混乱に陥れようとする輩を排除できる十分な力が、アマゾンにあるか否かも不明だ。

クラウドソーシング自身が悪いわけではないが、たとえばWikipedia(ウィキペディア)もよく承知しているように、そこはしっかりとした監視を必要とする分野だ。Wikipediaの場合、同サイトの内容のほとんどを精鋭グループが検証するという形に帰結した。Alexa Answersの場合は、リーダーボードでコミュニティーの参加者を競争させているため、そのような自警システムの導入は難しい。こうしたゲーミフィケーションからは、協調や助け合いが生まれることはあまり期待できない。

よりよいモデルとして、Reddit(レディット)の仮想通貨や段階的な報酬精度、そして、強力なコミュニティーのリーダーがトピックごとの節度を維持するという方法が考えられる。しかし、コミュニティーを有機的に育て上げるには時間と労力を必要とする。今の音声アシスタントは、機能ごとに互いに張り合う、いわば短距離走の状態だ。マラソンではない。

Alexa Answersは、alexaanswers.amazon.com/aboutで公開されている(米国のアマゾンのアカウントが必要)。

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(翻訳:金井哲夫)

アマゾンが注文確認メールを他人に送信

TechCrunchに入った情報によると、Amazon(アマゾン)の顧客が、他の顧客宛の請求書や注文確認の電子メールを受け取ったとうったえる事例が発生している。

サイバーセキュリティ会社Rendition Infosecの創立者であるジェイク・ウィリアムズ(Jake Williams)氏は、他人の名前、住所、注文の詳細が記載された電子メールを自身がAmazonから受け取り、警告を発した。

ウィリアムズ氏によると、彼は数ヶ月前に、ある品物を注文した。それは最近になってようやく出荷可能になったものだという。彼はメールのヘッダーをチェックして、それが真正のメッセージであることを確認した。

「たぶん彼らは正規の手続きを踏んで、その商品が予定より早く出荷できることを私に知らせてきたのでしょう」と、彼は述べた。「しかし、システムがどこかでこんがらがって、間違った宛先に通知を送ってしまったようです」。

ウィリアムズ氏によれば、明らかにセキュリティ上の過失が認められるという。注文に関するメールを間違った相手に送ることは、「深刻な背信行為」であり、性的指向や嗜好、その他の個人的な情報など、顧客の人生に関わるプライベートな情報を暴露してしまう可能性があるからだ。

その他の何人かのAmazon顧客も、他人宛と思われるメールを受け取ったと明かしている。

「昨日の午後に注文したのですが、昨夜、他の女性宛のメールを受け取りました」と、同じような事態に遭遇したことをツイートした顧客の一人が、TechCrunchに語った。「幸い、私は悪人ではありませんが、これはセキュリティ上、大きな問題でしょう」。

また別の顧客も、他の人宛のメールを受信したことについてツイートしている。彼が、Amazonのカスタマーサービスに電話したところ、セキュリティ上の問題についてはよく調査すると言われたという。

「私としては、自分の個人的なアカウント情報が、他の人に送られないことを願うのみです」と、彼は付け加えた。

さらに別の顧客も、この問題に関するスレッドにツイートしている。それによると、彼女は、この問題をカスタマーサービスの監督者に直接電話で訴えた。すると「平然とした」答えが返ってきた。それはよくあることだ、と言われたというのだ。

Amazonの広報担当者セシリア・ファン(Cecilia Fan)氏は、「技術的な問題により、一部のお客様に対して配達状況を通知するメールを、意図せず誤った宛先に送信してしまいました。その技術的な問題は修正済で、該当するお客様にお知らせしているところです」と述べている。

この1年で2度めのセキュリティ上の失態だ。昨年11月、Amazonは「技術的なエラー」によって不明な数のメールアドレスが公開状態になってしまったと、顧客にメールで通知した。その詳細について尋ねられると、秘密主義で悪名高い会社らしく、それ以上の詳しいコメントは拒否したのだった。

Amazon広報からのコメントを反映させて記事を更新済。

画像クレジット:Kevin Hagen/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

アマゾンはサードパーティの売れ残りをチャリティに寄付するプログラムを開始

Amazon(アマゾン)は、サードパーティの販売者の商品で、不要になった過剰在庫や返品されたものを、返送したり破棄するのではなく、より簡単かつ安価に寄付できるようにする。同社は米国時間8月14日に、新たなプログラム「Fulfillment by Amazon(FBA)Donations」の開始を発表した。過剰在庫や返品された商品を慈善団体に分配するものだ。

このニュースを最初に報じたCNBCは、Amazonのブログに投稿された短い記事でも確認を取っている

このプログラムは、今年初めごろにあった一連のニュース報道を受けたもの。それによると、Amazonの倉庫では、日常的に何百万点もの売れ残り商品を処分しているということだった。フランスにある、どちらかというと小規模な倉庫でさえ、9か月の間に29万3000点の商品を、地元のゴミ集積場に送っていた。フランスのテレビのドキュメンタリー番組は、昨年だけで、Amazonは300万点以上の商品を破棄したと断言している。

そのドキュメンタリーでは、Amazonの作業員が、新品のおもちゃ、キッチン用品、薄型テレビなどを、ゴミ集積場に送るために運び出している様子を密かに撮影していたと報道されている。

過剰となったり不要になった在庫や、返品された商品を破棄するのは、残念ながら小売業にとっては一般的な行為だが、特に高級なアパレル関連では珍しくもない。しかし、それをAmazonのように大規模に行うと、問題が複雑になる。さらに、破壊されてしまった商品は、人々の生活に役立てることができるものだった可能性も高い。

Amazonは、チャリティーパートナーの協力も得て、9月から米国と英国で、サードパーティの販売者の商品の寄付を開始すると述べている。米国では、Good360という組織と協力して進めることになる。その組織は、小売業者や消費財メーカーと提携し、さまざまな非営利団体のネットワークを通じて、本当に必要とされている商品を調達して配布する。英国のAmazonは、Newlife救世軍Barnardoなどと協力する。

販売業者がCNBCに語ったところによれば、商品を廃棄したり、返送を依頼するよりも、寄付するほうが安くつくという。なぜならAmazonは、廃棄、返送には50セント(約53円)、寄付なら15セント(約16円)を請求するからだ。このプログラムが、販売業者にとっての新たなデフォルトとなるが、望めばオプトアウトを選択することも可能となっている。

「必要としている人の手に商品を渡すことで、生活を変え、地域のコミュニティを強化できることを理解しています」と、Amazon in the Communityの責任者、アリス・ショーベ(Alice Shobe)氏は、このプログラムの開始に寄せた声明で述べている。「わが社のフルフィルメントサービスを利用する販売業者が、このプログラムを利用できるようになることを嬉しく思っています」。

また、同社がCNBCに対して述べたところによれば、破棄する商品の数をゼロにするよう取り組んでおり、返品された商品の「大部分」は、状態に応じて、別の顧客に再度販売されたり、清算業者に渡したり、サプライヤーに返品したり、あるいは慈善団体に寄付したりした、ということだ。

画像クレジット:Richard Lautens/Toronto Star/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Amazon Scoutがカリフォルニア州アーバイン地区で自動配達を開始

Amazon(アマゾン)の歩道走行型6輪配達ロボScout(スカウト)が、米国カリフォルニア州アーバイン地区で、実際に顧客への配達を開始した。Amazonは、このカリフォルニアでの最初のScoutロボの実戦配備をブログ記事で発表した。それによると、シアトルの太平洋岸北西部で最初に配備した際には、さまざまな天候を経験する機会があった。しかし晴れの日が多いカリフォルニアでは、少なくとも天候の点では、この小さな青いロボも、スムーズな配達を体験できるはずだという。

現状では「少数」のロボットしか配備されていない。そのため、アーバインに住んでいたとしても、それを目撃することはめったにないだろう。Scoutは、月曜から金曜の「昼間」に、Amazonから顧客の家に配達に向かうことになる。顧客がAmazonにふだん通りに注文したものの中から、ランダムに選ばれた荷物がScoutによって運ばれる。どの配達オプションを選んだかは関係ない。

ロボットは自分自身で動き回ることができる。もちろん、それがそもそもこのプロジェクトの本質だが、最初のうちは「Amazon Scoutアンバサダー」が同行することになる。このAmazonスタッフは、ある意味外交官であり、プロジェクトの研究員でもあり、その地域の人々からの質問に答えたり、人々の反応を観察したりする。ロボットは、世界的に見て、まだ日常的に人々と頻繁にやり取りしているわけではない。従って、商業的に展開する際の重要なポイントは、まず人々がどのような反応を示すかを研究すること。それによって、人とロボットのやり取りの方法を変更したり、改善したりすることを考えることにある。

初期のScoutの設計に対して、かなり多くの検討が加えられた。1つは、日中の長い距離の移動に耐えられるようなものにすること。もう1つは、ひと目で親しみやすいと感じられ、それでいてあまり目立たないデザインにすること。それによって、目新しいものから、標準的な地域の背景に溶け込んでしまうものになることを目指している。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

アマゾン時代を生き抜くために小売業はどうすべきか?

Amazon(アマゾン)の2019年のプライムデーは、労働者の抗議行動から独占禁止法に関する調査まで、複雑な問題に見舞われたが、販売点数はブラックフライデーとサイバーマンデーの合計を上回る1億7500万点となり、これまでの記録を更新した。わずか20年で、Amazonは物流業界に革命をもたらした。注文の直接配送を実現し、その受注配送システムを、Amazonマーケットプレイスで販売するサードパーティにも提供した。

今年中には、米国の全世帯の半数以上がプライム会員になる見込みだ。Amazonが配送にかかるコストと時間を低減し続けるにつれ、消費者の期待は逆にどんどん高くなっていく。しかしこうした状況は、他の小売業者にとって何を意味するのか?

ポストAmazonの時代に生き残るためには、企業が物理的な商品を保管し、最終目的地に配送するための方法を、今後10年で根本的に変えなければならない。以下に示すのは、物流の世界が直面する非常に重要な課題と、次に起こるかもしれないことの3つの予想だ。

大きな課題

アマゾンを打ち負かすことは難しい。巨大で、幅広く、そして奥も深い倉庫システム、配送システムのインフラを備え、そこには最先端の自動化が施されているからだ。その一方で、一般的な物流サプライチェーンは、製造工場からの物理的な商品の輸送から、消費者に届けるための最後の1マイルの配達まで、ますます複雑になってきている。そのうえ、従来のやり方は、透明性が低く、情報の流れが非効率的で、自動化も限られているため、行動に移すことのできるような指針を得るのも難しい。

外部の企業に物流業務を委託するサプライチェーンが多くなる中、荷送人の期待と、物流プロバイダーの能力との間のギャップは拡がり続けている。輸送容量と輸送能力は拡大しつつあるものの、荷送人から見える範囲は縮小し、プロセスの管理もしにくくなっているからだ。

現在、業界全体でブルーカラー労働者が不足している、といった他の要素を考えると、結果として、配達と倉庫作業における革新が、差し迫ったニーズとなってきている。

2019年7月9日、イタリアのトリノにあるAmazon物流センター内に積み上げあれたAmazonの段ボール箱(写真:Stefano Guidi/Getty Images)

物流業界で次に起こること

荷送人は、物流における価値連鎖を改革し、保管から配達まで、さまざまな機能をアップグレードする必要性がますます高まるだろう。さらに、新しいパートナーを開拓して、革新的な技術と専門知識を導入する必要もある。

業界全体に対して、無駄のない効果的なソリューションを提供する上で優位な立場に立つ技術系のスタートアップは、物流チェーン全域の可視性、配達の早さ、保管と配送における費用対効果、といった特に重要なポイントを改善することに注力している。

  • 24時間年中無休のトラッキング機能が必須に

ここ数年で、「ITの大衆化」の波が物流業界にまで押し寄せた。それにより、ビジネスのプロフェッショナルでさえ、エンタープライズ向けソフトウェアに対して、日常的に使われている消費者向けアプリのような、シンプルで速く、使いやすいルックアンドフィールを求めるようになった。

ほとんどの企業の伝統的なインフラの課題は、既存の在庫について簡単に追跡したり、可視化したりできるようにするということにある。ベンチャーによるハイテクを取り入れ、技術と実行力を持ち合わせたソリューションの新しい波が出現して、こうした問題の解消に取り組んでいる。

例として、Shipwell(運送)、Stord(倉庫)、およびShipbob(配送)を挙げておこう。こうしたソリューションは、発送業務のチームに不可欠なスピードと信頼性を備え、しかも適正な価格によって、エンドツーエンドでデジタル化されたサービスを提供している。

米国では、次世代の在庫、倉庫管理に関して、まだ明確な勝者は決まっていない。しかし、これまでのところ、ワークフローやダッシュボードツールといったソリューションを含めてサービスを提供できる、キャパシティプロバイダーがこの方向に進んでいると見られている。

  • 即日発送が標準に

Amazonが最近発表した即日発送は、業界全体が進もうとしている方向の先駆けとなるものだ。Invespによると、調査の対象となった小売業者の65%以上が、今後2年以内に即日配達の実現を予定しているという。

そうした業者の多くは、エンドツーエンドの配送ソリューションを、電子商取引に関するサービスの事業者を利用して解決しようとしている。そこには、倉庫、梱包、配送、運輸、逆物流管理サービスなどの業者が含まれる。DeliverrShipmonkDarkstoreといったスタートアップは、コストと速度の点で競争力のある、より優れたソリューションを提供している。通常、ストレージの供給を直接コントロールし、配達は、アウトソーシング、またはクラウドソーシングによってまかなう。

垂直市場に目をつけた会社もある。たとえば、Cathay Innovationというポートフォリオ企業の配達アプリGlovoだ。最近、独自のダークストアをオープンした。ガレージ程度の大きさで在庫数も限定された倉庫を都市部に設け、15分以内の配達を保証することを目指している。GlovoのCEO、Oscar Pierre氏は以下のように述べている。「私たちは、ダークストアをもっとも重視しています。来年中にバルセロナ、リスボン、ミラノ、トビリシにも、ストアをオープンさせる予定です。20分以内に配達できれば、顧客の意思決定に大きな影響を与えることができます。納期が短かければ価格はそれほど気にしない、という場合には、近所のコンビニに出向くか、私たちのアプリで注文するかのどちらかになるでしょう」。

期待される配達時間は、ほとんど「ムーアの法則」のように短くなり続けている。物理的な小売店が、オンラインストアとしての条件を満たすようになるために必要なさまざまな変化を考えると、この領域には非常に大きな機会が残されている。

  • 保管と配送の費用対効果は急速に向上する

SpotifyやNetflixが、消費者に課す金額を10ドル(約1060円)前後の範囲に落とし込んだのと同じように、小売業者や配達業者も、送料について同様のことをしようとしている。それは荷送人が、消費者に負担してもらえる送料の額を制限することになる。そのため、販売者はコストを削減できる場所を他に見つけなければならなくなる。

伝統的な企業には、解決するための準備が十分にできていない問題を解決すべく、いくつかのスタートアップが登場してきている。それによって、小売業者がAmazonと対抗し、市場のニーズにより速く応え、しかもコストの上昇を抑えることが可能になってきている。

柔軟なオンデマンド方式の倉庫管理は、コストを節約し、AWSのようなスタイルで実効面積を拡大するための有効な手段となっている。FLEXEFlowspaceのような企業は、未使用の倉庫スペースと配送能力を、倉庫面積と配送量に対するニーズがダイナミックに変化する顧客と結びつけることで、より流動性が高く、効率的な市場を創り出している。しかも、自らの資産の稼働率も向上させているのだ。トラック輸送に関しては、ConvoyOntruckといった会社(私のベンチャーファームが投資している)が、輸送容量と空のトラックのマッチングを実施することで、トラックの利用率を向上させようとしている。

多くの荷送人(ウォルマートのような巨人も含め)が収益性の高い電子商取引事業の創出に取り組むなか、保管、流通、配送などの領域が、今後数年間、特に注目すべき重要な分野になるだろう。

まとめ

IoTセンサーや機械学習モデルから自律型ロボットまで、さまざまな技術革新が物流サプライチェーンを変革しつつある。この分野のスタートアップは、ポストAmazon時代を生き延びるためだけでなく、急成長している電子商取引の業界が、その革新の可能性を発揮することを手助けするというチャンスを手にしているのだ。

画像クレジット:Emanuele Cremaschi/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

アマゾンの最新型配達ドローンはヘリと飛行機のハイブリッド式

本日(現地時間6月6日)、ラスベガスで開かれている第1回re:Marsカンファレンスにて、アマゾンが最新の完全電動式配達ドローンを初めて披露した。ドローンと聞いて思い浮かべる形とは、ずいぶん違うと感じられるのではないだろうか。しかしこれは、画期的な六角形のハイブリッドデザインだ。可動部分が非常に少なく、ブレードを保護するシュラウドは、ヘリコプターのように垂直に離陸したあと、飛行機のように飛ぶための翼にもなる。

アマゾンによれば、これらのドローンは、正確な時期はまだわからないものの、数カ月以内に配達を開始するという。

しかし、もっとも重要な点は、このドローンにはセンサーがぎっしり埋め込まれていて、複数のコンピューターモジュールからなるシステムが、さまざまな機械学習モデルを実行してドローンの安全性を保つというところにある。今回の発表では、アマゾンが内部で開発した視覚、温度、超音波センサーについて、そしてそれらを使ってどのようにして自律飛行システムがドローンを着陸地点へ導くかについて、初めて一般に明かされた。開発の最大の焦点は、できる限り安全なドローンを作ることであり、独力で安全を保てる能力を持たせることだった。ネットワークの接続が途絶えた状態で未知の状況に遭遇しても、適切に安全に対処できる。

飛行機モードの姿は、ちょっとTIEファイターに似ている。中心の胴体部分にすべてのセンサーと航行技術が埋め込まれ、ここに荷物も格納される。この新型ドローンの最大航続距離は15マイル(約24キロメートル)、最大積載重量は5ポンド(約2.27キログラム)となっている。

今回の新型モデルのデザインは、初期のものから大きく変化している。私は、今日の発表に先立って前のデザインを見る機会があったのだが、正直言って、もっとそれに近いデザインになるものと想像していた。ひとつ前のバージョンを洗練させた、ほぼソリのような形だ。

アマゾンのひとつ前の世代のドローン。ずいぶん形が違う。

想像を少しばかり上回る要素に加えて、アマゾンが、今回、本当に強調したがっていたのは、このドローンのために独自開発した一連のセンサーと安全機能だ。

この発表の前に、私はアマゾンの「Prime Air」プロジェクト部長Gur Kimchiに会い、ここ数年間のアマゾンの進歩の様子と、この新型ドローンのどこが特別なのかを聞いた。

「私たちの感知と回避の技術により、このドローンの自律的な安全性が実現しました」と彼は話してくれた。「自律的安全性とわざわざ呼ぶのは、機体の外に安全機能を持たせるアプローチと区別するためです。我々の場合、安全機能は機体に搭載されています」

Kimchiはまた、ドローンのソフトウェアとハードウェアのスタックは、実質的にすべてアマゾン内部で開発したことを力説していた。「原材料からハードウェア、ソフトウェア、構成、工場、サプライチェーン、果ては配達に至るまで、この飛行機のテクノロジーをすべて私たちが管理しているのです」と彼は言う。「そしてついに、飛行機自体が自己の管理能力を備え、外の世界に対処する力を持つに至りました。そこがユニークなところです」

(JORDAN STEAD / Amazon)

ひとつ明らかなのは、開発チームができる限りシンプルな操縦翼面を目指したことだ。ドローンには、飛行機の基本的な操縦翼面が4つと、6つのローターがある。それだけだ。やはりアマゾンが内部で開発した、すべてのセンサーのデータを評価するオートパイロットは、6自由度の機構をあやつり機体を目的地に導く。中央に斜めに取り付けられた箱には、このドローンのほとんどの頭脳が収まり、配達する荷物が搭載されるが、回転することはなく、機体に固定されている。

どれくらいの騒音を発するかは不明だ。Kimchiはただ、安全基準以内であり、重要なのはノイズプロファイルだと繰り返すだけだった。彼はそれを、歯医者のドリルとクラシック音楽の違いに例えていた。いずれにせよ、家の庭に近づけばすぐに気付くほどの音は立てるのだろうと思われる。

ドローンの周囲の状況を把握するために、この新型ドローンには数多くのセンサーと複数の機械学習モデルが使われている。それらはすべて独立して機能し、ドローンの飛行エンベロープ(その独特な形状と操縦翼面のおかげで、通常のドローンよりもずっと柔軟性が高い)と環境を常に監視する。これには、周囲の状況を知るための通常のカメラと赤外線カメラの映像も含まれる。機体のすべての側面にはいくつものセンサーが備えられていて、遠くの物体も認識できる。たとえば、接近してくる航空機や、着陸時に近くにある障害物などだ。

このドローンは、多様な機械学習モデルも多数使用している。たとえば周囲の航空機の飛行状況を検知して適切に対処するためのモデルや、着陸ゾーンの中に人がいることを感知したり、そこに引かれた線を確認するモデルなどだ(線の検知は往々にして困難な傾向にあるため、この問題は本当に難しい)。それを解決するために、開発チームは写真測量モデル、分割モデル、そしてニューラルネットワークを使用している。「おそらく私たちは、この分野でもっとも先端的なアルゴリズムを有しています」とKimchiは主張していた。

着陸ゾーンに障害物や人を検知すると、当然、ドローンは配達を中止、または延期する。

「この飛行機の機能でとってもっとも重要なものは、一度もプログラムされたことのない想定外の出来事に遭遇したときに、的確で安全な判断ができることです」とKimchiは言う。

開発チームはまた、VSLAM(視覚的に自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術)で、事前にその地域の情報を受けていなくても、またGPSの情報が一切得られない状況でも、ドローンが現在の周囲の地図を作ることを助けている。

「そうした知覚力とアルゴリズムの多様性の組み合わせが、私たちのシステムに他に類を見ない安全性を与えていると考えています」とKimchi。ドローンが配達先まで飛行し、また倉庫に戻ってくるまでの間、すべてのセンサーとアルゴリズムが常に合意している必要がある。そのうちのひとつでも問題を検知したなら、ドローンはミッションを中止する。「進んでも大丈夫だと、システムのあらゆる部分が合意していなければなりません」とKimchiは話していた。

私たちの会話の中で、Kimchiが再三力説していたのは、アマゾンのアプローチは冗長性を超えているということだった。同じハードウェアのインスタンスをひとつのボードに複数搭載するという冗長性は、航空の世界ではきわめて当たり前のコンセプトだ。Kimchiによれば、互いに完全に独立した多様なセンサーを備えることも、また重要であるとのこと。たとえば、このドローンには迎え角センサーがひとつしか付いていないが、別の方式で同等の値を取得できるものがいくつも搭載されている。

しかし、そのハードウェアが実際にどのようなものかを詳細に公開する気は、まだアマゾンにはないようだ。ただ、Kimchiが私に話してくれたところによれば、使われているオペレーションシステムもCPUアーキテクチャーも、単独ではないという。

それらすべてのセンサー、AIの知性、ドローンの設計そのものが統合されて、全体のユニットが機能する。ところが、物事がうまく運ばなくなることもある。ローターがひとつ停止した程度のことは簡単に対処できる。今ではごく当たり前の機能だ。しかしこのドローンは、2つのローターが停止した場合にも対処できる。通常のドローンと異なり、必要な場合は、飛行機のように滑空できるからだ。着陸地点を探す段になると、AIが働いて、人や物から遠く離れた安全に着陸できる場所を探す。周囲の環境について事前の知識がなくても、そのように行動することになっている。

その着陸地点を特定するために、開発チームでは、実際にAIシステムを使って5万件以上の設定を評価した。コンピューターによる流体力学シミュレーションだけでもAWS(アマゾンウェブサービス)の演算時間にして3000万時間も費やした(画期的な高度に最適化されたドローンの開発に、大規模な自前のクラウドが使えるのは得なことだ)。もちろん、すべてのセンサーについて数え切れないほどのシミュレーションを行い、センサーの位置や感知範囲の可能性を探り(カメラのレンズもいろいろ試し)、最適なソリューションを割り出した。「最適化とは、多様なセンサーの組み合わせと、機体への取り付け方のどれが正しいかを見極めることです」とKimchiは説明した。「そこには常に、冗長性と多様性とがあり、そのどちらにも、物理的な領域(音響対光子)とアルゴリズムの領域とがあります」

また開発チームは、HILシミュレーションを何千回も実行し、あらゆる飛行機能が動作し、シミュレートされた環境をすべてのセンサーが感知しているかを確認した。ここでもKimchiは、それを可能にした秘密の情報を明かしてはくれなかった。

さらに彼らは、当然のことながら、モデルの評価のための現実の飛行テストも行っている。「分析用モデルやコンピューター内のモデルも、細部に至るまで大変によく出来ていますが、現実世界に適合するよう調整されてはいません。現実世界は、究極のランダムイベント発生装置ですからね」と彼は言う。

このドローンが最初にどこで運用されるかは、まだ明らかにされていない。それも、アマゾンが公表を差し控えている秘密のひとつだ。だが、数カ月以内には発表されるだろう。アマゾンは、少し前からイギリスでのドローン配達を開始している。それは当然の選択だ。しかし、アマゾンがアメリカ以外の国を敢えて選ぶ理由も見あたらない。規制の問題がまだ流動的なアメリカが候補になる可能性は低いとは言え、それまでに解決されることも考えられる。いずれにせよ、一時はブラックフライデー商戦の見世物のようにも思えたこれが、自宅の庭に着陸する日は意外に近いかも知れない。

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(翻訳:金井哲夫)

アメリカでは成人の1/4以上がスマートスピーカーを所有、日本では?

スマートスピーカーやAIに特化したメディアのVoicebotは3月7日、「Voicebot Smart Speaker Consumer Adoption Report Jan 2019」と題された、アメリカにおけるスマートスピーカーの普及率などに関する調査の結果をリリースした。

VoicebotとVoicifyが共同で行なった同調査によると、アメリカの成人6640万人ほどがスマートスピーカーを所有している。成人における普及率は同国の成人人口の1/4強に値する26.2パーセントまで成長し、所有者数は前年同時期に発表された前回調査と比較すると約40パーセント増加した。

アマゾンとグーグルのシェア争い

そしてこの調査によるとアマゾンが市場をリードしていることは鮮明だ。アマゾンの「Amazon Echo」のシェアは61.1%、 グーグルの「Google Home」は23.9%となっている。だが昨年の調査結果ではアマゾン71.9%に対しグーグルは18.4%。グーグルが徐々に差を縮めてきているのがわかる。

アップルの「HomePod」や「Sonos One」を含む「その他」のブランドに関しても9.7%から15%に伸びたが、Sonos OneはAlexa搭載だ。

同調査はアメリカの成人1038人を対象に2019年1月に行われた。

なおStrategy Analyticsが2018年10月に発表したレポートによると、アメリカで使われているスマートスピーカーのブランド別シェアは、アマゾン63%、グーグル17%、アップル4%。その他の同類の調査においても、やはりアマゾンのブランド別シェアの高さが目立つ。

スマートスピーカーの普及率、日本では?

電通デジタルが2月に発表した調査によると、スマートスピーカーの認知率は約76%だが、普及率は約6%に止まっている。「スマートスピーカーの所有状況」はGoogle Homeが2.9%、Amazon Echoは2.4%、そして94.1%は所有していなかった。

所有者の約4割が「音楽スピーカーの代わりになる」ことをスマートスピーカーの購入理由として挙げており、実際に74.5%以上の所有者が音楽聴取のために利用している。あとは天気予報を聞いたり、アラームをセットしたり、といった使い方が多い。

電通デジタルは「音楽以外のさらなる機能の拡張や、サードパーティー・アプリケーションの拡大が普及のカギとなる」「サードパーティー・アプリケーションの利用者は一部を除きまだ多くはないが、利用している場合はエンゲージメント形成に役立っていることが伺える」と説明している。

同インターネット調査は2018年12月、全国の15から69歳の男女1万人を対象に実施された。

MMD研究所が2018年10月に発表した「スマートホーム関連製品に関する調査」においても、スマートスピーカーの利用経験者が4.2%と低いのが目立つ。利用したことがある製品の順は、AmazonEchoがトップで56.3%、Google Homeが47.2%、LINE Clovaが14.1%だった。

この調査は15歳から69歳の男女5000人を対象に、2018年7月31日から8月1日の期間、インターネット上で行われた。

アマゾンが2019年末までに米国で新たにスーパー展開へ

ウォール・ストリートジャーナル(WSJ)の31日(米国時間)の報道によると、アマゾンはホールフーズ・マーケットとは別の食料品スーパーのチェーンを全米で展開する準備を進めている。最初の店舗はロサンゼルスに早ければ2019年末にも開店する見込みで、これとは別にさらに2店舗のリースも契約済みで来年にもオープンする、と報道している。

このスーパーチェーンはホールフーズ・マーケットとは別に運営される見込みだが、どのようなブランド展開になるのか、Amazonの名を冠するかどうかすらも不明だ。長期的プランには米国の主要都市で数ダースほどを開店させることが含まれていて、このゴールに向かって買収戦略も検討することもありそうだ。買収戦略では12店舗を運営する地域の食料品チェーンを対象とするかもしれない、とWSJは指摘している。また、Kmart撤退後の小売スペースを狙う可能性もある。

将来出店が考えられるのは、サンフランシスコ、シアトル、シカゴ、ワシントンD.C.、フィラデルフィアだ。

こうした店舗で展開される商品は低価格なものを含め、ホールフーズ・マーケットとは異なるプロダクトになりそうだ。グローサリーや健康・美容プロダクトを扱い、商品ピックアップのための駐車スペースも用意されるかもしれない。

典型的なスーパーは6万フィートほどの広さだが、それよりも狭い35000フィートとなりそうだ、とWSJは書いている。

アマゾンの食料品デリバリー事業が激しい競争にさらされている最中にこのニュースは飛び込んできた。ライバルのウォルマートは実店舗に資金を注入していて、テストに数年もかけている。今ではウォルマートの食料品ピックアップサービスは2100カ所超で展開され、配達は800カ所近くで実施している。そして2020年末までにピックアップサービスは3100カ所、配達は1600カ所で展開される見込みだ。オンライン食料品事業は成長分野で、これは部分的に第四四半期の売上増に貢献している。

一方、ターゲットは食料品同日配達のサービスShipt55000万ドルかけて2017年に開始した。そして買い物客のニーズに合わせて、自前のドライブアップ(車に乗ったままサービスが受けられるもの)、店舗ピックアップ、翌日配達サービスと順調にサービスを拡大している。

アマゾンはまた、InstacartPostmate、他の食料品スーパーチェーンのサービスとも競合している。

しかしながら、アマゾンの食料品の戦略は少し混乱しているようだ。ピックアップと配達をいくつかの店舗で展開しているホールフーズに加えて、AmazonFreshを通じても配達サービスを続けていて、いくつかのマーケットではPrime Nowも展開している。

それと同時に、アマゾンはレジなし型の商品を取って立ち去れるコンビニエンスストアにも投資した。消費者にとっては、アマゾンで食料品を注文するアクセスポイントが1つではないことになり、これは混乱につながるかもしれない。

WSJの報道についてアマゾンに問い合わせたところ、広報は「アマゾンは噂や推測にはコメントしない」とのことだった。

Image Credits: Eric Broder Van Dyke Shutterstock

原文へ、翻訳:Mizoguchi)

あなたの1時間には30セント以上の価値があるか?

時間はとても貴重なものだと、大抵の人は思っている。少なくとも30セント以上の価値はあると。しかし、人間の意思決定に関する記事を読むと、人がどう考えているのかを疑わざるを得なくなる。

ここで紹介するのは、Jeffrey A. Trachtenbergがウォール・ストリート・ジャーナルに書いた、電子商取引の巨大(本を書く人にとっては)出版社であるアマゾン・パブリッシングの紹介記事だ。アマゾンは、2017年には1000タイトル以上の電子書籍を出版していて、オンライン、オフラインを問わず、アメリカで購入された全書籍の大部分を支配している。

しかし、私がこの記事で本当に驚かされたのは、次の段落だ。

同意のもとで、これらのタイトルはKindle Unlimitedに登録される。これは、電子書籍の読まれたページ数に応じて作者に代金が支払われるというものだ。支払額は、通常、1ページあたり0.004ドルから0.005ドル。価格が10ドルで300ページの電子書籍が読まれれば、作者には1.20ドルから1.30ドルが入る仕組みだ。途中までしか読まれなかった場合は、もっと安くなる。

読む速度が、平均して1時間に60ページ程度とすると、その娯楽の印税は1時間あたり30セントとなる。しかし、Kindle Unlimitedは購読形式なので、アマゾンはもっと儲かっているはずだ。Kindle Unlimitedの本は三文小説か、またはKindle Unlimitedの読者は低俗なのだと片付けてしまうこともできるだろう。

しかし本当のところは、人々(つまり一般読者)は、頭の中を文字で満たしたいと思ったときに、極端にケチになるという事実だ。ワイアードのライターAntonio Garcia Martinezは、先週、こんな疑問をツイートしている。

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ほとんどの本は、30ページの超長い雑誌記事に縮めることができる(ポッドキャストの音声版なら1時間だ)。しかし、そうした形式のためのチャンネルがない。どうしてだ? 昔からの伝統とか?

答えは明白だ。ハーバード・ビジネススクールのケーススタディー以外には、30ページの内容に10ドルから20ドルを支払う人たちの市場が存在していないということだ。私がこの問題について、作家や出版社の重役たちと話してみたところ、ふたつの結論が得られた。ひとつは、消費者は薄い本を買うよりも分厚い本に金を使う方が得だと思っていること。もうひとつは、本には膨大な固定費がかかっていて、その消費者市場を考えると、作品を縮めるのは現実的ではないということだ(たとえば、表紙デザインのための費用は、本のページ数とは関係なくかかる)。

そのため、出版社は実際の内容よりも分厚く見せるために、ゴテゴテと飾り立てるのだ。

今朝、私が読み終えたRichard Rothstein著の『The Color of Law』という本がある(とてもいい本だ)。アマゾンでは、ペーパーバック版で「368ページ」と書かれている。かなりのボリュームだが、実際にはそんなに長くない。エピローグも含めた正味は217ページで、26点の写真が散りばめられ、章ごとの空白もかなりたっぷり取ってある。したがって、実質的な内容は190ページほどだろう。さらに、よくある質問コーナー(22ページ)、謝辞コーナー(12ページ!)、注釈(40ページ)、参考文献目録(28ページ)、索引(18ページ)、それに読書会のためのガイド(3ページ)が追加されている。368ページの中の190ページは、たったの51.6パーセントだ。

このような政治的な論議を引き起こす本の場合、注釈や参考文献の情報まで削れとは言わない。しかしこれは、ペーパーバックに17.95ドルという値をつけた出版社が単に、写真やよくある質問を追加しなければ消費者はその価格に満足してくれないという危機感を抱いていた結果だ。

私は、『Brainjunk and the killing of the internet mind』(麻薬的なゴミコンテンツとインターネット的思考の停止)という記事で、メディア購読ではより少ない内容に多くの金を払うべきだと主張した。

とても皮肉なことだ。今の時代の読者は、大抵が高い教育を受けているが、ニューヨークやサンフランシスコでは食事に30ドルという大金を使い、家賃には何千ドルも払っているため、本に割ける数ドルがない。10ドルなんて論外だ。ニューヨークタイムズの月間購読料は、今ではマンハッタンで飲むカクテル1杯分程度に過ぎない。

私の友人の中に、購読料を払っている人はほとんどいない。インターネット利用者も、大部分が購読料を払わない。人々は、1日のうちの何時間も費やして、愚にもつかないものを読んで喜んでいるため、読み物の質を高めるための最小限の出資さえ拒んでいるのだ。だから、名高い書籍も道端に投げ捨てられ、『メディアを使いこなすための7つのコツ』なんかがもてはやされる。

私たちが購入するすべてのコンテンツの形式にそうした考え方を広げようするのは、もう遅すぎる。

そこで私は、質を調整し、そこに割いてもよい自分の時間を知るために、持っている本のページあたりの価格を計算してみることにした。目の前の机の上には、以下の3冊の薄い本がある。

1.Networks of New York Ingrid Burrington著(112ページ、15.96ドル)
2.The Lessons of History Will & Ariel Durant著(128ページ、15.00ドル)
3.The Emissary Yoko Tawada著(128ページ、14.95ドル)

160ページの本に18ドル支払うのは、悪いことではない。ファーストフードが、安いけれど食べた気になれないのと同じだ。価格の安い本でも、それなりに私たちの脳に栄養を与えてくれる。

スタートアップ弁護士に関する意見の募集

私は、同僚のEric Eldonとスタートアップの創設者や役員に会って、弁護士に関する経験談を聞いている。私たちの目標は、この業界の指導者を見つけ出すことであり、何がいちばんかを考える議論を焚きつけることだ。スタートアップの創設者で、弁護士がいい仕事をしてくれたという経験のある方は、Google Formでのアンケートに協力願いたい。そして、この調査のことを他の人たちにも知らせて欲しい。数週間後に結果をお知らせする予定だ。

迷える思考(今何を読んでいるか)

重要なニュースの要約と簡単な分析だ。

メディアの投資は今でも難しい

Nieman Labは、メディアに投資する数少ないベンチャー投資会社のひとつMatter.vcの創設者Corey Fordをインタビューした。Fordは、数年間その会社を舵取りしてきたが、次のステップのために仕事を離れている。Fordは投資の機会についてこう話している。「ベンチャー投資の旅を続ける企業の組み合わせからひとつのモデルを考え出せればよかったと思うが、非営利とベンチャーキャピタルとの中間に機会あると私は感じている。私はそうした場所に向かうだろう。野球に例えれば、グランドスラムを目指すのではなく、二塁打で十分だということだ」

アメリカと中国は合意に向かっているようだ

貿易上の喧嘩を収めようとするプレシャーは、アメリカと中国の双方アメリカと中国の双方で高まっている。その間、ヨーロッパでは、貿易担当大臣や競争政策の責任者たちは、戦略的産業の市場を飲み込もうとしている中国の国営複合企業との競争を有利に進めるための、オープンな話し合いを進めている。そして、ファーウェイのニュースでは、オックスフォード大学が渦中のファーウェイとの協力関係を一時中断した。ドイツでは全面的に禁止することを考えている(2カ月前にベルリンを訪れたときはファーウェイの広告にあふれていたので、信じがたいが)。

次は何か、そして気になること

  • 読みたい薄い本が机の上にたくさん置かれている。
  • ArmanはBilly Kilday著の『Never Lost Away』を読んでいる。Googleのマップ作りと、その先の話だ。
  • Armanと私は社会を復活させるスタートアップに興味を持っている。飲料水の確保、住宅、インフラ、気候変動、災害対策などの分野に焦点を当てた企業だ。よいアイデアや企業をご存知の方は、私に教えていただきたい。<danny@techcrunch.com>

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(翻訳:金井哲夫)

レビュー:小さな129ドルのEcho Subでオーディオ環境が格段にアップする

音楽をもっといい音で聴きたい? それならサブウーファーを追加することだ。Amazonもそうすることにした。これで、Echoスマートスピーカーのラインナップは、ずっと面白くなった。Echoの音を不満に感じていたとしたら、Echo Subを追加してもう一度試して欲しい。きっと考えが変わる。

Echo Subは、小型の丸いサブウーファーで、Echoスピーカーと同じファブリックのカバーをかぶっている。ただし、現在色はチャコールのみ。床にも机の上にも置けるようデザインされ、Echoスピーカーでは再現できなかった低音域を発生する。Echo Subは、Echoスピーカーの音を、より完全に、より楽しく補完し、バランスの良い、より原音に近い音場を作るという使命を、うまく果たしている。Echo Subは、Echoオーナーには必須のアイテムだ。

レビュー

Amazonは、99ドル(約1万1000円)のEchoスピーカーのペアと、129ドル(約1万4400円:日本では1万5980円で10月30日に発売予定)のEcho SubをTechCrunchに提供してくれた。このセットは249ドル(約2万7900円)で発売されているが、Amazonは、Echo SubとEcho Plusのバンドルセットも329ドル(約3万6800円)で販売している。その違いには、価格の差に値するものがある。

設置には25分ほどかかる。それぞれのスピーカーをAlexaスマートフォンアプリで個別に追加するようになっている。すべてのスピーカーの設定が終わったら、これらをバーチャルグループにまとめる。アプリは、それを簡単に行えるように助けてくれるのだが、その工程でいくつかバグに遭遇した。スピーカーをグループに追加するときに、スピーカーを認識できないことが何度かあった。また、2つのスピーカーは認識できても、Subが見つからないということもあった。それでもなんとか設定を済ませ、2つのEchoスピーカーでステレオをサウンドを鳴らし、Echo Subで低音を出すことができた。

Echoスピーカー1つとサブウーファーを追加したことで、音がとても良くなった。しかし、驚くにはあたらない。ステレオにして音楽がより楽しくなるのは当然のことだ。

数年前に登場したJAMBOXは、ある世代に、音楽を聴くにはスピーカーはひつで十分だと思い込ませた。しかし、それはウソだ。ひとつでも音楽は聴けるが、ステレオならなおいい。さらに、Echoの場合はサブウーファーまで付いたのだから、もっといい。

Des Rocsの『Let me Live』は、この新しいサウンドステージを存分に活かしている曲だ。左右のスピーカーはその能力を爆発させ、Amazon EchoやApple HomePadのひとつのスピーカーでは味わえなかった没入感溢れるサウンドを楽しませてくれる。ステレオによって、音楽は生き生きと響く。

AKA Georgeの『Stone Cold Classic』も、このセットで生き返る。Echo Subはドラマチックな低音をトラックに与え、ステレオのEchoスピーカーが最高のエクスペリエンスを作り出す。まだ信用できない? ならばヴァン・ヘイレンの『パナマ』を聴いてみよう。ひとつだけのスピーカーでは、チャンネルがごちゃ混ぜになってしまい、この本来のサウンドは味わえない。しかし、本当のステレオとサブウーファーとの組み合わせにより、デイヴ・リー・ロスの声が生のように聞こえる。

249ドルのセットのサウンドには、本当に驚いた。重い仕事を大幅にEcho Subに割り当てることで、Echoスピーカーは中音から高音に専念できるようになり、この価格にしてはクリアで正確なサウンドが再現可能になった。249ドルで、Echoスピーカー2台とEcho Subのセットに匹敵するオーディオシステムを探そうと思ったら大変だ。さらに、Echoのスマートな機能が魅力を高めている。

Amazonから99ドルで発売されているEchoスピーカー2台でも、それなりに仕事はしてくれるが、149ドル(約1万6700円)のEcho PlusスピーカーとEcho Subを組み合わせたとき、その違いが歴然とわかる。Echo Plusを2台使えば、サウンドがさらによくなる。セットで買えば、価格の差はわずかだ。

Echo Subは、ほとんどの状況にうまくはまってくれる。他のサブウーファーと比べて小型だ。必要な低音が十分に出せるが、壁を振るわえるほどではない。ズンズン響くこともない。ハードロックやノリのいいポップスに向いている。車のトランクをぶるぶる震わせるようなラップには向かない。たとえば、アークティック・モンキーはいいが、ポスト・マローンにはちょっと合わない。

Alexaアプリを使うと、Echo Subの低音、中音、高音の調整ができる。ただ、調整範囲は限定的で、ウーファーの音響的特徴を極端に変えることはできない。全体的に、Echo Subは、2つのEchoスピーカーとうまく調和する、エレガントな小型サブウーファーということだ。

Echo Subは、Echoスピーカー1台だけでも使うこともできる。Echoスピーカーを1台しか持っていないという人でも、Echo Subを加えれば、驚くほど音質が向上する。

スマートスピーカーを組み合わせて新世代のステレオサウンドを構成しているのは、Amazonだけではない。Sonosは、ずっと前から複数のスピーカーを無線で接続して、ステレオやサラウンド音響が作れるようにしていた。Google Home Maxも、2台組み合わせれば可愛いステレオセットになる。Apple HomePodもそうだ。350ドル(約3万9000円)のHomePodを無線で2台つなげばステレオになる。これらのシステムは、どれも素晴らしいオーディオ品質を提供してくれるが、Amazonのものに比べて全体に高価だ。また、Amazonの他に専用のサブウーファーがあるのはSonosだけだ。

Echo Subを加えたAmazonは、同等の他社製品よりもずっと安価に、高い音質を提供できるようになった。129ドルのEcho Subは、コンパクトで高性能で、Echoスピーカーを即座にアップグレードできる最善の方法だ。もし可能なら、Echoスピーカーをもう1台追加して、ステレオセットを構築して欲しい。

Echo Subは、音楽を聴く環境がEchoスピーカーだけという家庭にお薦めだ。もし、Echo Subを買うか、もう1台のEchoスピーカーを買うかで迷っているとしたら、Echo Subを先に買うことをお薦めする。

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(翻訳:金井哲夫)

「サービスとしてのロボット工学」で新ビジネスモデルを開拓するinVia Robotics

inVia Poboticsの面々は、ロボットを大量に販売するための、新しいビジネスモデルを構築する目指して会社を立ち上げたつもりではなかったのだが、それはまさに、彼らが今、行っていることなのかも知れない。

サザンカリフォルニア大学のロボット工学プログラムを卒業したLior Elazary、Dan Parks、Randolph Voorhiesの三人は、即座に人の注目を集められるアイデアを模索していた。

「私たちの目標は、すぐにでも経済的な意味を生み出せるものを立ち上げて、運用することにありました」と、同社の最高技術責任者Voorhiesはインタビューに答えて言っていた。

鍵となったのは、彼らが見てきた過去のロボットメーカーの失敗から教訓を学ぶことだった。

iRobotは早くから成功していたが、人と一緒に仕事を行う一般消費者向け、または協働ロボットは、大きな市場からの興味を惹くまでに至っていない。

 

 

ロボット工学業界のリーダーたちによって設立された伝説の企業Willow Garageは、Voorhiesとその仲間たちが卒業するころに事業を停止してしまった。有名なロボット研究企業のひとつ、Boston Dynamicsは、同じころグーグルに買収された。この検索エンジンの大手企業は、6カ月の間に浮かれ騒ぐように8つのロボット工学企業を買収している。

「その最中に、その様子を見ていた私たちは、おい、失敗したロボット工学企業がこんなにあるぞ! と話していました。そして、どうしてこんなことになるのかを、自分たちに問いかけました」とVoorhiesは振り返る。「私たちが見てきたハードウエア企業の多くは、こんな計画でやっていました。ステップ1:すごくクールなロボットを作る。ステップ3:アプリのエコシステムが発展して、人々がたくさんのアプリを制作するようになり、ロボットがめちゃくちゃ売れる。しかし、ステップ2をどうやるか。それは誰も知りませんでした。つまり、ロボットの商品化です」

そこで3人の共同創設者たちは、いち早く市場に打って出るためのアイデアを探した。

そして得られた考えは、高い移動で品物を運べるロボットの開発だった。「私たちは、移動式の6自由度のアームを開発しました」とVoorhies。

しかし、アームの製造は複雑で、部品代は高く、ロボットが使われる環境によっては、その順調な稼働を妨げる要素の種類が多すぎた。結局、彼らは、ロボット工学は、整備された特定の環境でこそ、大成功が叶うのだと気がついた。

「環境はあまりにも予測不能で、それに対応するには、やるべき仕事が手に負えないほど膨大になることが、すぐにわかりました」と彼は言う。

Parksがそこで、協働ロボットがもっとも楽に働ける、整備された環境を分析して、ホワイトペーパーを作成した。それを見れば、そうした環境は倉庫以外にないことが明らかだった。

 

 

2012年3月、アマゾンも同じ結論に達し、Kiva Systems7億7500万ドル(約850億円)で買収し、Kivaのロボット軍団を、世界中のアマゾンの倉庫と配送センターに展開した。

「Danは、Loiと私のためにホワイトペーパーをまとめてくれました」とVoorhiesは言う。「そして大きく見えてきたのは、eコマースの物流です。床はたいていがコンクリート張りで、傾斜もほどんどなく、そこで主に人が行っている作業は、品物を棚から下ろして、別の場所に置くというものです」

アイデアが固まると、技術者のVoorhiesとParks、そしてすでに2つの企業を経てきた筋金入りの起業家であるElazaryの三人は、プロトタイプの製作に取り掛かることにした。

アマゾン以外の倉庫や配送施設のほどんどは、品物の保管と回収を自動的に行う自動倉庫システムを利用していると、Voohriesは言う。その自動化システムとは、外観も機能も巨大な自動販売機のようなものだ。しかし彼によると、こうしたシステムには多額の埋没費用が掛かっていて、柔軟性も適応性も低いという。

しかも、これらの古いシステムは、ランダム・アクセス・パターンや、eコマースを成功に導くための、主に出荷と梱包からなる複合的な命令に対応するようには作られていない。

ところが、埋没費用があるために、倉庫はモデルの変更に積極的にはなれない。そこで、Voorhiesたちが考え出した革新的なアイデアは、流通業者が埋没費用を気にせずに済む方法だった。

「私たちは先行投資をしたくなかったのです。ロボットを設置するだけでなく、それを作る企業を立ち上げる場合でもです」とVoorhiesは話す。「自分たちの力でできることをしたかった。それを有機的に成長させて、一刻も早く勝利を収めたかったのです。そこで私たちは自動倉庫システムに目をつけ、その作業を行う移動型ロボットを作ろうじゃないか、という話になりました」

当初、彼らは、いろいろなロボット開発方法を試した。最初にあったのは、いくつもの異なる品物を運べるロボットと、回収を専門に行うロボットだった。

同社が最終的に決めた形状は、テーブルを上下に動かすシザーリフトを備えた移動式の円盤型の装置だ。テーブルの一端には前後に伸び縮するアームがあり、アームの先端には吸引ポンプが取り付けられている。このポンプで品物の箱を吸着してテーブルに載せ、梱包担当者のところまで運ぶ。

「最初は、品物を個別に積むことを考えていました。しかし、実際に倉庫の人たちの話を聞くうちに、どんな品物も、とにかく特定の箱に入れているということがわかってきました」とVoorhies。「それならもっと楽をしよう。その箱さえ掴めればいいんだからね、と」

この最初のロボットを自力で作ったことで、inViaは、そのビジョンを実現するための2900万ドル(約32億ドル)の資金調達を行った。最近では7月に、2000万ドル(約22億ドル)の投資ラウンドを成立させている。

「eコマース業界の成長が、その要求に応えるための倉庫の自動化をいう需要を、どんどん生み出しています。そうした自動化の需要を満たせるのは、作業の流れに応じて規模を調整できるよう、AIを採り入れた柔軟なロボットです。inVia Roboticsへの投資は、AIがサプライチェーン業界において重要な役割を果たすという我々の信念の現れです」と語るのは、Point72 VenturesのAI投資部門共同責任者のDaniel Gwakだ。Point72 Venturesは、ヘッジファンドで名を馳せた投資家スティーブ・コーエンが設立したアーリーステージの投資会社だ。

配送や物流を行う企業の苦しい現状を考えれば、ロボット工学や自動化技術がきわめて重要な戦略的投資の対象になることや、ベンチャー投資が市場に流れ込んでくることは理解できる。この2カ月間だけで、倉庫や店舗の自動化を目的としたロボットメーカーは、7000万ドル(約77億ドル)に近い新規の資金供給を受けている。これには、フランスのスタートアップExotec Solutionsがつい最近獲得した1770万ドル(約19億円)や、食料品店向けのロボットを開発するBossa Novaの2900万ドル(約32億円)の投資ラウンドも含まれる。

また、Willow GarageやLocus Roboticsの血統を受け継ぐFetch Roboticsなどの倉庫に焦点を絞ったロボットメーカーは、物流サービス会社Quiet Logisticsとつながっている。

「ロボット工学への投資は、当然な流れとして、過去数年に比較して驚くほど伸びています」と、市場調査会社IDCのCommercial Service Robotics(商業サービス・ロボット)研究部長John Santageteは声明の中で述べている。「投資が伸びているのは、その技術を受け入れた市場の作用です。その技術分野は、市場の要求に見合うまでに成長したのです。そしてその将来の展望には、柔軟な自動化技術が含まれているに違いありません。今日の倉庫では、消費者の要求に追いつくために、品物はより速く、より効率的に移動しなければなりません。自動化された移動型ロボットは、スピードと効率性と柔軟性のある自動化を、費用対効果の高い形で実現します」

inViaは、ロボットを販売するだけでは十分ではないと気がついた。倉庫が、inViaのロボットによって実現できる経費節約の可能性を確実なものにするためには、ソフトウエアのプレイブックのページを開く必要がある。道具を売るのではなく、ロボットが行う作業を、サービスという形で提供するのだ。

「お客様は、ロボットの価格はいくらかと聞きますが、それは見当違いです」とVoorhiesは言う。「そいういうことを、考えずに済むようにしたいのです」

inViaと物流企業との間で交わされる契約は、行った作業ごとの単位となっている。Voorhiesはこう説明している。「注文ラインはひとつ(の最小管理単位)です。数に関係なく注文できます。……私たちは、ロボットが品物を取って人のところまで運ぶごとに料金をもらいます。作業を高速化して、使用するロボットの台数が減れば、それだけ私たちは儲かるのです」

大きな違いはないように聞こえるかも知れないが、倉庫ではこうした効率化が重要になると、Voorhiesは言う。「ある人が、35個のパレットを載せられるカートを倉庫の中で押しているとしましょう。私たちがやれば、その人はじっと立っていればよいのです。使えるカートも1台だけではありません。35どころか、一度に70の注文に応えることが可能です」と彼は話す。

楽天物流では、すでにinViaのロボット導入により利益を上げていると、楽天スーパーロジスティクスCEOのMichael Manzioneは話している。

「発送センターで実際に(ロボットが)使われ出したのは、ごく最近です」とManzioneはインタビューに応えて話している。「2月の下旬にこの製品を初めて見て、3月下旬には稼働していました」

Manzioneにとって大きなセールスポイントは、先行投資の必要もなく、ロボットが即座にスケール調整できることだった。「年末休暇のシーズンの計画では、収益が上がる予定です」とManzioneは言う。「去年は人員を2倍に増やしましたが、今年は増やすつもりがありません」

Voorhiesが指摘しているが、倉庫環境で作業員のチームが効率的に働けるように訓練するのは、容易ではない。

「問題は、新らしい人間を入れにくいという点です。倉庫では、本当に真面目な専門家チームが頑張っていて、フォークリフトで品物を運ぶことに喜びを感じています。シフトの中で汗を流して得られるものに、とても満足しているのです」Voorhiesは言う。「そうした専門家チームにも対処できないほど処理量を増やす必要が出てきたとしても、その仕事が熟せる人間を探すのは困難です」

この記事は、inViaの最高責任者Lior Elazaryの名前の綴りを修正して更新しています。

  1. inVia

  2. inVia-at-Hollar

  3. inVia-Robotics_1

  4. inVia-Robotics_1

  5. inVia-Robotics_2

  6. inVia-Robotics_3

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(翻訳:金井哲夫)

トランプ大統領、郵政公社にアマゾン配送料の倍増を要求

ワシントンポスト紙の新たな報道によると、トランプ大統領は郵政公社(USPS)のトップMegan Brennanに、アマゾンや他の企業の商品の配送料を上げるよう、個人的に圧力を加えた。

ネタ元は匿名だが、これまでのところ郵政公社の総裁はトランプ大統領の圧力に抵抗しているという。もし値上げが実施されると、オンライン小売やその他の企業にとって何十億ドルもの負担増になる。

ご存知の通り、いつからかアマゾンはトランプ大統領の攻撃の的となっている。3月下旬、大統領は自身のツイッターに「郵政公社に“何十億ドル”も負担させているのは“詐欺”だ」「もし郵便局が配送料を上げれば、アマゾンの送料負担は26億ドルに増える。この郵政詐欺をやめさせなければならない。アマゾンは本当のコストを(税金も)今すぐ払え!」と書き込んだ。

Brennanは、アマゾンのような企業との契約は郵政事業にとっていいものではない、という考えに反対の姿勢をとっているとされる。トランプ大統領とのミーティングで、アマゾンとの契約のメリットについて証拠を示し、また複数年にわたる契約を反故にするのは簡単ではないことも指摘している。

トランプのアマゾン攻撃は明らかに個人的な要素を含んでいる。何回にもわたって、少なくとも3月下旬に大統領がアマゾンとそのオーナーであるジェフ・ベゾスをツイッターで攻撃したことについての要約はこちらにうまくまとめられている。大統領のアマゾン批判は実際には2015年ごろに始まっている。ベゾスはワシントンポスト紙のオーナーでもあり、トランプは同紙の報道を事あるごとに“フェイクニュース”と声を大にして批判している。

郵政公社がアマゾンとの契約の料金体系について具体的に明らかにしていないのも、この問題を不透明なものにしている。公表していないのは、競合他社に“不当なアドバンテージ”を与える恐れがあるからだ。しかしながら、郵政事業が2017年に27億円の損失を出したという事実はあるものの、郵政公社はアマゾンとの契約で収益をあげているとも主張している。

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(翻訳:Mizoguchi)

ボタン1つで洗剤やキッチンペーパーを注文、Amazon Dash Buttonが日本上陸

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かさばるトイレットペーパーなどの消耗品、あるいは重たい水や洗剤が切れる度にスーパーや薬局まで行って買い足すのは家事の負担だ。だが、これからはボタン1つでいつでも日用品を注文できるようになる。品物を買い忘れる心配もない。Amazonは、ボタンで商品を注文できるIoT端末「Amazon Dash Button」を今日から日本でも販売を開始する。

Dash Buttonは物理的なボタンが付いた日用品を注文するためだけのIoT端末だ。Dash Buttonを使用するには、まずWiFiに接続し、iOSかAndroidのスマホアプリからボタンで発注したい商品を設定するだけでいい。あとは好きなところにボタンを設置して、シャンプーや洗剤が切れたらボタンを押すと品物が届く。

Dash Buttonは1回ボタンを押すと、その商品が届くまで重複して注文できない設定になっている。ボタンを誤って押してしまい、大量に商品が届くというような心配はなさそうだ(この設定は変更可能)。もちろん注文はアプリで内容を確認したり、キャンセルしたりすることもできる。

このサービスを利用するにはAmazonのプライム会員に登録している必要がある。ボタンの価格は各500円だが、ボタンを使った商品の初回購入時に500円の割引が適用されるので、本体価格は実質無料だ。今日からDash Buttonで注文できる商品はシャンプー、洗濯用洗剤、清涼飲料水など約40種類が揃っている。

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ちなみに、アメリカではAmazonはDash Buttonを2015年3月にローンチし、現在では100種以上の商品の取り扱いがある。1010dataのEcom Insights Panelが今年4月に発表したデータによると、最も売上がある個別ボタンはP&Gの洗濯用洗剤、P&Gのキッチンペーパー、Kimberly Clarkのトイレットペーパーだ。よく使うが、ブランドを変えることが少ない消耗品とDash Buttonとの相性が良いようだ。

AmazonはDash Buttonと共に、家電と連動し、自動で日用品を再注文するサービス「Amazon Dash Replenishment」サービスも本日ローンチした。Dash Replenishmentは、例えばプリンターであれば、トナーが減ったのを検知すると、自動でトナーを再注文するサービスだ。日本ではアイリスオーヤマ、エレコム、シャープ、船井電機、三菱レイヨン・クリンスイがDash Replenishmentと連携したサービスを開始する。

アマゾンプライム最新の特典はディスカウント学生ローン

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アマゾンプライムは、お急ぎ便に加えてその他の特典、とりわけプライムビデオを通した映画やテレビ番組の無料視聴、無制限の写真ストレージなどがよく知られている。しかしこれらの広がりつつあるプライム会員特典に新たなものが加わった。学生ローン割引だ。ウェルズ・ファーゴとアマゾンが発表したのは、Amazon Prime Student会員に対して、学生ローンに割引金利の提供を計画しているというものである。

この提携により、ウェルズ・ファーゴはAmazon Prime Student会員に対して0.50パーセントの金利割引を提供する。これは、ウェルズ・ファーゴの他のグローバル・プロモーションに結びついたあらゆる金利割引プランなどと同様に、月々の自動返済プランに加入すれば適用される0.25パーセントの金利割引に更に上乗せして適用することが可能である。

ウェルズ・ファーゴの個人融資グループのJohn Rasmussenは「私たちはイノベーションと顧客がいる場所での出会いに注力しています − 顧客とはデジタルスペースでの出会いが増えています」と語る。「これは2つの偉大なブランドを1つにまとめる素晴らしい機会です。アマゾンもウェルズ・ファーゴでも、優れた顧客サービスを提供し、顧客を支援することが活動の中心なのです」。

アマゾンが2010年に学生の顧客を対象にAmazon Studentプログラムを開始して以来、学生顧客向けにローン提供者と提携して割引を提供するのは初めてのことだ。現段階ではアマゾンの顧客に割引を提供することができるローンプロバイダーはウェルズ・ファーゴだけだ。これはライバルのローン提供者に比べて大きなアドバンテージである。

米国最大の銀行の1つであり、民間としては学生への貸付規模2番手のウェルズ・ファーゴは、現在学生とその親や家族を含む105万人以上の顧客を全国に抱えていて、それらの顧客をEducation Financial Services部門が担当している。顧客はオンラインと同様に、6000以上のウェルズ・ファーゴ銀行の窓口で申請を行うことができる。

学生ローン割引はAmazon Prime Studentの会員だけが利用出来るようになっていて、親がプライムメンバーだからといって適用されるわけではない。

よく知らない人のために説明すると、Prime Studentとは現在カレッジまたはユニバーシティに在籍していて有効な「.edu」メールアドレスを所有する学生のための、特別なプライム資格である。

プログラムは年間49ドルで通常のプライム会員の半分のコストだが、多くのキャンパスでの即日集荷に加えて、お急ぎ便や、無料ストリーミングなどの特典を受けることができる。このプログラムは現在Sprintがスポンサーをしていて最初の6ヶ月間は無料である。

Prime Student会員はすでに学校には登録済みなので、ウェルズ・ファーゴの金利割引を利用したい学生は、新規のローン申請するのではなく、むしろ現在のローンの借り換えを行うことになるだろう。しかしどちらの場合でも割引の適用は行われる。

WSJによれば 、アマゾンとウェルズ・ファーゴの提携は1年以上の議論を経た結果で、両社の間には複数年に渡る契約が締結されているそうである。同記事ではまた、お互いに損失の補償は行わないということが確認されている。

とは言え、このローン割引がAmazon Prime Studentの加入を促すことは確実でAmazonへの利益をもたらすし、一方ウェルズ・ファーゴにも数百万人以上の潜在的な借り手へのアクセスが与えられるのだ。

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(翻訳:Sako)