米国の州検事総長がTikTokとSnapに対して他社製ペアレンタルコントロールアプリに対応するよう要望

TikTok(ティックトック)とSnapchat(スナップチャット)にはペアレンタルコントロールの強化が必要だとする書面に、44人の州検事総長が署名した。

米国時間3月29日、全米検事総長協会(NAAG)は10代の間で広く使われているTikTokとSnapchatに対し、一連の懸念を書面で送った。

州検事総長のグループはソーシャルメディアアプリに関して、広い意味で子どもの身体、感情、精神の健康に与える悪影響などさまざまな問題点を挙げている。虐待的な性的関係を表現したコンテンツは子どもの健全な関係に対する考え方を著しく傷つけることがあり、家庭内虐待や人身売買の継続を助長する恐れもあると指摘している。そして書面では、TikTokとSnapchatが他社製ペアレンタルコントロールアプリと効果的に連携して保護者がプラットフォーム上での子どもの行動を監視し制限することに努めていないと強調している。

NAAGはBarkというアプリの調査を引き合いに出した。2021年に30種類のアプリで34億通のメッセージを分析したところ、10代の74.6%が自傷や自殺の状況に関わり、90.73%がオンラインでヌードや性的コンテンツに接し、93.31%がドラッグやアルコールについて話したという。

書面では「ペアレンタルコントロールアプリは保護者や学校に対し、プラットフォーム上のメッセージや投稿が有害で危険な恐れがあることを警告します。子どもが自傷や自殺の願望を示した場合にも保護者に警告できます」と述べられている。

Snapchatにはすでにアプリ内のペアレンタルコントロール機能があり、TikTokにもあるが、州検事総長のグループはプラットフォームに対し他社製ペアレンタルコントロールアプリとの互換性を高めるように要望している。ただし、特定のプロダクトは推奨していない。州検事総長のグループは、ペアレンタルコントロールアプリはプライベートなメッセージなどアプリに内蔵のペアレンタルコントロールでは監視していないソーシャルメディアアプリの機能にもアクセスできることに言及している。さらに他社製アプリは、アプリのメインのフィードに表示されるユーザー生成コンテンツのフィルタリング機能も優れているとしている。

ただし、他社のコントロールアプリには子どもを監視する方法に関して独自の問題がある。

TikTokとSnapchatにはペアレンタルコントロール機能があるが、競合のInstagram(インスタグラム)にはなかった。ソーシャルメディアが10代のメンタルヘルスに与える影響に関する一連の上院公聴会の後、Meta(メタ)はようやくInstagramにペアレンタルコントロールの導入を開始した。

しかしペアレンタルコントロールの有無に関わらず、こうしたプラットフォーム上での10代の安全について米国政府は今も懸念を持っている。バイデン大統領は一般教書演説でソーシャルメディアが10代のメンタルヘルスに与える脅威に言及した。この一般教書演説にはFacebook(フェイスブック)の元従業員で内部告発をしたFrances Haugen(フランセス・ハウゲン)氏がゲストとして参加していた。

10代の間ではInstagramよりTikTokの方が人気があり、Instagramはそれに負けじとTikTokによく似たリールに投資している。しかしTikTokは急速に成長してソーシャルアプリとして地位を守っているため、Metaは自社の存在感を維持するために驚きの行動に出た。The Washington Postが米国時間3月30日に報じたところによると、Metaは共和党系コンサルティング企業のTargeted Victoryを使ってTikTokに対する大衆の反感をあおったという。Targeted Victoryが危険なクチコミトレンドがTikTokで始まったと主張して世論に影響を与えようとしたが、それは実際にはFacebookで始まったものだったというケースもあった。TechCrunchも2018年に、FacebookがTargeted Victoryと組んでFacebookプラットフォームの政治広告費に影響を及ぼす法案の進行を遅らせようとしたことを報じた

Targeted VictoryのCEOであるZac Moffatt(ザック・モファット)氏は声明で「Targeted Victoryの企業活動ではクライアントに代わって両党のチームに対応しています。我々が数年間にわたってMetaと協力しているのは広く知られていることで、我々はこれまでの仕事を誇りに思っています」と述べた。

いずれにしても、アプリを10代にとって安全なものにするためにペアレンタルコントロールにできることは限られている。アプリそのものが、危険なコンテンツを10代に提供しないように努めなくてはならない。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Kaori Koyama)

レジ袋禁止は裏目に?研究で判明した規制実施後の意図せぬ結果

プラスチック製レジ袋は悪だ。スーパーマーケットでの利用を禁止すれば、問題は解決する、そうではないのか?そうだろう?違うの?よくあることだが、この話にはもう少し続きがあるようだ。ジョージア大学の研究者たちは、レジ袋の提供を禁止することは、意図しなかった結果をもたらす可能性があると指摘している。

新しい分析によると、レジ袋禁止政策は、善意から始まったとしても、結局は逆効果になる可能性があるそうだ。その問題とは、食料品店のレジ袋は使い捨て製品だと思われているが、小さなゴミ箱のライナーとして(短い)第二の人生を歩むことが多いということである。レジ袋がないと、人々は代わりのものを探す。つまりそれは、小さなプラスチック製のゴミ袋を買うことを意味する、と研究者たちは指摘している。

ジョージア大学Warnell School of Forestry and Natural Resources(森林天然資源学部)のポスドク研究員であるYu-Kai Huang(ホァン・ユカイ)博士はこう述べている。「研究から、レジ袋の使用に対する需要があることはわかっており、これらの政策が実施されれば、一部の袋がなくなったり、入手がより高価になることもわかっています。そこで、こうした政策が全体的にポリ袋の使用量を減らす効果があるのか確かめたかったのです」。

これまでの研究では、袋の使用禁止がプラスチックの消費に与える影響については調べられていたが、有料化とレジ袋の使用禁止の複合的な効果については調べられていなかった。環境エコノミストであるホァン氏は、住民の所得水準や地域の人口密度など、地域社会で発生するゴミの量に影響を与える変数も考慮しながら、どちらの政策の効果も算出する新しい方法を用いた。

研究チームは、スーパーのレジ袋が多くの家庭で二次利用されていることに着目し、レジ袋の禁止や有料化が実施されている郡と、そのような政策がない郡でレジ袋の売り上げを測定し、比較した。調査の結果、レジ袋に関する政策を実施しているカリフォルニア州のコミュニティでは、4ガロンのゴミ袋の売り上げが55%増の75%、8ガロンのゴミ袋の売り上げが87%増の110%になったことが判明した。これらの結果は、より小さなプラスチック製ゴミ袋の売り上げが増加したという以前の調査結果とも一致している。政策が実施された後、小さいサイズのゴミ袋の売上は急増したが、13ガロンのより大きいゴミ袋(米国では台所のゴミ箱によくあるサイズ)の売上はほぼ横ばいで推移している。

研究者たちは論文の中で「規制実施前は、持ち帰り用のレジ袋が、同じようなサイズのゴミ袋の代わりに使われていた」と書いている。「規制が施行された後、消費者のプラスチック製ゴミ袋の需要は、規制されたレジ袋から規制されていないゴミ袋に切り替わったのである」。

ポリ袋を入れてある平均的な引き出しから判断できるとすれば、ほとんどの家庭はゴミ袋の必要性よりもはるかに多くの使い捨て袋を使用しているので、 レジ袋の有料化や使用禁止は、最終的にはプラスだといえるのではないだろうか。しかしこの研究は、どんなに良い計画を立てても、意図しない結果を招くことがあるということを思い出させてくれる興味深いものだ。これは他の分野でもそうだが、気候変動政策においても真理であるように思われる。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Den Nakano)

Waymoが無人ロボタクシーサービスをサンフランシスコの従業員に提供

Alphabet(アルファベット)の自動運転部門のWaymo(ウェイモ)は米国時間3月30日、サンフランシスコの従業員に完全自律走行車による乗車の提供を開始したと発表した。

Waymoは、プレシディオからキャンドルスティックポイントの最奥部まで広がる「サンフランシスコの初期サービス領域」内で、乗客だけが乗り込む運行を開始し、そこから徐々に拡大していく予定だ。

このニュースの約1カ月前には、同社はカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)から許可を取得後、人間のオペレーターを乗せたロボタクシーの乗車でベイエリアの住民に課金し始めると発表した。また、8月にはWaymoのTrusted Testerプログラムが始まった。このプログラムでは、サンフランシスコの人々が登録して、やはり人間のオペレーターを乗せたWaymo Driver搭載の全電動自動車ジャガーIペースを無料で呼び出すことができるようになった。

サンフランシスコは、Waymoとその最大のライバルであるGM(ゼネラルモーターズ)の自動運転子会社Cruise(クルーズ)との間で、ある種の戦場と化している。Cruiseは2022年2月上旬、自社の完全自律走行の配車サービスの一般提供を開始したが、乗車料金を徴収するためには、まだCPUCの許可を得る必要がある。Waymoは、最終的にドライバーレス乗車で課金するための許可をすでに申請しているかどうかについては明らかにしなかった。

ただし、アリゾナ州フェニックスでは、CruiseはWalmart(ウォルマート)と共同で自律走行配送の試験運用を行っている。最近その試験運用は拡大されたものの、Waymoはロボタクシーの優位性を確立している。同社は2016年からフェニックスでテストを行っており、2020年にはそこで完全自律走行の公共配車サービスを導入した。サービスを通じて毎週数百回の乗車を提供している。

Waymoは2022年3月30日、フェニックスでのルーツを深め、Waymo Driverが最近自律走行距離50万マイル(約80万キロメートル)を達成したイーストバレーからダウンタウンに拡大することも明らかにした。これまでと同様、同社は自律走行スペシャリストを運転席に乗せての乗車をまず自社従業員に提供し、その後、同社のTrusted Testerプログラムを通じて一般の人々にもサービスを開放する予定だ。

Waymoの共同CEOであるDmitri Dolgov(ドミトリ・ドルゴフ)氏は声明で「安全で堅牢、かつ汎用性のある自律走行ドライバー、すなわちWaymo Driverを構築し、その能力と性能を地域や製品ラインの間でうまく移行させることに我々は注力しています」と述べた。「これまでの経験から、第5世代Driverをサンフランシスコですばやく、そして自信を持って展開することができたのと同じように、サンフランシスコとフェニックスのイーストバレーでの経験の組み合わせは、何百万マイルの実走行に基づき、何十億マイルのシミュレーション走行によって後押しされ、すでにフェニックスのダウンタウンでの当社の進歩を導き、完全自律配車サービスの将来の拡張のための準備となっています」。

Waymoは、現時点ではサンフランシスコとフェニックスでの保有車両数は共有しないと述べた。

画像クレジット:Waymo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

モトローラが米国スマートフォン市場で第3位を獲得、まだ闘志は残っている

スマートフォン市場に、まだサプライズがあるんだね、少しは。米国市場のトップと2位なら、おそらく誰もが知っている。しかしCounterpoint Researchの最新の数字で、Motorola(モトローラ)が辛うじて2位を固持していると知ったら、思わずえっ?と言いたくなるだろう。

同ブランドにとっても、ここ10年、20年は順調ではなかった。世紀の変わり目には勢いある名前だったが、ポストiPhoneの世界は同社にとって厳しかった。巨額の損失後、Motorolaは2つに分かれ、モビリティ部門を2011年にGoogleに売った。Googleのハードウェアの成績はご存知のとおりで、3年後にはまた持ち主が変わった。

Lenovo(レノボ)は昔のブランドにとって、はるかに居心地の良い家だった。その成功の主な理由は、前述の上位ブランドが支配しているハイエンドの市場を避ける意思決定にあった。中でもブラジルとインドが、同社の主要市場になった。同時に米国も、重要な市場として残った。米国市場はミドルレンジのモデルや機やエントリーモデルが手薄だったため、そこが同社にとっておいしいマーケットになった。

Counterpointの数字によると、Motorolaの2021年の売上成長率は前年比で131%と驚異的だ。その結果同社は米国で400ドル(約4万9000円)未満のスマートフォンでは第2位、全機種では3位になった。特に売れたのが同社の300ドル(約3万6000円)未満のスマートフォンで、それにより同社は市場全体の10%をつかまえている。

画像クレジット:Counterpoint Research

2008年の勢いが戻ってきたわけではないが、携帯電話の市場をスマートフォンが支配して以降では、同社にとって最良の結果だ。プリペイドのプロバイダーであるMetro、Cricket、Boostなどは大物で、今では市場の約28%を支配している。しかしながら最も重要なのは、このリストにない名前だ。このところ業界にとっておかしな年が続いたが、その中で明らかにLenovoは好位置に付けていた。

米国のエンティティリストに載ってからは、Huawei(ファーウェイ)はもう敵ではない。またR&Dの大半をこれまたGoogleに売ったHTCは、眠ったように静かになり、VR方面へ舵を切った(その評価は未定)。しかし、最大の不在はLGだ。

2021年4月にこの韓国のハードウェア企業はスマートフォン市場から完全にいなくなった。そのとき同社は、次のような声明を残している。「これからのLGはモバイルの専門技術を生かし続け、6Gといったモビリティ関連の技術を開発し、スマートフォン以外の事業分野でその競争力をさらに強化していきます。20年間におよぶLGがモバイル事業で開発したコア技術は、現在および将来の製品に保持適用されていきます」。

LGのこのような動きによって、市場には完全にMotorolaの形をした穴が開いたようだ。スマートフォンメーカーとしての成功には、名門ブランドであることも寄与している。つまり、多くの人たちの意識から消え去りつつも、その栄光の日々からの「のれん」の力は強く、購入の意思決定を誘うのだ。ふところにあまり余裕がない人が、たとえばウォルマートで300ドルのスマートフォンを買うときには、自分がよく知っている名前に気持ちが傾くだろう。Razrの栄光の日々が20年も前であっても。業界人でもない一般消費者は、そんなことどうでもいい。現在の同社は、一貫して堅牢な低価格スマートフォンのメーカーという評価だから。

それを「カムバック」と呼んでもよい。それに反論する気はない。

画像クレジット:Motorola

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

子ども向けインタラクティブ通話デバイスAmazon Glowが半年の招待制販売を経て米国で一般に販売開始

2021年9月、Amazon(アマゾン)は「Amazon Glow」という不思議な形のデバイスを発表した。

ビデオ通話デバイスでありながらプロジェクターでもあるこの製品は、離れている家族と子どもをユニークなデュアルスクリーン方式でつなぐことを意図している。1つは内蔵スクリーンで遠隔地の通話相手の顔を写し、もう1つはプロジェクターでデバイスの下にあるテーブルに照射し、ゲームや本のための大きなタッチスクリーンとして機能する。子どもが卓上のタッチスクリーンで見ているものはすべて、通常、遠隔地の発信者のiOS / Androidタブレットに反映される。ママ、パパ、おじいちゃん、おばあちゃんが遠く離れた場所でページをめくると、子ども側のページもめくられる。

しかし、Glowには当初、1つだけ難点があった。購入するには、まず招待を受ける必要があったのだ。Amazonの製品テストプログラム「Day 1 editions」の一環として製品の不具合を解消する間、出荷は一部のユーザーに限定されていた。

Amazonは、米国時間3月29日より招待が不要になることを発表した。注目すべきは、「Day 1」プログラムから外れるため、価格が249ドル(約3万600円)から299ドル(約3万6740円)に跳ね上がることだが、同社は以前からその予定であると述べていた。この価格には、本体に必要な本やゲームを提供するほぼ必須の(Amazonプライムとは別の)サービス「Amazon Kids+」の1年間の契約と、本体がテーブルから転がり落ちて壊れた場合の2年間の「安心」交換補償が含まれている。

なお、Amazonによると、Glowはこれから「米国内」のすべての人に提供されるとのことで、他の国での販売についてはまだ詳しく述べられていない。

数カ月前、3歳の子どもの手を借りて初期モデルをチェックしたが、予想されたバグや時折のハードクラッシュにもかかわらず、我々(と祖父母)は非常に楽しい時間を過ごすことができた。そのため、レビュー用の貸出機を返送したあと、すぐに自分たちのものを購入したぐらいだ。まだ少しバグがあるが、だんだん改善されている(より軽快で、ここ数週間はより多くのゲームが追加されている)。少なくともうちの子どもは、祖父母と私がFaceTimeしているのを見ると毎回、Glowに切り替えるよう要求する。

画像クレジット:Amazon

関連記事:【レビュー】Amazon Glow、本当に会話相手の存在を感じる小型プロジェクターは楽しいがまだ粗削り

画像クレジット:Amazon

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Den Nakano)

The EVERY Companyが卵由来でない卵白で作ったマカロンを米国発売、分子レベルで成分把握・人工酵母を利用し再現

The EVERY Companyが卵由来でない卵白成分で作られたマカロンを米国発売、分子レベルで成分把握・人工酵母など利用し再現

Kimberly Tsai / Business Wire

米国で、鶏卵由来でない卵白で作られたマカロンが発売されました。これは鶏卵の卵白とほぼ同じ成分ものを、人工酵母を使って作り出すmicrobial precisionと呼ばれる技術を使用しています。

この技術は牛乳や卵といった動物性食品の成分を分子レベルまで分析、それと同様のものを微生物を利用して作り出します。たとえば、今年はじめにはこの技術を使って牛乳を使わずに作り出された乳成分を使った乳製品が米国で発売されました。

The EVERY Companyと称する企業は、過去数年かけて卵白に含まれるタンパク質を人工酵母で作り出す研究をしてきました。

ニワトリを必要としない卵白が作れるということは、コストが充分に安価になればその分タマゴが必要なくなり、さらにはニワトリを飼育するための養鶏場設備が必要なくなり、そこでの活動で産生される温室効果ガスの排出を減らすことが可能になって、持続可能性が高まると考えられます。

The EVERY CompanyのArturo Elizondo CEOによると、人工酵母で作り出される卵白はその機能や性質も本物とそっくりになるため、泡立ててメレンゲにしたり、中華麺、パン、パスタ、プロテインバーに至るまで加工する際の様子なども本物と同様に、また風味を損なわずに扱えるとのこと。ただし、あくまで性質は本物の卵白と同じになるため、卵アレルギーを抱える人には不適であることに注意が必要です。

同じ方法で卵白タンパク質の生成に取り組んでいるのはThe EVERY Companyだけではなく、今年初めには、フィンランド大学の研究チームが、人工の菌類から卵白の主要な成分であるオブアルブミンの生産に成功したと発表し、この方法であれば養鶏によるタマゴの生産に比べて温室効果ガスの排出を半分に抑えることができると推定していました。

microbial precision方式の卵白成分の生産を拡大しようとすれば、さらに多くの研究や生産設備が必要になります。しかしThe EVERY Companyはそれが食品の製造方法を変える方法になると楽観的に構えており、Elizondo氏も「我々の食料システム、ひいては世界を真に変革する技術だと信じている」と述べ、将来の世界の食糧供給を様変わりさせることになると強調しました。

もし本当にこの技術が普及していくなら、将来的に養鶏業者は新たな職探しをしなければならなくなるかもしれません。一方、これから人類が目指して行くであろう月や火星などでの生活においてこの技術が利用できるようになれば、大量のニワトリを連れて行くことなく、なにかと用途の多いタマゴの成分を使った食品を現地生産できるようになるかもしれません。ただ、オムライスやタマゴかけご飯好きとしては、卵白だけでなく、タマゴの黄身の部分も作れる技術がはやく確立して欲しいところです。

ちなみに今回の鶏卵を使わないマカロンは、パリ発祥で現在はサンフランシスコとパロアルトを拠点とするフレンチマカロン専門店Chantal Guillonとの協力で作られました。Trip Advisorなどで見たところ、本場フランスの味を提供する店として非常に人気が高いとのことです。

(Source:The EVERY Company(Business Wire)。Via New AtlasEngadget日本版より転載)

米政府がロシアのカスペルスキーを「国家安全保障上の脅威」と認定、チャイナ・モバイルやチャイナ・テレコムも追加

米政府がロシアのカスペルスキーを「国家安全保障上の脅威」と認定、チャイナ・モバイルやチャイナ・テレコムも

Sergei Karpukhin / reuters

米連邦通信委員会(FCC)は25日、ロシアの情報セキュリティ企業Kaspersky Lab(カスペルスキー)を「国家安全保障上の脅威」に認定したことを発表しました。FCCによってロシア企業が「米国の国家安全保障に受け入れがたいリスクをもたらす」リストに加えられたのは、これが初めてのことです。

カスペルスキーは、China Mobile(中国移動通信)やChina Telecom(中国電信)とともに、25日付けでリストに追加されています。このほか、中国ZTEやHuaweiもリストに含まれており、全8社の名前が並んでいるかっこうです。

このリストで名指しされた企業の製品については、米国内の企業はFCCが運営するユニバーサルサービス基金(USF)を使って購入することが禁じられます。この基金は低所得者層や農村部、離島など採算が合わない地域でも、都市部と平等に通信サービスを受けられるようにする補助金であり、今回の措置が大手企業に与える影響の範囲は限定的と見られています。

FCCのBrendan Carr委員は「FCCは、我が国の通信ネットワークの安全確保に重要な役割を果たしており、対象リストを最新の状態に保つことは、そのために自由に使える重要な手段である」と表明。さらにカスペルスキーを含めた3社をリストに加えることを「スパイ行為やアメリカの国益を損ねようとする中国やロシアの国家支援団体による脅威から、我々のネットワークを守るのに役立つだろう」と説明しています。

この決定に対してカスペルスキーは、失望したとの声明を発表。「カスペルスキー製品の技術的評価に基づいておらず、政治的な理由によるものだ」との趣旨をコメントしています。

米国内でカスペルスキー製品に規制が課されたのは今回が初めてではなく、2017年末にも米トランプ政権が政府機関全体での使用を全面的に禁止する大統領命令を出しています。それを受けてカスペルスキーは評判を毀損し、営業を妨害されたとして米政府を相手に訴訟を起こしていました

また、今回の件に先立ちドイツの情報セキュリティ当局も、ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、カスペルスキー製品を使うことは「相当程度」のサイバーリスクがあるとして、利用を控えるよう警告していました。日本政府も同じような対応を取るのか、注視していきたいところです。米政府がロシアのカスペルスキーを「国家安全保障上の脅威」と認定、チャイナ・モバイルやチャイナ・テレコムも

(Source:FCCBleepingComputer。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

アマゾンのアラバマとNYスタテンアイランド物流拠点の組合票の集計が来週から始まる

Amazon(アマゾン)のアラバマ州ベッセマーにあるフルフィルメントセンター(FC)での労働組合結成への道のりは、予想通り険しいものであった。苦闘の末、2021年4月、小売業界の巨人は勝利を収めた。労働者たちはBernie Sanders(バーニー・サンダース)上院議員から共和党所属のMarco Rubio(マルコ・ルビオ)上院議員までさまざまな政治家の支持を得ていたが、結果は一方的な勝利であり、組合代表者は直ちに異議を唱えた。

Amazonが「悪質であからさまな違法行為」によって従業員を「心理的操作」してきたという告発を受けて、全米労働関係委員会(NLRB)が再投票を行うことに同意したため、小売・卸売・百貨店労組(RWDSU)は年末に何とかカムバックを果たした。1月、NLRBは無記名投票の開始を2月4日と発表した。米国時間3月28日(月)に、これまで歴史的な取り組みとなってきた投票の集計が始まる。

Amazonのニューヨーク州スタテンアイランド倉庫も、比べるとかなり短い投票期間ではあるが、同様の取り組みに直面している。米国時間3月25日から始まる投票は3月31日まで行われ、その時点で集計が開始される予定だ。アラバマ州の郵便投票とは異なり、こちらは対面式で行われる。先の(ベッセマーでの)投票では、その方式が緊張の種となっていた。

この労働運動の推進は、すでにいくつかの論議を呼んでいる。元JFK8職員で組合支持者となったChristian Smalls(クリスチャン・スモールズ)氏は、2月下旬に他の2人とともに不法侵入の容疑で逮捕された。スモールズ氏は、同氏を含む3人はAmazonの従業員に食料を届けるために現場にいたのだと反論している。「これは単にAmazonが状況を作り出しているだけだ」と彼は報道陣に語った。会社側は独自の声明で反論し、同氏は「何度も警告を受けたにもかかわらず、不法侵入を繰り返した」とメディアに伝えた。

Amazonは以前から組合を弾圧する戦術で非難されており、労働者の扱いが長年にわたって厳しい批判にさらされてきた同社にとって、組合の推進が成功すれば、それが試金石となることを懸念しているのだろう。労働組合の結成が成功すれば、より多くの倉庫で働く労働者たちが勇気づけられることは間違いない。パンデミック中の状況も、多くの労働者にとっての動機づけの要因となっている。

Amazonの広報担当者であるKelly Nantel(ケリー・ナンテル)氏は、TechCrunchの取材に対し「従業員の声を反映していけることを楽しみにしています」と述べている。「Amazonがすばらしい職場であることを継続するために、チームと直接協力することに引き続き注力してまいります」。

注目すべきは、同社が労働者組織化に対する関心の高まりに直面しているいくつかの米国大手ブランドの1つであることだ。3月初めには、マンハッタンにあるREIの店舗で働く従業員が、組合結成に投票した。また、ニューヨーク州バッファローの店舗を皮切りに、全米のStarbucks(スターバックス)で一種のドミノ効果が展開されつつある。ニューヨーク州バッファローの店舗から始まり、アリゾナ州メサの店舗、そして今週初めには、同コーヒーチェーンの本拠地であるシアトルの店舗がこれに続いた。

画像クレジット:PATRICK T. FALLON/AFP / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Den Nakano)

EUと米国、無効にされたプライバシーシールドに代わるデータ移転協定に基本合意

欧州連合(EU)は、大西洋を横断するデータの移転に関する協定の復活について、米国と基本合意に達したと発表した。2020年7月にEU・米国間の「プライバシーシールド」を無効とする画期的な判決が出た後、クラウドサービスを悩ませた何カ月にも及ぶ法的不確実性に終止符を打つ可能性を示している。

欧州委員会のUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)委員長は現地時間3月25日、Joe Biden(ジョー・バイデン)米国大統領との共同記者会見で「我々は大西洋を越えるデータの移転に関する新たな枠組みについて、基本的合意を見出した」と述べた。

「これにより、プライバシーと市民の自由を守りながら、EUと米国の間で予見可能で信頼できるデータの移転が可能になる」と述べた。

EU・米国間のデータ移転に漂う法的不確実性はここ数カ月で、欧州のデータ保護機関がGoogle Analytics、Google Fonts、Stripeなどの製品を経由する個人データの移転を阻止する命令を出す事態を引き起こした。

Facebookの主要EU規制当局も、複数年にわたって同社のEU・米国間のデータの移転に苦情を言い、そして同社が2020年秋の予備的停止命令に対する法的措置に疲れ果てた後、先月ようやく改訂された決定草案をMeta(メタ)に送付した。

SNSの巨人は、まだ実際にEUと米国のデータ移転を停止するよう命じられてはいない。そして、プライバシーシールドの原則合意時と同様に、米国との政治的合意が成立した現在、データ移転の執行を停止することにEUの規制当局が同意すれば、EUと米国の新しいデータ移転協定が最終合意して採用されるまで、何カ月間でも執行停止の猶予期間を設けることができ、この弾丸は完全にかわすことができる。

これは、先の執行を遅らせようとしたMetaが望んでいたことであることは間違いないだろう。

EUと米国が原則的に合意した内容の詳細や、まったく異なる方向性を持つ2つの法体系の間の溝を両者がどのように埋めたのかについては明らかではない。そして、この協定の持続可能性はまさにその細部に左右されるため、今日の発表から政治的ジェスチャー以上のものを得ることはほとんどない。

EUと米国のデータ移転をめぐる不確実性は、実際は2020年よりも前にさかのぼる。「セーフハーバー」と呼ばれる、より長い歴史を持つ先の協定は、EUのプライバシー権と米国の監視法の間の同じ核心的な衝突をめぐって、2015年に欧州の最高裁判所によって無効とされた。

このような動きは、EU市民のデータが米国に流れる際にその権利が適切に保護されることを保証する上で、代替となる協定がどれだけ強固なものであるかを試す新たな法的課題という困難な見通しに直面することを意味する。

「安全保障とプライバシーやデータ保護の権利のバランスを取ることができた」と、フォン・デア・ライエン委員長はさまざまな件についての記者会見の中で短い言葉で示唆した。また、同委員長は今回の合意について「バランスがとれており、効果的だ」という表現を用いたが、実際に何が決まったのか具体的な内容は示さなかった。

欧州委員会は、プライバシーシールド(およびセーフハーバー)に関して、裁判所がまったく異なる見解を示すまでは非常に似たようなことを言っていた。なので、完全かつ最終的な評価は、EUの委員や米国の関係者が行うことではなく、またできないことを理解することが重要だ。

欧州司法裁判所だけが介入できる。

プライバシーを専門とする弁護士で、大西洋を横断するデータ移転取引(通称シュレムスIとシュレムスII)を無効にしたことでその名を知られるようになった運動家のMax Schrems(マックス・シュレムス)氏は、すぐに懐疑的な意見を述べた。

フォン・デア・ライエン委員長の発表を受けて、シュレムス氏は次のようにツイートした。「特にある点で、またプライバシー・シールドが行われるようです。法律や基本的権利よりも政治が優先されています」。

「これは過去に2回失敗しています。私たちが聞いたのは、別の『パッチワーク』アプローチで、米国側には実質的な改革はありません。詳細を待つことにしましょう。しかし私は、それが再び失敗する方に賭けます」。

シュレムス氏は、プライバシーシールドを豚の口紅と呼んだことで有名であるが、それは正しい。したがって、内容に対する同氏の評価は、それが明らかになったとき、間違いなく欧州委員会の評価よりも重みを持つことになる。

シュレムス氏はまた、自身のプライバシー擁護のための非営利団体noybを通じて、EU法の要件を満たさない新しい協定は、民事訴訟と仮処分によって「数カ月のうちに」欧州司法裁判所に差し戻すことができるだろうとも述べている。

「最終文書が届いたら、米国の法律専門家とともに徹底的に分析します。もし、EUの法律に沿っていないのであれば、私たちか他のグループが異議を唱えることになるでしょう。最終的には、司法裁判所が3度目の判断を下すことになります。最終決定から数カ月以内に裁判所に戻されるものと思われます」と声明で指摘し「EUと米国がこの状況を利用して、同じ考えを持つ民主主義国家間で基本保証をともなう『スパイ禁止』の合意に至らなかったことは残念です。顧客や企業は、さらに何年も法的不確実性に直面することになります」と述べた。

データ移転協定がまたもや復活したというニュースに対するテック業界の反応は、予想通り好意的なものだった。

Metaとともに実行可能な妥協点を見出すよう、ここ数カ月間強く求めてきたGoogle(グーグル)はこの発表をすぐに歓迎した。

同社の広報担当者は、声明の中で次のように語っている。

「人々は、世界のどこからでもデジタルサービスを利用できることを望み、国境を越えて通信する際に自分の情報が安全に保護されていることを知りたいと願っています。新しい枠組みに合意し、大西洋を越えたデータ移転を保護するためのEUと米国の作業を賞賛します」

プライバシーシールドの代替案を強く求めて活動してきたCCIAテック産業協会も、今日の発表を「良いニュースだ」と歓迎した。しかし、CCIAのディレクターAlexandre Roure(アレクサンダー・ルル)氏は、今後導入される産業用機器や接続機器のデータ再利用に関するEUの規則について、新たな「データ制限」を導入することになるとして、わずかに不快感を示すコメントを発表した。

画像クレジット:Suebsiri / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

「Polestar 2」のシングルモーター仕様が米国で販売開始、約560万円から

スウェーデンの高性能電気自動車ブランドであるPolestar(ポールスター)は、2021年発売されたデュアルモーター仕様のEV「Polestar 2」続き、一度の充電で270マイル(約435km)の距離を走行可能なシングルモーター仕様の同モデルを米国で販売開始すると発表した。

この「Polestar 2 Long range Single motor(ポールスター2 ロングレンジ・シングルモーター)」の車両価格は、4万5900ドル(約560万円)からとなっているが、連邦政府と州の補助金を考慮すると実質3万3400ドル(約406万円)となる。デュアルモーターで4輪駆動の兄弟車よりも4000ドル(約49万円)安く、航続距離も19マイル(約31km)長い。車軸に取り付けられた電気モーターの数以外(シングルモーターは前のみとなる)、両車は機能的には同じものだ。

「Polestar 2のすべてのモデルは、Googleインフォテインメント・システム、プレミアムでサステイナブルな素材、そして比類のない前衛的なデザインを備え、最先端テクノロジーにおけるブランドの優位性を発散させています」と、Polestar USAのGregor Hembrough(グレガー・ヘンブロー)社長は、プレスリリースで述べている。

4000ドルでさまざまな快適装備が追加される「Plus」パックと、安全および運転支援機能がグレードアップする3200ドルの「Pilot」パックは、どちらのパワートレインを選んでもオプションで付けることができる。

地元の石油化学コングロマリットに一矢報いたい人は、公式サイトまたは全米の主要都市にある同社の実店舗でPolestar 2の試乗を予約することができる。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のAndrew Tarantola(アンドリュー・タラントラ)氏はEngadgetのシニアエディター。

画像クレジット:Polestar

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(文:Andrew Tarantola、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中国版Twitterとして知られる「Weibo」が米国で上場廃止のリスクに直面

米国の規制当局は、会計書類の調査ができない中国企業を上場廃止にする可能性のある法律の適用ペースを速めている。中国のTwitter(ツイッター)に相当するWeibo(ウェイボー、微博)が米証券取引委員会(SEC)の上場廃止監視リストに加えられたことは、Alibaba(アリババ)やBaidu(バイドゥ)といった他の中国インターネット大手も同じ圧力に直面することが遠くないことを意味する。

2020年にトランプ政権は外国企業に対する会計基準の厳格化を目的とした法案を成立させた。この法律は、米国に上場する外国企業、特に中国に拠点を置く企業の帳簿を可視化することを求めるものだが、国家安全保障を脅かす可能性のあるデータの引き渡しを警戒する一部の国では機能していない。

中国は、米国で株式を取引する外国企業を監査するために設立されたSECの公開会社会計監視委員会に全面的に協力していない数少ない国の1つだった。しかし、その消極性は薄れつつあり、中国は最近、Alibaba、JD、Baiduといった米国で上場するハイテク大手の寵児たちに、監査の詳細を準備するよう指示したと、ロイター通信が今週報じている

しかし、報道によるとこれらの監査書類に機密データは含まれないという。

米国で上場している中国のハイテク企業の多くは、超大国間の緊張が高まる中、すでに香港での二次上場を追求してきた。しかし、中国政府の最新の措置は、成長志向の強い多くのインターネット企業にとって望ましい米国市場での投資を維持するために、中国政府が譲歩する意思があることを示すものだ。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

韓国LG Energyが約1700億円を投資し米国でのバッテリー生産を拡大

Tesla(テスラ)、Lucid Motors(ルシッドモーターズ)、General Motors(ゼネラルモーターズ)、Proterra(プロテラ)に電気自動車用バッテリーを供給する韓国のLG Energy Solution(LGエナジーソリューション)が、米国時間3月11日、14億ドル(約1697億円)を投じてアリゾナ州クイーンクリークに円筒形バッテリーの工場を建設することを発表した。

このことは、LG Energyが米国での存在感を高めていることを改めて明確にした。1月には、21億ドル(約2546億円)を投じてゼネラルモーターズと共同で、米国3番目のEV用バッテリー工場を建設する計画だと発表した。また2021年には、Stellantis(ステランティス)がLGとバッテリーセルとモジュールを北米で生産する契約を締結している。

今回のLGのアリゾナでの出資は、北米市場において、瞬発力を必要とする電動工具やEV・電動自転車などのモビリティ機械などに対する、円筒型セルや円筒型電池の応用需要が高まっている時期に行われる。需要が高まる理由は、LGの広報担当者によると、この種のバッテリーが比較的小さくエネルギー密度が高いからだという。

11ギガワット時規模の工場建設は、2022年第2四半期に開始され、2024年には量産が開始される予定だ。

LG Energyによると、同工場はEVメーカーに供給される円筒形バッテリーの、北米で初めての製造工場となる。ロイターの報道によると、Tesla、Lucid、ProterraなどのEVメーカーがその潜在的な顧客となる可能性があるという。LGは、契約手続きは進行中だと語ったが、アリゾナ工場がどの企業に供給するのかは明言を避けた。

LG Energyは、米国での生産能力の追加を検討しているという。1月には、LG Energyは新規株式公開により100億ドル(約1兆2145億円)以上を調達した

バッテリー製品をTeslaにも供給している日本のパナソニックは、オクラホマ州かカンザス州に工場建設用地を探していると、2月にNHKが報じている。また、トヨタは米国にバッテリー工場を建設し、2025年の生産開始を目指している。

米国でバッテリーを開発する海外バッテリー企業の流入は、ジョー・バイデン大統領が国家的なバッテリーサプライチェーンの確立のために数十億ドル(数千億円)の資金を確保するインフラ法案の産物なのかもしれない。

LGは、このようなサプライチェーン構築のために米国から提供される資金の受給資格があるかどうかの問い合わせには、締切までには回答しなかった。

関連記事:GMがシボレー・ボルトのリコール損失約1100億円をLG Chemに請求すると表明

画像クレジット:LG Energy Solution

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(文:Kate Park、翻訳:sako)

NASAがSpaceXと並んで有人月着陸船を開発する第2の企業を募集

NASAは、企業に月着陸船を送り込む新たなチャンスを与える計画を発表した。SpaceXがBlue Origin、Boeing(ボーイング)らのライバルを破ってから1年近く後のことだ。

新しい計画の下、NASAは着陸システムの2度目の競争入札を、SpaceXを除く全米国企業に開放する。第2の着陸船の打ち上げは2026年または2027年を目標にしている。Sustaining Lunar Development(持続的月開発)契約と呼ばれるこの2回目の競争の勝者は、SpaceXとともに「月面に立つ宇宙飛行士のための将来の繰り返し可能な月輸送サービスへの道を開く」とNASAは言っている。

これは競争参加者にとって良いニュースであるだけではない。同局はさらに、既存のSpaceXとの契約を拡大し、もう1機の着陸船を製作する計画も発表した。2020年代後半に、無人および友人のデモンストレーション飛行ミッションを実施する。

NASAの3月23日の発表は、アポロ計画以来初めて人類を月に送り出す同局による一連のミッションであるArtemis(アルテミス)プログラムの大がかりな拡張だ。

これは、大きな方向転換でもある。NASAは2021年4月にSpaceXと28億9000万ドル(約3500億円)の単独契約を結んだ後、民間産業、議会の両方から集中砲火を浴び、Blue Originが連邦裁判所でNASAを訴えるところまできている(これは、Blue Originと防衛契約業者のDynetics[ダイネティクス]が、政府説明責任局とともに、異議を唱え、後に棄却されたあとのことだ)。しかし今回、NASAのBill Nelson(ビル・ネルソン)長官は、同局が重視するのは競争を育てることだけだと発言した。

「NASAそして議会も、競争はより優れたより信頼性の高い結果と全員にとっての利益を生むと考えています」と同氏は述べた。「それはNASAの利益であり、米国民の利益です。これは間違いなく、競争が生み出す利益です」。

同局は3月末に暫定提案依頼を公開する、と月着陸プログラム責任者のLisa Watson-Morgan(リサ・ワトソン=モーガン)氏が23日に記者団に語った。これには今春末の最終提案依頼が続き、SpaceXを除くすべての米国企業に参加資格がある。

これまでNASAは、費用がいくらになるのかについて、固定金額契約になること以外は口をつぐんでいる。これは重要であり、なぜなら同局は2021年の月着陸システムの契約に1社のみを選んだ理由の1つは予算の制約のためだとしているからだ。契約金額の詳細は、来週バイデン大統領が会計2023年度予算を発表したあと明らかにされる、とネルソン長官は付け加えた。

「私たちは議会およびバイデン政権両方の支持を得られることを期待しています」と同氏は語った。

更新:Blue Originの広報担当者はTechCrunchに次のように語った「Blue Originは競争に参加する準備が整っており、今後もArtemis計画の成功に全力を注いでいきます。当社はNASAと協力して、できるだけ早い月への帰還という米国の目標を達成するために努力していきます」。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Instagramが商品のタグ付け機能を米国の全ユーザーに拡大

Instagram(インスタグラム)は米国時間3月22日、今後数カ月間で商品のタグ付け機能を米国の全ユーザーに拡大すると発表した。これまでは投稿に含まれる商品にタグ付けできるのはInstagramのクリエイターだけだった。今後は米国の全ユーザーがInstagramショップに対応している企業の商品にタグ付けできるようになる。同社は、この拡大によりタグ付けした人のフォロワーは紹介されている商品を見つけやすくなり、企業にとってはInstagram上のオーディエンスを増やすことにつながると説明している。

誰かがInstagramで商品にタグを付けると、その企業に通知が届く。企業は自社のプロフィールからタグ付けされたコンテンツをすべて見ることもできる。さらに、企業がタグ付けできる人を制御する設定もある。

自分の投稿で商品にタグを付けるには、写真またはビデオを選択し、キャプションを追加してから「次へ」ボタンを選択する。投稿中のブランドをまずタグ付けすると、商品にタグ付けするオプションが表示される。そこから「Tag Products(商品にタグ付け)」をタップして企業を検索し、タグを付けたい商品を見つけて自分の投稿に追加する。1件の投稿で複数の商品にタグを付けられる。

InstagramはTechCrunch宛のメールで「お気に入りの小さい会社から新しいイヤリングを手に入れたら、フィードの投稿でその商品にタグ付けすると、あなたの友人やフォロワーはそのイヤリングについて詳しく知り、購入できます。人々はトレンドやインスピレーションを共有し、発見するためにInstagramを利用しています。商品のタグ付けにより誰もがお気に入りの小さい会社を応援し、使用した商品とともに自分のスタイルを共有できるようになります」と説明した。

画像クレジット:Instagram

Instagramによれば、アプリ上で平均して160万人が週に1つ以上のブランドにタグ付けをしているという。同社はここ数年、アプリでのショッピングをスムーズにすることに取り組んできた。

2021年に同社は新機能として米国でアプリの「ショップ」タブ上部に「ドロップ」を追加し、オンラインで買い物をする人と商品を結びつけようとした。消費者はドロップで最新の商品を見つけ、ブラウズし、購入できるほか、近日発売の商品も見られる。興味のある商品のリマインダーを受け取れるように登録したり、Instagramで公開された他のドロップから商品やコレクションを見る機能もある。

2020年には「ショップ」タブが再設計された。Instagramショップは好きなブランドやクリエイターの商品をブラウズできる場所と説明されている。「ショップ」タブでは例えば「ビューティー」や「ホーム」といったカテゴリーで絞り込んでから、アプリ内で直接商品をチェックできる。

画像クレジット:Instagram

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(文:Aisha Malik、翻訳:Kaori Koyama)

米証券取引委員会が企業に気候変動に関する目標や温室効果ガス排出量の開示を義務づける新規則を提案

米証券取引委員会(SEC)が提案した新しい規則は、上場企業に自社が排出する温室効果ガスの開示を義務づける。これはバイデン政権が、気候変動リスクを特定し、2030年までに排出量を52%も削減するという目標を達成するための取り組みの一部だ。SECの3人の民主党委員はこの提案を承認したが、共和党委員のHester M. Peirce(ヘスター・M・パース)氏は反対票を投じた

「私は本日の提案を喜んで支持します。なぜなら、この案が採用されたら、投資家が投資判断をする際に、一貫性があり、比較可能で、意思決定に有用な情報を提供できるようになり、そして上場企業にも一貫性があり、明確な報告義務を与えることになるからです」と、SECのGary Gensler(ゲーリー・ゲンスラー)委員長は述べている。

この新規則の下では、企業は気候変動リスクが自社の事業や戦略にどのような影響を与えるかを説明しなければならなくなる。企業が排出するCO2を公表することが求められ、大企業はその数値を独立したコンサルティング会社に確認させる必要がある。また、仕入先や顧客からの間接排出が、自社の気候目標にとって「重要」な場合は、その排出量を開示する必要もある。

さらに、カーボンフットプリントの削減を公約している企業は、その目標を達成するための計画を説明する必要がある。これには植林などのカーボンオフセットの利用も含まれるが、Greenpeace(グリーンピース)が最近の報告書で述べているように、実際の排出量削減の代用にはならないとの批判もある。

SECはすでに自主的な排出量ガイダンスを考慮しているが、新規則はこれを義務化するものだ。Ford(フォード)などの多くの企業はすでに、工場の生産過程における排出ガスから、販売した自動車の燃料消費量まで、排出量データを公開している。しかし「義務化されないとやらない企業もたくさんある」と、気候関連財務情報開示タスクフォースのチーフを務めるMary Schapiro(メアリー・シャピロ)氏は、報告書の発表に先立ち、The Washington Post(ワシントン・ポスト紙)に語っている。

この規則案がSECのウェブサイトで公開された後、一般市民は60日の間にコメントを出すことができる。最終的な規則は数カ月後に投票で採用が決まると、数年かけて段階的に導入されることになりそうだ。これに対し、ウェストバージニア州などの共和党員は、企業団体とともに、近い将来において気候変動は投資家にとって重要な問題ではないとして、法廷で争うことになる可能性がある。

しかしながら、専門家たちは時間が非常に重要であると警告している。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は最近、地球温暖化の影響の多くは「不可逆的」であり、最悪の事態を回避するための時間はわずかしかないとする報告書を発表した。Antonio Guterres(アントニオ・グテーレス)国連事務総長は、この報告書を「気候変動に関するリーダーシップの失敗を痛烈に非難するもの」と呼んだ。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のSteve Dent(スティーブ・デント)は、Engadgetの共同編集者。

画像クレジット:Luke Sharrett/Bloomberg / Getty Images

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(文:Steve Dent、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米YouTubeが無料で広告付きテレビ番組を配信へ

米YouTube(ユーチューブ)は米国時間3月23日、広告付きのテレビ番組を初めて無料で配信することを発表した。これはTubi、Pluto TV、The Roku Channel、IMDb TV、Xumo、Plex、NBCUのPeacockなど、市場で増え続ける無料ストリーミングサービスとの直接対決を可能にする動きとなる。同社によると、まず米国のユーザーに対して、「ヘルズ・キッチン〜地獄の厨房」、「アンドロメダ」「ハートランド物語」などの番組から4000以上のテレビエピソードを無料で提供する予定だそうだ。今後は、番組や映画を含め、毎週最大100本の作品を無料ストリーミングに追加していく予定だ。

YouTubeはすでに広告付きの無料映画を多数配信しているため、今回の無料テレビ配信開始は、同社にとってまったく新しい試みというよりも、既存の無料ストリーミングの取り組みを拡張するものといえるだろう。

現在YouTubeでは、Disney Media & Entertainment Distribution(ディズニー・メディア&エンタテインメント・ディストリビューション)、Warner Bros.(ワーナー・ブラザーズ), Paramount Pictures(パラマウント・ピクチャーズ)、Lionsgate(Lionsgate)、FilmRise(フィルムライズ)などの企業が提供する1500本以上の映画を配信している。例えば2022年3月には、「60セカンズ」、「プリティ・ブライド」、「キューティ・ブロンド」などの映画が新たに追加されている。

しかし、広告付きと定額制の両方を含む広範なストリーミング業界は、映画ではなくテレビに引き寄せられる傾向がある。以前の時代であれば、映画か、少なくともミニシリーズになっていたであろう、新しいオリジナルプロジェクトが、今ではしばしば一気見ができるテレビ番組としてリリースされている。プラットフォームメーカーもこの傾向を好ましく思っている。ユーザーが自社サービス上でコンテンツを視聴する時間が増えていることを意味するからだ。才能と資金も長い間これに続いており、テレビシリーズは、過去数年間ハリウッド映画にしか与えられなかった批評家の注目と称賛の両方を獲得している。

画像クレジット:YouTube

一方、無料のテレビストリーミングは、ストリーミング市場全体の成長の大部分を牽引している。

Kantar(カンター)のデータによると、米国の85%の世帯がなんらかの動画契約を結んでいるが、四半期ごとの成長は主に無料の広告付きテレビと広告付きビデオオンデマンドサービスからもたらされている。2021年第4四半期時点で、米国世帯の18%が少なくとも1つの無料広告付きテレビサービスを利用しており、この数字は前年度第4四半期から2倍以上に増加している。Kantarによると、最終四半期の新規ユーザーのほとんどは、Peacock、IMDb TV、Tubi、The Roku Channelのアカウントにサインアップした人たちだったそうだ。

一方、YouTubeは、無料テレビとまではいかないまでも、米国でかなりのコネクテッドテレビの足跡を残している。Nielsen(ニールセン)のデータによると、2021年12月にYouTubeは米国のコネクテッドテレビで1億3500万人以上にリーチしているとのことだ。しかし、ユーザーがYouTubeでテレビ番組を検索すると、当該タイトルをレンタルするか購入するように誘導され、無料ストリーミングは選択肢になかった。

それが、無料テレビサービスの開始で変わることになる。YouTubeによると、新しいナビゲーションと没入感のあるバナーアートを導入し、ユーザーが視聴方法を選択しやすくするとのことだ。従来通りレンタルまたは購入するか、もしくは可能な場合は、広告付きの無料で視聴することができるようになる。一方、CMは視聴者や番組を見ている状況によって頻度が変わるとYouTubeは述べている。広告のほとんどは、YouTube Selectプログラムを通じて販売される。

ひと握りの有名番組以外にも、無料で視聴できる番組の多くは、「パパは何でも知っている」、「未解決ストーリー」、「21ジャンプストリート」、「キャロル・バーネット」、「ザ ガール 」、「パトカー54 / 応答せよ!」、「ローン・レンジャー」、「ホパロング・キャシディ」、「Laugh-In」、「The Dick Van Dyke Show」などの古いシリーズだ。無料番組の多くは、たとえシリーズが長く続いたとしても、1シーズンか2シーズンしか提供されていない。このライブラリによって、YouTubeがすぐに無料のテレビ番組のトップデスティネーションになるわけではないが、YouTubeの常連ユーザーにとっては、退屈な時間を緩和するのに役立つかもしれない。

また、YouTubeは、多くの無料テレビ番組が、対応するデバイスで5.1サラウンドサウンド音声付きの高解像度1080pで視聴できることにも言及している。

これらの番組は、米国のユーザーが本日からウェブブラウザ、モバイルデバイス、YouTube TVアプリを介したコネクテッドテレビで視聴できるようになる予定だ。

画像クレジット:YouTube

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(文:Sarah Perez、翻訳:Akihito Mizukoshi)

中国のドライバーレス配達スタートアップWhale Dynamicが約3億円調達、米国市場を狙う

Nuro(ニューロ)に挑む中国の新進気鋭のスタートアップは米国の配達市場に照準を合わせており、その野望を前進させるためにシード資金を調達した。

Baidu(百度、バイドゥ)のベテラン社員David Chang(デイビッド・チャン)氏が設立した深センの自律配達スタートアップWhale Dynamic(ホエール・ダイナミック)は、約250万ドル(約3億円)のシードラウンドをクローズしたと発表した。中国の大手金融機関出身のベテランが運営する北京の投資会社Qianchuang Capitalがラウンドをリードし、不動産デベロッパーが出資する中国のファンドShangbang Huizhongが参加した。

2018年に設立されたWhale Dynamicは、ハンドルと運転席をなくすことを目的としたNuroのようなドライバーレスの配達バンを開発している。そして、配達ボットがBYD製であるNuroと同様、自動運転車の生産を中国のメーカーと契約しているが、契約が確定していないためメーカー名はまだ明かせない。

Baiduの知能運転グループでプロダクトマネージャーを務めたチャン氏は、Whale DynamicがNuroにわずかに勝るのはコスト面だと指摘する。Nuroは米国で部品を組み立てているが、Whale Dynamicは製造から組み立てまですべて中国で行っているため、価格面で優位に立つことができる。価格は1台約2万ドル(約240万円)だ。

今回の資金投入により、Whale Dynamicは現在30人の従業員からなるチームを拡大し、中国と米国での製品使用例を検討することが可能になる。Huawei(ファーウェイ)出身のエンジニアリングディレクター、Qi Wei(チー・ウェイ)氏をリーダーに、5月に中国のいくつかの都市で最初のプロトタイプ車のテスト走行を実施することを目指している。

中国ではWhale Dynamicは、Meituan(メイトゥアン)やJD.com(JDドットコム)などの小売テック大手との競争に直面しており、これらの企業は2021年、独自の商品専用配達車のテストを開始した。チャン氏は、車輪のついた箱を直接製造するのではなく、乗用車の研究開発とテストを行うという、より時間とコストのかかる方法をとる同社の技術は時の試練に耐えることができると考えている。

乗用車を使っているWhale Dynamicのテスト車両

チャン氏は、最終的には米国を拠点にして、速達サービスやスーパーマーケットをターゲットにしたいと考えている。「中国なら、もっと早く、低コストでテストができます」とチャン氏は中国からスタートした理由を説明する。

中国と米国の規制当局が、国家安全保障上のリスクがあるとしてハイテク企業への監視を強化しているため、2つの国にまたがる企業はより大きな規制に従うか、どちらかの国を選ばなければならなさそうだ。中国のソーシャルメディア大手Sina(新浪)の関連会社が出資するカリフォルニア州の自律型トラック運送会社TuSimple(トゥシンプル)は中国部門の売却を検討している、とロイター通信は報じた。

TuSimpleの車両のほとんどは米国で稼働しており、中国で動いている車両はわずかだ。しかし、米国の規制当局は同社の中国との関わりや中国支社のデータへのアクセスについて懸念を示しており、これがTuSimpleの中国部門を売却する決断につながったと報じられている。

Whale Dynamicではセキュリティ・コンプライアンスを最優先しているとチャン氏は話す。米国市場に参入する際には、AWSやGoogle Cloudといった米国のクラウドサービスを利用し、中国のチームはハードウェアの開発のみを担当する予定だ。LiDARはOster(オスター)とイスラエル拠点で米国にもオフィスを持つInnoviz(イノビズ)、チップはNVIDIA(エヌビディア)、Intel(インテル)と、主要サプライヤーも米国系だ。自社で車両を運用するNuroとは異なり、Whale Dynamicはすぐに使える車両とSaaSのみを提供し、運用部分は顧客に任せる予定であるため、同社が取得できる機密データの量は制限されるはずだ。

画像クレジット:Whale Dynamic’s delivery bot

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

米CISAとFBIが米国の衛星ネットワークへの脅威を警告、Viasatへのサイバー攻撃を受け

ウクライナでの戦争に端を発した欧州の衛星ネットワークへの最近の攻撃が、やがて米国にも波及する恐れがあるとして、米政府は衛星通信ネットワークへの「脅威の可能性」について警告した。

今週発表されたCISA(米サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)とFBI(米連邦捜査局)の共同勧告は、衛星通信(SATCOM)ネットワークプロバイダーや衛星ネットワークに依存する主要なインフラ組織に対し、サイバー攻撃の可能性の高まりに備えサイバーセキュリティを強化するよう促すとともに、侵入が成功してしまえば顧客環境にリスクをもたらすと警告した。

この勧告では、脅威を受ける特定のセクターの名前は挙げられていないが、衛星通信の利用は米国全土に広がっている。推定で約800万人の米国人が、インターネットアクセスのためにSATCOMネットワークに依存している。衛星通信システムの分析を専門とするサイバーセキュリティの専門家、Ruben Santamarta(ルーベン・サンタマルタ)氏はTechCrunchに対し、ネットワークは航空、政府、メディア、など幅広い業界で利用されており、遠隔地にあるガス施設や電力サービスステーションなどでも利用されていると述べた。

サンタマルタ氏によれば、特に軍が注意すべきなのは、最近SATCOMプロバイダーのViasat(ヴィアサット)が受けたサイバー攻撃だ。2月に欧州で数万人の顧客が通信不能になった。被害の規模を示す一例だ。

「ウクライナの軍隊はこの種の衛星端末を使っていました」とサンタマルタ氏はTechCrunchに語った。「ウクライナ軍の代表の1人が、通信の面で大きな損失があったことを認めています。ですから、明らかに今、影響を受けている最も重要な分野の1つなのです」。

同氏は、例えば海運業界にとって、攻撃が成功すれば、サイバーセキュリティの問題だけでなく、安全への脅威となる可能性があるという。「船舶は安全運航のために衛星通信を利用しており、遭難信号を送信する必要がある場合、無線周波数またはSATCOMチャネルで送信することができます。もし、そのような救難信号を送れないとしたら、それは問題です」と同氏は述べた。

今回の合同勧告は、欧米の情報機関が先月、ViasatのKA-SATネットワークを襲ったサイバー攻撃の調査を開始し、ロシアの侵攻開始時に欧州全域で大規模な通信障害を引き起こしたと報じられた数日後に発表されたものだ。

この障害はまだ完全に解決していないが、ウクライナや欧州の他の地域で何万人もの顧客の衛星インターネットサービスに影響を与え、ドイツではおよそ5800基の風力タービンを停止させたという。

このサイバー攻撃は当初、分散型サービス妨害(DDoS)攻撃によるものと考えられていたが、その後疑問視されるようになった。Viasatはまだ技術的な詳細を発表していないが、攻撃者が衛星ネットワークの管理セクションの設定ミスを利用してモデムにリモートアクセスしたことを確認している。サンタマルタ氏によると、このことは、攻撃者が悪意のあるファームウェア・アップデートを端末に展開した可能性が高いことを示唆している。

「攻撃者は、正規の制御プロトコルを悪用してコマンドを出すために、地上局を侵害または偽装することに成功し、端末に悪意のあるファームウェア・アップデートを展開した可能性が高い」と同氏はこの攻撃の分析で述べている。

Viasatはウクライナ軍に衛星通信サービスを提供していることから、今回のサイバー攻撃は、ロシアの侵攻初期にウクライナ全域の通信を妨害しようとした可能性があるとみられている。

「私たちは現在、これが意図的で、それ自体独立した、外部要因によるサイバー事案であると考えています」とViasatの広報担当者であるChris Phillips(クリス・フィリップス)氏は話す。「Viasatによる継続的な、そして現在も続く対応により、KA-SATネットワークは安定しました」と同氏は述べ、フランス宇宙司令部のMichel Friedling(ミシェル・フリードリング)司令官が、この事件の結果 Viasatの顧客端末が「永久に使用できない」状態になったとのツイートに反論した。

「Viasatは、この事案で影響を受けた欧州の固定ブロードバンドユーザーへのサービスを再開するために、販売代理店と積極的に協力しています。私たちは重要なインフラと人道支援に重点を置いています」とフィリップス氏は付け加えた。「私たちは大きな前進を続けており、複数の解決作業が完了し、他の作業も進行中です」。

米政府の勧告によると、SATCOMネットワークを標的とした同様の攻撃のリスクが高まっているため、米国の組織は「悪意のあるサイバー活動の兆候を報告し共有するための閾値を大幅に下げる」べきだという。

画像クレジット:Al Drago / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi)a

一般向け製品の技術的優位性が大国間競争に直結、シリコンバレーは原点に立ち返る

TechCrunch Global Affairs Projectは、テクノロジー部門と世界政治のますます複雑になっている関係を検証する。

国家間で繰り広げられる飽くなき競争は、グローバル化とともに加速している。冷戦時代、米国とソ連はイデオロギーや軍事面での競争こそしていたものの、消費財をめぐる競争をすることはなかった。米国人はソ連製のトースターに興味がなかったのである。

現在ではその境界線が曖昧になり、各国は経済全体や武力などあらゆる領域において優位性を求めて戦っている。消費者向け製品や企業向け製品の技術的優位性は、空、陸、海、宇宙、サイバーをめぐる大国間競争に直結しているのである。

スタートアップの創業者やエンジニアたちも、この戦いにおける自身の役割を認識するようになっている。彼らはジョージ・W・ブッシュのような好戦的愛国主義者ではなく、自由民主主義を支持し、最前線にいる人々が仕事をするための最良のツールを手に入れられるようにしたいと考えているのである。

これは、ベトナム戦争へのプロテストに端を発したベイエリアの反戦感情が、アフガニスタン戦争やイラク戦争へのプロテストにまで発展した過去数十年とは異なる大きな変化である。ここ数年、国家安全保障関連の契約に反対する抗議活動が目立っていたが、現在では米国の国土や同盟国を敵から守るために防衛技術を開拓するという、シリコンバレー本来の文化が戻りつつある。特に中国の台頭に立ち向かうことが、偏ったワシントンの中で数少ない超党派的な立場になっていることもあり、防衛技術に関しては、国防総省や同盟国とだけ仕事をしたいと考える人が増えているのである。

防衛技術に携わろうとしているエンジニアにとっては、あらゆる分野において課題とチャンスが存在する。空中分野では、中国が極超音速ミサイルの実験に成功したと言われているが、情報機関の予測によると米国がこの技術を手に入れるのはまだ何年も先のことだと考えられている。極超音速ミサイルの脅威的な移動速度に加え、センサーによる探知が不可能であることから、現在の米国の防空システムの多くはなす術を失ってしまうだろう。

まったく新しい空中の脅威も出現している。安価で暴力的なドローンの群れは、人間が操作することなく迅速に展開することが可能だ。米国のFrank McKenzie(フランク・マッケンジー)将軍は最近、倉庫型小売店にちなんでこういったドローンを「コストコ・ドローン」と呼んでいるが、わずかな防衛予算しか持たない国でさえも、武装した米軍を圧倒することができるようになるだろう。

同様に海上でも、何千人もの船員が乗船する高価な大型空母から、小型で安価な自律型の船舶へと移行している。どの政府(または非国家主体)でも、重要な海上通商航路を簡単に攻撃することができ、防御は非常に困難になっている。また、海の底には世界経済の大部分を担っている海底インターネットケーブルが存在し、敵はそれを攻撃する能力を日々確実に高めつつある。

宇宙空間では、ロシアが数週間前に個々の衛星を破壊する直撃型の対衛星兵器の実験を行っている。このような攻撃を受ければGPSや全世界の通信(およびそれに依存する商業、輸送、物流)が壊滅的な打撃を受けるだけでなく、地球近傍の宇宙空間の大部分が破片によって人工衛星を使用できなくなる可能性がある。こういった兵器は検出が難しく、また既存の防衛技術では阻止することが困難になっている。

最後に、サイバー領域では過去10年間にわたってサイバーセキュリティ分野に何百億ドル(何兆円)もの資金が投入されてきたにもかかわらず、大規模なサービス妨害や情報流出を行う身代金要求やスパイ行為に対して、企業や政府は非常に脆弱な状態を改善できないでいる。SolarWinds(ソーラーウインズ)の大規模なハッキング事件から1年が経過したが、国家主導のサイバー戦争を防止・防衛する方法はまったく確立されていない。

こういった領域の課題すべてが未解決であり、この問題に立ち向かわなければ、米国は経済的にも政治的にも軍事的にも莫大な損失を被ることになるだろう。

幸運にも、複雑で困難な課題こそが、一流のエンジニアやスタートアップの創業者たちが取り組みたいと感じる問題なのである。米国の防衛力が敵の挑戦に対応できていないという証拠が次から次へと出てきているにもかかわらず、ワシントンの官僚たちがいつも通りの仕事を続けていることに対しては、文民の防衛担当高官からも批判の声が上がっている。

今日の防衛世界では、敵というのは我々自身のことである。スタートアップは今、国防総省の時代遅れの調達システムに阻まれている。我々はこの官僚主義を即座に回避し、最高の技術ではなく最高のロビイストを持つ、凝り固まった独占企業や寡占企業に打ち勝つ必要がある。つまり国内の大手防衛関連企業として知られる巨大な「プライム」を排除しなければないのである。今では動きが鈍く、まったく競争力のない選手たちを、かつては偉大だったからと言って米国を代表してオリンピックに参加させるようなことはない。確実に負けるからである。それなのになぜ我々は、防衛という重要な分野でこのようなことが起きているのを黙って見過ごしているのだろうか。

米国防総省は、スタートアップを巻き込むためのさまざまなプログラムを導入している。こういったプログラムの意図は良いのだが、ポイントがずれている。国防総省はこれまでの調達方法を一新し、現在の敵が実際に使用している武器に合わせた防衛力を再構築する必要がある。1機1億ドル(約115億円)以上もするF-35統合打撃戦闘機が「コストコ・ドローン」に打ち負かされる世界だ。米国の長年にわたる防衛面での優位性が、各国に非対称的な革新をもたらし、今では彼らが先を行っているのである。

幸いなことに、非対称な競争というのはシリコンバレーやスタートアップの創業者たちが日々行っていることである。豊富な野心と限られた予算を持つ彼らは、少ない資源でより多くのことを行うという方法を繰り返している。凝り固まった既存企業に立ち向かい、その弱点を見極め、それを容赦なく利用して競争上の優位性を生み出すのが彼らの仕事である。我々は、米国の防衛を強化するための技術、ノウハウ、人材をすでに有しており、あとは国防総省がやる気を起こし、最も競争力のある米国のスタートアップに積極的に大型契約を発注するようになればいいのである。

最も重要なのは国防総省の変革だが、米国以外の各国にも自由民主主義国を防衛する方法はある。ヨーロッパには同大陸の防衛に応用できる才能と技術が非常に豊富に存在する。しかし欧州の防衛システムは、技術的には「バベルの塔」であり、相互運用性に大きな課題を抱えている。次世代技術のために防衛基準を合理化することができれば、米国だけでなく多くの同盟国にも利益をもたらすことができるだろう。

今日の米国は、競争優位性において近年稀に見るほど大きな課題に直面しており、武力のあらゆる領域と経済分野で優位性が損なわれている。敵はこれまで以上に激しく弱点を突き、それは悪化をたどる一方だ。しかし、米国の価値観と影響力の核心には、新しいアイデア、新しい人々、新しい機会に対する開放性という巨大なソフトパワーがある。中国やロシアのような敵対国の権威主義に対抗し、米国の開放的な価値観を何としても守らなければならない。他のすべてのセクターが今後も安心して米国を頼りにするためにも、シリコンバレーが取り掛かるべき次なるセクターは、防衛技術でなければならないのである。

編集部注:本稿の執筆者Josh Wolfe(ジョシュ・ウルフ)は、マルチステージのベンチャーキャピタルであるLux Capitalのマネージングパートナー兼共同設立者で、宇宙や先端製造からバイオテクノロジーや防衛に至るディープテック企業への投資を行っている。

画像クレジット:Patrick Nouhailler / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Josh Wolfe、翻訳:Dragonfly)

ペンタゴンとシリコンバレーのパートナーシップを再起動

TechCrunch Global Affairs Projectは、テクノロジー部門と世界政治でますます複雑になる関係を検証した。

2021年11月15日、ロシアは警告なしに対衛星ミサイルを地球低軌道に発射し、自国の衛星を破壊した。この際に生じた破片やデブリは、国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士を危険にさらしただけでなく、GPSや電力網など、地球上の重要なインフラを支える衛星網に、今後何年にもわたって深刻なダメージを与える可能性がある。

その1カ月前には、中国が地球を1周する極超音速ミサイルを発射したが、これは現在の技術で防御することは不可能だ。

これらの出来事は警鐘である。米国の技術的リーダーシップは保証されておらず、新たな技術の進歩が我が国の安全保障に対する新たな脅威を生み出す現在、私たちがパートナーや同盟国とともに発展させて維持してきたグローバルスタンダードは書き換えられつつある。

しかしながら、これらの新たな脅威は決して乗り越えられないものではない。むしろ、人工知能、宇宙、サイバーセキュリティ、自律システムといった新たな技術分野の最前線で活躍する起業家や投資家にとっては、これらの出来事は明らかに呼び水となるはずである。

非対称戦争(双方の軍事力、戦略や戦術が大きく異なる戦争)やサイバー戦争がもたらす新たな課題に対応するためには、60年以上前にシリコンバレーや現在の我が国の技術的リーダーシップを構築した際と同じように、米国国防総省、学界、産業界が協力して取り組む必要がある。インターネットや半導体が生まれ、ヒトゲノムのマッピングも実現したのも政府の投資によるものだ。

筆者は商業技術分野で30年を過ごしたのちに、過去50年にわたる米国の経済力と世界的なリーダーシップの基盤となった関係を再構築するために国防総省に移籍した。

国防総省とシリコンバレーの関係はなぜ復活させる必要があるのか?

国防総省は、戦争の性質の変化に対応するだけでなく、必要なビジネスプロセスの改革を生み出すテクノロジーの近代化策を積極的に推進している。例えば、商業宇宙では、ユビキタスなインターネットアクセスを提供するための小型衛星や、さまざまな(宇宙の)エリアに積荷を届けるための迅速な打ち上げ能力の開発がすでに行われていて、自動運転車は交通手段を提供し、ドローンの大群が石油パイプラインの監視や商業ビル、インフラの検査を行っている。

これらの革新技術はすべて2つの側面をもつ技術で、軍事的な用途に使用できる。このソリューションをネットワーク化するには、費用対効果が高く、安全で拡張性のあるグローバルなクラウドオプションが必要である。企業と同様、軍も膨大なデータに含まれるインサイトを活用し、AIや機械学習で予測能力を実現し、より迅速で優れた意思決定を行う必要がある。

防衛力の改善には、同様にビジネスプロセスの改革も重要である。国防総省のビジネスプロセスのほとんどは1960年代に確立され、戦車や艦船、飛行機などの大型兵器プラットフォームの構築に重点が置かれていた。商業部門が急速に進歩したことで、軍の技術的優位性は高まっているが、国防総省は、継続的に購入している大型兵器プラットフォームを補完する多くの技術を購入する必要がある。

これからの10年が、技術の優位性をめぐって各国が激しい競争を繰り広げる時代となるのは確実で、多くの民間企業にとっては、国防総省と協力して複雑な問題に取り組むことのできる初めての機会となるはずだ。

例えば、アセット(資産)を空、宇宙、海中、陸上、サイバー空間に持つ国家安全保障機構は、事実上、世界最大のセンサーの集合体である。しかし、これまでのところ、これらのセンサーはシームレスに統合されるようには設計されておらず、通常はサイロ状に構築・運用されているので、アップデートや、共通の運用計画の作成は難しい。宇宙にモノのインターネット(IoT)、すなわちグローバルなセンサーネットワークを構築することで、リアルタイムの状況把握、作戦決定を支える復元力のある通信インフラ、そして小型かつ多数で機敏な海・陸・空・宇宙システムの自律部隊の基盤が提供される。

これらのシステムは膨大な量のデータを生成するので、ストレージ、管理、分析の強化が必要である。技術の近代化とは、情報を収集、分析、理解し、国家安全保障のためにより良い意思決定を行うためのさらに優れたツールを構築することを意味する。また、脆弱性に対するサイバー攻撃からシステムを保護する高度な手段も必要である。そして、よりクリーンなエネルギーを利用してこれらの新機能を物理的に実現する必要がある。

これらのテクノロジーを開発しているのは民間企業だが、国防総省は、国家安全保障を強化し、(国家としての)商業的な成功を促進するために、これらを迅速に評価し、効率的に調達する能力を高めなければならない。このビジョンを実行すれば、これまで以上に多くの企業が、21世紀の国家安全保障を強化するための一世一代の経済的機会に参加できるようになる。

国防イノベーションユニット:国防総省におけるスタートアップ

アッシュ・カーター国防長官(当時)は、最高の技術を軍に提供するためには、制度の壁を取り払い、商業部門からフレッシュなアイデア、技術、方法論を取り込む必要があると認識していた。2015年、彼はこのつながりを再構築するために「Defense Innovation Unit(国防イノベーションユニット、DIU)」の開設を発表した。DIUは、革新的で迅速な契約メカニズムを実現し、国防総省とのビジネスをより手軽に、(民間企業にとって)より望ましく、より収益性の高いものにするために設計されたものである。

すでにDIUでは、ハードウェアやソフトウェアのライフサイクルにおける重要なポイントでの継続的な投資や、試験施設への継続的なアクセスを提供し、民間企業に防衛分野でも成長するための道筋を示すといったコラボレーションがいかに強力であるかを証明している。このコラボレーションでは、製品の開発の加速、企業の成長の促進、そして投資家に新しい市場へのアクセスを提供することが可能である。

しかし、主要技術における米国の優位性を維持するには、60年来の買収システムを変える必要がある。現在では、国防総省は、多くの技術において、先駆者でも主要投資家でもマーケットメーカーでもない。国防上の問題を解決するためには、国防総省は、自らが開発したものではない商業技術を適応・統合するファーストフォロワーになる必要がある。DIUは次の3つの分野での活動を提唱してこの目標に取り組んでいる。

  • 防衛仕様の要求に縛られた軍用のカスタムソリューションを作るのではなく、利用可能な商用ソリューションで直接問題を解決する
  • 買収を合理化し、商業的なスピードをもって機会を拡大する
  • 予算編成プロセスに柔軟性を持たせる。現在、防衛のために1ドルの支出を計画して実際に支出するまでに、最長で3年かかっている

一見当たり前のようにも思える3つの分野だが、国防計画や議会の承認など、長年にわたって確立されてきたプロセスを覆すのは容易ではない。また、(民間企業には)防衛以外にも大きな市場があるので、国家安全保障に関わる仕事に対応するサポートテクノロジー企業には、健全なビジネスケースを提示できるようにすることも重要だ。

国防総省だけ、あるいは一部の民間企業だけの参加では、変化のペースを速め、障壁を取り除くことはできない。企業、大学、政府の3者が積極的に関与し、さまざまなアイデアやアプローチを提供して、モダナイゼーションのペースを加速させる必要がある。人材の交換、製品の獲得、重要な問題についてのオープンなコミュニケーションなど、国防総省と民間企業のつながりを再構築することは非常に重要である。

国防総省のリーダーたちは、米国史上かつてない技術テクノロジーの進化の時代に生きていることを認識している。DIUは、商業的な技術と方法論を採り入れて軍の重要インフラを近代化する、という他にはない重要な役割を担っている。昔、シリコンバレーが誕生したときのように、私たちは協力して、国家の安全で豊かな未来を守ることができるはずだ。

編集部注:本稿の執筆者Mike Brown(マイク・ブラウン)は、Defense Innovation Unit(DIU)のディレクター。DIU以前は、Symantec CorporationのCEO、Quantum Corporationの会長兼CEOを務めていた。また、国防総省のホワイトハウス大統領イノベーションフェローとして2年間勤務し、中国の米国ベンチャーエコシステムへの参加に関する国防総省の研究を共同執筆している。本稿で述べられている見解は著者のものであり、国防総省または米国政府の公式な政策や立場を反映するものではない。

画像クレジット:Jeremy Christensen / Getty Images

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(文:Mike Brown、翻訳:Dragonfly)