アマゾンのQ&Aプラットフォーム「Alexa Answers」を米国で開始

Amazon(アマゾン)は昨年12月、Alexa(アレクサ)の質問に答える能力を高めることを目的に、クラウドソーシングによるQ&Aプラットフォームのベータ版をローンチした。Alexa Answers(アレクサ・アンサーズ)と呼ばれるこの機能の一般向けサービスが米国で開始された。アマゾンによると、この機能は招待された人だけが参加できた初期のコミュニティーで大変に評判がよく、彼らはその後も引き続き何十万件という回答を登録して貢献し、その回答はAlexaのユーザーの間で何百万回とシェアされている。

アマゾンは、この回答と通常のAlexaの応対とを区別するために、答の内容の責任をアマゾンの顧客に持たせている。

一般公開に際してアマゾンが説明したところによると、「バーバラ・ブッシュはどこに埋葬されている?」とか「ロード・オブ・ザ・リングの作曲者は?」とか「コルクは何からできている?」とか「コウモリは冬はどこにいる?」といった、これまでAlexaには対処できなかった質問の答が数千件用意されているという。

Bing(ビング)などの情報源と統合されていることを考えれば、Alexaにはすでにそうした質問に答える能力はあったはずだが、対応できる分野に限りがあった。

上記のような一般的な質問に答えられる能力は、現在はGoogleアシスタントのひとつの強みになっている。ウェブにあふれるデータに基づいて、長年にわたりグーグルが構築してきたナレッジグラフのお陰だ。

それに対して、回答のデータベースを急いで構築するためにアマゾンが下した決定は、クラウドソーシングを利用し、数多くの潜在的な難題、とりわけ悪用や正確性の問題に対して自らをオープンにするというものだった。

Yahoo Answers(ヤフー・アンサーズ)やQuora(クオーラ)などのクラウドソーシングQ&Aプラットフォームを使ったことのある方なら、高い支持を得た答がかならずしもベストではなく、正しいとも限らないことをよくご存知だろう。ときにはいい加減なものもある。さらに、報酬制度につられて参加した人の場合は、トップ貢献者に指定されたいがために、とにかく回答を乱発しようとするかも知れない。そうした人たち全員が、自ら探し出した質問に対する最善の回答者であるとは限らないのだ。

アマゾンは、そのような問題には、不適切であったり人を不快にさせるような回答を自動フィルタリングによって選別するプラットフォームで対処しようとしている。さらに、コミュニティーのプラットフォームでベストと評価された回答がAlexaでシェアされ、質問に答えた人にはポイントが贈られる。

これまで、このコミュニティーは招待された少数の人だけで構成される限られた世界だった。

それが今、米国アマゾンにアカウントを持つすべての人が貢献できるようになった。用意された質問のリストから、最も多く質問されたや最新などのフィルターで絞り込むか、トピックで分類された中から質問を選ぶ。回答を書くとポイントが与えられ、週ごと、月ごとのリーダーボードに掲載される。さらに、質問に答えた数、アレクサのユーザー間でシェアされた回数などに基づき、バッジが授与される。

「この機能は、Alexaの能力向上のために継続的に行っているさまざまな努力の中の、ひとつの例に過ぎません」とアマゾンの広報担当者は話している。「これまでと同様、私たちはお客様からのフィードバックに基づいて、体験を進化させていく所存です」

今のところ、この機能で不愉快な思いをしたという報告はないが、まだそれほど広まっているわけでもない。また、炎上目的でオンラインコミュニティーを混乱に陥れようとする輩を排除できる十分な力が、アマゾンにあるか否かも不明だ。

クラウドソーシング自身が悪いわけではないが、たとえばWikipedia(ウィキペディア)もよく承知しているように、そこはしっかりとした監視を必要とする分野だ。Wikipediaの場合、同サイトの内容のほとんどを精鋭グループが検証するという形に帰結した。Alexa Answersの場合は、リーダーボードでコミュニティーの参加者を競争させているため、そのような自警システムの導入は難しい。こうしたゲーミフィケーションからは、協調や助け合いが生まれることはあまり期待できない。

よりよいモデルとして、Reddit(レディット)の仮想通貨や段階的な報酬精度、そして、強力なコミュニティーのリーダーがトピックごとの節度を維持するという方法が考えられる。しかし、コミュニティーを有機的に育て上げるには時間と労力を必要とする。今の音声アシスタントは、機能ごとに互いに張り合う、いわば短距離走の状態だ。マラソンではない。

Alexa Answersは、alexaanswers.amazon.com/aboutで公開されている(米国のアマゾンのアカウントが必要)。

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(翻訳:金井哲夫)