コンピュータビジョンチームに合成データを提供するDatagenが約61.7億円のシリーズB資金調達を実施

イスラエルで設立されたDatagen(データジェン)は、コンピュータビジョン(CV)チームのために合成データソリューションを提供するスタートアップ企業だ。同社はその事業の成長を促進するため、5000万ドル(約61億7000万円)のシリーズBラウンドを実施し、これまでの資金調達総額が7000万ドル(約86億4000万円)を超えたと発表した。今回のラウンドは新たに投資家となったScale Venture Partners(スケール・ベンチャー・パートナーズ)が主導し、パートナーのAndy Vitus(アンディ・ヴィータス)氏がDatagenの取締役に就任した。

テルアビブとニューヨークにオフィスを構えるDatagenは「実世界の環境をシミュレートすることによってわずかなコストで機械学習モデルを迅速に訓練し、AIの進歩を推進する完全なCVスタックを構築している」と、ヴィータス氏は述べている。このパロアルトに拠点を置くVCは「これはCVアプリケーションの開発とテストの方法を根本的に変えるだろう」と予測する。

11カ月前にDatagenが1850万ドル(約22億8000万円)を調達したシリーズAラウンドを支援した投資家たちも、この新たなラウンドに参加した。その中にはVCのTLV Partners(TLVパートナーズ)とSpider Capital(スパイダー・キャピタル)が含まれる。シリーズAを主導したViola Ventures(ヴィオラ・ベンチャーズ)も、今回はその成長部門であるViola Growth(ヴィオラ・グロース)を通じて参加した。さらに、コンピューター科学者のMichael J. Black(マイケル・J・ブラック)氏や、Trevor Darrell(トレバー・ダレル)氏、NVIDIA(エヌビディア)のAI担当ディレクターであるGal Chechik(ガル・チェチック)氏、Kaggle(カグル)のAnthony Goldbloom(アンソニー・ゴールドブルーム)CEOなど、AIやデータ分野の高名な人物も倍賭けを決めている。

投資家の名簿はもっと長くなる可能性があると、DatagenのOfir Zuk(オフィール・ズク)CEOはTechCrunchに語った。このラウンドは数週間前に終了したが、同スタートアップは、確認が取れていない数名の名前とともに「クローズを延期した少しの余地」を残しているという。

シリーズA以降のDatagenの主なマイルストーンの1つは、ターゲットユーザーが初期のフィードバックで要求したセルフサービス・プラットフォームの構築だったと、ズク氏は語る。これによってDatagenは、顧客がCVアプリケーションのトレーニングに必要なビジュアルデータを生成するための、より拡張性の高い方法を提供することができるようになった。

Datagenのソリューションは、フォーチュン100社や「ビッグテック」企業を含む、さまざまな組織内のCVチームや機械学習エンジニアに使用されている。その用途は多岐にわたるが、中でも特に加速している分野が4つあるとズク氏はいう。AR/VR/メタバース、車内および自動車全般、スマート会議、ホームセキュリティだ。

車内への応用は、Datagenが行っていることをより良く理解するための好例といえるだろう。これはつまり、乗員がシートベルトを着用しているかどうかなど、車内の状況を意味する。乗員やクルマの形状はさまざまであるため、そこでAIが活躍するわけだ。最初に現実世界から作成した3Dモーションキャプチャをベースに、Datagenの顧客は、例えばエアバッグの展開する位置を正確に決めるためなどに必要な膨大なデータを生成することができる。

Datagenは、ビジュアルデータに特化しているものの、特定の分野に縛られているわけではない。もし、小売業やロボット工学のユースケースが軌道に乗れば、倉庫のモーションキャプチャなど、特定の現実世界のデータを収集するだけでよい。その上のアルゴリズムや技術は、分野にとらわれないとズク氏はいう。

20年以上の歴史を持つ企業向けVCのScale Venture Partnersは、すでに自動車運転シミュレーション・プラットフォームのCognata(コグナタ)に投資しており、シミュレーションデータの分野に関しては強気だ。ズク氏も同様で「合成データは現実のデータを凌駕しつつある」という言葉でまとめた。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Anna Heim、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Intuition Roboticsの高齢者ケアコンパニオンロボット「ElliQ」がいよいよ発売開始

鋭いTechCrunch読者なら、我々がIntuition Robotics(イントゥイション・ロボティクス)を5年前から取材していることにすぐに気がつくだろう。遡ること2017年2月の、高齢者ケアロボットのクラウドファンディングキャンペーンからである。それ以来の取材のほとんどは、イスラエルを拠点とする同社がさまざまなラウンドでさらに多くの資金を調達していることについてで、最も重要な質問である「いつ」に答えることはなかった。具体的には、ElliQ(エリキュー)ロボットはいつ販売されるのだろうか?

ようやくプライムタイムの準備が整ったようだ。ロボットを作るのは時間がかかるもので、同社は数年かけてベータテストを行ってきた。Intuitionは、ElliQを米国時間3月15日より正式に販売することを、製品サイトを通じて発表した。2022年のロボット業界がたいていそうであるように、このデバイスはサブスクリプションプラン、いわばRaaS(Robotics as a Service)を通じて提供される。年間契約の場合、初期費用250ドル(約2万9570円)、月額30ドル(約3550円)で利用できる。

高齢者ケアは、日本では長い間ロボティクスの中心的存在だったが、他の地域ではなかなか足場を固めることができなかった。米国では、Labrador Systems(ラブラドールシステムズ)をはじめとするスタートアップが参入しており、Amazon(アマゾン)やGoogle(グーグル)といったスマートホーム機器メーカーも関連機能を自社システムに組み込み始めている。

画像クレジット:Intuition Robotics

ElliQは、惜しまれつつも生産終了したKuri(クリ)やJibo(ジーボ)のような、高齢者ユーザー向けに特化した製品だ。Labradorのように実際に雑用を手伝うのとは異なり、シニア層の参加を持続させるように設計されている。同社によると、平均的なユーザーは1日に20回、合わせて20分ほどこの製品と関わりを持つそうだ。つまり、テレビのようなエンゲージメントレベルではなく、もっと頻繁に、短い時間でチェックインできるように設計されているといえる。

共同設立者でありCEOのDor Skuler(ドール・スクーラー)氏はリリースでこう述べている。「長年の努力の末、ついにこの日がやってきました。パンデミックの間中、私たちは孤独が高齢者層にもたらす破壊的な影響を目の当たりにしました。同時に、ElliQがベータ版ユーザーに信じられないほど役立ち、笑顔をもたらすのも目の当たりにしてきました」。

エクササイズ、Mayo Clinic(メイヨー・クリニック)からの健康情報、家族とのチェックイン、Uber Healthによる交通手段の提供など、デバイスを通じて利用できるコンテンツは多岐にわたる。つまり、普段は1人暮らしでも大丈夫なくらい自立しているが、もう少し手助け・サポートが必要な人のために、サポートとエンゲージメントという2つの要素が用意されているのだ。

画像クレジット:Intuition Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Den Nakano)

ESGgoは企業のESG(環境、社会、ガバナンス)測定・分析を容易にするツールを提供

最近では、いくら倫理的に調達され、地元で生産され、持続的に育てられた魚の肉でも、ESG(環境・社会・ガバナンス)目標を達成せずに、企業の取締役会や年次報告書で振る舞うことはできない。しかし、目標を掲げて宣伝することは簡単だが、その目標に対して企業がどのような成果を上げているかを、実際に測定し、追跡することはずっと難しい。熱い空気と空約束に疲れた企業が、設定された目標を実際に実行することを容易にするために、ESGgoは登場した。同社はこのような状況を変えるためのソフトウェア群を開発し、700万ドル(約8億1000万円)を調達してランニングシューズを履き、本格的な活動を始めたところだ。

「ターゲットとしている顧客は企業です。基本的にはすでに株式を公開している会社や、あるいはこれから公開しようと考えている会社です」と、ESGgoのCEOで共同設立者のOrly Glick(オーリー・グリック)氏は説明する。

製品自体は、データ収集に焦点を当てたものだ。ESGgoは最初に話を聞いた50社から、そのために利用できるツールがないことを学んだからだ。現在、ほとんどのESGトラッキングは、スプレッドシートや共同のデータベースなど、非常に内密なシステムで行われていることがわかった。もちろん、外部の格付け機関は独自のツールを持っているかもしれないが、社内での使用には役に立たない。

「今のところ、ESGは口だけで行動がともわないという見方もある。ESGの重要性を説く経営者は何百人もいるが、いまだにESGのパフォーマンスを明確に理解するための普遍的なものさしがない」と、Bruce Dahlgren(ブルース・ダールグレン)氏は、2022年初めにTechCrunch+の記事の中で書いている。「それがなければ、何が正しくて何が間違っているのか、何が近視眼的な投資で何が有望な投資なのかを判断することは難しい」。

事業全体のESGに与える影響を完全に把握するために、GRIスタンダードやSASBスタンダードでは、組織全体で数百のデータポイントを追跡することを推奨している。データ収集は、だから特に重要であり、さまざまなデータソースから情報を収集し、照合、分析、報告することが必要だ。このデータを収集し、それを企業の目標に照らし合わせて測定することが、ESGgoの活動する領域となる。

「データ収集の人的側面、つまり、部門を越えて人の家をノックするところから情報を求めることを始めなければならないのは、楽しいことではありません。そこで、私たちのツールには、データそのものに加え、ワークフローを管理する機能も搭載しました。最終的に、私たちはすべてのデータの分析を行い、企業のESGの現状と過去のパフォーマンスを比較します。ギャップ分析や業界とのベンチマーキングを行うことで、同業他社や競合他社に対し、どのようにすればより良くなるかを確認できます。特に後者に関しては、AIによる最適化を行います」。

ESGgoは、イスラエルのベンチャー投資会社であるGlilot Capital(グリオット・キャピタル)の主導で、700万ドルの資金を非公開の評価額で調達した。

ESGgoアプリのダッシュボードのスクリーンショット

「Glilotはイスラエルでトップクラスのファンドであるだけでなく、優秀でグローバルなファンドです。運用経験、しかも厳格な運用経験を持つ、本当に剛毅な人々です。女性を登用し、驚異的な価値創造チームを擁しています」と、グリック氏は語る。「また、シリコンバレーから本当に非常に興味深いエンジェル投資家や、気候変動を本当に案じているトップテック企業も参加してくれました」。

現在、イスラエルとカリフォルニアにまたがる10人ほどのチームを率いているグリック氏は、Ido Green(イド・グリーン)氏と共同でこの会社を設立した。グリーン氏は、Google(グーグル)、 Netflix(ネットフリックス)、そして直近ではFacebook(フェイスブック)で、シニアレベルのエンジニアとして経験を積んできた人物だ。

「私たちは、ESGgoの初期のサポーターになれたことに興奮しています。オーリーはESG報告を改善するテクノロジーの使用についてすばらしい実績とビジョンを持っています。持続可能性と社会的責任への関心が、企業や投資家がリスクと機会を評価する方法を変えつつある今は、この破壊的ソリューションにとって絶好の時期です」と、Glilot Capitalの共同設立者兼マネージングパートナーであるKobi Samboursky(コビ・サンボアスキー)氏は述べている。「企業がESG姿勢を改善できるように支援することは、これまで以上に重要であり、オーリーは必要な変化を起こすのに絶好の人材です」。

今回調達したシード資金で、ESGgoはまず、イスラエルを拠点とするエンジニアリングチームから、雇用を加速させ、提供する製品の開発をさらに推進していくという。

画像クレジット:ESGgo

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

世界最大級の食品会社が新製品を開発するとき、まず相談するAIデータ分析「Tastewise」

Tastewiseの共同設立者アロン・チェン氏とエイエル・ガオン氏(画像クレジット:Hadar Berl)

食品を市場に出す適切な時期を調査することは、従来はアンケートやフォーカスグループを通じて行われてきたが、Tastewise(テイストワイズ)はこれをテクノロジーでより良く実現できると考えている。

イスラエルに拠点を置く同社は、人工知能(AI)によるデータ分析を開発し、食品ブランドが次のヘルシー、持続可能でおいしい製品について、製品開発、マーケティング、小売販売に関するよりスマートな意思決定を行えるよう支援している。また、世界中の100万以上のレストランをモニタリングし、食品ブランドとその食品を試したがっている人々を結びつけている。

Tastewiseは過去5年間で、Nestlé(ネスレ)、PepsiCo(ペプシコ)、Kraft Heinz(クラフトハインツ)、Campbell’s(キャンベル)、JustEgg(ジャストエッグ)など、トップクラスの食品・飲料メーカーや新進気鋭のフードテック系スタートアップからなる顧客ベースを持つまでに成長した。

そしてこのたび同社は、新たにシリーズAで1700万ドル(約19億6400万円)の資金を確保した。Disruptiveがこのラウンドをリードし、既存投資家であるPeakBridgeとPICO Venture Partnersに加わった。今回の資金調達により、Tastewiseの累計調達額は2150万ドル(約24億8400万円)に達した。

Tastewiseの共同創業者兼CEOであるAlon Chen(アロン・チェン)氏は、12歳のときから独学でコードを書き始めたエンジニアで、5年前に母親のシャバット(安息日)のディナーから会社のアイデアを得た後、Google(グーグル)でのキャリアを捨てたという。

「母はすばらしいシャバットディナーを作るのですが、私たち家族にその週の食事のニーズ(好みやアレルギー、栄養ニーズなど)を聞いてくるようになったのです」とチェン氏。「共同創業者のEyal Gaon(エイエル・ガオン)とともに、消費者の食生活のニーズが以前よりとても早く変化していることに気づかされました。21世紀になっても、毎年発売される3万個の新商品のうち、9割が失敗しているのです。画一的なアプローチは、もはや不可能なのです」。

同氏は、最も革新的なフードテック企業でさえ、いまだに時代遅れの小売データに頼って商品戦略を考えており、正しいデータから始めなければ、間違った答えが返ってくることを説明した。

そこでチェン氏とガオン氏は、食品・飲料企業がより健康的な食品、新しいフレーバー、植物由来のバリエーションなどで10兆ドル(約1155兆円)規模の業界をディスラプトし、新製品の販売と採用を加速させる方法でそれを実現できるよう、データ専用のプラットフォーム構築に乗り出した。

2017年にスタートして以来、2020年と2021年に増資を行ったTastewiseは無駄のない運営を行っているとチェン氏はいう。同社は2020年から2021年にかけて売上を3倍に拡大し、現在は米国やイギリスだけでなく、インド、オーストラリア、ドイツ、カナダ、フランスへとデータと人材の拡充を進めている。

米国とイスラエルではすでに従業員数を2倍に増やし、食品・飲料ブランド上位100社のうち15%近くと、数十社のフードテックスタートアップと協業しているという。

「Tastewiseを始めた当初、フードテックはまだ存在しておらず、食品・飲料の予測分析について投資家と話を始めたとき、これが未来だと話していました」とチェン氏は語る。「私たちは、世界がデータを取得し、食品業界を改善し、よりヘルシーでおいしいものを作る手助けをしなければなりません」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Den Nakano)

LinkedInがイスラエルのウェブ分析Oribiを92〜104億円で買収、マーケティングテクノロジーの拡充を図る

専門分野に関して人々とつながり、仕事を探したい人のためのソーシャルネットワークで、8億1000万人以上のユーザーがいるMicrosoft(マイクロソフト)傘下のLinkedIn(リンクトイン)は、独自プラットフォーム上で長年、マーケティングや広告のビジネスをしている。同社は米国時間2月28日、インターネットのさらに幅広い範囲にわたる分析やインサイトを提供したいという同社の野望を示していると考えられる買収を発表した。LinkedInが買収したのは、マーケティングのアトリビューションテクノロジーを専門とするテルアビブのスタートアップ、Oribiだ。この買収により、LinkedInはイスラエルに初めてのオフィスを開設することになる。

買収を発表したブログ記事では条件は明らかにされていないが、情報筋によると買収額は8000万〜9000万ドル(約92億1600万〜103億6800万円)とのことで、他のメディアでもこの金額が報じられている。PitchBookのデータによると、OribiはSequoia、TLV Parnters、Ibexなどから2800万ドル(約32億2500万円)近くの資金を調達し、Google(グーグル)のローカルアクセラレーターとしても若干の資金を得ている。

この買収は2つの点で興味深い。1つめとして、これはLinkedInが同社の中で急速に成長している分野であるマーケティングと広告のサービスへの投資を続けていることの現れだ。最高プロダクト責任者のTomer Cohen(トマー・コーヘン)氏は米国時間2月28日のブログ記事で、マーケティングサービスの売上は対前年比で43%成長したと記している。しかしLinkedIn上では5700万社ほどの企業が「ブランドのページを作成」し、毎週2万4000件以上のバーチャルイベントが作成されていることを考えると、利用している企業にさらに機能とツールを提供すればさらなる成長の余地が大いにあることは明らかだ。ここ数年で、LinkedInはこの分野を拡大するための買収を1件しかしていない。その1件は、2019年Drawbridgeの買収だ。

そしてもう1つ、Oribiの買収はLinkedInのマーケティングに関する大きな変化をはっきりと示している。以前にTechCrunchでお伝えしたように、Oribiのミッションはウェブ分析を民主化することだ。つまり同社は、小規模な企業が簡単に独自の分析を構築、実行してマーケティング戦略の影響を測定できるようにすることを目指している。大企業ならそのためのチームがいるだろうが、小さい組織はリソース不足のためたいてい諦めざるを得ない。

Oribiの創業者でCEOのIris Shoor(アイリス・ショーアー)氏は以前にTechCrunchに対し「アナリティクス企業の多くは、ハイエンドを狙っています。もっぱら技術的なリソースや他とのインテグレーションに基づいたソリューションを提供しています。Mixpanels風、Heap Analytics風、Adobe Marketing Cloud風といったものです」と述べていた。

注目すべき点として、OribiはGoogle Analyticsなどと競合している。つまりLinkedIn(そしてこれに関連してMicrosoft)が、Googleの圧倒的なデジタル広告・マーケティングマシンに立ち向かっていくことにもなる。

米国時間2月28日にコーヘン氏は次のように記している。「Oribiのテクノロジーを我々のマーケティングソリューションプラットフォームに統合することで、お客様はさらに充実したキャンペーンのアトリビューションを利用して広告戦略のROIを最適化できるようになります。お客様は自動のタグとコードフリーのテクロノジーを活用して、ウェブサイトのコンバージョンを簡単に測定し効果的なオーディエンスを構築できます。しかもすべてプライバシーを最優先に設計されています」。

LinkedInはOribiの従業員が何人ジョインするかを明らかにしていない。ただし「創業者で経験豊かな起業家であるアイリス・ショーアー氏を含むOribiのチームの数人」がLinkedInにジョインして、LinkedInの新しいテルアビブオフィスで働くと記されている。

画像クレジット:LinkedIn China via Weibo

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Kaori Koyama)

不正なサードパーティアプリの発見を支援するAstrix Securityがステルスから登場

サードパーティアプリ統合のためのアクセス管理を提供するイスラエルのサイバーセキュリティスタートアップAstrix Security(アストリックス・セキュリティ)が1500万ドル(約17億円)の資金調達によりステルスから姿を現した。

このスタートアップは、イスラエルの有名な諜報部門8200部隊の元メンバーであるAlon Jackson(アロン・ジャクソン)CEOとIdan Gour(アイダン・グール)CTOが2021年に共同で創業した。組織が重要システムに接続されたサードパーティアプリの複雑なウェブを監視・管理できるようにする。

リモートワークへの、転じてクラウドベース環境への移行が広まった結果、組織が使用する統合アプリケーションの数は過去2年間で劇的に増加した。Astrixによると、企業は重要システムへのユーザーアクセスの管理にはほぼ対応しているものの、APIアクセスの管理に関しては大半の企業が不十分であり、サプライチェーン攻撃、データ流出、コンプライアンス侵害などにさらされ、脆弱性は増している。そこで同社は、完全な統合ライフサイクル管理を実現するプラットフォーム、Astrix Security(アストリックス・セキュリティ)を開発した。

「現在のソリューションは、採用したいアプリのセキュリティの状態を評価するセキュリティスコアを提示しています。NoName(ノーネーム)のような他のソリューションは、API セキュリティに着目しています。これは、あなたが開発し、他の人が利用するAPIに焦点を当てています」と、Astrix創業前にArgus(アルゴス)でR&D部門のトップを務めていたジャクソン氏はTechCrunchに述べた。「私たちは、Salesforce(セールスフォース)のCRMやGitHub(ギットハブ)の知的財産など、サードパーティを通じて行われる統合を調査します。これらのシステムはすべて、あなたが開発したわけではありませんが、あなたはそれらに対してAPIアクセスを有効にしているのです」。

Astrix Securityは、エンタープライズアプリケーションに接続するすべてのサードパーティのインベントリを即座に提供する。このような統合やローコード、ノーコードのワークフロー構成における変更や悪意のある異常を自動的に検出し、リアルタイムに修復を行う。

この技術があれば、2021年発生したCodeCovのハッキング事件は未然に防ぐことができたとジャクソン氏は主張する。同事件で攻撃者は、同社のソフトウェア監査ツールに侵入し、数百の顧客ネットワークへのアクセスを得た。

「この出来事は、まさに私たちが開発しているものが目指すところです。この開発者は、GitHubにある自分のコードレポジトリの上に、新しいサードパーティ接続を追加しただけなのです。彼はそれを削除しましたが、アクセスを取り消さなかったため、知的財産全体がダークウェブで販売されることになりました」とジャクソン氏は語った。

Astrix Securityはすでに、テクノロジー、ヘルステック、自動車などの分野にまたがる多くのグローバル企業顧客の手に渡っている。ジャクソン氏によると、Bessemer Venture PartnersとF2 Capitalがリードし、Venrockと20以上のサイバーセキュリティ・エンジェル投資家が参加した1500万ドルのシード投資を、現在20人のチームの拡大と、市場開拓強化に使う予定だという。

画像クレジット:Dmetsov / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

ML可観測性プラットフォームのAporiaが約28.8億円のシリーズA資金を調達

テルアビブに拠点を置くAporia(アポリア)は、企業がAIベースのサービスを監視・説明できるように支援するスタートアップ企業だ。同社は米国時間2月23日、Tiger Global(タイガー・グローバル)が主導する2500万ドル(約28億8000万円)のシリーズA資金調達ラウンドを実施したことを発表した。このラウンドには、新たに投資に加わったSamsung Next(サムスン・ネクスト)の他、以前の投資家であるTLV Partners(TLVパートナーズ)とVertex Ventures(ヴァーテックス・ベンチャーズ)も参加、同社の調達資金総額は3000万ドル(約34億6000万円)に達した。

2021年サービスを開始した当初は、オブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームであることに正面から取り組んでいた同社だが、それからチームはその網を少し広げ、フルスタックのML(機械学習)モニタリング・プラットフォームとなっていった。

「今のところ、私たちのソリューションには4つの柱があります」と、Aporiaの共同創業者兼CEOであるLiran Hason(リラン・ハソン)氏は説明する。「1つ目の柱は可視性、つまりダッシュボード機能のようなもので、予測値などを見ることができます。2つ目は、かなり新しいものですが、説明可能性です。すでに何人かのユーザーには使っていただいています。3つ目がモニタリング、そして4つ目が自動化ですが、これも新しいものです」。

自動化は、もちろん、どのような監視サービスにとっても、明白な次のステップである。ユーザーは普通、受け取ったアラートに対して、何らかのアクションを起こしたいと思うからだ。Aporiaは、すでにその監視サービスにドラッグアンドドロップツールを取り入れていたので、この機能もすぐに追加できた。この自動化機能を拡張して、より複雑なユーザーケースに対応できるようにしたいと、ハソン氏は言及している。

また、説明可能性も、顧客からのフィードバックを基に追加した機能だ。企業には規制当局から、自社のAIモデルが何を行っているかを説明できるように求める圧力が増している。Aporiaは、モデルがなぜそのような予測をするのか、また、さまざまな入力パラメータがどのように予測に寄与しているのかを、ユーザーが理解できるように支援する。

フルスタックなML可観測性プラットフォームになるというミッションは、顧客の心に響いているようだ。Aporiaによると、同社のサービスを利用する顧客の数は、直近の半年間だけで600%増加したという。現在はその顧客に、Lemonade(レモネード)やArmis(アーミス)などの企業が含まれている。

「Aporiaは起ち上げ以来、信じられないような成長を見せ、驚くべき勢いで、急速にMLの可観測性の分野におけるリーダーとなっています」と、Tiger GlobalのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・クルティウス)氏は述べている。「グローバル企業の経営幹部は、人工知能のメリットと、それが事実上すべての産業にどれほど影響を与えているかを理解していますが、リスクによって夜も眠れない状態になっています。Aporiaは、すべての組織が、AIの責任ある利用を保証するために求めるソリューションになると位置付けられます」。

画像クレジット:Aporia

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Ibex Inversterの最新のファンドはモビリティ革命に賭けている

Ibex Investors(アイベックス・インベスターズ)のファウンダー、CEOであるJustin Borus(ジャスティン・ボラス)氏が運輸業界とそこに迫りつつある技術変革に目を向けた時、彼は人生最大のチャンスを見つけた。そして今、アーリーステージモビリティ企業向けの1億1300万ドル(約130億円)のファンドでチャンスに賭けようとしている。

「次の5年から10年の間に、過去100年以上の変化が起きるでしょう」とボラス氏は、自動運転車へのシフトをはじめとする輸送業界における変化について語った。「私はこのファンドを1996年か1997年のインターネットファンドと同じように見ています」。

Ibex Investorsは、コロラド州デンバー拠点で、ニューヨークとテルアビブにオフィス構える会社で、2003年に「マルチステージ」と「マルチストラテジー」の投資戦略を掲げて設立された。これが意味するのは、シードステージからIPOまであらゆる段階で、企業に投資する会社だ。

この会社の構造は、伝統的ベンチャーキャピタルとは異なる。厳密には、Ibexは投資アドバイザーとして登記されているが、投資銀行ではない。Ibexはいくつかの特化したVCファンドを保有しており、イスラエル拠点のあらゆる分野のスタートアップを対象にした1億ドル(約115億円)のアーリーステージファンド、イスラエルに焦点を絞ったヘッジファンド、モビリティに特化した株取引を主とするヘッジファンドなどがある。他にもIbexは、Revel(レベル)のような後期ステージのモビリティスタートアップへの1回限りの投資も行っている。全体で同社は、約12億ドル(約1382億円)の資産を管理している。

今回の最新のファンドはアーリーステージのモビリティスタートアップに焦点を当てているが、イスラエルやその他の地域には限定していない。これによってIbexは、新たに膨大な数のモビリティスタートアップに門戸を開く。

Autotech Ventures(オートテック・ベンチャーズ)から最近Ibexに移ったJeff Peters(ジェフ・ピーターズ)氏は、ファンドはシェアリング、コネクティビティ、電動化、および自動運転のスタートアップを対象にしていると語った。

ずいぶん広いカバー範囲だ。Ibexはこのファンドの開始にあたって2件の投資を行った。その1つのAifleet(アイフリート)は、テキサス州オースチン拠点のスタートアップでトラック輸送の待ち時間をなくすためのソフトウェアを開発した。もう1つの投資先、Visionary AI(ビジョナリーAI)は、イスラエルのデジタル画像処理会社だ。ボラス氏は、トラック輸送は自動運転技術が最初に破壊的変化を起こす分野の1つだと信じているとTechCrunchに語った。

Aifleetの共同ファウンダー、CEOであるMarc El Khory(マーク・エル・コーリー)氏は、Ibexに惹かれた理由の1つは、この会社のリミテッドパートナーだと語った。

「彼らは、自動車業界のかつての幹部に私たちを紹介してくれました」と語り、その1人は大手トラック製造メーカーの元社長だったことを明かした。「私たちはテクノロジー企業ですが、トラック輸送事業も行っているので、あのようなつながりは会社にとって驚くほど価値があります」。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nob Takahashi / facebook

革新的アプローチでバニラ栽培に挑戦するVanilla Vidaが量産へ向け約13億円調達

バニラは確かに 「世界で最も人気のフレーバー 」だ。しかし、その人気とは裏腹に、製造は非常に複雑で、多くの人が本物ではなく合成バージョンを手にすることが多い。

私たちが消費するバニラの約70%はマダガスカルで栽培されているが、最近の気象ニュースを見ると、マダガスカルはこの10日間に1つではなく、2つのサイクロンに見舞われた。これは「今」だけの問題ではなく、この地域は20年近くも嵐や劣悪な生育環に悩ませられていて、バニラの価格が1キロあたり25ドル(約2880円)から数百ドル(数万円)へと上昇する原因となっている。

Vanilla Vida(バニラ・ビダ)のCEO、Oren Zilberman(オレン・ジルバーマン)氏によると、気候変動の高まり、天然バニラビーンズの不安定な供給、バニラ栽培が労働集約的であることなどが、私たちが消費するバニラの95%が合成である理由だ。

イスラエルに拠点を置くVanilla Vidaは、革新的なアプローチでバニラの生産に挑戦している数少ない企業のひとつだ。他には、バニラを作るのにトウモロコシの繊維に含まれる酸を抽出するプロセスを開発したSpero Renewables(スピロ・リニューアルブル)や、レタスでバニラの味と香りを作り出す方法を研究しているPigmentum(ピグメンタム)などがある。

Vanilla Vidaの場合、ジルバーマン氏のルーツが農業であることから、より直接的な農業のアプローチをとっており、垂直統合とサプライチェーンの技術を開発し、天然のバニラを制御された環境で栽培できるようにしている。

同社は2019年、オランダで行われたバニラ栽培の研究実験の失敗に端を発するアイデアでスタートした。研究でうまくいった部分を取り入れ、基本的にサプライチェーン全体を破壊するために、栽培と加工の分野にもそれを応用した。

「私たちを過去よりも前進させたのは、製品の品質という顧客に価値を与える重要なマイルストーンに到達することでした」と、ジルバーマン氏はTechCrunchに語った。

2020年にイスラエル企業StraussのアクセラレーターであるThe Kitchenで正式に会社を立ち上げて以来、チームはエンゲージメントに注力し、顧客とつながってきた。それをジルバーマン氏は「初期スケール」と呼んでいる。

「良いニュースは、能力よりも需要があることですが、拡大は最も困難な部分であり、今まさに我々はそこにいます」と同氏は付け加えた。

目標は、スマートファームや空調管理された温室での高度なバニラビーン栽培方法を通じて、バニラのサプライチェーンにおける量、品質、コストの安定性をエンドツーエンドで提供することだ。

規模拡大を図るため、Vanilla VidaはOrdway Selectionsがリードし、FoodSparks、PeakBridge PartnersのNewtrition、キブツのMa’agan Michaelが参加したシリーズAラウンドで1150万ドル(約13億円)を調達した。

今回のラウンドで、Vanilla Vidaが現在までに調達した総額は約1500万ドル(約17億円)になった。ジルバーマン氏によると、倍の額を調達する機会もあったほど投資家は同社の技術に非常に期待していたが、ゆっくりと時間をかけて、会社の正しい成長を支える戦略投資家を選ぶことにした。

一方、2021年には20社超とパイロットプログラムを実施した。

「当初、Vanilla Vidaのことを知る潜在顧客はほぼ皆無でしたが、プロダクトの品質を目にしたことで、こんな高品質なものを今日まで見たことはない、という声を耳にしています」とジルバーマン氏は話した。

顧客は、同社がまだサポートできないような量を求めている。しかし、今回調達した資金によって、同社は研究開発や技術をより深く追求することができ、また、ジルバーマン氏が間もなく登場すると言う競合他社の参入の障壁をより高くすることができる、と同氏は述べた。

資金はまた、まずイスラエル、その後アメリカやヨーロッパに設ける実験施設や雇用、そして最大手の食品メーカーやフレーバーハウスである顧客との取引に使われる予定だ。

Vanilla Vidaはまだ新技術に取り組む新しいプレーヤーだが、同社は2023年に生産量を増やし、2024年か2025年からバニラのサプライチェーンに目に見える変化をもたらすとジルバーマン氏は予想している。

「施設の建設と、ウガンダやパプアニューギニアなどバニラを栽培している国の既存の農家との取り組みの継続という、2つの大きな最初の動きが同時に起こるでしょう」と同氏は付け加えた。

画像クレジット: Vanilla Vida / Vanilla beans being grown in a climate-controlled environment

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

欧州データ保護機関がスパイウェア「Pegasus」のEU全域での使用禁止を呼びかけ

欧州データ保護監察機関(EDPS)は、物議を醸しているスパイウェアツール「Pegasus(ペガサス)」について「前代未聞のレベルの攻撃」につながる恐れがあると警告して欧州全域での禁止を求めた。

この悪名高いスパイウェアを開発したイスラエルのNSO Group(NSOグループ)は、犯罪やテロと戦う目的で政府にのみPegasusを販売すると主張している。しかし、複数の報道により、このスパイウェアがフランス、スペイン、ハンガリーなどいくつかのEU加盟国のジャーナリスト、活動家、政治家を標的として使用されていたことが明らかになった。

Citizen Labの研究者は2022年1月、Pegasusがポーランド政府を批判する人物3人のスパイに使用されていたことを発見し、同国の2019年の議会選挙の正当性に疑問を呈した。

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これらの事例を踏まえ、欧州委員会にガイダンスと勧告を出す役割を担うEDPSは「Pegasusの機能を持つスパイウェアのEU内での開発・使用の禁止」を求めた。EDPSは、ゼロクリック攻撃によってデバイスに密かにインストールされ、個人データ、写真、メッセージ、正確な位置情報など、標的とするデバイスへのほぼ完全なアクセスを入手するといった、このスパイウェアの「強力な」機能を挙げている。

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ブリュッセルに本部を置くEDPSは、Pegasusのようなスパイウェアの禁止は「基本的な自由だけでなく、民主主義と法の支配」を守るために必要だと指摘する。

EDPSは報告書の中で、多くの加盟国がスパイウェアの購入を認めたと述べている。しかし「多くの加盟国が、少なくともNSO Groupと製品のライセンス交渉を開始したようだ」として、本当の顧客リストは「もっと多いかもしれない」とも付け加えている。

EDPSは、たとえばテロのような差し迫った深刻な脅威を防ぐためなど、例外的な状況でスパイウェアを導入する必要性を否定できないと付け加えた。また、政府がPegasusを使用する場合、あらゆる形態の監視が「有意義かつ効果的」であることを確認し、EUのプライバシー規則を厳格に適用するなど、8つのステップを踏むべきだと述べている。

名前を明かさないNSOの広報担当者は声明の中で、ジャーナリストや人権活動家を含む、明らかになっているPegasus感染の証拠を発見・発表した学者や研究者を非難した。

EDPSの報告書が発表される数カ月前には、米商務省がNSOを貿易取引制限リストに追加し、明確な許可を得ない限り米企業がNSOと取引することを禁止した。

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画像クレジット:Amir Levy / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

シェアードモビリティのGoTo Globalがシェルカンパニーとの合併により株式公開へ

スペイン、イスラエル、マルタ、ドイツでシェアドマイクロモビリティやカーシェアリングの共有サービスを提供しているイスラエルのモビリティ企業GoTo Global(ゴートゥー・グローバル)が、シェルカンパニーNera Tech Media(ネラ・テック・メディア)との合併により、テルアビブ証券取引所(TASE)に上場する。GoToのCEOであるGil Laser(ジル・レイザー)氏によれば、この合併は4月上旬に完了する予定で、まずGoToは、Nera Techが保有する1200万ドル(約13億8000万円)の現金資産にアクセスできるようになり、GoToはこの資金を使って、ドイツでの事業拡大を目指すという。

13年前に設立されたGoToは、2021年秋にドイツのシェアード電動モペット事業者のEmmy(エミー)を買収し、ドイツ市場、特にハンブルグ、ベルリン、ミュンヘンへの参入を果たした。今回のIPOで得た資金は、GoToがドイツで提供している自動車や電動キックスクーター、電動バイクなどの乗り物の充実はもちろん、製品開発にも使われる予定だ。

スタートアップの世界には、未公開企業を合併し公開への道を加速させるための、特別買収目的会社(SPAC)という大きな流れがあるが、今回のNera Techとの取引はそれとは少し違うものだ。シェルカンパニーとの合併は、しばしば「リバースマージャー」と呼ばれ、アクティブな非公開企業が、休眠状態の公開企業(別名シェルカンパニー)の経営権を手に入れて、合併することを意味する。シェルカンパニーとは、通常、IPOプロセスを経たものの、その後事業を売却し、会社の構造(シェル=殻)だけを残した会社だ。

Nera Tech自体は、もともと上場企業であるSomoto(ソモト)が2つに分割された際に設立された。その際Somotoの株式の75%はエネルギーの貯蔵と管理を扱うNostromo(ノストロモ)にという会社に譲渡されている。その一方で、Somotoは映像と音声の広告事業を、Nera Tech Mediaに譲渡し、Nera Tech MediaはTASEに上場した。

いまでもNera Techは、Trinity Audio(トリニティ・オーディオ)というAIを利用したオーディオプラットフォームのスタートアップを所有しているが、レイザー氏は、このTrinity Audioを売却することで、GoToのIPOに向けてより多くの現金を得ることができるという。またTrinityが今後18カ月の間に約3000万ドル(約34億6000万円)で売却できると予想している。GoToが現在保有している1800万ドル(約20億8000万円)の現金資産、Nera Techからの1200万ドル(約13億8000万円)、そしてTrinity社の売却による3000万ドル(約34億6000万円)の見込みを考慮しても、GoToはプレIPOのためにさらに1800万ドル(約20億8000万円)から2000万ドル(約23億1000万円)をVC、エンジェル、ファミリーオフィスから調達する必要があるとレイザー氏は考えている。

新たに生まれる会社の時価総額は1億6300万ドル(約188億円)で、現在のGoToの株主は合併後の会社の株式の74%を取得し、残りの26%はNera Techの株主が手にすることになる。

レイザー氏はTechCrunchに「VCは主にSaaSやテクノロジーに特化したアーリーステージの企業や巨大企業を探しているので、結局現在はVCで資金を調達するよりも、株式公開することが最適だと考えたのです」と語った。「私たちは技術を持っていますが、オペレーションも持っているので、板挟みの状況でした。それでも公開企業になるという決断をしたのは、私たちには強力な製品があり、2年後には市場をリードしているという確信があり、優位性を保つためには速く走る必要があったからです」。

伝統的なIPOではなく、シェルカンパニーとの合併によって株式を公開することにしたのは、いわば良い取引だったからだ、とレイザー氏はいう。彼はGoToが今後2年間の目標をすべて達成し、ビジネスを利益の出るものにするための十分な資金を持っていることを指摘した。合併は、ただIPOへの近道でしかないと彼はいう。

GoToはグローバルではまだ利益を出していないが、イスラエルでは利益を出し、プラスのキャッシュフローを生み出しているとレイザー氏はいう。通常、シェアードビークルの企業が、利益につながる良好なユニットエコノミクス(顧客1人あたりの採算性)を実現するためには、より多くの資金を調達する必要があるが、GoToはそれとは少し異なるやり方をとっている。

5800台の車両を保有し、45万人以上の契約者がアクセスしている同社は、自社用の車両を購入するのではなく、Renault(ルノー)、Toyota(トヨタ)、Nio(ニオ)、Segway(セグウェイ)などの企業と、自動車やモペッドをリースするための覚書を交わしている。現在GoToはマイクロモビリティの車両の大半を所有しているものの、将来的にはそれらのリースも視野に入れている。期間と利用に伴って減価する資産を購入するのではなく、リースを行うことで会社は「さや取り」を行うことができる。つまり、2年間という期間で借り出した資産を、たとえば10分間だけユーザーにまた貸しした際の価格差を利用して利益を得るのだ。

GoToは、このビジネスモデルが収益化への道を加速させると考えており、年末までに3500万ドル(約40億4000万円)の収益を見込んでいる。これは、2021年の収益報告である2200万ドル(約25億4000万円)と比べて58%の増加となる。GoToは、来年末までに1億1600万ドル(約133億8000万円)を上回る年間収益を達成したいとTechCrunchに語ったが 、これは迅速なスケールアップを必要とする高い目標だ。

GoToが今後も拡大していきたいと考えている方向の1つがB2Bだ。現在の顧客のほとんどは、GoToのエコシステムに登録している日々の個人客だが、プラットフォームのユーザー数を倍増させるという目標を達成するために、同社はビジネスを呼び込みたいと考えている。多くの企業が従業員に、毎月旅費や通勤手当を支給しているが、GoToはそれを利用して、それらの企業や従業員のために専用車両を提供し、最終的にはあらゆる車両の長期レンタルを提供したいと考えている。

レイザー氏は「目標は、ターゲット層を増やし、商品の種類を増やすことです」と語る。

長期的には、GoToはエコシステム内のあらゆる種類の輸送を促進したいと考えている。同社は現在、ライドシェア企業とパイロットプロジェクトを行っており、統合のためのアプリを準備している。また、公共交通機関と協力して総合的なエコシステムを構築する方法を模索している。

画像クレジット:GoTo Global

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

バーチャル「最高情報セキュリティ責任者」を提供するCynomiが約4億円調達、中小企業のセキュリティ自動化を支援

イスラエルのサイバーセキュリティ企業Cynomiは、中小企業や各種のサービスプロバイダーにバーチャルのCISO(Chief Information Security Officer、最高情報セキュリティ責任者)を提供する。同社はこのほど、Flint Capitalがリードするシードラウンドで350万ドル(約4億円)を調達した。

バーチャルCISOすなわち「vCISO」は通常、専門サービスへのアウトソーシングや、リモートでパートタイムのセキュリティ実践家をオンデマンドで起用するかたちをとり、彼らが、サイバーセキュリティの専門的技能やガイダンスを企業に提供する。しかしCynomiのプラットフォームはそこから人間の部分を取り去り、人工知能を利用して人間のCISOをエミュレートし、手作業的だったオペレーションを自動化する。

Cynomiが他のvCISOと異なるのは、これまでセキュリティをマネージドサービスやセキュリティプロバイダーに依存していた中小企業に同社がフォーカスしていることだ。Cynomiの共同創業者でCEOのDavid Primor(デビッド・プリマー)氏によると、外部のエキスパートに頼む方法では社内にサイバーの専門家がいないため、悪質なハッカーの安易なターゲットになりやすい。

「中小企業や中堅の企業は状況が悪い。今では企業の経営者になっている何人かの友だちのセキュリティを手伝って痛感したのは、プロフェッショナルのCISOがいる企業と、ツールだけの中小企業の落差が大きいことです。会社を完全に守るツールはないし、犯人たちはそのことをよく知っています」とプリマー氏は語る

Cynomiは、同社のサイバーセキュリティプラットフォームを小さな企業に提供してこの落差を埋めようとする。セキュリティのスキルは一般的に不足しているだけでなく、パンデミックの間は不足が一層悪化した。Cynomiの共同創業者でCOOのRoy Azoulay(ロイ・アズーレイ)氏は「要するに中小企業や中堅企業はこの人材争奪戦に勝てない」という。

同社のvCISOプラットフォームは企業に、ランサムウェアやデータの遺漏など具体的な脅威別に、NIST(米国国立標準技術研究所)の評価点を与え、外部に露出しているアセットの脆弱性やエクスプロイトの、技術的に極めて高度な評価を与える。

Cynomiによると、すでにイスラエルと米国と英国には数社の有料顧客がいて、350万ドルのシード資金によりさらに市場開拓努力に力を入れたいという。このラウンドを支えたのは、SeedILとLytical Ventures、およびCyberXの共同創業者であるNir Giller(ニル・ギラー)氏などのビジネスエンジェルたちだ。

同社によると、数百社をランサムウェアにさらした7月のKaseyaの例のように、過去2年近くは中小企業や中堅企業がサイバー攻撃のターゲットになってきたが、同社のソリューションが市場の現状に対して遅すぎることはない。

「2021年は誰もが新しいサイバーセキュリティ・ツールの導入を急いでいましたが、再発が見られます。中小企業が保護され、すべてがうまくいくのであれば、私たちの使命は終わったと言えるでしょう。しかし、私は純粋にこのサイクルの始まりに過ぎないと考えています」とアズーレイ氏はいう。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hiroshi Iwatani)

イスラエルのクラウドデータセキュリティ企業Eurekaが約9.2億円を調達しステルス状態から脱却

テルアビブを拠点とするスタートアップで、さまざまなデータストアのセキュリティリスクを管理するためのツールを企業に提供しているEurekaは、米国時間1月12日、YL Venturesが主導する800万ドル(約9億1700万円)のシードラウンドを実施したことを発表した。

同社は、Palo Alto Networks(パロアルトネットワークス)でプロダクトマネジメント担当副社長を務めていたLiat Hayun(リアット・ハユン)CEOと、Microsoft(マイクロソフト)およびPalo Alto Networksでエンジニアリング担当ディレクターを務めた経験のあるAsaf Weiss(アサフ・ヴァイス)CTOによって設立された。両氏はこれらの企業に在籍していたとき、企業がますます多くのデータをより幅広いクラウドやサービスに分散して蓄積していることから、より優れたクラウドデータセキュリティおよび管理ツールの必要性を感じていたという。

「データは、企業の経営や競争力を支える貴重な資産です。しかし今では、企業のセキュリティ担当者が管理できる範囲をはるかに超えており、漏洩や紛失、悪意ある行為者による破壊や流出のリスクにさらされています」とハユン氏は語る。

クラウドへの移行がなかなか進んでいなかったり、機密データが最後に移行するアセットであったりすることから、多くの企業が今になってこの問題の大きさに気づいていると彼女は指摘する。

そこでEurekaは、企業のシステムに接続されているすべてのクラウドデータストアを把握し、アクセスポリシーの管理、設定上の問題やポリシー違反の発見を支援することを目指している。多くの企業はデータ保護に関する考え方を明確に持っているが、独自の設定や機能を持つさまざまなデータストアにそれらのポリシーを実装することは、しばしば困難をともなう。

「セキュリティ担当者に特に好評なのは、Eurekaのポリシー変換エンジンです」とハユン氏は説明する。「このエンジンはプライバシー、リスク、コンプライアンス、セキュリティに関するデータ保護ポリシーを、各クラウドデータストアに実装可能なプラットフォーム固有のコントロールに自動的に変換します。これらの変換結果は特にデータストアごとに異なるため、現在、一方を他方に変換することは非常に難しくなっています」。

同社のチームは、Imperva(インパーバ)やIBMなどの競合他社の製品はほとんどがオンプレミスのアプローチをクラウドネイティブな問題に適用しようとしており、一方でプラットフォーム固有のソリューションは、データ環境間のアクセス管理という大きな問題に対処できていないと考えているとのこと。

YL VenturesのパートナーであるJohn Brennan(ジョン・ブレナン)氏はこう述べている。「リアット(・ハユン)とアサフ(・ヴァイス)は、セキュリティリーダーが必要とする運用力をビジネス上の利益に支障をきたさないように提供することで、今後数年間でまったく新しい種類のデジタルトランスフォーメーションを先導していくことでしょう。彼らは、企業が望むあらゆるクラウドデータストアの活用を可能にする一方で、セキュリティチームが組織のクラウドフットプリント全体に対する完全な可視性と理解を維持し、必要に応じてポリシーを容易に進化・管理できるようにしています」。

画像クレジット:Eureka/Eric Sultan

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

5分でフル充電できるEV用急速充電バッテリーのStoreDotがベトナムのVinFast主導で約92億円を調達

イスラエルの次世代バッテリーテクノロジー企業StoreDotは、ベトナムのEVメーカーであるVinFast(ビンファスト)が主導する最新の資金調達ラウンドのファーストクローズを完了した。同社は今回のシリーズDラウンドで、最大8000万ドル(約92億4000万円)を調達する予定だ。

この資金は、StoreDotの研究開発の完了と、同社技術の量産スケールアップに使用される。現在、自動車メーカーに出荷してテストを行っているという。

VinFastは、ベトナムでBMWベースの自動車をライセンスして製造している。シリーズDには他にも、BP VenturesとGolden Energy Global Investmentが参加した。

StoreDotのCEOであるDoron Myersdorf(ドロン・マイヤースドルフ)博士は、次のように述べている。「今回の戦略的な資金調達は自動車、エネルギー、テクノロジーの大手企業が主要な投資家となっており、StoreDot、同社のXFCバッテリー技術、長期的な製品ロードマップ、そしてEVドライバーの航続距離に関する不安を解消するためのワールドクラスの技術とイノベーションに対する大きな信頼の証です」。

StoreDotは、Daimler(ダイムラー)、Samsung(サムスン)、TDK、中国のバッテリー量産メーカーであるEVE Energy(EVEエナジー、恵州億緯鋰能)とのパートナーシップも獲得している。同社の革新的なリチウムイオン電池の設計は、非常に高速な充電が可能であり、わずか数分で車両をゼロ状態からフル充電できるとしている。

同社のXFC(超高速充電)バッテリーは、一般的な黒鉛を使用した負極ではなく、シリコン系の負極を使用しており、エネルギー密度が高く、従来の電池よりも長持ちする可能性がある。

VinFastのPham Thuy Linh(ファム・トゥイ・リン)副社長はこう述べている。「当社は、研究に献身的に取り組み、画期的な技術を持つ企業とパートナーシップを結び、投資することでグローバルな知性をつなげてきました。特に、StoreDotやその独自技術である超高速充電(XFC)などのEVバッテリーには注力しています」。

画像クレジット:StoreDot

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

遠隔操作DriveU.autoがEasyMileの自動運転シャトルやCocoの配送ロボットをサポート

2021年ステルス状態から脱したイスラエルのスタートアップ企業DriveU.auto(ドライブUオート)は、自動運転シャトルバス企業のEasyMile(イージーマイル)と、歩道ロボット配送スタートアップ企業であるCoco(ココ)が、その業務を同社のテレオペレーションおよびコネクティビティプラットフォームに統合することになったとCESで発表した。

自動運転車の業界では、多くの企業がその実現を約束したり、先進運転支援システムの名称を決めたりしているものの、依然として完全な自動運転技術を商業化するまでにはまだ遠い道程がある。実際、ほとんどの国では、公道における自動運転走行中には、安全のために人間のオペレーターが介在することが義務付けられている。自動運転技術をてがける多くの企業は、より早く市場に投入し、一般の人々に無人運転車を受け入れてもらうために、緊急事態や異常事態、安全上の問題が発生した場合には、遠隔地にいるドライバーが無人運転車の操縦を取って代わることができるテレオペレーションを採用している。

「事故現場で、複数の警察官が身振り手振りで交通整理をしている状況を想定してみてください」と、DriveU.autoのAlon Podhurst(アロン・ポドハースト)CEOは、TechCrunchに語った。「車両に搭載されたAIは、これらの身振りや声による命令を解釈するために、あらゆる可能性の支援を求めます。そのため、遠隔操作オペレーターは、ロボットや自動走行車など支援する車両の周囲の世界を、リアルタイムで見る必要があります。そこで我々は、車両のセンサーから遠隔操作オペレーターのいる場所へフィードをストリーミングしたいと考えました。遠隔操作オペレーターが車両周辺における実際の状況に基づいて判断を下すためには、信頼性の高い高品質で低遅延のコネクティビティ(相互接続性)を確保する必要があります。これはセルラーネットワークを介して行われます」。

テレオペレーションを成功させるためには、映像、音声、その他のセンサーデータを転送するための高性能なコネクティビティが不可欠だ。DriveU.autoのコネクティビティプラットフォームは、安定したネットワーク接続を確保し、自動運転走行車を支援する遠隔操作を妨げる可能性のある遅延や「ダークスポット」と呼ばれる接続性の低下を回避することを目的としている。

「1つのセルラーネットワークでは、5Gでさえ、信頼性の高い遠隔操作に必要なパフォーマンスレベルを保証することができません」と、ポドハースト氏はいう。「つまり、車両には複数のカメラが搭載されているので、複数の高精細な映像フィードを、移動中の車両から、制約のあるセルラーネットワークを使って伝送しなければならないのです。結論として、1つのネットワークでは十分ではないということになります」。

DriveU.autoの技術は、フランスの医療施設にサービスを提供しているEasyMileの「EZ10」自動運転シャトルバスにすでに搭載されており、現在はEasyMileの全車両に統合する作業を進めていると、ポドハースト氏は述べている。

EasyMileのマネージングディレクターであるBenoit Perrin(ブノワ・ペラン)氏は「自動運転車のユースケースを次々と継続的に展開していく中で、遠隔監視は当社のソリューションにおける重要な要素になることが予想されます」と声明で述べている。

DriveU.autoのコネクティビティ・ソリューションは、Coco社が保有する約100台のコンセプト実証用のパイロット車両「Coco 0(ココゼロ)」にもすでに搭載されている。Cocoによると、このプラットフォームへの統合は、新たに1000台が出荷される配送ロボット「Coco 1(ココワン)」でも計画されているという。Segway(セグウェイ)がハードウェアベースを開発しているCoco 1は、2022年第1四半期中に米国のロサンゼルスおよび他の2都市で展開が予定されている。

DriveU.autoは、EasyMileとCocoの他にも、ロボットタクシーや自動運転トラック、その他の配送ロボットや特殊用途の自動運転車でもすでに運用を行っているという。これらすべてのパートナーシップはまだ秘密保持契約の下にあるものの、今後数週間のうちに公開したいと同社では述べている。DriveU.autoは最近、日本の自動車部品メーカーであるDenso(デンソー)との18カ月間におよぶ提携も発表している。

DriveU.autoは通常、車両のコンピュータに統合されるソフトウェア開発キットを顧客に提供する。顧客は、車両に搭載されている既存のセンサーやその他のハードウェアコンポーネントを利用して、テレオペレーションを含む車両の操作を行うわけだ。このソフトウェアのみを提供するというアプローチが、より迅速な統合を可能にするため、同社の市場牽引の鍵となっていると、ポドハースト氏はいう。

同社のソフトウェアベースのコネクティビティプラットフォームは、ダイナミックなビデオエンコーディング、低遅延アルゴリズム、セルラー結合という3つの技術の融合により機能する。融合されたデータパッケージは、送信時のネットワークのパフォーマンスに応じて、複数のセルラーネットワークを介して送信される。このデータは遠隔地のオペレーター側に届くと、ビデオフレームとして再構成される。さらに詳しく見ていくと、このプラットフォームは、車両のシステムに組み込まれたソフトウェアモジュールと、クラウドベースのソフトウェアコンポーネントおよび遠隔操作オペレーターのコンピューターに組み込まれたモジュールで構成されている。

「高度なコネクティビティソリューションを配送ロボットに統合するには、過酷な電力と計算のパラメータが要求されます」と、CocoのCOOであるSahil Sharma(サヒル・シャルマ)氏は述べている。「この分野における業界リーダー各社を評価した結果、DriveUのソリューションが当社の成長計画と積極的な配送スケジュールに最もマッチすることがわかりました」。

画像クレジット:DriveU.auto

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グーグルがサイバーセキュリティSiemplifyを買収、Google CloudのChronicleの一部に

サイバーセキュリティ侵害の件数は高水準で推移しているため、法人ITにおける信用とビジネスの拡大を真剣に考える企業は、この問題に取り組むために投資を続ける必要がある。そのため、Google(グーグル)は、クラウドベースおよび法人向けセキュリティの事業を強化することで、新年をスタートさせようとしている。同社は米国時間1月4日、イスラエルに拠点を置くサイバーセキュリティのスタートアップSiemplify(シンプリファイ)を買収したことを明らかにした。Siemplifyは、企業向けのエンド・ツー・エンドのセキュリティ・サービス、一般にセキュリティ・オーケストレーション、自動化、対応(SOAR)サービスと呼ばれるものに特化している。

この買収は、イスラエルのメディアですでに報道され噂されていたが、今回、GoogleそしてSiemplifyのCEOで共同創業者のAmos Stern(アモス・スターン)氏がともに買収を認め、SiemplifyがGoogle Cloud Platformに、具体的にはそのChronicle業務に統合されることを明らかにした。

GoogleとSiemplifyは、買収価格についてのTechCrunchの質問には答えなかったが、この取引に近い情報筋は5億ドル(約580億円)だと明らかにした(この数字は、先の報道でも言及されている)。

Chronicleはもともと、Googleの古いムーンショット取り組みであるGoogle「X」とともに、法人向けセキュリティ企業として設立された。検索大手であるGoogleが、クラウド市場2強のMicrosoft(マイクロソフト)のAzureとAmazon(アマゾン)のAWSを猛追しようと、クラウドサービス事業を中心に機能やサービスを拡充して法人売上高の拡大を図る一環として、Chronicleは2019年にGoogle Cloud経由でGoogle本体に移行した

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Siemplifyは2019年5月に最後のラウンドを実施し、合計5800万ドル(約67億円)を調達した。投資家にはGeorgian、83North、Jump Capital、G20 Venturesの他、多数の個人も含まれていた。Siemplifyは現在、本社をニューヨークに置いているが、同社はイスラエルで創業し、現在も同国に研究開発部門を持っている。そのため、今回の買収はGoogleにとって初の米国外でのサイバー企業買収ということになる。

Googleの買収は、サイバーセキュリティの世界において重要な時期に行われた。全体像として、サイバーセキュリティ侵害が衰える兆しがないのは、悪意のあるハッカーがこれまで以上に巧妙な手口で仕掛け、そして組織や消費者がインフラや日常の活動をますますオンラインやクラウドに移行させているためにターゲットがますます魅力的なものになっていることに起因している。

Chronicleは、サイバーセキュリティの遠隔測定用プラットフォームとして構築された。具体的には、あらゆるデバイスやネットワーク上のデータの動きを追跡し、侵害を検知・阻止するためのてがかりを得る方法となる。SOARプラットフォームは、この活動の顧客インターフェース要素であり、セキュリティ運用の専門家が活動を管理・監視し、(自動または手動の)修復プロセスを開始し、将来同じことが起こらないようにするためにすべてを記録するのに使用される。Googleがより多くの顧客を獲得するためにサービスや自動化を追加していく中で、SOARの機能を増やすことは同社にとって論理的な次のステップだ。

「Siemplifyプラットフォームは、セキュリティチームがリスク管理を強化し、脅威に対処するためのコスト削減を可能にする直感的なワークベンチです。Siemplifyは、セキュリティオペレーションセンターのアナリストがエンド・ツー・エンドで業務を管理し、サイバー脅威に迅速かつ正確に対応し、アナリストとの対話を重ねることでより賢くなることを可能にします。この技術はまた、ケースロードの削減、アナリストの生産性の向上、ワークフロー全体の可視性の向上により、SOCのパフォーマンスを改善します」とGoogle Cloud SecurityのGMであるSunil Potti(スニル・ポッティ)氏は買収を発表したブログの中で書いている。「Siemplifyの機能をChronicleに統合するのは、企業のセキュリティ運用の近代化と自動化を支援できるようにするためです」。

画像クレジット:Beata Zawrzel/NurPhoto / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

金魚が自ら水槽を操作する実験

金魚がクルマを運転できると知って、即座の反応が「またか」なら、まさしく「日の下に新しきものなし」だ。しかし、ここでご紹介する魚類学の革新は、数年前にあった魚が運転するクルマに見たところは似ており、水槽をやや深くしただけのように思えるかもしれないが、ここには重要で新たな特徴がある。金魚が本当に運転を学んだということだ。

気づいたかもしれないが、2014年当時は、運転をしながら水槽の中をぐるぐる回る金魚が実際にいた。当時の、ピュアだった人たちはそれを見て喜んだものだ。ウェブカメラを水槽の上部につけて、オブジェクト検出アルゴリズムが魚の位置を追うと、水槽が乗っているカートが金魚の泳ぐ方向へ動いた。自分のアドレスも覚えられない私が、それを覚えてるなんて信じられない。

確かに楽しいが、それは真剣な科学的取り組みというよりもパーティーにおける手品のようだった。魚はただ水槽の中を泳ぎ回っているだけであり、世界についても、自分を部屋の中で移動させている仕組みについても魚は何も知らない。

しかし今回、イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学大学の研究者たちは、それを一歩前進させた。使用するメカニズムは以前のものとよく似ていて、やはり水槽内の金魚の位置も検知し、泳いできたセクターの方向に「魚が運転する乗り物(Fish Operated Vehicle、FOV)」を移動させるという。

しかし、そこから先が違っている。研究者たちは金魚にさまざまなタスクをセットし、それによって金魚は、外の水のない世界の中でクルマ(水槽が乗ってるカート)を誘導しなければならない。たとえば魚は部屋の中央からスタートして、赤いストライプのある壁に達したらごほうびをもらえる。

Shachar Givonと@MatanSaminaが指導し@MatanSaminaが参加した研究をここにシェアできることは喜ばしいことです。金魚が地上の小さなロボットカーの誘導を学習できる。金魚の動きに反応する台車があり、金魚を訓練して、その動きに反応する車輪の付いた台車を運転できるようにしました。

人の常識では、金魚は特に頭が悪いことになっているが、実際のところ、彼らはかなり複雑な行動や状況を学習し記憶することができる。しかし、金魚が水槽によって表現されている抽象的な空間概念を理解し、何らかの外的手段を駆使してもっと大きな世界を動いていける、と想定すべき理由はない。

それでも研究者たちは、Behavioural Brain Researchに掲載された研究論文の概要で次のように述べている。

魚はその乗り物を運転し、新しい環境を探検し、どこから出発しても目的地に到達できた。またその間、行き止まりを避け、位置の不正確を修正した。これらの結果は、魚が自分の空間表現を移転するやり方と、それによりまったく異なる地上環境へ誘導するスキルがあることをを示している。

これは、金魚程度の生物でさえ移動する方法がハードコーディングされた水中運動回路ではなく、もっと普遍的なもの、おそらく私たちが考えるよりも早く、もっと基本的なレベルで進化したものであることを示唆している。どの程度抽象的で普遍的なのかはまだわかっていないが、興味深い結果であることは確かだ。

しかし、もっと重要なことは、魚やイグアナ、トカゲ、あるいはタランチュラでも移動式のテラリウムを手に入れることができる可能性がかなり高いというだ。彼らに自由な家を与えることができ、しかも自由のために彼らは、這ったり滑ったり転がったりしなくてもいい。ちなみに、このアイデアに興味を持った人にはJames Blish(ジェイムズ・ブリッシュ)の「Surface Tension(表面張力)」という本がおすすめだ。

画像クレジット:Ben-Gurion University of the Negev

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ゴミの山からプラスチックに代わる素材を作るUBQ Materialsがインパクト投資家TPG Rise主導で約193億円調達

100%分別されていない家庭ゴミだけで作られた、プラスチックのような素材を開発したとするイスラエルのスタートアップUBQ Materials(UBQマテリアルズ)は、TPGのグローバルインパクト投資プラットフォームであるTPG Riseが主導し、同社の気候変動投資専用ファンドであるTPG Rise Climateと、マルチセクター・インパクト投資ファンドであるThe Rise Fundsを通じて、1億7000万ドル(約193億2000万円)の資金を調達した。

今回の資金調達ラウンドには、既存の投資家であるBattery Venturesをはじめ、英国を拠点とするM&GのCatalyst Strategyなどが参加した。

UBQ Materialsは、通常なら埋め立て地に送られる有機物を含む都市固形廃棄物を、石油由来のプラスチックに代わる持続可能で、かつリサイクル可能な素材に変えることができるとしている。「UBQ」の名を冠した同社の製品は、建設、自動車、物流、小売、さらには3Dプリントなどの分野で、単独または従来の石油系樹脂と組み合わせても使用することができるという。

The Rise Fundsの共同代表パートナーであるSteve Ellis(スティーブ・エリス)氏は次のように述べている。

UBQの素材ソリューションは、都市ゴミを機能的な熱可塑性プラスチックに変換するだけでなく、エネルギー効率が高く、加工過程で水を使わず排水も出さないため、産業およびコンシューマアプリケーションにおいて、幅広い用途に利用することが可能です。

UBQがどのようにこれらを実現しているかについては曖昧だが、同社の主張を興味深く見守っていきたいと思う。

画像クレジット:UBQ Materials

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

IoTやコネクテッドカーのセキュリティを手がけるKaramba Securityにベトナム自動車会社VinFastなどが出資

Karamba Security(カランバ・セキュリティ)は、IoTと自動車業界に特化したセキュリティをてがけるイスラエルのスタートアップ企業だ。同社は現地時間12月2日、2017年に実施した1200万ドル(約13億5000万円)のシリーズBラウンドを延長し、新たに1000万ドル(約11億3000万円)を調達したと発表した。この延長ラウンドは、ベトナムのコングロマリットであるVingroup(ビングループ)に属する新興自動車メーカーのVinFast(ビンファスト)が主導した。なお、Vingroup自身もVinFastのために10億ドル(約1130億円)の資金調達を目指していると報じられている

このラウンドには、既存投資家のYL Ventures(YLベンチャーズ)、Fontinalis Partners(フォンティナリス・パートナーズ)、Liberty Mutual(リバティ・ミューチュアル)、Presidio Ventures(プレシディオ・ベンチャーズ)、Glenrock(グレンロック)、Paladin Group(パラディン・グループ)、Asgen(アスゲン)に加えて、韓国のSamsung Venture Investment(SVIC、サムスン・ベンチャー投資)も参加した。これにより、Karamba社の資金調達総額は2700万ドル(約30億5000万円)となった。

「IoTデバイスやコネクテッドカーへのサイバー攻撃による国家的・個人的なリスクから、強力な規制要件が求められています」と、Karambaの共同設立者兼CEOであるAmi Dotan(アミ・ドタン)氏は語る。「IoTデバイスメーカーや自動車メーカーは、研究開発プロセスを変えたり、市場投入までの時間を遅らせたり、製品の製造コストを増加させることなく、こうした規制に早急に対応する必要に迫られています。Karambaがワンストップで提供する製品とサービスは、こうした自動車メーカーやIoTデバイスメーカーの強い市場牽引力となっています。これらの企業は、Karambaがデバイスのライフサイクルを通してシームレスなセキュリティを提供することに魅力を感じています」と、ドタン氏は続けた。

Karamba Securityの「XGuard」(画像クレジット:Karamba SecurityVinFast)

IoT、特に自動車業界からこのようなニーズがあることを考えれば、VinFastのような企業が同社への投資に興味を持ったのも当然と言えるだろう。Karambaは設立以来、メーカーの研究開発やサプライチェーンのプロセスを妨げることなく、デバイスのライフサイクル全体に渡って保護できるセキュリティソリューションを提供することに力を入れてきた。

最近、クラウドベースのインシデント分析サービスを起ち上げたKarambaは、現在、Fortune 500(フォーチュン500)に入る企業と80件の「成功した契約」を結んでいるという。最近の最大の案件の1つは、100カ国以上の地域で80万台のフリートのセキュリティをてがけるというものだった。

VinFastの副CEOであるPham Thuy Linh(ファム・トゥイ・リン)氏は、次のように述べている。「当社の市場に対する見解と広範な技術評価に基づきながら、Karambaのコア技術を直接目にして、さらに他のメーカーからも学んだ結果、私たちの会社がサイバーセキュリティへの道を飛躍的に進めるためには、Karambaの力を借りるのが、どんなに有利であるかということがわかりました」。

画像クレジット:Karamba Security

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ローコード / ノーコードアプリの安全性確保を支援するZenityが約5.8億円調達

基幹業務のアプリケーションの構築にローコード / ノーコードのツールを採用する企業が増えており、そのエコシステム内にツールのセキュリティにフォーカスした新たなサービスが登場しているのも当然かもしれない。テルアビブのZenityはそんな企業の1つで、同社は現地時間11月23日、ステルスを抜けて500万ドル(約5億8000万円)のシードラウンドを発表している。そのラウンドはVertex VenturesとUpWestがリードし、GoogleのCISOだったGerhard Eschelbeck(ゲルハルト・エッシェルベック)氏や、SuccessFactorsのCIOだったTom Fisher(トム・フィッシャー)氏といった多くのエンジェル投資家が参加している。

Zenityによると、従業員たちが自分でアプリケーションを作るようになり、RPA(ロボットによる業務自動化)などのツールを採用するようになると、新たなアプリが、ハッキング行為やランサムウェアなどに対して、これまでなかったようなドアを開いてしまうこともある。

Zenityの共同創業者でCEOのBen Kliger(ベン・クリガー)氏は、このような状況について「企業は現在、大々的にローコード / ノーコードを採用していますが、そのリスクやリスクに対して自分たちが共有すべき責任について理解していません。弊社はCIOやCISOたちをサポートし、彼らがローコード / ノーコードアプリケーションをシームレスに統括できるようにし、不意のデータ漏洩や事業への妨害、コンプライアンスのリスク、悪質な侵害などを防ぐ」と述べている。

Zenityのプラットフォームは、企業にその組織内のローコード / ノーコードアプリケーションのカタログを作らせ、問題の可能性を減らし、彼らの組織のための自動的に施行できるガバナンスのポリシーをセットアップする。同社によると、従来的なセキュリティサービスの方法はローコード / ノーコードのアプリケーションに適用できないにもかかわらず、そんなツールへのニーズだけが独り歩きで増えている。しかもそれを使っているデベロッパーにセキュリティの経験や知識がない。中にはソフトウェア開発の経験知識のないデベロッパーもローコード / ノーコードの世界にはいるだろうという。

画像クレジット:Zenity

同社はCEOのクリガー氏とCTOのMichael Bargury(マイケル・バーガリー)氏が創業した。2人とも、それまではAzureに在籍し、Microsoftのクラウドセキュリティチームで仕事をしていた。

Zenityのアドバイザーで元OracleとQualcommのCIO、そしてeBayのCTOでもあるTom Fisher(トム・フィッシャー)氏は次のように述べている。「ビジネスを邪魔せずローコード / ノーコードのソリューションにありがちなリスクとセキュリティの脅威を減らすことが難題です。Zenityには、ガバナンスとセキュリティツールの完璧な組み合わせと、ビジネスに対するプロのアプローチが備わっているため、企業のデベロッパーは安心してともにセキュリティを構築できます」。

画像クレジット:Zenity

[原文]

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)