「Ready, Set, Raise」は女性起業家のためのY Combinator

今年Y Combinator(ワイ・コンビネーター)この夏バッチに参加したスタートアップの4分の1に女性の起業家がいた。PitchBookによると、2019年に米国で、女性起業家が1人以上いる会社が獲得したベンチャー資金が全体の約11%に過ぎないことを考えると、悪くない数字だ。起業家が女性のみの会社が獲得した資金はわずか3%だった。

しかし、まだまだ改善の余地はある。

こうした資金格差を埋めるべく、いくつかの女性起業家向けに考えられたプログラムは、事前に助言を与え育てることで、ベンチャーキャピタリストを印象づけようとしている。「Ready, Set, Raise」は、女性のための女性によるアクセラレーターで、女性やノンバイナリー(女性でも男性でもない第三の性別)の起業家がさらに多くの資金を調達したり、少なくとも投資家との関係を構築したりするのを手助けするプログラムだ。

シアトル拠点の起業家と投資家のネットワーク「Female Founders Alliance」(FFA)が作ったアクセラレータープログラムは、第2回目のバッチに参加したスタートアップを発表した。セックステックポッドキャスター向けのAIベースツール、工事現場や工場で働く女性向けに作られた作業服などさまざまなビジネスがある。

Ready, Set, Raiseは、Microsoft for Startupと提携して、起業家に12万ドル(約1300万円)のAzureクレジットを提供するとともに、米国レドモンド拠点のソフトウェアの巨人の幹部が技術、ビジネスに関してアドバイスをする。他のパートナーには、Brex、Cartaという、いずれも豊富な資金を調達した会社がいて、スタートアップの財務、企業評価、資金調達条件など関して幹部が起業家に助言する計画だ。

「FFAとMicrosoftは、女性やノンバイナリーの起業家に与えられた機会はまだまだ少ないことを認識している」とMicrosoft for StartupsのマネージングディレクターであるIan Bergman(イワン・ベルイマン)氏が声明に書いた。「VC世界が必要としているこうした変化を協力して推進することを楽しみにしている」。

FFAの創業者/CEOで2017年に組織を立ち上げたLeslie Feinzaig(レスリー・フェインザイグ)氏は、起業家とベンチャーキャピタルの多様化について率直に語る擁護派であり、親でもある起業家たちに自覚とリソースを与える。

「私の資金調達の経験は、自分が女であり、新米ママでもはあっことによるところが大きい」と、かつて教育技術のスタートアップを創業したフェインザイグ氏がSeattle Business Magazineで語った。「1年後、投げ出す寸前だった。それでも私はFacebookグループを立ち上げ、知っている起業家やテクノロジー系スタートアップのリーダーたちを呼び寄せた。それこそが私の必要としていたグループで、私のつらい経験をよく理解してくれる人たちが集まっていた。そうやってFemale Founders Allianceは生まれた」。

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Ready, Set, Raiseは、6週間のプログラム期間中参加企業に児童保育を提供する。企業は10月16日に行われるデモデーを目指して、経験あるコーチ陣から1対1で訓練を受ける。

Ready Set, Raiseの第2バッチのスタートアップは以下のとおり。

  • Echo EchoAIベースのポッドキャスター向けツール
  • Give InKind生涯の主要なイベントを支援する
  • Honistly自動車の保証期間を延長をして短期の出費を抑える
  • Juicebox Itチャットボットを使って性生活のアドバイスを行う
  • Panty DropXS~6XLサイズまでの女性用下着通販
  • >The Labzクリエイティブコンテンツ開発をリアルタイムで保護、記録するプラットフォーム
  • Tougher機能的で着心地のよい女性熟練工向け作業着の販売

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Googleの社内インキュベーター出身のShoelaceは共通の趣味を持つ人々をつなぐ

Googleの社内インキュベーター、Area 120から生まれた新しいプロジェクトは、人々がやりたいことを見つけたり、興味を同じくする人を探すことが目的だ。新しいアプリのShoelace(靴ひも:ものごとを結びつけることをイメージさせる)は、ユーザーが地図上にアクティビティーを書き込み、それを他のユーザーが選ぶ。たとえば、愛犬家と知り合いたい人なら、公園で犬を会わせる計画を書き込み、グループチャットで詳細を相談したり友達を作ったりできる。

結果はFacebookイベントとWhatsAppのグループチャットを合わせたようなものかもしれない。しかしその外観は、ミレニアル世代やデジタル・ネイティブのZ世代にアピールしそうなシンプルでモダンなデザインで包まれている。

Meetupなどのライバルと同じく、Shoelaceの狙いはソーシャル・ネットワーキング・アプリをもう一つ増やすことではなく、リアル世界で繋がるための刺激を生み出すことだ。

これは新奇なアイデアではない。実際数多くのスタートアップが、オンラインの友達ネットワークを再構築するのではなく、地域や興味一致する人たちをつなぐことでFacebookに対抗しようと試みてきた。また、多くの都市には、友達を作ったり地域の活動に参加するために作られた地元のソーシャル・クラブがある。

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現在Shoelaceは招待者のみのテスト中で、期間中はニューヨーク市のみが対象だ

同サービスのウェブサイトによると、成功すれば全米の都市に展開するのが長期的目標だという。自分たちのコミュニティーにShoelaceを呼ぶための申請フォームもある。

Googleにはソーシャル・ネットワーキング製品に関して苦難の歴史がある。過去最大の取組みだったGoogle+は、今年4月ついに閉鎖された。もっとも、Shoelaceは厳密な意味で「Google製品」ではない。これが生まれたArea 120は、Google社員が会社を辞めることなくフルタイムで新しいアイデアを実験できる社内インキュベーターだ。

「Shoelaceは、Area 120で活動している数多くのプロジェクトの一つであり、集まった活動を通じて興味を分かち合う人たちが出会う場を作るアプリだ」とGoogle広報担当者がTechCrunchに話した。「どのArea 120プロジェクトもそうだが、今は早期の実験段階なので現時点で伝えられることはあまりない」

招待を受けた人はGoogle PlayまたはiOS(TestFlight)でアプリをダウンロードできる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Beyond NextがインドC-CAMPと提携で相互支援、海外投資も本格化

独立系アクセラレーターのBeyond Next Ventures(BNV)は6月3日、インド・バンガロールのインキュベーターCentre for Cellular and Molecular Platforms(C-CAMP)との業務提携を発表した。

写真右から2人目:BNV代表取締役社長 伊藤毅氏

C-CAMPが拠点を置くバンガロール(ベンガルール)はインドの南部に位置し、「インドのシリコンバレー」と呼ばれるテック企業の集積地であり、技術系大学や医大など、インド有数の大学が数多く集まる都市でもある。C-CAMPはその地に2009年、インド政府科学省によって設立されたインキュベーターだ。

これまでに100を超えるスタートアップを支援してきたC-CAMP。ライフサイエンス分野を中心とした最先端の研究開発、投資、メンタリングの実施や、インキュベーション施設の提供などを通して、インドのスタートアップの事業化・成長支援を推進してきた。

BNV代表取締役社長の伊藤毅氏は、C-CAMPについて「シェア型ウェットラボを運営するなど、我々と似た活動をしているアクセラレーター」と説明する。インドには政府が政策として、予算を付けてバックアップするインキュベーターも多く、再生医療の分野などでアカデミア発のベンチャーの事業化を支援している。C-CAMPもそのひとつ。バンガロールにあるライフサイエンス領域のインキュベーターでは、中核的な存在だという。

BNVも2014年8月の創業時から、アカデミア発のスタートアップ支援を行うアクセラレーターで、2018年10月には2号ファンドを設立。1号ファンドとの累計で150億円近い額となるファンドを運営し、ライフサイエンス分野を中心とした技術系スタートアップへのインキュベーション投資や事業化・成長支援を実施する。今年2月には東京・日本橋に開設されたシェア型ウェットラボの運営を開始した。

今回の業務提携では、両社がインドおよび日本の起業家育成、双方のアクセラレーションプログラムを通した人材・テクノロジーの交流などを目的としたコンソーシアム「C-CAMP Beyond Next Ventures Innovation Hub(CBIH)」を設立。インドにおける技術系スタートアップへの投資やハンズオンサポートなどを組み合わせ、インドと日本双方のイノベーションの創出を目指す。

より具体的には、BNVが日本で投資するスタートアップがインドで事業を展開したり、ラボへ入居したりする際にはC-CAMPがサポートを実施。C-CAMPがインキュベートを手がけるインドのスタートアップには、BNVが日本でのパートナーや投資家の紹介、アクセラレーションプログラムへの参加などで支援する、といった形で両社の経験やネットワークを生かしていく。

また、これを機にBNVでは、インドへの投資を本格展開していく予定だ。BNVが投資を行う現地のライフサイエンス領域のスタートアップについては、C-CAMPがデューデリジェンスや育成をサポートする。

「インドは人口も多く、世界第3位のスタートアップ大国でもある。中でもインドのシリコンバレーと言われるバンガロールは投資機会に恵まれた地域だ。また、インドは今後も発展を続け、中長期的には大市場となる。我々の投資先であるスタートアップにとって、海外の展開先としても有望な国だと考えている。学力や教育レベルも高く、ITエンジニアだけでなく、ライフサイエンス領域でも優秀な人材が多い。今は日本の方が優れた研究もあり、論文も多いかもしれないが20〜30年後、中長期的にはそれが変わっていくとみている」(伊藤氏)

今年8月には創業5年を迎えるBNV。現在、海外では2社のスタートアップに出資しているが、今回の業務提携をきっかけに、インドだけでなくアジア諸国、海外への投資を加速していく考えだ。

Targetの最新インキュベータープログラムは「世界を救う」ことを目指す

Target(米国の全国的な量販チェーン)はスタートアップアクセラレーターの運営と無縁ではない。同社は現在、Target + Techstarsプログラム、美容に注力するTarget Takeoff、インドを拠点とするTarget Acceleratorプログラムを運営している 。そして今、4番目のビジネスアクセラレーターとして、Target Incubatorを追加しようとしている。 この新しいプログラムはZ世代(およそ1990年代半ばから2000年代前半生まれの世代)の起業家たちを対象としており、決まっていることは、対象とするビジネスは何らかの社会貢献をするということだけである。

Targetが述べるように、対象となるビジネスはただひたすらに「人びとや地球をよりよくする」ことを目指す必要がある。

その幅広い要件は、新しい製品アイデア、新技術、または新しいサービスを含む幅広いビジネスの範囲をカバーすることができる。Targetは、このことによって、食料品を得る手段から、温室効果ガス排出に至るあらゆることをカバーできると語っている。

またビジネス自身がそれほど進んでいる必要もない。Targetが要求していることは、成果を得るためにある程度のステップを既に踏み出しているか否かであり、ビジネスそのものが既に公開されている必要はない。単に「アイデア」以上のものであり、法的な実体を持っていることが要求されるだけである。また創業者は、過半数の所有権(51%以上)を持っていることが期待される。

Targetはこのプログラムのための8種類のビジネスを選択し、1種類のビジネスについて最大2メンバーを、直接新しいインキュベーターに迎え入れると語る。

これらの主に「Z世代」に焦点を当てられた起業家たちは、まず2019年の4月から6月にかけて、毎週1時間のオンラインプログラムに参加する、その後2019年の7月の半ばから8月初めにスタートする、2ヶ月間にわたる対面のインキュベータープログラムに参加する(ミネアポリスのTarget HQで開催)。

そのプログラムの間、参加者たちはTargetのリーダーたちや他のビジネスからのメンターシップを受け、ワークショップや、学習セッション、そしてチームビルディングイベントに参加し、テーマに関連する専門家へ業界を横断したアクセスを行うことができ、そして他の創業者の発展と成長の機会に立ち会うことができる、とTargetは語る。

応募受付は月曜日(米国時間8月15日)に始まり、10月29日に締め切られる。その後最終候補者に対するインタビューを経て、12月5日に採用が決定される。

選ばれたビジネスには、Targetから1万ドルの奨励金も支給される。

そしてまたTargetはインタビューのための旅費等の経費や、8週間の対面プログラム(最後はデモデーで締めくくられる)のための交通費と宿泊費を支給する。

Targetにとっては、スタートアップに関与することで、初期段階でビジネスに投資する機会が得られるため、最終的にはTarget自身の最終的な利益に役立つ可能性がある。また特に若い顧客を呼び込むトレンドを押さえておくためにも役立つ ―― そして、Amazonとの戦いをも助けてくれるだろう。

同社は既に、オンラインマットレス会社Casperへの投資や、Bevel、Harry’s、Bark、Who What Wear、Native, Quip、Rocketbook、GIR、NatureBox、Hello、そしてothersといったデジタルファーストのブランドとの提携を通して、新興ブランドと協業する企業であるという地位を確立している。また昨年には、即日配送サービスのShiptを買収している。ShiptはTargetがホットな食料品配送市場に参入することを助ける新興企業である。

新しくてデジタルファーストの企業と協業するだけでなく、Targetはさらに「良い」ことをなすビジネスに手を伸ばそうとしている。現在(Targetが「Z世代」と呼ぶ)多くの若い買い物客たちの足を店舗に運ばせるのは、単に価格だけではない。彼らはしばしば気分の良い買い物をしたいと思っている。例えば、その会社の使命を信用していたり、買い物をすることによってその持続的ビジネスを支援できることは、その気分の良さを支えてくれる。Target Incubatorはまた、Targetに対して、現在のそうしたビジネスに初めて出会うチャンスを与えるだろう。

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(翻訳:sako)

画像クレジット: Justin Sullivan / Getty Images

Y Combinatorデモデー1日目の注目10チームを紹介する

Y Combinatorの最新のデモデーでは乳がんを発見するウェアラブルから代替肉製品向け産業用サプライチェーンの構築まで多くのチームが多様なイノベーションを競った。ここでは1日目でわれわれが注目した10チームを紹介する(YC Demo Day 2018に登場した全63社の紹介はこちら)。

Oxygen

フリーランサーは口コミによるいっときのブームとその後の落ち込みというサイクルに縛られがちだ。 Oxygenは収入のないフリーランサーに簡単な審査で資金を融資する。 内国歳入庁1099号による契約社員は既存の金融システムの融資から閉め出されているが全体として1.4兆ドルもの収入がある。Oxygenはこうした社員の雇用者にも進んで融資する。Oxygenはモバイルバンキングだが手数料は一定だ。与信審査には機械学習アルゴリズムが用いられる。万国の契約社員よ、団結せよ!

注目の理由: オンライン・レンディングに新たな市場を開く可能性がある。適切に運営されればこの市場は数十億ドル規模に成長するはず

Higia

EVAとよばれるウェアラブル・デバイスは女性の胸部をサーマルスキャンし、非侵襲的方法で乳がんを発見できるものとHigiaでは期待している。スポーツブラなどの下にも装着可能で、現在のスクリーニングでは見逃されれがちな乳がんの早期発見に役立つ。同社はすでに今年中にアメリカで発売の予定。価格は299ドル。スタンフォード大学で治験中。

Higiaの記事はこちら.

注目の理由: このツールが消費者に負担をかけない手頃な価格で実際に乳がんを早期発見できるとなれば市場は大きい。投資家にとっても世界にとっても朗報となるはず。

C16 Biosciences

パーム(ヤシ)油は食用その他日常生活のあらゆる面で大量につかわれているが、製造過程で熱帯雨林の破壊などさまざまな環境問題を引き起こしている。C16 Biosciencesは温室効果ガスの大幅削減など世界規模でパーム油による環境破壊の防止を目指す。C16では醸造テクノロジーを利用による工業的なパーム油の製造によりコストも20%安くできると期待している。

C16はすでに多数の化粧品、食品企業と提携しており、これらの企業は合計で年間12億ドルもパーム油を購入しているという。

注目の理由: ベンチャー投資のサイクルでは最近、「クリーンテック」が再浮上している。もともと伝統と実績がある醸造技術をベースにしたテクノロジーをパーム油製造に応用した点が新しい。

JITX

JITXは回路基板の設計サービス。現在は熟練した専門家が手作業で回路基板をデザインしているが、JITXのソフトウェアではこれを機械学習に置き換えようとしている。ハードウェア・メーカーにとっては時間とコストの大幅節減となる。JITXはすでに回路基板の自動設計システムを販売しており、HPを含め(さらにもう1社の有力企業は匿名)多数の企業がユーザーとなっている。バークレーを本拠としており、市場は92億ドルといわれる。コストはマニュアル設計の20%程度。

注目の理由: このスタートアップはすでに投資家の間にセンセーションを巻き起こしている。最新のラウンドでは$80万ドルを調達する予定だが、予定の3倍の投資家が殺到したという噂だ。簡単に言って、あらゆるハードウェアの基礎を製造する技術を大きく改良するテクノロジーだ。

HoneyLove

HoneyLoveは安価で実際に効果がある製品によりシェイプウェア〔体型補正下着〕市場をディスラプトしようとしている。

89ドルからのプロダクトは シームに補強材が内蔵されており、(鯨のヒゲなどによる)ボーンを内蔵した昔のコルセットに似た構造だ。HoneyLoveの補強材は柔らかい繊維のチューブの中に通されており、不快感を与えない。これにより装着時にずり上がったりずり下がったりすることを防いでいるという。同社はすでに50万ドルの売上を得ている。

HoneyLoveの記事.

注目の理由: 市場が大きいだけでなく、同社の成長ぶりは今後に強く期待させるものがある。

Camelot

Cameloteスポーツを対象とするギャンブルを目的としたモバイル・アプリだ。ビデオゲームとスポーツギャンブルの交差点は高い利益を生むことが間違いない分野だ。

注目の理由: スポーツ・ギャンブルはすでに少なくとも10億ドル級のビジネスを生んでいることからしても、eスポーツのギャンブルも同程度の成長が見込める。

Inokyo

Inokyo〔トウキョウと似た発音〕はAmazon Goに似たキャッシャーレス店舗を実現しようとするスタートアップだ。多数のカメラが店内の消費者をモニターし、棚から何を取り出したかを認識する。ストアからの出入りの際にそれぞれ1度ずつモバイルアプリに表示されるQRコードをスキャンさせるだけで支払いは完了だ。

最初の店舗は最近マウンテンビューのカストロストリートにオープンした。スナック、昆布茶、プロテインパウダー、入浴剤などを売っている。

Inokyoの記事.

注目の理由: AmazonやAlibabaが独自技術で開発したキャッシュレス・ストアのテクノロジーをホワイトレーベル化して広く販売するというビジネスモデルは一般店舗に魅力的。大きな市場を開拓できるかもしれない。

Hepatx

Hepatxは重症の肝炎のあたらしい治療法の提供を目指す。慢性肝炎の患者はアメリカで390万人も存在し、毎年4万人の死亡原因となっている。同社では肝細胞に再生医療テクノロジーを適用して治療をする。肝細胞再生は肝臓全体の移植に比べてコストと死亡率を押さえる効果が期待できる。アメリカで肝臓移植が必要な患者は20万人もいるが、実際に移植を受けられるのは数千人に過ぎない。Hepatxは患者の脂肪細胞から肝細胞を再生し、患者の肝臓に戻すことによって肝機能の再生を図る。

注目の理由: 新しく肝細胞を作り出すというのは文字どおり生死を分ける重要なテクノロジーだ。ファウンダーチームは優秀であり、初期の治験結果も有望だ。ホームランになる可能性十分。

Cambridge Glycoscience

代替甘味料でクッキーなどを焼こうとして失敗したことはないだろうか? 甘みを真似することはできても高温でカラメル化したり飴化したりするのは砂糖に特有の現象だ。そこでYCのスタートアップ、Cambridge Glycoscienceでは文字通りおいしい解決策を提案している。 同社の代替甘味料は味を損ねずに低カロリーの料理をメインストリームにできる。コーンシロップなんか投げ捨てて新しい甘味料を試してみよう。同社の製造プロセスは大量生産に向いており、イノベーションの多くの部分は特許によって保護されている。

注目の理由: FortuneがLancetを引用した記事によれば74%前後のパッケージ食品や飲料にはなんらかの甘味料が使用されており、マーケットの規模は1000億ドルと見積もられている。 Cambridge Glycoscienceがその一部を代替できるなら大いに有望なスタートアップといえるだろう。

Seattle Food Tech

Photo: James A. Guilliam/Taxi/Getty Images

自然肉よりおいしい植物製の代替肉はもはや現実のものとなりつつある。投資家は何千万ドルもの資金をこの分野につぎ込んでいる。Seattle Food Techは植物性代替肉を大量生産するためのプロセスを低コストで構築できるようにることを目標としている。

「われわれは植物性チキンナゲットを製造するプロセスに宇宙航空テクノロジーを応用している」とCEOのChristie Lagallyは述べている。Lagallyは元ボーイング社のエンジニアでテクニカル・プロジェクト・マネージャーを務めた。

注目の理由: Seattle Food Techは代替肉の製造という大きなマーケットで産業レベルのサプライチェーンを確立できる可能性がある。

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滑川海彦@Facebook Google+

パリの超巨大インキュベーション施設Station Fに行ってきた――約3000社のスタートアップやVCが入居予定

先週木曜日の夜、世界最大のインキュベーション施設が正式にオープンした。これから約3000社のスタートアップがこの巨大な建物の中にオフィスを構えることになる。エマニュエル・マクロン仏大統領や政府関係者が参加した同施設の開所式にTechCrunchも参加した。

「この建物はStation Fと呼ばれ、Station FranceやStation Femmes(フランス語で女性の意)、Station Founder、Station Fressinetといった意味が込められている。Freyssinetは素晴らしい建築家であり、優秀な起業家でもあった」と億万長者で仏通信大手Iliadのファウンダーでもあるグザヴィエ・ニールはマクロン大統領に説明した。

Station Fはもともと1920年代にウジェーヌ・フレシネによって建設され、2011年には取り壊される予定だった。しかし、2013年にニールは奇想天外なアイディアを思いつく。彼らはこの建物を購入し、3万4000平方メートルもの広さをもつ巨大なスタートアップキャンパスへとリノベーションしようと考えたのだ。

その結果、数年が経った今も建物はそのまま残り、内部には何千個もの机や巨大なガラスの壁、明るい照明や地中海の木々が並んでいる。「リノベーション前とは見違えるほどだ。もともとは薄暗い、ただの廃駅だった」とニールは話す。

今週の月曜日から1100社のスタートアップがこの施設に入居しており、そのうちの多くはStation Fのパートナーたちが選んだ企業だ。VCも20社ほどが入居を予定しており、そのほかにも郵便局や大きなレストランが数か月のうちにできるとのこと。

海外人材や多様性へのフォーカス

簡単な施設の紹介が終わると、ニールとマクロン大統領はすぐに見学に訪れていたZenlyの共同ファウンダーをはじめとする起業家に話しかけ始めた。なお、開所式にはパリ市長のアンヌ・イダルゴやフランスのデジタル担当大臣ムニール・マジュビ、Station Fディレクターのロクサンヌ・ヴァルザブリジット・マクロン大統領夫人も参加していた。

施設の見学中に、大統領はある起業家に英語で話しかけた。彼はFrench Tech Ticketを利用し、起業のためにフランスに移り住んだのだという。それに関連し、大統領は起業家やエンジニア、投資家向けに最近ローンチされた特別なビザ、French Tech Visaについても言及した。

「ひとつひとつの執務スペースはヴィレッジ(村)と呼ばれ、各ヴィレッジには60個程の机が置いてあり、コラボレーションを促すようにデザインされている」とヴァルザがオフィススペースについて説明する。

その後、別の起業家がマクロン大統領に英語で挨拶し、続けて完璧なフランス語で話し始めた。フランス人なのか外国人なのかを尋ねられた彼は「フランスには(ニールが運営するコーディングスクールの)42のために来た。もともと生物学を勉強していたが、大統領のビデオを見てフランスへの移住を決めた」のだと語った。

それを聞いて、42の卒業生の一部は現在大統領官邸で働いていると聞いたことがあるとジョークを言うニール。

その後、ヴァルザは新しくローンチされたFighters Programについても説明した。このプログラムは、マイノリティのファウンダーに対して無料のデスクスペースを提供するというものだ。「彼らはFounders Programの人たちと肩を並べることになる。私たちは両者の交流を図りたいと考えているのだ」と彼女は話す。

既に2億3000万ドル(2億ユーロ)をStation Fの建設に投じたニールだが、さらに5700万ドル(5000万ユーロ)を使ってイヴリー=シュル=セーヌに最大600人が住める居住施設を建設予定だという。「42のモデルと似たモデルを考えている。Station Fに入居したスタートアップのファウンダーたちは親からの援助を期待できず、住むところが問題になるというのもわかっている」と彼は話す。

引き続き施設を見学していると、あるStation Fのスタッフがマクロン大統領に近づき、10秒前後の動画を撮影してよいかと尋ねた。「私たちは今日パリのStation Fに来ています。自分のスタートアップを立ち上げ、投資し、成長させたいと思っている人にはピッタリの施設です」と携帯電話に向かって話し始めた大統領は、撮影を終えると動画が32秒になってしまったと謝りながら、スタッフに携帯電話を返した。

それから見学者グループはステージに戻り、ヴァルザやイダルゴ、マクロン大統領のスピーチを聞くことに。大統領は集まった2000人の聴衆の一部と握手したり、一緒にセルフィーを撮ったりしながらステージへと向かった。

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ファウンダーの代わりにStation Fについて語った参加者たち

個々のスピーチ内容は、全体の構成に比べるとそこまで興味をひくようなものではなかった。ヴァルザがまずStation Fのパートナー企業(Facebook、Zendesk、Vente-Privée、HEC、Microsoftなど)や協力者(アンヌ・イダルゴ、Jean-Louis Missika、Jean-Michel Wilmotte、Station Fのチームなど)を紹介し、起業とは白人男性だけのものではなく、Station Fは業界の多様化に向けて努力していくと語った。

彼女が話し終わってニールに謝辞を述べると、聴衆は大いに湧き上がり数分間拍手が続く。その様子はライブ会場でアンコールを待つ観客のようだった。

ニールが若い世代の起業家にとってのロールモデルになったということに疑いの余地はない。彼は通信企業を立ち上げて大金持ちになってから、コーディングスクールを設立し、さらにはKima Venturesと共にシードファンドを立ち上げ、これまで世界的にも有名なシリコンバレーのスタートアップ(Square、Nest、Snap、Airbnb、Uberなど)に投資してきた。その他にも、彼は新聞社を買収し、Station F設立のために何百億ドルという資金を投じている。

しかし、そのニールがステージ上で話すことはなかった。

ヴァルザに続いて市長のアンヌ・イダルゴは、パリにとってのStation Fの意義について「パリは芸術都市としての側面以外の何かを求めていた」と語った。

最後にステージを飾ったマクロン大統領は、彼の政治家としてのキャリアと起業家の人生を比較しながら、他の人は自分のやろうとしていることに共感しないかもしれないが、だからといってそれを諦める必要はないう旨のスピーチを行った。

「今日の私たちをつなぎ合わせているのは起業家精神だ。周りの人は、私がどんな人生を歩むべきかについて口を挟もうとしていたが、私は彼らとは違う道を選んだ。自分の人生を他人に決めさせてはならない」

その後大統領は、VivaTechでのスピーチに沿った形で格差問題に言及し、起業家は積極的に多様性を受け入れ、社会全体に貢献していかなければならず、もしもテック業界が国を分断してしまうようなことがあれば、それは業界全体の失敗ということになると語った。

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Station Fの本当のスタート

これから数日間のうちに何千人という人がStation Fにオフィスを構える予定だ。ここまでくるのには何年間もかかったが、これはStation Fにとってのスタート地点でしかない。

同施設がパリのテックエコシステムを根本から変えるられるかどうかはまだわからないが、フランスが国内外から人材や企業、投資を誘致する上で、Station Fが素晴らしいマーケティングツールとして機能するのは間違いない。

ニールは他の人もStation Fに投資できるよう、将来的には財団を設立しようとしており、彼はこの施設から利益を得ようとは思っていないと話していた。スタートアップコミュニティの人々は、きっとニールは彼らの味方なのだと感じることだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Google、VR広告プロジェクトのAdvrを発表――社内インキュベーターArea 120から誕生

Goolgは本日(現地時間6/28)、社内インキュベーターArea 120の専用サイトをローンチし、あまり公に語られることのなかった同プログラムの情報を正式に公開した。それと同時に、これまでのArea 120のプロジェクトとは一味違う、VR広告に関する試みが始まった。Advrと呼ばれるこのプロジェクトでは、3D(もしくはVR)空間で動画を再生する、キューブ型の広告の実験が行われている。

Area 120は、将来的にスタンドアローンのプロダクトや既存プロダクトの追加機能になり得る新しいアイディアを試す場をつくるため、そして起業家精神あふれる人材を社内に留めるために昨年の3月にローンチした。

ちなみに、インキュベーター自体の設立からあまり時間が経っていないこともあり、製品化されたプロジェクトは未だ誕生していない。

既にAres 120関してさまざま報道がなされており、その名前からは勤務時間の20%を自分の好きなプロジェクト使えるという、かの有名な20%ルールとの関連性がうかがえる(といっても、20%ルールは社内制度というより考え方に近いものだったが)。

しかし、Area 120は20%ルールのコンセプトを体系化した正式なプログラムだ。

社内インキュベーター制度のある大手テック企業はGoogleだけではない。MicrosoftはGarageと呼ばれる独自のプログラムを運営しており、Appleも2012年にBlue Skyで同じようなことをしようとしていた。

その中でもGoogleのArea 120はアクセラレーターのように運営されており、社員は決められた期間中に同プログラムに応募し、一部の選ばれたチームだけが参加権を獲得できる。各”クラス”は15のチームから構成され、彼らは6か月間かけて自分たちのプロジェクトに取り組むことになる。さらに、Area 120に参加している社員は日中の仕事から離れ、自分たちのプロジェクトにだけ集中できる。

もしもプロジェクトがうまくいけば、そのチームは期間終了後も引き続き自分たちのプロダクトに取り組むことができ、プロジェクトがうまくいかなかった社員は以前とは違うポジションでGoogleに戻ることになる。

Area 120のローンチから既に2クラスがこのプログラムに参加し、現在Googleは3期生の募集を行っている。

GoogleにとってもArea 120は新しい試みであるため、今後どうなるかや、そもそもArea 120にお金をかけるだけの価値があるのかというのはまだわかっていない。しかし、どこかのチームのアイディアが将来的にGoogleのプロダクトとしてローンチされたり、既存のプロダクトに吸収されたりする可能性は大いにある。その一方で、ほとんどのアイディアは十分なトラクションを集めることができずに終わるだろう。これは普通のスタートアップと同じだ。

Area 120のプロジェクトの内容は全てが公開されるわけではない。中には社内でだけ使われるものや、招待された人だけがテスターになれるものもあり、これまでメディアに取り上げられたプロジェクトの数はごくわずかだ。公開された中でいえば、Uptimeがもっとも期待されている。今月正式に一般配信がスタートしたこのアプリでは、友だちと一緒にYouTube動画を視聴することができる。

その他にもArea 120で生まれたプロダクトには、パーソナルスタイリストアプリのTailorやコーディング学習アプリのGrasshopper、絵文字メッセンジャーのSupersonic(こちらはサービス終了予定)などがある。また、特定のユーザーだけが利用できるサービスとして、バングラデシュのジョブマッチングサービスや、これからローンチ予定のAppointmentsとよばれる予約ツールなども存在するが、これまでGoogleがArea 120のプロジェクトを公に宣伝したことはなかった。

しかしAdvrは少し違うようで、本日Googleはディベロッパー向けのブログに同プロジェクトの記事を公開した。

Advr:VR環境における動画広告

Advrの主な目的は、VR環境内で動画広告が成立するか、そして成立するならばどのような形式になるのか、というのを解明することだ。

そこでAdvrのチームは、VR環境内で動画を再生できるUnityのプラグインを開発した。先述のブログポストによれば、ディベロッパーはVR用の全く新しい広告商品や実装が難しいものを開発するのに前向きではないため、Advrのチームはシンプルな立方体のフォーマットにたどり着いたという。

Advrの動画広告では、ユーザーが立方体をタップしたり、数秒間見つめたりすると、プレイヤーが表示されるようになっており、ユーザーはこの段階で広告を視聴するか、プレイヤーを閉じるかを選ぶことができる。

また、Advrのチームは、GoogleのDaydreamとCardboard、SamsungのGear VRを皮切りに、この新しい広告をさまざまなVRプラットフォームに導入しようとしている。

公に発表したからといって、GoogleがAdvrをVR広告のあるべき姿と考えているわけではなく、今の時点ではまだアイディアの域を出ない。その一方で、Google以外にもAdobeを含む数社(OutlyerImmersvOmniVirtなど)がVR広告を開発している。もしも成功すれば、AdvrはGoogleの収益に直接影響を与えるようなArea 120発のプロジェクトの先例になるだろう。

既に同プロジェクトでは、いくつかのVRゲームデベロッパーと協力してテストが行われているが、パートナーの詳細については明かされなかった。本日より、他のVRディベロッパーも招待ベースでAdvrのSDKを使えるようになったので、興味のある人はこちらを確認してみてほしい。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter