TouchWoodは多目的で目立たないインターフェイスを机やテーブルや壁の中に組み入れる

近ごろでは何をするにも対応アプリがあり、それが1日中、音を鳴らしたり光ったりして必死に私たちの気を引こうとする。そんな絶え間ない呼び込みの消耗戦を鎮めたいと考えたTouchWood(タッチウッド)は、静かでシンプルなインターフェイスを、デスクや壁などの自然な素材の中に組み入れる。

共同創設者のMatthew Dworman(マシュー・ドワマン)氏とGaurav Asthana(ゴーラブ・アシュタナ)氏は、家庭や職場をスマートにするということは、物を増やすことだと普通は考えがちな風潮にうんざりしていた。デスクの上にはスマートスピーカー、四六時中歩数を知らせ続けるスマートウォッチ、朝の支度に広告を滑り込ませてくるスマート冷蔵庫など。それだけではない。こうしたデバイスやアプリは、いつだって人の気を散らせるため、やろうとしていることが邪魔される。それが仕事であっても、仕事をしないと決めることであっても、お構いなしだ。

画像クレジット:TouchWood

彼らは「指輪物語」に登場する魔法の剣「つらぬき丸」のようなものが欲しかった(と私に話してくれた)。99%の時間はただの剣なのだが、必要なときにはオークの存在を知らせてくれる。しかしそのときも、ただ光るだけだ。なぜデジタルの世界には、このように必要なときにだけ顔を出すという考えがないのか。それもできる限り控えめな形で。

高級家具デザインの職歴を持つドワマン氏は、アシュタナ氏と共に、アシュタナ氏が言う「アプリではなく木の板」を通じてテクノロジーを使うというアイデアを実現させた。

「私たちが作り上げたのは、高輝度LEDと静電容量タッチセンシングを使ったモジュラー式のテクノロジー・プラットフォームです。これにより、基本的に不透明な資材にディスプレイを埋め込めるようになりました」とドワマン氏は説明する。「壁、カウンタートップ、デスク、家庭でもオフィスでも小売店でも乗り物でも、情報表示と完全に目に見えない操作系のさまざまな提供方法を、私たちは追求してます」

ディスプレイがオフのときは、その表面はまったく普通の板にしか見えない。CESで天然素材を使った独自開発のディスプレイを展示していたMui Labs(ムイ・ラブズ)は、特殊な木の穴あき板を使っているため、コーヒーをこぼさないよう注意しなければならない。TouchWoodのディスプレイは、見たままの素材そのものだ。つまり木であったり、その他のごく普通の表面材だ。

TouchWoodのディスプレイを使っているところ(横筋はカメラのフレームレートによるノイズ)

これはサブのディスプレイというわけではない。デスクトップパソコンやノートパソコンやスマートフォン、それにスピーカー、腕時計、コーヒーメーカー、ロボット犬などなど、そうしたものから雪崩のように溢れ出す情報を、身近な形で見せてくれるものだ。

「表面にコンピューターを置かないように努めました。既存のデバイスのための、よりより接点を提供し、コンピューターにまとわりつく情報の圧力を軽減することで、その能力を向上させようと考えました」とアシュタナ氏。

TouchWoodの構造。上から、天然素材、独自の結合剤、静電容量センサー、ポリマー、高輝度LED、構造層(画像クレジット:TouchWood)

みなさんも、私と同様、ブラウザーのタブや画面の下に並ぶアプリにしょっちゅう目をやって、新着メールやSlackのメッセージやカレンダーの予定などに更新がないか確認しているのではないだろうか。TouchWoodでは、そうした通知は別の形で示される。たとえば、コーヒーやマウスを置いた場所に光る輪が表示される。そこに触れると要約や内容を見ることができ、スワイプで消すこともできる。タブを切り替えたり、別のアプリに移動したり、スマホのロックを解除するといった手間は一切ない。用事が済めば、普通の木の机に戻る。

ドワマン氏は、自然な移行を期待している。「私たちが知っているタッチスクリーンは、登場してからほんの10年か11年程度しか経っていません。しかし、あまりにも広く普及しているため、当たり前のものになっています」と彼は話す。「SF映画を見ると、500年後の未来でもまだタッチスクリーンが使われてるじゃないですか! そんな馬鹿な。自動車の歴史に置き換えるなら、今のiPhoneはT型フォードみたいなものです」

TouchWoodは、いずれはプラットフォームになることを目指しているが、その前に製品を立ち上げる必要がある。同社では、大型の表示部分を2つ備えた高級なデスク(座って使うタイプと立って使うタイプ)を来年中に、2000ドル(約21万円)代で発売する予定だ。たしかに高い。でも、新しい家具、なかでもにわかに重要性を増してきたホームオフィスの中心となる重要なアイテムに人々が喜んで費やしている金額を見ると、きっとみなさんも驚くはずだ。

旗艦製品でそのコンセプトを表に出した後は、彼らはそのニッチな方向へスタートを切り、パートナーたちと手を結べるようになる。見えないディスプレイをカウンタートップや壁や、もちろんレストランのテーブルなどに埋め込むというアイデアは、あらゆる使用事例を導き出す。そこには、TouchWoodの、画面(少なくとも目に見える画面)の数がわずかに少ない未来に通じる期待がある。

画像クレジット:TouchWood

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(翻訳:金井哲夫)

DARPAが小型で並列性の高い双方向脳コンピューターインターフェイスの開発に6500万ドルの研究資金を提供

DARPAは6500万ドルの新規ファンドを用いて、人間の脳がコンピュータインタフェースと直接対話することを可能にする神経インプラントの開発を目指している。Neural Engineering System Design( NESD:神経エンジニアリングシステム・デザイン )プログラムの一環として、DARPAは5つの学術研究グループとサンホセに本社を置く1つの小さな企業に資金を提供し、その目標をさらに進める。

DARPAが興味を持っていることの雰囲気を味わってもらうなら、例えばブラウン大学のチームは、大脳皮質の上または中にインプラントとして装着することのできる「ニューログレイン」の広大なネットワークに編み込むことのできるインターフェイスを作成しようとしている。これらのセンサーは、脳がどのようにして音声言語を処理し、解読しているかを理解する目的のための、リアルタイム電気通信を行うことができる。これに関わる脳の働きは極めて複雑で自動的なもので、この側面はいまだに研究者たちを悩ませている。

資金提供を受ける6組織のうち4つは視覚知覚に興味があり、残りの2人は聴覚知覚と発話に関する研究を行っている。MIT Technology Reviewによれば、資金調達ニュースに含まれている唯一の企業であるParadromicsが、約1800万ドルを受け取ると報じている。ブラウン大学のチームと同様に、Paradromicsは資金を利用して、音声を解読し、解釈することができる補助装置を開発する予定だ。

受け取り側の組織は皆、熱烈に目指している高い目標のリストを持っている。DARPAにとって開発が最優先されるテーマは、1度に100万ものニューロンからの信号を記録することのできる「高分解能」神経インプラントを開発することだ。さらに加えて、デバイスは双方向通信を提供することを要求している。信号を受信するだけでなく、信号を送信することも可能にするのだ。そして、もはや2枚の硬貨が重ねられたようなものではないパッケージングが求められている。

「NESDは、高度な神経インタフェースの能力を増強し、100万以上のニューロンを並行して扱うことにより、脳の豊かな双方向コミュニケーションを、その器官の基礎となる生物学、複雑さ、機能の理解を深めるのに役立つスケールで実現することを目指しています」と、NESDの立案プログラムマネージャであるPhillip Alveldaは述べる。

NESD資金受給者の全リスト:

研究チームは、4年間のプログラム期間中、DARPAの夢のインプラントを人間の脳内および脳表面に装着することによる、長期的な安全性の影響について、FDAと調整を行なう予定だ。

しばしば脳コンピュータインターフェース(BCI)と呼ばれるこのテクノロジーが、なんらかの進展をみせた場合、広大な可能性の世界が開かれる。例えば外傷性脳傷害からのリハビリへの利用から、WhatsAppメッセージを考えただけで入力できるようになるまで、BCIは現代技術のあらゆる面に革命を起こす可能性がある。しかし、たとえ資金が流入しても、このような技術を開発する際の課題は無限に残る。日常身に付けることができるほど、ハードウェアはどれほど小さく非侵襲(ひしんしゅう)的なものにできるだろうか?人間の脳への直接的なリンクを作るというプライバシー上の悪夢を考えたとき、どうすればそれらを保護することができるのだろうか?

実用的な脳とコンピュータのインターフェースを作り出すことは、最も難しいハードウェアと最も難しいソフトウェアの問題をなんとか織り交ぜて行くことが必要な挑戦だ。そしてもちろんDARPAは、近未来の双方向性脳インプラントの橋を建設することに関心を持っている唯一の資金潤沢な組織ではないが、その防衛予算と学術的なコネクションを考えれば、間違いなく私たちが賭けるに値する馬だ。

DARPA

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(翻訳:Sako)