低コスト細胞培養技術CulNet Systemのインテグリカルチャーが7.8億円調達、2022年に世界初の培養フォアグラ上市を目指す

低コスト細胞培養技術CulNet Systemのインテグリカルチャーが7.8億円調達、2022年に世界初の培養フォアグラ上市を目指す

独自開発の低コスト細胞培養技術「CulNet System」(カルネット システム)の生産プラットフォーム化を目指すインテグリカルチャーは、シリーズA’ラウンドにおいて、第三者割当増資による総額7億8000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リアルテックファンドやFuture Food Fund1号投資事業有限責任組合をはじめとする複数のベンチャーキャピタル、および事業会社の計12社。累計資金調達額は約19億円となった。また、2022年後半以降には施設拡大を目的としたシリーズBを予定。

  • リアルテックファンド
  • Future Food Fund1号投資事業有限責任組合(新規)
  • Beyond Next Ventures
  • 食の未来ファンド(kemuri ventures。新規)
  • りそなキャピタル6号投資事業組合(新規)
  • Plan・Do・See(新規)
  • 山口キャピタル(新規)
  • SuMi TRUST イノベーションファンド(新規。三井住友信託銀行とSBIインベストメントが共同設立したプライベートファンド)
  • いよぎんキャピタル(新規)
  • AgFunder
  • VU Venture Partners
  • ほか1社

調達した資金は主に、CulNet Systemのスケールアップと、これを用いた細胞農業生産プラットフォーム構築に向けた研究開発、および培養フォアグラ製品上市や化粧品原料などの事業化資金にあてる。細胞農業プラットフォーム構築に向けた研究開発では、主に培養プロトコル開発の動物種を広げ、食品会社や細胞農業スタートアップを中心に、受託研究や共同研究パートナーを拡大する。低コスト細胞培養技術CulNet Systemのインテグリカルチャーが7.8億円調達、2022年に世界初の培養フォアグラ上市を目指す

同社は、2021年に細胞農業オープンイノベーションプラットフォーム「CulNetコンソーシアム」を12事業体で設立し、その後も加盟企業が増えているという。2021年4月にリリースした、細胞培養上清液を用いた化粧品原料「CELLAMENT」(セラメント)は、原料販売・OEM事業をスタートした。今後も、原料およびOEM製品として事業拡大を計画しているという。

食品事業では、2022年に培養フォアグラの世界初の上市を予定しており、月産8kg/機の安定生産を実現した上で、数年おきにスケールアップを達成、生産規模の拡大および低コスト化を目指し研究開発を進める。

同社代表取締役CEOの羽生雄毅氏は、「引き続き弊社ミッション『生物資源を技術で活かし、健やかな社会基盤を創る」に向けた技術開発を進め、2022年に培養肉をついに現実のものとします。色々な食文化が新たに生まれる世界が見えてきており、ワクワクしています」と話している。

細胞培養スタートアップ「インテグリカルチャー」が培養肉技術を活用し世界初のスキンケア化粧品原料を開発

細胞培養スタートアップ「インテグリカルチャー」が培養肉技術を活用した世界初のスキンケア化粧品原料を開発

細胞培養スタートアップのインテグリカルチャーは4月7日、スキンケア化粧品原料「CELLAMENT」(セラメント)を開発し、量産体制が整ったことから、2022年にセラメント配合スキンケア化粧品の上市を目指す化粧品会社と原料販売の商談を開始したと発表した。

セラメントは、原料素材にワクチン製造にも使われる安全性の高い卵(国産)を使用しており、卵由来「鶏胚膜(胎盤様)組織」の培養上清液化粧品原料として​は世界初としている。成長因子(グロースファクター)、アミノ酸、ビタミンなど、肌に有用な生理活性物質を豊富に含んでおり、線維芽細胞増殖促進・抗酸化・保湿・皮脂合成抑制などのエビデンスを確認しているという。

同社は、化粧品原料開発においても、細胞農業のアプローチにより動物細胞資源を有効活用し、多様で豊かな未来の実現を目指す。

細胞農業とは、生物を構成している細胞を体外で培養することにより、従来のような動物飼育をすることなく、肉や乳製品などの農産物とまったく同じものを作り出せる新しい資源生産の考え方。伝統的な農業に比べ環境負荷が小さく、持続可能な生産方式として期待されているという。

セラメント概要

  • 化粧品表示名称:ニワトリ胚体外膜細胞順化培養液
  • 特許出願番号:2018-210910
  • 製造国:日本
  • 8つの安全性試験クリア済み:ヒト皮膚パッチ試験、3次元皮膚1次刺激代替試験、3次元眼刺激代替試験、皮膚感作性代替試験(KeratinoSens、h-CLAT)、RIPT試験(アレルギーテスト・累積刺激)、アレルゲン分析、ウイルス検査、染色体異常
  • 公式サイトhttps://www.cellament.jp/

2015年10月設立のインテグリカルチャーは、細胞培養技術をベースに培養肉作りの研究開発からスタートした研究開発型スタートアップ。独自開発の低コスト・汎用大規模細胞培養技術「CulNet System」(カルネット システム)を中心とした事業展開をしている。

同社によると、培養肉研究開発の中で、CulNet Systemにおいて2種以上の細胞種・組織を一緒に培養する「共培養」を構成している細胞が、肌に有用な成分を作り出していることを見い出したという。化粧品用途に応用すべく約2年の研究を実施し、卵の胎盤様組織にある3種類の細胞(3mix細胞)の培養上清液を新規化粧品原料「セラメント」として開発・商品化した。3mix細胞とは、鶏卵の胚膜(胎盤に相当する部分)にある3つの細胞「羊膜」(ようまく)、「卵黄嚢」(らんおうのう)、「漿尿膜」(しょうにょうまく、漿膜と尿膜をまとめたもの)を指すそうだ。

細胞培養スタートアップ「インテグリカルチャー」が培養肉技術を活用した世界初のスキンケア化粧品原料を開発

採取した細胞を培養すると、その培養液中に細胞から成長因子(グロースファクター)が大量に分泌される。ここから、細胞を除いた上澄み液は培養上清液と呼ばれる。この培養上清液中には細胞活性のカギとなる情報伝達物質が豊富に含まれているそうだ

セラメントは、PCPC(Personal Care Products Council。米国パーソナルケア製品評議会)にて新規化粧品原料として登録済みで、卵由来の胎盤様組織の培養上清液化粧品原料としては世界初となる。

インテグリカルチャーのCulNet Systemは、同社独自の汎用大規模細胞培養技術(汎用細胞培養プラットフォーム)で、動物体内の細胞間相互作用を模した環境を擬似的に構築する装置(特許取得済み)。

動物体内を模した環境を構築することで、細胞培養の高コスト原因であった成長因子の外部添加を不要とし、コスメに使用可能なエキス成分から、食肉に用いる細胞成分まで、様々な利用範囲をもつ成分を安価で大量に生産できるという。理論的にはあらゆる動物細胞を大規模・安価に培養可能で、様々な用途での活用を想定しているそうだ。

すでにラボスケールでは、管理された制御装置下で種々の細胞を自動培養し、高コストの一因であった血清成分の作出を実現(特許出願済み)。血清成分の内製化実現により、従来の細胞培養が高コストとなる主因の牛胎児血清や成長因子を使わずに済み、細胞培養の大幅なコストダウンを実現するとしている。

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カテゴリー:バイオテック
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