データクリーンアップのスタートアップ、インドネシア拠点のDelmanが約1.7億円を調達

ジャカルタに拠点を置くデータ管理のスタートアップであるDelman(デルマン)が、シード資金として160万ドル(約1億7000万円)を調達した。このラウンドはIntudo Venturesによって主導され、Prasetia Dwidharma VenturesとQlue Performa Indonesiaが参加した。調達資金は研究開発センターの設立ならびにソフトウェアエンジニアとデータサイエンティストの採用に使われる。

Delmanの設立は2018年である。創業者はカリフォルニア大学バークレー校の同級生である最高経営責任者のSurya Halim(スーリヤ・ハリム)氏と最高製品責任者のRaymond Christopher(レイモンド・クリストファー)氏そして最高技術責任者のTheo Budiyanto(テオ・ブディヤント)氏の3人だ。彼らは卒業後、Google(グーグル)やSplunkなどのシリコンバレーのテクノロジー企業で働き、その後インドネシア市場に注力することを決断した。

元々はエンドツーエンドのビッグデータ分析プロバイダーとして立ち上げられたDelmanは、インドネシアのクライアントと議論を重ねる中で、データの準備と管理にその焦点を移した。多くの企業は、高価なデータ分析ソリューションに予算を割り当てていたが、データが複数のフォーマットに分散しているために、分析が始められる状態にないことに気がついたという。Delmanの使命は、データをクリーンアップして準備することで、データエンジニアや科学者が仕事を簡単に行えるようにすることだ。

ハリム氏によると、インドネシアの大企業の多くは通常、データのクリーンアップと保管に最大20万ドル(約2200万円)ほどを費やしているが、Delmanはそれよりも費用対効果が高く、より迅速な代替手段を提供するのだという。

「私たちもクライアント向けに分析とデータの視覚化を行う能力を持っていますが、それを行う企業はすでに多すぎるほど存在しています。それこそが私たちが自分たちのビジネスモデルを、よりニッチで必要とされているものにシフトした理由なのです」とハリム氏は語る。「また、こうすることでデータ分析サービスを行うすべての企業とのパートナーシップへの扉を開くことができるのです」。

ハリム氏によると、新しい会社やスタートアップのデータセットは比較的きれいだが、多くの古いインドネシアの企業、特に複数の都市に支店がある会社は手書きの台帳、Excelのスプレッドシート、その他のソフトウェアに、分散した大量のデータを持っていることが多い。そうしたデータには、修正が必要なコード、キーワード、タイプミスが含まれる場合もある。

「新しい会社にとってはそれは比較的簡単です、なぜならすべてがすでに標準化されているからでう」とハリム氏。「しかし、1970年代に設立された会社が、前世代のデータを自身のシステムに統合して、将来のライバルと競争するために、顧客の行動についての記録を残したい場合には、データ駆動型のポリシーが必要になります」。

Delmanは業界に囚われておらず、そのクライアントは大企業やコンサルティング会社から政府機関まで、多岐にわたっている。その顧客にはPWCとQlueも含まれている。ハリム氏は同社が他の東南アジア市場への拡大を計画していると語る。そして、新型コロナウイルス(COVID-19)が人々の働き方を変えるために、企業はITインフラストラクチャへの投資を増やし、中央以外の場所からデータベースにアクセスしやすくすることを望んでいるのだと語った。

Intudo Venturesの創業パートナーであるEddy Chan(エディ・チャン)氏は、プレス発表の中で次のように述べている。「Delmanは高度にローカライズされたアプローチとグローバルな技術的専門知識を組み合わせることで、インドネシアのビジネスにインドネシアで開発されたビッグデータソリューションを提供し、最終的にはエンドユーザーにより良い結果をもたらしているのです。2017年にシリコンバレーでDelmanの創業者チームに会って以来、経営陣としての成長を目の当たりにしています、今後も起業家としての旅で彼らをサポートできることを楽しみにしています」。

画像クレジット:3alexd  / Getty Images

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(翻訳:sako)

大統領選後の暴動でインドネシア政府がインスタなどFacebook系SNSをブロック

ソーシャルメディアに厳しい態度を取る国にインドネシアが加わった。大統領選挙後に起きた暴動で死傷者が出たことを受けてインドネシア政府はInstagram、WghatsAppの利用を一部制限した。

米国時間5月22日、インドネシア居住の多数のユーザーがテキスト以外の町メディアのメッセージをWhatsAppで送ることが難しくなっていると報告している。WhatsAppは同国でもっともポピュラーなチャットアプリだ。またFacebookのメディアも規制のターゲットなっている。#instagramdownというハッシュタグがTwitterユーザーの間で急上昇しているところをみるとInstagramもへの投稿も困難となっているようだ。

政治、法律、セキュリティー調整担当大臣のWiranto氏は記者会見でインドネシア政府はソーシャルメディアへのアクセスを制限しており、「事態の平静化を確保するため(SNSの)一部の機能を無効にしている」ことを確認したとCoconutsが報じている。

Rudiantaraコミュニケーション大臣は、以前からFacebookのメディアに批判的だったが、「ビデオや写真をWhatsAppにアップロードしようとすると相当時間がかかるだろう」と警告している。

WhatsAppとInstagramの双方を所有しているFacebookはまだインドネシア政府によるブロックを公式に確認していない。ただし「インドネシア政府と話し合いを続けている」ことは認めた。TechchCrunchの取材に対し政府のスポークスマンは次のように回答した。

インドネシア政府はジャカルタで治安上の問題が発生していることを認識しており、対処中だ。われわれはあらゆる機関を動員して家族友人との会話その他重要な情報への公衆のアクセスとコミュニケーションの確保に務めている。

インドネシア在住の多数のWhatsAppユーザーがTechCrunchに述べたところによれば、写真、ビデオ、ボイスメールなどテキスト以外のメッセージを投稿することができなくなっている。ただしWi-Fi網またはVPN経由ならこの制限にかからない。

インドネシアでは5月21日に、大統領選挙の結果が発表さた後政治的緊張が高まっていた。現職のジョコ・ウィドド氏がプラボウォ・スビアント氏を破ったことについて、スビアント氏はこの選挙結果を不当とてし憲法裁判所に訴えると述べた。

昨日、ジャカルタ州の抗議行動が暴動に発展し、少なくとも6人の死者と200人以上の負傷者が出た。地元メディアによれば、この暴動にはソーシャルメディアを利用して拡散されたフェイクニュースが大きな役割を果たしたという。

5月22日のジャカルタ暴動で警官隊に投石するデモ参加者(写真:ADEK BERRY / AFP)

サービスが当局によって強制的に遮断される経験はFacebookにとってもはや珍しいものではなくなっている。同社のサービスは多くの地域でフェイクニュース拡散の有力チャンネルの1つとなりっており、4月にはスリランカでも利用制限を受けた。 このときはテロリストの攻撃を防ぐためにサービスは数日間完全に遮断された。今週インド政府は、総選挙に関連して、Facebookがフェイクニュースの拡散防止に充分な努力を払っていないとして懸念を表明した。WhatsAppはインド最大のチャットサービスで月間ユーザーは2億人だという。

Jakarta Post(ジャカルタポスト)の記事によれば、先週、ルディアンタラ情報通信大臣は議会の委員会で次のように証言している。

Facebookは「政府の指示を遵守している」と言う。しかし我々が削除を要請した無数の記事のうち、実際にFacebookが削除した記事はほんのわずかだ。Facebookは間違いなく最悪だ。

画像: ARUN SANKAR / Getty Images(画像に編集あり)

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

配車サービスGrab、ソフトバンクとDidiから20億ドル調達――今後は決済サービスにも注力

東南アジアでUberとライバル関係にあるGrabが、中国でUberを破った既存株主のDidi Chuxingとソフトバンクから新たに20億ドルを調達した。

他の既存株主や新しい投資家の意向を考慮すると、ラウンドの規模は最大25億ドルになりえたと同社は語っている。またGrabの広報担当者によれば、ソフトバンクからの出資はビジョン・ファンド経由ではなく、ソフトバンクグループ株式会社によるものとのこと。

さらに情報筋によれば、今回の資金調達によってGrabのポストマネー評価額は60億ドルを超えたとされている。これは、2016年9月に同社が7億5000万ドルを調達した際に報じられていた、30億ドルという評価額の倍以上だ。

「Didi・ソフトバンクとの戦略的関係をさらに深めることができ大変嬉しく思っている。また、先進的な両社が私たちと同じように、東南アジアや当地のオンデマンド交通市場、決済市場に期待していて、Grabがその巨大なチャンスを手にする上で有利な立場にあると考えていてくれていることにも勇気づけられる」とGrabの共同ファウンダーでCEOのAnthony Tanは語った。

要するにDidiとソフトバンクは、昨年8月にUberが中国事業をDidiに売却したのと同じように、Grabには東南アジア市場でUberを負かすだけの力があると考えているのだ。今月に入ってUberがロシア事業を現地の競合Yandexに売却したこともあり、その期待は高まる一方だ。

「市場でのポジションやテクノロジーの優位性、現地市場へのフォーカスといった特徴を備えたGrabが、配車事業を手始めに、東南アジアのネット経済でリーダー的な立場を築きつつあるのは明白だ」とDidiのファウンダーでCEOのCheng Weiは声明の中で述べた。これはUberにとってはかなり痛烈なメッセージだ(中国事業を買収したときの契約に基づき、DidiはUberの株式を一部保有している)。

現在Grabは東南アジアの7か国・36都市で営業しており、アプリのダウンロード数は5000万以上、ドライバーの数は110万人にのぼるとされている。サービスの中心は、営業許可を保有するタクシーや自家用車を使ったものだが、国によってはバイクタクシーやシャトルバス、カープーリングなどのサービスも提供している。

Uberは東南アジア事業の数字を公開していない一方で、インドネシアでGrabとしのぎを削るGo-Jekは、同国ではマーケットリーダーとして考えられている。

またビジネス面に関し、Uberは昨夏に東南アジアの一部で黒字化を果たしたと言われていた。しかし同社は中国市場から撤退した後、東南アジア(+インド)市場への投資額を増やしている(前CEOトラビス・カラニックは中国事業には年間10億ドルかかると語っていた)。Grabの広報担当者は「特定のサービス・都市に関しては黒字化を果たしているが、細かな分類は行っていない」と語ったが、同社が以前行った調査では、東南アジア全域に関し、営業許可のある車両を使った配車サービス市場の95%、自家用車を使った市場の71%をGrabが握っているとされていた。

今後ビジネスをひとつ上のレベルに押し上げるため、Grabはモバイル決済プラットフォームの開発にも取り組んでいる。そのかいもあってか、サービスローンチ当初は現金のみの支払いだったのが、クレジットカードも利用できるようになった。さらに決済プラットフォームの開発を進めるうちに、Grabは東南アジアで最大規模の経済、そして世界第4位の人口密度を誇るインドネシアでのフィンテックサービスに商機を見出した。

昨年Googleが共著したレポートによれば、東南アジアの配車サービス市場の規模は、2015年の25億ドルから2025年までに131億ドルへ成長すると予測されており、インドネシアがその半分以上を占めることになると言われている。Grabもインドネシアの古びれた銀行システムの影にその可能性を感じており、パイを拡大するためにも現代的な金融システムの開発を行っているのだ。

今年のはじめに、同社はインドネシアでのサービス開発に向けた7億ドルの投資プログラムを発表し、そのうち少なくとも1億ドルを企業への出資や買収に投じるとされていた。その後、発表から2か月ほどでオフライン決済スタートアップKudoを買収し、関係者によれば買収額は1億ドル近かったと言われている。

Go-JekもGrabが手をつけ始める前から決済サービスを提供しており、両社の正面衝突は必至だ。Go-Jekに近い情報筋よれば、同社は今年の5月にTencentを中心とする投資家から12億ドルを調達したと伝えられているが、当時Go-Jekはそれを認めず、それ以後も資金調達に関する発表を行っていない。しかし今回のGrabのニュースを受けて、Go-Jekは財務面のプレッシャーを感じていることだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Funding Societiesが750万ドルを調達、東南アジアで個人出資ローンサービスを展開

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また新たに東南アジアのフィンテック系スタートアップが、注目の投資ラウンドを終えた!シンガポールを拠点とするFunding Societiesが、同社のマーケットプレイスを介したローンサービスのため、シリーズAラウンドで750万ドルを調達したのだ。

本ラウンドでは、Sequoia Capitalが設立した、東南アジアを拠点とするスタートアップが対象のファンドであるSequoia Indiaがリードインベスターとなり、エンジェル投資家もそれに加わった。

2015年6月にローンチされたFunding Societiesは、Lending Clubを例としたアメリカに既に存在する企業のように、誰でも利子狙いで貸出資金を出資できるプラットフォームを運営している。Funding Societiesは、自分たちのプラットフォームを「Peer to Business(個人から企業へ)」プラットフォームと呼ぶことで、競合他社との差別化を図っている。つまり、現状彼らは消費者向けではなく、中小企業向けにローンを提供しているのだ。しかしターゲットについては、取引のボリュームが増加してくれば変わってくる可能性もある。

Funding Societiesは、シンガポールと(Modalkuと同じ)インドネシアで営業を行っている。シンガポールは、東南アジアの国々の中でも経済発展ではトップの地位にあり、インドネシアも経済規模では同エリアのトップだ。なお、両国にはCapital MatchMoolahSenseといった競合が既に存在する。

同社は、これまでに96件で合計870万ドルのローンを実行している。返済率は94%と発表されており、Funding Societies CEOのKelvin Teoは、返済率こそボリュームではなく信頼度を測れる意味で、重要なデータだと語っている。

「Funding Societiesは、シンガポールにある他社と比べ、サイズでは劣っていますが実行したタームローンの数では1番です。これには、度を越した貸付を行うといつか不渡りの形で返ってくるという私たちの考え方が反映されています」と彼は説明する。

詳細を説明すると、Funding Societiesは主に運転資金の貸出を行っており、シンガポールの平均ローン額は9万シンガポールドル(6万7000ドル)で、インドネシアは2万5000シンガポールドル(1万8500ドル)だ。

借り主にはローン組成費用(シンガポールで3〜4%、インドネシアで5〜6%)が発生し、貸し主は月々1%の利用料を支払わなければならない。同社によれば、ローン申請の審査通過率は15〜25%とのこと。

拡大と規制対応

Teoは、TechCrunchの取材に対し、Funding Societiesがマレーシアへの参入準備を進めていると語った。マレーシアには既に数人の従業員がいて、現地での営業許可に関する当局のフィードバックを待っている状況だ。

マレーシアへの展開と全般的な規制対応のふたつが、今回調達した資金の主な使い道だ。さらに彼は、東南アジアではP2Pローン市場がまだ成長過程にあり、Funding Societiesは新たな規制導入の需要を考慮して資金力を増強したと説明した。

また、コンプライアンスの重要性を強調し、投資家から資金を調達するのにも「信じられない程の」数の法律事務所に相談しなければならなかったと話した。

「私たちのいる業界に対する規制がシンガポールで発表されましたが、これに対応するには別途資金が必要になってくるでしょう」とTeoは語る。

Funding Societiesは、インドネシアでも同様に、当局と協力しながら個人出資ローンに関する規制のフレームワーク導入に取り組んでいる。

競争の激化

Teoは市場の競争激化を見越している。そのせいもあって、彼と共同設立者であるReynold Wijayaは、去年アメリカのハーバード大学を卒業する前に、100日間でFunding Societiesを立ち上げた。

「今年の卒業まで待っていたら、市場に遅れをとることになっていたでしょう」とTeoは話す。

素早く動く以外にも、商機を掴む上でタイミングがとても重要だったと彼は主張する。というのも、規制対応にかかる費用のせいで、資金力の無い会社は事業を続けられない可能性があるとTeoは考えているのだ。

「このタイミングで資金調達を行っていない企業は、東南アジアにあるプラットフォームで規制にのっとった営業を続けられなくなる恐れがあります。私たちは、今後6ヶ月のうちに競争が激化し、その後業界再編が起きると予想しています」と彼は付け加えた。

規制対応と拡大(ここにはインドネシアの首都ジャカルタ外の都市への拡大も含まれる)の他にも、Funding Societiesは製品への投資を考えている。現在、同社はiOSのアプリを貸し主向けに、そしてAndroidアプリを借入希望の企業に対して提供している。この決断は、アジア社会においてApple製品は富裕層に人気があるという無視しがたい状況に基づいている。しかし、今後借り主と貸し主向けのサービスを整備し、「個々の投資家のニーズに合った投資オプションをつくりだすような」サービスを増やしていく予定だとTeoは話した。

まだまだやるべきことは多いようで、Funding Societiesは既に約70人規模の企業に成長したが、Teoは同社のスタートアップらしい成長と、金融商品を扱うことの責任をすりあわせようとしていると強調した。

「私たちと投資家の方々は、爆発的な成長を推し進めて不渡りを発生させる代わりに、ゆっくりと確実に積み上げていくという姿勢をとっています。利益を生み出すためには、時間をかけてスケールしなければいけません」とTeoは、Funding Societiesが「2、3年」のうちの損益分岐点到達を目指すと説明しながら語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

アジアの次なる一大EC市場インドネシア

Indonesia, Jakarta, View of city during sunset

【編集部注】執筆者のHugh Harsonoは、元ファイナンシャル・アナリストで現在はアメリカ陸軍将校。

アジアの他の新興経済に比べ、インドネシアのEC業界は多くのチャンスに恵まれており、現時点での予測によれば、市場規模が2020年までに1300億ドル(中国とインドに続いて3位となる規模)に到達する見込だ。毎年50%におよぶ成長率予測と、強固なモバイルファーストイニシアティブを背景に、小売企業にとってインドネシアは、EC業の成長を促進するための本当の意味でのモバイルプラットフォームを開発するのに最適な国だと言える。特に、CPGs(消費財)を扱う企業にとっては重要な市場となってくる。

現在のインドネシアのEC市場は、中国のオンラインマーケットプレイスの黎明期と似ており、多くの起業家が、主にソーシャルメディア上での口コミを頼りに商品を販売している。同様に、初期のアメリカのEC市場にもよく似ていて、消費者の多くがオンライン決済や小売企業に対して慎重な態度を示している。アメリカと中国両方のEC経済をもとに、幅広い可能性をもったハイブリッド型経済を作り出せる可能性を持っている点から、インドネシアは真にユニークな存在だといえ、今後そのオンラインマーケットプレイスが世界へと進出していくだろう。

モバイルファーストインドネシア

インドネシアが、アジアにおけるモバイルファースト国家の最前線として国を形作っていった結果、StatCounterの推計によれば、2015年にはインドネシアのインターネットトラフィックの70%以上がモバイル端末から発信されていた。

インドネシアの人々が、モバイルファーストの構想を受け入れているというさらなる証拠は、ソーシャルメディアにある。インドネシアにおける、Facebookのモバイル端末からの利用率は世界最高で、2015年人には6300万人のユーザー数を記録している。さらに、予測によれば2018年までにモバイルユーザーの割合が99%近くまで上昇すると言われており、モバイルがデスクトッププラットフォームを凌駕している様子が伺える。インドネシアがとったモバイルファーストという道によって、小売企業はモバイル機能の開発に注力することができ、とてもユニークな業界構造を形成している。

インドネシアのECスタートアップと資金調達

インドネシア国内で設立されたECスタートアップや、同国を未開の市場と見て参入を狙っているスタートアップの数は飛躍的に増加しており、インドネシアのスタートアップ投資への関心の高まりにもそれが反映されている。

一気通貫のECサービスを提供しているaCommerceは、シリーズAラウンドで1070万ドルを調達し、さらには2016年後半に予定されているシリーズBの前に、追加となる1000万ドルの資金調達に成功した。追加ラウンドは、インドネシアの通信大手Telkom Indonesiaのベンチャー投資子会社、MDI Venturesが主導していた。

インドネシアのEC市場は、アジアで最大級になろうとしている。

ジャカルタを拠点とし、食料品配達アプリを提供しているHappyFreshに関しては、2015年に行われたVertax VenturesSinar Mas Digital Venturesをリードインベスターとする、シリーズAラウンドでの1200万ドルの資金調達が印象に残っている。その他にも、インドネシアのECスタートアップHijUpは、2回目となる数100万ドル規模のシードラウンドをクローズし、Fenox Venture Capital500 Startupsから資金を調達した。

しかし、これまでのインドネシアの巨額投資案件全てが、オンラインマーケットプレイスを運営するTokopediaに関連したもので、同社はSoftbankSequoia Capital主導で行われた投資ラウンドでは1億ドルもの資金を調達している。初期段階のスタートアップ投資への関心は、既に明らかに高い状態にあるため、中期・後期段階の企業への出資を行っている投資家は、間違いなくインドネシアのスタートアップに目をつけておくべきだ。

なぜインドネシアなのか?

多様な参加者による繁栄

現在のインドネシアの小売市場は、消費財が「フラグメンテッドトレード(Fragmented Trade)」として知られる、主に個人商店から構成されるスペースで販売されることで成り立っている。EC市場は、現在その2倍のスピードでの成長を遂げており、個人商店の多くがECモデルをとらざるをえない状況を作り出しているのだ。その結果、EC市場には、オンライン上の消費者の需要を満たそうと躍起になる個人の売り主と、同じ層をターゲットとする小売大手企業が同時に存在している。

他のアジアの国々とは違い、現在インドネシアの人々はものを買うときの意思決定において、小売大手企業にのみ依存していないため、個人商店が生き残り余地がある。結果的に、EC界でも市場に影響を与える覚悟のあるプレイヤーであれば、誰でも参加できるようになっており、これは他のモバイルファースト国家ではあまり見られない現象だ。

農村地域からの専門品の購入

小売網を築くのに必要な政府の力やインフラが整っていないため、インドネシアの都市の多くが、現在全く未開発の状態にある。しかし、EC人気がこの状況を利用し、以前は地方で購入することができなかったような消費財の販売を開始したのだ。

農村・準農村地域の大きな成長可能性を背景に、インドネシアのEC市場は、消費者がみつけることの難しい商品の販売を積極的に行っている。これは、農村地域でインターネットを利用できるようなモバイル端末の普及が進んでいない他国の状況とは対照的だ。実際のところ、インドネシアの人気オンラインサイトBliBliの250万人の顧客のうち、1/3以上が農村地域に住む人々だ。BliBliは、スマートフォンがインターネットにアクセスする唯一の手段という人に向けて商品を販売しており、売上のほとんどがモバイルプラットフォーム上で発生している。この農村地域からの専門品の購入という現象から、インドネシアにはオンラインマーケットプレイスが成長する上で、他国にはない最適な環境が存在している。

真のモバイルファーストプラットフォームの提供

インドネシアのEC市場の特性から、小売企業やフラグメンテッドトレードに参加している個人商店は、本当の意味でのモバイルファーストプラットフォームの開発に集中することができる。つまり、デスクトッププラットフォームをモバイル用に作り変えのではなく、明確にモバイルユーザーをターゲット層として捉えることができるのだ。

この真のモバイルファーストというシナリオの下では、売り手側が自分たちのためにスマートフォンを利用し、インドネシアの2億5000万を越える人口の中の特定の層やグループではなく、もっと詳しいユーザーデータの収集を通じて個別の消費者をターゲットとすることもできる。

さらに、モバイルファーストの環境のおかげで、インドネシアのEC市場への参入もしやすくなっている。同市場への参入を考えているスタートアップは、どの消費財を販売するかだけでなく、モバイルアプリを介したマーケット・ペネトレーションを通じて、どの消費者を顧客にしたいかまで選ぶことができるのだ。

ソーシャルメディアを通じた採算性

他のモバイルファースト国家では、消費者が利用しているソーシャルメディアにバラつき(中国:Weibo/QZone/Tencent QQ、インド:Facebook/Google+/Twitter、フィリピン: Instagram/Snapchat/Facebook)があるものの、インドネシアは、Facebookという単一のソーシャルメディアが広く浸透している(インドネシア人の92%以上がFacebookアカウントを持っている)という意味で珍しい存在だ。

インドネシアの消費者は、オンラインマーケットプレイスが登場した当初のアメリカの消費者に似て、オンライン決済にはとても慎重な態度を示している。

今日のインドネシア人の購買力が、ここまでソーシャルメディアのおすすめ情報によって形作られていることを考慮すると、Facebookというプラットフォームとの統合に注力することで、各企業は消費財の直販や宣伝、さらにはパートナシップを通じて利益を生み出す可能性のある、ユニークなスペースを作りだすことができる。Facebookを、オンラインフォーラムのKaskus やTokobagus、さらにはSukamartのようなオンラインストアといった人気サイトと結びつけることで、高品質な製品ビデオや、製品比較、画像の最適化などのモバイルファーストの機能が実装され、EC市場の成長に繋がる可能性もある。

オンライン決済の可能性

インドネシアの消費者は、特に他のモバイルファースト国家と比較して、オンラインマーケットプレイスが登場した当初のアメリカの消費者に似て、オンライン決済にはとても慎重な態度を示している。そのため、多くのEC取引の決済が銀行送金か「bayar di tampat(代金引換)」の形をとっており、決済がうまく機能しないことから、EC市場の成長を大きく制限してしまっている。

インドネシア人の支出額が毎年10%近く伸びていることから、代金引換はすぐに継続できなくなるだろう。オンライン決済の利用を促すような信頼できるソリューションが登場すれば、それが大きな成長に繋がる可能性が高く、大小を問わず小売企業各社もビジネスの流れを効率性の高い形に整備することができる。

現代的な物流・配達プラットフォームの獲得

さらに、インドネシアの未発達なインフラや物流システムが、EC業界の特異な成長機会を生み出している。EC企業は、自社の発注システムと配達システムを垂直統合することができ、それが大きな成長に繋がるのだ。

アウトソースに頼らず、自社内でソリューションを開発するという時代にあるインドネシアでは、未開発の物流市場がEC市場に発展をもたらす。EC業界における違った形の競争として、各企業が自社専用というだけでなく、より効率的な配達システムを開発することができ、供給能力が同業界での成功のカギを握る要素のひとつとなるのだ。

まとめ

アジアにおける名高い新興各国の中で、経済発展の推進力としては過小評価されがちなインドネシアだが、実は同国が世界最大のEC業界となる上での種々のユニークなチャンスが存在している。

膨大な数のインターネットユーザーや、未発達のインフラのおかげで、企業と個人のどちらも、EC市場をこれまでにないほどの高みへと成長させる可能性を持っている。さらに、自由に使えるお金を持った中産階級の増加によって、EC市場は拡大する一方であると同時に、企業や個人の売り手が市場の覇権を狙ってさらに流入していくだろう。

インドネシアのEC市場は、市民が簡単に消費財を購入できるようなモバイルファーストプラットフォームを利用することで、アジアで最大級の市場になろうとしている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Uberの東南アジアのライバルGrabがモバイルペイメントプラットフォームを開発中

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ライドシェアリングサービスを運営する企業が、車での移動という既存のサービスと全く異なる製品やサービスを提供できるということはめったにない。しかし、東南アジアでUberとの競争を繰り広げているGrabが、まさにそれを行おうとしている。

シンガポールを拠点とするGrabは、本日(米国時間7月22日)、同社のペイメントシステムを利用して、ユーザーがGrabのサービス以外の支払も行えるようにしていくと発表した。「GrabPay」はGrabのキャッシュレスデジタルウォレットサービスで、年初にはじめて発表されて以降Grabアプリ内に設置されている。

「Grabは、ペイメントプラットフォームをGrabPay内のモバイルウォレットオプションとして、Grabアプリ上に統合していきます。これにより、モバイルユーザーはGrabアプリを使って、日々の交通手段だけでなく、その他の生活サービスの支払も行えるようになります」と同社は説明した。

Grabは、はじめに2億5000万人の人口を誇る東南アジア最大の国インドネシアをターゲットとし、今年中に「ペイメントプラットフォーム」をインドネシアのユーザーに対して提供しようとしている。このプロジェクトでGrabは、インドネシアの10億ドル規模の小売コングロマリットLippoとパートナーシップを結んでいる。Lippoは、Grabの投資家でもあり、近年eコマーステック投資の分野へ進出している。GrabにとってLippoは初めての小売パートナーであり、Lippoのビジネス(デパート、映画館、オンラインショップなど)の顧客に対してGrabアプリを通じての支払サービスを提供していく。そのうち、他の小売企業もGrabのプラットフォームに加わっていくかもしれない。

ライドシェアリングからペイメントサービスというのは不思議な拡大路線のように感じられるが、市場全体を支配するひとつのペイメントシステムが存在しない新興市場においては、とてもロジカルな動きだといえる。ペイメントサービスを提供することで、今後さらにサービスの利用頻度が増えることが予想される既存顧客との結びつきを強めるだけではなく、もっと多くの人にサービスの魅力を伝えることでGrabのユーザーベースを拡大することにもつながる可能性があるのだ。東南アジアでは、「クラウド」という言葉には効き目がある。というのも、オンラインペイメント業界は、モバイルオペレータや銀行、Lineのようなメッセージアプリを運営する企業などがそれぞれのサービスを市場に売り込んでおり、細分化がかなり進んでいるのだ。Lippoとの協業は、間違いなくGrabにとって大きな後押しとなるが、決してそれで勝負が決まってしまうわけではない。

「東南アジアでのペイメントプラットフォーム開発の可能性は無限大です」とGrab CEOのAnthony Tanは、声明の中で語った。「東南アジアの人の大半が携帯電話を持っていながら、銀行口座を保有していません。私たちは、彼らにお金の管理ができるようなキャッシュレスソリューションを提供する必要があると考えており、モバイルウォレットはその一歩となります」

実は同様の動きは既にアジアで起きていた。Uberのインドのライバルであり、Grabと協力関係にあるOlaは、昨年11月にOlaアプリ内のペイメントシステムを、スタンドアローンのアプリとして展開していた。Grabは、少なくとも当面の間、ペイメントシステムをコアとなるGrabアプリ内にとどめておく意向だが、間違いなく同社は「アンチUber同盟」の仲間であるOlaにコンタクトをとり、ペイメントプラットフォームに関するヒントやアドバイスを求めていただろう。

Grabは、インドネシアがライドシェアリングの乗車数で最大の市場であると言っていたものの、同社のビジネスは今後インドネシアからさらに拡大していくと考えられ、今回のGrabPayのプラットフォーム構想が、どこかの時点でさらに5つの市場(シンガポール、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア)への拡大を想定していることを示唆していた。

「私たちは、各地域のローカルパートナーと協力し、東南アジアの大部分でキャッシュレス決済を現実のものにしていきます」とGrabは声明の中で述べた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter