暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.9.6~9.12)

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.9.6~9.12)

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年9月6日~9月12日の情報をまとめた。

「いきなりNFTトレカ」が10月3日よりSKE48とコラボでライブ撮りおろしデジタルトレカを販売、事前登録で限定トレカも

ブロックチェーン企業のcoinbookは9月11日、新しいデジタルトレーディングカードプラットフォーム「NFTトレカ」サービスの開始を発表した。同社は、NFTトレカ第1弾となる、アイドルグループ「SKE48」の大型配信ライブ「SKE48 12th Anniversary Fes 2020 ~12公演一挙披露祭~」の撮りおろし画像を収録した「いきなりNFTトレカ」を、10月3日より販売開始する。

「いきなりNFTトレカ」が10月3日よりSKE48とコラボでライブ撮りおろしデジタルトレカを販売、事前登録で限定トレカも

NFTトレカは、その名が示す通りイーサリアム(Ethereum)のブロックチェーン基盤を用いたERC-721準拠のNFT(Non Fungible Token。ノン ファンジブル トークン)として発行される。NFTは、代替不可能性を備え、発行するトークンそれぞれに固有の性質や希少性を持たせることができるため、技術的には世界に1枚しかないカードも表現できる。

NFTトレカは、発行時にアーティスト名・公演名・発行枚数・購入者(氏名など個人を特定するものではない)などのデータをブロックチェーン上に記録するため、データの改ざんができないことから複製も不可能となる。

また、ユーザー間でトレード(売買)を行った場合は、新しい購入者情報が記録される。これらの履歴は、すべてウェブ上で誰でも確認できるためカードの真贋性・希少性がブロックチェーンによって担保されるため、NFTトレカはデジタルトレーディングカードでありながら、既存トレーディングカードのようにコレクションとして楽しめる。

NFTトレカ第1弾は、SKE48とコラボレーション!

NFTトレカの第1弾は、SKE48とのコラボレーショントレカ「いきなりNFTトレカ」。10月3日~5日の3日間にわたって開催される配信ライブ「SKE48 12th Anniversary Fes 2020 ~12公演一挙披露祭~」の全12公演からの撮りおろし画像を収録したNFTトレカとなる。1パック5枚入りで税別価格1000円で販売される。NFTトレカの購入には、スマホ向け専用アプリケーション「NFTトレカ」(スマートアプリ提供)が必要になる(iOS・Android版、9月末リリース予定)。なお、ライブの状況によっては、販売開始時間が遅延する場合がある。

NFTトレカ第1弾は、SKE48とコラボレーション!

またNFTトレカは、同コラボを記念し「SKE48 Valentine’s Day Live 2020 ~CHOCOLATE in 静岡エコパアリーナ」 のライブ未公開写真を使った「限定シークレットNFTトレカ」をプレゼントするキャンペーンを行っている。対象は、キャンペーンページにおいてメールアドレスを登録した事前登録者全員。キャンペーン期間は、9月11日よりサービス開始まで(9月末予定)。特典の付与は10月上旬を予定、受け取りにはNFTトレカアプリのダウンロートが必要となる。

つくば市、市が支援する実証実験採択の最終審査にデジタルIDアプリを活用したインターネット投票を実施

茨城県つくば市は9月10日、マイナンバーカードとデジタルIDアプリ「xID」(クロスID。iOS版Android版)およびブロックチェーン技術を活用したインターネット投票を9月18日~25日に実施すると発表した。同市が募集する「令和2年度つくばSociety 5.0社会実装トライアル支援事業」の最終審査にインターネット投票を活用する。

つくば市、市が支援する実証実験採択の最終審査にデジタルIDアプリを活用したインターネット投票を実施
つくば市は、2018年および2019年の「つくばSociety 5.0社会実装トライアル支援事業」の最終審査にて、同インターネット投票を用いた実証実験を行ってきた。2018年の実証実験では、インターネット投票にブロックチェーン技術を活用することで、投票内容の改ざん防止や秘匿性の確保を検証。2019年は、顔認証技術による本人確認や遠隔投票について検証をしてきた。

3回目の実証実験となる2020年は、GovTech領域に取り組むxID(旧社名blockhive)が提供するスマホ向けデジタルID(身分証)アプリ「xID」を使い本人認証を行うインターネット投票を実施する。xIDは、ブロックチェーンを活用しマイナンバーカードと連携させることができる最新の身分証アプリ。

「Society 5.0」の社会実装に向けたトライアルとは

つくば市は、平成29年度(2017年度)から「Society 5.0」の実現を目指し、革新的な技術やアイデアで社会課題を解決する、Society 5.0の社会実装に向けたトライアル(実証実験)事業案を全国から公募し、採択事業を支援している。

Society 5.0とは、IoT・ロボット・AI・ビッグデータなどの新技術を取り入れ、イノベーションを創出し社会的課題を解決する新たな社会のこと。令和2年度は、「With/Afterコロナの生活スタイル」をテーマに企画を募集したところ、21件のエントリーがあったという。

エントリー案から一次審査を通過し、最終審査に進んだ提案を採択する最終審査会については、9月25日にオンライン開催および生配信を行う(YouTubeチャンネルで公開予定。9月14日時点では準備中)。審査は、市長・有識者による評価に加え、一般からインターネット投票の結果も加味される。投票期間は9月18日から25日まで。

また、一般の投票に先駆け、市長によるネット事前投票のデモンストレーションを9月16日に市役所にて実施される予定。ちなみに、提案者のプレゼンテーションは事前にネットにて公開される予定だが、こちらも20209月14日時点では調整中という。

スマホ向けデジタルID(身分証)アプリ「xID」

スマホアプリxIDは、マイナンバーカードと連携することで、本人認証を行えるデジタル身分証アプリ。xIDは、最初の設定でマイナンバーカードの基本4情報(氏名、住所、性別、生年月日)をスマホのNFC(近距離無線通信)を経由して読み取り、マイナンバーカードとxIDアプリをひも付ける。

ひも付け以降、xIDと連携したサービスでは、個人情報の入力や身分証を使用することなく、本人確認・電子認証・電子署名が可能となり、個人情報を何度も入力する手間を軽減できる。また、事業者もxIDに対応することでマイナンバーカードに紐づく本人確認情報を取得可能となるため、従来の本人確認業務やコストを削減できる。

また、マイナンバーカードから取得した個人情報は暗号化されてデータベースに記録されるため、xID運営者側も確認することはできない。

スマホ向けデジタルID(身分証)アプリ「xID」今回のインターネット投票では、xIDを設定しておくことで投票時のマイナンバーカード認証は不要となる。

投票は、市ホームページの特設ページにアクセスし、xIDによる本人認証後、投票画面において一番良いと考える提案を選択して投票する。投票対象は、一次審査を通過した9件の提案。すべての投票を対象に集計し、得票数1位を表彰する(ネット投票の1位として)。ただし、同投票で選ばれた案が最終決定案とは限らない。投票結果のうち、マイナンバーカードを利用した投票を対象に、最終審査にポイントとして加点されるという。

ちなみにインターネット投票は、アプリのダウンロードができないスマホは不可、マイナンバーカードの利用はNFC対応の機種のみに限定される。

なお、投票システムの開発・構築には、同実証実験に2018年から参加しているVOTE FORらが協力している。

コインチェック、「マインクラフト」内で利用可能なNFT取り扱いに向けEnjinと連携開始

暗号資産取引所「Coincheck」を運営するコインチェックは9月9日、ゲームとブロックチェーンのエコシステム構築を目指すシンガポールのEnjinとNFTマーケットプレイス事業において連携を開始したと発表した

コインチェック、「マインクラフト」内で利用可能なNFT取り扱いに向けEnjinと連携開始

コインチェックは2020年8月27日、NFTを暗号資産と交換ができるNFTマーケットプレイスの事業化検討を発表。2020年度内のサービス提供開始を目指し、NFTマーケットプレイスへの参加企業の募集をすでに開始している。

このNFTマーケットプレイスにおいて同社は、Enjinのブロックチェーン資産発行プラットフォーム「Enjin Platform」を通じ発行された、世界的人気ゲーム「Minecraft」(マインクラフト)で利用可能なNFT(Non Fungible Token。ノン ファンジブル トークン)を取り扱うことを目指すという。

コインチェックはは、暗号資産取引所Coincheck上にNFTマーケットプレイスを展開することで、ユーザーに対して、従来マーケットプレイスよりも手軽にかつ安全に取引できる環境を提供できるとしている。

コインチェック、「マインクラフト」内で利用可能なNFT取り扱いに向けEnjinと連携開始

Enjin提供のEnjin Platform

Enjin提供のEnjin Platformは、イーサリアムベースのERC-1155準拠トークンをサポートしており、既存ゲーム(あるいは開発中のゲーム)のブロックチェーン化を支援する開発ツールとしても利用可能。ゲーム開発者はEnjin Platformを導入することで、単一のスマートコントラクトでNFTを発行できる(ERC-1155の競合として、Loom Networkが提案した規格ERC-721xがある)。

またEnjinは、Enjin PlatformとしてJava用の開発キット「Enjin SDK for Java」を提供する。同SDKは、Javaで構築されたサービスとブロックチェーンを連携できる。

マインクラフトサーバーに導入可能なプラグインツール「EnjinCraft」

Enjinは同時に、ブロックチェーン技術を導入したオープンソースのプラグインツール「EnjinCraft」を開発した。

マインクラフトサーバーに導入可能なプラグインツール「EnjinCraft」

プラグインツールは、マインクラフトサーバーの所有者であれば、誰でも導入できるという。EnjinCraftをマインクラフトのサーバーに導入することで、ブロックチェーンとの連携が可能になる。またプレイヤーは、Enjin Platformによって発行されたNFTを、マインクラフト内での使用だけでなく、資産の一部として管理し、マーケットプレイスを通じてNFTの取引が行える。

月間プレイヤー数1億2000万人、累計販売本数2億本を超える人気ゲームマインクラフトにおいて、ゲーム上でNFTが発行可能となることで、NFTマーケット市場の活性化が期待できるという。

関連記事
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.8.30~9.5)
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.8.23~8.29)

カテゴリー:ブロックチェーン

タグ:仮想通貨 / 暗号資産

暗号資産取引所コインチェックが企業独自の電子トークンで資金調達可能なIEOプロジェクト発足、Hashpaletteとタッグ

暗号資産取引所コインチェックが独自トークンで資金調達を行う日本初のIEOプロジェクト発足、Hashpaletteとタッグ

マネックスグループ傘下の暗号資産取引所コインチェックと、ブロックチェーンを活用したコンテンツ産業のデジタル化を目指すHashpaletteは8月25日、独自トークンによる資金調達を行える日本初のIEO(Initial Exchange Offering。イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)の実現に向け、共同プロジェクトを発足したと発表した。日本のコンテンツのさらなるグローバル化とともに、投機対象としての暗号資産ではなく、社会的意義を有する暗号資産の創造に取り組むとしている。

Hashpaletteは、合計1000万MAUのマンガアプリ群を運営するLink-Uと、ブロックチェーン領域の事業立案・製品開発を支援するHashPortとによる合弁会社。

今回の共同プロジェクトでは、Hashpaletteがユーティリティ性を有するトークン「パレットトークン」(PaletteToken、PLT)をイーサリアム(Ethereum)上で発行し、コインチェックがPLTを販売する予定。PLTは、マンガ・アニメ、スポーツ、音楽などコンテンツのためのブロックチェーンプラットフォーム「パレット」(Palette)において利用される。

パレットは、コンソーシアム型(プライベート型)ブロックチェーン「パレットチェーン」(Palette Chain)を基盤とし、一定条件を満たす複数のコンテンツ企業がコンセンサスノードとしてコンソーシアムを運営する。コンソーシアム参加企業については現在複数社と協議中で、今後順次発表する予定としている。PLTは、クロスチェーン技術により「パレットチェーン」とイーサリアム上を自由に行き来可能という。

またHashpaletteは、これら詳細をまとめたホワイトペーパー公開時にPLTの発行総額および販売による資金調達額を公表する予定。ホワイトペーパーの公開時期は明らかにしていない。

暗号資産取引所コインチェックが独自トークンで資金調達を行う日本初のIEOプロジェクト発足、Hashpaletteとタッグ

IEOは、企業・プロジェクトが発行した電子的なトークンを、委託を受けた暗号資産取引所が販売する形で資金を調達するという仕組み。スマートコントラクト利用などの体裁で、発行体自身が投資家への販売も手がけるICO(Initial Coin Offering)との違いは、販売をになう暗号資産取引所が主体的な管理・支援を行う点にある。

ICOは、従来の新規株式公開(IPO)に比べ、スタートアップなど企業が資金を手軽に調達できる手法として一時注目されたものの詐欺を含め信頼性の低い案件が数多く存在したことから、2017年には日本の金融庁も消費者・事業者に向けた注意喚起を発するなどを行った。また現在では、販売するトークンが改正資金決済法における暗号資産に該当する場合は、金融庁に対して「暗号資産交換業」の登録を行う必要がある。

IEOでは、暗号資産取引所が、発行体およびトークンについて健全性の調査・審査を行った上販売する形態となる。海外の例では、ゲーム開発会社Animoca Brands(アニモカブランド)が、暗号資産取引所Binance提供のIEOプラットフォームを通じて、ブロックチェーンゲーム「The Sandbox」のSANDユーティリティトークン300万ドル(約3億1700万円)相当を販売すると発表したものがある。

先に触れたパレットは、ファンコミュニティにおいてコンテンツを活用したデジタルアイテムを発行・管理・流通させるためのプラットフォーム。デジタルアイテムは、ノン ファンジブル トークン (Non Fungible Token。NFT)として発行される。様々なコンテンツをNFTとしてデジタル化することで、誰でも簡単に所有・売買可能になると考えているという。将来的には、「マンガの限定読切閲覧権」や「限定コンサート参加権」などの体験をクリエイターやアーティストがユーザーに提供できるエコシステムを構築できるとしている。

PLTは、パレットチェーンにおけるコンセンサスノード運営報酬の支払い、スマートコントラクトの発行手数料(GAS)、NFT売買の決済などの用途で使用される。

NFTの決済にPLTを用いることで、NFTの送付と金銭の受け渡しを同時に実施可能となり、中間者にあたるエスクローサービスを介することなく、安全な2次流通市場を構築可能としている。またPLTは、パレットチェーンの維持・運営におけるインセンティブ設計においても重要な役割を占めるとしている。

関連記事
LIFULLが不動産クラウドファンディング向けにブロックチェーン基盤デジタル証券化を支援・推進
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.8.2~8.8)
SorareがJリーグ全選手をブロックチェーン基盤のトレーディングカード化し発行
ブロックチェーンサービスのGaudiyとマンガアプリのコミックスマートがイーサリアム基盤の電子書籍事業を推進
オープンソース開発者を暗号資産で支援するフレームダブルオーが資金調達
金融庁、コインチェックを仮想通貨交換業者として正式登録
NEM流出事件の渦中にあるコインチェックをマネックスが買収か
NEM保有者への補償は来週めど――2回目の業務改善命令を受けたコインチェックが会見
NEM流出事件でコインチェックに業務改善命令、金融庁は「9月までのBSは把握済み」
コインチェックが580億円のNEM不正流出について説明、補償や取引再開のめどは立たず

三井物産流通とNTTコミュニケーションズがイーサリアム基盤のサプライチェーンDX実証実験推進で合意

三井物産流通とNTT Comがイーサリアム基盤のサプライチェーンDX実証実験推進で合意

三井物産流通ホールディングス(MRH)と、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は8月17日、ブロックチェーン技術を活用したサプライチェーンDXの実証実験を推進することに合意したと発表した。イーサリアム(Ethereum)をベースとしたブロックチェーン技術に、NTT研究所が開発したブロックチェーン活用技術を適用。今秋から実証実験を行う。

MRHは、2020年6月に設立した、三井物産100%出資の流通持ち株会社。小売・外食事業者向け食品・日用品雑貨の中間流通機能をになう、三井物産100%出資の子会社4社(三井食品、ベンダーサービス、リテールシステムサービス、物産ロジスティクスソリューションズ)およびその保有事業を傘下としている。

同実験では、MRHが持つ流通分野での需給管理ノウハウを活用し、両社はブロックチェーン技術の流通業界への適用に必要な技術研究をさらに進めるとともに、新たなサービス提供領域に向けたビジネスモデルの構築とサービス提供に向けた具体的な機能構築を進めていく。両社は、DXの具体的な活用方法を確立することで、様々な業界におけるサプライチェーン領域での事業化を目指すとしている。

また今回の取り組みは、イーサリアム(Ethereum)をベースとしたブロックチェーン技術に、NTT研究所が開発したブロックチェーン活用技術(トークン追跡効率化技術)を適用。RFIDなどのIoTの情報と組み合わせた情報プラットフォーム「サプライチェーン情報基盤」の構築により、情報の活用に向けた検証を行う。トークン追跡効率化技術とは、トークンを商品などの来歴の追跡に適したデータ構造として設計することで、追跡処理の時間を最大100倍程度高速化するNTT研究所が開発した技術という。トークンは、ブロックチェーン上で通貨や商品等の来歴や所有権などを管理するために定義されたデータ形式。

さらに、「サプライチェーン情報基盤」と、請求など企業間取引を電子化し業界横断的に利用できる、NTT Comの企業間取引データプラットフォーム(仮称)を活用。複数の企業間の請求データをデジタル化・一覧化可能な「コネクティッドバリューチェーンを実現する基盤」との連携を目指す。コネクティッドバリューチェーンとは、各企業間の取引を電子化することで価値をさらに創出するつながりという。

今回の合意は、2020年7月に三井物産(三井物産)および日本電信電話(NTT)とともに締結した、「ブロックチェーンおよびIoT技術等の活用によるサプライチェーンDXに関する共同実験協定書」に沿ったもの。商品や物の流れを管理する「サプライチェーン情報基盤」と、企業間取引をデジタル化する「コネクティッドバリューチェーンを実現する基盤」との連携を目指し、今秋から実証実験を行う。

MRHにとってビジネス領域におけるICT企業との共同実証実験は初の取り組みであると同時に、NTT Comにおいてもサプライチェーン領域におけるブロックチェーン技術の実務適用は初の取り組みとなる。

関連記事
ブロックチェーン技術活用で業務プロセスのDX化を目指すLayerXが30億円を調達
IBMは魚介類の安全性をブロックチェーンで向上させる
エンタープライズ市場に臨むブロックチェーン――仮想通貨以外の可能性
ブロックチェーンがサプライチェーンにもたらす変革
ブロックチェーンで経理効率化、複雑化するサプライチェーンに挑む、レジュプレスとPwC

イーサリアムの従業員が北朝鮮の制裁逃れに協力したとして逮捕

米国時間11月29日、ニューヨーク州南部地区検事局は、イーサリアム財団の職員であるVirgil Griffithバージル・グリフィス)氏が逮捕されたことを発表した。北朝鮮に出向き「平壌ブロックチェーンおよび暗号通貨会議」でプレゼンテーションしたことで、謀議を企てたという嫌疑がかけられている。

具体的には、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対し、米国財務省の対外資産管理局からの承認を得ることなく、労務を提供したとされている。訴状によれば、グリフィス氏は事前に米国国務省に連絡を取ったものの、北朝鮮に対する経済制裁のため許可は得られなかった。それでもグリフィス氏は中国経由で北朝鮮に入国した。さらにグリフィス氏は「制裁の回避と資金洗浄のための暗号通貨技術」について議論したとされている。

FBIの特別捜査官は、2019年5月にグリフィス氏と面談した。これは任意の事情聴取であり、同氏の「ブロックチェーンと平和」というタイトルのプレゼンテーションについて捜査官と話をした。彼は訪朝時の写真を見せて、来年もまた同じ会議に参加したいと述べたという。

またグリフィス氏は、メッセージングアプリを使って、他の人ともプレゼンテーションについて話し合っている。「A氏は、要約すると、北朝鮮は暗号通貨についてどのような関心を持っているのか、と尋ねた。それに対してグリフィス氏は、要約すると『恐らくは制裁を回避するためだろうが、知ったこっちゃない』と答えた」と訴状は記している。

イーサリアムの創立者であるVitalik Buterin(ビタリック・ブテリン)氏は、グリフィス氏の逮捕についていくつかツイートしている。「私は、北朝鮮が悪事を働くのを、バージルが実質的に手助けしたとは思っていません。彼は『オープンソースソフトウェアに関して公開情報に基づいてプレゼンテーションした』だけなのです。ハッキングのための『高度な個別指導』をしたというようなことはありません」と書いている。

またブテリン氏は、イーサリアム財団は、グリフィス氏が北朝鮮に出向いたことと何の関係もないと主張している。「イーサリアム財団は金を出してもいないし、何の支援もしていません。みんなが止めたのに、バージルは個人として行ったのです」とブテリン氏は書いている。

米国時間12月3日、裁判官はこの裁判を進めるための十分な証拠がそろっていると裁定した。グリフィス氏は仮釈放される予定だ。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

モバイルファクトリーがブロックチェーン関連の新会社「ビットファクトリー」設立へ

位置情報連動型ゲーム「ステーションメモリーズ!(駅メモ!)」などで知られるモバイルファクトリーは7月25日、ブロックチェーン関連事業本格化にあたり新会社、「ビットファクトリー」を設立すると発表した。代表取締役はモバイルファクトリー代表取締役の宮嶌裕二氏が務める予定だ。

新会社ビットファクトリーはDapps(分散型アプリケーション)の普及を目指しており、そのプロジェクトを「Uniqys(ユニキス)Project」と呼んでいる。手軽にDappsで遊べるモバイルユーザー向けサービス「Quragé(クラゲ)」と、手軽にDapps開発が可能となるデベロッパー向けサービス「Uniqys Kit」を包括する「Uniqys Network」を構想している。

新会社設立の発表と同時に、プロジェクト第一弾となるウォレット機能付きモバイルDappsブラウザQuragéのAndroid版を同日にリリース。iPhoneユーザーは年内には同サービスが使えるようになるという。また、Dapps紹介メディア「Quragé Magazine」も同日にリリースされ、Uniqys Kitの開発者向けプレビュー版もGitHub上で公開された。

Uniqys Kitは2018年の冬にベータ版を公開予定。2019年には正式リリースを目指している。同ツール上では一般的なWebアプリと同様に作りやすい言語でDapps開発が可能となり、トランザクション手数料やブロック報酬を無料、定額も含めて自由に選択できるようになる。また、Ether(ETH)またはデベロッパーによる独自トークンを流通させることも可能になるという。

同社は「ゲーム事業に留まらず、SNSやシェアリングエコノミーなど、多くのサービスがDappsに置き換えられていく力を秘めている」と感じている。だが、「日本発のDappsはまだまだ少ないのが現状」のため、「そのような次世代のインターネットとも言うべき可能性を秘めたDappsを普及するため、Dappsを身近に、そして、容易に開発できる環境を提供すべくUniqys Projectを発足した」と説明している。

モバイルファクトリー代表取締役の宮嶌裕二氏は、ブロックチェーンを「次世代のインターネットのようなものだと思った」と説明。だが、「イーサリアム(をはじめとしたブロックチェーンプラットフォーム)は数年後、もう1つのインターネットになる」と期待している一方、現状のままでは「一般には普及しない」とも説明した。

新会社の設立以前、モバイルファクトリーがブロックチェーン関連サービスの開発に着手した当初、ゲーム分野での進出を構想していた。だが、イーサリアムに代表されるブロックチェーンプラットフォーム上に先行してリリースされている複数のゲームを研究した結果、トランザクションの手数料が高かったり、モバイル環境での動作が想定されていないゲームが大半であったり、といった課題があることがわかったという。また、デベロッパーにとってもイーサリアムのままでは作りにくい、というところがもう1つの課題だと話した。

その課題を解決するためのソリューションがQuragéとUniqys Kitだ。

取材中、宮嶌氏は「企業がこぞってホームページを提供しはじめた、20年前を思い出して欲しい」と繰り返した。「それから数年をかけて会社概要を掲載したホームページだけでなくユーザーとの重要な接点としてインターネットがECなどに活用されるようになった。当時と同じように、これから2~3年内に多くの企業がユーザー接点のひとつとして分散型アプリを当たり前に提供するようになり、ある程度のユーザーを持つ企業は、独自トークンを発行しはじめる世界がやってくる」(宮嶌氏)

新会社ビットファクトリーに関しても、Uniqys Network内で使える独自トークンを構想中だという。

Global Informationの「ブロックチェーン技術の世界市場予測2022年」によると、世界のブロックチェーン技術の市場規模は、2017年の4億1150万米ドルから2022年までに76億8730万米ドルへ拡大すると予測されている。また、IDC Japanの「2017年国内ブロックチェーン関連ソリューション市場ビジネス動向:分散アプリケーションプラットフォームの可能性」は、内におけるブロックチェーン関連ソリューション市場は、2016年〜2021年の年間平均成⻑率133.0%、2021年市場規模は298億円と予測している。

今後もUniqysをはじめとする新たなブロックチェーン関連サービスに注目したい。

写真左がモバイルファクトリー代表取締役の宮嶌裕二氏、右が取締役の深井未来生氏

未来のインターネットは、非中央集権型のインターネットだ

gettyimages-628345680a

編集部注:本稿を執筆したOlaf Carlson-WeeはPolychain Capitalの創業者である。同社はブロックチェーン・ベースの資産に特化したヘッジファンドを運営している。

ブロックチェーン技術は、ビットコインを超えて急速に拡大しつつある。ブロックチェーンのことを既存の支払い方法や金の競争相手であると考えている人が多い一方で、まだ見ぬ世界の訪れを知らせてくれるのがブロックチェーンなのだと私は思う。

多くのブロックチェーンとトレード可能な何百種類ものトークンが創りだす世界では、産業はソフトウェアを利用して自動化され、ベンチャーキャピタルや株式市場は利用されず、アントレープレナーシップは合理化され、ネットワークは独自のデジタル・カレンシーを通して主権を獲得する。これこそが、次世代のインターネットなのだ。

これまでにビットコイン企業へ投下されたベンチャー資金は10億ドル以上だ ― この業界はVCによって支えられている。それなのに、分散型ネットワークを利用することで誰もが複雑な金融取引をエンコードしたり、正確に実行することができるブロックチェーン・プロトコル、「イーサリアム」へ投下されたVC資金はほんの僅かである。だが、その一方でイーサリアムは不特定多数が参加するクラウドセールを利用して世界中から2億5000万ドルもの資金を調達している。

では、なぜイーサリアムに投資するVCが少ないのだろうか?リスクが高すぎるということが理由かもしれないし、ビットコイン企業への投資が失敗したことによって、この業界に投資する意欲が薄れてしまったことが理由かもしれない。恐らく、という話だが。しかし、何よりも重要なのは、起業家が従来の資金調達方法とは違ったルートで資金を調達できるようになったということである。起業家たちは独自にトークンを発行することで、彼らのネットワークに必要な資金を調達している。従来の資金調達ルートを利用せず、ベンチャーキャピタルという世界を迂回しているのだ。この重要性は千言万語を費やしても表現し得ない。 ― この新世界では、企業というものは存在しない。あるのはプロトコルだけなのだ。

この新しいモデルを利用して、起業家はブロックチェーン技術にもとづいたトークンを発行する。このトークンは彼らが構築するネットワークの所有権を表すものであり、ネットワークの拡大を加速する燃料にもなる。投資家が手にするのは企業の株式ではなく、ブロックチェーン技術にもとづいたトークンだけだ。ブロックチェーンが拡大するにつれて、トークンの所有者は多大な利益を獲得するが、企業の株式を所有する出資者はその利益を得ることはできない。これらのトークンは、あるアプリケーションに特化したものである ― このトークンはビットコインのように汎用性のある価値の単位として創られたものではないのだ。イーサリアム上のトークンであるREPとGNTを例にすると、これらのトークンはそれぞれ、非中央集権型の予測マーケットとレンティング・コンピュテーションのP2Pマーケットで利用されている。

これらのアプリケーション特化型トークン(アプリトークン)は、ビットコインやイーサリアムのような既存の汎用型ブロックチェーン上に構築される。そして、オープンソースのプロジェクトの開発者たちは、彼らが開発したオープンソースのネットワークを直接マネタイズすることができるようになる。振り返ってみると、トレント・プロトコルやTorネットワークなどの成功したオープンソースプロジェクトは、プロトコルレベルで直接マネタイズされたものではなかった。今では、非中央集権型のファイルストレージ・ネットワークの開発者は、そのネットワークの所有権を表すブロックチェーン技術にもとづくトークンを発行することができるようになった。

ソーシャルメディアに貢献しながらお金を稼ぐこともできるなら、ユーザーはどうするだろうか?

しかし、これらのトークンと、所有権を表すがそれ以外の用途を持たない株式の性質は異なる。アプリトークンはネットワークに参加するために使われるものなのだ。ファイルストレージ・マーケットの例では、ファイルの所有権を示したり、ストレージ容量の購入や売却にトークンを利用する。多くの場合、ネットワーク開発者や開発チームは発行済みトークンの約10%を所有している。ネットワークの人気が高まれば、トークンの需要も高まる。すると、トークンの供給は一定なので、その価格は上昇する。つまり、ネットワークの開発者がトークンを所有し、ネットワークの有用性を高めることで、彼らのネットワークを直接マネタイズできることを意味しているのだ。追加の資金が必要になれば、トークンを公開市場で売却すればいい。

アプリトークンは開発者に報酬を与えるだけでなく、ネットワークの参加者にはその所有権を与える。この、ネットワークにおけるエクイティ型のオーナーシップは前例のないものだ。今や欧米のインターネットユーザーがどれだけのネットワークに参加しているか、考えてみてほしい ― Facebook、LinkedIn、Twitter、Uber、Airbnb、eBay、Etsy、Tumblr ― これらはそのほんの一部だ。これらすべてのネットワークにおいて、ネットワークが持つ価値はユーザーによって生み出される。しかし、それぞれのユーザーが生み出した価値はネットワークのオーナーが手に入れることになる。一方でブロックチェーン技術にもとづくモデルでは、その価値は貢献度に応じてユーザーに還元されるのだ。

過去10年間に生まれた主要なWebサービスをディスラプトするのは企業ではなく、P2Pプロトコルなのかもしれない。これは、かつてトレント・プロトコルがメディア企業に与えた影響と似ているが、それよりももっと大きな規模のものだ。結果として、企業としての「Twitter」ではなく、プロトコルとしての「twitter」が生まれ、「Facebook」ではなく「facebook」が、「Uber」ではなく「uber」が生まれることになる。

そして、投資家たちは史上初めて、インターネットの未来のインフラストラクチャーを担うネットワークの一部を所有することが可能になる。もし、1990年台初頭にTCP/IP(パケット)、SMTP(Eメール)、HTTPS(暗号化)などの低レベルのインターネット・プロトコルへ直接的に投資ができていれば、それが生むリターンは莫大なものとなっていただろう。

この話が複雑に感じてしまうのはしょうがない。なぜなら、これは複雑な話だからだ。確認のために述べておくと、ブロックチェーンは未だほとんどの部分が実験段階の分野である。しかし、ひとたび素晴らしいアプリケーションが生まれれば、それは爆発的に普及することになるだろう。なぜなら、ユーザーにはネットワークに参加する財政的なインセンティブがあるからだ。ソーシャルメディアに貢献しながらお金を稼ぐこともできるなら、ユーザーはどうするだろうか?

過去数年間でビットコインのシェアは徐々に低下している。ビットコインはこれからも成長を続けると私は信じているが、一方でブロックチェーン・エコシステムにおける他の構成要素が今にも急速な成長を遂げつつある。

現在、ブロックチェーン・ベースの資産の時価総額は、合計で130億ドルだ。ブロックチェーンの誕生によって衰退する可能性のあるシステムの現在価値と比べれば、この数字は丸め誤差ほどでしかない。非中央集権型のブロックチェーン・プロトコルが、現在のインターネットを独占する中央集権型のWebサービスに取って代わり始めたとき、私たちは本当の意味でのインターネット・ベースの主権を目の当たりにすることになるだろう。未来のインターネットは、非中央集権型のインターネットなのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

ソフトウェアにバグがあるのは仕方のないことなのか?

languages-pao

何もかもがひどいものだ。ほとんどのソフトウェアは、たとえそれがクリティカルなシステムソフトウェアだとしても、まるでダクトテープとプチプチとヘアピンで梱包されたスイスチーズの如く安全性の低いものだ。例えば先週の怖ろしくも興味深い投稿記事「How to Crash Systemd in One Tweet」(Systemdを簡単にクラッシュさせる方法)を見てみると良い。しかしそれはsystemdだけの問題ではなく、Linuxだけの問題でもなく、ソフトウェアだけの問題でもない;業界全体に問題があるのだ。私たちが自分自身に間違って教え込んできたきたのだ。他にやりようはない、と。

それでは、そのAndrew Ayerによる面白い投稿をもう少し詳しく見てみよう、なぜならこれはより大きな問題の見事な例となっているからだ。まったく「Yay non-determinism!(非決定性バンザイ!)」だ。

もしあなたが筋金入りのギーク(技術オタク)なら、自分で投稿全体を読んだほうがいいだろう;もしそうではない場合には…簡単に説明すれば以下のようなことだ、systemdはほとんどのLinuxディストリビューションの不可欠なコンポーネントであり、その大切な役目の1つとして、システムを起動するために使用されている。Ayerはそれをクラッシュさせるためのとても簡単な方法をみつけて、それに哲学的な考察を行った。ということである。

このバグによってすぐに喚起される疑問は、一体どういった品質保証プロセスが、このような単純なバグを2年以上に渡って見逃していたのだろうかというものである。[…]systemdの問題はこの1つのバグよりも遥かに深いものだ。systemdは、設計に欠陥があるのだ。バグのないソフトウェアを書くことは非常に困難なことだ[…]良いプログラマはバグのないソフトウェアを書くことの難しさを知っているし、バグの可能性を最小にするか、少なくともその影響を低減させる方向へソフトウェアを設計することの重要性を理解している。systemdの開発者たちは、こうしたことを理解していない。不必要な複雑性を膨大に詰め込むことを決定し[…]メモリ安全ではない言語で記述した。

私が思うに、最後の点がキーとなる大きなポイントである。何もかもがひどいものだ、なぜなら私たちが今でも使っている基本的なツールは、使われる際に、必然的にひどいものを作り出してしまうような欠陥を抱えているのだ。こうした適用は、systemdのような低レベルのコンポーネントから、最近大規模なDDoS攻撃の奴隷として使われたカメラや他のIoTデバイスの事例 ‐

– そして1億5000万ドルが失われたイーサリアム上のDAOの大惨事(実際にはその後の対応で経済的損失は防がれたが技術的、倫理的に大きな禍根が残された)のような高レベルのSF的抽象世界に至るまで、広く行われている。あまりにも長い間、ほとんどすべてのソフトウェアがバグを持ち安全ではないことに慣らされてきて、私たちはこれがソフトウェアの自然な姿だと思うようになっているのだ。しかし、この学習性無力感(長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれたために、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなること)は正しくない。すべてがひどいものである必要はないのだ。

原理的には、コードは形式検証(formal verification)を用いて正しいことを証明することができる 。これはとても困難で、時間もかかり、常に実践するには現実的ではないものである;しかし、長期間に渡って何百万という機械を制御するクリティカルなソフトウェアの話をしているときには、または数百万ドルもの投資を行おうとしている際には、少なくとも考慮すべきものである。

これよりは苦労と厳密さが少なめで、ひいてはより有望なものの1つはlangsec構想だ:

言語-理論的アプローチ(LANGSEC)が関心を寄せているのは、ネットワークスタックや、その他のソフトウェアスタックの全ての階層における、入力の取扱いに対するアドホックなプログラミングが引き起こす、インターネットの非安全性の広がりである。LANGSECは、信頼できない入力を取り扱うソフトウェアを、信頼できるものにするための唯一の道は、すべての正しい或いは期待される入力を形式言語として取扱い、それぞれの入力処理ルーチンを、その形式言語への認識装置であるように取り扱うことだ、と想定している。

…このようなやりかたは着実に現実世界に近付いている。そしてフランスのセキュリティ会社Prevotyのような仲介者に依頼すれば時期尚早ということもない。

前述したように、プログラミング言語自身が大きな問題だ。膨大な経験が明らかにしたのは、プログラマたちにメモリ安全でない言語を使って安全なコードを書くことを期待するのは、現実的ではないということだ(私の昨年の記事「 Death to C(Cに死を)」が書かれたのはそれが理由だ)。しかし希望はある!破滅の予言をしたあと、Andrew Ayerはこのように注意を促している「しかし、私には改善の兆しが見えている。GoとRustはこれまでCで書かれていたようなシステムソフトウェアを書くための注目すべき安全な言語だ」。

最善は善の敵である(最初から最善であることに拘ると、次善にすらたどり着けない)。私たちは現在の不名誉な状態から一足跳びに名誉ある状態に行くことはできない。しかし産業としては、少なくとも進むべき道を設定しよう。まず最初に、より良い言語でシステムコードを書くことへ向かおう ‐ これはセキュリティスピードを改善する筈だ。 そして、ミッションクリティカルなコードの形式仕様記述と検証に向かおう。

そしてレガシーコードとレガシーシステムに捕らわれているときには、もちろん今でもそれが大部分の時間を占めているのだが、それを徐々にでも良くして行くことを学ぶために、プログラミングの原則と基礎に注目し、最大限の努力をしよう。(例えば、JavaやC#のプログラマたちは、私の昔の同級生によって書かれた素晴らしい書籍であるPractice your JavaPractice Your C#を読むことを検討した方が良い)。「ひどい状態」を避けられない事態だと受け入れてはならない。たとえそれが「現在の」状態だとしても。よりよい状態を目指して努力しよう。

もちろん、業界の多くが伝統的なプログラミングから離れて、様々なフレーバーのAIに向かって移行しようとしているのを見ながら、私はこれを書いている。私たちはどのように「畳み込みニューラルネットワーク」をきちんと定義すれば良いのだろうか?そこへ流し込む現実世界のデータに対して、どのようLANGSECを適用すれば良いのだろうか?これらのことを、どのように量子コンピューティングに適用するのだろうか?(もしそんな疑問を抱くのは時期尚早だと思うなら、私の友人のChristineによる、極めてクールな5ビット量子コンピューターシミュレーターをチェックしてみると良い。 Github上でオープンソースとして公開中だ)。

ああ、いや、私は最後のいくつかの疑問に対する答を持っているわけではない。しかし少なくとも問いかけることから始めよう!そしてその間に、従来のプログラミングの修正を最終的に始めることができるように、できることは何でも試みよう。それは非現実的な夢ではない。それは実際に可能なのだ。そして、もしそれを受け入れたなら、すべてが良なって行くことが可能だろう(私はそうなると信じている)。

訳注:本記事の原タイトルは「Learned helplessness and the languages of DAO」というものである。「学習性無力感とDAOの言語」という直訳になるが、「学習性無力感」の方は文中に説明がある。「DAOの言語」の方は古いSFである「The languages of Pao」(アイキャッチ画像の書籍)のタイトルをもじって、最近のソフトウェアバグに起因する有名な事案の「イーサリアムのDAO」と関連付けている。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)