ウェザーニューズ、電気事業者向けに1kmメッシュの高解像度な太陽光発電量予測データをAPIで提供開始

ウェザーニューズは、同社の日射量予測モデルを改善し予測精度を通常のものから11%向上させ、これを用いた太陽光発電量予測モデルを開発。電気事業者向けの1kmメッシュ(約1km四方)の高解像度な日射量予測データのAPIによる提供を開始した。現在は無料トライアルを実施している。

これは、企業向けの気象データの提供と分析を行うサービス「WxTech」(ウェザーテック)サービスの1つ。2021年4月からは、再生エネルギー発電の固定価格買取制度から、補助金が変動するFIP制度に切り替わる。そのため、高精度な太陽光発電量予測が今まで以上に重要になるという。そこでウェザーニューズでは、新たな太陽光発電量予測モデルを開発した。そして、このモデルを使った日射量予測データのAPI提供サービスを開始した。

電力取引に適した30分ごとの太陽光発電量の予測データを72時間先まで提供するというもので、「物理モデル」か「統計モデル」の2種類を用意があり、いずれか精度の高いほうを選択できる。なお新設の発電所の場合は、実績データが蓄積されるまで統計モデルは選択できない。

物理モデルでは、太陽光発電所の緯度・経度、ソーラーパネルの出力・方位角・傾斜角・パワーコンディショナー(PCS)の出力や効率といった情報をもとに、ピンポイントな太陽光発電量予測データを算出。統計モデルでは、過去の発電量実績データと気象データをAIに学習させて高精度な予測を行うという。

ウェザーニューズでは、2020年12月に機械学習を用いた日照量予測モデルを開発。従来は、雲の透過率を上空の湿度から推定していたが、このモデルでは、上空の湿度や温度から推定される雲の水分量、風向と風速から計算される収束量などで機械学習を行い、雲の透過率を高精度に推定している。今回はその大気濁度と雲透過率の算出方法を見直してバージョンアップし、2021年12月には、同社の従来予測モデルと比べて8.5%、気象庁(MSM)と比べ11%という精度改善を確認した。

予測解像度を1kmメッシュにしたことでも、データの精度は高まった。従来の5kmメッシュでは1つの区画の範囲が広く、その中で天気や発電量に大きな差が出ることがあったからだ。また、1kmメッシュの積雪予測、積雪実況データと過去の気象予測も追加された。太陽光発電に大きな影響を及ぼす積雪予測と積雪実況データは、30分ごとに更新され、積雪を加味した予測が可能になる。

太陽光発電予測データのサービス仕様

  • 単位:kWh
  • 空間解像度:1kmメッシュ
  • 時間解像度:30分間隔(72時間先まで)
  • 更新頻度:30分ごと、5回/日、1回/日から選択可
  • 提供方法:API提供、または専用ウェブサイトからCSVファイルをダウンロード

ウェザーニューズが周囲50キロを30秒で3次元観測する新型レーダーの実証実験、ゲリラ豪雨や線状降水帯の予測精度向上へ

ウェザーニューズが周囲50㎞を30秒で3次元観測する新型レーダーの実証実験、ゲリラ豪雨や線状降水帯の予測精度向上へ

ウェザーニューズは10月14日、高頻度観測小型気象レーダー「EAGLEレーダー」を千葉県内に設置し、レーダーの有効性を確認する実証実験を開始したと発表した。2022年6月にかけてレーダーの精度評価と最終調整などを行う。

EAGLEレーダーは、周囲360度を高速スキャンし雲の立体構造を高頻度で観測するというもの。半径50km以内の積乱雲の発達状況をほぼリアルタイムに捉えられるため、ゲリラ豪雨や線状降水帯・大雪・突風・ヒョウなど、突発的かつ局地的に発生する気象現象をより正確に把握できるとしている。

道路の管理事業者における除雪作業判断の支援など新サービスも開発するほか、2年以内に日本を含むアジアの計50カ所への設置を計画。グローバルにおける気象現象の監視体制を強化する。

高頻度観測小型気象レーダー「EAGLEレーダー」

ウェザーニューズは、2009年に小型気象レーダー「WITHレーダー」を開発し、全国80カ所に設置・運用してきた。10年以上にわたり、ゲリラ豪雨や突風などの観測実験を行った結果、小型気象レーダーの有効性を確認できたという。しかし、従来のWITHレーダーでは、全方位を3次元で観測するには5分程度かかるため、雲が急激に発達する過程やその変化を詳細に捉えることは困難だった。

そこで、より高頻度な観測を可能にするため、WITHレーダーの後継機としてEAGLEレーダーを開発。同レーダーは、360度全方位を高速スキャンすることで、雨粒の大きさや雲の移動方向を立体的にほぼリアルタイムで観測できる独自の気象レーダーという。最短で5秒ごとに1回転し、半径50kmの詳細な3次元観測データを30秒で取得できる。これにより、ゲリラ豪雨や線状降水帯、大雪、突風、あられ、ひょうなど、局地的に発生する気象現象の把握が可能としている。

ウェザーニューズが周囲50㎞を30秒で3次元観測する新型レーダーの実証実験、ゲリラ豪雨や線状降水帯の予測精度向上へ

千葉県内八街市に設置し実証実験を開始

同社は、同レーダーを千葉県八街市に設置し、実証実験を開始した。2022年6月にかけて、レーダーの精度評価と感度の最終調整などを行う。

レーダーの活用方法として、まずはウェザーニューズの予報センターでレーダーを監視し、観測データを数時間先の予報精度向上に活用する。また、従来のWITHレーダーと同様に雲の様子を3次元的に把握するだけでなく、実証実験と並行して、道路の管理事業者における除雪作業の判断支援や迂回ルートの推薦など、企業向けのサービスを開発する。

また同レーダーの展開を進めるため、総務省(情報通信審議会 情報通信技術分科会 陸上無線通信委員会 気象レーダー作業班)と無線免許の新制度策定について検討しているという。新制度が実現すると、同レーダーの設置が加速するとともに、観測データの販売も可能となる見込みとしている。気象データを扱う企業・研究機関などに活用してもらうことで、サービスへの利用や技術の発展に寄与できるとしている。ウェザーニューズが周囲50㎞を30秒で3次元観測する新型レーダーの実証実験、ゲリラ豪雨や線状降水帯の予測精度向上へ

2023年までに50台設置、日本・アジアの気象現象の監視体制を強化

同社は、2014年よりオクラホマ大学と共同でEAGLEレーダーの開発を進めてきたという。2017年6月には、航空宇宙向けの電子機器やシステムを設計・製造しているカナダNANOWAVE Technologiesとレーダーの量産に関する覚書を締結した。

気象レーダーの仕様変更や生産ラインの変更のほか、世界的な半導体不足による影響を受けて当初の計画からは遅れが生じたものの、現在の計画では、今後2年以内に日本を含むアジアの計50カ所にレーダーを設置する予定。引続きレーダーの設置を進め、観測データが十分ではないアジア地域における気象現象の監視体制を強化するという。