ブロックチェーン事業者向けサービスを提供するGincoがDBJキャピタルから資金調達

写真左:Ginco代表取締役 森川夢佑斗氏

ブロックチェーン技術による事業者向けサービスや暗号通貨ウォレットを提供するGincoは4月8日、DBJキャピタルを引受先とする第三者割当増資により、資金調達を実施したことを明らかにした。金額は非公開だが、関係者によれば「億単位」の調達とのこと。今回の調達はプレシリーズAラウンドに当たり、2018年1月発表の1.5億円の資金調達に続くものとなる。

ブロックチェーン事業者の規制・セキュリティの課題を埋める

Gincoは2017年12月の設立。創業当初はクライアント型のウォレットアプリ「Ginco」を個人向けに開発・提供しながら、非中央集権の分散型サービスへの入口としての役割を目指していた。Ginco代表取締役の森川夢佑斗氏は「ブロックチェーン技術の社会実装・普及は、仮想通貨から始まるという見立てだった」と個人向けウォレットサービスから事業をスタートした理由を説明する。

個人向けウォレットアプリGinco

「この見立ては正しかった」と森川氏。ただ、ブロックチェーンの主軸がパブリックチェーンといわれるオープンなものから、エンタープライズユースへと移り、急激に伸びていく中で、「法人向けのシステム提供へと大きく事業の舵を切った」と語る。現在Gincoでは、暗号資産やセキュリティトークンの業務用管理システムを提供してブロックチェーン技術を活用したサービスを開発・提供する事業者を支援する、法人向けのサービスを主力事業としている。

個人向けウォレット開発を通して、ブロックチェーンサービスを提供するためのシステム基盤を構築してきたGincoでは2019年1月末より、ブロックチェーンの鍵管理やAPI、ノードなどの技術をモジュール化。他のサービス開発事業者でも利用できるようにした。

2019年2月には、仮想通貨取引所向けの暗号資産管理システム「Ginco Enterprise Wallet」の提供を開始。ブロックチェーンノードの導入・運用サービスや業務用ウォレット、事業者独自のユーザー用ウォレットの開発など、仮想通貨取引所を運営する事業者がサービスづくりに集中できるよう支援を行う。

また同月、日本マイクロソフトとの提携により、ブロックチェーンサービス事業者向けのクラウド型ブロックチェーン環境「Ginco Nodes(ギンコ ノーズ)」の共同開発も開始しており、インフラとしてのノード提供にも取り組んでいる。

他業種に比べて大きくブロックチェーン活用が進んでいるのは、仮想通貨取引所をはじめとする金融領域の事業者だ。「日本ではこの1年ほど、特に『規制』と『セキュリティ』が、金融領域でブロックチェーンサービスが社会に受け入れられるための課題としてあった。事業者の課題とのギャップを埋めるソリューションとして、我々はいろいろなプロダクトを提供するようになった」(森川氏)

革新的サービスと規制・セキュリティ対応は両取りできる

2019年6月に公布された改正資金決済法では、交換業者のユーザーの資産保護に加えて、暗号資産の管理のみを行うカストディ業務についても規制が強化された。森川氏は「規制強化により、システム面のほか、オペレーションのスタッフやエンジニア増といった体制面でも、事業者は対応を迫られ、ビジネス規模とは別の部分でコストが大きくかかるという問題に直面している。スタートアップなどの小規模なところでは撤退する事業者も現れているが、私たちは(革新的なサービスと規制・セキュリティへの対応は)両取りできると考えている」と述べている。

「でなければ、テクノロジーの発展の意味はない。ブロックチェーンはそもそも、安全性や信用をこれまでより安価で効率よく構築できる技術として現れたもので、我々もそこに期待してこの領域で取り組んでいる。イノベーションと安全・安心の両取りができるようなソリューションを事業者へしっかり提供していくことで、真にブロックチェーンの技術的な価値を社会に適用させたい」(森川氏)

森川氏は「元々は、仮想通貨のウォレットで秘密鍵を個人が持ち、非集権的な個人主導の経済・金融の実現を描いていた部分もある」としながら、直近の事業展開については「実際に社会適用の観点で見ると、仮想通貨、特にビットコインについては2018年ごろから規制がきちんとでき、そこから取引高が日本でも大きく伸びた経緯がある。規制準拠とマーケット拡大とは、なかなか切っても切り離せないところがある。となると、事業者を通じてブロックチェーンが利用されるケースが多いということになる」と述べている。

また「一般向けでブロックチェーンを使った新しい顧客体験を生み出すようなサービスが登場するには、まだ数年かかるのではないか」という森川氏。まずは法人向けソリューション提供にフォーカスするとして、次のように語った。

「ブロックチェーンのエンタープライズユースは増えているが、ほとんどは業務改善・業務効率化といった文脈で活用されているケースが多い。金融業でいえば、発行社債の効率化や不動産登記への活用などが日本では進んでいるところ。また海外では医療系で電子カルテへの活用といったユースケースが増えており、適用されるユースケースはある程度、決まってきている。その中でまずは、我々が培ってきた技術を適用して、ソリューションとして提供していく。実際に進む領域に合わせて、事業者にブロックチェーンを使ったしっかりしたソリューション、社会適用できる、ギャップを埋められるソリューションを提供していきたい」(森川氏)

ブロックチェーンアプリとユーザー繋ぐ“ポータル”へ、ブラウザ連動型ウォレット開発のスマートアプリが資金調達

昨年頃から、TechCrunchの記事内でも「Dapps」というキーワードが登場する機会が増えてきた。

Dappsとはブロックチェーンを利用した分散型アプリケーションのことで、仔猫を育成・売買する「CryptoKitties」やモンスターを捕獲したり交換して楽しむ「Etheremon」といったゲームが有名どころ。もちろんゲームに限った話ではなく、たとえばLINEは自社のトークンエコノミー構想の中でQ&Aやグルメレビュー、未来予想など5つのDappsサービスを開発中であることを発表している。

今回紹介したいのは、そんなDappsとユーザーの距離を繋ぐ“ブラウザ連動型ウォレット”を開発するスマートアプリだ。同社は10月31日、セレスを引受先とした第三者割当増資により5000万円を調達したことを明らかにした。

なおセレスとは業務提携も締結。「くりぷ豚」(セレスとグラッドスリーが共同運営)においてメディアパートナーシップ連携を結んでいる。

スマホからDappsにアクセスできるブラウザ連動型ウォレット

スマートアプリが開発している「GO! WALLET」はイーサリアムに特化したブラウザ連動型ウォレット。従来はPCブラウザを通じて利用していたイーサリアム上で動くゲームやDappsアプリに、スマホからアクセスできるブラウザ機能を備える。

現時点ではCryptoKittiesやEtheremon、くりぷ豚を含むゲームのほか、複数の分散型取引所やDappsに関する情報を扱ったメディアなどが掲載。ユーザーはGO! WALLETアプリ内のブラウザ上から各種Dappsを楽しめる。

ウォレットとしては個人情報を登録せず匿名で利用できる点がひとつの特徴。利用のハードルを下げる一方でセキュリティ面を考慮して、ウォレットの秘密鍵はサーバーにも格納されず、スマホ端末アプリ内のみに保存される仕組みを採用した。

「GO! WALLET」のブラウザからアクセスできるDappsと、ブラウザから「くりぷ豚」を起動した際の画面

ブラウザ機能を持つウォレットアプリ自体はすでに出始めてはいるが、GO! WALLETでは多様なコンテンツを紹介する機能やブラウザの操作性を磨きつつも、それに留まらない仕組みを加えていく計画のようだ。

「コンテンツを紹介するブラウザ機能だけではなく、昔でいうiモードのようなプラットフォームをブロックチェーンベースのアプリケーションの世界で実現したいと思っている。その取っ掛かりとして最初に作ったのがウォレットアプリ。このアプリを引き続きブラッシュアップしながらも、連動したさまざまなサービスを作っていく」(スマートアプリ代表取締役社長CEOの佐藤崇氏)

Dappsの成功事例を作る

佐藤氏はモバイルサービスの黎明期だった2003年にビットレイティングス(その後アクセルマークに吸収合併)を創業。モバイル検索サービス「froute.jp」を含む複数のサービスに関わってきた人物だ。同社を離れた後にモブキャストに参画し、取締役としてプラットフォーム事業を推進。2015年にスマートアプリを立ち上げている。

同年6月にEast Ventures、山田進太郎氏、藪考樹氏などから3450万円を調達。最初の事業としてスマホ向けのアプリを紹介するメディア「AppCube」をリリースした。佐藤氏いわく「将来的にはサードパーティのアプリストアを目指したサービス」だったが、AppleやGoogleの公式ストアの機能強化が進み、デベロッパーやエンドユーザーからも強いニーズがなかったため2016年に撤退。そこから試行錯誤を続けていたという。

そんな佐藤氏がブロックチェーンに着目したのは2017年のこと。ブロックチェーンベースでアプリが作れることに関心を持ったことに加え、かつてモバイル業界で一緒にチャレンジしていた知人たちが相次いでこの領域に参戦したこともきっかけとなった。

「その中でWebとブロックチェーンを繋ぐ仕組みをベースとしたサービスを作るのがいいのではと考えた。PCでは『MetaMask』がすでに存在し、これと連動したサービスが出てきているけれど、当時スマホでやってるところはほとんどなくて。企画の整備を始めていた頃にCryptoKittiesが登場したこともあり、このマーケットはやっぱりくると感じてリソースを集中した」(佐藤氏)

ローンチを間近に控えた頃には同様の特徴を持つ「Trust Wallet」がBainanceに買収されるというニュースが話題になったりもしたが、まだまだプレイヤーは少なく、そもそもDappsの数自体が少ない状況。まずはDappsの市場を作りたいという思いで10月にGO! WALLETのiOS版をローンチした。

今回セレスとタッグを組むことに至ったのも、そのような背景の中で「自社単体でやっていてはなかなかスピード感が出ないと感じた」ため相談しにいったことがきっかけだ。

「サービス自体を洗練させて、GO! WALLET上でいろんなアプリケーションが展開できるようなデベロッパーを増やしていく必要がある。そのためにはどんどん送客していって、きちんとマネタイズできた成功事例を作っていかないと市場は大きくならない」(佐藤氏)

ユーザーとコンテンツを繋ぐポータルへ

今回佐藤氏に話を聞いていて興味深かったのが、現在のDapps市場がガラケーが主流だった初期のモバイルインターネット領域に似た状況だと表現していたことだ。

「当時は勝手サイト(非公式サイト)でサービスを作っていると、『砂漠に草を植えて何やっているの』と言われるような時代。多くの企業は着メロのコンテンツなどを作り、iMenuを通じて配信するのが主流だった。ただそこから少しずつ(勝手サイトを作る)コンテンツプロバイダーが登場することでマーケットが拡大していった」(佐藤氏)

これは黎明期のソーシャルゲーム業界にも似ていて、現在のDappsについてもまさに市場が拡大する大きなうねりの過程にあるのではないかと言う。

今後スマートアプリではパートナープログラムを通じて引き続きメディアやDappsデベロッパーとの連携を深めていくほか、ユーザーが今以上にカジュアルにDappsを使えるような取り組みや機能改善を行っていく方針。一例としてユーザーにトークンやアイテムを配布する仕組みも検討するという。

「(Dapps市場においては)まだまだユーザーとコンテンツが繋がる仕組みが足りない。ウォレットとしては安全性ももちろん大事ではあるが、いろいろなコンテンツを遊べるとか、操作性が優れているなどそちら側にフォーカスすることで、新たな市場が切り開けるのではないかと考えている」(佐藤氏)

暗号通貨ウォレットの「Blockchain」、Ledgerと提携してハードウェア・ウォレットを発売

ブロックチェーンのスタートアップ、”Blockchain“が今後数ヶ月の shared its 計画を発表した。同社はLedgerと提携してハードウェア・ウォレットを発売する。またBlockchainは新しい取引プラットフォームとしてSwap by Blockchainの提供を開始する——このプラットフォームは数ある交換所の中から最高の取引条件を見つけるので、ユーザーは自分のBlockchainアカウントで直接適正価格でトークンを交換できる。

Blockchainは現在もっとも成功している暗号通貨ウォレットのひとつだ。同社はBitcoin向けのソフトウェア・ウォレットでユーザー基盤を築き、今やEtherumとBitcoin Cashにも拡大している。

伝統的交換所と異なり、Blockchainではユーザーがプライベートキーを管理する。Blockchainはユーザーのトークンをアクセスできないので、仮にBlockchainがハックされてもハッカーがユーザーのウォレットを空にすることはない。現在Blockchainは3000万個のウォレットを管理しており、過去2年間で2000億ドル以上の取引を処理した。

しかしソフトウェア・ウォレットはハードウェア・ウォレットほど堅牢ではない。世の中には無数のフィッシングサイトや詐欺師が人々のプライベートキーを盗もうと狙っている。だからBlockchainは独自のハードウェア・ウォレット、のようなものを発売することになった。

同社はフランスのスタートアップ、 Ledgerと提携してBlockchain Lockboxを発売する。見た目はLedger Nano Sとまったく同じでBlockchainのロゴがついている。中にはBlockchainのファームウェアが入っていてBlockchainのウォレットと連動する。

Ledger自身のアプリと同じく、ハードウェア・ウォレットをパソコンと繋がなくてもスマートフォンやウェブで残高を確認できる。ただし、取引を処理するためにはパソコンに差し込んでBlockchain Lockbox自身で取引を認証する必要がある。

今あるBlockchainウォレットとBlockchain Lockboxにつながったウォレットがどういう関係になるのか気になるところだ。Lockboxは一種の長期保管庫として働き、標準のBlockchainウォレットには少額のコインを保存しておき日常の取引に使用する。

Swapは、Blockchainが独自に作っている取引システム商品だ。独立した交換所になるのではなく、同社は複数の交換所システムと統合する計画だ。最終的にBlockchainは、非中央集権型取引プロトコルに対応して、交換所を経由することなくトークンの交換ができるようにすることを目指している。

Blockchain Lockboxの価格は99ドルで11月に発売予定。Blockchainはモバイル分野で非常に人気が高いので、Bluetoothやモバイルに対応したバージョンもでてくることを私は期待している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

日本発の仮想通貨ウォレット「Ginco」がビットコインに対応、分散型サービスの入口となることを狙う

仮想通貨ウォレットアプリ「Ginco」を開発・提供するGincoは4月24日、同アプリをビットコイン(BTC)にも対応させ、本格リリースしたと発表した。BTCへの対応は、2月にリリースしたベータ版でのイーサ(ETH)、3月のアップデートによるイーサリアム上のトークンERC20系通貨9種への対応と、ブロックチェーンを使ったVR空間アプリケーション「Decentraland」内の仮想通貨MANAへの対応に続くもの。これで取引量上位2種のBTC、ETHを含む、12通貨に対応したことになる。

Gincoはスマートフォンで仮想通貨を管理するためのクライアント型ウォレットアプリ。日本語インターフェースで仮想通貨の入金・送金・管理が可能で、取引所から送金した仮想通貨の保管、飲食店やECサイトでの決済、個人間での仮想通貨のやり取りなどに利用できる。現在はiOS版がリリースされている。

ウォレット提供の背景について、Gincoでは「仮想通貨ユーザーの資産の正しい管理・保護」と「ブロックチェーン技術の本来の意味での活用」を目的に挙げている。同社代表取締役の森川夢佑斗氏は、3年ほど前からGincoとは別のウォレットアプリを開発してきたが、「日本では仮想通貨やブロックチェーン、ウォレットに関する知識、普及が遅れている」と話す。

「ウォレットは仮想通貨の入れ物というだけでなく、テクノロジーとして本来のあり方でブロックチェーンを生かす土台であるべき。『ブロックチェーン技術を使ったサービス上で仮想通貨を利用できる』ようなウォレットが必要だと考えてきた。Gincoは仮想通貨ユーザーの資産保護と、ブロックチェーン技術の本来の意味での活用の両面からウォレット開発を進め、ブロックチェーンを使った分散型社会を実現するイノベーションを届けることを目指している」(森川氏)

技術とデザインの力でウォレット普及を図る

2017年は日本の「仮想通貨元年」とも言うべき年になり、仮想通貨保有者は100万人を超え、200万人になったとも言われている。2018年3月には国内交換業者17社の現物取引顧客数が350万人となった(4月10日、日本仮想通貨交換業協会が発表)。一方でCoincheckのNEM不正流出事件などでも見られたように、多くのユーザーが取引所に仮想通貨を預けたままにしている実態もわかってきた。

資産として仮想通貨を管理・保護するのであれば、不正アクセスなどで狙われやすい取引所ではなく、秘密鍵を端末で管理するクライアント型ウォレットなどへ移し替えて管理した方が、より安全だ。だが、既存のウォレットは海外発のものが多く、日本のユーザーにとってわかりやすく使いやすいものが少ない。そのことが、日本でのウォレット普及を遅らせるひとつの要因ともなっている。

森川氏は「海外発のウォレットは英語インターフェースだけのものが多く、日本人にとってはユーザーフレンドリーではない。デザイン面でも、一般の人にはとっつきにくい。このため、バックアップやプライベートキー(秘密鍵)の管理などウォレット操作が難しくなっているが、これらの操作はウォレットで仮想通貨を正しく安全に扱うためには外せない。そこで我々のウォレットは、デザインとしてユーザーがわかりやすいものにしたいと考えた」と話している。

仮想通貨ウォレットの概念は難しく、とはいえ資産を守るためには、秘密鍵の使い方を他人に手取り足取り教えてもらうわけにもいかない。自分で仮想通貨を管理するには、相応のリテラシーが必要だ。Gincoでは、日本語でのバックアップの設定など、誤操作での資産損失がなるべく起こらないようなUI設計を行ったという。

「仮想通貨に詳しい人のブログなどを調べずに、初心者でも使えるようなウォレットは今までなかった。我々は技術とデザインをウォレットの“使いやすさ”に落とし込んで、ユーザーにアプローチしたい」(森川氏)

またGincoはセキュリティ対応に加え、外部APIに依存せずにウォレット機能を独自に実装したことで、自前でブロックチェーンにアクセスでき、正しい取引履歴情報に対応するスケーラビリティを備える。日本では外部APIに依存するウォレットが多いが、「それでは仮想通貨のインフラとして十分でない」との考えからだ。

現状ではGincoは、ブロックチェーンの仕組み上最低限必要な手数料だけで、上乗せ手数料なしで利用できる。「今はダウンロードしてもらうことに注力し、仮想通貨をより活用する場面が出てきたときに何かしらの形でマネタイズする」とGincoでは考えているようだ。リアルの銀行が口座ごとにいくら資産があるか、情報を持っていることを強みとしているように、仮想通貨の銀行、お金のハブとなることで集まる情報を使ってビジネスにしていくという。

Gincoは近いうちに、ビットコインキャッシュ(BCH)やライトコイン(LTC)などの主要な仮想通貨にも順次対応していくとのことだ。またAndrod版の開発なども進めていくという。

ブロックチェーン時代の「銀行」を目指して

Gincoは今後、DEX(Decentralized EXchange:分散型取引所)やDapps(Decentralized Applications:分散型アプリケーション)への接続機能を拡張していくことで、ブロックチェーン時代の銀行、分散化された社会を実現するためのインターフェースとなることを目指している。

現在利用されている、bitFlyerやZaif、Coincheckといった取引所は、管理主体がある中央集権型取引所だ。それに対し、DEXは取引を管理する主体がなくても機能する、ブロックチェーンを活用して個人同士で取引を行うことが可能な取引所である。

Dappsはブロックチェーンを用いた分散型アプリケーションの総称で、実はビットコイン自体も分散型の通貨アプリケーション、つまりDappsの一種である。現在、インターネット上にさまざまなウェブアプリケーションが存在しているように、さまざまな分散型アプリケーションがブロックチェーン上で開発されている。

分散型アプリケーションの代表的な例がゲームのCryptoKitties。過去にTechCrunchの記事でも紹介されているが、イーサリアム・ブロックチェーン上に構築されたトレーディングカードゲームのようなもので、バーチャルな子猫を売買したり、交配して新しいタイプの子猫を作り出すことができる。ガチャのように子猫のレア度をゲーム運営主体が調整することはなく、透明性が保たれている。また購入や交配で得た子猫は、中央集権型ゲームで運営会社が倒産すれば無価値になるキャラクターとは異なり、イーサリアム・ブロックチェーンがある限り資産となる。

森川氏は「中央集権型サービスと非中央集権の分散型サービスにはそれぞれ一長一短があるが、分散型のほうがメリットがあるサービスがDappsへ移行してくるのは確実」と話す。「その時に入口として必要になるウォレットをGincoで実現する」(森川氏)

Gincoでは、イーサリアム・ブロックチェーンベースのトークンでVR空間に土地が買えるDecentralandをはじめ、Dapps開発が盛んな海外のブロックチェーンカンパニーを中心にアライアンスを組み、Dappsとの接続を進めていくという。

森川氏は「仮想通貨をリアルな決済手段として浸透させて普及させる、というのは“ダウト”。結局は使われないのではないかと思っている」と話している。「SUICAなど、既存のバーチャルマネーは使える場面が多いから使われているわけで、場面が少なければ『使って何の得があるの?』となるだけ」(森川氏)

森川氏は、ブロックチェーンを利用した分散型のコンテンツプラットフォーム「Primas」を例に説明する。「Primasでは良いコンテンツを生産すれば、評価によって(仮想通貨の形で)返ってくる。今は円を仮想通貨、仮想通貨を円に替えるといった、わざわざボラティリティの高いことをやっているが、そうじゃなくて使ったサービスを通して仮想通貨を手に入れられなければ、仮想通貨経済は回らない」(森川氏)

「仮想通貨を仮想通貨として使うサービスやアプリ(Dapps)はまだ少ない。そこへアクセスするためのウォレットも少ない。そこでまずは海外のプレイヤーと組んで、ウォレットからDappsを使えるようにして、いずれは自分たちでもDappsを作っていこうと思っている」と話す森川氏。将来的にはDappsで得た仮想通貨がウォレットに入ってくるよう連携したり、ウォレット内で各種仮想通貨間の両替なども行えるようにしたいと語っている。

Dapps接続および通貨としての利用を見越して、Gincoではビットコインやイーサリアムなど、仕様の異なる複数のブロックチェーンプラットフォームに対応している。「現状ではイーサ(ETH)を使うDappsが多いが、BTC対応のものも出てきており、利用者の多さから対応は必須と考えている。ウォレット開発は、ブロックチェーンを使ったアプリケーションなどを展開するための足がかりとしてのステップ1だ」と森川氏は話す。

Gincoは2017年12月の設立。1月にはグローバル・ブレインが運営するファンドから、総額約1.5億円の資金調達を実施したことを発表している。

仮想通貨ウォレット「Ginco」開発がグローバル・ブレインから1.5億円を資金調達

仮想通貨のウォレットアプリ「Ginco」を開発するGincoは1月31日、グローバル・ブレインが運営するファンドから、総額約1.5億円の資金調達を実施したと発表した。

同社は2017年12月の設立。代表取締役の森川夢佑斗氏は、京都大学在学中にブロックチェーン技術を活用したプロダクト開発やコンサルティングを行うAltaAppsを創業し、『ブロックチェーン入門』などの著書もある。

写真左:グローバル・ブレイン 代表取締役 百合本安彦氏、右:Ginco 代表取締役 森川夢佑斗氏

同社は「ブロックチェーン時代の新しい価値取引を実現する銀行を目指す」として、スマートフォンで安全に仮想通貨を管理するためのクライアント型のウォレットアプリ、Gincoを開発している。クライアント型ウォレットでは、秘密鍵をサーバーで集中的に保存する集中型ウォレットやウェブウォレットと比較すれば、外部からのハッキングなどで資産を失うリスクが低い。

また、1月26日に仮想通貨取引所「Coincheck」で起きた不正流出で問題となった、「取引所に預けたままの資産がハッキングによって流失するリスク」も避けられる。利用者同士で直接送金ができるため、取引所などを経由するよりスムーズに送金が可能だという。

Gincoではまず、2月初旬にEtheriem(イーサリアム)の基軸通貨ETH(イーサ)に対応した、iOS版ウォレットアプリのベータ版リリースを予定しており、現在事前登録を行っている。その後のアップデートで、イーサリアム上のトークンERC20やBTC(ビットコイン)、XRP(リップル)といった主要な仮想通貨に順次対応していく。

同社では「仮想通貨を利用する世界中の人に、Gincoを利用してほしい」として、今回の調達資金により、グローバルなマーケティングの準備をする予定。また、ブロックチェーン技術に精通した開発者の採用強化と育成を行っていく。

決済サービス「AnyPay」が正式ローンチ、木村新司氏が狙うのはスマホ時代の“ウォレット”か

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ドリームインキュベーターでコンサルタントとして活躍した後にシリウステクノロジーズ取締役を務め、広告配信を手がけるアトランティスを立ち上げてグリーに売却。その後はエンジェル投資家としてGunosy(のちに共同経営者となり、退任。同社はマザーズに上場)を始めとしたスタートアップの成長を支援してきた木村新司氏。

2014年には拠点をシンガポールに移して、投資家としての活動に注力していた木村氏だったが、再び自身で事業を開始した。6月末に新会社AnyPayを設立(資本金は5000万円)。8月に入って新サービス「AnyPay」ベータ版を公開していたが、9月1日、いよいよ正式にサービスをローンチした。

新事業は決済サービス

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AnyPayは、個人でも手軽に利用できる決済サービス。サイト上では「AnyPayは誰でも、どこでも、簡単にリンク作成でき、リンクを相手に送るだけで決済ができるサービス」とうたっているとおりで、アカウントを作成した後、管理画面上で自分の売りたいアイテムを登録すれば、すぐさま自らの「ショップ」の商品として販売できるようになる。物販やサービスチケット、月額課金、ダウンロード販売などに利用できる機能を提供する。決済に利用できるのはVISAおよびMasterブランドのクレジットカード。

初期費用および月会費は無料で、登録時の審査も必要ない。決済手数料については、キャンペーン期間中として無料で提供している。ただし1アカウントあたりの月額売上が5000万円を超える場合、5000万円を超過した売上の2.8%の手数料が発生する。また口座への振り込みは1件あたり200円の手数料がかかる。AnyPayでは、3年以内に月額流通額500億円を目指すとしている。

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スマートフォンで使える「ウォレット」を作る

PayPalやその傘下のBraintree、StripeにSquare、さらに国内でもコイニー(昨日リリースしたばかりのCoineyペイジもかなり似たサービスだ)やWebPay、BASEの手がけるPAY.JPなどなど、手軽に使えるオンライン決済サービスは数多く登場している。やはり一番気になるのは、数多くの決済サービスがある中で、どうしてこの領域でのチャレンジを選んだのか、ということだ。サービスの正式ローンチに先駆けて木村氏に尋ねたところ、次の様な答えが返ってきた。

「(ビットコイン取引所の)bitFlyerなどに投資したこともあり、決済まわりのことは調べていた。(ビットコインの)ウォレットで送金をしてみるとその便利さを感じる。だがそれがスマートフォンでできないのはおかしい。例えば送金サービスをやりたくても送金業の縛りもあって日本では簡単に立ち上げられず、いろんな工夫をしないといけない。とは言え誰かがやらないといけないと思っていた」(木村氏)

日本で送金サービスをするために資金移動業者としての登録が必要になるし、供託金をつまないといけない。またKYC(顧客の本人確認)を行う手間でユーザーのドロップ率は高まってしまう。そうそう簡単にスマートフォンで完結するサービスを成長させるのは難しい。では前述の決済サービスのように、個人であってもクレジットカードを使ってお金をやり取りすることもできるが、決済手数料を取られてまでユーザーはやりとりをするのだろうか。こういった課題を解決するべく、木村氏はAnyPayを立ち上げたと語る。

「シンガポールだとPayPalとApple Payを使っているので、そこはすごく意識した。日本はまだまだ不便だと思う」(木村氏)

競合についてはあまり考えていないという。「決済ビジネスはぶっちゃけて言えば誰でも作れると思う。ただ問題なのはどこにポジショニングするか」(木村氏)。加えて、PayPalなどよりはVenmo(Paypal傘下の個人間送金サービス)のほうが気になっているとも語った。

仕組み上は「決済サービス」だが、木村氏が本当に狙っているのはデビットカードの置き換え——つまりリアルタイムに送金、決済でき、手数料の安い(もしくはゼロの)、スマホ時代の新しい「ウォレット」を作るということではないだろうか。

“フリマ”で個人のニーズを喚起

木村氏は「最初はAnyPayをツールとして提供していく」と語る一方で、「今は個人とスモールBに注力しているが、個人の場合、目的があるわけでもないのでそこまで使われない」と分析。今後はそんな個人の利用を喚起するための施策を打っていくという。

「個人の場合、決済のタイミング——CtoCの売買であればチケットや本など、目的をはっきりさせないといけない。今後は目的があるプロダクトを『AnyPay』のアカウントで出していく」(木村氏)。その言葉を聞いて僕の頭に浮かぶの「カテゴリ特化型のフリマアプリ」だったが、木村氏の回答はそのとおりで、今後、領域特化型のフリマアプリをいくつか提供していく予定だという。特化型のフリマという具体的な目的を用意することで、アカウントの拡大を狙う。

BASEがネットショップの構築サービスから決済領域のPAY.JPを提供するに至った。AnyPayは順序こそ逆(決済からショップ(というかフリマ))ではあるが、少し似たアプローチにも感じる。フリマアプリは、年内にもリリースする予定だという。

今後は国内にとどまらず、アジア圏でもサービスを展開していく予定だ。「アジア各国はそれぞれ(決済まわりの)特性が違う。国によってはフリマサービスは提供できても決済はライセンスが必要だったりする。そういった環境に合わせつつ動く。サービスのベースは作ったし、FinTech関連の状況も分かってきたので、M&Aすることも考えていく」(木村氏)