2024年のエアタクシーサービス開始に向けVolocopterが195億円調達

南ドイツ(ブルッフザール)で創業したスタートアップVolocopter(ボロコプター)は、電動の垂直離着陸機(VTOL)の開発と、この機体を都市部でタクシー形式で運用するビジネスモデルを推し進めてきた。商業展開に近づく中、同社はまたしても大型の資金調達を行った。1億7000万ドル(約195億5000万円)を調達し、この資金で同社初のエアタクシーサービスを開始し、おそらくシンガポール、ローマ、パリなどの都市での提供となると発表した。

広報担当者によると、サービス開始時期は、取得する認証の種類と認証をいつ取得できるか次第だ。2023年後半から暮れの間にすべてが完了すれば、最初の都市での商業開始は2024年になる可能性が高い。VolocopterのCEO、Florian Reuter(フロリアン・ロイター)氏は2021年3月に「サービス開始は2年後(つまり2023年)」と話していた。

「当社の目標は、2024年のパリオリンピックまでに商業運航を開始することです」と広報担当者は述べた。

調達した資金はシリーズEの一部で、Volocopterはこれが最初のクロージングだと表現している。プレマネーのバリュエーションは17億ドル(約1955億円)、ポストマネーでは18億7000万ドル(約2150億円5000万円)になるという。同社は筆者に、シリーズEの最終的な調達目標は3億〜5億ユーロ(381億〜635億円)だと認めた。「デューデリジェンス段階にある他の投資家もいますが、次のサイニングラウンドの時期も額もまだわかりません」と広報担当者は述べた。

今回の最初のトランシェは韓国からの新たな投資家であるWP Investmentがリードし、戦略的投資家のHoneywell(こちらも新規投資家)、既存投資家からはAtlantia、Whysol、btov Partnersなどが参加した。現在までにVolocopterは総額5億7900万ドル(約666億円)を調達していて、他の投資家にはGeely、Mercedes-Benz Group、Intel Capital、BlackRockが含まれる。

Volocopterは2017年、Intel(インテル)などの大企業の支援を受け、ドバイで初の自律型の空飛ぶ車のテストを実施し、自動運転車の分野で大きな注目を集めた(IntelもVolopterの自律飛行機能を導入し、自社の大げさなイベントで披露した)。

注目すべきは、現地時間3月4日の資金調達の発表では、自律性や自動運転機能については一言も触れられていないことだ。これは、Volocopterのサービスが開始に近づいていく中で、より現実的なフレームワークがあることを裏付けている。

同社は筆者に、最初の商業サービスが試験的に実施されることを認めた。「VoloCityは、商用サービス開始時に、クルーが乗り込んでの飛行、遠隔操縦、および自律飛行の技術的能力を備えていることになります」と広報担当者は話した。「しかし、パイロットによる飛行の方が、一般に受け入れられやすいと思います。アーバンエアモビリティ(UAM)が浸透し、都市がクルーなしの飛行形態を認める規制を設ければ、徐々に遠隔操縦や自律飛行に移行していくでしょう」。これも、各都市の規制次第だろう。

「今回の資金調達は、非常に魅力的な新興市場において、Volocopterが主導的な立場にあることを証明するものです。我々は、世界中の都市で大規模なUAMを実現するために、技術的にも商業的にも大きな前進を続けています」とロイター氏は声明で述べた。

Volocopterは現在、同社のエアタクシーに使われる3種の機体、VoloCity、VoloConnect、VoloDroneに注力している。欧州連合航空安全局(EASA)から設計組織承認(DOA)を取得した「最初で唯一の」電動垂直離着陸(eVTOL)企業だという。つまり、この分野での成功を狙うLiliumKitty HawkJoby Aviationなどの競合他社が参入する前に、うまくすれば単独ブランドの商業プロバイダーとして、あるいは他の都市交通企業のパートナーとして、市場参入できる可能性があるということだ。

今回のシリーズEはすべて株式による調達だが、Volocopterはより大きな航空機の建造のために多くを負債によっても調達している。2022年初めには、Aviation Capital Group(ACG)と10億ドル(約1150億円)の契約を結び、Volocopterの航空機の販売とリース運用のための資金調達を行った(時機が来れば最大10億ドル=約1150億円を借りられることを意味する)。これは、同社が航空機の完全な認証を取得した後に開始する。

これまでに同社は約1000回の公的および私的な試験飛行を終えている。

また、同社は今回の発表の中で、調達した資金調達で商業運転開始だけでなく、最終的には株式公開を目指す計画だと述べた。

「Volocopterには世界中からすばらしい投資家が集まっており、上場への道を歩み出す前に、いち早く認証を受け、いち早く市場に出るという戦略に集中できるすばらしい立場にあります」とVolocopterのCCO、Christian Bauer(クリスチャン・バウアー)氏は声明で述べた。

この先行者としての優位性と、過去10年間にわたる「空飛ぶ車」の開発努力が、まだ製品の市場性を証明していないにもかかわらず、投資家から今、多くの信用を得ている2つの要因のようだ。

「Volocopterは2021年、ソウルでUAMを飛ばし、世界の都市にいち早くUAMを導入することができると確信しています。ESG投資のリーダーとして、Volocopterを通じて都市の持続可能性を高められることをうれしく思います」と、WP Investmentの会長Lei Wang(レイ・ワン)博士は声明で述べた。また、同社の共同会長であるTiffany Park(ティファニー・パク)氏は、韓国も商業運転開始の一翼を担うことになると付け加えた。

画像クレジット:Volocopter

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

Joby Aviationの墜落事故、米国運輸安全委員会が調査中

米国運輸安全委員会(NTSB)が、米国時間2月16日水曜日にカリフォルニア州ジョロンで発生したJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)の実験機の墜落事故を調査している。

規制当局に提出された書類によると、この事故に関わっているのは、カリフォルニア州にあるJobyのテスト基地で行われた飛行テストで遠隔操縦されていた実験機だという。航空機の初期テスト段階では、米連邦航空局(FAA)が安全上の理由から航空機の無人化を要求することが多い。

同社の報告によれば、墜落による負傷者はなく、テストは無人の地域で行われたとのことだ。

「実験飛行プログラムは、航空機の性能の限界を見極めるための意図の下にデザインされたものであり、残念ながら事故が発生する可能性はある」と提出書類には記載されている。「我々は、関係当局による事故の徹底調査を支援する」。

NTSBは、航空事故から特定の種類の高速道路事故、船舶事故、橋梁事故に至るまで、最も深刻な事故を調査しあらゆる詳細を報告している。今回の墜落事故ではJobyの機体に「かなりの損傷」があったことを、NTSBのスポークスマンPeter Knudson(ピーター・ヌッドソン)氏がブルームバーグに語っている

Jobyの株価は時間外取引で9%下落している。

画像クレジット:Joby Aviation

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

ANAとJoby Aviationが提携、日本でもエアタクシーサービスを開始へ

Joby Aviationは、日本の航空会社ANAと提携し、航空ライドシェアサービスを日本に提供する。トヨタ自動車も両社と提携し、エアタクシーと地上の交通機関を接続する方法を模索する予定だ。

Joby Aviationが日本で事業を開始する意向を明らかにしたのは、同社が韓国のSK Telecomと提携し同国で航空タクシーサービスを開始する計画を発表した1週間後のこととなる。JobyはSK Telecomのスピンオフ企業であるT Map Mobilityプラットフォームと協力して、エアタクシーをT Mapのサブスクリプションベースのmobility-as-a-serviceプラットフォームに統合する予定だ。

関連記事:韓国でJoby Aviationがエアタクシーサービス開始へ

両社は、Jobyの航空機の操縦開始時期、日本での商用サービス開始予定時期、ANAとJobyのどちらが運営するのか、顧客がどのように利用するのかなど、サービスの具体的な内容は明らかにしなかった。Joby Aviationの広報担当者は、Joby、ANA、トヨタの3社は現在、インフラ整備、パイロット養成、飛行運用、規制要件、一般の受け入れ、航空輸送をより大きな交通エコシステムに接続する方法などを検討しており、計画段階にあるという。

トヨタは、この未来のサービスにおけるパートナーであるだけでなく、JOBYの戦略的投資家でもある。トヨタは2020年にJobyの5億9000万ドル(約681億円)のシリーズCラウンドを主導し、同社と電動化技術や製造、品質、コスト管理に関する専門知識を共有しているとJoby Aviationの広報担当者は述べている。

「本日の発表は、日本における未来のエアタクシーサービスのあり方を定義するための第一歩です」と、広報担当者は語る。「両社は今後、ルートの候補も含めて、この画期的な新しい交通手段を確立するためのあらゆる側面で協力することになります」。

Jobyの航空機は、最大航続距離150マイル(約270km)、最高速度時速200マイル(約320km/h)だ。クルマで1時間かかる関西国際空港から大阪駅までの移動は、同社のサービスを使えば15分以内で行けると試算している。

電動垂直離着陸機(eVTOL)は4人乗りであり、少なくとも最初の用途では、商業サービスは限定的なものになるだろう。Jobyが現在のモデルを大量生産するか、より大きなeVTOLを作るまでは、エアタクシーが一般的になるのは数年先だろう。さらにeVTOLの製造に時間と費用が必要であるだけでなく、規制上の障害がある可能性のためだ。しかし、先に米運輸省の連邦航空局とG-1(第4段階)の認証基準を締結し、一歩前進した。これにより、同社は米国での適合性試験を開始し「実施段階」に入ることができるようになった。これは基本的にJobyは、航空機の複合材部品の設計と製造に承認を得たことを意味する。

日本における空のライドシェアの採用を加速させたい学者、研究者、航空会社、スタートアップ、公的機関が集まった「空の移動革命に向けた官民協議会」では、日本でのeVTOLの認証が検討されている(Joby Aviation、トヨタ、ANAはすべてこのグループのメンバーだ)。最終的な認定は、国土交通省航空局が行う予定だ。

画像クレジット:Joby Aviation

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Katsuyuki Yasui)

韓国でJoby Aviationがエアタクシーサービス開始へ

米国カリフォルニア州を拠点とする電動垂直離着陸機のスタートアップ企業であるJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)が、韓国最大の通信会社であるSK Telecom(SKT、SKテレコム)と提携し、韓国でエアタクシーサービスを提供することを計画している。両者は米国時間2月6日に、カリフォルニア州マリーナにあるJobyの製造工場で、戦略的提携契約を締結した。

地上と空の旅のより良い統合を提供するために、このエアタクシーサービスは、T Map Mobility platform (レンタカー、駐車場、配車サービス、その他の交通関連サービスからなるサブスクリプションベースのモビリティ・アズ・ア・サービスを提供するSKテレコムのスピンオフ企業) と、TマップとUber(ウーバー)が2021年共同で創業したジョイントベンチャーの配車サービスUTを活用する。シリコンバレー発のUberにとっては創業後8年目にして韓国市場への初めての進出だ

JobyとUberの歴史は、両社が2019年に、Uberの都市部での航空タクシーサービス立ち上げの計画を後押しするために始まった。2020年、UberはJobyのシリーズCに5000万ドル(約57億7000万円)を投資し、さらに7500万ドル(約86億5000万円)を投じて、JobyによるUberの空中ライドシェア部門であるUber Elevate(ウーバー・エレベート)の買収を支え、両社のパートナーシップを拡大した。これらの提携により、米国市場でのサービス開始時には、Jobyのライドシェアサービスは、JobyまたはUberのいずれかのアプリを通じて乗客に提供されることになる。よって、韓国のユーザーにもUTとの同様のアプリ統合が行われる可能性がある。

SKテレコムもJobyも、いつ、どこでエアタクシーサービスを開始するかについては明らかにしていないが、両社が発表した声明の中では、主要都市の交通渋滞を解消するために、韓国国土交通省が提唱する、2025年までに限定的なUAM(都市空中移動)サービスを商業化することを目標とするK-UAM(Korean Urban Air Mobility)ロードマップへの支持が表明されている。この計画では、まずソウル首都圏に1〜2路線を設置し、10年後までに10カ所のエアタクシーターミナルを設置して、すべてのターミナルが路線バスや地下鉄、その他の移動手段に接続されるようにする予定だ。

SKテレコムは、韓国国内UAMの早期安定化を推進する政府主導のコンソーシアムの「UAM Team Korea」(UAMチームコリア)のメンバーである。同コンソーシアムのメンバーは民間業者で構成されており、他に現代自動車、大韓航空、仁川国際空港公団などが参加している。

JobyのJoeBen Bevirt(ジョーベン・ベバート)CEOは「4200万人以上の人々が都市部で生活している韓国は、Jobyにとって、空中移動を日常生活の一部にし、人々が時間を節約しながら二酸化炭素排出量を削減するためのすばらしい機会を提供するでしょう」と述べている。

韓国での活動の一方で、Jobyは米国内での活動にも力を入れている。先週もTechCrunchが、Jobyが最大航続距離150マイル(約241km)、最高速度時速200マイル(約320km)の第2世代の試作機「S4」をテストするために、サンフランシスコ湾上でのエアタクシーの連続飛行の許可を求めていると報じたばかりだ。また、低騒音であることから、市街地へのアクセスが可能だとも主張している。

関連記事:サンフランシスコ湾上での「空飛ぶタクシー」飛行テストをJoby Aviationが計画

画像クレジット:Joby Aviation

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

サンフランシスコ湾上での「空飛ぶタクシー」飛行テストをJoby Aviationが計画

Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)が、注目を集める「空飛ぶタクシー」の連続飛行をサンフランシスコ湾上で行う許可を求めていることが、FCC(米国連邦通信委員会)に提出された書類からわかった。

このスタートアップ企業が開発した「S4」と呼ばれる第2世代の試作機にとって、これが初めて衆人環視の中、都市環境で行う飛行テストとなる。

サンフランシスコで計画されているテストは、サンフランシスコ湾の2つの主要な観光スポットを中心に行われる。1つはゴールデンゲートブリッジとアルカトラズ島の中間地点、もう1つはベイブリッジの南側、アラメダに近い地点だ。

Jobyのマーケティングコミュニケーションブランド部門で責任者を務めるOliver Walker-Jones(オリバー・ウォーカー・ジョーンズ)氏は「私たちは現在、限られた回数のフライトを行う可能性を検討している初期段階にあります」と述べている。「確定した計画はまだなく、飛行許可を確実に得るためには、地方自治体や連邦政府のさまざまな機関と協力する必要があります。とはいえ、これは非常にエキサイティングなことです」。

Jobyは2021年、電動垂直離着陸機(eVTOL)による数々の記録を打ち立てた。最長飛行距離155マイル(約250キロメートル)、最高時速205マイル(約330キロメートル)、さらに最高度記録も更新したと、同社はTechCrunchに述べている。

「私たちは最近、海抜高度7000フィート(約2.1キロメートル)を超えるフライトを何度か行いました」と、ウォーカー・ジョーンズ氏は語る。これらの飛行はすべて、カリフォルニア州サンタクルーズ周辺の人里離れた沿岸部や私有地の上で行われた。今度の湾上飛行は、これらの記録に続くマイルストーンとなる。

最近の記録的なフライトと同様に、完全電動マルチプロペラ式で5名乗車可能なS4は、人を乗せずに今度のテストを行う予定だ。FCC、FAA(米国連邦航空局)、および市当局の許可が必要となるこのテストは、近くの地上コントロールステーションから遠隔操作で行われる。

Jobyが提出した申請書によると、飛行時間は通常1時間で、主に水上を飛行し、最大高度は海抜5000フィート(約1.5キロメートル)となる予定だという。この翼幅約40フィート(約12.2メートル)、重量4400ポンド(約2000キログラム)の航空機が、どこで離陸、着陸、充電を行うかは明らかにされていないが、それは地上で行うことになるだろうと、ウォーカー・ジョーンズ氏はTechCrunchに語った。

Volocopter(ボロコプター)はシンガポールの水上で、eHang(イーハン)は南アジアの都市の上空で、それぞれeVTOLのデモンストレーション飛行を行っているが、Jobyの飛行が承認されれば、米国の都市では初の本格的なエアタクシーの飛行となる。

今回のテスト飛行は、実物大の航空機を遠隔操作するために使う無線機器の評価が目的とされている。「飛行試験は、Jobyが開発中の新しい航空機技術が、FAAの飛行認証を取得するための継続的な取り組みに不可欠で必要な要素である」と、FCCの申請書には書かれている。

2021年夏にSPAC(特別買収目的会社)による11億ドル(約1270億円)の株式を公開を行ったものの、それから株価が50%も下落した同社にとって、このドラマチックな公開テストはメディアに大きく取り上げられることが期待できる。

「無線機のテストが、この地域で行う実証飛行の目的です」と、ウォーカー・ジョーンズ氏はいう。「もちろん、将来的にはポジティブなメリットもあります。都市部で技術を実証すれば、最終的に運用することになる場所に、これがどのように適合するかを、人々に見て理解してもらえますから」。

今回のテストは、最先端のeVTOL機を「戦略的能力ポートフォリオ」に加えたいと考えている米空軍との複数年にわたる4500万ドル(約52億円)の契約の一環でもある。

現在、Jobyが所有する2機のS4量産前試作機が、FAAと米空軍から実験的運用の認定を受けている。

2021年4月にFAAに提出された書類によると、2019年10月から飛行している最初の量産前試作機は、562回のテスト飛行を終え、約27時間の飛行時間(平均飛行時間が3分未満という意味になる)を記録しており、時速80マイル(約時速129キロメートル)を超える速度や1000フィート(約305メートル)以上の高さでは飛行していない。

ウォーカー・ジョーンズ氏によると、Jobyは航空機の可能性を徐々に追求する「限界範囲拡大活動」の一環として、これらの過去の記録を塗り替えているという。同社は先日、S4が公称最高速度の時速200マイル(約時速322キロメートル)をわずかに超え、時速205マイル(約330キロメートル)のテスト飛行を行ったと発表している。ウォーカー・ジョーンズ氏によると、試作機はこの1月だけで20分以上のミッションを17回行ったという。高度7000フィートの記録が確認されれば、一般的にエアタクシーが都市内や都市間における短距離飛行の運用で期待される高度を、はるかに上回ることになる。

Jobyが2021年4月にFAAに提出した書類によると、同社は今後2年間で最大4機のS4試作機を製作し、最大600回のテスト飛行を行うことが予定されている。その後、商業運航のために必要なFAAの型式認証要件を満たす最終設計に移行する。

Jobyは2022年中に航空会社としての認定を受け、2024年には旅客輸送サービスを開始する予定だ。この時点では、資格を持ったパイロットが搭乗することになる。同社は2021年、都市不動産会社であるReef Technology(リーフ・テクノロジー)と契約を結び、ロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、サンフランシスコ・ベイエリアの都市部にある駐車場の屋上に離着陸場を開発することになった。

関連記事:Joby Aviationが空飛ぶタクシー乗降場所として立体駐車場に注目

2021年9月には、NASAがJoby S4の離陸・飛行・着陸時の音響テストを行っている

SECに提出した書類によると、同社の航空機は従来のヘリコプターの100倍以上の静粛性を備え「都市の背景の騒音に溶け込みながら、密集した都市部を中心に運用できる」ことが期待されるという。NASAとJobyにTechCrunchが尋ねたところ、音響テストの結果はまだ公開されていないとのこと。

2021年1月、Jobyは配車サービス大手のUber(ウーバー)による7500万ドル(約86億4000万円)の投資の一環として、Uberの航空輸送事業であるUber Elevate(ウーバー・エレベート)を買収した。Jobyは11月のSEC提出書類で、Elevateの資産をわずか2000万ドル(約23億円)と評価しており、その価値のほとんどは自動化、マルチモーダル、シミュレーションのソフトウェアによるものと表していた。

サンフランシスコで行う飛行テストについて、JobyのFCC申請はまだ保留されている。

画像クレジット:Joby Aviation

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(文:Mark Harris、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】離陸間近なeVTOLにまつわる2021年4つのトレンド

数十億ドル(数千億円)の資金と数十件の契約と1件の法廷闘争。2021年はeVTOL(電動垂直離着陸機)にとって忘れがたい1年だった。大手航空セクターが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによる落ち込みから徐々に回復するのに忙しい中、スタートアップはスピードを上げている。

以下に、第一線アナリストと投資家に追いつくべく、2021年eVTOLが巻き起こしたトレンドを紹介していく。これらのトレンドは今後数年も影響を与え続ける可能性が高い。

誰がSPACといった?

Archer Aviation(アーチャー・アビエーション)、Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)、Lilium(リリウム)、Vertical Aerospace(バーチカル・エアロスペース)。eVTOLを開発している、という以外の共通点は何か。4社とも、2021年白地小切手会社との合併を発表あるいは完了した。そしてこの生まれたばかりで、現実離れしているとさえ思えるテクノロジーに、あきれるほど巨額な資金が注入されている。

もし2021年が、eVTOLの世界で何かしら記憶に残る年になるなら、巨額な資金がこの業界に流れ込んだことが主な理由だ。3つのSPAC案件だけで(JobyArcher、およびドイツのデベロッパーLilium)総額25億ドル(約2852億円)以上の資金を獲得し、Jobyの調達額はその半分近い11億ドル(約1255億円)に上る。垂直離着陸機は、SPACを挙って公開市場への乗り物に使った唯一のモビリティテクノロジーではないが、そのおびただしい案件数は、2021年の傑出したトレンドの1つであることに間違いない。

関連記事:eVTOL開発のArcherがユナイテッド航空から受注、SPAC経由で上場も

「現在のeVTOL業界が、以前、例えば1年前と何が違っているかといえばそれは資本の入手です」とMorgan Stanley(モルガン・スタンレー)の航空宇宙・防衛上級アナリストであるKristine Liwag(クリスティン・リワグ)氏は説明した。

この並外れた資金流入が意味しているのは、これらの企業は自社の飛行機が商業運用に必要な連邦航空局の認可を得るための、長くて徹底したプロセスを通過するための重要な資金を手にしているということだ。それが十分であるかどうかは別問題であり、各企業の進捗と費用効率による。

テクノロジーを商業化するための高いコストが、SPACトレンドへと走らせた可能性は高い。航空産業は資本集約的ビジネスであり、eVTOLの設計から生産、認可までには10億ドル(約1141億円)程度必要だと多くの人は考えている。

「私にとって最大の驚きは、第一線スタートアップの多くが、自社製品を認証完了までもっていくための予算を獲得する方法を見つけたことです」とIDTechExのテクノロジーアナリスト、David Wyatt(デビッド・ワイアット)氏はいう。「今ある数多くのテスト機がプロトタイプ状態から確固たる本格的eVTOLへと飛躍する大きな一歩であると感じています」。

SPAC以外でも、eVTOL企業へのベンチャー投資は少なくなかった。2021年は巨額の調達ラウンドが見られた年でもあった。たとえばBeta Technologies(ベータ・テクノロジーズ)の3億6800万ドル(約420億円)のシリーズAやXpeng(シャオペン)が支援するHT Aero(HTエアロ)の5億ドル(約571億円)のシリーズAなどだ。

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「2021年は、『認証はとれるのか?』を質問するだけの年でした」とSMG Consultingのファウンダー・パートナー、Sergio Cecutta(セルジオ・セクッタ)氏がいう。「これからの質問は、認証はいつとれますかです。『本当に飛べるの?認証は取れるの?」という段階は過ぎました。いずれも可能です。あとは、気合を入れと取りかかるだけです」

地上での動き

エアタクシー開発者が力を入れているのは飛行機だけではない。電動飛行機の市場を現実にするためには必要なことがたくさんある。地上インフラ、すなわちバーチポート(垂直離着陸要飛行場)あるいは空港内の専用エリア、および十分な電力を供給するための充電ポイントだ。

この部分でやるべきことは「やまほど」あるが、2021年にeVTOL運用会社らが、商業運用開始に必要な基盤を5年以内に確立するための作業開始に向けてスタートを切ったことは注目に値する。たとえばLiliumとABB E-mobilityは、Lilium Jetのための充電インフラストラクチャ提供で提携し、JobyとArcherは駐車場所有者のREEF Technologyと提携、Verticalとヒースロー空港は、空港運用にeVTOLを組み込む方法を共同で検討している。

Archer、Joby、Volocopter(ボロコプター)の3社もロサンゼルスのUrban Movement Labs(アーバン・ムーブメント・ラボ)と協力して、都市型エアモビリティを既存のインフラや輸送ネットワークに統合する方法を探っている。

関連記事:エアタクシー離陸に向けたロサンゼルスの取り組み

「各空港がこの問題を本気で考え始めていることを私は知っています」とJetBlue Technology VenturesのプレジデントであるAmy Burr(エミー・バー)氏はいう。「空港で何らかのインフラストラクチャー・プロジェクトに携わっている人なら誰でも、バーチポートを置く必要があるかどうかを考えています」。

(不確定な)発注

最後に、2021年に我々は、eVTOL機の大量発注が始まったのを見た。もちろん、United(ユナイテッド航空)がArcher Aviationに10億ドルの発注を行ったというニュースのためだ。その後、Embraer(エンブラエル)が支援するエアタクシーデベロッパーであるEve Urban Air Mobility(イブ・アーバン・エア・モビリティが発注、UPS(ユーピーエス)がBeta Technologiesに発注、そしてVertical Aerospaceが1350台の条件付き先行予約を受けるなど次々と注文が続いた。

はっきりしておく必要があるのは、どの発注も確定ではないことであり、商業製品が未だ実在していないことを考えれば当然である。開発、認証の完了が条件であり、他にも性能面の条件がある可能性が高い。

それでも、たとえ個々の企業にとっては気を抜けない状況であっても、業界にとっては有望な兆候だ。

「これらの飛行機に明確な市場が存在していることは、有望だと思っています。航行許可を得て、飛べるようになりさえすれば、市場は十分な関心を持っている、という確信を与えるものです」。

伝統的メーカーも参入を伺う

2021年で注目すべき最後のトレンドが、活発化する伝統的自動車メーカーの動きだ。ほとんどの見出しはスタートアップが占めていたかもしれないが、古くからいる伝統的企業も電動飛行機の可能性に気づき始めている(中でもBoeing[ボーイング]やAirbus[エアバス]をはじめとする伝統的航空機会社は、eVTOへの強い関心を示している。BoeingはKitty Hawk[キティ・ホーク]とWisk Aero[ウィスク・エアロ]とのジョイントベンチャー、AirbusはCityAirbus NextGenのeVTOLコンセプトを発表している)。

自動車メーカーでは、Hyundai(現代、ヒョンデ)が目立っている。この会社は2020年のCESでeVTOLのコンセプト・デザインを披露し、2021年はSupernal(スーパーナル)の名前で都市型エアモビリティ事業を正式発表した。Honda(ホンダ)はハイブリッドeVTOLの開発計画を正式発表した。同社はこれを、つながるアプリやHondaの自動車を含む「モビリティー・エコシステム」の一環と位置づけていることが注目の理由だ。そして、もちろん、中国の自動車メーカー、Xpeng Motors(シャオペン・モーターズ、小鵬汽車)は10月末、都市型エアモビリティ子会社、HT Aero(HTエアロ)が、eVTOL機コンセプト開発のために5億ドルを調達したと発表した。

関連記事:本田技研工業がeVTOL、アバターロボット、宇宙技術に向けた計画を発表

いずれの動きも注目に値する。なぜなら主要自動車メーカーはeVTOLプロジェクトを進めるために必要な資本と生産基盤の両方を持っているからだ。それは成功を保証するものではもちろんなく、これらの大企業にスタートアップと同じようなプレッシャー(もモチベーション)もないが、今後注目し続けるべきであることは間違いない。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

エアタクシー離陸に向けたロサンゼルスの取り組み

配車サービスやeスクーターなどの製品を提供している企業は、発生する問題の数を超えるペースでさまざまな問題を解決していくと約束してはいるものの、米国中の都市の交通は混乱状態だ。ロサンゼルスは、CO2排出量ゼロの交通機関を導入しようと躍起になっており、エアタクシーの導入では過去の過ちを繰り返さないようにしたいと考えている。


ロサンゼルスでのエアータクシー導入の準備を進めるため、ロサンゼルス市長Eric Garcetti(エリック・ガーセッティ)氏の肝いりで設立された非営利組織が、2020年代後半に予定されている商業運転の開始に先立ち、エアタクシーの開発元および地元住民と協力して、ポリシーツールキットの開発に取り組んでいる。

しかし、その前に多くの問題を解決する必要がある。第一に、エアタクシーは、連邦航空局の認可を受ける必要がある。これ自体、大変な仕事だ。しかも認可を受ける前に、サービス提供企業はインフラの構築計画を立てる必要がある。つまり、エアタクシーのバーティポート(垂直離着陸機用の離発着ターミナル)の建設だ。ところが、これには騒音、都市計画法などの現実の問題がともなう。これらは、市民だけでなく交通網にも影響を及ぼす可能性のある問題だ。

Urban Movement Labs(UML)は、2020年に市長の経済開発局からスピンアウトして設立され、市のモビリティの未来を形成するという目的で、501c(3)非営利独立組織となった。2021年、同組織は市長室およびロサンゼルス運輸局と都市航空モビリティ(UAM)の推進で提携し、UAMを市の既存のインフラおよび交通網に統合し、なおかつ公平性とアクセス性が最大化されるようにするための具体的な取り組みを進めている。

このパートナーシップに資金を供給したのは、Archer AviationとHyundaiの都市エアモビリティ部門だ。

「HyundaiとArcher Aviationからは、このポリシーツールキットの開発支援を重視するという確約をいただいています」とUMLのエグセクティブディレクターSam Morrissey(サム・モリシー)氏は、最近行われたインタビューに答えて語った。「このポリシーには、エアタクシーの飛行区域、飛行経路、民間機専用空港以外で着陸が許可される場所についてのポリシー、その他バーティポートの計画に関連するポリシーが含まれます」。

Joby Aviationは設立当初からUMLと協力を続けている。また、ドイツのUAM開発企業Volocopterが2021年10月初め、最新のパートナーとして新たにUMLに参加した。

「私たちの役割は、ロサンゼルスへの新しいテクノロジーの導入を促進することです」とモリシー氏はいい、Uber、Lyft などの輸送企業およびスクーターレンタルサービス登場後の状況のように、新しい輸送テクノロジーが導入されてから慌てて規制を整備するようなことは避けたいと考えていると付け加えた。

「2016年にUber Elevateが米国の各都市でエアタクシーを巡航させるという話を始めたとき、ロサンゼルス市は「この問題に注力できる別の組織が必要だ」と述べている。

インフラストラクチャの課題

UMLは、自身を、ロサンゼルス市、民間企業、そして何より、ロサンゼルス市民の三者間の橋渡し役と考えている。この三者の展望は必ずしも一致していない。特に、電気エアタクシーの導入には、火災の危険性、飛行区域、騒音、利害関係者間で意見の食い違いが生じるさまざまな問題など、解決すべき特殊な課題がある。

バーティポートについて考えてみよう。航空機の認可は完全にFAAの管轄だが「新しいインフラをゼロから構築する必要がある場合は、地方自治体と市の問題であることは明らかです」とJoby Aviationの政府業務関連担当主任GregBowles(グレッグ・ボウルズ)氏は説明する。「(エアタクシーの)利用方法、アクセス、許可はすべて自治体の問題です」。

モリシー氏によると、各企業は飛行経路の策定を、例えばUberのプレミアムサービスであるUber Blackが現在主にどこで利用されているかを見るという具合に、マーケットの観点から考えているが、UMLは、これを地域計画のアプローチに重ね合わせることで、UAMが既存の交通網を長期的にどのような形で支えるようになるのかを説明したいと考えている。

敷地と都市区画法の問題もある。かつてバーティポートの敷地候補となった場所が突如として浮上してくるニンビー主義についてはすぐに想像できるが、その他にも、航行速度や1時間あたりのフライト数なども、特定の敷地を利用できるエアタクシー業者の数に影響を与える可能性がある。

Archer AviationとJoby AviationはどちらもREEF Technologyとの民間提携を宣言して、立体駐車場などの資産をバーティポートとして再利用することを考えているが(UMLも立体駐車場はいろいろな意味で極めて合理的だという認識を示している)、エアタクシーが実際に顧客を乗せて飛行するには、市自体の規制も考慮に入れる必要がある。

「立体駐車場の屋上階を歳利用するのは良いアイデアですが、最終的にはビルの安全性部門が、こうした立体駐車場はエアタクシーを支えるだけの強度があるのかとか、消化設備は十分に備わっているのかといった問題を調査する必要があります」とモリシー氏はいう。

バーティポートを専用利用にするのか企業間で共有するのか、また専用と共有の割合をどくらいにするのかというのも大きな問題だ。エアタクシーの離着陸サイトとしては、空港ゲート型(均一的ですべての航空会社によって共有される)、ガソリンスタンド型(ブランド化されており、競争が激しく、施設も異なる)などが想像できる。この点も、市、住民、エアタクシー企業の間で対立が生じる可能性がある。

とはいえ、少なくとも最初は、大半の企業が、(例えば騒音や料金などについて標準を設定するなどして)連携するほうが、各企業で個別に取り組むよりも全体的な商業化と採用への近道になると考えるだろう。

「私たちはバーティポートを競合スペースとしては見ていません」とJoby Aviationのバーティポート標準化作業についてボウルズ氏はいう。「バーティポートは絶対に必要ですから、他の多くのOEM業者や将来のエアタクシー事業者と協力して取り組んでいます」。

画像クレジット:Joby Aviation

最後の質問はもちろん、誰が費用を支払うのかという永続的な問題だ。

「将来のバーティポートについて考える場合は、さまざまな課題について検討する必要があります。建設費用と運営費用の負担、バーティポートを利用できる人についての市との話し合い、自由にアクセス可能にするかどうかについてのコミュニティ側から見た賛否両論などです」とArcher Aviationの事業開発担当主任Andrew Cummins(アンドリュー・カミンズ)を氏はTechCrunchによる最近のインタビューで語った。

UMLの都市エアーモビリティ担当フェローClint Harper(クリント・ハーパー)氏もカミンズ氏と同意見だ。ロサンゼルス市は「OEMあいまい性」を好んでいることを明言してきたものの、最終的な交通網の大半は、バーティポートが完全に民間によって建設されるのか、官民連携で建設されるのかによって大きく異なってくる。「完全な民間と官民連携とでは、インフラを現実化するための財源モデルも異なります」と同氏はいう。「どのような財源モデルを採用するかによって、複数事業者の共有施設になるのか、単一事業者の専用施設になるのかが決まります」。

Volocopterの最高商務責任者Christian Bauer(クリスチャン・バウアー)氏は、すべてのOEMにとって「オープンなシステムが必要」だというのが同社の考えであると語った。「私たちは不動産には投資したくありません」と同氏は付け加えた。

市との協力体制と今後

以上の問題の多くは大きな問題であり、妥協案が成立するまでに数年を要するだろう。というのは、各都市はまだ連邦規制のガイダンス待ちの状態だからだ。ハーパー氏は、FAA、National Fire Protection Association(全国防火協会)、International Code Council(国際基準評議会)の建築基準法の推奨事項の変化に柔軟に対応していくと語った。

エアタクシーOEM業者も自分たちの意向を反映してもらうために連邦レベルでポリシーの策定作業を進めている。Archer Aviation、Joby Aviation、およびVolocopterはすべて連邦の規制担当機関および都市と協力して作業を行っている。

UMLは、2021年の残りと来年を見据え、交通支援グループ(歩行者や自転車の安全支援組織など)およびホームレス問題などを注視している社会問題グループにも接触して、都市航空モビリティ計画の策定方法を把握するつもりだという。過去の過ちを繰り返さないためには、交通計画には公平性がとりわけ重要となる。例えばUnion of Concerned Scientists(憂慮する科学者同盟)によると、有色および低所得のカリフォルニアの住民は排ガスにさらされる度合いが異常に高いという。

市側の作業の大部分は、市の関連部門がバーティポートの建設に関する最新の動向を常に把握している状態にすることだ。具体的には、建設、安全、火災関連部門などが、バーティポートおよび新しいインフラの建設準備のためにフルタイムの職員を割り当てられるようにすることなどがある。

結局のところ、UMLは、順序立てて事を進めていくつもりだ、とモリシー氏は述べた。

「エアタクシーはおそらく現実のものとなるでしょう。私たちはそのためにあらゆる準備を怠らず、ハイプ・サイクルに陥らないようにしたいと考えています」。

画像クレジット:Patrick T. Fallon/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

NASAが「空飛ぶタクシー」目指すJoby製eVTOLの飛行試験、新たな空の交通基準策定に向け性能・騒音など情報収集

NASAが「空飛ぶタクシー」目指すJoby製eVTOLの飛行試験開始、新たな空の交通基準策定に向け性能・騒音など情報収集

Bradley Wentzel / Joby Aviation

NASAがJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)が開発する電動垂直離着陸機(eVTOL)の飛行試験を開始しました。この試験は8月30日から9月10日にかけて行われこの試験機が安全に安定した飛行を行うかを確認し、各種データを収集します。

Jobyは2009年創業のeVTOL企業で、NASAのAdvanced Air Mobility(AAM) と称するキャンペーンに参加する企業のひとつ。AAMキャンペーンは都市近郊や地方の地域環境における新たな旅客および貨物輸送の市場を開拓することをことを目的とし、農村部または都市部での半径約50マイル(約80.5km)のローカル輸送、または最大数百マイルの地域内輸送をそのミッションに含みます。

NASAがeVTOL機の試験を行うのは今回が初めて。この試験飛行では、機体の性能や騒音に関するデータを収集、シミュレーションを通じて現在の航空規制および政策とのギャップを特定し、将来の空域利用のコンセプトを形成することを目標とします。わかりやすくいえば、ヘリコプターやその他の化石燃料を利用する輸送手段に比べてどの程度優れているかを計ろうということです。

NASA AAMキャンペーンの指揮をとるDavis Hackenberg氏は「キャンペーンの開発テストは、AAM産業のタイムラインを加速させるというNASAの目標において、重要な戦略的ステップ」だとし「テストシナリオは、現在の標準のギャップを知るために役立ち、いつかAAM機を空域利用に統合して業界に進歩と利益をもたらす」と述べています。

なお、NASAはJoby以外のeVTOL企業とも同様のテストを実施することを計画しています。またNASAはこのキャンペーンで得た情報をもって連邦航空局(FAA)に助言を提供することを考えています。

ちなみおにNASAは以前Uberが行っていたエアタクシー事業計画についてデータ共有契約を締結していました。しかしUberは収益改善のためこの計画を手放すことになり、2020年12月にJobyへとこの事業を売却しました。

Jobyやその他のeVTOL企業は、最終的にFAA認定を取得し、商業運航を目指していますが、それには様々な法規制や安全性、信頼性の面で越えなければならない問題がまだたくさんあり、早くても数年の時間がかかると見積もられています。Jobyは、2024年にエアタクシーサービスが開始できることを望んでいます。それが実現できるかはまだわかりませんが、今回のAAMキャンペーンによる試験飛行は、今後に向けた重要な一歩になるかもしれません。

(Source:NASAEngadget日本版より転載)

電動航空機用水素燃料電池システムの開発でHyPointとPiaseckiが提携

電動垂直離着陸機(eVTOL)で高い評価を得ている企業をざっと調べてみると、1つの共通点があることに気づく。それは、すべての企業がバッテリーを動力源とする航空機を開発しているということだ。しかし、リチウムイオン電池ではエネルギー密度に限界があると考え、代わりに水素燃料電池に目を向ける航空機会社も増えている。

そこで注目を浴びているのが、HyPoint(ハイポイント)という企業だ。創設2年目の同社は、ZeroAvia(ゼロアヴィア)をはじめとする多くのeVTOL企業と共同で、空冷式水素燃料電池システムを開発している。空冷式水素燃料電池は、従来の液冷式水素燃料電池と比べると、出力重量比が3倍になるという。そして今、この燃料電池開発会社は、Piasecki Aircraft Corporation(ピアセッキ・エアクラフト・コーポレーション)を新たにパートナー名簿に加えることになった。

両社の協力関係は、水素燃料電池システムの設計と認証に向けて、650万ドル(約7億1300万円)の多段階開発を共同で行うというものだ。この提携により、HyPoint社は、地上試験、デモフライト、認証プロセスのために、650キロワットの水素燃料電池システム5基を提供する。

その目標は、既存のリチウムイオン電池の4倍のエネルギー密度と、既存の水素燃料電池システムの2倍の比出力を持ち、タービン式回転翼機と比較して最大50%の運用コスト削減を実現するシステムを作り上げること。HyPointは3月にこの新技術の試作品を公開している。

画像クレジット:HyPoint

今回の提携により、Piasecki社にはこの技術が独占的にライセンス供与される。同社はこの技術を「PA-890」有人ヘリコプターに使用することを目指しており、これは市場で最初の水素を燃料とするヘリコプターになるという。ハイポイント社は、この燃料電池技術の独占的所有権を維持することになる。

両社は声明の中で、他のeVTOLメーカーにもこのシステムを提供していく考えがあると述べている。「Piasecki社は、Hypoint社とともに、他のeVTOLメーカーを支援する準備ができています」と、HyPointのAlex Ivanenko(アレックス・イワネンコ)CEOは、TechCrunchに語った。

この契約は実現可能性調査から始まったもので、そこでHyPointは、概念実証のために非常に小規模なプロトタイプを製作した。現在、同社は設計段階にあり、単体パワーモジュール(650キロワットのシステムは複数のパワーモジュールで構成される)の製造と、Piaseckiの航空機にシステムを統合するコンセプトに取り組んでいる。単体パワーモジュールは年内に準備が整い、2023年には最初の650キロワットシステムがPiaseckiに納入される予定となっている。商業的に利用可能な製品となるのは、2025年頃になる見込みだ。

画像クレジット:Piasecki Aircraft Corporation

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Liliumの電動ジェット機のバッテリーは同じくドイツのCustomcellsが供給

電動エアタクシーのLiliumは、ドイツのメーカーCustomcellsと提携、同社フラグシップ機Lilium Jetのバッテリーを提供してもらうことになった。

Liliumによると、そのバッテリーのIPは複数の企業などが保有するが、製造そのものはCustomcells一社の仕事になる。両社の協定の一部であるバッテリーシステムの数をLiliumは明かさなかったが、Customcellsは2026年までに保証容量を生産する契約だ。

Customcellsは、航空機や自動車、海運業などのために高性能のリチウムイオンバッテリーを開発している。同社は最近、高級スポーツカーのPorsche AGとCellforce Groupという合弁事業を興し、レーシングカーやパフォーマンスカー用バッテリーの少量生産を行なうことになった。

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Liliumはこのところ、部品と機体のテストに向けて準備を進めているが、その中にはいくつかのパートナーシップもあり、Customcellsはその1つにすぎない。ミュンヘンのeVTOL企業であるLiliumは、パートナーシップの国際的なネットワークを築いており、その中には炭素繊維複合素材で日本の東レ、ジェット機の機体ではスペインの航空宇宙サプライヤーAciturri、ソフトウェアサービスでは同社の投資家でもあるPalantir Technologiesなどがいる。2021年6月にLiliumは、ジェット機の航行制御とアビオニクスのために、航空宇宙の大メーカーであるHoneywellをその名簿に加えた。

主要部品を既成のメーカーにアウトソースするLiliumの決定は、エンジニアリングと生産の大部分を内製することを選んでいるJoby Aviationといったその他の多くの主要eVTOL開発企業のやり方との訣別となる。Liliumのやり方には利点もある。何よりもまず、生産とテストのための設備機器に対して長期間、費用を使う必要がない。しかしLiliumの役員たちがほのめかすもっと重要な利点は、公的認可の過程かもしれない。

他のeVTOLメーカーと同じくLilium Jetも、商用運行のためには、EUの航空安全局と米国の連邦航空管理局からの認可が必要だ。Liliumも、その主要競合他社も、商用運用の開始を強気に2024年としている。既成の航空宇宙サプライヤーは、その最小限の性能規格に関して規制当局の認可をすでに得ている部品を使えるかもしれない。それによって、認可までの時間を節約できるだろう。

LiliumのチーフプログラムオフィサーであるYves Yemsi(イヴ・イェムシ)氏は、2021年初めにTechCrunchに対して次のように語っている。「エキスパートや航空宇宙のパートナーたちとのコラボレーションは、私たちの意図的な選択です。市場化までの時間を短縮できるだけでなく安全です」。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:エアタクシーLiliumバッテリーCustomcellseVTOLドイツ

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

街中での商業利用に求められる静かなエアタクシーを開発するWhisper Aeroが脱ステルス

ドローンを使った配達や電動垂直離着陸機が、夢のような話から商業化に移行しようとしている今、多忙で騒々しい空が始まる日の前夜だ。NASAの元エンジニアで、Uberのエアタクシー部門を任されていた人物が開発しているのは、空の交通から騒音を取り除く技術だ。

後にJoby Aviationに買収されたUber Elevateの技術部長だったMark Moore(マーク・ムーア)氏は、Whisper Aeroと呼ばれる彼自身の会社を立ち上げた。今週ステルスを脱したこのスタートアップは、デリバリードローンやeVTOLから出るノイズをバックグラウンドレベルにブレンドして、人間の耳が気づかない程度の音にしてしまう電動スラスターを開発している。

これが本当だとすると、恐るべき挑戦だ。ノイズという問題の解決方法は、単純に音量を下げればいいものではない。ノイズと呼ばれる音のプロファイルには、周波数など音量以外の変数がある。たとえばヘリコプターにはメインローターとテールローターがあり、2つが異なる周波数を生み出す。それによって人間の耳は、単一の周波数よりもうるさく感じてしまうとムーア氏は最近のTechCrunchインタビューで話した。

eVTOLは、状況をさらにややこしくする。eVTOL企業が作っているものは、これまでとはまったく違うタイプの航空機で、ヘリコプターのような従来の回転翼航空機とは異なる音響プロファイルを生み出す。米国陸軍が最近行った研究調査によると、eVTOLのローターは、ヘリコプターが生成するトーナルノイズ(単一音調)ではなく、一般にブロードバンド(広帯域)と呼ばれるようなタイプのノイズであることが確認された。それぞれのeVTOL企業が独自の設計を開発しているため、すべての電動航空機が同じレベル、同じ種類のノイズを出すわけではない。

ところがWhisperは、全業界から採用してもらえるようなスケーラブルな製品を設計している。

ムーア氏によると、そのアイデアが形を成すまでに数年を要したという。彼と同社COOで、Elevateで戦略とシミュレーションを指揮していたIan Villa(イアン・ヴィラ)氏は数年前に、ノイズをなんとかしないかぎり、エアタクシーの商用化はありえないと悟った。

「はっきりしてのは、ノイズが最も重要だということです。最も突破困難な障壁です。しかし、解決しようと時間とリソース、マインドシェアを費やしている開発者の数はほとんどいませんでした」とヴィラ氏は語る。

WhisperのCEOマーク・ムーア氏(画像クレジット:Whisper Aero)

ヘリコプターはあまり頻繁に使われないため、あのひどいノイズもあまり問題にならない。しかしJoby AviationのようなeVTOL企業のプロダクトは、利用頻度が桁違いに多い。ムーア氏がいち早く指摘したのは、Joby(2020年末にElevateを買収)のような企業はすでにヘリコプターよりずっと静かな航空機を開発しており、その開発の方向性は正しいということだ。

しかしながらムーア氏は「彼らの現状は、大量に採用されるほどのレベルに達しているだろうか?その疑問から、我々はスタートしました」と語る。

Whisperはその電動スラスターの詳細について口をつぐむが、すでにLux CapitalやAbstract Ventures、Menlo Ventures、Kindred VenturesそしてRobert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・Jr)氏のFootPrint Coalition Venturesなどから約750万ドル(約8億3000万円)の投資を獲得している。同社はまた、2022年にはその暫定特許を国の正規の特許にしたい意向だ。

今後同社はまず小型のドローンを2023年に発売し、それから徐々にエアタクシーのサイズへスケールしていきたいと考えている。ムーア氏によると、乗用機用のスラスターは2020年代に完成するという。第1世代のeVTOLが、Archer AviationやJobyがいうように2024年に市場に出現するなら、Whisperの製品の登場はeVTOLの第2世代になるだろう。

当面の間、Whisperはテストとまだ残っている技術的課題の解決努力を継続する。最終製品のコストを合理的な範囲内に収めることも、その課題の1つだ。同社はまた、テネシー州の本社で行なうスタティックなテストに加えて、風洞を使用する実動試験も準備しており、その一部については米国空軍の協力を求める。

「バックグランドノイズに溶け込むほど静かでなければなりません。私たちはそう自覚しており、そのための技術を開発しています」とムーア氏は語る。

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画像クレジット:Whisper Aero

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

2人乗りの自律型デモ航空機「Maker」をArcher Aviationが公開、商業運航への「足がかり」に

Archer Aviation(アーチャー・アビエーション)は「Maker」(メーカー)と名づけられた自律型電動2人乗り航空機を米国時間6月10日に発表した。同社は同機を、2020年3月に発表済の、より大型の操縦士付き5人乗り航空機の認証取得に向けたテストに使用する予定だ。

6月10日に発表された航空機は、2024年に商業運転を開始した際に空を飛ぶものではない。だがArcherの認証責任者Eric Wright(エリック・ライト)氏は、TechCrunchに対して、自律型航空機から始めることでより効率的にテストプロセスを進めることができると語っている。

ライト氏は「2人乗りのMakerは、認証取得への足がかりとなるものです」と説明する。そして「これは飛行制御システムや電気推進装置など、私たちが認証を受ける航空機に搭載するものについての知識や認識を深めるためのテストベッドです。同時に私たちの試験を通して米連邦航空局(FAA)によるその設計への信頼を深めることができるようにするためのものでもあるのです。もちろん、FAAもその開発を見守ることになります」と述べている。

Makerと、まだ名前の決まっていない5人乗り航空機は、どちらも全部で12個のローターを持ち、そのうち前部6個のローターが傾く「ティルトローター」を採用しているという仕様上の共通点を持つ。このティルト機構により、航空機はヘリコプターのように垂直に上昇し、飛行機のように前進することができる。

両機はまた、それぞれ安全のために6つの独立したバッテリーパックを搭載しており、1つのバッテリーが故障しても残りのバッテリーが作動するようになっている。このバッテリーにより、両機は時速150マイル(時速約241.4km)で60マイル(約96.5km)の航続距離を実現している。2人乗り機は、翼幅が40フィート(約12.2m)で、重量は約3300ポンド(約1498.2kg)だが、より大きな機体ではもっと重くなるだろうとライト氏はいう。

画像クレジット:Archer

パロアルトに本社を置くArcherは、Makerが2000フィート(約608m)の上空から発する音は、わずか45dBだと予想している。この騒音仕様は、エアタクシーへの展開を目指している電動垂直離着陸機(eVTOL)メーカーにとって特に重要なものだ。一般の人々や規制当局に、同機の大量導入が受け入れられる可能性が出るのは、航空機が十分な静粛性を備えている場合に限られる。

Archerは、United(ユナイテッド)航空から10億ドル(約1096億円)の受注を獲得したと発表した後、2人乗り機の高品質なレンダリング画像を公開するなど、ここ数カ月の間にMakerに関する情報を少しずつ提供してきた(なお、このレンダリング画像の公開によって、ライバルのeVTOL開発会社であるWisk Aero [ウィスク・エアロ]から企業秘密の流用を主張する訴訟が起こされた)。米国時間6月10日のイベントは、38億ドル(約4167億円)の評価を受けている同スタートアップが、実際の航空機を一般に公開する初めての機会となった。

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このデビュー機が自律型である理由を聞かれたライト氏は、そのことでテストや検証のプロセスをより効率的に進めることができるからだと答えた。ライト氏は「航空機を自律的に動かすことで、航空機のパイロットが実際に操縦する必要なしに、より迅速に物事を進めることができます」という。「そうすることで、入力に対する機体の反応を、自律的な観点から、より早くより効率的に見ることができるのです」。

自律型エアタクシーが都市部で人々を運ぶようになるのはまだ先のことかも知れないが、Archerは他のeVTOL開発企業と同様に、長期的な青写真の中で、自律型エアタクシーを単に大型機の認証プロセスを促進するものではなく、運用可能な航空機として捉えているのだ。

ArcherのCEOであるBrett Adcock(ブレット・アドコック)氏は、別のインタビューの中で次のように述べている「輸送の世界に本当に大きな影響を与えようとするなら、長期的には、操縦士を使った方法でそれを実現することは本当に難しいと思っています。航空業界に入り、認証を受け、それをすぐにでも実現するという意味では、操縦士を使うやり方は確かに正しい方法だと思います。そして将来的には、乗客とネットワークの両方の安全性を高めるために、自律的な航空業界への移行が重要になってくると思っています。だから、業界がうまくスケールして大きくなるためには、ある程度の自律化は避けられないと思っています」。

創業3年目のこの企業は、2024年にロサンゼルスとマイアミを皮切りに商用運行を開始することを目指している。同社のシステムシミュレーションチームは、VTOL機離着陸場をどこに配置するかを決めるために、Prime Radiant(プライムラディアント)という名のシミュレーションツールを使っている。同チームを率いているのは、2020年12月にJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)に売却された、Uber(ウーバー)のエアモビリティ部門Uber Elevate(ウーバー・エレベート)の、元データサイエンス責任者だ。

関連記事:2024年までにLAでの都市型エアタクシー導入を目指すArcher Aviation

またアドコック氏は、エアタクシーのルートを考える際には必ず必要となる、ファーストマイルとラストマイルの車での移動を統合するために、ライドシェア会社との間で話し合いを進めているのだという。

同社の共同創業者であるGoldstein(ゴールドスタイン)氏は、2024年のローンチ予定に先立ち、パートナーである自動車メーカーのStellantis(ステランティス)と2つの施設についての作業を進めていると語った。1つは従来の航空産業のように年間数百機を提供する施設で、もう1つは将来的にさらに大量の航空機を製造する施設だ。

Archerには、自動車メーカーと同様の製造上のニーズがあるとゴールドスタイン氏はいう「多くの部品に軽量のカーボンファイバーを使用し、自動車と同様に電気モーターやバッテリーを使用するのです」。

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タグ:Archer Aviatio自律飛行eVTOLエアタクシー

画像クレジット:Archer

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

eVTOL企業Joby Aviationがアジアや欧州でも早期に事業開始を計画

電動垂直離着陸型旅客機のスタートアップ企業であるJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)は、最初の商業展開を北米で開始することを目指しているが、同社創業者でCEOのJoeBen Bevirt(ジョーベン・ビバート)氏は、アジアや欧州でも早々に存在感を示すことができると期待している。

米国時間6月9日に開催された「TC Sessions:Mobility 2021(TCセッション:モビリティ2021)」に参加したビバート氏は、最初に商業活動を行う場所は明らかにしなかったが、最近の発表によればロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、サンフランシスコ・ベイエリアに絞られているようだ。しかし、最初の都市がどこになるかについては慎重に言葉を選んだ。

「3つの地域にそれぞれ初期の市場を設定することになると思います」と、同氏は語った。「最初に事業を起ち上げる市場については、私たちのチームの多くが現在活動している地域に近いという理由から、北米になる予定です。しかし、すばらしい好機や都市は世界中にあります。私たちはできるだけ早く、多くの人々にサービスを提供したいと考えています。そのために、製造規模の拡大に力を入れているところです」。

Joby Aviationは、Toyota(トヨタ)の協力を得て設計された45万平方フィート(約4万1800平方メートル)の製造施設の建設を、2021年後半に始める予定だ。同社はすでに先行生産用の施設を完成させている。

かつては秘密主義的なスタートアップだったJobyは、この半年間に多くの衆目を集めてきた。2021年2月には、Reinvent Technology Partners(RTP)と合併することで同意に達したと発表。RTPは、
著名な投資家でLinkedIn(リンクトイン)の共同創業者であるReid Hoffman(リード・ホフマン)氏、Michael Thompson(マイケル・トンプソン)氏、Zynga(ジンガ)創業者のMark Pincus(マーク・ピンカス)氏によって設立された特別買収目的会社(SPAC)だ。ホフマン氏は、ビバート氏とともにTCセッション:モビリティ2021にも参加した。

SPACによる買収以前にも、Joby Aviationは長年にわたりeVTOLの開発で注目を集め、投資家を獲得してきた。トヨタは重要な支援者・パートナーとなり、2020年1月には6億2000万ドル(約679億円)の資金を調達したシリーズCラウンドを主導した。その約1年後、Jobyは複雑な取引の一環として、Uber(ウーバー)の空飛ぶタクシー事業であるElevate(エレベート)を買収している。

関連記事:Uberが空飛ぶタクシー事業ElevateをJoby Aviationに売却、最後の夢の事業から撤退

現在のJoby Aviationは、2018年から取り組んできた米国連邦航空局(FAA)の認証取得に加え、eVTOL(電動垂直離着陸機)の製造に注力しているところだ。同社はまた、どこでどのように運用するかというピースを組み合わせ始めている。従業員数も過去1年間で2倍に増やし、現在は約800人を雇用している。

Joby Aviationは2021年6月初め、まずはロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、サンフランシスコ・ベイエリアを中心としたバーティポート(垂直離着陸用飛行場)のネットワークを構築するために、国内最大級の駐車場運営会社であるREEF Technology(リーフ・テクノロジー)および不動産買収会社のNeighborhood Property Group(ネイバーフード・プロパティ・グループ)と提携することを発表した。

2024年の運用初年度には、1〜2都市で事業展開することをビバート氏は想定している。

「私たちは、消費者のみなさまに変革をもたらす体験をお届けするために、十分な範囲のサービスを提供したいと考えています」と、ビバート氏はいう。「新しいサービスが開始されても十分な供給がないと、お客様は不満を抱くことがありますからね。私たちは、少なくとも需要の一部に確実に応え、お客様に本当に満足していただける体験を提供したいのです。私たちが企業として本当に大事にしている要素は、お客様を当社の熱狂的なファンにすることだと、私は考えています」。

関連記事:Joby Aviationが空飛ぶタクシー乗降場所として立体駐車場に注目

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タグ:Joby AviationeVTOLトヨタエアタクシー

画像クレジット:Joby Aviation

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Joby Aviationが空飛ぶタクシー乗降場所として立体駐車場に注目

Joby Aviation(ジョビーアビエーション)は米国時間6月2日、バーティポート(垂直離着陸用飛行場)のネットワークの構築で米国最大の駐車場運営事業者、そして不動産買収会社と提携すると発表した。ネットワークはまずロサンゼルスとマイアミ、ニューヨーク、サンフランシスコのベイアリーナにフォーカスする。

REEF Technology、Neighborhood Property Group(NPG)との提携では、Joby Aviationは「米国の全主要都市圏にまたがる前代未聞のきさまざまなルーフトップ、ならびに新しいスカイポートサイトの買収・開発の資金をまかなうメカニズムにアクセスできるようになる」と声明で述べた。

エアタクシーに乗車できるロケーションの便利でアクセスしやすい大規模なネットワークの構築は、どの企業が未来の乗客を自社サービスに取り込めるかを決める鍵を握る要因となる。ヘリコプターをサポートする現在のインフラは限られており、特に電動垂直離着陸機(eVTOL)企業がサービスを展開しようとしている都市部においてはそうだ。

提携によってJoby Aviationは、REEFの不動産ネットワーク内で長期リースを確保できる間、サイトへの独占的なアクセスを持つ。

電動航空機大手であるJoby Aviationの航空ライドシェアリングネットワークに関する意図はこれまでほとんど明らかになっていなかったが、創業者でCEOのJoeBen Bevirt(ジョーベン・べバート)氏は既存の立体駐車場を使うことのメリットについて公言していた。

そうした建物は通常、密集地域にあり、大型で、複数の小型航空機を支えられるだけの頑丈な材料で建てられている。しかしおそらく最も重要なことに、立体駐車場は移動の最初と最後に使われるという点で空飛ぶタクシーと協力し合うことになる別の交通手段である車を有している。

駐車場運営・サービスの会社ParkJockeyを有しているREEFはモビリティとロジスティックのハブ約4500カ所を展開していて、これは北米の都市部の人口の70%をカバーしているとのことだ。同社は2020年11月にソフトバンクやMubadalaなどから7億ドル(約768億円)を調達した

関連記事:駐車場を有効活用するREEF Technologyがソフトバンクなどから7億ドルを調達

新たな提携に加え、Jobyのバーティポートネットワークは既存のヘリポートと地方空港も活用する。

べバート氏は「今回の提携はJobyが進める変革的な空のライドシェアリングサービス構築において画期的なものです。NPGとREEFは米国中にすばらしいサイトネットワークを展開していて、我々の未来のサービスの屋台骨となるサイト選びで両社と協業することを楽しみにしています」と声明文で述べた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Joby AviationエアタクシーeVTOL駐車場REEF Technology

画像クレジット:Joby Aviation

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

エアタクシースタートアップArcherが電動飛行機生産で自動車メーカーのフィアット・クライスラーと提携

都市交通向けの電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発するArcherは、自動車メーカーのFiat Chrysler Automobiles(FCA、フィアット・クライスラー・オートモービルズ)のエンジニアリング、デザイン、サプライチェーンおよび材料科学における専門知識を活用するために、同社と新たな提携関係を結ぶ。ArcherはeVTOLの量産を2023年に開始し、2021年の早い時期での機体初公開を目指している。

今回の新たな提携により、FCAはArcherのeVTOLのコックピット設計に貢献する情報を提供することになり、また自動車事業での何十年にもわたってドライバーのために空間を設計してきた豊富な専門知識でも貢献する。Archerの機体は電気モーターを搭載し、最高時速150マイル(時速約240km)で最大60マイル(時速約97km)飛行できる。同社のeVTOLは静粛性と効率性を重視して設計されており、FCAとの連携により、大量生産と持続可能性を実現するために製造コストの低減に向けた取り組みが進められている。

最終的にArcherはFCAの協力を得てプロセスの効率化を実現し、eVTOLを市場に投入することで、エンドユーザーが手頃な価格で利用できる健全なビジネスを実現することを目指している。パロ・アルトを拠点とするArcherは、将来的には世界中の都市でエアタクシーサービスを提供するために、最終的には年間「数千機」のeVTOL機を生産できるレベルまで生産規模を拡大したいと考えている。

共同創業者のBrett Adcock(ブレット・アドコック)氏とAdam Goldstein(アダム・ゴールドスタイン)氏が率いるArcherは、Airbus(エアバス)のVahana eVTOLイニシアチブで重要な役割を担ったチーフエンジニアのGoeff Bower(ゴエフ・バウワー)氏といった業界の重鎮が参加し、2021年初めにウォルマートのeコマース事業の現社長兼CEOであるMarc Lore(マーク・ローア)氏(ウォルマートに買収された際に同氏はJetの共同創業者兼CEOだった)の支援を受けて、ステルス状態からスタートした。

カテゴリー:モビリティ
タグ:ArchereVTOLエアタクシーFiat Chrysler Automobiles

画像クレジット:Archer

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter