ウェブ接客ツールのエフ・コードが1.4億円を資金調達、新ツール「CODE」をリリース

ウェブマーケティングツール提供とコンサルティング事業を展開するエフ・コードは7月4日、複数の個人投資家を引受先とする第三者割当増資により、総額約1.4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回の調達はシリーズAラウンドに当たり、同社にとって外部からの初の調達となる。

また、エフ・コードは同日、新プロダクトとしてウェブ接客ツール「CODE Marketing Cloud(以下CODE)」を7月中旬よりリリースすることを発表した。

エフ・コード創業者の工藤勉氏は、外交官志望で東京大学法学部に入ったが、やがて「ビジネスをやった方が“世界を幸せにしたい”という願いがかないやすいのではないか」と考えるようになり、経営戦略コンサルティングの道へ進む。その後、自動車学校のポータルサイト運営会社に役員として参画。集客からサイト作りまで取り組むインターネットマーケティング事業が当たり、創業1年で業界トップクラスの実績をつくった。

ここで培ったメディア運営の知見を「自動車学校にとどまらず、業界を超えて提供していきたい」と工藤氏は考え、2006年3月にエフ・コードを立ち上げた。

エフ・コードはウェブコンサルティング事業からスタートし、大手企業のウェブ広告運用やコンバージョン改善などを人力で支援してきた。そのノウハウをより多くの企業に提供したい、と4年ほど前からSaaS事業を開始した。

「EC、教育、金融などさまざまな業界のウェブコンサルを手がけてきたが、どの業界にも共通して言えるのは『入力フォームでの離脱が多い』そして『そもそも入力フォームが使いにくい』ということだった」(工藤氏)

そこでまずは入力フォーム最適化ツール「f-tra(エフトラ)EFO」をリリース。その後、ウェブ接客ツール「f-tra CTA」、プッシュ通知ツール「f-tra Push」を加え、3つのツールを提供してきた。集客支援からコンバージョン改善、再訪促進までをf-traシリーズでカバー。述べ500社以上に利用されるツールとなっている。タイ、インドネシアにも拠点を置き、アジアにもサービスを展開している。

f-traシリーズではCookieを使ってターゲティングを行ってきたエフ・コード。新製品のCODEではCookieによる行動履歴データに加えて、既存顧客データやGoogle Analytics、他社マーケティングオートメーション(MA)ツールなどの外部データソースを利用して、ウェブサイト内のユーザーに対し、より緻密で最適化された1to1接客を実現しようとしている。

CODEでは、業界別にオファーバナーや接客のテンプレートが用意されている点も特徴だ。ウェブ接客ツールを利用するに当たっては、シナリオ設計やクリエイティブ制作に工数がかかり、導入してから実際に運用が始まるまでに時間がかかることが多い。CODEでは導入からすぐに運用を開始することができるという。

工藤氏は「ウェブマーケティングのツールで部分改善は進んでいるが、細分化が進み、企業内のマーケティング担当者の間で課題感が共有できていないことも。マーケターの先にいるユーザーはハッピーなのか?ということを考えなければいけない」と話す。

「インターネットを通じたサービスは、ウェブ、メールだけで完結する時代から、SNSやアプリ、実店舗など、さまざまなチャネルに広がっている。CODEでは、これらのチャネルを網羅して、顧客情報などのインプットも管理しつつ、1to1でのコミュニケーションを実現する機能を包括的に提供していく」(工藤氏)

ウェブ接客ツールの競合には、SprocketKARTEなどがあるが、エフ・コードでは「広告運用時代から培ったコンサルティング力をベースとした、運用コンサルティングによる顧客との“併走”が当社の武器」という。

「マーケティングオートメーションツールの導入企業も増えているが、使いこなすのは大変で、オンボーディング(担当者がツールやサービスに慣れるプロセス)が必要。ソフトウェアの開発力と営業力に加えて、優れたコンサルによる支援があることで、当社は特に中堅企業への導入では強みを持っている」と工藤氏は述べる。

資金調達について工藤氏は「創業以来、調達がなくても収支は成り立つように事業を行ってきたが、ベンチャーへの投資が活発になっているこの機会に、先行投資で顧客に貢献できる範囲を一気に広げ、成長をスピーディーに進めるため、増資を決めた」と話している。

今回のラウンドに参加した投資家は「以前からトータルに力添えをもらっていた個人」とのこと。本ラウンドはクローズしておらず、引き続き調達を進めるそうだ。

調達資金は、新プロダクトであるCODEの開発に充てる予定。「リリース直後のCODEには、これから顧客のニーズもいろいろと出てくるはず。今後も機能拡張を順次行い、細分化されたウェブマーケティングツールの統合を進める」と工藤氏は話す。

CODEの開発にはTwitterやChatworkでも使われているScalaをベース言語として採用。既に国内Scalaコミュニティの第一人者がエンジニアとして参加し、開発にも力を入れているという。「引き続き、優れたエンジニアとの開発を大切にしていきたい」(工藤氏)

また、国内外でのマーケティングも強化。「プロモーションもきちんと行っていく」と工藤氏は話している。

「アジアでは、デバイス普及率やローカライズの問題もあって、マーケティングツール導入が欧米より遅れている。しかし2025年にはツール利用の6割がアジアになる、という予測もある。導入の課題を解決して、中国や韓国、ASEAN地域で欧米発のツールと肩を並べるプレイヤーとなることを目指したい」(工藤氏)